説明

ゴム組成物

【課題】 高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を配合した、ウェットグリップ性能と低温性能に優れ、しかも機械的性質も低下しないゴム組成物を提供する。
【解決手段】 ブタジエン中の1,4−シス結合量が70重量%以上であり、かつ1,2−ビニル結合量が0〜10重量%であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴム5〜95重量部とその他ジエン系ゴム95〜5重量部とからなるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物に関し、更に詳細には、高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を配合した、ウェットグリップ性能と低温性能に優れ、しかも機械的性質も低下しないゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッド用のゴム組成物には、優れたウェットグリップ性能と同時に冬の低温時においてもその性能が保持されるような低温性能が要求される。これらの性能を両立させるために、従来から、ウェットグリップ性能に優れる高ガラス転移温度Tgのスチレン−ブタジエン共重合体ゴムと低温性能に優れるポリブタジエンゴム(BR)とをブレンドする手法が用いられてきた。しかしながら、ポリブタジエンゴムのブレンドは、引張強さや破断伸び等のゴム組成物の機械的性質を低下させ、またウェットグリップを低下させるなどの問題があった。よって、これらの問題を解消することが望まれている。
【0003】
以下の特許文献1には、低発熱性、路面把握性、耐摩耗性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物として、ムーニー粘度120以上のSBRを油展してムーニー粘度45〜70としたSBR(A)と、これよりTgの高いSBRを(A)の1.8倍以上のムーニー粘度になるように特定のカーボンブラックを加えてなるSBRカーボンマスターバッチ(B)とを、(B)のゴム成分が多くなり、かつ両ゴム成分のスチレン量とビニル量の1/2との和が45以上になるように混合してなるゴム組成物が開示され、また、特許文献2には、湿潤路面でのスキッド特性の低下を防止し、かつ耐摩耗性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物として、SBRとBRとの混合物であって、ゴム成分中のミクロ構造の割合が、シス1,4結合38〜78重量%、ビニル結合構造4〜10重量%、スチレン構造4.7〜17重量%からなるゴム組成物が開示されている。更に、特許文献3には、氷結路、積雪路用に有用なタイヤ等のゴムとして、スチレン含有量10重量%以下、ブタジエン部のビニル含有量15重量%以下、ムーニー粘度80〜130のベースポリマー100重量部に油25〜50重量部を伸展したSBRが開示され、また、特許文献4には、耐摩耗性、反撥特性、発熱性の改良されたタイヤ用ゴムとして、トランス1,4含量70〜90重量%、ビニル結合量2〜10重量%、スチレン結合含量40重量%以下で、かつムーニー粘度20〜150のSBRが用いられることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−319377号公報
【特許文献2】特開平4−132750号公報
【特許文献3】特開平3−9936号公報
【特許文献4】特開平1−135847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明では、上記従来のタイヤ用トレッドゴム組成物における問題点であったブタジエンゴムの配合に伴う機械的性質の低下を、これに代わる特定の高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを配合することによって抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ブタジエン中の1,4−シス結合量が70重量%以上であり、かつ1,2−ビニル結合量が0〜10重量%であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴム5〜95重量部とその他ジエン系ゴム95〜5重量部とからなるゴム組成物、および特にタイヤ用のゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、従来のBRブレンドに代えて、上記特定の高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを高ガラス転移温度のSBRに配合したところ、ウェットグリップ性能と低温性能に優れ、しかも機械的性質も低下しないゴム組成物が得られることを見出したものである。
【0008】
本発明で用いる高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムは、一般に、希土類メタロセン型金属触媒を用いて合成することが可能であり、例えば、特開2002−187908号公報および2003年12月4〜5日、日本ゴム協会開催、第16回エラストマー討論会要旨集(第96頁)などに示されている方法によって合成することができる。
【0009】
本発明のゴム組成物に配合される高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムには、そのブタジエン中の1,4−シス結合量が70重量%以上、好ましくは75〜98重量%であって、かつその1,2−ビニル結合量が0〜10重量%、好ましくは1〜8重量%であり、そのスチレン結合量が5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、更に好ましくは18〜42重量%である、重量平均分子量20万以上、好ましくは25〜200万のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムが使用される。かかる高シス・低ビニル含量のスチレン−ブタジエンゴムを所定量配合したゴム組成物では、ウェットグリップ性能および低温性能に優れ、かつ引張強さや破断伸び等の機械的性質に優れたSBR含有ゴム成形品が得られる。
【0010】
本発明のゴム組成物に配合されるその他ジエン系ゴムとしては、天然ゴムまたは合成ジエン系ゴムを単独で、あるいはこれらの混合ゴムを用いることができ、当該ジエン系合成ゴムとしては、例えば、従来のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。当該その他ジエン系ゴムは、そのガラス転移温度Tgが−40〜−15℃、好ましくは−38〜−20℃であるものを使用することが、ウェットグリップ性能の向上や低温性能の保持などのため、好ましい。特に、当該その他ジエン系ゴムとしては、ガラス転移温度Tgが−40〜−15℃で、かつスチレン結合量が25〜45重量%、ブタジエン中の1,2−ビニル結合量が25〜65重量%である従来のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを使用することが、機械的性質や耐摩性向上などのため好ましい。
【0011】
本発明のゴム組成物では、前記高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムと前記その他スチレン−ブタジエン共重合体ゴムとを、5〜95重量部:95〜5重量部の配合比とすることが必要である。当該高シス含量でかつ低ビニル含量のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムが5重量部未満では、所期の効果が発揮されず、逆に95重量部を超えると、ウェットグリップが不十分となるため好ましくない。
【0012】
本発明のゴム組成物は、ゴム100重量部に対し、シリカまたはカーボンブラック補強剤を30〜150重量部、好ましくは40〜145重量部を配合して、タイヤ用ゴム組成物として使用すると有用である。特に、前記カーボンブラックは、その窒素吸着比表面積(N2SA)が75〜250m2/gであることが、機械的性質やウェットグリップ向上などのため好ましい。
【0013】
本発明のゴム組成物には、更に、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、カーボンブラック、シリカなどの補強剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、軟化剤、可塑剤等のゴム用またはタイヤ用に一般に配合される各種配合剤、添加剤を配合することができ、これら配合剤および添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、一般的な量とすることができる。
【実施例】
【0014】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に説明するが、本発明の技術的範囲をこれら実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0015】
試験サンプルの作製
表1に示す配合(重量部)において、硫黄、加硫促進剤を除く配合剤を容量が1.5Lのバンバリーミキサーで5分間混合し、マスターバッチを得た。得られたマスターバッチと硫黄、加硫促進剤をオープンロールで混合した後、15×15×0.2cmの金型内で、160℃、30分間プレス加硫して得られた加硫ゴム片を引張試験に供した。
【0016】
試験法
1)引張強さ: JIS K 6251に準拠して測定した。
2)破断伸び: 同上。
【0017】
実施例1〜2及び比較例1〜4
結果を表1に示す。
【表1】

【0018】
表1の結果によれば、本発明のシリカ配合ゴム組成物およびカーボンブラック配合ゴム組成物では、共に引張強さおよび破断伸びが向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるゴム組成物は、特に、タイヤ用ゴム組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエン中の1,4−シス結合量が70重量%以上であり、かつ1,2−ビニル結合量が0〜10重量%であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴム5〜95重量部とその他ジエン系ゴム95〜5重量部とからなるゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム5〜95重量部とガラス転移温度Tgが−40〜−15℃であるその他ジエン系ゴム95〜5重量部とからなるゴム組成物。
【請求項3】
前記その他ジエン系ゴムがスチレン−ブタジエン共重合体ゴムであり、そのスチレン結合量が25〜45重量%、ブタジエン中の1,2−ビニル結合量が25〜65重量%である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のゴム100重量部に対し、シリカまたはカーボンブラックを30〜150重量部配合したタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックのN2SAが75〜250m2/gである、請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。

【公開番号】特開2006−137897(P2006−137897A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330279(P2004−330279)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】