説明

ゴム強化スチレン系樹脂

【課題】 本発明はグラフト率が高く、光沢、剛性、成形物の外観、流動性および耐衝撃性、特に低温で耐衝撃性などが向上し、かつそれらのバランスが良い新規なゴム強化スチレン系樹脂を提供する。
【解決手段】 ゴム状重合体の存在下でスチレン系単量体および不飽和ニトリル系単量体を重合して得られるゴム強化スチレン系樹脂において、(a)ゴム状重合体、(b)ゴム強化スチレン系樹脂はゴム状重合体の分散粒子体およびスチレン系単量体とアクリロニトリル単量体の共重合体の連続相より成り、かつ(c)前記スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体の重量平均分子量が20万以上にあることを特徴とするゴム強化スチレン系樹脂に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフト率が高く、光沢、剛性、成形物の外観、流動性および耐衝撃性、特に低温で耐衝撃性などが向上し、かつそれらのバランスが良い新規なゴム強化スチレン系樹脂に関する。
【0002】
スチレンモノマーにポリブタジエンを添加してラジカル重合して得られる共重合体は、ポリスチレンの持つ優れた特性に加えて耐衝撃も改良された耐衝撃性ポリスチレン系樹脂として広く知られている。この耐衝撃性ポリスチレン系樹脂を製造するために用いられるゴム変成剤としては、一般にはアルキルリチウムを触媒として1,3−ブタジエンを重合して得られるシス−1,4構造が30〜35%、ビニル構造が10〜20%であり、トランス−1,4構造が50〜60%である低シスポリブタジエン(以下、低シスBR)とコバルト、チタン或いはニッケル系触媒により1,3−ブタジエンを重合して得られるシス−1,4構造が90〜98%、ビニル構造が1〜5%であり、トランス−1,4構造が1〜5%である高シスポリブタジエン(以下、高シスBR)がある。
【0003】
一方、本出願人により、例えば、特許文献1〜4には、ゴム変性剤として、シス−1,4構造が65〜95%であり、1,2構造が30〜4%であるメタロセン触媒で製造された高シス−高ビニルBR(以下、HC−HVBR)を用いた耐衝撃性ポリスチレン樹脂が報告されている。
【0004】
高シスBRの特徴はガラス転移温度(通常−95〜−110℃)が低いため、低温特性に優れるものの、低ビニル構造含有量に起因するためにスチレンモノマーとの反応性(グラフト率)が低く、高シスBRを用いて得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂は、アイゾット衝撃性に優れるがゴム粒子の小粒径化(光沢性)・面耐衝撃性(デュポン衝撃性)の点で十分満足できるものではない。他方、低シスBRはガラス転移温度(通常−75〜−95℃)が高く、高ビニル構造含有量に起因するためスチレンモノマーとの反応性(グラフト率)が高く、低シスBRを用いて得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂はゴム粒子の小粒径化・面耐衝撃性が優れるものの、アイゾット衝撃性・低温特性の点で十分満足できるものではない。
【0005】
一方、高シス−高ビニルBR(以下、HC−HVBR)を耐衝撃性ポリスチレン用ゴムに使用することによって、高シスBRの特性を保持し、且つ低シスBRの特性を保持したBRの開発が強く望まれている。高ビニル構造に起因するスチレンモノマーとの反応性は低シスBRと同等であり、このHC−HVBRを用いて得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂は、光沢性と面衝撃性が優れると共に高シス−1,4構造含有率に由来するガラス転移温度の低さからアイゾット耐衝撃性、低温特性も優れるという従来の高シスBRと低シスBRの特性を併せ持つゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂が得られることが開示されている。
【0006】
また、特許文献5では、スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体の重量平均分子量が5万〜20万の、比較的低分子量の樹脂を用いることにより、外観、剛性、衝撃強度及び成形性のバランスの優れたABS組成物が開示されている。さらに、特許文献6においては、コールドフロー値が小さく、且つグラフト率が高く、耐衝撃性が改良されたABS樹脂用が開示されている。
【0007】
以上のことから、耐衝撃性スチレン系樹脂組成物の耐衝撃性バランスなどの諸物性の向上の点において、組成などの条件設定による改良がされてきているが、さらなるバランスの向上が望まれる場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−139835号公報
【特許文献2】特開平10−152535号公報
【特許文献3】特開平10−218949号公報
【特許文献4】特開平10−273574号公報
【特許文献5】特開2003−306517号公報
【特許文献6】特開2003−12739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特定の構造を有するポリブタジエンをゴム状重合体として、スチレン系およびアクリロニトリル系のモノマーに溶解し、これらを重合して製造されるゴム強化スチレン系樹脂に関して、グラフト率が高く、かつスチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体の重量平均分子量が20万以上の高分子量の樹脂を用いることにより、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性が優れ、光沢、剛性、成形物の外観、および流動性などが向上し、かつそれらのバランスが良い新規なゴム強化スチレン系樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ゴム状重合体の存在下でスチレン系単量体および不飽和ニトリル系単量体を重合して得られるゴム強化スチレン系樹脂において、
(a)ゴム状重合体が、周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体を用いた触媒系でミクロ構造が制御されたものあり、ブタジエンモノマーユニットのうち、1,2−構造ユニットの含有率が4〜30モル%、シス−1,4−構造ユニットの含有率が65〜95モル%、及びトランス−1,4−構造ユニットの含有率が5モル%以下のもので、
(b)前記ゴム強化スチレン系樹脂はゴム状重合体の分散粒子体およびスチレン系単量体とアクリロニトリル単量体の共重合体の連続相より成り、この分散粒子体は粒子径0.2ないし10ミクロンの粒子で、スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体をグラフト又は吸蔵しており、この共重合体吸蔵グラフト指数が50〜250%であり、かつ
(c)前記スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体の重量平均分子量が20万以上にあることを特徴とするゴム強化スチレン系樹脂に関する。
【0011】
該(a)ゴム状重合体が、周期律表第5族遷移金属化合物がバナジウム化合物のメタロセン型錯体を用いた触媒系がバナジウム化合物および非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサンからなる触媒である事を特徴とする前記のゴム強化スチレン系樹脂に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明で得られるゴム強化スチレン系樹脂は、特定の構造を有するポリブタジエンをゴム状重合体として、スチレン系およびアクリロニトリル系のモノマーに溶解し、これらを重合して製造することで、グラフト率が高く、耐衝撃性が優れた、光沢、剛性、成形物の外観、および流動性などが向上し、かつそれらのバランスが良い特徴を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(特定の構造を有するポリブタジエン)
本発明の特定の構造を有するポリブタジエンは、高シス-高ビニルポリブタジエンである。高シス−高ビニルポリブタジエンゴム(HC−HVBR)は、好ましくは、ミクロ構造中のシス−1,4−構造ユニット含有率が65〜95モル%、特に好ましくは70〜90モル%、及び好ましくは1,2−構造ユニット含有率が4〜30モル%であり、特に好ましくは5〜25モル%、より好ましくは7〜15モル%である。また、トランス−1,4−構造ユニット含有率が5モル%以下が好ましく、0.5〜4.0モル%が特に好ましい。
【0014】
また、HC−HVBRの25℃における5%スチレン溶液粘度(St−cp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)の関係式が下式(I)を満足する範囲にあることが好ましい。
【0015】
【数1】

【0016】
特に好ましくは、
【0017】
【数2】

を満足する。
【0018】
また、HC−HVBRのスチレン溶液粘度(St−cp)は、20〜500が好ましく、30〜300が特に好ましい。
【0019】
本発明のHC−HVBRのム−ニ−粘度(ML1+4)は、10〜200が好ましく、25〜100が特に好ましい。
【0020】
HC−HVBRの分子量は、トルエン中30℃で測定した固有粘度[η]として、0.1〜10が好ましく、0.1〜3が特に好ましい。
【0021】
また、HC−HVBRの分子量は、ポリスチレン換算の分子量として下記の範囲のものが好ましい。
数平均分子量(Mn):0.2×10〜10×10、より好ましくは0.5×10〜5×10
重量平均分子量(Mw):0.5×10〜20×10、より好ましくは1×10〜10×10
【0022】
また、本発明のHC−HVBRの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.6〜3である。
【0023】
(特定の構造を有するポリブタジエンの重合触媒)
上記のHCHVは、例えば、
(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサンから得られる触媒を用いて、ブタジエンを重合させて製造できる。
【0024】
あるいは、(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、
(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、
(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、及び、
(D)水
から得られる触媒を用いたブタジエンを重合させて製造できる。
【0025】
(A)成分の遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、周期律表第4〜8族遷移金属化合物のメタロセン型錯体が挙げられる。
【0026】
例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期律表第4族遷移金属のメタロセン型錯体(例えば、CpTiClなど)、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの周期律表第5族遷移金属のメタロセン型錯体、クロムなどの第6族遷移金属メタロセン型錯体、コバルト、ニッケルなどの第8族遷移金属のメタロセン型錯体が挙げられる。
【0027】
中でも、周期律表第5族遷移金属のメタロセン型錯体が好適に用いられる。
【0028】
上記の周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、
(1)RM・La、すなわち、シクロアルカジエニル基の配位子を有する酸化数+1の周期律表第5族遷移金属化合物
(2)RnMX2−n・La、すなわち、少なくとも1個のシクロアルカジエニル基の配位子を有する酸化数+2の周期律表第5族遷移金属化合物
(3)RnMX3−n・La
(4)RMX・La
(5)RM(O)X・La
(6)RnMX3−n(NR')
などの一般式で表される化合物が挙げられる(式中、nは1又は2、aは0,1又は2である)。
【0029】
中でも、RM・La、RnMX2−n・La、RM・La、RMX・La、RM(O)X・Laなどが好ましく挙げられる。
【0030】
Mは、周期律表第5族遷移金属化合物が好ましい。
【0031】
(A)周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、中でも、Mがバナジウムであるバナジウム化合物が好ましい。例えば、RV・La、RVX・La、RM・La、RMX・La、RMX・La、RM(O)X・Laなどが好ましく挙げられる。特に、RV・La、RMX・Laが好ましい。
【0032】
RMX・Laで示される具体的な化合物としては、以下のものが挙げられる
シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。
【0033】
RM(O)X2で表される具体的な化合物としては、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、メチルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、ベンジルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)オキソバナジウムジクロライドなどが挙げられる。
【0034】
(B)成分として、非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物を構成する非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレ−ト、テトラ(フルオロフェニル)ボレ−トなどが挙げられる。
【0035】
一方、カチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。
【0036】
また、(B)成分として、アルモキサンを用いてもよい。アルモキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R’)O−)nで示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンが挙げられる。(R'は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)。R'として、はメチル、エチル、プロピル、イソブチル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。
【0037】
(A)成分及び(B)成分に、さらに(C)成分として周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物を組合せて共役ジエンの重合を行ってもよい。(C)成分の添加により重合活性が増大する効果がある。周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
【0038】
上記の触媒各成分の組合せとして、(A)成分としてシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl)などのRMX、あるいは、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド(CpV(O)Cl)などのRM(O)X、(B)成分としてトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(C)成分としてトリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムの組合せが好ましく用いられる。
【0039】
また、(B)成分としてイオン性化合物を用いる場合は、(C)成分として上記のアルモキサンを組み合わせて使用してもよい。触媒成分の添加順序は、特に、制限はない。
【0040】
また、本発明においては、触媒系として更に、(D)成分として水を添加することが好ましい。(C)成分の有機アルミニウム化合物と(D)成分の水とのモル比(C)/(D)は、好ましくは0.66〜5であり、より好ましくは0.7〜1.5である。
【0041】
また重合時に、必要に応じて水素を共存させることができる。
【0042】
ここで重合すべきブタジエンモノマーとは、全量であっても一部であってもよい。モノマーの一部の場合は、上記の接触混合物を残部のモノマーあるいは残部のモノマー溶液と混合することができる。
【0043】
重合方法は、特に制限はなく、溶液重合、又は、1,3−ブタジエンそのものを重合溶媒として用いる塊状重合などを適用できるが、溶液重合が望ましい。トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0044】
また、低分子量HCHV成分と高分子量HCHV成分との混合物を用いてもよい。
【0045】
本発明においての分子量を調節する方法としては、上記の触媒を用いて、水素などの連鎖移動剤の存在下に共役ジエン化合物を重合させることが挙げられる。
(ポリマーの変性)
【0046】
さらに重合反応が所定の重合率を達成した後、遷移金属触媒を添加し、反応させることによってポリマー鎖を変性する事も出来る。
【0047】
遷移金属触媒における遷移金属化合物としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、バナジウム化合物、クロム化合物、マンガン化合物、鉄化合物、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物、銅化合物、銀化合物、亜鉛化合物などが挙げられる。中でも、コバルト化合物が特に好ましい。
【0048】
本発明の遷移金属触媒は、遷移金属化合物、有機アルミニウム、および水からなる系であることが好ましい。
【0049】
コバルト化合物としては、コバルトの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものは、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルト等のコバルト塩や、コバルトのビスアセチルアセトネートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、ハロゲン化コバルトのトリアリールホスフィン錯体、トリアルキルホスフィン錯体、ピリジン錯体、ピコリン錯体等の有機塩基錯体、もしくはエチルアルコール錯体などが挙げられる。
【0050】
中でも、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、コバルトのビスアセチルアセトネート及びトリスアセチルアセトネートが好ましい。
【0051】
有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジブチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムアイオダイドなどのジアルキルアルミニウムハロゲン化物、メチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイドなどのアルキルセスキハロゲン化アルミニウム、メチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイドなどのモノアルキルアルミニウムハロゲン化物が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を選択して混合して用いても良い。なかでも、ジエチルアルミニウムクロライドが好ましく用いられる。
【0052】
本発明の遷移金属触媒において、コバルト化合物の添加量は、所望の分岐度によって、いかなる範囲の触媒量も使用できるが、好ましくはポリブタジエン1モルあたり、遷移金属化合物1×10−7〜1×10−3モルであり、特に好ましくは5×10−7〜1×10−4モルである。
【0053】
有機アルミニウムの添加量は、所望の分岐度によって、いかなる範囲の触媒量も使用できるが、好ましくはポリブタジエン1モルあたり、有機アルミニウム1×10−5〜5×10−2モルであり、特に好ましくは5×10−5〜1×10−2モルである。
【0054】
分岐化反応における水の添加量は、所望の分岐度によって、いかなる範囲の量も使用できるが、好ましくは有機アルミニウム化合物1モルあたり、1.5モル以下であり、特に好ましくは1モル以下である。
【0055】
所定時間重合を行った後、アルコ−ルなどの停止剤を注入して重合を停止した後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0056】
本発明で得られる変性ポリブタジエンのトルエン溶液粘度(T−cp)と100℃におけるム−ニ−粘度(ML1+4)の比(Tcp/ML1+4)は、好ましくは0.9〜3.5であり、より好ましくは1.2〜2.5である。
【0057】
また、本発明で得られる変性ポリブタジエンのトルエン溶液粘度(Tcp)は、好ましくは30〜300であり、より好ましくは45〜200である。
【0058】
また、本発明で得られる変性ポリブタジエンの100℃におけるム−ニ−粘度(ML1+4)は、10〜200が好ましく、25〜100が特に好ましい。
【0059】
ゴム強化ポリスチレン系樹脂組成物は、上記の各成分を用いて常法に従ってグラフト共重合により製造することができる。
【0060】
(重合方法)
本発明の共重合体の製造方法は塊状もしくは溶液状での重合であれば特に限定されないが、好ましくは、例えば連続式の塊状重合法もしくは溶液重合法を用いて製造される。この製造方法について例示すれば、ゴム状重合体をスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体を含む混合液に投入して撹拌を施し、好ましくは温度20〜70℃に調整して完全に溶解し、かかる溶液を連続的に撹拌機付の1段以上、もしくは2段以上の反応器に供給して重合し、重合の最終段から、固形成分と未反応単量体、溶剤等の揮発成分を分離する脱揮発分工程を経て、共重合体が得られる。
かかる方法において、第1段目の重合器には単量体を含む溶液に溶解したゴム状重合体が供給され、また、単量体および重合開始剤および連鎖移動剤は任意の段階で反応器へ供給される。本発明の対象を塊状もしくは、溶液状の重合で生成される共重合体としたのは、モノマーに溶解した特定のゴム状重合体を用いて本発明でいうゴム状重合体の含有量を有する共重合体を製造することは、通常用いられる乳化重合の方法では、ラテックスゴムを用いる為不可能であり、また懸濁重合法では、ゴム状重合体の分散相形成が実質的に困難であることによる。
【0061】
本発明のゴム強化スチレン系樹脂組成物100重量部中には、上記の高シス-高ビニルポリブタジエンを遷移金属触媒の存在下で変性して得られるゴム状ポリマー1〜25、好ましくは、5〜20重量部含まれる。上記の範囲より少ないと、この発明の効果は得られないし、ゴム状ポリマーの含有率が増大すると共に樹脂の耐衝撃性は向上するが、上記の範囲より多いと、スチレン溶液の高粘度化によりゴム粒子径の制御が困難となり、この発明の効果は発現できず工業的な利用価値を失う。
【0062】
製造時に必要に応じて上記ゴム状ポリマーの他に、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン、エチレン−酢酸ビニル、アクリル系ゴムなどを上記ゴム状ポリマーに対して50重量%以内併用することができる。又、これらの方法によって製造された樹脂をブレンドしてよい。更に、これらの方法によって製造されたゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物を含まないポリスチレン系樹脂を混合して製造してもよい。
【0063】
この発明で得られるゴム強化スチレン系樹脂組成物には、ゴム状ポリマーは分散粒子(ゴム粒子)として存在している。樹脂中に分散された粒子で、ゴム状ポリマーとポリスチレン系樹脂からなり、ポリスチレン系樹脂はゴム状ポリマーにグラフト結合している。この発明で言うゴム状ポリマーの分散粒子の径として0.3〜3μmの範囲、好ましくは0.5〜2.0μmの範囲のものが好適に製造できる。
【0064】
本発明において、ゴム強化スチレン系樹脂組成物中のゴム粒子のグラフト率が50〜200%の範囲、好ましくは、80〜170%の範囲にある。
上記の範囲外であると、ゴム強化スチレン系樹脂組成物の諸物性、特に耐衝撃性や光沢性能の低下が生じ、好ましくない。
【0065】
バッチ式でも連続的製造方法でもよく特に限定されない。
【0066】
本発明は上記のゴム状重合体をスチレン系単重体及びアクリロニトリル系単量体さらに必要によりこれらの単量体と共重合可能な他の単量体からなる混合溶液に完全に溶解し、この単量体とゴム状重合体からなる混合溶液を原料にして重合させるゴム強化スチレン・
アクリロニトリル系共重合体に関するものである。ここで単量体とゴム状重合体からなる混合溶液にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アセトン、イソプロピルペンゼン、メチルエチルケトンや塩化メチレンなどの溶剤が含まれていてもよい。すなわち重合方法としてはゴム状重合体をスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体さらに必要によりこれらの単量体と共重合可能な単量体の混合物に溶解した溶液を塊状重合又は塊状−懸濁二段重合法にて重合する等により得られるが、重合方法は特に塊状重合により製造される。
【0067】
上記のように重合で得られる共重合体は単にブレンドした場合よりもゴムへのグラフト効果によって衝撃強度が向上している。本発明においては、ゴム状重合体にスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体をグラフトさせて、さらにゴム状重合体を粒子化して樹脂中に分散させるがこれらの反応は熱重合あるいは反応の際に重合開始剤を使用することも好ましい。例えば重合で用いることのできる重合開始剤としては、例えばベンゾイルパ−オキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパ−オキシピバレート、t−ブチルパ−オキシペンゾエート、t−ブチルパ−オキシイソブチレート、t−ブチルパ−オキシオクトエート、クミルパ−オキシオクトエート、1,1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)3,3,5−トリメチルシロキサン、2,2−ビス(t−ブチルパ−オキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパ−オキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパ−オキシ)ブタン、t−ブチルパ−オキシマレイン酸、t−ブチルパ−オキシイソプロピルカ−ポネート、ジクミルパ−オキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、クメンハイドロパ−オキサイド等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。これらの重合開始剤の使用量としては例えば有機過酸化物を使用する場合には有機過酸化物をゴム状重合体に溶解した溶液100重量部に対し、0.0005〜0.05重量部使用することが好ましい。0.0005重量部より少なければ10ミクロン以上の巨大ゴム粒子が生成し、成形品の表面状態が悪化し、機械的強度が低下することがあるので好ましくない。また0.05重量部以上使用すると重合速度とゴムへのグラフト率のバランスが崩れてしまい、成形品の表面状態が悪化し、機械的強度が低下することがあるので好ましくない。
【0068】
本発明において、スチレン系共重合体の分子量調節のために連鎖移動剤を使用することができる。例えばα−メチルスチレンダイマー、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等の使用が可能である。
【0069】
重合工程では特定の反応槽に限定されず、例えば完全混合型反応槽、管型反応槽、塔型反応槽等が用いられ、それらの反応槽の種類や数は特に限定されない。
【0070】
本発明で用いられるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンのような側鎖アルキル置換スチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、o−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレンのような核アルキル置換スチレン、トリブロムスチレン、テトラブロムスチレン等のハロゲン化スチレン及びp−ヒドロキシスチレン、o−メトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられるが、特に好ましくは、スチレンおよびα−メチルスチレンである。
これらのスチレン系単量体の一種以上を用いることができる。本発明におけるアクリロニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル、α−クロロアクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。これらの単量体の一種以上を用いることができる。
【0071】
本発明で用いられる共重合体構成成分のスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体の一部を、スチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体の総和に対して30重量%以下の割合において、メチルメタクリレート等のメタクリルエステル系単量体、メチルアクリレート等のアクリル酸エステル系単量体、マレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体の一種以上をもって置き換えてもよい。耐熱性を向上させるためには、1〜30重量%、より好ましくは5〜17重量%をマレイミド系単量体に置き換えることが好ましい。
【0072】
本発明のゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の連続相を構成するスチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体の組成については、好ましくはスチレン系単量体/アクリロニトリル単量体の重量比として95/5〜55/45であり、より好ましくは、85/15〜65/35である。
【0073】
本発明のゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の連続相を構成するスチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体の重量平均分子量は20万以上が好ましく、20万〜30万が特に好ましい。
【0074】
本発明のゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体には必要に応じてヒンダ−ドフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤、ミネラル油等の流動性改良剤、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、有機ポリシロキサン等の離型剤を原料溶液或いは重合の途中もしくは重合の終了した時点で添加してもよい。
【0075】
本発明のゴム強化ポリスチレン系樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリフェニレンオキシドおよびポリフェニレンスルフィド等の樹脂にブレンドして成形に供することもできる。また目的に合わせて、ガラス繊維等の繊維補強剤、無機充填剤、着色剤、顔料を配合することもできる。またテトラブロモビスフェノールA、デカブロモビフェニルエーテル、臭素化ポリカーボネート等の一般ハロゲン化有機化合物系難燃剤を酸化アンチモンとともに混合することによって難燃化が可能である。本発明のゴム変性スチレン・アクリロニトリル系共重合体は射出成形や押出し成形等の通常の成形方法で成形して剛性と耐衝撃性のバランスの良好な成形物を製造することができる。
【0076】
この発明のゴム強化ポリスチレン系樹脂組成物には、製造時や製造後に適宜必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、滑剤、着色剤、各種充填剤及び各種の可塑剤、高級脂肪酸、有機ポリシロキサン、シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤や発泡剤などの公知添加剤を添加してもよい。この発明のゴム強化ポリスチレン系樹脂組成物は、公知の各種成形品に用いることはできるが、難燃性、耐衝撃強度、引張強度に優れるために電気・工業用途分野で使用される射出成形に好適である。
【0077】
(実施例)
実施例及び比較例において、得られたビニル・シスポリブタジエンゴムの素ゴムの物性は以下のようにして測定した。
【0078】
(ゴム状重合体の分析)
(1)ミクロ構造:赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm-1、トランス967cm-1、ビニル910cm-1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
(2)5wt%スチレン溶液粘度:ポリマー2.387gをスチレン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
【0079】
(ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の分析)
(1)ゴム含有量、スチレン系単量体、アクリロニトリル系単量体組成:各反応物の仕込み量バランスより算出。
(2)ゴム粒子径:ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物をジメチルホルムアミドに溶解させ、樹脂中のマトリックスを形成するスチレン・アクリロニトリル系共重合体部分のみを溶解させ、その溶液の一部をベックマン・コールター(株)製の粒度分布測定装置マルチサイザーIIIを使って溶媒ジメチルホルムアミドと分散剤チオシアン酸アンモニウムからなる電解液に分散させて、得られた体積平均粒子径をゴム粒子径とした。
(3)グラフト率:1gのゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂をメチルエチルケトン/アセトン=1/1(重量比)の混合液50ミリリットルに加えて1時間、激しく攪拌し、溶解・膨潤させる。次に遠心分離機にて不溶解分を沈降させた後、デカンテーションで上澄液を捨てる。このようにして得られたメチルエチルケトン/アセトン不溶解分を50℃で減圧乾燥して、デシケーター中で冷却後、秤量してメチルエチルケトン/アセトン不溶解分(MEK/AC−insol.g)を求めて、ゴム状ポリマー含有率から算出したゴム状ポリマー量(Rg)から、グラフト率を算出した。グラフト率=[MEK/AC−i(4)スチレン・アクリロニトリル系共重合体の分子量:ポリスチレンを標準物質として用いたGPCから求めた重量平均分子量Mwによって評価した。
【0080】
(物性評価)
(1)成型性:得られた共重合体を80℃で2時間乾燥した後、射出成形機により成形温度210℃にて成形し、ショートショットの有無により評価した。
(2)剛性:JIS K−7113に準じた。
(3)シャルピー衝撃強度:JIS K−7111に準じた。
(4)光沢:JIS K−7105に準じた。
(5)外観:成形品の外観(フィッシュアイ、着色、フローマーク等)を目視により評価。
【0081】
(実施例1)
A.ポリブタジエンの製造
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン660ml、1,3−ブタジエン220gを仕込んだ。次いで、20℃、1気圧の水素ガス115mlを注入した。次いで、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムの混合物を原料として調製されたアルモキサン(MMAO)のトルエン溶液(濃度:MMAO 2.5mmol/トルエン1ml)を5ml、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロリド(CpVCl)のトルエン溶液(濃度:CpVCl 0.05mmol/トルエン1ml)を0.5ml加え、重合温度50℃で30分間重合を行った。
その後、さらに水を300mg/L含むトルエン43.1ml、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液2.1ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2)5mmol/Lのトルエン溶液1.3mlを加えて50℃で10分間反応させた。反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥した。収率は、91gであった。
B.ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造
攪拌機付1.5Lのオートクレーブを窒素ガスで置換し、スチレン(360g)およびアクリロニトリル(90g)中に、上記で得られたポリブタジエン(50g)を加えて溶解した。次いでn−ドデシルメルカプタン0.1gおよびt−ブチルパーオキシピバレートを0.1g加えて、75℃で攪拌しながらスチレン・アクリロニトリル共重合体の転化率が13%になるまで90分間予備重合した。次に、この予備重合液に0.5wt%ポリビニルアルコール水溶液500mlを注入し、ベンゾイルパーオキサイド1.0g及びジクミルパーオキサイド1.0gを加えて100℃で2時間、125℃で2時間、攪拌下で連続的に重合した。その後、室温に冷却して重合反応混合物からビーズ状のポリマーをろ過し、水洗・乾燥した。これを押出機でペレット化してゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体450gを得た。得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体をそれぞれ射出成形およびシート成形して物性測定用試験片を作成して物性を評価した。結果を表1に示した。
【0082】
(実施例2)
ポリブタジエンの製造において、水素ガスを110ml注入した以外は、実施例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0083】
(実施例3)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、本重合時にn‐ドデシルメルカプタンを1.0g添加した以外は、実施例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0084】
(実施例4)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、スチレン315g、アクリロニトリル135gを仕込んだ以外は、実施例3と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0085】
(実施例5)
ポリブタジエンの製造において、水素ガス125mlを注入した以外は、実施例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0086】
(実施例6)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、スチレン372g、アクリロニトリル93g、ポリブタジエン35gを仕込んだ以外は、実施例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0087】
(実施例7)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、スチレン340g、アクリロニトリル85g、ポリブタジエン75gを仕込んだ以外は、実施例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0088】
(比較例1)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、本重合時にn‐ドデシルメルカプタンを3.0g添加した以外は、実施例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。結果を表2に示した。
【0089】
(比較例2)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、表に記載した構造のポリブタジエンを使用した以外は、比較例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0090】
(比較例3、5、6)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、表に記載した構造のポリブタジエンを使用した以外は、実施例1と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0091】
(比較例4)
ゴム強化スチレン・アクリロニトリル系共重合体の製造において、スチレン340g、アクリロニトリル85g、ポリブタジエン75gを仕込んだ以外は、比較例3と同様にして得られたゴム強化スチレン・アクリロニトリル共重合体の物性を評価した。
【0092】
(比較例7)
本発明の方法とは全く異なる、乳化重合の方法で共重合体を製造した。ポリブタジエンゴムラテックスにスチレン、アクリロニトリルを連続的に添加しつつ重合し、共重合体を得て、実施例1と同様にして評価した。低温アイゾット衝撃が低く、また外観が黄色身を帯びており、実施例より劣った。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明で得られるゴム強化スチレン系樹脂組成物の用途としては、例えば薄型テレビ、プリンタ、冷蔵庫、エアコンなどの家電用、包装材料・食品容器等に用いられるフィルム・シート用に加え、自動車、建材、雑貨等である。又、高シス−高ビニルポリブタジエンは自動車タイヤ用途やゴルフボール・靴底などの非タイヤ用途にも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状重合体の存在下でスチレン系単量体および不飽和ニトリル系単量体を重合して得られるゴム強化スチレン系樹脂において、
(a)ゴム状重合体が、周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体を用いた触媒系でミクロ構造が制御されたものあり、ブタジエンモノマーユニットのうち、1,2−構造ユニットの含有率が4〜30モル%、シス−1,4−構造ユニットの含有率が65〜95モル%、及びトランス−1,4−構造ユニットの含有率が5モル%以下のもので、
(b)前記ゴム強化スチレン系樹脂はゴム状重合体の分散粒子体およびスチレン系単量体とアクリロニトリル単量体の共重合体の連続相より成り、この分散粒子体は粒子径0.2ないし10ミクロンの粒子で、スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体をグラフト又は吸蔵しており、この共重合体吸蔵グラフト指数が50〜250%であり、かつ
(c)前記スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体との共重合体の重量平均分子量が20万以上にあることを特徴とするゴム強化スチレン系樹脂。
【請求項2】
該(a)ゴム状重合体が、周期律表第5族遷移金属化合物がバナジウム化合物のメタロセン型錯体を用いた触媒系がバナジウム化合物および非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサンからなる触媒である事を特徴とする請求項1に記載のゴム強化スチレン系樹脂。

【公開番号】特開2011−26378(P2011−26378A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170713(P2009−170713)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】