説明

ゴム複合体およびホース

【課題】離型剤としてステアリン酸亜鉛を用いた場合であってもゴムと黄銅とが良好な接着性を有するゴム複合体の提供。
【解決手段】ゴム複合体は、ゴム組成物を用いて形成される成形物と、黄銅とを接着させて得られるゴム複合体であって、前記成形物の前記黄銅との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着しており、前記ゴム組成物が、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/またはカルシウムの酸化物もしくは水酸化物とを含有し、前記マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/または前記カルシウムの酸化物もしくは水酸化物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3〜30質量部であるゴム複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物を用いたゴム複合体およびホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、強度および剛性の高い金属材料と、高弾性かつ柔軟なゴム材料とを組合わせた複合材料は、多くの工業製品に使用されている。
また、このような工業製品は、金属とゴムとの接着力により性能が左右されやすいため、金属とゴムとの接着性はかなり改善されてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような工業製品のうち、特にホースについては、製造過程中、未加硫状態で保管する際における内管ゴム同士の密着防止の観点から、マンドレル上に内管ゴム層を押し出した直後に、内管ゴム層の表面上に離型剤を塗布することが知られている。
そして、本発明者は、このような離型剤としてステアリン酸亜鉛を塗布した場合、内管ゴム層と黄銅めっきワイヤ(補強層)との接着性が劣る場合があることを明かした。
【0004】
そこで、本発明は、離型剤としてステアリン酸亜鉛を用いた場合であってもゴムと黄銅とが良好な接着性を有するゴム複合体およびホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゴムを形成するゴム組成物が、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/またはカルシウムの酸化物もしくは水酸化物(以下、「マグネシウム等酸化物」とも略す。)とを特定量含有することにより、離型剤としてステアリン酸亜鉛を用いた場合であってもゴムと黄銅とが良好な接着性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記(1)および(2)を提供する。
【0006】
(1)ゴム組成物を用いて形成される成形物と、黄銅とを接着させて得られるゴム複合体であって、
上記成形物の上記黄銅との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着しており、
上記ゴム組成物が、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウム等酸化物とを含有し、
上記マグネシウム等酸化物の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して3〜30質量部であるゴム複合体。
【0007】
(2)ホース内管用ゴム組成物を用いて形成される内管ゴム層と、黄銅めっきワイヤを用いて形成される補強層とを有するホースであって、
上記内管ゴム層の上記補強層との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着しており、
上記ホース内管用ゴム組成物が、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウム等酸化物とを含有し、
上記マグネシウム等酸化物の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して3〜30質量部であるホース。
【発明の効果】
【0008】
以下に説明するように、本発明によれば、離型剤としてステアリン酸亜鉛を用いた場合であってもゴムと黄銅とが良好な接着性を有するゴム複合体およびホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のホースの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係るゴム複合体は、特定のゴム組成物を用いて形成され、黄銅との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着した成形物と、黄銅とを接着させて得られるゴム複合体である。
【0011】
<ゴム組成物>
本発明のゴム複合体に用いられるゴム組成物は、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウム等酸化物とを含有するゴム組成物である。
【0012】
(ゴム成分)
上記ゴム成分は、硫黄加硫が可能なゴム成分であれば特に限定されない。
上記ゴム成分としては、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(Cl−IIR)、ブロモブチルゴム(Br−IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明においては、上記ゴム成分としては、NBRを50〜100質量%含有するものが好ましく、NBRを70〜100質量%含有するものがより好ましく、NBRを100質量%含有するのが更に好ましい。なお、100質量%含有するとは、ゴム成分がNBRのみからなることを意味する。
NBRの含有量がこの範囲であると、得られるゴム組成物を用いたゴム複合体の耐油性が良好となる。
【0014】
また、本発明においては、耐摩耗性を付与する観点から、SBRを併用するのが好ましい。
【0015】
(マグネシウム等酸化物)
上記マグネシウム等酸化物は、マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/またはカルシウムの酸化物もしくは水酸化物である。
【0016】
本発明においては、上記マグネシウム等酸化物の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して3〜30質量部である。
上記マグネシウム等酸化物の含有量がこの範囲であると、得られるゴム組成物を用いたゴム複合体が、接着面に離型剤としてステアリン酸亜鉛を用いた場合であってもゴムと黄銅との接着性が良好となる。
これは、詳細には明らかではないが本発明者は以下のように考えている。
すなわち、離型剤としてステアリン酸亜鉛を用いた場合にゴムと黄銅との接着性が劣る理由は、ステアリン酸亜鉛の結晶構造に由来すると考えられる。そのため、上記マグネシウム等酸化物が、ゴム表面のステアリン酸亜鉛と交換反応を起こし、ステアリン酸亜鉛をゴムの内部に取り込むことができるためと考えられる。
【0017】
また、本発明においては、上記マグネシウム等酸化物の含有量は、ゴムと黄銅との接着性がより良好となる理由から、上記ゴム成分100質量部に対して5〜30質量部であるのが好ましく、10〜20質量部であるのがより好ましい。
【0018】
更に、本発明においては、押出成形時の加工性に優れる理由から、上記マグネシウム等酸化物のうち、BET法により測定した比表面積が20〜50m2/gの酸化マグネシウムであるのが好ましい。
ここで、BET法とは、粉体粒子の表面上に占有面積の分かった分子(通常、N2ガス)を吸着させ、その吸着量から試料粉体の比表面積を求める方法である。この方法で求めた比表面積は「BETの比表面積」とも呼ばれる。また、酸化マグネシウムの場合は、BETの比表面積が高いほど、活性度が高くなる。
このような酸化マグネシウムとしては、協和化学工業社製のキョーワマグ30(比表面積50m2/g)、キョーワマグ20(比表面積22m2/g)、マグサラット30(表面処理品、比表面積50m2/g)等が好適に例示される。
【0019】
本発明においては、上記マグネシウム等酸化物は、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、高級脂肪酸、これらのアルカリ金属塩等)、樹脂酸(例えば、アビエチン酸等)、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル等により表面処理されたものを用いることができる。
【0020】
また、本発明においては、上記マグネシウム等酸化物は、滑剤やオイルの混合物(ブレンド体)として含有していてもよい。
【0021】
上記滑剤としては、具体的には、例えば、パラフィン・ワックス、炭化水素系ワックスなどのパラフィンおよび炭化水素樹脂;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;ステアロアミド、オレイル・アミドなどの脂肪酸アミド;n−ブチル・ステアレートなどの脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪アルコール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、脂肪酸エステル、特にソルビタン脂肪酸エステルであるのが、優れた滑性を有することから好ましい。
【0022】
本発明のゴム複合体に用いられるゴム組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤、補強剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤、可塑剤、顔料(染料)、粘着付与剤、滑剤、分散剤、加工助剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0023】
また、本発明のゴム複合体に用いられるゴム組成物の製造方法は特に限定されず、上記ゴム成分および上記マグネシウム等酸化物ならびに所望により含有していてもよい各種添加剤を、オープンロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機、バッチ式混練機等により混合(混練)する方法が挙げられる。
また、混合温度は、使用する装置により異なるため特に限定されないが、バッチ式混練機を用いた場合は、50〜160℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましい。
同様に、混合時間も、使用する装置により異なるため特に限定されないが、バッチ式混練機を用いた場合は、1〜15分間程度であるのが好ましい。
【0024】
<黄銅>
一方、上記黄銅は特に限定されず、従来公知の銅と亜鉛の合金を用いることができる。
【0025】
本発明の第1の態様に係るゴム複合体は、上述したゴム組成物を用いて形成され上述した黄銅との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着した成形物と、黄銅とを接着させて得られる。
ここで、成形物と黄銅とを接着させる方法は特に限定されないが、例えば、黄銅との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着した成形物と黄銅とを貼り合わせた後、加硫接着する方法が挙げられる。
【0026】
このような方法により接着して得られるゴム複合体としては、後述するホース以外に、具体的には、例えば、コンベヤベルト、防舷材、マリンホース、タイヤ等が挙げられる。
【0027】
本発明の第2の態様に係るホースは、特定のホース内管用ゴム組成物を用いて形成され、黄銅めっきワイヤとの接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着した内管ゴム層と、黄銅めっきワイヤを用いて形成される補強層とを有するホースである。
【0028】
ここで、本発明のホースの好適な実施態様の一例を図1を用いて説明する。図1は、ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
図1のように、ホース1は、内管ゴム層2と、その上層に補強層3および外管ゴム層4とを有するものであり、内管ゴム層2の外側の表面、すなわち、補強層3との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛(図示せず)が付着したホースである。
【0029】
次に、本発明のホースを構成する内管ゴム層、外管ゴム層および補強層について詳述する。
【0030】
<内管ゴム層>
上記内管ゴム層は、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウム等酸化物とを含有するホース内管用ゴム組成物を用いて形成されるものである。
ここで、上記ホース内管用ゴム組成物は、本発明の第1の態様に係るゴム複合体に用いられるゴム組成物として説明したものと同様である。
そのため、上記ホース内管用ゴム組成物を用いた本発明のホースは、接着面に離型剤としてステアリン酸亜鉛を用いた場合であっても、内管ゴム層と黄銅めっきワイヤを用いて形成される補強層との接着性が良好となる。
【0031】
本発明においては、上記内管ゴム層の厚みは、0.2〜4.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましい。
【0032】
<外管ゴム層>
上記外管ゴム層は、硫黄加硫が可能なゴム成分を含有するゴム組成物を用いて形成されるものであれば特に限定されない。
上記ゴム成分としては、本発明の第1の態様に係るゴム複合体に用いられるゴム組成物で説明したものと同様のものが挙げられる。
なかでも、耐候性の観点から、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴムを50〜100質量%含有するゴム成分であるのが好ましい。
【0033】
本発明においては、上記外管ゴム層の厚みは、0.2〜4.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましい。
【0034】
<補強層>
上記補強層は、上記内管ゴム層の外側に、強度保持の観点から所望により設けられる層である。
本発明においては、上記補強層は、黄銅めっきワイヤを用いて形成されるものであるが、ブレード状で形成されたものでもスパイラル状で形成されたものでもよい。
また、上記補強層は、1層だけでなく、中間ゴム層を介して2層以上設けていてもよい。
【0035】
本発明のホースの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、マンドレル上に、上記内管ゴム層、上記補強層および上記外管ゴム層をこの順に積層させた後に、それらの層を140〜190℃下、30〜180分の条件で、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)または温水加硫することにより加硫接着させて製造する方法等が好適に例示される。
なお、ステアリン酸亜鉛は、上述したように、未加硫状態で保管する際における内管ゴム同士の密着防止の観点から塗布されるものであり、例えば、マンドレル上に内管ゴム層を押し出した直後に、ステアリン酸亜鉛水溶液を塗布する方法等により内管ゴム層の表面に付着させることができる。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を用いて本発明のホースについてより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1〜17、比較例1〜11)
下記第1表に示す成分を下記第1表に示す割合(質量部)で配合し、ゴム組成物を調製した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち加硫促進剤と硫黄を除く成分をバンバリーミキサー(3.4リットル)で4分間混練し、160℃に達したときに放出し、マスタバッチを得た。
次に、得られたマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
上記第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・NBR1:PERBUNAN 2845、LANXESS社製
・NBR2:PERBUNAN 2870、LANXESS社製
・NBR3:NIPOL 1043、日本ゼオン社製
・NBR4:NIPOL 1052J、日本ゼオン社製
・NBR5:NIPOL 1042、日本ゼオン社製
・NBR6:NIPOL 1041、日本ゼオン社製
・SBR:NIPOL 1502、日本ゼオン社製
・カーボンブラック:HTC#G(GPF級カーボンブラック)、新日化カーボン社製
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種、正同化学工業社製
【0044】
・酸化マグネシウム1:キョーワマグ20(比表面積22m2/g)、協和化学工業社製
・酸化マグネシウム2:キョーワマグ30(比表面積50m2/g)、協和化学工業社製
・酸化マグネシウム3:キョーワマグ100(比表面積100m2/g)、協和化学工業社製
・酸化マグネシウム4:キョーワマグ150(比表面積150m2/g)、協和化学工業社製
・水酸化マグネシウム:キスマ5Q、協和化学工業社製
・酸化カルシウム:CML#21、近江化学工業社製
・水酸化カルシウム:消石灰、入交石灰工業社製
【0045】
・酸化鉄:べんがら、利根産業社製
・酸化チタン:タイペークR−820、石原産業社製
・酸化アルミニウム:酸化アルミニウム(α型)、三共化学薬品社製
・水酸化アルミニウム:ハイジライト、昭和電工社製
・クレー:Suprex Clay、Kentucky Tennessee Clay社製
・タルク:Mistron Vapor、日本ミストロン社製
【0046】
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸、日本油脂社製
・老化防止剤:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(ノクラック224、大内新興化学工業社製)
・可塑剤:ジオクチルアジペート(DIACIZER DOA、三菱化成ビニル社製)
・硫黄:粉末硫黄、軽井沢精錬所社製
・加硫促進剤:テトラメチルチウラムモノスルフィド(サンセラーTS、三新化学工業社製)
・スコーチ防止剤:N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(SANTOGARD PVI DS POWDER、FLEXSYS社製
【0047】
調製した各ゴム組成物について、以下に示す方法により、黄銅めっきワイヤとの接着試験を行った。その結果を第2表に示す。
【0048】
<接着試験>
得られた各ゴム組成物からなるゴム層と、黄銅めっきワイヤからなる補強層とを有するホース状試験片を以下に示すように作製した。
まず、外径34mmの鉄マンドレル上に、黄銅めっきワイヤをブレード状に巻きつけ、補強層を形成した。
次いで、得られた各ゴム組成物から調製した厚さ2.5mmの未加硫のシートの表面にステアリン酸亜鉛水溶液(濃度:4%)をスプレー塗布し、自然乾燥させた後に、上記補強層の上に張り合わせた。なお、ここでは、ステアリン酸亜鉛水溶液が塗布されたシート表面を補強層と張り合わせた。
その後、143℃のスチーム缶において、90分間のスチーム加硫条件で加硫することにより試験片を作製した。
【0049】
また、比較のために、ステアリン酸亜鉛を付着させなかった以外は上記と同様の方法によりホース状試験片を作製した。
【0050】
得られた各ホース状試験片について、剥離スピード50mm/minでゴム(シート)を剥離したときの接着強度(単位=幅25mm当たりのN)と、ゴム付き(%)、すなわちゴムが剥がれず残留している面積比とを測定した。なお、第2表中の接着強度(N/25mm)およびゴム付き(%)の数値は、5回測定した平均値である。
【0051】
この結果、接着強度が70N/25mm以上で、かつ、ゴム付きが50%以上となるものを「○(良好)」と評価し、接着強度が70N/25mm未満で、かつ、ゴム付きが50%未満となるものを「×(悪い)」と評価した。
【0052】
また、以下に示す方法により、上記で得られた各ゴム組成物を押出成形し、押出し物の外観を評価することで、ホースとしての押出し加工性を評価した。その結果を第2表に示す。
【0053】
<押出し加工性>
押出し加工性は、ASTM D2230-96に準じ、レオメックス(登録商標)104型ラボ用混合押出試験機(HAAKE社製)により、ASTM A法、即ち、いわゆるガーベイダイを用い、シリンダー温度80℃、ダイ温度80℃、ヘッド温度80℃、スクリュー回転数60rpmに設定して押出成形を行い、上記で得られた各ゴム組成物の押出し物の外観を評価することにより行った。
押出し物の外観は、採点法Bにより評価した。採点法Bは、押出し物の「30°エッジの鋭さと連続性」に関して最高10点、最低1点とし、押出し物の「表面肌の平滑性」に関して最高A、最低Eとするものである。
ここで、30°エッジの鋭さと連続性が8〜10点、かつ、表面肌がAであるものを「○(良好)」と評価し、30°エッジの鋭さと連続性が6〜7点、または、表面肌がBであるものを「△(やや悪)」と評価し、30°エッジの鋭さと連続性が5点以下、または、表面肌がC〜Eであるものを「×(不良)」と評価した。
【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
【表9】

【0058】
【表10】

【0059】
上記第1表および第2表に示す結果から、マグネシウム等酸化物を配合しないゴム組成物を用いて内管ゴム層を形成した場合は、離型剤としてステアリン酸亜鉛を塗布すると、内管ゴム層と黄銅めっきワイヤからなる補強層との接着性が劣ることが分かった(比較例1〜3)。また、酸化鉄等の他の酸化物を配合した場合や、マグネシウム等酸化物を特定量配合しない場合も同様であった(比較例4〜11)。
これに対し、マグネシウム等酸化物を特定量配合したゴム組成物を用いて内管ゴム層を形成した場合は、離型剤としてステアリン酸亜鉛を塗布しても、内管ゴム層と黄銅めっきワイヤからなる補強層との接着性が良好となることが分かった(実施例1〜17)。
特に、比表面積が20〜50m2/gの酸化マグネシウムを用いた例(実施例3、4および10〜17)は、押出し加工性に優れるホースを得ることができるゴム組成物であることが分かった。
【符号の説明】
【0060】
1 ホース
2 内管ゴム層
3 補強層
4 外管ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物を用いて形成される成形物と、黄銅とを接着させて得られるゴム複合体であって、
前記成形物の前記黄銅との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着しており、
前記ゴム組成物が、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/またはカルシウムの酸化物もしくは水酸化物とを含有し、
前記マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/または前記カルシウムの酸化物もしくは水酸化物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3〜30質量部であるゴム複合体。
【請求項2】
ホース内管用ゴム組成物を用いて形成される内管ゴム層と、黄銅めっきワイヤを用いて形成される補強層とを有するホースであって、
前記内管ゴム層の前記補強層との接着面の少なくとも一部にステアリン酸亜鉛が付着しており、
前記ホース内管用ゴム組成物が、硫黄加硫が可能なゴム成分と、マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/またはカルシウムの酸化物もしくは水酸化物とを含有し、
前記マグネシウムの酸化物もしくは水酸化物および/または前記カルシウムの酸化物もしくは水酸化物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3〜30質量部であるホース。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189595(P2010−189595A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37737(P2009−37737)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】