説明

ゴマを含有する調味料

【課題】
長期間に渡って層分離およびゲル化が抑制されたゴマを含有する調味料の提供を課題とする。
【解決手段】
ゴマ成分、ガラクトキシログルカン、およびセルロースを含有し、調味料全量に対して、ガラクトキシログルカンを、0.01重量%〜20重量%含有し、セルロースを、0.01重量%〜4重量%含有する調味料である。該調味料は、高甘味度甘味料を含有してもよく、高甘味度甘味料としては、ネオテームが好ましい。ネオテームは、調味料全量に対して、0.00001重量%〜0.01重量%含有される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマを含有する調味料に関する。更に詳しくは、ゴマ成分、ガラクトキシログルカンおよびセルロースを含有する調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴマは良好な風味と豊富な栄養を有することから、近年ゴマの有用性が認識されることにより、ゴマを用いた食品が数多く商品化されている。とりわけ、生野菜に用いられるドレッシングや焼肉等に用いられるたれ等の調味料が多く商品化されている。しかしながら、調味料の保存中に固形分と液体部分が分離し二層になること(層分離ともいう。)や調味料自身がゲル化するなどの商品価値を損なうことが懸念されてきた。
【0003】
このような背景の下で、胡麻ペーストおよび安定剤としてキサンタンガムなどを含有する酸性液状調味料が知られている(特許文献1)。しかしながら、安定剤としてトラガントガム、タマリンドシードガムなどを用いた調味料では、層分離およびゲル化の改善が見られなかったことが記載されている。
【0004】
また、ゴマを含有する食品の層分離およびゲル化を防止するために、特定の酵素で処理されたゴマと増粘多糖類を含有する食品が知られている(特許文献2)。しかしながら、該食品は、特定の分解酵素でゴマを処理するため、作業効率の低下およびコストの上昇などの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開平4−16161号
特許文献2:特開2005−151938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長期間に渡ってゴマを含有する調味料の層分離およびゲル化を抑制することを課題とする。これに伴い、商品の流通事情を勘案して、商品価値の損失を軽減できるゴマを含有する組成物を含む調味料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究した結果、驚くべきことにゴマ成分、ガラクトキシログルカンおよびセルロースを含有する調味料にかかる課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
項1:ゴマ成分、ガラクトキシログルカンおよびセルロースを含有する調味料。
項2:ゴマ成分を、調味料全量に対して、0.1重量%〜60重量%含有する、項1記載の調味料。
項3:ガラクトキシログルカンが、タマリンド種子由来である、項1または項2に記載の調味料。
項4:ガラクトキシログルカンを、調味料全量に対して、0.01重量%〜20重量%含有する、項1〜項3のいずれか一項に記載の調味料。
項5:セルロースが、微結晶セルロース製剤である、項1〜項4のいずれか一項に記載の調味料。
項6:セルロースを、調味料全量に対して、0.01重量%〜4重量%含有する、項1〜項5のいずれか一項に記載の調味料。
項7:更に、高甘味度甘味料を含有する、項1〜項6のいずれか一項に記載の調味料。
項8:高甘味度甘味料が、ネオテームである、項7に記載の調味料。
項9:ネオテームを調味料全量に対して、0.00001重量%〜0.01重量%含有する、項8に記載の調味料。
項10:調味料が、ソース、タレ、またはドレッシングである、項1〜項9のいずれか一項に記載の調味料。
項11:層分離のない項1〜項10のいずれか一項に記載の調味料。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、長期間に渡ってゴマを含有する調味料の層分離およびゲル化を抑制することができる。それに伴い、ゴマを含有する調味料の商品価値の損失を軽減できる。また、本発明により、簡便な方法で長期保存可能なゴマを含有する調味料を提供できるため、製造コストを軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。
「ゴマ成分」におけるゴマとは、一般に流通する白ゴマ、黒ゴマまたは金ゴマを意味する。かかるゴマ成分には、上記ゴマそのものの他、洗いゴマ(生のゴマを水洗いして乾燥したもの)、煎りゴマ(焙煎したもの)、擦りゴマ(焙煎したゴマを粉砕したもの)、皮むきゴマ(白ゴマの皮をむいて、水洗いし、乾燥したもの)、練りゴマ(焙煎したゴマを磨砕してペースト状にしたもの)の如く、加工したものも含まれる。
特に、上記練りゴマは、「ゴマペースト」と称することもあり、ゴマ種子をミルなどで流動性が認められる程度まですり潰したペースト状のものを意味する。固形感を残すために粗くすり潰した状態(目視にて粒が見えるくらい。)であってもよい。これに煎りゴマや煎りゴマをすったものを加えても良い。
「ゴマ成分」は、洗いゴマ、煎りゴマ、擦りゴマ、皮むきゴマ、または練りゴマの単独成分であってもよく、これらの混合成分(例えば、擦りゴマと練りゴマの混合成分)であってもよい。
【0011】
「ガラクトキシログルカン」とは、グルコース、キシロース及びガラクトースを構成糖とし、主鎖はグルコースがβ1,4結合し、側鎖にキシロース、さらにガラクトースが結合するものを意味する。
ガラクトキシログルカンは、双子葉、単子葉植物など高等植物の細胞壁(一次壁)に存在する天然多糖であり、タマリンドをはじめ、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギ、リンゴなどから抽出される。ガラクトキシログルカンとしては、いかなるガラクトキシログルカンでもよいが、ガラクトキシログルカンの含有率が高く、入手容易なタマリンド種子由来のガラクトキシログルカン[タマリンドシードガム:商品名「グリロイド(登録商標)」「グリエイト(登録商標)」大日本住友製薬(株)製]が好ましい。
【0012】
「セルロース」とは、植物の細胞壁の重要な構成成分であり、βグルコースがグリコシド結合により直鎖状に重合した高分子多糖類を意味する。本明細書において「セルロース」とは、結晶セルロース、微結晶セルロース、微結晶セルロース製剤、微小繊維状セルロース、微小繊維状セルロース製剤のことを意味する。更にはセルロースの誘導体であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースも「セルロース」の概念に含まれる。
【0013】
「結晶セルロース」または「微結晶セルロース」とは、繊維性植物から得られたパルプを原料とし、これを加水分解して精製したものを意味する。この結晶セルロースを水溶性高分子(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)でコーティングしたものが「微結晶セルロース製剤」である。
【0014】
「微小繊維状セルロース」とは、パルプまたは綿を微小繊維状にして得られたセルロースを主成分とするものであり、この微小繊維状セルロースを水溶性高分子でコーティングしたものが「微小繊維状セルロース製剤」である。
入手容易な結晶セルロースとしては、例えばアビセル(登録商標)PH−101[大日本住友製薬(株)製]などが挙げられる。微結晶セルロース製剤としては、例えばアビセル(登録商標)CL−611[大日本住友製薬(株)製]などが挙げられる。
【0015】
「高甘味度甘味料」としては、ネオテーム、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、ステビア、アセスルファムカリウム、アリテーム、グリチルリチン,グリチルリチン酸2カリウム、グリチルリチン酸2ナトリウム、グリチルリチン酸アンモニウム塩、サッカリン、サッカリンナトリウム等を挙げることができる。これらの他にも、例えば、特開2001−97998号公報、特開平7−285991号公報に記載されているペプチド系甘味料が挙げられる。これらの1種又は2種以上、好ましくは、ネオテーム、アスパルテームからなる一種以上、さらに好ましくはネオテームを挙げることができる。高甘味度甘味料の含有量としては、選ばれる高甘味度甘味料の甘味度により異なるが、調味料の全量に対して、通常0.00001重量%〜1.5重量%である。好ましくは、0.00001重量%〜1.0重量%であり、更に好ましくは、0.00001重量部〜0.5重量部である。
【0016】
本発明で使用するネオテームとはアミノ酸由来高甘味度甘味料で、砂糖の7,000〜13,000倍の甘味度を有する。入手容易なネオテームとしては「ミラスィー(登録商標)」[大日本住友製薬(株)製]がある。ネオテームの含有量は調味料の全量に対して通常0.00001重量%〜0.01重量%である。
【0017】
「調味料」としては、ソース、タレ、またはドレッシングなどが挙げられるが、ドレッシングが好ましい。
【0018】
本発明における各成分の含有比率について説明する。
ゴマ成分は、調味料の全量に対して、0.1重量%〜60重量%含有される。好ましくは、1重量%〜40重量%であり、5重量%〜30重量%がよりいっそう好ましい。
ガラクトキシログルカンは、調味料の全量に対して、0.01重量%〜20重量%含有される。好ましくは、0.05重量%〜10重量%であり、0.2重量%〜5重量%がよりいっそう好ましい。
セルロースは、調味料の全量に対して、0.01重量%〜4重量%含有される。好ましくは、0.1重量%〜2重量%であり、0.2重量%〜1.5重量%がよりいっそう好ましい。
【0019】
本発明における調味料は、発明の効果を損なわない限度において、他の成分、例えば、澱粉類、油脂類(食用油も含む)、醤油、タンパク質類、ペプチド、アミノ酸類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、界面活性剤、乳化剤、保存料、日持向上剤、酸味料、甘味料、香料、色素、pH調整剤、消泡剤、ミネラル、食物繊維、酸(食酢も含む)、アルカリ、アルコール、味噌、香辛料などを含有してもよい。
【0020】
本発明における調味料の調製は特に限定されるものではないが、一般的なソース、タレ、ドレッシングの調製方法を用いることができる。また、ホモミキサーやホモゲナイザーなどを用いて予め水に対してセルロースを分散させておくとより安定な調味料を得ることができる。例えばドレッシングの一般的な調製方法としては、水、ゴマ成分、酸味料、香辛料、調味料、甘味料、増粘剤、乳化安定剤、食用油を混合し、乳化する方法が挙げられる。
【0021】
以下、本発明について参考例および実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例】
【0022】
実施例1:
下記表1に掲げる処方のうち、80℃に加温したイオン交換水に微結晶セルロース製剤を分散し、ホモゲナイザー(25MPa)処理する。これを撹拌しながら、予め混合しておいたタマリンドシードガム、砂糖、食塩、からし粉、グルタミン酸ナトリウム、ネオテームを加える。さらに、酵母エキス、タンパク加水分解物、ゴマペースト、菜種油を加えて5分撹拌した後、すりゴマ、うすくち醤油、酢を加えて均一になるまで撹拌する。これを90℃まで加温した後、容器に充填する。
【0023】
参考例1〜3:
下記表1に掲げる処方の通り、実施例1と同様にして調製した。
【0024】
【表1】

【0025】
得られた調味料を10℃の冷蔵庫に静置した。目視観察の結果、実施例1は28日後でも層分離もなく良好な安定性を示した。参考例1および2では7日後には容器下部に層分離が認められた。また、参考例3では1日後には調味料がゲル化した。尚、得られた調味料のpHは全て4.2であった。
【0026】
またネオテーム[商品名「ミラスィー(登録商標)200」;ネオテーム含有量2%]を加えることで、酸味が抑えられ、まろやかな風味の調味料を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、長期間に渡ってゴマを含有する調味料の層分離およびゲル化を抑制することができる。それに伴い、ゴマを含有する調味料の商品価値の損失を軽減できる。また、本発明により、簡便な方法で長期保存可能なゴマを含有する調味料を提供できるため、製造コストを軽減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴマ成分、ガラクトキシログルカンおよびセルロースを含有する調味料。
【請求項2】
ゴマ成分を、調味料全量に対して、0.1重量%〜60重量%含有する、請求項1記載の調味料。
【請求項3】
ガラクトキシログルカンが、タマリンド種子由来である、請求項1または請求項2に記載の調味料。
【請求項4】
ガラクトキシログルカンを、調味料全量に対して、0.01重量%〜20重量%含有する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の調味料。
【請求項5】
セルロースが、微結晶セルロース製剤である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の調味料。
【請求項6】
セルロースを、調味料全量に対して、0.01重量%〜4重量%含有する、請求項5に記載の調味料。
【請求項7】
更に、高甘味度甘味料を含有する、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の調味料。
【請求項8】
高甘味度甘味料がネオテームである、請求項7に記載の調味料。
【請求項9】
ネオテームを、調味料全量に対して、0.00001重量%〜0.01重量%含有する、請求項8に記載の調味料。
【請求項10】
調味料が、ソース、タレ、またはドレッシングである、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の調味料。
【請求項11】
層分離のない請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の調味料。


【公開番号】特開2010−158208(P2010−158208A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3014(P2009−3014)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】