説明

ゴムクローラ及び車両

【課題】耐久性に優れたゴムクローラを提供する。
【解決手段】外周面にラグ2を有すると共に、内周面には駆動力を伝達するための駆動係合部を有し、当該駆動係合部にスプロケット100を係合させることにより駆動力を伝達されるゴムクローラ1であって、前記駆動係合部が、前記ゴムクローラ1の周方向に一定のピッチをもって埋設した硬質の係合部材5と、前記係合部材5の間毎に配置してあり前記スプロケットの歯部を受け入れる凹部3とを含んでいる。かかるゴムクローラによると、硬質の係合部材の間毎に配置した凹部にスプロケットの歯部が係合するので、内周面上に突出している駆動突部に歯部を当接させていた従来の場合と比較して、駆動係合部への損傷等の発生を抑制できる。また、凹部の形状を適宜に変更して歯部に対する係合面積を拡大して面圧低減を図ることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行部に採用されるゴムクローラ及びスプロケットに関し、より詳細には駆動係合部の耐久性を向上させたゴムクローラ、及びこれに適用されるスプロケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
路面の保護、騒音の抑制、更には環境保護などの観点から、近年、建設機械、農業機械などの車輌の走行部にゴムクローラが広く用いられるようになっている。このようなゴムクローラとしては、例えば特許文献1に開示されたものがよく知られている。
これは、ゴムクローラの内周面に、一定のピッチで、ゴム塊からなる駆動突部を形成したものであり、駆動突部は内周面上に山状に盛り上げた突起状の物体であって、この駆動突部に、駆動軸に取付けたスプロケットの歯を係合させることによってゴムクローラに駆動力を伝達するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示するゴムクローラは、その内周面側に突出するように設けた駆動突部にスプロケットの歯部(係合歯)を係合させて駆動力を伝達して回転させる構造であって、このゴムクローラでは、スプロケットの歯部を駆動突起の中腹に当接させることで、駆動突起に、それを倒すような力が繰り返し作用することになるため、駆動突部の基部などの特定箇所に応力が集中することになって、ゴムクローラが、駆動突部の周辺で破損あるいは損傷し易いという問題があった。
【0005】
よって、本発明の主な目的は、駆動係合部の耐久性に優れたゴムクローラを提供することにあり、また他の目的は、このゴムクローラに適したスプロケットを合わせて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、外周面にラグ部を有すると共に、内周面には駆動力を伝達するための駆動係合部を有し、当該駆動係合部にスプロケットを係合させることにより駆動力を伝達されるゴムクローラであって、前記駆動係合部が、前記ゴムクローラの周方向に一定のピッチをもって埋設した硬質の係合部材と、係合部材の間毎に配置されて、スプロケットの歯部を受け入れる凹部とを含んでなるゴムクローラによって達成することができる。
【0007】
そして、前記係合部材には、クローラの内周面側に突出する一対の角部を、前記スプロケットの転動スペースを隔てて形成してなる構造を採用することが好ましい。
そして、この係合部材は、ゴムクローラ内に所定のピッチで埋設した芯金とすることが好ましい。
【0008】
また、前記係合部材と前記凹部との間のクローラ内周面は、標準的な内周面より隆起させて設けた隆起表面とすることが望ましい。
ここで、「標準的な内周面」とは、芯金の羽根根元部のゴムクローラ内周面側を通る平面を指す。
【0009】
また、前記係合部材と各隆起表面との間には、前記ゴムクローラの幅方向に延びる溝部を形成することが望ましい。
ところでこの場合は、ゴムクローラの幅方向に延びる溝部を、隆起表面の全幅にわたって形成することの他、隆起表面の、幅方向の両側部分に対応させて形成すること、その隆起表面の、幅方向の中央部分に対応させて形成することが好ましい。
【0010】
そしてさらに、上記目的は、上述したいずれかのゴムクローラに適用されるスプロケットであって、円形基部部分と、この円形基部部分の周方向に所定の間隔をおいてその周縁部に配備される複数の歯部とを含み、それらの歯部を、円形基部部分の周縁より径方向外方へ突出させてなるスプロケットによっても達成することができる。
また、上記目的は、上述したいずれかのゴムクローラに適用されるスプロケットであって、円形基部部分と、この円形基部部分の周縁部に配備される複数の歯部とを含み、それらの歯部を、円形基部部分に対し、クローラ幅方向の両側へ突出させてなるスプロケットによっても達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴムクローラによると、硬質の係合部材の間毎に配置した凹部にスプロケットの歯部が係合するので、内周面上に突出している駆動突部の中腹に歯部を係合させていた従来の場合と比較して、力点の位置が低くなり、これがため、駆動係合部への損傷等の発生を抑制することができる。
【0012】
また、このゴムクローラは一定ピッチで凹部を配備した構造となるので、クローラがスプロケットやアイドラを通過するときに屈曲しても歪の発生を抑制できる。そしてここでは、凹部の形状を適宜に変更して歯部に対する係合面積を拡大して面圧の低減を図ることもできる。
よって、本発明にかかるゴムクローラは損傷等の発生を抑制して、耐久性を向上させることができる。
【0013】
しかもここでは、スプロケットによるゴムクローラの駆動に当って、そのスプロケットの歯部を、十分なゴム厚みをもつ凹部壁面を介して、係合部材に間接的に係合させることにより、スプロケットの駆動力を、凹部の緩衝下で、硬質の係合部材によって十分に支持することができるので、ゴムクローラの繰返しの駆動に当ってなお、スプロケットとの係合部となる係合部材への局部的な応力集中等なしに、その係合部材にすぐれた耐久性を発揮させることができる。
【0014】
その上ここでは、凹部におけるゴム厚みを十分厚くすることで、スプロケットによるゴムクローラの駆動に当っての、硬質係合部材の露出、ひいては、スプロケットの歯部と係合部材との衝接を防止して、それらの直接的な衝接に起因する衝突騒音の発生を防止することができる。
【0015】
前記ゴムクローラの前記係合部材が角部を有し、この角部がスプロケットを間で受け入れるように間隔をもって配置した一対であると、スプロケットを角部間でガイドしつつ歯部を前記内周面に設けた凹部に円滑に係合させることができる。
【0016】
また、前記係合部材と前記凹部との間の内周面を隆起させると、凹部壁面とスプロケットとの接触面積を増加できるので面圧を軽減して更に耐久性の向上を図ることができる。
【0017】
更に、前記係合部材と隆起表面との間に、クローラの幅方向に延びる溝部を形成すると、ゴムクローラの屈曲時に発生する歪を軽減でき、また製造時における係合部材の位置決め精度の向上に役立てることもできる。
そしてこのことは、溝部を、隆起表面の全幅にわたって連続させて形成した場合にとくに効果的である。
【0018】
ところで、この場合にあって、溝部を、各隆起表面の、幅方向の両側部分に対応させて形成したときは、ゴムクローラの製造時の、加硫金型、たとえばそれの下型に対する係合部材の位置決めを、係合部材のいずれの方向の変位に対しても、より安定に、より確実に行うことができ、また、溝部を、隆起表面の、幅方向の中央部分に対応させて形成したときは、製品ゴムクローラでゴムのとくに剥がれ易い、角部の突出基部部分に十分なゴム厚みを確保して、それの不測の剥離を有効に防止することができる。
【0019】
歯部が円形基部部分の周縁より径方向外方へ突出しているスプロケット、および、円形基部部分の周縁部に配備した歯部が、円形基部部分に対し、クローラ幅方向の両側へ突出しているスプロケットを、前述したゴムクローラに適用すると、前述の凹部に歯部が確実に係合するので円滑な駆動を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るゴムクローラの一部を示した斜視図である。
【図2】ゴムクローラとスプロケットとの係合部分を拡大して示した図である。
【図3】ゴムクローラの内周面側の展開平面図である。
【図4】溝部の他の形成側を示す要部拡大展開平面図である。
【図5】ゴムクローラと係合可能な歯部を有するスプロケット例をまとめて示した図である。
【図6】ゴムクローラの凹部とスプロケットの歯部との関係を説明するために示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態を、図を参照して詳細に説明する。図1は一実施形態に係るゴムクローラの一部を示した斜視図である。この図1には、ゴムクローラに駆動力を伝達するスプロケットも合わせて図示してある。
【0022】
図1のゴムクローラ1はいわゆる内周駆動型のゴムクローラであり、外周面側に路面に作用するラグ2を有し、内周面側にはゴムクローラそれ自身に駆動力を伝達するための駆動係合部が形成してある。
この駆動係合部は、ゴムクローラ1の周方向に一定のピッチをもって埋設した後述の硬質の係合部材と、この係合部材の間毎に配置した凹部3とを含んでいる。
なお、説明の便宜上、ゴムクローラ1の回転方向を周方向CD、これと直角な方向を幅方向RDと称して説明に用いる。
【0023】
ゴムクローラ1には、硬質の係合部材となる複数の芯金5がこのゴムクローラの幅方向RDへの延在姿勢で、周方向CDに間隔をおいて所定ピッチで埋設されている。
芯金5の構造については後に詳述するが、図示のように中央部分の内周面側に一対の角部5a、5aが形成されている。すなわち、一対で二股状に形成した角部5a,5aがゴムクローラ1の内周面から内側に向けて突出しており、これがゴムクローラと同じゴム材で覆われて突起部4となっている。
【0024】
そして、芯金5の外側に配置してある層はスチールコード6を含み、それぞれの芯金5を取り囲むように周方向CDへエンドレスに延在する補強層である。
スチールコード6はゴムクローラ1内に埋設される抗張部材で、ゴムクローラ1の、周方向CDへの伸びを規制しつつ、スプロケット100から受ける駆動力に基づいてゴムクローラ1がスムーズに回転するように補助する。
【0025】
また、ゴムクローラ1の内周面には、スプロケット100の歯部101を受け入れる複数の凹部3が形成してある。この凹部3は、前述したような標準的な内周面に対し、ゴムクローラ1の内周面を接地面側(外側)にへこませた形状であり、スプロケット100の歯部101の入り込みを許容するように形成されている。
【0026】
上記凹部3は、底面が存在している窪み状に形成してもよいし、底面を有しない貫通孔状とすることも可能である。
凹部3を貫通孔とした場合には泥土や砂利などの排出性を高めた構造とすることができる。また、スプロケット100の歯部101が係合する(当接する)凹部3の壁面形状を変更することで、歯部101との接触面積を適宜に調整できる。この接触面積を増加させるように凹部3の壁面を設計すれば、歯部101との面圧を低減させることができる。
【0027】
なお、符号102で示しているのは転輪である。
転輪102は、荷重を支持しつつゴムクローラ1をガイドして安定駆動するために配備される荷重支持輪で、駆動輪となるスプロケット100と従動輪となるアイドラ(図示せず)との間に必要に応じて配される。
【0028】
図2は、ゴムクローラ1とスプロケット100との係合部分を拡大して示した部分断面図である。また、図3はゴムクローラ1の内周面側の展開平面図である。これらの図を参照してゴムクローラ1の構造を更に詳細に説明する。
【0029】
前記芯金5の基部はその平面形状が大略で長方形であって、その長手方向を幅方向RDに延在させてゴムクローラ1内に埋設されている。そして、芯金5の中央部分には前述した一対の角部5a、5aが相互の離隔状態で形成されている。
この芯金5の角部5aは、幅方向RDの寸法よりも周方向CDの寸法の方が大きい、周方向に長尺の形状をなし、一対の角部5a、5a間でスプロケット100や前述した転輪102を円滑にガイドできるように構成してある。
【0030】
上記一対の角部5a、5aの間隔は、スプロケット100がスムーズに回転できる間隔を確保するようにして設定されている。ただし、金属などの硬質材で形成されている芯金5の角部5aはゴムクローラと同じゴム素材で覆われ、外観においてはゴム状の突起部4となる。よって、2つの突起部4の間をスプロケット100がガイドされながら回転する形態となる。
したがって、上記一対の角部5a相互の間隔は被覆するゴムの厚みを見込んだ分だけ大きく設定してある。
【0031】
さて、ゴムクローラ1は、図2で明示されているように、スプロケット100の歯部101と係合する駆動係合部が、硬質の係合部材となる芯金5とその間毎に配置した凹部3とを含んで構成されている。
より詳細には、芯金5が周方向CDにおいて等ピッチに配設されて、その間毎(ごと)に凹部3がスプロケットの歯部を受け入れるように、これも等ピッチで点線状に配置されている。この凹部3は、ゴムクローラ1の標準的な内周面10を窪ませたように形成されている。
そして、凹部3は幅方向RDにおける中央位置で周方向CDへ等ピッチとして配置されている。
【0032】
上記の構造ではスプロケット100からゴムクローラ1へ伝達される駆動力は、スプロケット100の歯部101が、内周面に設けた凹部3に進入して、凹部3の壁面に係合(当接)したときに伝達される。
すなわち、ゴムクローラ1の内周面に一定ピッチで配置してあるそれぞれの凹部3に、回転するスプロケット100の歯部101が順に進入する動作を繰り返すことで凹部3の壁面を順に押圧してゴムクローラ1を回転させる。
【0033】
ここで説明した図2の構造は、前述したように一定のピッチをもって埋設されている芯金5の間毎に、凹部3が配置されている。換言すると、この構造は周方向CDで凹部3の前後に芯金5が位置しているので、凹部3はその前後を位置決めされている。そして、凹部3の背部が硬質の芯金5で支持されているような強固な構造となる。したがって、スプロケット100の歯部101を、凹部3の変形下で、間接的に芯金5に係合させて駆動力を確実に伝達できる。
【0034】
ところで、従来のゴムクローラにあっては、相対的に高い位置にある駆動突部の中腹にスプロケットの歯部を当接していたので、その駆動突部が損傷し易く耐久性が劣るものとなっていた。
これに対して、実施形態に係る前述のゴムクローラ1では標準的な内周面10の位置から外周面側へ窪ませるように形成した凹部3に、スプロケット100の歯部101を係合させるので、歯部の係合による、駆動係合部の損傷の問題を確実に抑制できる。
よって、実施形態に係るゴムクローラ1は耐久性を向上させたゴムクローラとして提供できる。
また、このように標準的な内周面10より外周面側へ窪ませた凹部3を設けると、スプロケット100の歯部101が係合する係合位置(駆動伝達点)が下がることによりスチールコード6からこの係合位置までの距離が短くなるので、駆動力の伝達効率の良いゴムクローラとすることができる。
【0035】
上述した実施形態のゴムクローラ1は、前述した構成に加えて、具備しておくのが好ましい他の構造も備えて形成してある。
以下、この点について説明する。
再度、図2及び図3を参照すると、周方向CDで芯金5の前後に、ゴム材を盛り上げてなる隆起表面20を形成してある。左右の突起部4間での内周面が低くなると、スプロケット100との接触面積が減少して面圧が上昇してしまう。そこで、芯金5の中央部前後に他の標準的な内周面10よりもゴムを肉盛りして隆起させた隆起表面20を設けておくのが望ましい。
【0036】
このように左右一対の角部5aの間に隆起表面20を設けることで、スプロケット100の歯部101とゴムクローラの内周面との接触面積を増加させることができる。例えば、転輪102の転動面より下部で左右の突起部4の基部が連なる程度にゴムを肉盛りして、上記隆起表面20を形成することができる。
これにより歯部101によって作用される面圧を低下させることができる。
【0037】
そして、このように芯金5の前後に隆起表面20を設けることにより、芯金5の中央部分とアイドラ(図示せず)等との接触も確実に予防できるようにできる。長時間のゴムクローラの使用で芯金5の中央部のゴム被膜が薄くなると、意図しないアイドラとの接触で騒音が発生するという場合がある。芯金5の前後に、ゴム厚みの厚い、隆起部になる隆起表面20を設けることにより、騒音発生も合わせて予防できる。
【0038】
更に、前記隆起表面20を設けた構造と関連して、図2に示すように、芯金5と隆起表面20との間に、幅方向RDに平行に延びる溝部25を設けた構造を採用するのがより好ましい。
ゴムクローラ1が連続的に回転しているとき、定期的にスプロケットとアイドラに巻き掛けられる。このときに芯金5に内接する部分には大きな圧縮力が作用してゴムに歪が発生し易い。よって、これを原因として、ゴムクローラ1の内周面が損傷して耐久性が低下する場合がある。
【0039】
これに対して、図2で示すように芯金5と上記隆起表面20との間に空間を確保するように溝部25を設けることで、ゴムクローラの内周面の一部に歪が集中するの緩和して損傷を予防できる。
すなわち、更に芯金5に沿って溝部25を設けることで耐久性を一層向上させることができる。
なお、ゴムクローラ1の製造時にあっては金型内で芯金5を精度良く位置決めしながらゴム材内に埋設する(組込む)のが好ましい。そのためには、芯金5の両側を支持部材で支持して位置決めする。このようにして使用した支持部材を加硫後に取除くと、芯金5の両側に凹部が形成されるので、この凹部空間を利用して溝部とすればよいので、上述した溝部25を備える構造は簡単に実現できる。
これらのことは、溝部25を、図示のように、隆起表面の全幅にわたって連続させて形成した場合にとくに効果的である。
【0040】
この一方で、上述のような溝部25は、図4(a)に要部拡大展開平面図で例示するように、隆起表面20の幅方向の、両側部部分だけに対応させて形成することができる他、図4(b)に例示するように、隆起表面20の幅方向の、中央部分に対応させて形成することもでき、前者の場合は、加硫金型、なかでも下型内で、芯金5を所定の位置に位置決め支持するに当り、その芯金5を、溝部25の形成個所と対応する四個所で十分安定に支持することができるので、芯金5の、加硫金型内での不測の位置ずれ等を防止して、所定の位置に正確に位置決めすることができる。
また、図4(b)に示す後者によれば、製品クローラで、ゴムのとくに剥れ易い、角部5aの突出基部部分に、十分なゴム厚みを確保して、その基部部分でのゴムの剥離のおそれを有効に取り除くことができる。
【0041】
以上の説明では、耐久性の向上等を図ったゴムクローラ1について説明したが、以下ではこのゴムクローラ1に適用可能なスプロケットの構造例について説明する。
スプロケットは、ゴムクローラ1の内周面に形成した凹部3内に進入可能な歯部を備える構造であることが求められる。よって、図1、図2で示すように、歯部がスプロケットの本体となる円形基部部分より径方向外方へ突出する構造とすればよい。
歯部の形状については特に限定するものではなく、凹部3に進入したときに接触面積を広く確保して面圧を低減できるものが望ましい。
【0042】
図5は、前述したゴムクローラ1と係合可能な歯部を有するスプロケット例をまとめて示した図である。なお、図1、2に示しているスプロケット100は、本体の円形基部部分から歯部101を径方向外方に突出させた形状となっており、これは一般的な歯車形状である。そして、円形基部部分と歯部とがほぼ同じ厚みで形成されている。
図5で例示しているスプロケットは本体の円形基部部分を薄く形成してある。そして、円形基部部分の厚み方向(ゴムクローラの幅方向RD)へ歯部の部分だけを両側へ広げた(幅方向の両側へ突出する)構造としてゴムクローラ1の凹部3内での接触面積の増加を図っている。
このスプロケットは、本体となる円形基部部分を薄くして軽量化が図られており、また、歯部の幅を凹部3の内法に対応する寸法に拡大することで、面圧の低減とガイド機能の向上とを図っている。
【0043】
ところで、図5は、スプロケット本体の円形基部部分について限定するものではない。図1に示すように、円形基部部分は一定の厚みのある1枚の丸い板状部材としてもよいし、薄めの円盤材を2枚準備してこれを対向配置してその間に歯部を配置した構造としてもよい。
後者の構造は、カゴ型と称されるスプロケットの構造であり、2枚の薄い円盤材の周縁部に沿って所定ピッチで歯部が配設される。そして、歯部を円盤材より半径方向外方へ突出するように設定しておけばよい。
【0044】
なお、図1から図3に基づく説明では、スプロケット100の歯部101がゴムクローラ1の内周面に形成した凹部3だけに係合するように説明している。
このように、スプロケット100の歯部101が凹部3だけに係合する場合には、内周面に立設してある一対の突起部4はスプロケット100や転輪102のガイドとして機能することになる。
ただし、本願に係る発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、図5に示したスプロケット100の歯部101の一部が突起部4に係合するように構成してもよい。すなわち、図6に示すように、歯部101が凹部3内に進入したときに、その上側の一部が突起部4の基部(突出している部分の根元付近)4BSに係合する形態を採用してもよい。このような形態を採用すると、形成する凹部3を浅めに形成することができるので、ゴムクローラ1の内周面の加工を容易化できる。なお、この場合、歯部101は突起部4の基部に係合し、突起部4を倒すような力が作用しないので前述した従来の問題は殆ど生じない。
【0045】
以上で説明したゴムクローラ1は、一定のピッチをもって埋設した芯金5の間に形成されて、芯金5でバックアップされる凹部3にスプロケット100の歯部101を係合させて駆動力を伝達するので、芯金5および凹部3が、スプロケット100の歯部101から受ける力で変形したり破損等することがない。よって、耐久性を向上させたゴムクローラを提供できる。
また、駆動力伝達点の位置をスチールコードに近付けることができるので駆動力の伝達効率を向上させることもできる。そして、基体となる円形基部部分の外縁より外側に突出する歯部を有するスプロケットを合わせて採用することで、上記ゴムクローラを確実に駆動させることができる。
【0046】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述したような特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では硬質の係合部材として金属製の芯金5を採用する場合を例示したがこれに限らず、ゴムクローラを形成するゴム素材より硬い材料、例えば硬質プラスチックなどを係合部材として採用してもよい。また、前述した実施形態では芯金5がゴムクローラの内周面に形成される突起部のベースとなる角部を備えていたが、このような角部を有さない芯金或いは硬質プラスチックを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上の説明から明らかなように、この発明によれば耐久性を向上させたゴムクローラを提供できる。また、このゴムクローラに適したスプロケットを合わせて提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ゴムクローラ
2 ラグ
3 凹部
4 突起部
5 芯金
5a 角部
6 スチールコード
10 標準的な内周面
20 隆起表面
25 溝部
100 スプロケット
101 歯部
CD ゴムクローラの周方向
RD ゴムクローラの幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にラグ部を有すると共に、内周面には駆動力を伝達するための駆動係合部を有し、当該駆動係合部にスプロケットを係合させることにより駆動力を伝達されるゴムクローラであって、
前記駆動係合部が、前記ゴムクローラの周方向に一定のピッチをもって埋設した硬質の係合部材と、前記係合部材の間毎に配置されて、前記スプロケットの歯部を受け入れる凹部とを含んでなるゴムクローラ。
【請求項2】
係合部材に、ゴムクローラの内周面側に突出する一対の角部を、前記スプロケットの転動スペースを隔てて形成してなる請求項1に記載のゴムクローラ。
【請求項3】
係合部材を、ゴムクローラ内に所定のピッチで埋設した芯金としてなる請求項1もしくは2に記載のゴムクローラ。
【請求項4】
係合部材と前記凹部との間のクローラ内周面を、標準的な内周面より隆起させて設けた隆起表面としてなる請求項1〜3のいずれかに記載のゴムクローラ。
【請求項5】
係合部材と各隆起表面との間には、前記ゴムクローラの幅方向に延びる溝部を形成してなる請求項4に記載のゴムクローラ。
【請求項6】
ゴムクローラの幅方向に延びる溝部を、隆起表面の全幅にわたって連続させて形成してなる請求項5に記載のゴムクローラ。
【請求項7】
前記溝部を、隆起表面の、幅方向の両側部分に対応させて形成してなる請求項5に記載のゴムクローラ。
【請求項8】
前記溝部を、隆起表面の、幅方向の中央部分に対応させて形成してなる請求項5に記載のゴムクローラ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のゴムクローラに適用されるスプロケットであって、
前記スプロケットは、円形基部部分と、この円形基部部分の周縁部に配備される複数の歯部とを含み、それらの歯部を、円形基部部分の周縁より径方向外方へ突出させてなるスプロケット。
【請求項10】
請求項1〜8からのいずれかに記載のゴムクローラに適用されるスプロケットであって、
前記スプロケットは、円形基部部分と、この円形基部部分の周縁部に配備される複数の歯部とを含み、歯部を、円形基部部分に対し、クローラ幅方向の両側へ突出させてなるスプロケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100104(P2013−100104A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19730(P2013−19730)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2008−164274(P2008−164274)の分割
【原出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)