説明

ゴム組成物

【課題】充分な低発熱性を実現するだけでなく、従来よりさらに耐亀裂成長性にも優れたゴム組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のゴム組成物は、天然ゴムラテックス中の総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にある天然ゴム20〜80質量%と、シス含量が90%以上であるブタジエン系重合体とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発熱性および耐久性に優れたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー、省資源の社会的要請の下、自動車の燃料消費量を節約するため、優れた耐久性を有するタイヤが求められ、従来よりもさらに低発熱性(低ロス性)および耐破壊特性に優れたゴム組成物が強く望まれている。
こうしたなか、タイヤの転がり抵抗を低減する手法として、低発熱性のゴム組成物を用いるのが一般的である。こうした性能を発現させるには、特許文献1に開示されるような高純度化された天然ゴムや、シス含量の高い共役ジエン系重合体をゴム成分として使用することが極めて有効な手段である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−262973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような天然ゴムを採用した場合、天然ゴム中に存在する非ゴム成分が起因となって亀裂が生じるおそれがあり、また上述のような共役ジエン系重合体を採用した場合には、該重合体中のビニル構造が起因となって亀裂が生じるおそれがある。したがって、これらのゴム組成物においても、こうした亀裂発生を充分に抑制するという観点からは依然として改善されるべき余地が残されている。
【0005】
また、現在、さらなる低発熱性の向上を実現するために変性剤により官能基を導入したブタジエン系重合体の適用も検討されているが、配位重合において重合後に変性剤によって導入され得る官能基は特定のものに限られており、より優れた低発熱性の実現という観点からすると、導入する官能基を選択する自由度は依然として低い。
【0006】
そこで、本発明は、充分な低発熱性を実現するだけでなく、さらに耐亀裂成長性にも優れたゴム組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、特定の天然ゴムと高シス含量のブタジエン系重合体をゴム成分として用いたゴム組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量%中に、
天然ゴムラテックス中の総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にある天然ゴム20〜80質量%と、
シス含量が90%以上であるブタジエン系重合体
とを含むことを特徴とする。
前記ブタジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であり、かつビニル含量が2.0%以下であるのが望ましく、また、前記ブタジエン系重合体は、前記ゴム成分100質量%中に80〜20質量%の量で含まれるのが望ましい。
また、前記天然ゴムは、天然ゴムラテックス中の蛋白質を機械的分離手法、化学的処理方法または酵素を用いた処理方法により部分脱蛋白処理してなるラテックスから得られたゴムであるのが望ましい。
【0009】
前記ブタジエン系重合体は、変性剤で変性されてなるのが好ましく、該変性剤は窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む変性基を有するのが望ましい。
また、このような変性剤としては複素環式ニトリル化合物が好ましく、該複素環式ニトリル化合物は、式(W1)または式(W2)で表されるものであってもよい。
θ−C≡N ・・・(W1)
θ−Rx−C≡N ・・・(W2)
(式(W1)および(W2)中、θは複素環基を示し、Rxは2価の炭化水素基を示す。)。
【0010】
前記式(W1)および(W2)中、θが窒素原子を含む複素環基、酸素原子を含む複素環基、硫黄原子を含む複素環基、2以上のヘテロ原子を含む複素環基、および1以上のシアノ基を含む複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種の複素環基であるのが好ましく、さらに、複素芳香環基または複素非芳香環基、あるいは単環式、二環式、三環式、または多環式の複素環基であるのが好ましい。
【0011】
また、前記変性剤は(a)〜(g)成分の化合物の中から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
(a)成分:R6nM’Z4-n、M’Z4、M’Z3、R7nM’(−R8−COOR94-nまたはR7nM’(−R8−COOR94-n(式中、R6〜R8は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基またはエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはリン原子、Zはハロゲン原子、nは0〜3の整数である。)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物または有機金属化合物、
(b)成分:分子中に、Y=C=Y’結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子、Y’は酸素原子、窒素原子または硫黄原子である。)を含有するヘテロクムレン化合物、
(c)成分:分子中に、式(I)で表される結合を含有するヘテロ3員環化合物;
【化1】

(式(I)中、Y’は酸素原子、窒素原子または硫黄原子である。)、
(d)成分:ハロゲン化イソシアノ化合物、
(e)成分:R10−(COOH)m、R11(COZ)m、R12−(COO−R13)、R14−OCOO−R15、R16−(COOCO−R17m、または式(II)
【化2】

(式(II)中、R10〜R18は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Zはハロゲン原子、mは1〜5の整数である。)に対応するカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物または酸無水物、
(f)成分:R19kM’’(OCOR204-k、R21kM’’(OCO−R22−COOR234-k、または式(III)
【化3】

(式(III)中、R19〜R25は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M’’はスズ原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子、kは0〜3の整数、pは0または1である。)に対応するカルボン酸の金属塩、
(g)成分:N−置換アミノケトン、N−置換アミノチオケトン、N−置換アミノアルデヒド、N−置換アミノチオアルデヒド、および分子中に−C−(=M)−N<結合(Mは酸素原子または硫黄原子を表す。)を有する化合物。
【0012】
前記変性剤は、式(IV)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種の(h)成分であってもよい。
【化4】

(式(IV)中、X1〜X5は、水素原子、あるいはハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基およびスルホニルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基を示す。X1〜X5は互いに同一であっても異なっていてもよいが、それらの中の少なくとも1つは水素原子ではない。R1〜R5は、それぞれ独立して単結合または炭素数1〜18の二価の炭化水素基を示す。また、X1〜X5およびR1〜R5のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい。)。
【0013】
前記ブタジエン系重合体は、
(A)成分:周期律表の原子番号57〜71のランタン系列希土類元素含有物、またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物、
(B)成分:AlR262728(式中、R26およびR27は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子、R28は炭素数1〜10の炭化水素基であり、ただし、R28は上記R26またはR27と同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機アルミニウム化合物、ならびに
(C)成分:ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、および活性ハロゲンを含む有機化合物の少なくとも1種からなる触媒系によりブタジエン系単量体を重合してなるものであるのが望ましい。
【0014】
さらに、前記ブタジエン系重合体のシス含量は、98%以上であるのが望ましい。
また、前記天然ゴムの非ゴム成分は、6質量%未満であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴム組成物によれば、上記特定の天然ゴムと高シス含量のブタジエン系重合体をゴム成分として用いているので、低発熱性に優れるとともに、従来のゴム組成物に比して、大幅に耐亀裂成長性を向上することができる。また、上記ブタジエン系重合体は、従来よりも導入し得る官能基の選択の自由度が拡張されているので、さらに低発熱性を向上させたゴム組成物を得ることも可能である。
【0016】
したがって、本発明のゴム組成物をタイヤ用ゴム組成物として採用すれば、優れた低発熱性と耐亀裂成長性とを兼ね備える高性能なタイヤを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量%中に、
天然ゴムラテックス中の総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にある天然ゴム20〜80質量%と、
シス含量が90%以上であるブタジエン系重合体
とを含むことを特徴としている。
【0018】
[天然ゴム]
本発明に用いる天然ゴムは、天然ゴムラテックス中の総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にあり、好ましくは0.1質量%を超えて0.3質量%、より好ましくは0.12質量%を超えて0.2質量%以下である。上記上限値を超えると非結合性蛋白が存在するので充分な低発熱性を発揮することが困難となる。上記下限値未満であると、結合性蛋白も除去されてしまうため、加硫や加工性に悪影響を与えるおそれがある。
【0019】
上記天然ゴムは、天然ゴムラテックス中の蛋白質を機械的分離手法、化学的処理方法または酵素を用いた処理方法により部分脱蛋白処理してなるラテックスから得られたゴムであるのが望ましい。このような天然ゴムは、一般の天然ゴム製造工程、すなわちラテックスのタッピング、凝固、洗浄、脱水、乾燥、パッキングの順で行われる工程において、タッピング後凝固前のラテックスを、固形成分中の総窒素含有量が一定範囲となるように、機械的分離手法、好ましくは遠心分離濃縮法により部分脱蛋白処理を行なった後、得られた天然ゴムラテックスを凝固し、乾燥処理することにより得られる。
【0020】
また、上記天然ゴムは、化学的処理方法または酵素を用いた処理方法により得ることもできる。このような化学的処理方法または酵素を用いた処理方法としては、例えば、酵素を用いた分解処理方法、界面活性剤を用い繰り返し洗浄する方法、酵素と界面活性剤とを併用する方法、ナトリウムメトキシト゛を用いたエステル交換処理方法、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いたケン化法などがある。ここで酵素としては、プロテアーゼのほか、ペプチターゼ、セルラーゼ、ぺクチナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ等を単独または組み見合わせて用いることができる。これらの酵素の酵素活性は0.1〜50APU/gの範囲が適当である。これらのなかでも、機械的な遠心分離濃縮法によるのが望ましい。なお、原料となる天然ゴムラテックスは特に限定されず、フィールドラテックスや市販のラテックスなどを用いることができる。
【0021】
本発明における天然ゴム中の総窒素含有量は、蛋白質含量の指標となるもので、原料天然ゴムラテックスの遠心分離条件(回転数,時間など)を調整してその含有量をコントロールすることができるが、得られる天然ゴム製品中の総窒素含有量が上記数値範囲内になるように調整して製造することが必要である。前記遠心分離の条件としては、特に制限されるものではないが、例えば7500回程度の回転数で数回繰り返し行うことが好ましい。すなわち、遠心分離濃縮ラテックスにおける固形分中の総窒素含有量を0.1質量%を超えて0.4質量%以下に調整した後、凝固、乾燥して製造するのがよい。一方、このような部分脱蛋白の操作条件においては、意外にも、例えばトコトリエノールなどの老防有効成分は殆ど失われないために、耐熱性は従来の天然ゴムとほぼ同レベルで維持することができる。
【0022】
また、上記天然ゴム中の非ゴム成分は、6質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは4質量%未満の量である。なお、該非ゴム成分は可能な限り除去するのが望ましい。このように、亀裂発生の原因となり得る非ゴム成分の量を極力低減することで、後述するブタジエン系重合体と相まって、ゴム組成物の耐亀裂成長性を格段に向上させることが可能となる。
【0023】
さらに、上記天然ゴム中の糖類量は、0.4質量%以下、好ましくは0.3質量%以下の量である。
【0024】
前記処理ラテックスを凝固して得られたゴム成分は洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の通常の乾燥機を用いて乾燥することにより、本発明における天然ゴムを得ることができる。このように、本発明の天然ゴムは、原料の天然ゴムラテックスを、遠心分離濃縮工程において、固形成分中の総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下になるように部分脱蛋白処理を行なった後、得られた天然ゴム濃縮ラテックスを凝固、乾燥処理して製造することができる。
【0025】
[ブタジエン系重合体]
本発明のブタジエン系重合体は、シス含量(1,4−シス結合含量)が90%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは96%以上、最も好ましくは98%以上である。シス含量が90%未満では、本発明の効果が発現しにくい傾向となり、上記範囲内であると、伸長結晶性の増加により、上記天然ゴムとも相まって、優れた耐亀裂成長性を発揮することが可能となる。なお、シス含量とは、ブタジエン系重合体中のブタジエン単量体単位における1,4−シス結合の割合を意味する。
【0026】
また、上記ブタジエン系重合体のビニル含量(1,2−ビニル結合含量)は、通常2.0%以下、好ましくは1.2%以下、より好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.9%以下である。ビニル含量が上記範囲外であると、伸長結晶性が低下し、耐亀裂成長性が悪化するおそれがある。ここで、ビニル含量とは、ブタジエン系重合体中のブタジエン単量体単位における1,2−ビニル結合の割合を意味する。
【0027】
さらに、上記ブタジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は好ましくは10万〜50万、より好ましくは15万〜30万、分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下である。ここで、MnおよびMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求められる値を意味する。
【0028】
上記ブタジエン系重合体は、1,3−ブタジエン単量体単位が80〜100質量%で、1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体単位が20〜0質量%であるのが好ましい。重合体中の1,3−ブタジエン単量体単位含量が80質量%未満では、重合体全体に対する1,4−シス結合含量が低下するため、本発明の効果が発現しにくくなる。なお、本発明のブタジエン系重合体は、1,3−ブタジエン単量体のみからなるのが特に好ましく、すなわち、ポリブタジエンゴム(BR)であるのが特に好ましい。
【0029】
ここで、1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体としては、例えば、炭素数5〜8の共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体等が挙げられ、これらの中でも、炭素数5〜8の共役ジエン単量体が好ましい。上記炭素数5〜8の共役ジエン単量体としては、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。上記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0030】
上記ブタジエン系重合体は、以下に示す触媒系により少なくとも1,3−ブタジエンを含む単量体を重合してなるのが望ましい。ここで、単量体としては、1,3−ブタジエンの他、上述した1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体が挙げられる。このような触媒系としては、
(A)成分:周期律表の原子番号57〜71の希土類元素含有化合物、またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物、
(B)成分:下記一般式(XVII):
AlR262728・・・(XVII)
(式中、R26およびR27は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、
28は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R28は上記R26またはR27と同一であっても異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物、並びに
(C)成分:ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、および活性ハロゲンを含む有機化合物の少なくとも一種からなる触媒系が挙げられる。
【0031】
また、本発明において、ブタジエン系重合体の重合に用いる触媒系には、上記(A)〜(C)成分の他に、さらに(D)成分として、有機アルミニウムオキシ化合物、所謂アルミノキサンを添加するのが好ましい。ここで、前記触媒系は、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および共役ジエン単量体の存在下で予備調製されてなるのが、さらに好ましい。
【0032】
本発明において、ブタジエン系重合体の重合に用いる触媒系の(A)成分は、周期律表の原子番号57〜71の希土類元素を含有する化合物、またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物である。ここで、原子番号57〜71の希土類元素の中でも、ネオジム、プラセオジウム、セリウム、ランタン、ガドリニウム等、またはこれらの混合物が好ましく、ネオジムが特に好ましい。
【0033】
上記希土類元素含有化合物としては、炭化水素溶媒に可溶な塩または錯体が好ましく、具体的には、上記希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩および亜リン酸塩が挙げられ、これらの中でも、カルボン酸塩およびリン酸塩が好ましく、カルボン酸塩が特に好ましい。
【0034】
ここで、炭化水素溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数5〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0035】
上記希土類元素のカルボン酸塩としては、下記一般式(XVIII):
(R29−CO23M・・・(XVIII)
(式中、R29は炭素数1〜20の炭化水素基で、Mは周期律表の原子番号57〜71の希土類元素である)で表される化合物が挙げられる。ここで、R29は、飽和または不飽和でもよく、アルキル基およびアルケニル基が好ましく、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。また、カルボキシル基は、1級、2級または3級の炭素原子に結合している。該カルボン酸塩として、具体的には、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名であって、カルボキシル基が3級炭素原子に結合しているカルボン酸]等の塩が挙げられ、これらの中でも、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、バーサチック酸の塩が好ましい。
【0036】
上記希土類元素のアルコキサイドとしては、下記一般式(XIX):
(R30O)3M・・・(XIX)
(式中、R30は炭素数1〜20の炭化水素基で、Mは周期律表の原子番号57〜71の希土類元素である)で表される化合物が挙げられる。R30Oで表されるアルコキシ基としては、2−エチル−ヘキシルオキシ基、オレイルオキシ基、ステアリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、2−エチル−ヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基が好ましい。
【0037】
上記希土類元素のβ−ジケトン錯体としては、上記希土類元素のアセチルアセトン錯体、ベンゾイルアセトン錯体、プロピオニトリルアセトン錯体、バレリルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体等が挙げられる。これらの中でも、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
【0038】
上記希土類元素のリン酸塩および亜リン酸塩としては、上記希土類元素と、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸等との塩が挙げられ、これらの中でも、上記希土類元素と、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸との塩が好ましい。
【0039】
上記希土類元素含有化合物の中でも、ネオジムのリン酸塩、およびネオジムのカルボン酸塩がさらに好ましく、特にネオジムの2−エチルヘキサン酸塩、ネオジムのネオデカン酸塩、ネオジムのバーサチック酸塩等のネオジムの分岐カルボン酸塩が最も好ましい。
【0040】
また、(A)成分は、上記希土類元素含有化合物とルイス塩基との反応物でもよい。該反応物は、ルイス塩基によって、希土類元素含有化合物の溶剤への溶解性が向上しており、また、長期間安定に貯蔵することができる。上記希土類元素含有化合物を溶剤に容易に可溶化させるため、また、長期間安定に貯蔵するために用いられるルイス塩基は、希土類元素1モル当り0〜30モル、好ましくは1〜10モルの割合で、両者の混合物として、または予め両者を反応させた生成物として用いられる。ここで、ルイス塩基としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価または2価のアルコールが挙げられる。
【0041】
以上に述べた(A)成分としての希土類元素含有化合物またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物は、一種単独で使用することも、二種以上を混合して用いることもできる。
【0042】
本発明において、ブタジエン系重合体の重合に用いる触媒系の(B)成分である上記一般式(XVII)で表される有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(B)成分としての有機アルミニウム化合物は、一種単独で使用することも、二種以上を混合して用いることもできる。
【0043】
本発明において、ブタジエン系重合体の重合に用いる触媒系の(C)成分は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、および活性ハロゲンを含む有機化合物からなる群から選択される少なくとも一種のハロゲン化合物である。
【0044】
上記ルイス酸は、ルイス酸性を有し、炭化水素に可溶である。具体的には、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、セスキ臭化メチルアルミニウム、セスキ塩化メチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、二塩化ジブチルスズ、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化スズ、四塩化ケイ素等が例示できる。これらの中でも、塩化ジエチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム、および二臭化エチルアルミニウムが好ましい。
また、トリエチルアルミニウムと臭素の反応生成物のようなアルキルアルミニウムとハロゲンの反応生成物を用いることもできる。
【0045】
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
【0046】
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
【0047】
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル当り、通常0.01〜30モル、好ましくは0.5〜10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
【0048】
本発明において、ブタジエン系重合体の重合に用いる触媒系には、上記(A)〜(C)成分の他に、さらに(D)成分として、有機アルミノキサン化合物、いわゆるアルミノキサンを添加するのが好ましい。ここで、アルミノキサンとしては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、クロロアルミノキサン等が挙げられる。(D)成分としてアルミノキサンを加えることで、分子量分布がシャープになり、触媒としての活性も向上する。
【0049】
本発明で使用する触媒系の各成分の量又は組成比は、その目的又は必要性に応じて適宜選択される。このうち、(A)成分は、1,3−ブタジエン 100gに対し、0.00001〜1.0ミリモル用いるのが好ましく、0.0001〜0.5ミリモル用いるのが更に好ましい。(A)成分の使用量が0.00001ミリモル未満では、重合活性が低くなり、1.0ミリモルを超えると、触媒濃度が高くなり、脱灰工程が必要となる。また、(A)成分と(B)成分の割合は、モル比で、(A)成分:(B)成分が1:1〜1:700、好ましくは1:3〜1:500である。更に、(A)成分と(C)成分中のハロゲンの割合は、モル比で、1:0.1〜1:30、好ましくは1:0.2〜1:15、更に好ましくは1:2.0〜1:5.0である。また、(D)成分中のアルミニウムと(A)成分との割合は、モル比で、1:1〜700:1、好ましくは3:1〜500:1である。これらの触媒量または構成成分比の範囲外では、高活性な触媒として作用せず、または、触媒残渣を除去する工程が必要になるため好ましくない。また、上記の(A)〜(C)成分以外に、重合体の分子量を調節する目的で、水素ガスを共存させて重合反応を行ってもよい。
【0050】
触媒成分として、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分以外に、必要に応じて、1,3−ブタジエン等の共役ジエン単量体を少量、具体的には、(A)成分の化合物1モル当り0〜1000モルの割合で用いてもよい。触媒成分としての1,3−ブタジエン等の共役ジエン単量体は必須ではないが、これを併用すると、触媒活性が一段と向上する利点がある。
【0051】
上記触媒の製造は、例えば、溶媒に(A)成分〜(C)成分を溶解させ、さらに必要に応じて、1,3−ブタジエンを反応させることによる。その際、各成分の添加順序は、特に限定されず、更に(D)成分としてアルミノキサンを添加してもよい。重合活性の向上、重合開始誘導期間の短縮の観点からは、これら各成分を、予め混合して、反応させ、熟成させることが好ましい。ここで、熟成温度は、0〜100℃であり、20〜80℃が好ましい。0℃未満では、充分に熟成が行われず、100℃を超えると、触媒活性の低下や、分子量分布の広がりが起こる。また、熟成時間は、特に制限なく、重合反応槽に添加する前にライン中で接触させることでも熟成でき、通常は、0.5分以上あれば充分であり、数日間は安定である。
【0052】
上記ブタジエン系重合体の製造は、溶液重合で行うことが好ましい。ここで、溶液重合の場合、重合溶媒としては、不活性の有機溶媒を用いる。不活性の有機溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数5〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜6の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素が特に好ましい。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
上記ブタジエン系重合体の製造は、25℃以下の重合温度で行う必要があり、10〜−78℃で行うのが好ましい。重合温度が25℃を超えると、重合反応を充分に制御することができず、生成したブタジエン系重合体のシス−1,4結合含量が低下し、ビニル結合含量が上昇してしまう。また、重合温度が−78℃未満では、溶媒の凝固点を下まわってしまうため、重合を行うことができない。
【0054】
上記ブタジエン系重合体の製造は、回分式及び連続式のいずれで行ってもよい。また、上記ブタジエン系重合体の製造において、上記希土類元素化合物系触媒及び重合体を失活させないために、重合の反応系内に酸素、水、炭酸ガス等の失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。
【0055】
[変性剤]
上記ブタジエン系重合体は変性剤で変性されてなるのが好ましく、このような変性剤としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む変性基を有するのが望ましい。これにより、変性基に存在する上記原子に起因して、該重合体に存在する非局在化した電子が作用し、カーボンブラックに対する親和性をより向上させることができ、これら充填剤を極めて効果的に分散させることが可能となって、より優れた低発熱性を実現できる。また、上記変性剤は、実質的に活性プロトンを含まないのが望ましく、活性プロトンを一切含まないのがより望ましい。変性剤に活性プロトンが存在すると、たとえば上記ブタジエン系重合体を重合する際に有機リチウム化合物のような重合開始剤を用いた場合、重合体の末端に結合したリチウムに活性プロトンが結合しやすく、重合性が低下するおそれがある。そのうえ、ブタジエン系重合体に所望の変性基を導入しにくくなるおそれもあり、上記のような効果の発現を阻害する要因となり得る。
【0056】
上記変性剤は複素環式ニトリル化合物であるのが望ましい。従来、ブタジエン系重合体に導入し得る変性基は−CN、−SiCl、−SiOR、C=Oのような特定の基に限られていたが、本発明では、より優れた低発熱性の実現化という観点から、さらに好適な共役変性基を導入することができる。このような共役系変性基は、カーボンブラック等の充填剤に対する親和性の向上に寄与することとなる。
【0057】
上記複素環式ニトリル化合物としては、具体的には式(W1)または式(W2)で表される化合物であるのが望ましい。
θ−C≡N ・・・(W1)
θ−Rx−C≡N ・・・(W2)
上記式(W1)および(W2)中、θは複素環基を示す。さらにθが窒素原子を含む複素環基、酸素原子を含む複素環基、硫黄原子を含む複素環基、2以上のヘテロ原子を含む複素環基、および1以上のシアノ基を含む複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種の複素環基であるのが好ましい。また、チオフェン、ピリジン、フラン、ピペリジン、ジオキサンなどの複素芳香環基または複素非芳香環基であってもよく、さらに単環式、二環式、三環式、または多環式の複素環基であってもよい。
【0058】
このようなθとして具体的には、たとえば、窒素原子を含む複素環基として、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、N−メチル−2−ピロリル、N−メチル−3−ピロリル、N−メチル−2−イミダゾリル、N−メチル−4−イミダゾリル、N−メチル−5−イミダゾリル、N−メチル−3−ピラゾリル、N−メチル−4−ピラゾリル、N−メチル−5−ピラゾリル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−4−イル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−5−イル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−5−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル、1,2,4−トリアジン−6−イル、1,3,5−トリアジニル、N−メチル−2−ピロリン−2−イル、N−メチル−2−ピロリン−3−イル、N−メチル−2−ピロリン−4−イル、N−メチル−2−ピロリン−5−イル、N−メチル−3−ピロリン−2−イル、N−メチル−3−ピロリン−3−イル、N−メチル−2−イミダゾリン−2−イル、N−メチル−2−イミダゾリン−4−イル、N−メチル−2−イミダゾリン−5−イル、N−メチル−2−ピラゾリン−3−イル、N−メチル−2−ピラゾリン−4−イル、N−メチル−2−ピラゾリン−5−イル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、N−メチルインドール−2−イル、N−メチルインドール−3−イル、N−メチルイソインドール−1−イル、N−メチルイソインドール−3−イル、1−インドリジニル、2−インドリジニル、3−インドリジニル、1−フタラジニル、2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、2−キノキサリニル、3−シンノリニル、4−シンノリニル、1−メチルインダゾール−3−イン、1,5−ナフチリジン−2−イル、1,5−ナフチリジン−3−イル、1,5−ナフチリジン−4−イル、1,8−ナフチリジン−2−イル、1,8−ナフチリジン−3−イル、1,8−ナフチリジン−4−イル、2−プテリジニル、4−プテリジニル、6−プテリジニル、7−プテリジニル、1−メチルベンズイミダゾール−2−イル、6−フェナンスリジニル、N−メチル−2−プリニル、N−メチル−6−プリニル、N−メチル−8−プリニル、N−メチル−β−カルボリン−1−イル、N−メチル−β−カルボリン−3−イル、N−メチル−β−カルボリン−4−イル、9−アクリジニル、1,7−フェナントロリン−2−イル、1,7−フェナントロリン−3−イル、1,7−フェナントロリン−4−イル、1,10−フェナントロリン−2−イル、1,10−フェナントロリン−3−イル、1,10−フェナントロリン−4−イル、4,7−フェナントロリン−1−イル、4,7−フェナントロリン−2−イル、4,7−フェナントロリン−3−イル、1−フェナジニル、2−フェナジニル、ピロリジノ、ピペリジノが挙げられる。
【0059】
酸素原子を含む複素環基として、2−フリル、3−フリル、2−ベンゾ[b]フリル、3−ベンゾ[b]フリル、1−イソベンゾ[b]フリル、3−イソベンゾ[b]フリル、2−ナフト[2,3−b]フリル、3−ナフト[2,3−b]フリルが挙げられる。
【0060】
硫黄原子を含む複素環基として、2−チエニル、3−チエニル、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、1−イソベンゾ[b]チエニル、3−イソベンゾ[b]チエニル、2−ナフト[2,3−b]チエニル、3−ナフト[2,3−b]チエニルが挙げられる。
【0061】
2以上のヘテロ原子を含む複素環基として、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−イル、1,2,3−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、2−オキサゾリン−2−イル、2−オキサゾリン−4−イル、2−オキサゾリン−5−イル、3−イソオキサゾリニル、4−イソオキサゾリニル、5−イソオキサゾリニル、2−チアゾリン−2−イル、2−チアゾリン−4−イル、2−チアゾリン−5−イル、3−イソチアゾリニル、4−イソチアゾリニル、5−イソチアゾリニル、2−ベンゾチアゾリル、モルホリノが挙げられる。
【0062】
これらのなかでも、θは窒素原子を含む複素環基であるのが好ましく、特に2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルであるのが好ましい。
【0063】
上記式(W1)および(W2)中、Rxは2価の炭化水素基を示し、後述する複素環式ニトリル化合物に対応したアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基などに相当する。
【0064】
このような複素環式ニトリル化合物としては、具体的には、たとえば、窒素原子を含む複素環基を有する化合物として、2−ピリジンカルボニトリル、3−ピリジンカルボニトリル、4−ピリジンカルボニトリル、ピラジンカルボニトリル、2−ピリミジンカルボニトリル、4−ピリミジンカルボニトリル、5−ピリミジンカルボニトリル、3−ピリダジンカルボニトリル、4−ピリダジンカルボニトリル、N−メチル−2−ピロールカルボニトリル、N−メチル−3−ピロールカルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾールカルボニトリル、N−メチル−4−イミダゾールカルボニトリル、N−メチル−5−イミダゾールカルボニトリル、N−メチル−3−ピラゾールカルボニトリル、N−メチル−4−ピラゾールカルボニトリル、N−メチル−5−ピラゾールカルボニトリル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−5−カルボニトリル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボニトリル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−5−カルボニトリル、1,2,4−トリアジン−3−カルボニトリル、1,2,4−トリアジン−5−カルボニトリル、1,2,4−トリアジン−6−カルボニトリル、1,3,5−トリアジンカルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−2−カルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−3−カルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−4−カルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−5−カルボニトリル、N−メチル−3−ピロリン−2−カルボニトリル、N−メチル−3−ピロリン−3−カルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾリン−2−カルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾリン−4−カルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾリン−5−カルボニトリル、N−メチル−2−ピラゾリン−3−カルボニトリル、N−メチル−2−ピラゾリン−4−カルボニトリル、N−メチル−2−ピラゾリン−5−カルボニトリル、2−キノリンカルボニトリル、3−キノリンカルボニトリル、4−キノリンカルボニトリル、1−イソキノリンカルボニトリル、3−イソキノリンカルボニトリル、4−イソキノリンカルボニトリル、N−メチルインドール−2−カルボニトリル、N−メチルインドール−3−カルボニトリル、N−メチルイソインドール−1−カルボニトリル、N−メチルイソインドール−3−カルボニトリル、1−インドリジンカルボニトリル、2−インドリジンカルボニトリル、3−インドリジンカルボニトリル、1−フタラジンカルボニトリル、2−キナゾリンカルボニトリル、4−キナゾリンカルボニトリル、2−キノキサリンカルボニトリル、3−シンノリンカルボニトリル、4−シンノリンカルボニトリル、1−メチルインダゾール−3−カルボニトリル、1,5−ナフチリジン−2−カルボニトリル、1,5−ナフチリジン−3−カルボニトリル、1,5−ナフチリジン−4−カルボニトリル、1,8−ナフチリジン−2−カルボニトリル、1,8−ナフチリジン−3−カルボニトリル、1,8−ナフチリジン−4−カルボニトリル、2−プテリジンカルボニトリル、4−プテリジンカルボニトリル、6−プテリジンカルボニトリル、7−プテリジンカルボニトリル、1−メチルベンズイミダゾール−2−カルボニトリル、フェナントリジン−6−カルボニトリル、N−メチル−2−プリンカルボニトリル、N−メチル−6−プリンカルボニトリル、N−メチル−8−プリンカルボニトリル、N−メチル−β−カルボリン−1−カルボニトリル、N−メチル−β−カルボリン−3−カルボニトリル、N−メチル−β−カルボリン−4−カルボニトリル、9−アクリジンカルボニトリル、1,7−フェナントロリン−2−カルボニトリル、1,7−フェナントロリン−3−カルボニトリル、1,7−フェナントロリン−4−カルボニトリル、1,10−フェナントロリン−2−カルボニトリル、1,10−フェナントロリン−3−カルボニトリル、1,10−フェナントロリン−4−カルボニトリル、4,7−フェナントロリン−1−カルボニトリル、4,7−フェナントロリン−2−カルボニトリル、4,7−フェナントロリン−3−カルボニトリル、1−フェナジンカルボニトリル、2−フェナジンカルボニトリル、1−ピロリジンカルボニトリル、1−ピペリジンカルボニトリルが挙げられる。
【0065】
酸素原子を含む複素環基を有する化合物としては、2−フロニトリル、3−フロニトリル、2−ベンゾ[b]フランカルボニトリル、3−ベンゾ[b]フランカルボニトリル、イソベンゾ[b]フラン−1−カルボニトリル、イソベンゾ[b]フラン−3−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]フラン−2−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]フラン−3−カルボニトリルが挙げられる。
【0066】
硫黄原子を含む複素環基を有する化合物として、2−チオフェンカルボニトリル、3−チオフェンカルボニトリル、ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニトリル、ベンゾ[b]チオフェン−3−カルボニトリル、イソベンゾ[b]チオフェン−1−カルボニトリル、イソベンゾ[b]チオフェン−3−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]チオフェン−2−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]チオフェン−3−カルボニトリルが挙げられる。
【0067】
2以上のヘテロ原子を含む複素環基を有する化合物として、2−オキサゾールカルボニトリル、4−オキサゾールカルボニトリル、5−オキサゾールカルボニトリル、3−イソオキサゾールカルボニトリル、4−イソオキサゾールカルボニトリル、5−イソオキサゾールカルボニトリル、2−チアゾールカルボニトリル、4−チアゾールカルボニトリル、5−チアゾールカルボニトリル、3−イソチアゾールカルボニトリル、4−イソチアゾールカルボニトリル、5−イソチアゾールカルボニトリル、1,2,3−オキサゾール−4−カルボニトリル、1,2,3−オキサゾール−5−カルボニトリル、1,3,4−オキサゾール−2−カルボニトリル、1,2,3−チアゾール−4−カルボニトリル、1,2,3−チアゾール−5−カルボニトリル、1,3,4−チアゾール−2−カルボニトリル、2−オキサゾリン−2−カルボニトリル、2−オキサゾリン−4−カルボニトリル、2−オキサゾリン−5−カルボニトリル、3−イソオキサゾリンカルボニトリル、4−イソオキサゾリンカルボニトリル、5−イソオキサゾリンカルボニトリル、2−チアゾリン−2−カルボニトリル、2−チアゾリン−4−カルボニトリル、2−チアゾリン−5−カルボニトリル、3−イソチアゾリンカルボニトリル、4−イソチアゾリンカルボニトリル、5−イソチアゾリンカルボニトリル、ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル、4−モルホリンカルボニトリルが挙げられる。
【0068】
2以上のシアノ基を有する化合物として、2,3−ピリジンジカルボニトリル、2,4−ピリジンジカルボニトリル、2,5−ピリジンジカルボニトリル、2,6−ピリジンジカルボニトリル、3,4−ピリジンジカルボニトリル、2,4−ピリミジンジカルボニトリル、2,5−ピリミジンジカルボニトリル、4,5−ピリミジンジカルボニトリル、4,6−ピリミジンジカルボニトリル、2,3−ピラジンジカルボニトリル、2,5−ピラジンジカルボニトリル、2,6−ピラジンジカルボニトリル、2,3−フランジカルボニトリル、2,4−フランジカルボニトリル、2,5−フランジカルボニトリル、2,3−チオフェンジカルボニトリル、2,4−チオフェンジカルボニトリル、2,5−チオフェンジカルボニトリル、N−メチル−2,3−ピロールジカルボニトリル、N−メチル−2,4−ピロールジカルボニトリル、N−メチル−2,5−ピロールジカルボニトリル、1,3,5−トリアジン−2,4−ジカルボニトリル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジカルボニトリル、3,2,4−トリアジン−3,6−ジカルボニトリル、2,3,4−ピリジントリカルボニトリル、2,3,5−ピリジントリカルボニトリル、2,3,6−ピリジントリカルボニトリル、2,4,5−ピリジントリカルボニトリル、2,4,6−ピリジントリカルボニトリル、3,4,5−ピリジントリカルボニトリル、2,4,5−ピリミジントリカルボニトリル、2,4,6−ピリミジントリカルボニトリル、4,5,6−ピリミジントリカルボニトリル、ピラジントリカルボニトリル、2,3,4−フラントリカルボニトリル、2,3,5−フラントリカルボニトリル、2,3,4−チオフェントリカルボニトリル、2,3,5−チオフェントリカルボニトリル、N−メチル−2,3,4−ピロールトリカルボニトリル、N−メチル−2,3,5−ピロールトリカルボニトリル、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリカルボニトリル、1,2,4−トリアジン−3,5,6−トリカルボニトリルが挙げられる。
【0069】
これらのなかでも、2−シアノピリジン(2−ピリジンカルボニトリル)、3−シアノピリジン(3−ピリジンカルボニトリル)、4−シアノピリジン(4−ピリジンカルボニトリル)が好適なものとして挙げられる。
【0070】
上記のようにブタジエン系重合体を複素環式ニトリル化合物で変性する方法としては、重合体と複素環式ニトリル化合物を反応させればよく、たとえば、1,3−ブタジエン単量体を、必要に応じてその他の単量体を加えて触媒または開始剤ともに共役させて重合混合物を得て、これに複素環式ニトリル化合物を添加する方法が挙げられる。また、活性化された重合混合物に複素環式ニトリル化合物を添加してもよく、1,3−ブタジエン単量体を重合させて形成した反応性ポリマーと複素環式ニトリル化合物とを反応させてもよい。さらに、活性化された重合混合物に複素環式ニトリル化合物を添加し、これに官能化剤を添加してもよい。
【0071】
このようにして得られた重合混合物を冷却し、通常の方法を用いて脱溶媒および乾燥を経ることにより、変性されたブタジエン系重合体を得る。たとえば、ポリマーセメントから回収したポリマーを溶媒に流し込み、次いで得られたポリマーをドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥する。このとき、ドラムドライヤーで乾燥したポリマーセメントから直接ポリマーを回収してもよい。得られた乾燥ポリマー中の揮発性物質は1重量%以下となる。
【0072】
得られる変性されたブタジエン系重合体の構造は、たとえば触媒や開始剤の種類や添加量のように反応性ポリマーを調整するのに用いた条件や、複素環式ニトリル化合物の種類や配合量のように反応性ポリマーと複素環式ニトリル化合物とを反応させるのに用いた条件に左右される。
【0073】
上記変性されたブタジエン系重合体は、下記式(X)または(Y)のような構造を有するものと推定される。
【0074】
【化5】

式(X)および(Y)中のAは水素原子または金属原子を示し、金属原子は上記触媒に起因するものである。Bは単結合またはRxを示し、Rxは上記式(W1)および(W2)と同義である。θは上記式(W1)および(W2)と同義であり、θ’はθから1つの原子が脱離した2価の置換基を示す。ただし、θ’はθが有するヘテロ原子にさらに水素原子などが付加した場合も含む。π1およびπ2はともにブタジエン系重合体のポリマー鎖を示す。
【0075】
そして、上記のような構造を有するブタジエン系重合体が水蒸気等にさらされると、加水分解して下記式(X’)または(Y’)のようなケトン系構造に変換されるものと考えられる。
【0076】
【化6】

式(X’)および(Y’)中のB、θ、およびθ’は、上記式(W1)および(W2)と同義である。π1およびπ2はともにブタジエン系重合体のポリマー鎖を示す。
【0077】
上記ブタジエン系重合体がこのような構造をとり得るため、カーボンブラック等の充填剤との相溶性をより向上させる要因となって、さらに優れた低発熱性を実現できるものと推定される。
【0078】
上記変性剤は、さらに以下の(a)〜(h)成分であってもよい。これらの変性剤によって変性されてなる重合体を用いることによっても、得られるゴム組成物は優れた低発熱性を発揮することができる。
【0079】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(a)成分は、ハロゲン化有機金属化合物またはハロゲン化金属化合物である変性剤であり、下記式(V)で表される。
6nM’Z4-n、M’Z4、M’Z3 ・・・(V)
式中、R6〜R8は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基またはエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはリン原子、Zはハロゲン原子、nは0〜3の整数である。
【0080】
上記式(V)中、M’がスズ原子の場合には、(a)成分としては、例えばトリフェニルスズクロリド、トリブチルスズクロリド、トリイソプロピルスズクロリド、トリヘキシルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジヘキシルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、フェニルスズトリクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリド、四塩化スズ等が挙げられる。
【0081】
また、上記式(V)中、M’がケイ素原子の場合には、(a)成分としては、例えばトリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、フェニルクロロシラン、ヘキシルトリジクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素等が挙げられる。
【0082】
さらに、上記式(V)中、M’がゲルマニウム原子の場合には、(a)成分としては、例えばトリフェニルゲルマニウムクロリド、ジブチルゲルマニウムジクロリド、ジフェニルゲルマニウムジクロリド、ブチルゲルマニウムトリクロリド、四塩化ゲルマニウム等が挙げられるさらに、式(V)中、M’がリン原子の場合には、(a)成分としては、例えば三塩化リン等が挙げられる。
【0083】
また、本発明において、(a)成分として、下記式(VI)で表されるエステル基、または下記式(VII)で表されるカルボニル基を分子中に含んだ有機金属化合物を変性剤として使用することもできる。
7nM’(−R8−COOR94-n ・・・(VI)
7nM’(−R8−COOR94-n ・・・(VII)
式中、R7〜R8は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基またはエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはリン原子、nは0〜3の整数である。
これらの(a)成分は、任意の割合で併用してもよい。
【0084】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(b)成分であるヘテロクムレン化合物は、下記式(VIII)で表される構造を有する変性剤である。
Y=C=Y’結合・・・(VIII)
式中、Yは炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子、Y’は酸素原子、窒素原子または硫黄原子である。
【0085】
ここで、(b)成分のうち、Yが炭素原子、Y’が酸素原子の場合、ケテン化合物であり、Yが炭素原子、Y’が硫黄原子の場合、チオケテン化合物であり、Yが窒素原子、Y’が酸素原子の場合、イソシアナート化合物であり、Yが窒素原子、Y’が硫黄原子の場合、チオイソシアナート化合物であり、YおよびY’がともに窒素原子の場合、カルボジイミド化合物であり、YおよびY’がともに酸素原子の場合、二酸化炭素であり、Yが酸素原子、Y’が硫黄原子の場合、硫化カルボニルであり、YおよびY’がともに硫黄原子の場合、二硫化炭素である。しかしながら、(b)成分は、これらの組み合わせに限定されるものではない。
【0086】
このうち、ケテン化合物としては、例えばエチルケテン、ブチルケテン、フェニルケテン、トルイルケテン等が挙げられる。チオケテン化合物としては、例えばエチレンチオケテン、ブチルチオケテン、フェニルチオケテン、トルイルチオケテン等が挙げられる。イソシアナート化合物としては、例えばフェニルイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。チオイソシアナート化合物としては、例えばフェニルチオイソシアナート、2,4−トリレンジチオイソシアナート、ヘキサメチレンジチオイソシアナート等が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、例えばN,N′−ジフェニルカルボジイミド、N,N′−エチルカルボジイミド等が挙げられる。
【0087】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(c)成分であるヘテロ3員環化合物は、下記式(I)で表される構造を有する変性剤である。
【0088】
【化7】

式(I)中、Y’は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子である。
【0089】
ここで、(c)成分のうち、例えばY’が、酸素原子の場合、エポキシ化合物であり、窒素原子の場合、エチレンイミン誘導体であり、硫黄原子の場合、チイラン化合物である。ここで、エポキシ化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化天然ゴム等が挙げられる。また、エチレンイミン誘導体としては、例えばエチレンイミン、プロピレンイミン、N−フェニルエチレンイミン、N−(β−シアノエチル)エチレンイミン等が挙げられる。さらに、チイラン化合物としては、例えばチイラン、メチルチイラン、フェニルチイラン等が挙げられる。
【0090】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(d)成分であるハロゲン化イソシアノ化合物は、下記式(IX)で表される構造を有する変性剤である。
−N=C−X結合・・・(IX)
式中、Xはハロゲン原子である。
【0091】
(d)成分であるハロゲン化イソシアノ化合物としては、例えば2−アミノ−6−クロロピリジン、2,5−ジブロモピリジン、4−クロロ−2−フェニルキナゾリン、2,4,5−トリブロモイミダゾール、3,6−ジクロロ−4−メチルピリダジン、3,4,5−トリクロロピリダジン、4−アミノ−6−クロロ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、6−クロロ−2,4−ジメトキシピリミジン、2−クロロピリミジン、2,4−ジクロロ−6−メチルピリミジン、4,6−ジクロロ−2−(メチルチオ)ピリミジン、2,4,5,6−テトラクロロピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、2−アミノ−6−クロロピラジン、2,6−ジクロロピラジン、2,4−ビス(メチルチオ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、2−ブロモ−5−ニトロチアゾール、2−クロロベンゾチアゾール、2−クロロベンゾオキサゾール等が挙げられる。
【0092】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(e)成分であるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物または酸無水物は、下記式(X)〜(XIV)および(II)で表される構造を有する変性剤である。
10−(COOH)m ・・・(X)
11(COZ)m ・・・(XI)
12−(COO−R13) ・・・(XII)
14−OCOO−R15 ・・・(XIII)
16−(COOCO−R17)・・・(XIV)
【0093】
【化8】

式(II)中、R10〜R18は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Zはハロゲン原子、mは1〜5の整数である。
【0094】
ここで、(e)成分のうち、式(X)で表されるカルボン酸としては、例えば酢酸、ステアリン酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、アクリル酸、メタアクリル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メリット酸、ポリメタアクリル酸エステル化合物またはポリアクリル酸化合物の全部あるいは部分加水分解物等が挙げられる。
【0095】
式(XI)で表される酸ハロゲン化物としては、例えば酢酸クロリド、プロピオン酸クロリド、ブタン酸クロリド、イソブタン酸クロリド、オクタン酸クロリド、アクリル酸クロリド、安息香酸クロリド、ステアリン酸クロリド、フタル酸クロリド、マレイン酸クロリド、オキサリン酸クロリド、ヨウ化アセチル、ヨウ化ベンゾイル、フッ化アセチル、フッ化ベンゾイル等が挙げられる。
【0096】
式(XII)で表されるエステル化合物としては、例えば酢酸エチル、ステアリン酸エチル、アジピン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、安息香酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラオクチル、メリット酸ヘキサエチル、酢酸フェニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート等が、また、式(XIII)で表される炭酸エステル化合物としては、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジフェニル等が挙げられる。酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水イソ酪酸、無水イソ吉草酸、無水ヘプタン酸、無水安息香酸、無水ケイ皮酸等の式(XIV)で表される分子間の酸無水物や、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の式(II)で表される分子内の酸無水物が挙げられる。
【0097】
なお、(e)成分に挙げた化合物は、本発明の目的を損なわない範囲で、カップリング剤分子中に、例えばエーテル基、3級アミノ基等の非プロトン性の極性基を含むものであっても構わない。また、(e)成分は、一種単独で使用することも、あるいは二種以上を混合して用いることもできる。さらに、(e)成分は、フリーのアルコール基、フェノール基を含む化合物を不純物として含むものであってもよい。また、(e)成分は、単独もしくはこれらの化合物の二種以上の混合物であってもよい。さらに、フリーのアルコール基、フェノール基を含む化合物を不純物として含むものであってもよい。
【0098】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(f)成分としてのカルボン酸の金属塩は、下記式(XV)〜(XVI)および(III)で表される構造を有する変性剤である。
19kM’’(OCOR204-k ・・・(XV)
21kM’’(OCO−R22−COOR234-k ・・・(XVI)
【0099】
【化9】

式(III)中、R19〜R25は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M’’はスズ原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子、kは0〜3の整数、pは0または1である。
【0100】
ここで、(f)成分のうち、上記式(XV)で表される化合物としては、例えばトリフェニルスズラウレート、トリフェニルスズ−2−エチルヘキサテート、トリフェニルスズナフテート、トリフェニルスズアセテート、トリフェニルスズアクリレート、トリ−n−ブチルスズラウレート、トリ−n−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−n−ブチルスズナフテート、トリ−n−ブチルスズアセテート、トリ−n−ブチルスズアクリレート、トリ−t−ブチルスズラウレート、トリ−t−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−t−ブチルスズナフテート、トリ−t−ブチルスズアセテート、トリ−t−ブチルスズアクリレート、トリイソブチルスズラウレート、トリイソブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソブチルスズナフテート、トリイソブチルスズアセテート、トリイソブチルスズアクリレート、トリイソプロピルスズラウレート、トリイソプロピルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソプロピルスズナフテート、トリイソプロピルスズアセテート、トリイソプロピルスズアクリレート、トリヘキシルスズラウレート、トリヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリヘキシルスズアセテート、トリヘキシルスズアクリレート、トリオクチルスズラウレート、トリオクチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリオクチルスズナフテート、トリオクチルスズアセテート、トリオクチルスズアクリレート、トリ−2−エチルヘキシルスズラウレート、トリ−2−エチルヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−2−エチルヘキシルスズナフテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアセテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアクリレート、トリステアリルスズラウレート、トリステアリルスズ−2−エチルヘキサテート、トリステアリルスズナフテート、トリステアリルスズアセテート、トリステアリルスズアクリレート、トリベンジルスズラウレート、トリベンジルスズ−2−エチルヘキサテート、トリベンジルスズナフテート、トリベンジルスズアセテート、トリベンジルスズアクリレート、ジフェニルスズジラウレート、ジフェニルスズ−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズジステアレート、ジフェニルスズジナフテート、ジフェニルスズジアセテート、ジフェニルスズジアクリレート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズジステアレート、ジ−n−ブチルスズジナフテート、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジアクリレート、ジ−t−ブチルスズジラウレート、ジ−t−ブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズジステアレート、ジ−t−ブチルスズジナフテート、ジ−t−ブチルスズジアセテート、ジ−t−ブチルスズジアクリレート、ジイソブチルスズジラウレート、ジイソブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズジステアレート、ジイソブチルスズジナフテート、ジイソブチルスズジアセテート、ジイソブチルスズジアクリレート、ジイソプロピルスズジラウレート、ジイソプロピルスズ−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズジステアレート、ジイソプロピルスズジナフテート、ジイソプロピルスズジアセテート、ジイソプロピルスズジアクリレート、ジヘキシルスズジラウレート、ジヘキシルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズジステアレート、ジヘキシルスズジナフテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジヘキシルスズジアクリレート、ジ−2−エチルヘキシルスズジラウレート、ジ−2−エチルヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジステアレート、ジ−2−エチルヘキシルスズジナフテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジアセテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジアクリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジナフテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアクリレート、ジステアリルスズジラウレート、ジステアリルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズジステアレート、ジステアリルスズジナフテート、ジステアリルスズジアセテート、ジステアリルスズジアクリレート、ジベンジルスズジラウレート、ジベンジルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズジステアレート、ジベンジルスズジナフテート、ジベンジルスズジアセテート、ジベンジルスズジアクリレート、フェニルスズトリラウレート、フェニルスズトリ−2−エチルヘキサテート、フェニルスズトリナフテート、フェニルスズトリアセテート、フェニルスズトリアクリレート、n−ブチルスズトリラウレート、n−ブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、n−ブチルスズトリナフテート、n−ブチルスズトリアセテート、n−ブチルスズトリアクリレート、t−ブチルスズトリラウレート、t−ブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、t−ブチルスズトリナフテート、t−ブチルスズトリアセテート、t−ブチルスズトリアクリレート、イソブチルスズトリラウレート、イソブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、イソブチルスズトリナフテート、イソブチルスズトリアセテート、イソブチルスズトリアクリレート、イソプロピルスズトリラウレート、イソプロピルスズトリ−2−エチルヘキサテート、イソプロピルスズトリナフテート、イソプロピルスズトリアセテート、イソプロピルスズトリアクリレート、ヘキシルスズトリラウレート、ヘキシルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ヘキシルスズトリナフテート、ヘキシルスズトリアセテート、ヘキシルスズトリアクリレート、オクチルスズトリラウレート、オクチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、オクチルスズトリナフテート、オクチルスズトリアセテート、オクチルスズトリアクリレート、2−エチルヘキシルスズトリラウレート、2−エチルヘキシルスズトリ−2−エチルヘキサテート、2−エチルヘキシルスズトリナフテート、2−エチルヘキシルスズトリアセテート、2−エチルヘキシルスズトリアクリレート、ステアリルスズトリラウレート、ステアリルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ステアリルスズトリナフテート、ステアリルスズトリアセテート、ステアリルスズトリアクリレート、ベンジルスズトリラウレート、ベンジルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ベンジルスズトリナフテート、ベンジルスズトリアセテート、ベンジルスズトリアクリレート等が挙げられる。
【0101】
また、上記式(XVI)で表される化合物としては、例えばジフェニルスズビスメチルマレート、ジフェニルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスベンジルマレート、ジ−n−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−n−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−n−ブチルスズビスベンジルマレート、ジ−t−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−t−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−t−ブチルスズビスベンジルマレート、ジイソブチルスズビスメチルマレート、ジイソブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルマレート、ジイソブチルスズビスベンジルマレート、ジイソプロピルスズビスメチルマレート、ジイソプロピルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルマレート、ジイソプロピルスズビスベンジルマレート、ジヘキシルスズビスメチルマレート、ジヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスオクチルマレート、ジヘキシルスズビスベンジルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスメチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスオクチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスベンジルマレート、ジオクチルスズビスメチルマレート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルマレート、ジオクチルスズビスベンジルマレート、ジステアリルスズビスメチルマレート、ジステアリルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルマレート、ジステアリルスズビスベンジルマレート、ジベンジルスズビスメチルマレート、ジベンジルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルマレート、ジベンジルスズビスベンジルマレート、ジフェニルスズビスメチルアジテート、ジフェニルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルアジテート、ジフェニルスズビスベンジルアジテート、ジ−n−ブチルスズビスメチルアジテート、ジ−n−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ−n−ブチルスズビスベンジルアジテート、ジ−t−ブチルスズビスメチルアジテート、ジ−t−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ−t−ブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソブチルスズビスメチルアジテート、ジイソブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルアジテート、ジイソブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソプロピルスズビスメチルアジテート、ジイソプロピルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルアジテート、ジイソプロピルスズビスベンジルアジテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスメチルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスオクチルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジオクチルスズビスメチルアジテート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルアジテート、ジオクチルスズビスベンジルアジテート、ジステアリルスズビスメチルアジテート、ジステアリルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルアジテート、ジステアリルスズビスベンジルアジテート、ジベンジルスズビスメチルアジテート、ジベンジルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルアジテート、ジベンジルスズビスベンジルアジテート等が挙げられる。
【0102】
さらに、上記式(III)で表される化合物としては、例えばジフェニルスズマレート、ジ−n−ブチルスズマレート、ジ−t−ブチルスズマレート、ジイソブチルスズマレート、ジイソプロピルスズマレート、ジヘキシルスズマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズマレート、ジオクチルスズマレート、ジステアリルスズマレート、ジベンジルスズマレート、ジフェニルスズアジテート、ジ−n−ブチルスズアジテート、ジ−t−ブチルスズアジテート、ジイソブチルスズアジテート、ジイソプロピルスズアジテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジ−2−エチルヘキシルスズアジテート、ジオクチルスズアジテート、ジステアリルスズアジテート、ジベンジルスズアジテート等が挙げられる。
【0103】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(g)成分は、N−置換アミノケトン、N−置換アミノチオケトン、N−置換アミノアルデヒド、N−置換アミノチオアルデヒド、および分子中に−C−(=M)−N<結合(Mは酸素原子または硫黄原子を表す)を有する化合物からなる変性剤である。
【0104】
(g)成分としては、4−ジメチルアミノアセトフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、等のN−置換アミノケトン類および対応するN−アミノチオケトン類;4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−ジビニルアミノベンズアルデヒド等のN−置換アミノアルデヒド類および対応するN−置換アミノチオアルデヒド類;分子中に−C−(=Y1)−N<結合(Y1は酸素原子または硫黄原子を表す)を有する化合物、例えば、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−フェニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−カプロラクタム、N−フェニル−ω−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタム、等のN−置換ラクタム類および対応するN―置換チオラクタム類 1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素、1,3−ジエチルー2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のN−置換環状尿素類および対応するN−置換環状チオ尿素類等が挙げられる。
【0105】
本発明において、ブタジエン系重合体と反応させる(h)成分は、一般式(IV)
【0106】
【化10】

で表される変性剤であり、前記一般式(IV)において、X1〜X5は、水素原子、あるいはハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基およびスルホニルオキシ基の中から選ばれる少なくとも1種を含む官能基を示す。X1〜X5はたがいに同一であっても異なっていてもよいが、それらの中の少なくとも1つは水素原子ではない。
【0107】
1〜R5は、それぞれ独立して単結合または炭素数1〜18の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数2〜18のアルケニレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数7〜18のアラルキレン基等が挙げられるが、これらの中で、炭素数1〜18のアルキレン基、特に炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。このアルキレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。この直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
【0108】
また、X1〜X5およびR1〜R5のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい。
この変性剤としては、前記一般式(IV)において、X1が水素原子ではなく、かつR1が単結合ではないものであることが好ましい。
【0109】
前記一般式(IV)で表される変性剤としては、例えば1−アセチルアジリジン、1−プロピオニルアジリジン、1−ブチルアジリジン、1−イソブチルアジリジン、1−バレリルアジリジン、1−イソバレリルアジリジン、1−ピバロイルアジリジン、1−アセチル−2−メチルアジリジン、2−メチル−1−プロピオニルアジリジン、1−ブチル2−メチルアジリジン、2−メチル−1−イソブチルアジリジン、2−メチル−1−バレリルアジリジン、1−イソバレリル−2−メチルアジリジン、2−メチル−1−ピバロイルアジリジン、エチル3−(1−アジリジニル)プロピオネート、プロピル3−(1−アジリジニル)プロピオネート、ブチル3−(1−アジリジニル)プロピオネート、エチレングリコールビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、エチル3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート、プロピル3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート、ブチル3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート、エチレングリコールビス[3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス[3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート]、ジ(1−アジリジニルカルボニル)メタン、1,2−ジ(1−アジリジニルカルボニル)エタン、1,3−ジ(1−アジリジニルカルボニル)プロパン、1,4−ジ(1−アジリジニルカルボニル)ブタン、1,5−ジ(1−アジリジニルカルボニル)ペンタン、ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)メタン、1,2−ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)エタン、1,3−ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)プロパン、1,4−ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)ブタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、以上の(a)〜(h)成分の変性剤は、一種単独で使用することも、あるいは二種以上を混合して用いることもできる。
【0110】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、上記天然ゴムを20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%と、上記ブタジエン系重合体とを含んでなる。さらに上記ブタジエン系重合体は、ゴム成分100質量%中、好ましくは80〜20質量%、より好ましくは70〜30質量%であるのが望ましい。これらの量を上記範囲内とすることにより、天然ゴムとブタジエン系重合体とが相まって奏する効果を充分に発揮させることが可能となる。
【0111】
上記ゴム組成物には、上述のゴム成分、充填剤の他、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、シランカップリング剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0112】
たとえば、充填剤を配合する場合、ゴム成分100質量部に対して、30〜70質量部、好ましくは30〜50質量部の量で配合するのが望ましい。このような充填剤としては、カーボンブラックまたはシリカ、あるいはこれらをブレンドして用いることができる。上記カーボンブラックは、特に制限されないが、窒素吸着比表面積が20〜180m2/gの範囲であることが好ましく、20〜100m2/gの範囲であることが更に好ましい。窒素吸着比表面積が20〜180m2/gの範囲にあるカーボンブラックは、粒子径が大きく、低発熱性の向上効果が非常に高い。かかるカーボンブラックとして、具体的には、HAF以下のグレードのものが好ましく、例えば、HAF,FF,FEF,GPF,SRF,FTグレードのものが挙げられるが、耐亀裂成長性向上の観点から、HAF,FEF,GPFグレードのものが特に好ましい。
【0113】
[タイヤ]
本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、上述したゴム組成物を該タイヤのいずれかの部材に用いることができ、耐発熱性、耐亀裂成長性に優れる。上記タイヤは、上記ゴム組成物を何れかの部材に用いる限り特に制限はなく、該部材としては、トレッド、サイドウォール等が挙げられ、通常の方法で製造することができる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、ブタジエン系重合体の各物性は、以下の方法に従って測定した。
【0115】
《ミクロ構造[シス−1,4結合含量(%)、1,2−ビニル結合含量(%)]》
フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR−4100、日本分光社製)を使用し、赤外法(モレロ法)によって測定した。
【0116】
《ブタジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)》
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「HLC−8120GPC」、東ソー社製)を使用し、検知器として示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム;商品名「GMHHXL」(東ソー社製) 2本
カラム温度;40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/min
サンプル濃度;10mg/20ml
【0117】
[重合体Aの製造]
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを仕込んだ。該オートクレーブに、触媒成分としてバーサチック酸ネオジム(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルミノキサン(MAO、3.6mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH、5.5mmol)およびジエチルアルミニウムクロリド(0.18mmol)のトルエン溶液と、1,3−ブタジエン(4.5mmol)とを40℃で30分間反応熟成させて予備調製した触媒組成物を仕込み、60℃で60分間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液200gを、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.2gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥させて、変性前の重合体A(共役ジエン系重合体)を得た。得られた重合体Aのシス−1,4結合含量は96.3%であり、1,2−ビニル結合含量は0.62%、Mw/Mn=1.8であった。
【0118】
[重合体Bの製造]
上記重合体Aの製造に従って同様に重合を行った後、さらに重合体溶液を温度60℃に保持し、2−シアノピリジン4.16mmolのトルエン溶液を添加して、15分間反応(一次変性反応)させた。その後、この重合体溶液200gを2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥させて、重合体B(変性共役ジエン系重合体)を得た。得られた重合体Bのシス−1,4結合含量は96.1%であり、1,2−ビニル結合含量は0.61%、Mw/Mn=2.2であった。
【0119】
[重合体Cの製造]
約1L容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥および窒素置換し、該ガラスびんに乾燥精製したブタジエンのシクロへキサン溶液および乾燥シクロヘキサンを各々投入し、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度:12.0質量%)を400g投入した状態とした。次いで、tert−ブチルリチウム(1.57M)0.30ml、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(0.2N)0.185mLを添加し、50℃の水浴中で1.5時間重合を行った。さらに、重合体溶液を温度50℃に保持し、2−シアノピリジン0.84mmolを添加して、15分間反応させた。その後、この重合体溶液200gを2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥させ、重合体C(ジエン系重合体)を得た。得られた重合体Cのシス−1,4結合含量は45.3%であり、1,2−ビニル結合含量は18.4%、Mw/Mn=1.2であった。
【0120】
[重合体Dの製造]
上記重合体Aの製造に従って同様に重合を行った後、さらに重合体溶液を温度60℃に保持し、4,4’−ジヒドロナフトキノン4.16mmolのトルエン溶液を添加して、15分間反応(一次変性反応)させた。その後、この重合体溶液200gを2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥させ、重合体D(変性共役ジエン系重合体)を得た。得られた重合体Dのシス−1,4結合含量は96.1%であり、1,2−ビニル結合含量は0.63%、Mw/Mn=2.3であった。
【0121】
[重合体Eの製造]
100mL容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥および窒素置換し、該ガラスびんに、順次、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56M)0.59mL、メチルアルミノキサンMAO(東ソーアクゾ製PMAO)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23M)10.32mL、水素化ジイソブチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.90M)7.77mLを投入し、室温で4分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.95M)2.36mLを加え、室温で時々攪拌しながら15分間熟成した。得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.011M(mol/L)であった。
【0122】
約1L容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥および窒素置換し、該ガラスびんに乾燥精製したブタジエンのシクロへキサン溶液および乾燥シクロヘキサンを各々投入し、5質量%濃度のシクロヘキサン溶液が40g投入された状態とした。次いで、前記調整した触媒溶液を投入し、10℃の水浴中で4時間重合を行った。その後、50℃にて老化防止剤2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール、NS−5)のイソプロパノール5%溶液2mLを加えて反応を停止させ、さらに微量のNS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿させた後、ドラムにて乾燥させてほぼ100%の収率で重合体Eを得た。得られた重合体Eのシス−1,4結合含量は99.0%であり、1,2−ビニル結合含量は0.14%、Mw/Mn=2.0であった。
【0123】
[重合体Fの製造]
上記重合体Eの製造に従って同様に重合を行った後、さらに重合体溶液を温度60℃に保持し、2−シアノピリジン4.16mmolのトルエン溶液を添加して、15分間反応(一次変性反応)させた。その後、この重合体溶液200gを2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥させて、重合体F(変性共役ジエン系重合体)を得た。得られた重合体Fのシス−1,4結合含量は99.0%であり、1,2−ビニル結合含量は0.15%、Mw/Mn=2.3であった。
【0124】
[重合体Gの製造]
80℃にした以外、上記重合体Aの製造に従って同様に重合を行った後、さらに重合体溶液を温度80℃に保持し、2−シアノピリジン4.16mmolのトルエン溶液を添加して、15分間反応(一次変性反応)させた。その後、この重合体溶液200gを2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥させて、重合体G(変性共役ジエン系重合体)を得た。得られた重合体Gのシス−1,4結合含量は93.0%であり、1,2−ビニル結合含量は0.85%、Mw/Mn=1.9であった。
【0125】
[天然ゴム(NR−1)の製造]
アンモニア0.4質量%を添加した天然ゴムラテックス(CT−1)を、ラテックスセパレーターSLP−3000(斉藤遠心機工業製)を用いて回転数7500rpmで15分間の遠心分離することにより濃縮した。濃縮したラテックスをさらに回転数7500rpmで15分間の遠心分離した。得られた濃縮ラテックスを固形分として約20%に希釈した後、蟻酸を添加し一晩放置後、凝固して得られたゴム分を、110℃で210分の条件で乾燥してNR−1を製造した。得られゴムの総窒素含有量は0.15質量%であり、非ゴム成分は0.3質量%であった。なお、総窒素含有量はラテックスを酸凝固し乾燥して得られた固形成分(サンプル)を精秤し、ケルダール法によって総窒素含有量を測定し、固形成分に対する割合(質量%)として求めた。
【0126】
[比較例1〜5、実施例1〜10]
表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、下記の方法に従って耐亀裂成長性および低発熱性(3%tanδ)を測定した。結果を表2〜4に示す。
【0127】
《耐亀裂成長性》
JIS3号試験片中心部に0.5mmの亀裂を入れ、室温で50〜100%の歪みで繰り返し疲労を与え、サンプルが切断するまでの回数を測定した。各歪みでの値を求め、その平均値を用いた。表2においては重合体Aを配合した比較例1を100として、同一の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックを配合した実施例および比較例を指数表示した。また、表3においては、比較例4を100として指数表示した。さらに、表4では比較例5を100として指数表示した。指数値が大きい程、耐亀裂成長性が良好であることを示す。
【0128】
《低発熱性(3%tanδ)》
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪3%、周波数15Hz、50℃の条件で測定した。表2においては、重合体Aを配合した比較例1を100として、同一の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックを配合した実施例及び比較例を指数表示した。また、表3においては、比較例4を100として指数表示した。さらに、表4では比較例5を100として指数表示した。指数値が小さい程、低発熱性(低ロス性)に優れることを示す。
【0129】
【表1】

【0130】
※1:NR−1、またはNR−2(通常の天然ゴム、RSS#3素練りゴム:総窒素含有量0.42質量%)を使用した。使用した天然ゴムの種類を表2〜4に示す。
※2:重合体A〜G、使用した重合体の種類を表2〜4に示す。
※3:使用したカーボンブラックの窒素吸着比表面積を表2〜4に示す。
※4:N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−p−フェニレンジアミン、大内新興化学(株)製、ノクラック6C
※5:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学(株)製、ノクラック224
※6:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製、ノクセラーCZ−G
※7:ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製、ノクセラーDM−P
【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
【表4】

【0134】
[比較例6〜8、実施例11]
表5に示す配合処方に従ってゴム組成物を調製し、145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、上記と同様にして耐亀裂成長性および低発熱性(3%tanδ)を測定した。なお、比較例6〜7は比較例6を、比較例8および実施例11は比較例8を100として、それぞれ指数表示した。結果を表6に示す。
【0135】
[比較例9〜11、実施例12]
表5に示す配合処方に従ってゴム組成物を調製し、145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、上記と同様にして耐亀裂成長性および低発熱性(3%tanδ)を測定した。なお、比較例9〜10は比較例9を、比較例11および実施例12は比較例11を100として、それぞれ指数表示した。結果を表7に示す。
【0136】
【表5】

【0137】
※1:NR−1、またはNR−2(通常の天然ゴム、RSS#3素練りゴム:総窒素含有量0.42質量%)を使用した。使用した天然ゴムの種類を表6〜7に示す。
※2:重合体A
※3:使用したカーボンブラックの窒素吸着比表面積を表6〜7に示す。
※4:N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−p−フェニレンジアミン、大内新興化学(株)製、ノクラック6C
※5:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学(株)製、ノクラック224
※6:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製、ノクセラーCZ−G
※7:ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製、ノクセラーDM−P
【0138】
【表6】

【0139】
【表7】

【0140】
表2の結果によれば、本発明で規定する特定の天然ゴムと、シス含量90%以上のブタジエン系重合体とを配合した実施例1〜6のゴム組成物は、シス含量90%以上のブタジエン系重合体を配合してはいるが、通常の天然ゴムを用いた比較例1〜2に比して、耐亀裂成長性および低発熱性をともに向上できることがわかる。また、本発明で規定する特定の天然ゴムを配合してはいるが、シス含量の低いブタジエン系重合体を用いた比較例3と比較しても同様のことがいえる。
このことは、表3〜4においても、本発明で規定する特定の天然ゴムを配合してはいるが、シス含量の低いブタジエン系重合体を用いた比較例4または比較例5と、実施例7〜8または実施例9〜10とを比較しても明らかである。
【0141】
また、表2において、同程度のシス含量を有するブタジエン系重合体を配合した実施例2〜4のうち、ブタジエン系重合体が変性された実施例3〜4は実施例2に比して、より優れた耐亀裂成長性および低発熱性を示すことがわかる。同様に実施例5〜6を比較しても、ブタジエン系重合体が変性された実施例6のほうが優れた結果が得られていることがわかる。
このことは、表3における実施例7と実施例8、表4における実施例9と実施例10を比較しても明らかである。
【0142】
なお、表2〜4の結果より、これら耐亀裂成長性および低発熱性の向上効果は、窒素吸着比表面積が20〜180m2/gの範囲であるカーボンブラックを配合した場合に充分に発揮され得ることもわかる。
【0143】
表6によれば、天然ゴムの総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にある天然ゴムを用いた実施例11は比較例8よりもさらに良好な結果を示している。
【0144】
表7によれば、天然ゴムの総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にある天然ゴムを用いた実施例12は比較例11よりもさらに良好な結果を示している。
【0145】
これらのことから、天然ゴムは、総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にあり、なおかつ、その含有量がゴム成分100質量%中に20〜80質量%の量であれば、優れた効果を充分に発揮し得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量%中に、
天然ゴムラテックス中の総窒素含有量が0.1質量%を超えて0.4質量%以下にある天然ゴム20〜80質量%と、
シス含量が90%以上であるブタジエン系重合体
とを含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記ブタジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であり、かつビニル含量が2.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量%中に、前記ブタジエン系重合体を80〜20質量%の量で含むことを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記天然ゴムが、天然ゴムラテックス中の蛋白質を機械的分離手法、化学的処理方法または酵素を用いた処理方法により部分脱蛋白処理してなるラテックスから得られたゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ブタジエン系重合体が変性剤で変性されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記変性剤が、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む変性基を有することを特徴とする請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記変性剤が複素環式ニトリル化合物であることを特徴とする請求項5または6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記複素環式ニトリル化合物が式(W1)または式(W2)で表されることを特徴とする請求項7に記載のゴム組成物;
θ−C≡N ・・・(W1)
θ−Rx−C≡N ・・・(W2)
(式(W1)および(W2)中、θは複素環基を示し、Rxは2価の炭化水素基を示す。)。
【請求項9】
前記式(W1)および(W2)中、θが窒素原子を含む複素環基、酸素原子を含む複素環基、硫黄原子を含む複素環基、2以上のヘテロ原子を含む複素環基、および1以上のシアノ基を含む複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種の複素環基であることを特徴とする請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記式(W1)および(W2)中、θが複素芳香環基または複素非芳香環基、あるいは単環式、二環式、三環式、または多環式の複素環基であることを特徴とする請求項8または9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記変性剤が、(a)〜(g)成分の化合物の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5または6に記載のゴム組成物;
(a)成分:R6nM’Z4-n、M’Z4、M’Z3、R7nM’(−R8−COOR94-nまたはR7nM’(−R8−COOR94-n(式中、R6〜R8は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基またはエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはリン原子、Zはハロゲン原子、nは0〜3の整数である。)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物または有機金属化合物、
(b)成分:分子中に、Y=C=Y’結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子、Y’は酸素原子、窒素原子または硫黄原子である。)を含有するヘテロクムレン化合物、
(c)成分:分子中に、式(I)で表される結合を含有するヘテロ3員環化合物;
【化1】

(式(I)中、Y’は酸素原子、窒素原子または硫黄原子である。)、
(d)成分:ハロゲン化イソシアノ化合物、
(e)成分:R10−(COOH)m、R11(COZ)m、R12−(COO−R13)、R14−OCOO−R15、R16−(COOCO−R17m、または式(II)
【化2】

(式(II)中、R10〜R18は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Zはハロゲン原子、mは1〜5の整数である。)に対応するカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物または酸無水物、
(f)成分:R19kM’’(OCOR204-k、R21kM’’(OCO−R22−COOR234-k、または式(III)
【化3】

(式(III)中、R19〜R25は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M’’はスズ原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子、kは0〜3の整数、pは0または1である。)に対応するカルボン酸の金属塩、
(g)成分:N−置換アミノケトン、N−置換アミノチオケトン、N−置換アミノアルデヒド、N−置換アミノチオアルデヒド、および分子中に−C−(=M)−N<結合(Mは酸素原子または硫黄原子を表す。)を有する化合物。
【請求項12】
前記変性剤が、式(IV)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種の(h)成分であることを特徴とする請求項5または6に記載のゴム組成物;
【化4】

(式(IV)中、X1〜X5は、水素原子、あるいはハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基およびスルホニルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基を示す。X1〜X5は互いに同一であっても異なっていてもよいが、それらの中の少なくとも1つは水素原子ではない。R1〜R5は、それぞれ独立して単結合または炭素数1〜18の二価の炭化水素基を示す。また、X1〜X5およびR1〜R5のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい。)。
【請求項13】
前記式(IV)中、X1が水素原子ではなく、かつR1が単結合ではないことを特徴とする請求項12に記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記ブタジエン系重合体が、
(A)成分:周期律表の原子番号57〜71のランタン系列希土類元素含有物、またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物、
(B)成分:AlR262728(式中、R26およびR27は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子、R28は炭素数1〜10の炭化水素基であり、ただし、R28は上記R26またはR27と同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機アルミニウム化合物、ならびに
(C)成分:ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、および活性ハロゲンを含む有機化合物の少なくとも1種からなる触媒系によりブタジエン系単量体を重合してなるものであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記(A)成分におけるランタン系列希土類元素含有化合物が、ネオジムの炭化水素溶媒に可溶な塩または錯体であることを特徴とする請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記(A)成分におけるランタン系列希土類元素含有化合物が、希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩、亜リン酸塩、または該酸とルイス塩基との反応物であることを特徴とする請求項14または15に記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記ブタジエン系重合体のシス含量が98%以上であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記天然ゴムの非ゴム成分が6質量%未満であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2010−90245(P2010−90245A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260855(P2008−260855)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】