説明

ゴム補強用セルロース生コード

【課題】
タイヤコード用として適している応力−歪み曲線を有するリヨセル生コードを提供する。
【解決手段】
少なくとも2本のリヨセルマルチフィラメントから製造されたリヨセル生コードであって、(a)乾燥状態で測定されたリヨセル生コードが1.0g/dの初期応力において2.0%以下伸長し、50〜100g/dの初期モジュラス値を有し;(b)1.0g/dから4.0g/dまでの応力区間で7%以下伸長し;(c)4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有するリヨセル生コードを提供する。このようなリヨセル生コードは、産業用および特にタイヤコード用繊維として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力−歪み曲線を調節することによって産業用繊維、好ましくはタイヤコード用繊維に適している高強力、高モジュラスを有するリヨセル生コードに関する。具体的にセルロースをN−メチルモルホリンN−オキシド(以下、NMMO)/水に溶解させ、適切に設けられた紡糸ノズルを用いて製造されたタイヤコード用に適している優れた物性を有するタイヤコードのためのリヨセル生コードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にタイヤ内部を形成している骨格としてタイヤコードが多量に用いられているが、これはタイヤ形態の保持や乗車感において重要な要素となり、現在、用いられているコード素材はポリエステル、ナイロン、アラミド、レーヨンおよびスチールまで様々な種類があるが、タイヤコードに求められている多様な機能を完全に満足させることはできない。このようなタイヤコード素材に必要な基本性能としては、(1)強度、初期モジュラスが大きいこと(2)耐熱性があり、乾湿熱において臭化されないこと(3)耐疲労性(4)形態安全性(5)ゴムとの接着性に優れていること等を挙げることができる。したがって、各コード素材の固有物性に応じてその用途を定めて用いられている。
【0003】
このうち、レーヨンタイヤコードの最も大きい長所は、耐熱性と形態安全性であり、高温でも弾性係数が保持される。したがって、このような低い収縮率と優れた形態安全性のために乗用車などの高速走行用ラジアルタイヤに主に用いられてきた。しかし、レーヨンタイヤコードは、強度およびモジュラスが低く、吸湿しやすい化学的、物理的な構造によって吸湿に伴う強力低下が現れる欠点を有している。
【0004】
一方、セルロースからなる人造繊維であるリヨセル繊維は、レーヨン繊維に比べて伸度と熱収縮が低く、強度およびモジュラスは高く、形態安全性に優れるだけでなく、水分率も低いため、湿潤時にも強力保持率とモジュラス保持率が80%以上で高いという特徴を有している。したがって、レーヨン(60%)に比べて、相対的に形態変化が少ないという長所を有しているが、前記要求に対する代案と考えることができるが、タイヤコード用としての紡糸性および低い伸度と高い結晶化度による低い耐疲労性が問題となって、まだこれを用いたタイヤコードは存在していない現状である。しかし、NMMOによるリヨセル繊維の製造方法は、溶媒の全量回収と再使用による無公害工程という点と、製造された繊維とフィルムなどが高い機械的強度を有するという利点によって、セルロースを素材とした製品の製造工程に多く用いられている。
【0005】
本発明では、上記の通り多くの長所を有するリヨセル製造工程によって得られたフィラメントをダイレクト撚糸機を用いてタイヤコードに適している生コードを提供しようとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存のビスコースレーヨンタイヤコードが有する低い強度と低い初期モジュラスという問題点を解決するために、NMMO水和物を、溶媒を用いて直接セルロースを溶解させ、前記溶液の紡糸、水洗、油剤処理、および、乾燥条件を適切に調節することによって、産業用リヨセルフィラメントを得、これを用いて撚糸および熱処理を実施することによって、特にタイヤコード用として適している応力−歪み曲線を有するリヨセル生コードを提供することをその目的とする。
【0007】
本発明では、まず商業的に用いられるビスコースレーヨンの生コードの応力−歪みプロフィールを分析した(比較例1)。そして、ビスコースレーヨンの低い強度と低い初期モジュラスとを改善するために、既存のビスコース工程と区別されるNMMOによってセルロースを溶解させる方法を用いてリヨセルマルチフィラメントを製造し、その後、撚糸時の撚数などの条件を変化させることによって、ビスコースレーヨンが有する低い強度と低い初期モジュラスとを改善しようする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は少なくとも2本のリヨセルマルチフィラメントから製造される生コードであって、(a)乾燥状態で測定されたリヨセル生コードが1.0g/dの初期応力において2.0%以下伸長し、50〜100g/dの初期モジュラス値を有し;(b)1.0g/dから4.0g/dまでの応力区間で7%以下伸長し;そして(c)4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有するリヨセル生コードを提供する。
【0009】
また、前記リヨセル生コードは、250〜550TPMの撚数を有することが好ましい。
【0010】
また、前記リヨセル生コードは、強力が16.0〜30.0kgfであることが好ましい。
【0011】
また、前記リヨセル生コードは、1.48〜1.52g/cm3の密度を有することが特徴である。
【0012】
また、前記リヨセルマルチフィラメントは、0.80以上の結晶配向度を有することが特徴である。
【0013】
また、前記リヨセルマルチフィラメントは、0.2〜0.6の動摩擦係数を有することが好ましい。
【0014】
また、前記リヨセル生コードは、リヨセルマルチフィラメントを2本または3本で撚糸して製造されることが好ましい。
【0015】
また、前記リヨセル生コードを含むタイヤを提供する。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明において、少なくとも2本のリヨセルマルチフィラメントから製造された生コードであって、(a)乾燥状態で測定されたリヨセル生コードが1.0g/dの初期応力において2.0%以下伸長し、50〜100g/dの初期モジュラス値を有し;(b)1.0g/dから4.0g/dまでの応力区間で7%以下伸長し;(c)4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有するリヨセル生コードを提供することによって、既存のビスコースレーヨンが有していた低い強度と低い初期モジュラスという問題点を改善し、優れたサイズ安全性と耐熱性を有するリヨセルタイヤコードを提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の産業用高強力繊維、特にタイヤコード用として用いられるリヨセル生コードに高い形態安全性を付与するためには、リヨセル生コードの応力−歪み曲線を調節することが重要である。この時、少なくとも2本のリヨセルマルチフィラメントから製造される生コードであって、(a)乾燥状態で測定されたリヨセル生コードが1.0g/dの初期応力において2.0%以下伸長し、50〜100g/dの初期モジュラス値を有し;(b)1.0g/dから4.0g/dまでの応力区間で7%以下伸長し;そして(c)4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有することが好ましい。
【0018】
一般的に生コードを織物として製織した後、通常のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)溶液に浸漬して熱処理することによってタイヤ用コード織物が製造されるが、前記熱処理工程で生コードとして製織された織物の高い形態安全性を保持するためには、リヨセル生コードの高い初期モジュラスが必要である。このような理由で本発明のリヨセル生コードが1.0g/dの初期応力において2.0%以下伸長し、50〜100g/dの初期モジュラス値を有することが好ましいが、生コードが1.0g/dの初期応力に2.0%超過して伸長すれば熱処理工程で形態安全性が低いため、織物に激しい変形を与える。
【0019】
また、本発明のリヨセル生コードは、1.0g/dから4.0g/dまでの応力区間で7%以下伸長することが好ましいが、7%超過して伸長すれば形態安全性が低いため、自動車の走行時のタイヤに激しい変形を与えて問題が発生する。
【0020】
また、エネルギー節約型自動車を設計するためには、タイヤの重量を最小化することが好ましいが、これを実現するために高強力タイヤコード紙が必要である。本発明のリヨセル生コードは、4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有することが好ましいが、これは4.0g/dの引張強度から生コードが切断されるまで1%未満伸長すれば、生コードの最大引張荷重の吸収力が不足してタイヤ当たりのコード紙の重量を減らし難く、耐疲労性が急激に下がる。
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のようなリヨセルフィラメントを製造するためには、セルロースの純度が高いパルプを用いなければならず、高品質のセルロース系繊維を製造するためには、α−セルロース含量が高いものを用いることが好ましい。このような理由は、重合度が高いセルロース分子を用いて高配向構造および高結晶化させることによって高い強度と高い初期モジュラスとを期待することができるためである。したがって、本発明で用いられたセルロースは、DP 1,200、α−セルロース含量93%以上の針葉樹パルプ(soft wood pulp)である。
【0022】
NMMOは、セルロースに対する溶解力が優れ,毒性のない溶媒として知られており、本発明におけるNMMOは、約87%の水準に調節された水和物を用いるが、これは結晶性の高いセルロースの細孔(pore)を開いて溶解力を有するために、水の存在が必須である。このようなNMMOの水和物の熱分解を抑制し、セルロース溶液の安全性のために、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸プロピルエステル(trihydroxybenzoic acid propyl ester、以下、没食子酸プロピル(propyl gallate)と称する)を微量添加した。
【0023】
セルロースをNMMOに溶解させるために剪断力(shear force)のような物理的な力が必要であり、本発明では2軸押出機を介してセルロースを溶解させた。以上のようなセルロース溶液をオリフィスの直径が100〜200μm、オリフィスの長さは200〜1,600μmとして、オリフィスの直径と長さの比が2〜8倍程度であるノズルを介して紡糸した後、図1に示す工程を通してリヨセルフィラメントを得ることができる。図1に示したリヨセルフィラメント製造工程は下記の通りである。
【0024】
まず、紡糸ノズル1から圧出された溶液は、垂直方向にエアーギャップ(air gap)を通過して凝固浴2で凝固する。エアーギャップは、緻密で均一な繊維を得、また、円滑な冷却効果を与えるために10〜300mmの長さであることが適切である。
【0025】
その後、凝固浴2を通過したフィラメントは、水洗槽3を通過するようになる。凝固浴2と水洗槽3との温度は、急激な脱溶媒による繊維組織内の細孔(pore)等の形成による物性の低下を防ぐために、10〜25℃程度に調節することが好ましい。
【0026】
そして、水洗槽3を通過した繊維は、水分除去のためにスクイジング(squeezing)ローラー4を通過した後、1次油剤処理装置5を通過する。
【0027】
以後、1次油剤処理装置5を通過したフィラメント糸は、乾燥装置6を経ながら乾燥される。この時、乾燥温度と乾燥方式、そして乾燥張力などは、フィラメントの後工程および物性に大きい影響を及ぼすようになる。本発明では、工程における水分率が7〜13%になることができるように乾燥温度を調節した。
【0028】
乾燥装置6を通過したフィラメントは、2次油剤処理装置7を経て最終的に巻取機8で巻き取られる。
【0029】
また、場合によって、本発明では1次および2次油剤処理装置のうち、1つの装置だけ用いて油剤をフィラメントに供給することができる。
【0030】
製造されたフィラメント原糸を撚糸機を用いて撚糸して生コードを製造し、通常のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)溶液に浸漬して熱処理することによって、「ディップコード(Dip Cord)」を製造した。
【0031】
本発明の産業用高強力コード、特にタイヤコード用として用いられるリヨセル生コードに高い形態安全性を付与するためには、リヨセル生コードの応力−歪み曲線を調節することが重要である。前記リヨセル生コードが1.0g/dの初期応力において2.0以下伸長し、50〜100g/dの初期モジュラス値を有し;1.0g/dで4.0g/dまでの応力区間で7%以下伸長し;4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有することが望ましい。
【0032】
前記応力−歪み曲線に影響を与える因子としては、リヨセルフィラメント−フィラメント間の同摩擦係数がある。好ましい同摩擦係数の値は0.01〜3.0であり、より好ましくは0.1〜2.5、さらに好ましくは0.2〜0.6である。同摩擦係数の値が0.01未満であれば撚り工程でスリップが発生し、3.0より大きければ撚り工程でコードに損傷を提供して、強力および耐疲労性が低下する。前記動摩擦係数の調節のためにフィラメントの表面に油剤を塗布することができる。油剤の塗布量は、リヨセルフィラメント重量に対して0.1〜7重量%にすることが好ましく、より好ましくは0.2〜4重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。油剤の繊維に対する塗布量が0.1重量%未満であれば撚り工程でコードに損傷が発生して強力および耐疲労性が低下し、7重量%超過すれば撚り工程でスリップが発生する。
【0033】
本発明で用いられる油剤に対しては特別な制限はないが、以下の化合物(1)〜(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を必須成分とし、必須成分の合計量を油剤全体の重量の30〜100重量%にすることが好ましい。
【0034】
(1)分子量300〜2000のエステル化合物
(2)鉱物油
(3)分子量300〜2000のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体
【0035】
本発明の応力−歪み曲線に影響を与えるまた他の因子は、リヨセルマルチフィラメントの結晶配向度である。結晶配向度は、0.80以上が好ましく、より好ましくは0.90以上である。結晶配向度が0.80未満であれば、分子鎖配向が不充分でリヨセルマルチフィラメントの強力低下によって、結局、生コードにあって4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有することが不可能である。結晶配向度に影響を与える工程因子としては、NMMO溶媒に対するセルロースの濃度、オリフィスの長さ/直径比の冷却条件および凝固浴の温度などがある。このような様々な工程因子を適切に調節することによって、コードの結晶配向度を0.80以上調節することができる。
【0036】
本発明の応力−歪み曲線に影響を与えるまた他の因子は生コードの密度である。生コードの密度は、1.48〜1.54g/cm3であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.52g/cm3である。生コード内に孔隙が多く存在したり、スキン−コア構造へ過度に発達したりすれば、生コードの密度が1.48g/cm3未満になって、緻密性および強力の不足によって、本発明に係る応力−歪み曲線を有することができなくなる。1.54g/cm3超過すれば生コードの伸度が過度に減少して応力−歪み曲線は4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%未満伸長して耐疲労性が下がる。
【0037】
以下、本発明の撚糸、製織および熱処理工程をさらに詳しく説明する。
前記方法によって製造されたリヨセルマルチフィラメント2本を加撚および合撚が同時進行されるダイレクト撚糸機で撚糸してタイヤコード用「生コード」を製造する。また、リヨセルマルチフィラメント3本以上を加撚および合撚が同時進行される撚糸機で3プライ(ply)以上の生コードを製造することができる。生コードは、リヨセルマルチフィラメントに下撚(Ply Twist)を加えた後、上撚(Cable Twist)を加えて合撚することで製造され、一般的に上撚と下撚は同じ撚数あるいは必要に応じて異なる撚数を加えるようになる。
【0038】
一般的にマルチフィラメントに与えられる撚りの水準(撚数)によりコードの強伸度、中伸度および耐疲労度などの物性が変化する。通常、撚りが高い場合、強力は減少し、中伸と切伸は増加する傾向を帯びるようになる。耐疲労度は撚りの増加により向上する傾向を見せるようになる。本発明で製造したリヨセルタイヤコードの撚数は、上/下撚同時に250/250TPM〜550/550TPMで製造したが、上撚と下撚を同じ数値として付与することは、製造されたタイヤコードが回転や撚りなどをせず、一直線上を保持しやすいようにして物性の発現を最大にするためである。この時、250/250TPM未満である場合には生コードの切伸が減少して耐疲労度が低下しやすく、5500/550TPM超過の場合には強力低下が大きくてタイヤコード用として適切ではない。
【0039】
製造された生コードは、製織機(weaving machine)を用いて製織され、得られた織物をディッピング液に浸漬した後、硬化して生コードの表面に樹脂層が塗布されたタイヤコード用「ディップコード(Dip Cord)」として製造される。
【0040】
本発明のディッピング工程をさらに詳細に説明すれば、ディッピングは繊維の表面にRFL(Resorcinol-Formaline-Latex)と呼ばれる樹脂層を含浸させる工程からなる。本来、ゴムとの接着性に欠けるタイヤコード用繊維の短所を改善するために実施する。通常のレーヨン繊維またはナイロンは、1浴ディップを行うのが普通であり、PET繊維を用いる場合、PET繊維表面の反応基がレーヨン繊維やナイロン繊維に比べて少ないため、PET表面をまず活性化した後に接着処理を行うようになる(2浴ディップ)。
【0041】
本発明に係るリヨセルマルチフィラメントは、1浴ディップを用いて製造された。ディッピング浴は、タイヤコードのために公知されたディッピング浴を用いる。
【実施例】
【0042】
以下、具体的な実施例および比較例をもって本発明の構成および効果を詳細に説明するが、これらの実施例は、単に本発明をより明確に理解できるようにさせるものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
実施例および比較例において、セルロース溶液およびフィラメントなどの特性は、下記のような方法でその物性を評価した。
【0044】
(a)生コード強力(kgf)、強度(g/d)および初期モジュラス(g/d)
107℃で2時間乾燥した後、インストロン社の低速伸長型引張試験機を用いて、試料長250mm、引張速度300mm/minで測定する。引張試験の初期に加えられる初荷重は0.05g/dを基準として加えられ、細部試験方法はASTM D885に準じて実施した。初期モジュラスは降伏点以前のグラフの傾きを示す。生コードの繊度は試料長600mm、初荷重は0.05g/dで測定する。強力は繊度と強度によって求められる。
【0045】
(b)動摩擦係数の測定方法
マルチフィラメントの動摩擦係数の測定は、スイスのノスチャイルド社の摩擦係数測定装置を用い、これは繊維がプーリー(pulley、直線運動を回転運動に変える装置)を通過する時、プーリー表面と繊維との間の摩擦力を克服することができる程の張力が増加するという原理を利用したものであって、200m/minで繊維を移動させながら、送出張力と巻取張力との値を張力計を用いて測定して関係式に代入することによって求められる。
【0046】
(数1)
μ(摩擦係数)=ln(巻取張力/送出張力)/θ(接触角) (1)
【0047】
(c)結晶配向度測定方法(WAXD)
マルチフィラメントの結晶化度を測定するために、次のように広角X線回折法を用いた。X−ray発生装置:リガク社製、X線源:CuKα(Niフィルタ使用)、出力:50KV 200mA、測定範囲:2Θ=5〜45°
【0048】
(d)密度測定方法
生コードの試片を2〜3mmで切断して、約0.01gを採取した後、ASTMD1505に準じて製作された密度勾配管に投入した後、24時間程度放置して安定化させてから密度値を測定した。
【0049】
(e)油剤含有量(OPU)の測定方法
生コード試片を10〜15mに切断し、約5.0gを採取した後、107℃乾燥器で2時間乾燥した後、重さを測定し(W0)、CCl4に2時間浸漬させて油剤を除去した後、前記乾燥条件で乾燥し、重さを測定(W1)して油剤含有量を計算する。
【0050】
(数2)
油剤含有量(OPU、%)=(W0−W1)/W1×100 (2)
【0051】
[実施例1〜12]
重合度(DPW)が1200(α−セルロース含量;97%)であるバッカイ(Buckeye)社のV−81パルプとNMMO・1H2O、そして没食子酸プロピルを溶液対比0.045wt%を用いて製造したセルロース溶液を用いた。この時、セルロースの濃度は9〜14%にし、オリフィス数を1、000にし、オリフィスの直径は120〜200μmまで変化させて用いた。オリフィスの直径と長さとの比(L/D)は4〜8、外径100mmφの紡糸ノズルから吐き出された溶液をエアーギャップ30〜100mmの長さをもって冷却され、紡糸速度は90〜150m/minに変化させて行い、最終フィラメント繊度が1,500デニールになるようにした。凝固液温度は10〜25℃、濃度は水80%、NMMO20%で調整し、凝固液の温度と濃度は屈折計を用いて連続的にモニターした。凝固浴を取り出したフィラメントは、残存NMMOを水洗工程を通して除去し、1次油剤処理装置を経た後に乾燥させ、以後2次油剤処理をして巻き取った。巻き取られた原糸フィラメントのOPUは、0.3〜1.1%に調節した。紡糸条件および変数を表1に示す。前記得られたフィラメントをダイレクト撚糸機を用いて、上/下撚同時に350〜470回/m(TPM)の撚数を加えて2プライ(ply)生コードを製造し(実施例1〜6)、また上/下撚同時に260〜400回/mの撚数を加えて3プライ生コードを製造した(実施例7〜12)。この時、生コードの物性結果を表2に示す。
【0052】
[比較例1〜9]
現在、商業化されてレーヨンタイヤコードとして用いられているスーパー(Super)−IIIの生コードと上記の条件以外の紡糸条件を用いてリヨセルを製造し、実施例のような方法で評価を実施した。この結果も表1、2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表2の実施例1〜12に示すように、本発明で製造されたリヨセル生コードは50〜100g/dの初期モジュラス値を有し、16kgf以上の高い強力を有するようになり、このようにして既存のビスコースレーヨンが有していた低い強度と低い初期モジュラスの問題点とを改善することによって、優れたサイズ安全性と耐熱性を有するリヨセル生コードを提供する。
【0056】
本発明は、記載された具体例に対してのみ詳細に記述しているが、本発明の技術思想の範囲内において多様な変形および修正が可能であることは当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が添付された特許請求範囲に属することは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のタイヤコード用高強度リヨセルフィラメント製造のための紡糸工程の実施例を実現する装置を示す図面である。
【図2】本発明を介して製造されたリヨセルフィラメントをダイレクト撚糸機を用いて撚糸した生コード(raw cord)の応力−歪み(Stress-Strain)曲線の例を示すグラフである。
【図3】本発明の比較例として提示されたビスコースレーヨン(Super-III)ディップコードの応力−歪み曲線の例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 紡糸ノズル
2 凝固浴
3 水洗槽
4 絞りローラー
5 1次油剤処理装置
6 乾燥装置
7 2次油剤処理装置
8 巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本のリヨセルマルチフィラメントから製造されたリヨセル生コードであって、
(a)乾燥状態で測定されたリヨセル生コードが1.0g/dの初期応力において2.0%以下伸長し、50〜100g/dの初期モジュラス値を有し;(b)1.0g/dから4.0g/dまでの応力区間で7%以下伸長し;(c)4.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで1%以上伸長する応力−歪み曲線を有するリヨセル生コード。
【請求項2】
前記リヨセル生コードは、1.48〜1.52g/cm3の密度を有することを特徴とする請求項1記載のリヨセル生コード。
【請求項3】
前記リヨセルマルチフィラメントは、0.80以上の結晶配向度を有することを特徴とする請求項1記載のリヨセル生コード。
【請求項4】
前記リヨセルマルチフィラメントは、0.2〜0.6の動摩擦係数を有することを特徴とする請求項1記載のリヨセル生コード。
【請求項5】
前記リヨセル生コードは、リヨセルマルチフィラメントを2本または3本で撚糸して製造されることを特徴とする請求項1記載のリヨセル生コード。
【請求項6】
前記リヨセル生コードは、250〜550TPMの撚数を有することを特徴とする請求項1記載のリヨセル生コード。
【請求項7】
前記リヨセル生コードは、強力が16.0〜30.0kgfであることを特徴とする請求項1記載のリヨセル生コード。
【請求項8】
請求項1記載のリヨセル生コードを含むタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−297760(P2007−297760A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207437(P2006−207437)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(503434298)ヒョスング コーポレーション (22)
【Fターム(参考)】