説明

ゴム組成物

【課題】 タイヤや工業用ゴム製品のスチールコーテイングゴム等の耐破壊性、耐亀裂成長性向上を改良した天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物を提供する。
【解決手段】 天然ゴムラテックスと、(1)CTAB比表面積(m2/g)が、 60 < CTAB < 110 の範囲内にあり、(2)24M4DBP(ml/100g)が、 55 < 24M4DBP < 75 の範囲内にあり、(3)CTAB比表面積と比着色力(TINT)が、 TINT > 0.41×CTAB+81 の関係を有し、かつ(4)カーボンブラック配合量が天然ゴム分100質量部に対して10〜100質量部である、カーボンブラックを予め水中に分散させたスラリー溶液とを混合してなる天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴムウエットマスターバッチとして製造されたゴム組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、低発熱性を損なうことなく、耐破壊性、耐亀裂成長性が良好である、タイヤ用スチールコーティングゴム等に好適な、天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤや工業用ゴム製品のスチールコーテイングゴムにおいては、耐破壊性を向上させるため、低ストラクチャーのカーボンブラックが広く使用されているが、ゴムが柔らかく変形し易くなるのを防ぐため高充填されることが多い。これらは全てゴム中でのカーボンブラック分散の悪化を引き起こし、充分な耐亀裂成長性を得られないだけでなく、期待されている耐破壊性の効果も充分に得られず、高発熱化も引き起こすという欠点があった。
【0003】
一方、加工性、補強性、耐摩耗性を改良すべく、天然ゴムラテックス中のアミド結合を分解するアミド結合分解工程と、当該アミド結合分解工程後のラテックスと、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機充填材を水中に分散させたスラリー溶液とを混合する工程を含む天然ゴムマスターバッチの製造方法(特許文献1)が知られている。
【0004】
しかしながら、上述の天然ゴムマスターバッチの製造方法は、タイヤのトレッドゴムやベルトコンベアの表層部ゴム等の耐摩耗性向上を目指した無機充填材の天然ゴムへの混合を目的としたものであり、上述のスチールコーテイングゴム等の耐破壊性、耐亀裂成長性向上を目指したものではなかった。
【0005】
かかる現況から、天然ゴムウエットマスターバッチの製造時に用いるカーボンブラックの諸特性を改良することにより、天然ゴムラテックスと、水中に分散させたカーボンブラック・スラリー溶液とを混合する工程において、カーボンブラック粒度分布を特定範囲内に安定的に制御し、かつ良好なカーボンブラック分散を得ることができ、スチールコーテイングゴム等の耐破壊性、耐亀裂成長性向上を達成し得る天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2004−99625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タイヤや工業用ゴム製品のスチールコーテイングゴム等の耐破壊性、耐亀裂成長性向上を改良した天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、天然ゴムウエットマスターバッチの製造において、水中に分散させたカーボンブラック・スラリー溶液に用いるカーボンブラックの諸特性を改良することにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、天然ゴムラテックスと、(1)CTAB比表面積(m2/g)が、 60 < CTAB < 110 の範囲内にあり、(2)24M4DBP(ml/100g)が、 55 < 24M4DBP < 75 の範囲内にあり、(3)CTAB比表面積と比着色力(TINT)が、 TINT > 0.41×CTAB+81 の関係を有し、かつ(4)カーボンブラック配合量が天然ゴム分100質量部に対して10〜100質量部であるカーボンブラックを予め水中に分散させたスラリー溶液とを混合してなる天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低発熱性を損なうことなく、耐破壊性、耐亀裂成長性が良好である、タイヤ用及び工業用ゴム製品用スチールコーティングゴム等に好適な、天然ゴムウエットマスターバッチとして製造されたゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においては、カーボンブラックのCTAB比表面積(m2/g)を、 60 < CTAB < 110 の範囲内とすることが肝要である。CTAB比表面積が60以下であると十分な耐亀裂成長性が確保されないからであり、110以上であると発熱性が大幅に悪化するからである。また、24M4DBP(ml/100g)が55以下であると耐亀裂成長性の改良効果が得られず、75以上であると耐破壊性が低下するので、60 < 24M4DBP < 75 の範囲内であることを要する。さらに、CTAB比表面積と比着色力(TINT)が、 TINT > 0.41×CTAB+81 の関係を有することが必要である。比着色力が 0.41×CTAB+81 以下になるとカーボンブラックの粒度分布が広くなり、耐破壊性、耐亀裂成長性が低下するからである。
【0011】
上述の本発明の用いられるカーボンブラックを製造するためには、例えば、特開2004−269788公報に開示されたようなカーボンブラック製造装置において、原料油噴霧圧力を上昇させることにより、反応炉内中心部、即ち、高温領域で原料油を反応させると共に、過剰空気率を低下させ、かつ空気予熱温度を高くすることにより、熱分解反応を促進させるとよい。これにより、粒度分布が狭く、所定範囲のCTAB比表面積、24M4DBP及び比着色力(TINT)を有するカーボンブラックが得られる。
【0012】
次に、本発明のゴム組成物に用いられる上述のカーボンブラックは、天然ゴム分100質量部に対して10〜100質量部の範囲内で配合されることを要する。10質量部未満では、補強性が得られず、100質量部を超えると低発熱性が悪化するからである。
【0013】
また、本発明の天然ゴムと、上述のカーボンブラックを予め水中に分散させたスラリー溶液とを混合する工程において、(A)水分散スラリー溶液中のカーボンブラックの粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下、90体積%粒径(D90)が30μm以下であることが好ましい。体積平均粒子径(mv)が25μm以下であり、90体積%粒径(D90)が30μm以下であると、ゴム中のカーボンブラック分散がさらに良好となり、補強性、耐摩耗性がさらに向上するからである。他方、粒度を小さくするためにスラリーに過度のせん断力をかけると、カーボンブラックのストラクチャーが破壊され、補強性の低下を引き起こすので、(B)水分散スラリー溶液から乾燥回収したカーボンブラックの24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上、さらに好ましくは96%以上保持するように混合することが好ましい。
【0014】
本発明に用いられる天然ゴムラテックスは、ラテックス中のアミド結合を分解する工程を経ていていてもよい。アミド結合を予め分解しておけば、アミド結合の水素結合性によって分子同士が絡み合い、ゴムの粘度上昇をもたらすという欠点を軽減し、加工性を改善できる。
【0015】
かかるアミド結合分解工程において、プロテアーゼおよび/または芳香族ポリカルボン酸誘導体を用いることが好ましい。ここで、プロテアーゼとは、天然ゴムラテックス粒子の表面層成分中に存在するアミド結合を加水分解する性質を有するものであり、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼなどが挙げられる。本発明においては、特にアルカリ性プロテアーゼが効果の点から好ましい。
【0016】
プロテアーゼによってアミド結合の分解を行う場合は、混合する酵素に適した条件で行えばよく、例えば天然ゴムラテックスにノボザイムズ製アルカラーゼ2.5LタイプDXを混合する場合には、通常20〜80℃の範囲で、処理することが望ましい。この際のpHは、通常6.0〜12.0の範囲で行われる。また、プロテアーゼの添加量は、天然ゴムラテックスに対して、通常0.01重量%〜2重量%、好ましくは0.02重量%〜1重量%の範囲である。
【0017】
また、芳香族ポリカルボン酸誘導体を用いる方法において、芳香族ポリカルボン酸誘導体とは、下記一般式(I)で示される化合物をいう。
【0018】
【化1】

【0019】
[式(I)中、mおよびkはそれぞれ1〜3の整数、pは1〜4の整数で、m+k+p=6であり、m≧2の場合、カルボキシル基の一部または全部が分子内で無水化されていてもよい。Xは、酸素、NR3(R3は水素または炭素数1〜24のアルキル基)または−O(R4O)q(R4は炭素数1〜4のアルキレン基、qは1〜5の整数)。R1は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基または炭素数6〜24のアリール基、R2は、水素、−OH、アルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、R1およびR2は共に一部または全部の水素がハロゲンで置換されていてもよい。]
【0020】
本発明においては、上記一般式(I)で表される芳香族ポリカルボン酸誘導体のうち、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびその無水物のいずれかの誘導体が好ましく、具体的には、フタル酸モノステアリル、フタル酸モノデシル、フタル酸モノオクチルアミド、フタル酸ポリオキシエチレンラウリルエステル、トリメリット酸モノデシル、トリメリット酸モノステアリル、ピロメリット酸モノステアリル、ピロメリット酸ジステアリル等が挙げられる。
なお、芳香族ポリカルボン酸誘導体を、天然ゴムラテックスに混合する場合の条件は、天然ゴムラテックスの種類、また使用する芳香族ポリカルボン酸の種類に応じて適宜選択して行えばよい。
【0021】
芳香族ポリカルボン酸誘導体の添加量は、天然ゴムラテックスに対して、0.01〜30重量%配合することが好ましい。添加量が0.01重量%未満ではムーニー粘度を十分に低下できないことがあり、一方、30重量%を超えると、その増量に見合った効果が得られないばかりではなく、加硫ゴムの破壊特性などに悪影響を生じることがある。使用する天然ゴムラテックスの種類、グレードなどにより、その添加量は上記配合範囲内で変動するものであるが、コスト、物性などの面から、0.05〜20重量%の範囲が望ましい。
【0022】
また、天然ゴムラテックスのアミド結合を分解する工程においては、さらに、ラテックスの安定性を向上させる目的で、界面活性剤を加えることが望ましい。界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性界面活性剤を使用できるが、特にアニオン系、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの性状に応じて適宜調整しうるが、通常天然ゴムラテックスに対して、0.01重量%〜2重量%、好ましくは0.02重量%〜1重量%である。
【0023】
上記天然ゴムラテックスと水分散スラリー溶液とを混合する工程においては、予め、水中にカーボンブラックが分散したスラリー溶液を製造しておくことが必要であるが、このスラリー溶液の製造方法は公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
カーボンブラックの水分散スラリー溶液の製造には、ローター・ステータータイプのハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ホモミキサー等が用いられる。
例えば、ホモミキサーに所定量のカーボンブラックと水を入れ、一定時間攪拌することで、当該スラリー溶液を調製することができる。
【0024】
なお、上記カーボンブラックのスラリー濃度は、スラリーに対して0.5重量%〜30重量%が好ましく、特に好ましい範囲は1重量%〜15重量%である。
【0025】
マスターバッチの凝固方法としては、通常と同様、蟻酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩の凝固剤を用いて行われる。また、本発明においては、凝固剤を添加せず、天然ゴムラテックスと前記スラリーとを混合することによって、凝固がなされる場合もある。
また、マスターバッチには、所望に応じて、カーボンブラック以外に、シリカ、その他の無機充填材(アルミナ、アルミナ−水和物、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、クレー、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム等)、界面活性剤、加硫剤、老化防止剤、着色剤、分散剤等の薬品など種々の添加剤を加えることができる。
【0026】
マスターバッチ製造の最終工程として、乾燥が通常行われる。本発明においては、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー等の通常の乾燥機を用いることができるが、さらにカーボンブラックの分散性を向上させるためには、機械的せん断力をかけながら乾燥を行なうことが好ましい。これにより、加工性、補強性、低燃費性に優れたゴムを得ることができる。この乾燥は、一般的な混練機を用いて行なうことができるが、工業的生産性の観点から、連続混練機を用いることが好ましい。さらには、同方向回転、あるいは異方向回転の多軸混練押出機を用いることがより好ましい。
【0027】
尚、上記のせん断力をかけながら乾燥を行う工程においては、乾燥工程前のマスターバッチ中の水分は10%以上であることが好ましい。この水分が10%未満であると、乾燥工程でのカーボンブラック分散の改良幅が小さくなってしまうことがあるからである。
【0028】
本発明のゴム組成物は、前記のカーボンブラック含有天然ゴムマスターバッチを用いて得られるが、このゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤,加硫促進剤,老化防止剤,などを添加することができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各実施例、比較例における各種測定は下記により行なった。
【0030】
(1)スラリー溶液中のカーボンブラックの粒度分布測定(体積平均粒子径(mv)、90体積%粒径(D90))
レーザー回折型粒度分布計(MICROTRAC FRA型)を使用し、水溶媒(屈折率1.33)を用いて測定した。粒子屈折率(Particle refractive index)は全ての測定において1.57を用いた。また、カーボンブラックの再凝集を防ぐため、分散後直ちに測定を行った。
(2)CTAB比表面積
ISO 6810に準拠して測定した。
(3)24M4DBP吸油量
ISO 6894に準拠して測定した。
(4)比着色力(TINT)
ISO 5435に準拠して測定した。
【0031】
(5)耐破壊性(引張試験)
JIS K6251−1993に準拠して、加硫ゴム組成物サンプルの引張試験を行い、23℃で測定した時の破断時の伸び(Eb)を求めた。結果は比較例2を100として指数で表した。数値が大きい程良好であることを示す。
(6)発熱性
TOYOSEIKI社製スペクトロメータ(動的歪振幅1%、周波数52Hz、測定温度25℃)を使用して、加硫ゴム組成物サンプルのtanδ(損失係数)を測定した。結果は比較例2を100として指数で表した。数値が小さい程低発熱で、良好であることを示す。
(7)耐亀裂成長性
JIS K6260に準拠して40℃の温度条件で、加硫ゴム組成物サンプルの亀裂成長試験を行った。結果は比較例2を100として指数で表した。数値が大きい程良好であることを示す。
【0032】
製造例1 カーボンブラックの製造
通常のオイル・ファーネスカーボンブラック製造装置を用いて、第1表に示す製造条件で、カーボンブラックC、D及びEを製造した。尚、カーボンブラックA(N326)として、市販品の旭カーボン株式会社製「旭#70L」(商標)を用い、カーボンブラックB(N330)として、市販品の旭カーボン株式会社製「旭#70」(商標)を用いた。
【0033】
【表1】

【0034】
製造例2 天然ゴムラテックスの製造
1.天然ゴムラテックス1
天然ゴムのフィールドラテックス(ゴム分24.2%)を脱イオン水で希釈し、ゴム分20%のものにした。
2.天然ゴムラテックス2
天然ゴムのフィールドラテックス(ゴム分24.2%)を脱イオン水で希釈し、ゴム分20%のものにした。このラテックスに、アニオン系界面活性剤(花王製デモール N)を0.5%、アルカリ性プロテアーゼ(ノボザイムス社製アルカラーゼ2.5LタイプDX)を0.1%加え、40℃で8時間攪拌することにより、天然ゴム中のアミド結合を分解した。
【0035】
製造例3 カーボンブラックの水分散スラリー溶液の製造
ローター径50mmのコロイドミルに脱イオン水1425gと、カーボンブラックA及びC〜Eのいずれかを75グラムを投入し、夫々、ローター・ステーター間隙0.3mm、回転数5,000rpmで10分間攪拌した。このように、カーボンブラックA及びC〜Eに対応して、4種類の水分散スラリー溶液A及びC〜Eを製造した。
水分散スラリー溶液A及びC〜E中のカーボンブラックの粒度分布(体積平均粒子径(mv)及び90体積%粒径(D90))及び水分散スラリー溶液から乾燥回収したカーボンブラックの24M4DBP吸油量の保持率を第2表に示す。
【0036】
【表2】

実施例1〜3、比較例1
【0037】
製造例2で製造した天然ゴムラテックス1と天然ゴムラテックス2のいずれかと、水分散スラリー溶液A及びC〜Eのいずれかを、天然ゴムとカーボンブラックとの質量比が100:60となるように添加し、夫々、攪拌しながら、蟻酸をpH4.5になるまで加えた。これら4種類の凝固したマスターバッチを夫々、回収、水洗し、水分が約40%になるまで脱水を行った。次に、4種類のマスターバッチを、夫々、神戸製鋼製2軸混練押出機(同方向回転スクリュー径 30mm、L/D=35、ベントホール3ヶ所)を用いて、バレル温度120℃、回転数100rpmで乾燥した。
以上のように製造した4種類の天然ゴムウエットマスターバッチを用いて、第3表に示す配合処方により、実施例1〜3及び比較例1のゴム組成物を調製した。
これら4種のゴム組成物を加硫した後、耐破壊性(引張試験)、発熱性及び耐亀裂成長性を上述の試験方法で実施した。結果を第4表に示す。尚、念のため、第1表に示したカーボンブラック物理化学特性を再掲する。
【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

比較例2〜4
【0040】
第1表のカーボンブラックA、B及びDを用いて、第3表に示す配合処方により、比較例2〜4のゴム組成物をバンバリー・ミキサーによる乾式混合によって調製した。
これら3種のゴム組成物を加硫した後、耐破壊性(引張試験)、発熱性及び耐亀裂成長性を上述の試験方法で実施した。結果を第4表に示す。尚、念のため、第1表に示したカーボンブラック物理化学特性を再掲する。
【0041】
第3表に用いられた各有機薬品の化学名又は商品名を下記する。
有機酸コバルト: ローディア社製、マノボンドC
亜鉛華: 白水化学株式会社製、商標:1号亜鉛華
老化防止剤: 大内新興化学工業株式会社製、商標:ノクラック6C
加硫促進剤: 大内新興化学工業株式会社製、商標:ノクセラーDZ
硫黄: 軽井沢精錬所株式会社製
【0042】
第4表から明らかなごとく、本発明の諸特性を改良したカーボンブラックを用いた天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物は、耐破壊性、発熱性及び耐亀裂成長性、特に、耐破壊性及び耐亀裂成長性が改良されている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物は、乗用車用ラジアルタイヤ、トラック・バス用ラジアルタイヤ又は建設車両用ラジアルタイヤ等の各種アタイヤのスチールベルト用、スチールブレーカー用、カーカスプライ用、ビードチェファー用又は工業ゴム製品用スチールコーティングゴム等の各部材に好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックスと、
(1)CTAB比表面積(m2/g)が、 60 < CTAB < 110 の範囲内にあり、
(2)24M4DBP(ml/100g)が、 55 < 24M4DBP < 75 の範囲内にあり、
(3)CTAB比表面積と比着色力(TINT)が、 TINT > 0.41×CTAB+81 の関係を有し、かつ
(4)カーボンブラック配合量が天然ゴム分100質量部に対して10〜100質量部であるカーボンブラックを予め水中に分散させたスラリー溶液とを混合してなる天然ゴムウエットマスターバッチゴム組成物。
【請求項2】
前記の混合する工程において、
(A)水分散スラリー溶液中のカーボンブラックの粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ
(B)水分散スラリー溶液から乾燥回収したカーボンブラックの24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持していることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
天然ゴムラテックスが、ラテックス中のアミド結合を分解する工程を経ていることを特徴とする請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
アミド結合分解工程において、プロテアーゼおよび/または芳香族ポリカルボン酸誘導体を用いることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
プロテアーゼがアルカリ性プロテアーゼである請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
天然ゴムラテックスおよび/または前記スラリー溶液に界面活性剤を加えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
凝固後の天然ゴムウエットマスターバッチを乾燥させる工程で、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
連続混練機を用いて乾燥を行うことを特徴とする請求項7記載のゴム組成物。
【請求項9】
連続混練機が多軸混練押出機であることを特徴とする請求項8記載のゴム組成物。


【公開番号】特開2006−213804(P2006−213804A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27198(P2005−27198)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】