ゴルフクラブ、そのヘッド及び特性調節方法
【課題】ヘッドに対するシャフトの取り付け方向を変更することによりライ角やグース、スライス角を調節することができ、しかもヘッドに対するシャフトケースの着脱が容易であるゴルフクラブを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブは、ヘッド1のホゼル設置部3gの奥部にホゼル3を着脱可能に装着し、ホゼル3にシャフト4を、シャフトケース5、螺子部材6を介して取り付けたものである。シャフトケース5のシャフト挿入穴5Hにシャフト4を差し込み、接着剤を用いて固着しておく。シャフトケース5にリングホルダ9を介して螺子部材6を外嵌させておく。シャフトケース5の先端をホゼル3に差し込み、螺子部材6の雄螺子6bをホゼル挿入穴2Hの雌螺子2aに螺じ込む。ホゼル3及びリングホルダ9を、別のホゼル3A,3B及びリングホルダ9A,9Bに交換することによりライ角、グース等が調節される。
【解決手段】ゴルフクラブは、ヘッド1のホゼル設置部3gの奥部にホゼル3を着脱可能に装着し、ホゼル3にシャフト4を、シャフトケース5、螺子部材6を介して取り付けたものである。シャフトケース5のシャフト挿入穴5Hにシャフト4を差し込み、接着剤を用いて固着しておく。シャフトケース5にリングホルダ9を介して螺子部材6を外嵌させておく。シャフトケース5の先端をホゼル3に差し込み、螺子部材6の雄螺子6bをホゼル挿入穴2Hの雌螺子2aに螺じ込む。ホゼル3及びリングホルダ9を、別のホゼル3A,3B及びリングホルダ9A,9Bに交換することによりライ角、グース等が調節される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに係り、特にライ角、スライス角、グース等の特性の調節を容易に行うことができるゴルフクラブ及びそのヘッドに関する。また、本発明は、このゴルフクラブの特性調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、シャフトの先端部にヘッドが取り付けられたものである。シャフトの基端側にグリップが装着されている。
【0003】
従来の一般的なゴルフクラブヘッドにあっては、ヘッドに直にホゼル穴が設けられており、シャフトは該ホゼル穴に挿入され、接着剤によって固着されている。なお、この接着剤は、一般にエポキシ系接着剤が用いられている。シャフト交換に際しては、ホゼル部分を加熱してエポキシ樹脂硬化物よりなる組織を壊すことにより、シャフトを引き抜く。
【0004】
特開平11−178954には、ヘッド本体とホゼルとを別体とし、このホゼルをヘッド本体にねじによって固定したゴルフクラブヘッドが記載されている。この特開平11−178954では、ホゼルの下端側に板状のネック部を設け、このネック部をヘッド本体の挿着部に差し込み、ねじで固定している。このように板状のネック部をヘッド本体に固定することにより、ボールをヒットしたインパクト時にネック部にしなりを生じさせ、シャフトとホゼルとの結合部に生じる応力集中が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−178954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開平11−178954のゴルフクラブヘッドでは、ライ角やスライス角などは調節することができない。また、ヘッド本体とホゼルとの結合強度及び剛性が不足し、力強いインパクト感が得られない。また、ホゼル位置が過度に高くなる。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、ライ角やスライス角、グース等の特性を調節することができるゴルフクラブ及びヘッドと、その特性調節方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のゴルフクラブヘッドは、シャフトの先端を取り付けるためのホゼル挿入穴を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、該ホゼル挿入穴の入口部内周面に形成された雌螺子と、シャフトケース挿入穴を有し、該ホゼル挿入穴の奥部に着脱可能に装着されたホゼルと、シャフト挿入穴を有し、先端側が該シャフトケース挿入穴に着脱可能に装着されたシャフトケースと、該シャフトケースに外嵌した、軸心線方向移動不能なリングホルダと、該リングホルダに周方向に回転自在に外嵌した、軸心線方向移動不能な螺子部材と、備え、該螺子部材の外周面に設けられた雄螺子が前記雌螺子に螺合しているものである。
【0009】
請求項2のゴルフクラブは、請求項1のゴルフクラブヘッドの前記シャフト挿入穴にシャフトの先端が挿入されて固着されてなるものである。
【0010】
請求項3のゴルフクラブは、請求項2において、前記シャフトの軸心がシャフトケース挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4のゴルフクラブは、請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5のゴルフクラブは、請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心に対し傾斜方向となっていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6のゴルフクラブは、請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と平行であり、かつ所定距離離隔していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7のゴルフクラブは、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シャフトケースのシャフト挿入穴に前記シャフトが挿入され、接着剤によって固着されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8のゴルフクラブは、請求項1ないし7のいずれか1項において、該ホゼルの下端側及びホゼル挿入穴の奥部が多角断面形状部となっており、両者が係合していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9のゴルフクラブは、請求項8において、前記ホゼルの下端側とホゼル挿入穴の奥部の内面との間に弾性体が介在していることを特徴とするものである。
【0017】
請求項10のゴルフクラブの特性調節方法は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブの特性を調節する方法であって、前記ホゼルをホゼル挿入穴及びシャフトケースと分離し、該ホゼル及びリングホルダをシャフトケース挿入穴の位置又は角度が異なる別のホゼル及びリングホルダと交換し、その後、前記シャフトケースを螺子部材によってホゼル挿入穴に固定することを特徴とする。
【0018】
請求項11のゴルフクラブの特性調節方法は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブのシャフトを新たなシャフトに交換して特性を調節する方法であって、予め新たなシャフトを新たなシャフトケースに固着して新たなシャフトケース・シャフト連結体を作成しておき、ゴルフクラブに取り付けられているシャフトケース・シャフト連結体をヘッドから取り外し、このヘッドに新たなシャフトケース・シャフト連結体を取り付けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゴルフクラブ及びそのヘッドにあっては、ホゼル挿入穴の奥部にホゼルが着脱可能に装着され、このホゼルのシャフトケース挿入穴にシャフトケースの先端が着脱可能に係合している。このシャフトケースにリングホルダが装着されている。このリングホルダに螺子部材が装着されている。この螺子部材をホゼル挿入穴入口部の雌螺子に着脱することによりシャフトケースを固定したりホゼル装着穴から抜き出すことができる。そこで、このホゼル及びリングホルダをライ角、スライス角又はグースの異なる別のホゼル及びリングホルダに交換するか又はホゼルの周方向位相を変更し、このホゼルを介してシャフト付きシャフトケースを再びヘッド本体に装着する。
【0020】
例えば、シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心に対し斜め方向(例えば斜交方向)となるホゼル及びリングホルダに交換することにより、ヘッド本体に対するシャフトの取り付け方向が変更され、ライ角やスライス角が変更される。
【0021】
従って、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、ライ角又はスライス角のみを調節することができる。
【0022】
また、シャフトケース挿入穴の軸心位置がホゼル挿入穴の軸心位置から平行移動状にずれているホゼル及びリングホルダに交換することにより、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、グースや、シャフトから重心までの距離(重心距離)を調節することができる。
【0023】
なお、本発明では、ホゼル及びリングホルダを交換せずにシャフトケース付きシャフトを交換してシャフト交換することもできる。即ち、シャフトケースとして全く同型のシャフトケースを用意しておき、このシャフトケースに別特性のシャフトを固着してシャフトケース・シャフト連結体としておき、このシャフトケース・シャフト連結体をそれまでのヘッドシャフトケース・シャフト連結体と交換して当該ヘッドのホゼルに取り付けることにより、シャフトのみが異なったゴルフクラブを得ることができる。
【0024】
このシャフト交換方法によれば、従来のように加熱によって接着剤の組織を壊してシャフトを取り外し、新たなシャフトを再度接着剤で取り付けるという面倒な手間及び時間を省くことができる。そのため、試打したばかりのゴルフクラブのヘッドからシャフトケース・シャフト連結体を取り外し、このヘッドに異なる特性の別のシャフトケース・シャフト連結体を取り付けて直ちに試打を行うことができるので、ゴルフショップ等でゴルファーが適切なゴルフクラブを見出すことが極めて容易となる。また、ヘッドの固体差を考慮することなくシャフトの評価を行うことができる。
【0025】
近年、ゴルファーが自分の技量にあったゴルフクラブを探すために、コンピュータや高速カメラなどを使って、自分にマッチしたゴルフクラブを探すシステムが開発されてきている。このようなシステムは、ヘッドスピードや打ち出し角度などを基に個々の市販クラブをベースに打ち比べて探すようにしたシステムである。
【0026】
これに対し、本発明のゴルフクラブによれば、同一のシャフトとヘッドとの位置関係のみを変更して重心距離やプログレッションを変更し、打ち出されたボールの飛球特性(打ち出し角やスピン)の違いを容易に実感したり、同じヘッドに対してシャフトのみを付け替えて、シャフトのみの違いを実感したりすることができる。また、その日のプレーヤーの調子に応じてシャフトを交換したり、シャフトは同一のまま、ライ角やスライス角、グースを調整するために、ヘッドに対するシャフトの取り付け方向を変更したりすることもできる。
【0027】
なお、ホゼルの下端側及びホゼル挿入穴の奥部を多角形断面形状としておくと、ホゼルの周方向の位置決め(位相決め)が行われる。また、ヘッドとホゼルとの間での回転が防止される。
【0028】
ホゼルの下端とホゼル挿入穴の奥部内面との間に弾性体を介在させると、ホゼル挿入穴とホゼルとの間の衝撃や振動が吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係るヘッドの正面図である。
【図2】シャフトをホゼル軸心に対し偏心させたヘッドの側面図である。
【図3】シャフトの傾き方向を変えたヘッドの側面図である。
【図4】シャフトの傾き方向を変えたヘッドの正面図である。
【図5】第1図のV−V線断面図である。
【図6】ホゼル、シャフトケース及び螺子部材の斜視図である。
【図7】図2のヘッドのホゼル部の断面図である。
【図8】図3のヘッドのホゼル部の断面図である。
【図9】図5のIX−IX線断面図である。
【図10】図7のX−X線断面図である。
【図11】ホゼルの斜視図である。
【図12】(a)図はシャフトケースに対するリングホルダ及び螺子部材の組み付け状態を示す分解斜視図、(b)図はシャフトケースとリングホルダとの係合関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図、第2図及び第3図は第1図の状態からホゼルを交換して再装着したゴルフクラブの側面図、第4図は第1図の状態からホゼルを交換して再装着したゴルフクラブの正面図である。第5図は第1図のV−V線断面図、第6図はホゼル、シャフトケース、螺子部材及びシャフト先端部の斜視図である。
【0031】
まず、ホゼル3を用いたヘッドについて、第1図、第5図及び第6図を参照して説明する。
【0032】
このゴルフクラブは、ヘッド1に対しシャフト4付きのシャフトケース5をホゼル3、リングホルダ9及び螺子部材6を介して取り付けたものである。
【0033】
このヘッド1は中空のウッド型のものであり、フェース部2aと、クラウン部2bと、ソール部2cと、トウ部2dと、ヒール部2eと、バック部2fとを有する。
【0034】
第5図の通り、クラウン部2bのフェース部2a側かつヒール部2e側に、ホゼル挿入穴2Hを有した円筒状のホゼル設置部2gが設けられている。このホゼル設置部2gは、上端が開放し、下端が閉じた円筒形であり、シャフト4の差込方向に延在している。ホゼル挿入穴2Hの入口側の内周面に雌螺子2mが刻設されている。雌螺子2mより若干奥側に、縮径方向に段差面2sが設けられている。この段差面2sよりも奥側に引き続いて円筒面が形成されている。
【0035】
ホゼル挿入穴2Hの該円筒面よりも奥側の内周面は、奥側(下端側)ほど小径となる正四角錐形となっており、ホゼル3の軸心と斜交する4面の斜面2k(第5図)が設けられている。対向する1対の斜面2k同士の交差角度(挟角)は10〜30°特に15〜20°程度が好適である。
【0036】
このホゼル挿入穴2H内の奥部にホゼル3が挿入配置されている。このホゼル3は、ホゼル挿入穴2Hに対し挿抜可能である。
【0037】
第5,6,11図に示す通り、ホゼル3の外面は、下端ほど小径となる四角錐形(正確には切頭四角錐形)であり、4面の斜面3kが設けられている。斜面3kは、ホゼル3の軸心線を挟んで対称に設けられている。対向する1対の斜面3k,3k同士の交差角度は、ホゼル挿入穴2Hの最奥部の斜面2k,2kの交差角度と同一である。ホゼル3の斜面3kとホゼル挿入穴2Hの斜面2kとの間に弾性体8Aを介在させ、がたつきを防止している。
【0038】
ホゼル3の下部の外周面は、この実施の形態では正四角錐形であるが、正三角錐形、正六角錐形、正八角錐形などの正多角錐形であってもよい。
【0039】
ホゼル3には、上端面から下方に向けてシャフトケース挿入穴3Hが設けられている。このシャフトケース挿入穴3Hは、奥側ほど小径となる正四角錐形となっており、ホゼル3の軸心と斜交する4面の斜面3d(第11図)が設けられている。対向する1対の斜面3d,3d同士の交差角度(挟角)は10〜30°特に15〜20°程度が好適である。
【0040】
シャフトケース5は、筒形部材であり、上端側から下端側に向って、シャフト4の挿入用のシャフト挿入穴5Hが軸心線方向に設けられている。シャフトケース5の外周面は、上端部及び下部並びに凸部5tを除き円筒形である。シャフト挿入穴5Hの内周面も、下部を除き円筒形である。
【0041】
シャフトケース5の外径は12〜20mm特に13〜15mm程度が好ましく、シャフト挿入穴5Hの内径は8〜10mm特に8.5〜9.5mm程度が好ましい。ホゼル3の上部の外径は13〜20mm特に15〜19mm程度が好ましい。
【0042】
シャフト挿入穴5Hの奥底面からシャフトケース5の下端面に空気抜き用の小孔5bが穿設されている。シャフト4の先端をシャフト挿入穴5Hに差し込み、接着剤によって固着し、シャフト4とシャフトケース5とを一体にし、シャフトケース・シャフト連結体としておく。好ましくは、この接着剤をシャフト4の先端部の外周面に塗着し、シャフト挿入穴5Hの最奥部まで差し込む。接着剤としてはエポキシ系接着剤などが好適である。シャフトケース5に小孔5bが設けられているので、シャフト4をシャフト挿入穴5Hに差し込んだときに空気が該小孔5bを通って流出する。
【0043】
シャフトケース5の軸心線方向(長手方向)の途中の外周面に凸部5tが設けられている。この実施の形態では、凸部5tはシャフトケース5を周回するフランジ状である。
【0044】
第6図に明示の通り、シャフトケース5の下端側の外面は、下端ほど小径となる四角錐形(正確には切頭四角錐形)であり、4面の斜面5cが設けられている。斜面5cは、シャフトケース5の軸心線を挟んで対称に設けられている。対向する1対の斜面5c,5c同士の交差角度は、ホゼル3の斜面3d,3dの交差角度と同一である。シャフトケース5の斜面5cの大きさは、ホゼル3の斜面3dと同一とされてもよく、両者間に弾性体を介在させる場合にはわずかに小さなものとされてもよい。なお、シャフトケース5の下端側及びシャフトケース挿入穴3Hは、マイナス型ドライバーのように2斜面よりなるV字形など、他の非円形断面形状とされてもよい。
【0045】
シャフトケース5の上端には、上方ほど小径となるテーパ形外周面を有した拡径部5gが一体に設けられている。この拡径部5gは、円錐台形状となっており、その上面にシャフト挿入穴5Hが開口している。なお、図示は省略するが、シャフト挿入穴5Hの上端側の内周縁に角度20〜45°程度の面取りを形成してシャフト4を差し込み易くしてもよい。
【0046】
シャフトケース5の拡径部5gと凸部5tとの間の小径部5h(第5図)にリングホルダ9が装着されている。このリングホルダ9は、その最上部に拡径部9aが設けられ、該拡径部9aよりも所定距離下方に外向き鍔状の凸部9cが設けられた略々円環形の部材である。拡径部9a及び凸部9cはリングホルダ9を周回している。拡径部9aの外周面は、上方ほど縮径するテーパ形である。リングホルダ9の下端の内周縁部には、凸部5tが係合する周回段部9dが設けられている。
【0047】
リングホルダ9の上端面と拡径部5gとの間及び段部9dの下向き面と凸部5tとの間にはスペーサ9fが介在されている。
【0048】
このリングホルダ9の拡径部9aと凸部9cとの間の円筒形小径部9bに螺子部材6が回転自在に外嵌している。螺子部材6の上端面はスペーサ6fを介して拡径部9aに接しており、下端面は、凸部9cにスペーサ6hを介して当っている。
【0049】
第6図に明瞭に示される通り、螺子部材6は、略円環形であり、その下半部の外周面に雄螺子6bが刻設されている。上半部6aの外周面には、複数個の凹部6eが設けられ、ナット状となっている。この凹部6eに工具をかけて螺子部材6を回転させることができる。
【0050】
なお、リングホルダ9及び螺子部材6は実際には第12図に示すように軸心線方向に沿って半割した形状の2個の半割体9Q同士、半割体6Q同士を組み合わせたものである。リングホルダ半割体9Qの内周面に凸部9tが設けられ、シャフトケース5の小径部5hの外周面に凹部5rが設けられ、該凸部9tと凹部5rとが係合することによりリングホルダ9の回転が阻止されている。凸部をシャフトケース5に設け、凹部をリングホルダ半割体9Qに設けてもよい。
【0051】
ゴルフクラブを組み立てるには、第6図のように、まず、ホゼル3をホゼル挿入穴2Hに挿入し、弾性体8Aを介して斜面3k,2k同士を当接させておく。
【0052】
シャフト4の先端にシャフトケース5が固着されたシャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5を、シャフトケース挿入穴3Hに差し込む。なお、この実施の形態では、シャフトケース5の斜面5c及びシャフトケース5の先端面に、薄い(例えば厚さ0.5〜5mm程度)のゴム、エラストマー等の薄片状の弾性体8を塗着、貼り付けなどにより設けておく。弾性体8は、予めシャフトケース5に設けておいてもよく、シャフトケース・シャフト連結体を構成してからシャフトケース5に設けてもよい。
【0053】
シャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5の先端側を、斜面5cと斜面3dとを重ね合わせるようにシャフトケース挿入穴3Hに挿入した後、螺子部材6の雄螺子6bをホゼル挿入穴2Hの上部内周面の雌螺子2aにねじ込む。
【0054】
これにより、第5図の通り、螺子部材6の下端面がリングホルダ9の凸部9cを段差面2sに押し付けることによりリングホルダ9が固定され、リングホルダ9がシャフトケース5の凸部5tを押圧し、シャフトケース5の斜面5cが弾性体8を介してホゼル3の斜面3dに押し付けられ、シャフトケース5が固定される。シャフトケース5とシャフト4とは接着剤によって強固に接着されているので、これにより、シャフト4とヘッド1とが一体となったゴルフクラブが完成する。
【0055】
なお、第1,5,6,9図では、シャフト4はホゼル挿入穴2Hの軸心に対し同軸に配置されている。後述の第2図〜第4図及び第7,8,10図の如く、このシャフト4の位置及び傾き方向は変更可能である。
【0056】
この実施の形態では、ホゼル3及びリングホルダ9をシャフトケース挿入穴又はシャフト挿入穴が偏心していたり傾いたりしている別のホゼル及びリングホルダに交換可能となっている。このような交換用ホゼル及びリングホルダの一例を第7,8図に示す。
【0057】
第2図及び第7,10図のホゼル3Aは、シャフトケース挿入穴3Hをホゼル3Aの軸心位置からずらした(偏心させた)ものであり、リングホルダ9Aはシャフト挿入穴5Hをリングホルダ9Aの外周面にとっての軸心位置から偏心させたものである。シャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの軸心は、ホゼル3Aの軸心、リングホルダ9Aの小径部9bの外周面の軸心及びホゼル挿入穴2Hの軸心と平行でかつそれから若干(例えば0.5〜4mm)離隔している。
【0058】
第3,4図及び第8図のホゼル3B及びリングホルダ9Bは、シャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの軸心方向をホゼル3B、リングホルダ9Bの小径部9bの外周面の軸心及びホゼル挿入穴2Hの軸心方向に対し傾斜させたものである。
【0059】
この実施の形態では、ホゼル挿入穴2H、リングホルダ9Bの小径部9bの外周面の軸心及びホゼル3Bの外周面の軸心線a1に対しシャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの軸心線a2は斜交している。軸心線a1,a2の交差角度θ(第8図)は0.1〜5.0°、特に0.25〜3.0°程度が好ましい。
【0060】
なお、軸心線a1,a2は交差しなくてもよく、「ねじれ」の関係にあってもよい。即ち、軸心線a1,a2は交わることがなく、軸心線a2が軸心線a1の近傍を通り抜ける関係であってもよい。この場合の軸心線a1,a2の角度については、軸心線a2をヒール側に最も傾いた状態とし、軸心線a1を含み飛球線方向に延在する面を想定し、この面と軸心線a2との交差角度が上記角度θの範囲となるようにすればよい。
【0061】
このゴルフクラブからシャフトケース5を抜き出すには、螺子部材6を緩み方向に回す。この螺子部材6の雄螺子6bがホゼル挿入穴2Hの雌螺子2mに螺合しているので、螺子部材6が緩み方向に回転すると、螺子部材6は上方へ移動(螺進)し、螺子部材6が拡径部5gを押し上げ、シャフトケース5が上方に移動する。螺子部材6を雌螺子2mから外すことにより、シャフトケース5を抜き出すことができる。ホゼル3,3A又は3Bについては、適宜の工具をホゼル挿入穴2H内に差し込み、ホゼル挿入穴2Hから取り出す。この工具としては、真空チャックなどのチャック機構を有したものが好適である。
【0062】
ホゼル3及びリングホルダ9を第7図のホゼル3A及びリングホルダ9A又は第8図のホゼル3B及びリングホルダ9Bに交換することにより、シャフトのグースやライ角などを調節することができる。
【0063】
シャフトケース挿入穴3Hを偏心させたホゼル3A及びリングホルダ9Aを用いた場合、第7図に示すようにシャフト4を第5図の場合よりも偏心距離分だけフェース側に近づけることができる。第7図のゴルフクラブの略全体側面図を第2図に示す。
【0064】
この第2図及び第7図に示す状態から、ホゼル3A及びリングホルダ9Aを一旦ホゼル挿入穴2Hから抜き出し、90°、180°又は270°回すことによりシャフト4の位置をヒール側、バック側又はトウ側に平行移動状に変更することができる。第2図では、グースが最も小さく、それから180°回した状態ではグースが最も大きくなる。シャフト4の位置をトウ側又はヒール側とすることにより、シャフト軸心からヘッド重心までの距離が変更される。
【0065】
第3,4,8図のように、シャフトケース挿入穴3H、シャフト挿入穴5Hをホゼル挿入穴2Hの軸心に対し斜めとしたホゼル3B及びリングホルダ9Bを用いることにより、シャフト4の傾きを第1図及び第5図とは別のもの(例えば第3図、第4図(a)、(b))とすることができる。
【0066】
第3図では、シャフト4の軸心線a2がホゼル挿入穴2Hの軸心線a1に対して角度θだけ傾いている。そのため、ホゼル3Bを90°、180°又は270°回すことにより、シャフト4の傾き方向を変えることができる。第4図(a)では、シャフト4は最もヒール側に傾いている。第4図(b)では、シャフト4は最もトウ側に傾いている。第3図ではシャフト4は最もフェース側へ傾いた状態となっている。
【0067】
このようにシャフト4の傾きの向きを変えることによりライ角及びスライス角を変えることができる。
【0068】
ライ角に関して説明すれば、第4図(a)で最も小さく、フラットライであり、第4図(b)で最も大きく、アップライである。
【0069】
スライス角に関して説明すれば、最もフェース側に傾いた第3図ではフェース面が最も閉じたフックフェースとなり、これと反対に最も後方へ傾ける(図示略)ことによりフェース面が最もオープンとなったスライスフェースとなる。
【0070】
このように、ホゼル3B及びリングホルダ9Bを用いることにより、ヘッド1に対するシャフト4の傾き方向を変更することができ、ライ角及びスライス角を変えることができる。
【0071】
このゴルフクラブにあっては、拡径部5gをテーパ形としているが、平たいフランジ形の拡径部を設け、その上側にフェルールを装着するようにしてもよい。
【0072】
この実施の形態では、螺子部材6はリングホルダ9に外嵌しており、螺子部材6を回転させるときにシャフト4に接触しない。このため、シャフト4の傷付きが防止される。
【0073】
なお、ホゼル3,3A,3Bとホゼル挿入穴2Hとの間及びシャフトケース5とシャフトケース挿入穴3Hとの間にゴム、エラストマー、合成樹脂などよりなる薄片状の弾性体8A,8を介在させているので、インパクト時の衝撃や振動を吸収することができる。
【0074】
この実施の形態では、ホゼル挿入穴2H、シャフトケース挿入穴3Hの穴奥側の内面と、ホゼル3,3A,3B及びシャフトケース5の下端側の外面とを、それぞれ四角錐形状の斜面とし、この斜面同士を係合させるので、ガタツキが少なく、シャフト4のシャフト軸心周り方向の回転が阻止される。すなわち、シャフト4のトルク方向の固定剛性が高い。
【0075】
また、4面の斜面を設けてホゼル3,3A,3B及びシャフトケース5の先端側を先細形としているので、それぞれホゼル挿入穴2H、シャフトケース挿入穴3H内に挿入し易い。
【0076】
なお、ホゼル3,3A,3Bは、ホゼル挿入穴2Hの奥部にのみ配置される短い部材であり、重量が小さい。
【0077】
本発明では、ゴルフクラブのシャフト交換も容易に行うことができる。シャフト交換を行うには、交換すべき新シャフトに、予め上記シャフトケース5と同型のシャフトケースを接着剤によって固着しておく。なお、リングホルダ9及び螺子部材6もこのシャフトケースに装着しておく。
【0078】
既存のゴルフクラブの螺子部材6を回し、旧シャフト4を旧シャフトケース5及び螺子部材6共々ヘッド1から取り外す。次いで、シャフトケース及び螺子部材付きの新シャフト(シャフトケース・シャフト連結体)をシャフトケース挿入穴3Hに差し込み、螺子部材6を雌螺子3aにねじ込むことによって固定する。なお、螺子部材6が1個だけ用いられており、着脱作業が容易である。
【0079】
このようにシャフトの取り付けや交換を極めて簡単かつ迅速に行うことができる。なお、従来では、シャフトの交換に際し既存のゴルフクラブのホゼル部分を加熱して接着剤硬化物の組織を壊し、シャフトを抜いた後、新シャフトを接着剤で固着するようにしていたため、数時間〜1日程度の時間がかかっていたが、上記実施の形態では、予め新シャフトにシャフトケース5を接着剤で取り付けておくことにより、シャフト交換を数分程度で行うことができる。従って、シャフトケース付きの各種スペックのシャフトを用意しておき、同一のヘッド本体に順次に異なるシャフトを取り付けて試打する様な利用方式が実現可能となる。
【0080】
なお、ホゼル3B及びリングホルダ9Bとしてシャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの傾き角度θが種々異なるものを製作しておいてもよい。例えば、交換用ホゼルとして、上記角度θが0.5°,1°,1.5°,2°,2.5°,3°のように小刻みに変えた複数種類のホゼル群を用意しておくことにより、ライ角やスライス角を小刻みに変えて試打することができる。
【0081】
上記ホゼル、シャフトケース及び螺子部材は金属製とされることが好ましく、特にアルミ又はチタンもしくはそれらの合金よりなることが好ましい。ホゼル3,3A,3B及びリングホルダ9,9A,9Bについては、ヘッド本体と同等又はそれよりも低い比重の材質が好ましく、例えばチタン合金、アルミニウム、アルミ合金、マグネシウム合金、FRP、合成樹脂などを用いてもよい。
【0082】
ヘッドの材質は特に限定されないが、ウッド型ゴルフクラブヘッドの場合、例えばチタン合金やアルミ合金、ステンレス等とすることができる。
【0083】
上記実施の形態ではホゼル及びホゼル挿入穴に正四角錐形となるように4面の斜面を設けているが、斜面の数が3又は5以上の正多角錐形でもよい。また、ホゼルの先端側及びホゼル挿入穴の奥部を星型等の凹多角形断面形状やギヤ歯形断面形状としてもよい。
【0084】
なお、シャフト4に取り付けるグリップとして、断面が非真円形のものを用いることがある。例えば、グリップ外周面のうちアドレス状態で地面を指向する下側面をその他の面よりも膨出した形状とすることがある。このような場合、ホゼル3A,3Bの向きを変えたときに、グリップ膨出部が地面側とならないことがある。そこで、本発明では、断面真円形のグリップを用いるのが好ましい。
【0085】
上記実施の形態ではゴルフクラブヘッドはウッド型であるが、ユーティリティ型、アイアン型、パターなどのいずれのタイプのゴルフクラブヘッドにも本発明を適用することができる。
【0086】
なお、図示の中空型のゴルフクラブヘッドの場合、ホゼル3,3A,3B及びホゼル設置部2g並びにシャフトケース5、螺子部材6を設けたことにより、ヒール側の重量が一般的なゴルフクラブヘッドに比べて大きくなる。そのため、トウ側やバック部の肉厚を大きくしたり、トウ側にウェイトを設けたりすることにより、ゴルフクラブヘッドのバランスをとるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 ヘッド
2 ヘッド本体
2a フェース部
2e ヒール部
2g ホゼル設置部
2H ホゼル挿入穴
2m 雌螺子
2s 段差面
3,3A,3B ホゼル
3d 斜面
3H シャフトケース挿入穴
3k 斜面
4 シャフト
5 シャフトケース
5a シャフト挿入穴
5b 小孔
5c 斜面
5g 拡径部
5H シャフト挿入穴
5h 小径部
5t 凸部
6 螺子部材
6b 雄螺子
8,8A 弾性体
9,9A,9B リングホルダ
9a 拡径部
9b 小径部
9c 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに係り、特にライ角、スライス角、グース等の特性の調節を容易に行うことができるゴルフクラブ及びそのヘッドに関する。また、本発明は、このゴルフクラブの特性調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、シャフトの先端部にヘッドが取り付けられたものである。シャフトの基端側にグリップが装着されている。
【0003】
従来の一般的なゴルフクラブヘッドにあっては、ヘッドに直にホゼル穴が設けられており、シャフトは該ホゼル穴に挿入され、接着剤によって固着されている。なお、この接着剤は、一般にエポキシ系接着剤が用いられている。シャフト交換に際しては、ホゼル部分を加熱してエポキシ樹脂硬化物よりなる組織を壊すことにより、シャフトを引き抜く。
【0004】
特開平11−178954には、ヘッド本体とホゼルとを別体とし、このホゼルをヘッド本体にねじによって固定したゴルフクラブヘッドが記載されている。この特開平11−178954では、ホゼルの下端側に板状のネック部を設け、このネック部をヘッド本体の挿着部に差し込み、ねじで固定している。このように板状のネック部をヘッド本体に固定することにより、ボールをヒットしたインパクト時にネック部にしなりを生じさせ、シャフトとホゼルとの結合部に生じる応力集中が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−178954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開平11−178954のゴルフクラブヘッドでは、ライ角やスライス角などは調節することができない。また、ヘッド本体とホゼルとの結合強度及び剛性が不足し、力強いインパクト感が得られない。また、ホゼル位置が過度に高くなる。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、ライ角やスライス角、グース等の特性を調節することができるゴルフクラブ及びヘッドと、その特性調節方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のゴルフクラブヘッドは、シャフトの先端を取り付けるためのホゼル挿入穴を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、該ホゼル挿入穴の入口部内周面に形成された雌螺子と、シャフトケース挿入穴を有し、該ホゼル挿入穴の奥部に着脱可能に装着されたホゼルと、シャフト挿入穴を有し、先端側が該シャフトケース挿入穴に着脱可能に装着されたシャフトケースと、該シャフトケースに外嵌した、軸心線方向移動不能なリングホルダと、該リングホルダに周方向に回転自在に外嵌した、軸心線方向移動不能な螺子部材と、備え、該螺子部材の外周面に設けられた雄螺子が前記雌螺子に螺合しているものである。
【0009】
請求項2のゴルフクラブは、請求項1のゴルフクラブヘッドの前記シャフト挿入穴にシャフトの先端が挿入されて固着されてなるものである。
【0010】
請求項3のゴルフクラブは、請求項2において、前記シャフトの軸心がシャフトケース挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4のゴルフクラブは、請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5のゴルフクラブは、請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心に対し傾斜方向となっていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6のゴルフクラブは、請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と平行であり、かつ所定距離離隔していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7のゴルフクラブは、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シャフトケースのシャフト挿入穴に前記シャフトが挿入され、接着剤によって固着されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8のゴルフクラブは、請求項1ないし7のいずれか1項において、該ホゼルの下端側及びホゼル挿入穴の奥部が多角断面形状部となっており、両者が係合していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9のゴルフクラブは、請求項8において、前記ホゼルの下端側とホゼル挿入穴の奥部の内面との間に弾性体が介在していることを特徴とするものである。
【0017】
請求項10のゴルフクラブの特性調節方法は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブの特性を調節する方法であって、前記ホゼルをホゼル挿入穴及びシャフトケースと分離し、該ホゼル及びリングホルダをシャフトケース挿入穴の位置又は角度が異なる別のホゼル及びリングホルダと交換し、その後、前記シャフトケースを螺子部材によってホゼル挿入穴に固定することを特徴とする。
【0018】
請求項11のゴルフクラブの特性調節方法は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブのシャフトを新たなシャフトに交換して特性を調節する方法であって、予め新たなシャフトを新たなシャフトケースに固着して新たなシャフトケース・シャフト連結体を作成しておき、ゴルフクラブに取り付けられているシャフトケース・シャフト連結体をヘッドから取り外し、このヘッドに新たなシャフトケース・シャフト連結体を取り付けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゴルフクラブ及びそのヘッドにあっては、ホゼル挿入穴の奥部にホゼルが着脱可能に装着され、このホゼルのシャフトケース挿入穴にシャフトケースの先端が着脱可能に係合している。このシャフトケースにリングホルダが装着されている。このリングホルダに螺子部材が装着されている。この螺子部材をホゼル挿入穴入口部の雌螺子に着脱することによりシャフトケースを固定したりホゼル装着穴から抜き出すことができる。そこで、このホゼル及びリングホルダをライ角、スライス角又はグースの異なる別のホゼル及びリングホルダに交換するか又はホゼルの周方向位相を変更し、このホゼルを介してシャフト付きシャフトケースを再びヘッド本体に装着する。
【0020】
例えば、シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心に対し斜め方向(例えば斜交方向)となるホゼル及びリングホルダに交換することにより、ヘッド本体に対するシャフトの取り付け方向が変更され、ライ角やスライス角が変更される。
【0021】
従って、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、ライ角又はスライス角のみを調節することができる。
【0022】
また、シャフトケース挿入穴の軸心位置がホゼル挿入穴の軸心位置から平行移動状にずれているホゼル及びリングホルダに交換することにより、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、グースや、シャフトから重心までの距離(重心距離)を調節することができる。
【0023】
なお、本発明では、ホゼル及びリングホルダを交換せずにシャフトケース付きシャフトを交換してシャフト交換することもできる。即ち、シャフトケースとして全く同型のシャフトケースを用意しておき、このシャフトケースに別特性のシャフトを固着してシャフトケース・シャフト連結体としておき、このシャフトケース・シャフト連結体をそれまでのヘッドシャフトケース・シャフト連結体と交換して当該ヘッドのホゼルに取り付けることにより、シャフトのみが異なったゴルフクラブを得ることができる。
【0024】
このシャフト交換方法によれば、従来のように加熱によって接着剤の組織を壊してシャフトを取り外し、新たなシャフトを再度接着剤で取り付けるという面倒な手間及び時間を省くことができる。そのため、試打したばかりのゴルフクラブのヘッドからシャフトケース・シャフト連結体を取り外し、このヘッドに異なる特性の別のシャフトケース・シャフト連結体を取り付けて直ちに試打を行うことができるので、ゴルフショップ等でゴルファーが適切なゴルフクラブを見出すことが極めて容易となる。また、ヘッドの固体差を考慮することなくシャフトの評価を行うことができる。
【0025】
近年、ゴルファーが自分の技量にあったゴルフクラブを探すために、コンピュータや高速カメラなどを使って、自分にマッチしたゴルフクラブを探すシステムが開発されてきている。このようなシステムは、ヘッドスピードや打ち出し角度などを基に個々の市販クラブをベースに打ち比べて探すようにしたシステムである。
【0026】
これに対し、本発明のゴルフクラブによれば、同一のシャフトとヘッドとの位置関係のみを変更して重心距離やプログレッションを変更し、打ち出されたボールの飛球特性(打ち出し角やスピン)の違いを容易に実感したり、同じヘッドに対してシャフトのみを付け替えて、シャフトのみの違いを実感したりすることができる。また、その日のプレーヤーの調子に応じてシャフトを交換したり、シャフトは同一のまま、ライ角やスライス角、グースを調整するために、ヘッドに対するシャフトの取り付け方向を変更したりすることもできる。
【0027】
なお、ホゼルの下端側及びホゼル挿入穴の奥部を多角形断面形状としておくと、ホゼルの周方向の位置決め(位相決め)が行われる。また、ヘッドとホゼルとの間での回転が防止される。
【0028】
ホゼルの下端とホゼル挿入穴の奥部内面との間に弾性体を介在させると、ホゼル挿入穴とホゼルとの間の衝撃や振動が吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係るヘッドの正面図である。
【図2】シャフトをホゼル軸心に対し偏心させたヘッドの側面図である。
【図3】シャフトの傾き方向を変えたヘッドの側面図である。
【図4】シャフトの傾き方向を変えたヘッドの正面図である。
【図5】第1図のV−V線断面図である。
【図6】ホゼル、シャフトケース及び螺子部材の斜視図である。
【図7】図2のヘッドのホゼル部の断面図である。
【図8】図3のヘッドのホゼル部の断面図である。
【図9】図5のIX−IX線断面図である。
【図10】図7のX−X線断面図である。
【図11】ホゼルの斜視図である。
【図12】(a)図はシャフトケースに対するリングホルダ及び螺子部材の組み付け状態を示す分解斜視図、(b)図はシャフトケースとリングホルダとの係合関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図、第2図及び第3図は第1図の状態からホゼルを交換して再装着したゴルフクラブの側面図、第4図は第1図の状態からホゼルを交換して再装着したゴルフクラブの正面図である。第5図は第1図のV−V線断面図、第6図はホゼル、シャフトケース、螺子部材及びシャフト先端部の斜視図である。
【0031】
まず、ホゼル3を用いたヘッドについて、第1図、第5図及び第6図を参照して説明する。
【0032】
このゴルフクラブは、ヘッド1に対しシャフト4付きのシャフトケース5をホゼル3、リングホルダ9及び螺子部材6を介して取り付けたものである。
【0033】
このヘッド1は中空のウッド型のものであり、フェース部2aと、クラウン部2bと、ソール部2cと、トウ部2dと、ヒール部2eと、バック部2fとを有する。
【0034】
第5図の通り、クラウン部2bのフェース部2a側かつヒール部2e側に、ホゼル挿入穴2Hを有した円筒状のホゼル設置部2gが設けられている。このホゼル設置部2gは、上端が開放し、下端が閉じた円筒形であり、シャフト4の差込方向に延在している。ホゼル挿入穴2Hの入口側の内周面に雌螺子2mが刻設されている。雌螺子2mより若干奥側に、縮径方向に段差面2sが設けられている。この段差面2sよりも奥側に引き続いて円筒面が形成されている。
【0035】
ホゼル挿入穴2Hの該円筒面よりも奥側の内周面は、奥側(下端側)ほど小径となる正四角錐形となっており、ホゼル3の軸心と斜交する4面の斜面2k(第5図)が設けられている。対向する1対の斜面2k同士の交差角度(挟角)は10〜30°特に15〜20°程度が好適である。
【0036】
このホゼル挿入穴2H内の奥部にホゼル3が挿入配置されている。このホゼル3は、ホゼル挿入穴2Hに対し挿抜可能である。
【0037】
第5,6,11図に示す通り、ホゼル3の外面は、下端ほど小径となる四角錐形(正確には切頭四角錐形)であり、4面の斜面3kが設けられている。斜面3kは、ホゼル3の軸心線を挟んで対称に設けられている。対向する1対の斜面3k,3k同士の交差角度は、ホゼル挿入穴2Hの最奥部の斜面2k,2kの交差角度と同一である。ホゼル3の斜面3kとホゼル挿入穴2Hの斜面2kとの間に弾性体8Aを介在させ、がたつきを防止している。
【0038】
ホゼル3の下部の外周面は、この実施の形態では正四角錐形であるが、正三角錐形、正六角錐形、正八角錐形などの正多角錐形であってもよい。
【0039】
ホゼル3には、上端面から下方に向けてシャフトケース挿入穴3Hが設けられている。このシャフトケース挿入穴3Hは、奥側ほど小径となる正四角錐形となっており、ホゼル3の軸心と斜交する4面の斜面3d(第11図)が設けられている。対向する1対の斜面3d,3d同士の交差角度(挟角)は10〜30°特に15〜20°程度が好適である。
【0040】
シャフトケース5は、筒形部材であり、上端側から下端側に向って、シャフト4の挿入用のシャフト挿入穴5Hが軸心線方向に設けられている。シャフトケース5の外周面は、上端部及び下部並びに凸部5tを除き円筒形である。シャフト挿入穴5Hの内周面も、下部を除き円筒形である。
【0041】
シャフトケース5の外径は12〜20mm特に13〜15mm程度が好ましく、シャフト挿入穴5Hの内径は8〜10mm特に8.5〜9.5mm程度が好ましい。ホゼル3の上部の外径は13〜20mm特に15〜19mm程度が好ましい。
【0042】
シャフト挿入穴5Hの奥底面からシャフトケース5の下端面に空気抜き用の小孔5bが穿設されている。シャフト4の先端をシャフト挿入穴5Hに差し込み、接着剤によって固着し、シャフト4とシャフトケース5とを一体にし、シャフトケース・シャフト連結体としておく。好ましくは、この接着剤をシャフト4の先端部の外周面に塗着し、シャフト挿入穴5Hの最奥部まで差し込む。接着剤としてはエポキシ系接着剤などが好適である。シャフトケース5に小孔5bが設けられているので、シャフト4をシャフト挿入穴5Hに差し込んだときに空気が該小孔5bを通って流出する。
【0043】
シャフトケース5の軸心線方向(長手方向)の途中の外周面に凸部5tが設けられている。この実施の形態では、凸部5tはシャフトケース5を周回するフランジ状である。
【0044】
第6図に明示の通り、シャフトケース5の下端側の外面は、下端ほど小径となる四角錐形(正確には切頭四角錐形)であり、4面の斜面5cが設けられている。斜面5cは、シャフトケース5の軸心線を挟んで対称に設けられている。対向する1対の斜面5c,5c同士の交差角度は、ホゼル3の斜面3d,3dの交差角度と同一である。シャフトケース5の斜面5cの大きさは、ホゼル3の斜面3dと同一とされてもよく、両者間に弾性体を介在させる場合にはわずかに小さなものとされてもよい。なお、シャフトケース5の下端側及びシャフトケース挿入穴3Hは、マイナス型ドライバーのように2斜面よりなるV字形など、他の非円形断面形状とされてもよい。
【0045】
シャフトケース5の上端には、上方ほど小径となるテーパ形外周面を有した拡径部5gが一体に設けられている。この拡径部5gは、円錐台形状となっており、その上面にシャフト挿入穴5Hが開口している。なお、図示は省略するが、シャフト挿入穴5Hの上端側の内周縁に角度20〜45°程度の面取りを形成してシャフト4を差し込み易くしてもよい。
【0046】
シャフトケース5の拡径部5gと凸部5tとの間の小径部5h(第5図)にリングホルダ9が装着されている。このリングホルダ9は、その最上部に拡径部9aが設けられ、該拡径部9aよりも所定距離下方に外向き鍔状の凸部9cが設けられた略々円環形の部材である。拡径部9a及び凸部9cはリングホルダ9を周回している。拡径部9aの外周面は、上方ほど縮径するテーパ形である。リングホルダ9の下端の内周縁部には、凸部5tが係合する周回段部9dが設けられている。
【0047】
リングホルダ9の上端面と拡径部5gとの間及び段部9dの下向き面と凸部5tとの間にはスペーサ9fが介在されている。
【0048】
このリングホルダ9の拡径部9aと凸部9cとの間の円筒形小径部9bに螺子部材6が回転自在に外嵌している。螺子部材6の上端面はスペーサ6fを介して拡径部9aに接しており、下端面は、凸部9cにスペーサ6hを介して当っている。
【0049】
第6図に明瞭に示される通り、螺子部材6は、略円環形であり、その下半部の外周面に雄螺子6bが刻設されている。上半部6aの外周面には、複数個の凹部6eが設けられ、ナット状となっている。この凹部6eに工具をかけて螺子部材6を回転させることができる。
【0050】
なお、リングホルダ9及び螺子部材6は実際には第12図に示すように軸心線方向に沿って半割した形状の2個の半割体9Q同士、半割体6Q同士を組み合わせたものである。リングホルダ半割体9Qの内周面に凸部9tが設けられ、シャフトケース5の小径部5hの外周面に凹部5rが設けられ、該凸部9tと凹部5rとが係合することによりリングホルダ9の回転が阻止されている。凸部をシャフトケース5に設け、凹部をリングホルダ半割体9Qに設けてもよい。
【0051】
ゴルフクラブを組み立てるには、第6図のように、まず、ホゼル3をホゼル挿入穴2Hに挿入し、弾性体8Aを介して斜面3k,2k同士を当接させておく。
【0052】
シャフト4の先端にシャフトケース5が固着されたシャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5を、シャフトケース挿入穴3Hに差し込む。なお、この実施の形態では、シャフトケース5の斜面5c及びシャフトケース5の先端面に、薄い(例えば厚さ0.5〜5mm程度)のゴム、エラストマー等の薄片状の弾性体8を塗着、貼り付けなどにより設けておく。弾性体8は、予めシャフトケース5に設けておいてもよく、シャフトケース・シャフト連結体を構成してからシャフトケース5に設けてもよい。
【0053】
シャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5の先端側を、斜面5cと斜面3dとを重ね合わせるようにシャフトケース挿入穴3Hに挿入した後、螺子部材6の雄螺子6bをホゼル挿入穴2Hの上部内周面の雌螺子2aにねじ込む。
【0054】
これにより、第5図の通り、螺子部材6の下端面がリングホルダ9の凸部9cを段差面2sに押し付けることによりリングホルダ9が固定され、リングホルダ9がシャフトケース5の凸部5tを押圧し、シャフトケース5の斜面5cが弾性体8を介してホゼル3の斜面3dに押し付けられ、シャフトケース5が固定される。シャフトケース5とシャフト4とは接着剤によって強固に接着されているので、これにより、シャフト4とヘッド1とが一体となったゴルフクラブが完成する。
【0055】
なお、第1,5,6,9図では、シャフト4はホゼル挿入穴2Hの軸心に対し同軸に配置されている。後述の第2図〜第4図及び第7,8,10図の如く、このシャフト4の位置及び傾き方向は変更可能である。
【0056】
この実施の形態では、ホゼル3及びリングホルダ9をシャフトケース挿入穴又はシャフト挿入穴が偏心していたり傾いたりしている別のホゼル及びリングホルダに交換可能となっている。このような交換用ホゼル及びリングホルダの一例を第7,8図に示す。
【0057】
第2図及び第7,10図のホゼル3Aは、シャフトケース挿入穴3Hをホゼル3Aの軸心位置からずらした(偏心させた)ものであり、リングホルダ9Aはシャフト挿入穴5Hをリングホルダ9Aの外周面にとっての軸心位置から偏心させたものである。シャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの軸心は、ホゼル3Aの軸心、リングホルダ9Aの小径部9bの外周面の軸心及びホゼル挿入穴2Hの軸心と平行でかつそれから若干(例えば0.5〜4mm)離隔している。
【0058】
第3,4図及び第8図のホゼル3B及びリングホルダ9Bは、シャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの軸心方向をホゼル3B、リングホルダ9Bの小径部9bの外周面の軸心及びホゼル挿入穴2Hの軸心方向に対し傾斜させたものである。
【0059】
この実施の形態では、ホゼル挿入穴2H、リングホルダ9Bの小径部9bの外周面の軸心及びホゼル3Bの外周面の軸心線a1に対しシャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの軸心線a2は斜交している。軸心線a1,a2の交差角度θ(第8図)は0.1〜5.0°、特に0.25〜3.0°程度が好ましい。
【0060】
なお、軸心線a1,a2は交差しなくてもよく、「ねじれ」の関係にあってもよい。即ち、軸心線a1,a2は交わることがなく、軸心線a2が軸心線a1の近傍を通り抜ける関係であってもよい。この場合の軸心線a1,a2の角度については、軸心線a2をヒール側に最も傾いた状態とし、軸心線a1を含み飛球線方向に延在する面を想定し、この面と軸心線a2との交差角度が上記角度θの範囲となるようにすればよい。
【0061】
このゴルフクラブからシャフトケース5を抜き出すには、螺子部材6を緩み方向に回す。この螺子部材6の雄螺子6bがホゼル挿入穴2Hの雌螺子2mに螺合しているので、螺子部材6が緩み方向に回転すると、螺子部材6は上方へ移動(螺進)し、螺子部材6が拡径部5gを押し上げ、シャフトケース5が上方に移動する。螺子部材6を雌螺子2mから外すことにより、シャフトケース5を抜き出すことができる。ホゼル3,3A又は3Bについては、適宜の工具をホゼル挿入穴2H内に差し込み、ホゼル挿入穴2Hから取り出す。この工具としては、真空チャックなどのチャック機構を有したものが好適である。
【0062】
ホゼル3及びリングホルダ9を第7図のホゼル3A及びリングホルダ9A又は第8図のホゼル3B及びリングホルダ9Bに交換することにより、シャフトのグースやライ角などを調節することができる。
【0063】
シャフトケース挿入穴3Hを偏心させたホゼル3A及びリングホルダ9Aを用いた場合、第7図に示すようにシャフト4を第5図の場合よりも偏心距離分だけフェース側に近づけることができる。第7図のゴルフクラブの略全体側面図を第2図に示す。
【0064】
この第2図及び第7図に示す状態から、ホゼル3A及びリングホルダ9Aを一旦ホゼル挿入穴2Hから抜き出し、90°、180°又は270°回すことによりシャフト4の位置をヒール側、バック側又はトウ側に平行移動状に変更することができる。第2図では、グースが最も小さく、それから180°回した状態ではグースが最も大きくなる。シャフト4の位置をトウ側又はヒール側とすることにより、シャフト軸心からヘッド重心までの距離が変更される。
【0065】
第3,4,8図のように、シャフトケース挿入穴3H、シャフト挿入穴5Hをホゼル挿入穴2Hの軸心に対し斜めとしたホゼル3B及びリングホルダ9Bを用いることにより、シャフト4の傾きを第1図及び第5図とは別のもの(例えば第3図、第4図(a)、(b))とすることができる。
【0066】
第3図では、シャフト4の軸心線a2がホゼル挿入穴2Hの軸心線a1に対して角度θだけ傾いている。そのため、ホゼル3Bを90°、180°又は270°回すことにより、シャフト4の傾き方向を変えることができる。第4図(a)では、シャフト4は最もヒール側に傾いている。第4図(b)では、シャフト4は最もトウ側に傾いている。第3図ではシャフト4は最もフェース側へ傾いた状態となっている。
【0067】
このようにシャフト4の傾きの向きを変えることによりライ角及びスライス角を変えることができる。
【0068】
ライ角に関して説明すれば、第4図(a)で最も小さく、フラットライであり、第4図(b)で最も大きく、アップライである。
【0069】
スライス角に関して説明すれば、最もフェース側に傾いた第3図ではフェース面が最も閉じたフックフェースとなり、これと反対に最も後方へ傾ける(図示略)ことによりフェース面が最もオープンとなったスライスフェースとなる。
【0070】
このように、ホゼル3B及びリングホルダ9Bを用いることにより、ヘッド1に対するシャフト4の傾き方向を変更することができ、ライ角及びスライス角を変えることができる。
【0071】
このゴルフクラブにあっては、拡径部5gをテーパ形としているが、平たいフランジ形の拡径部を設け、その上側にフェルールを装着するようにしてもよい。
【0072】
この実施の形態では、螺子部材6はリングホルダ9に外嵌しており、螺子部材6を回転させるときにシャフト4に接触しない。このため、シャフト4の傷付きが防止される。
【0073】
なお、ホゼル3,3A,3Bとホゼル挿入穴2Hとの間及びシャフトケース5とシャフトケース挿入穴3Hとの間にゴム、エラストマー、合成樹脂などよりなる薄片状の弾性体8A,8を介在させているので、インパクト時の衝撃や振動を吸収することができる。
【0074】
この実施の形態では、ホゼル挿入穴2H、シャフトケース挿入穴3Hの穴奥側の内面と、ホゼル3,3A,3B及びシャフトケース5の下端側の外面とを、それぞれ四角錐形状の斜面とし、この斜面同士を係合させるので、ガタツキが少なく、シャフト4のシャフト軸心周り方向の回転が阻止される。すなわち、シャフト4のトルク方向の固定剛性が高い。
【0075】
また、4面の斜面を設けてホゼル3,3A,3B及びシャフトケース5の先端側を先細形としているので、それぞれホゼル挿入穴2H、シャフトケース挿入穴3H内に挿入し易い。
【0076】
なお、ホゼル3,3A,3Bは、ホゼル挿入穴2Hの奥部にのみ配置される短い部材であり、重量が小さい。
【0077】
本発明では、ゴルフクラブのシャフト交換も容易に行うことができる。シャフト交換を行うには、交換すべき新シャフトに、予め上記シャフトケース5と同型のシャフトケースを接着剤によって固着しておく。なお、リングホルダ9及び螺子部材6もこのシャフトケースに装着しておく。
【0078】
既存のゴルフクラブの螺子部材6を回し、旧シャフト4を旧シャフトケース5及び螺子部材6共々ヘッド1から取り外す。次いで、シャフトケース及び螺子部材付きの新シャフト(シャフトケース・シャフト連結体)をシャフトケース挿入穴3Hに差し込み、螺子部材6を雌螺子3aにねじ込むことによって固定する。なお、螺子部材6が1個だけ用いられており、着脱作業が容易である。
【0079】
このようにシャフトの取り付けや交換を極めて簡単かつ迅速に行うことができる。なお、従来では、シャフトの交換に際し既存のゴルフクラブのホゼル部分を加熱して接着剤硬化物の組織を壊し、シャフトを抜いた後、新シャフトを接着剤で固着するようにしていたため、数時間〜1日程度の時間がかかっていたが、上記実施の形態では、予め新シャフトにシャフトケース5を接着剤で取り付けておくことにより、シャフト交換を数分程度で行うことができる。従って、シャフトケース付きの各種スペックのシャフトを用意しておき、同一のヘッド本体に順次に異なるシャフトを取り付けて試打する様な利用方式が実現可能となる。
【0080】
なお、ホゼル3B及びリングホルダ9Bとしてシャフトケース挿入穴3H及びシャフト挿入穴5Hの傾き角度θが種々異なるものを製作しておいてもよい。例えば、交換用ホゼルとして、上記角度θが0.5°,1°,1.5°,2°,2.5°,3°のように小刻みに変えた複数種類のホゼル群を用意しておくことにより、ライ角やスライス角を小刻みに変えて試打することができる。
【0081】
上記ホゼル、シャフトケース及び螺子部材は金属製とされることが好ましく、特にアルミ又はチタンもしくはそれらの合金よりなることが好ましい。ホゼル3,3A,3B及びリングホルダ9,9A,9Bについては、ヘッド本体と同等又はそれよりも低い比重の材質が好ましく、例えばチタン合金、アルミニウム、アルミ合金、マグネシウム合金、FRP、合成樹脂などを用いてもよい。
【0082】
ヘッドの材質は特に限定されないが、ウッド型ゴルフクラブヘッドの場合、例えばチタン合金やアルミ合金、ステンレス等とすることができる。
【0083】
上記実施の形態ではホゼル及びホゼル挿入穴に正四角錐形となるように4面の斜面を設けているが、斜面の数が3又は5以上の正多角錐形でもよい。また、ホゼルの先端側及びホゼル挿入穴の奥部を星型等の凹多角形断面形状やギヤ歯形断面形状としてもよい。
【0084】
なお、シャフト4に取り付けるグリップとして、断面が非真円形のものを用いることがある。例えば、グリップ外周面のうちアドレス状態で地面を指向する下側面をその他の面よりも膨出した形状とすることがある。このような場合、ホゼル3A,3Bの向きを変えたときに、グリップ膨出部が地面側とならないことがある。そこで、本発明では、断面真円形のグリップを用いるのが好ましい。
【0085】
上記実施の形態ではゴルフクラブヘッドはウッド型であるが、ユーティリティ型、アイアン型、パターなどのいずれのタイプのゴルフクラブヘッドにも本発明を適用することができる。
【0086】
なお、図示の中空型のゴルフクラブヘッドの場合、ホゼル3,3A,3B及びホゼル設置部2g並びにシャフトケース5、螺子部材6を設けたことにより、ヒール側の重量が一般的なゴルフクラブヘッドに比べて大きくなる。そのため、トウ側やバック部の肉厚を大きくしたり、トウ側にウェイトを設けたりすることにより、ゴルフクラブヘッドのバランスをとるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 ヘッド
2 ヘッド本体
2a フェース部
2e ヒール部
2g ホゼル設置部
2H ホゼル挿入穴
2m 雌螺子
2s 段差面
3,3A,3B ホゼル
3d 斜面
3H シャフトケース挿入穴
3k 斜面
4 シャフト
5 シャフトケース
5a シャフト挿入穴
5b 小孔
5c 斜面
5g 拡径部
5H シャフト挿入穴
5h 小径部
5t 凸部
6 螺子部材
6b 雄螺子
8,8A 弾性体
9,9A,9B リングホルダ
9a 拡径部
9b 小径部
9c 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの先端を取り付けるためのホゼル挿入穴を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、
該ホゼル挿入穴の入口部内周面に形成された雌螺子と、
シャフトケース挿入穴を有し、該ホゼル挿入穴の奥部に着脱可能に装着されたホゼルと、
シャフト挿入穴を有し、先端側が該シャフトケース挿入穴に着脱可能に装着されたシャフトケースと、
該シャフトケースに外嵌した、軸心線方向移動不能なリングホルダと、
該リングホルダに周方向に回転自在に外嵌した、軸心線方向移動不能な螺子部材と、
を備え、該螺子部材の外周面に設けられた雄螺子が前記雌螺子に螺合しているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1のゴルフクラブヘッドの前記シャフト挿入穴にシャフトの先端が挿入されて固着されてなるゴルフクラブ。
【請求項3】
請求項2において、前記シャフトの軸心がシャフトケース挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項5】
請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心に対し傾斜方向となっていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項6】
請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と平行であり、かつ所定距離離隔していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シャフトケースのシャフト挿入穴に前記シャフトが挿入され、接着剤によって固着されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、該ホゼルの下端側及びホゼル挿入穴の奥部が多角断面形状部となっており、両者が係合していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項9】
請求項8において、前記ホゼルの下端側とホゼル挿入穴の奥部の内面との間に弾性体が介在していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブの特性を調節する方法であって、
前記ホゼルをホゼル挿入穴及びシャフトケースと分離し、該ホゼル及びリングホルダをシャフトケース挿入穴の位置又は角度が異なる別のホゼル及びリングホルダと交換し、
その後、前記シャフトケースを螺子部材によってホゼル挿入穴に固定する
ことを特徴とするゴルフクラブの特性調節方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブのシャフトを新たなシャフトに交換して特性を調節する方法であって、
予め新たなシャフトを新たなシャフトケースに固着して新たなシャフトケース・シャフト連結体を作成しておき、
ゴルフクラブに取り付けられているシャフトケース・シャフト連結体をヘッドから取り外し、このヘッドに新たなシャフトケース・シャフト連結体を取り付けることを特徴とするゴルフクラブの特性調節方法。
【請求項1】
シャフトの先端を取り付けるためのホゼル挿入穴を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、
該ホゼル挿入穴の入口部内周面に形成された雌螺子と、
シャフトケース挿入穴を有し、該ホゼル挿入穴の奥部に着脱可能に装着されたホゼルと、
シャフト挿入穴を有し、先端側が該シャフトケース挿入穴に着脱可能に装着されたシャフトケースと、
該シャフトケースに外嵌した、軸心線方向移動不能なリングホルダと、
該リングホルダに周方向に回転自在に外嵌した、軸心線方向移動不能な螺子部材と、
を備え、該螺子部材の外周面に設けられた雄螺子が前記雌螺子に螺合しているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1のゴルフクラブヘッドの前記シャフト挿入穴にシャフトの先端が挿入されて固着されてなるゴルフクラブ。
【請求項3】
請求項2において、前記シャフトの軸心がシャフトケース挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と同軸状となっていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項5】
請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心に対し傾斜方向となっていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項6】
請求項2又は3において、前記シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心と平行であり、かつ所定距離離隔していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シャフトケースのシャフト挿入穴に前記シャフトが挿入され、接着剤によって固着されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、該ホゼルの下端側及びホゼル挿入穴の奥部が多角断面形状部となっており、両者が係合していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項9】
請求項8において、前記ホゼルの下端側とホゼル挿入穴の奥部の内面との間に弾性体が介在していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブの特性を調節する方法であって、
前記ホゼルをホゼル挿入穴及びシャフトケースと分離し、該ホゼル及びリングホルダをシャフトケース挿入穴の位置又は角度が異なる別のホゼル及びリングホルダと交換し、
その後、前記シャフトケースを螺子部材によってホゼル挿入穴に固定する
ことを特徴とするゴルフクラブの特性調節方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブのシャフトを新たなシャフトに交換して特性を調節する方法であって、
予め新たなシャフトを新たなシャフトケースに固着して新たなシャフトケース・シャフト連結体を作成しておき、
ゴルフクラブに取り付けられているシャフトケース・シャフト連結体をヘッドから取り外し、このヘッドに新たなシャフトケース・シャフト連結体を取り付けることを特徴とするゴルフクラブの特性調節方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−4801(P2011−4801A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148807(P2009−148807)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】
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