説明

ゴムブレードの製造装置およびゴムブレードの製造方法

【課題】クランプ部材の破損を防ぎ、ブレード部から余剰部を容易かつ確実に除去する。
【解決手段】成形金型に金属板を配置し、この成形金型にゴム材料を充填して成形されたゴムブレード成型体のブレード部から余剰部8を切断した後に、ブレード部に付着している余剰部8をブレード部から引き離す分離機構部10を備える。そして、分離機構部10は、余剰部8を把持するクランプ部材11aを有する把持機構11と、ブレード部から余剰部8を離間させる方向にクランプ部材11aを移動させる移動機構12と、クランプ部材11aを回転させる回転機構13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機等の電子写真画像形成装置において、電子写真感光体上のトナーを除去するためのゴムブレードの製造装置およびゴムブレードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置では、電子写真感光体上に付着したトナーを除去するために、電子写真用のゴムブレードが用いられている。この種の電子写真用のゴムブレードは、ゴム材料からなる長尺状のブレード部と、このブレード部を支持する金属板とを有して構成されている。
【0003】
そして、従来のゴムブレードの製造方法では、ゴムブレードの成形金型内に金属板を配置し、この成形金型のキャビティー内にゴム材料を注入、硬化することで、金属板とゴム材料とを一体に成形する。成形後に成形金型から離型されたゴムブレード成型品には、製品として用いられるブレード部の長手方向の端部に沿って、余剰部が形成されてしまう。このため、カッター等の刃先で、ブレード部から余剰部を切断して余剰部を除去する必要がある。
【0004】
しかしながら、カッター等の刃先でブレード部から余剰部を切断した後であっても、ブレード部と余剰部との切断面が互いにゴム材による密着力で付着したままになる。そのため、ブレード部から余剰部を切断した後に、ブレード部に密着力で付着している余剰部をブレード部から引き離すことで、製品としてのゴムブレードが製造されている。
【0005】
従来、ゴムブレードの製造工程では、クランプ機構のクランプ部材によって余剰部を把持し、ブレード部の長手方向に直交する方向にクランプ部材を移動させる移動機構によって、ブレード部から余剰部を引き離している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ゴムブレードの製造工程において、ゴムブレードは、ブレード部と余剰部との切断後であっても、ブレード部と余剰部との切断面の密着性が比較的高く、密着力が大きいので、ブレード部からの余剰部の引き剥がしが不安定であった。したがって、従来の分離方法では、余剰部を把持するクランプ部材の形状、クランプ部材による把持力、移動機構の移動力等によって、クランプ部材の破損や、引き離し動作中にクランプ部材から余剰部が外れてしまう等の引き離し動作ミス等が多く発生していた。
【0007】
そこで、本発明は、クランプ部材の破損を防ぎ、より一層容易かつ確実にブレード部から余剰部を引き離して分離することができるゴムブレードの製造装置およびゴムブレードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明に係るブレードの製造装置は、電子写真感光体上のトナーを除去するためのゴムブレードの製造装置であって、成形金型に金属板を配置し、この成形金型にゴム材料を充填して成形されたゴムブレード成型体のブレード部から余剰部を切断した後に、ブレード部に付着している余剰部をブレード部から引き離す分離手段を備える。そして、分離手段は、余剰部を把持するクランプ部材を有する把持機構と、ブレード部から余剰部を離間させる方向にクランプ部材を移動させる移動機構と、クランプ部材を回転させる回転機構とを有する。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明によれば、切断後の余剰部をブレード部から引き離す際に、ゴムブレード成型体の余剰部をブレード部から容易かつ確実に引き離すことができる。したがって、本発明によれば、クランプ部材の破損や、ブレード部からの余剰部の引き離しミスが発生するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態のゴムブレードの製造装置は、電子写真画像形成装置で電子写真感光体上のトナーを除去するために用いられるゴムブレードの製造装置である。図1に示すように、この製造装置で用いられるゴムブレード成型体5は、ゴム材料からなる長尺状のブレード部6と、このブレード部6を一端に支持する断面略L字状の金属板7と、ブレード部6に連続して形成されたゴム材料からなる余剰部8とを有している。
【0012】
余剰部8は、ブレード部6の長手方向の一端に沿って連続して長尺状に形成されている。このゴムブレード成型体5は、ブレード部6の一端から余剰部8を切断して除去することで、製品としてのゴムブレードに製造される。また、ゴムブレード成型体5は、成形金型(不図示)に金属板7を配置し、この成形金型にゴム材料を充填して硬化させることで成形される。
【0013】
本実施形態のゴムブレードの製造装置は、成形されたゴムブレード成型体5のブレード部6から余剰部8を切断した後に用いられる。図2(a)および図2(b)に示すように、本実施形態のゴムブレードの製造装置は、ブレード部6に密着力で付着している余剰部8をブレード部6から引き離す分離手段としての分離機構部10を備えている。
【0014】
分離機構部10は、余剰部8を把持する一組のクランプ部材11aを有する把持機構11を有している。また、分離機構部10は、ブレード部6から余剰部8を離間させる方向に把持機構11のクランプ部材11aを移動させる移動機構12と、把持機構11のクランプ部材11aを回転させる回転機構13とを有している。
【0015】
把持機構11は、余剰部8の長手方向の両端側にそれぞれ配置された一組のクランプ部材11aと、これらクランプ部材11aを支持する支持アーム11bと、クランプ部材11aを駆動する駆動系とを有している。各クランプ部材11aは、図示しないが、一組の凹部材と凸部材とを上下で組み合わせるように構成されている。
【0016】
移動機構12は、把持機構および回転機構を支持する支持台12aと、この支持台12aをブレード部6と余剰部8との切断面に直交する矢印A方向に移動可能に支持するスライドレール12bと、支持台12aを駆動する駆動モータ(不図示)とを有している。
【0017】
回転機構13は、ブレード部6と余剰部8との切断面の長手方向の中央を通る軸線回りに、切断面に平行な平面上で矢印B方向に把持機構11の各クランプ部材11aを回転させる。
【0018】
以上のように構成されたゴムブレードの製造装置について、ブレード部6から余剰部8を引き離して分離する動作を、詳細に説明する。
【0019】
ゴムブレード成型体5のブレード部6から余剰部8を切断した後、この余剰部8をブレード部6から引き離すために、把持機構11のクランプ部材11aによって、ブレード部6の長手方向に対応する余剰部8の長手方向の両端側の少なくとも2箇所が把持される。余剰部8は、例えば、長手方向の両端から0〜50mm程度の位置を一組のクランプ部材11aによって、5N〜150N程度の把持力でそれぞれ把持される。
【0020】
余剰部8の長手方向の両端側をそれぞれ把持する理由は、ブレード部6の長手方向の端部の方が、中央部に比べて、ゴム材からなる余剰部8の端面を把持することによって、ブレード部6と余剰部8とが引き剥がれ易いためである。すなわち、ブレード部6の長手方向の端面側から引き離す方が、中央部側から引き離すのに比べて、切断後のゴム材による密着力を壊しやすい。
【0021】
なお、ゴムブレードの製造装置は、ブレード部6に対して余剰部8を相対的に回転させる回転機構13を備えているので、クランプ部材によって余剰部8の少なくとも一箇所が把持されればよい。分離機構部10による余剰部8の引き剥がし動作は、既に切断加工された部位である余剰部8を、ゴム材による密着性に抗して引き離す動作であるので、基本的に大きな力を付与する必要はない。したがって、余剰部8の少なくとも1箇所をクランプ部材11aによって把持し、クランプ部材11aで把持された箇所を回転させながらブレード部6から引き離す方向の力を加えられれば、十分であることは言うまでも無い。
【0022】
クランプ部材11aによる把持力が5Nよりも小さい場合には、回転機構13を動作させたとき、あるいは移動機構12を動作させたときに、クランプ部材11aが余剰部8から外れてしまう可能性が高くなるので好ましくない。また、150Nを超える把持力で把持する場合には、クランプ部材11aによって把持された余剰部8の箇所が潰れて千切れてしまうおそれがあるので、クランプ部材11aで把持する余剰部8の厚みやゴム材の物性にもよるが、本発明では推奨しない。
【0023】
また、ゴムブレード成型体5のブレード部6から余剰部8を引き離す際に、余剰部8の長手方向の両端側が把持され、回転機構13によって、ブレード部6と余剰部8との切断面にせん断力が付与される。このせん断力によって、ゴム材による密着力を容易に壊すことができる。
【0024】
また、移動機構13によってブレード部6の長手方向の両端側から余剰部8の長手方向の両端側を5mm以上離間させた位置で、余剰部8の両端側をそれぞれ把持している一組のクランプ部材11aを回転させる。この回転動作によって、ブレード部6の両端側と余剰部8の両端側との間に隙間が容易に生じるので、機械的な移動機構13や回転機構12の接触等によるキズ、毛羽(ケバ)などの不良がブレード部6に発生しにくい。
【0025】
本実施形態によれば、移動機構12および回転機構13によって、ブレード部6に対して余剰部8を離間させるとともに回転させることで、ブレード部6と余剰部8との切断面の密着力に抗して、ブレード部6から余剰部8を容易かつ確実に引き離すことができる。
【0026】
なお、本実施形態では、分離機構部10が、ブレード部6に対して余剰部8側が移動および回転される構成にされたが、ブレード部6と余剰部8とが相対的に移動される構成であれば、余剰部8に対してブレード部6側が移動および回転される構成であってもよい。また、分離機構部10は、例えば、ブレード部6に対して余剰部8が離間される方向に移動されるとともに、余剰部8に対してブレード部6側が回転される構成が採られてもよい。
【実施例】
【0027】
上述した実施形態のゴムブレードの製造装置を、電子写真用のゴムブレードの製造方法に適用した実施例について、図面を参照して説明する。
【0028】
本実施例では、一組の上型および下型を組み合わせて構成される成形金型を用いた。成形されたゴムブレード成型体5のブレード部6から余剰部8をカッター等の刃先で切断した後、ゴムブレード成型体5の金属板7をブレードベース21上に載置して板金把持部22によって固定した。ゴムブレード成型体5の余剰部8を把持機構11によって60Nで把持した。
【0029】
クランプ部材11aによってゴムブレード成型体5の余剰部8を把持した後に、余剰部8を把持した状態のままで、移動機構12によってクランプ部材11aを矢印A方向に10mm程度移動させる。これによって、ブレード部6の両端から余剰部8の両端を引き離しやすくし、その後、回転機構13によって、クランプ部材11a全体を矢印B方向に90度回転させる。この回転動作によって、互いに密着するブレード部6と余剰部8との切断面にせん断力が作用し、ブレード部6から余剰部8が容易に引き離された。
【0030】
本実施例と比較例とを比較する。図3(a)および図3(b)に示すように、比較例の製造装置は、ゴムブレード成型体5の余剰部8を把持するクランプ部材111aを有する把持機構111と、クランプ部材111aを矢印A方向に移動させる移動機構112とを備えている。
【0031】
ゴムブレード成型体5は、金属板7がブレードベース121上に載置されて板金把持部122によって固定されている。
【0032】
比較例の製造装置では、ゴムブレード成型体5の余剰部8を把持機構111によって把持力60Nで把持した。そして、比較例では、ブレード部6からの余剰部8の引き離し動作を、移動機構112のみによって余剰部8を矢印A方向に150mm程度移動させることによって、余剰部8がブレード部6から引き離されている。
【0033】
しかしながら、上述したように、ゴムブレード成型体5は、ブレード部6から余剰部8が切断された状態であっても、ブレード部6と余剰部8との切断面の密着性が比較的高い。このため、図4(a),図4(b)および図5(a),図5(b)に示すように、余剰部8の引き離し動作中に、余剰部8の切断面における長手方向の中央部は、ブレード部6の切断面に引っ張られる状態になる。そのため、余剰部8を把持するクランプ部材111aの先端が破損したり、余剰部8をブレード部6から完全に引き離すことができなかったりする問題が発生している。
【0034】
なお、比較例では、一例として、矢印A方向に移動させる力を加えた事例を挙げたが、切断面から引き離す方向の移動の力であれば他の力でも同様である。
【0035】
同様に、クランプ部材で余剰部8を把持して回転機構による回転動作を加えるだけの場合にも、ブレード部6からの余剰部8の引き離しが十分ではなく、ブレード部6側にちぎれた破片が付着したままの場合があり、良好に引き離すことが困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態のゴムブレードの製造装置で用いられるゴムブレード成型体を示す側面図である。
【図2】本実施形態のゴムブレードの製造装置を示す図である。
【図3】比較例のゴムブレードの製造装置を示す図である。
【図4】比較例のブレードの製造装置において余剰部がブレード部から引き剥がされる状態を示す図である。
【図5】他の比較例のブレードの製造装置において余剰部がブレード部から引き剥がされる状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ゴムブレード成型体
6 ブレード部
7 金属板
8 余剰部
10 分離機構部
11 把持機構
11a クランプ部材
12 移動機構
13 回転機構
A 移動方向
B 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体上のトナーを除去するためのゴムブレードの製造装置であって、
成形金型に金属板を配置し、該成形金型にゴム材料を充填して成形されたゴムブレード成型体のブレード部から余剰部を切断した後に、前記ブレード部に付着している前記余剰部を前記ブレード部から引き離す分離手段を備え、
前記分離手段は、前記余剰部を把持するクランプ部材を有する把持機構と、前記ブレード部から前記余剰部を離間させる方向に前記クランプ部材を移動させる移動機構と、前記クランプ部材を回転させる回転機構とを有していることを特徴とするゴムブレードの製造装置。
【請求項2】
前記分離手段は、前記移動機構によって前記余剰部を前記ブレード部と前記余剰部との切断面と直交する方向に離間させるとともに、前記回転機構によって前記余剰部を前記切断面に平行な平面上で回転させる請求項1に記載のゴムブレードの製造装置。
【請求項3】
前記回転機構および前記移動機構は、同時に独立して作動可能にされている請求項1または2に記載のゴムブレードの製造装置。
【請求項4】
前記ゴム材料はウレタンゴムである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴムブレードの製造装置。
【請求項5】
成型金型に金属板を配置し、成型金型にゴム材料を充填してゴムブレード成型体を成形する成形工程と、
前記ゴムブレード成型体のブレード部と余剰部とを切断する切断工程と、
前記切断工程後に、前記ブレード部に付着している前記余剰部を前記ブレード部から離間させるとともに前記余剰部を回転させることで、前記ブレード部から前記余剰部を引き離す分離工程と
を有するゴムブレードの製造方法。
【請求項6】
前記分離工程では、前記余剰部を前記ブレード部と前記余剰部との切断面と直交する方向に離間させるとともに、前記余剰部を前記切断面に平行な平面上で回転させる請求項5に記載のゴムブレードの製造方法。
【請求項7】
前記ゴム材料はウレタンゴムである請求項5または6に記載のゴムブレードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−51945(P2008−51945A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226579(P2006−226579)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】