説明

ゴルフクラブとソケット部品

【課題】 本体が弾性材からなるソケットのシャフトへの接合強度の向上を図ったゴルフクラブを提供する。
【解決手段】 シャフト12をヘッド10に挿入結合しており、該挿入結合部の直ぐ上部に筒状のソケット14を配設したゴルフクラブであって、ソケットの本体14Hがゴム程度の弾性を有する弾性材で形成されており、該本体とシャフトとの間に該本体の弾性よりも低弾性な粘着材の層14Nを具備しているよう構成する.

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴム程度の弾性を有する弾性材で形成された本体を有するソケットを使用したゴルフクラブとソケット部品に関する。
【0002】
【従来の技術】元来のゴルフクラブ用ソケットは、シャフトとヘッドの接合部に打球時の応力が集中することによる破損防止の補強と外観向上のために設けられていた。これに対し、特開平10−295856号にはゴム製のソケットを装着させ、打球時のシャフトへの振動伝達を防止するゴルフクラブが開示されている。このソケットの装着では、生ゴムを加熱加圧して加硫成形することによってシャフトに一体化させることが開示されている。更に、特開平5−192424号には、シャフトにゴム系等の緩衝材を介してアルミニウム等の金属管を装着したゴルフクラブが開示されており、接着又は溶接によって装着させることが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】然しながら、前者の加熱加圧の加硫成形や後者の溶接(溶着に類似の手法と考える)では、シャフトが金属製や繊維強化樹脂製であるためソケットとシャフトとの一体化強度はあまり期待できず、繰返し使用することによって接合装着が外れる虞が強い。かといって、後者の接着でも必ずしも十分な接合強度が得られない。接着の場合は接着層が硬化し、打撃の影響で硬化した接着層が剥がれ易く、また、振動吸収の効果を低下させることにもなる。依って本発明は、本体が弾性材からなるソケットのシャフトへの接合強度の向上を図ったゴルフクラブを提供する。また、これに加えて、打球時のヘッドの振動を受けたシャフトの振動をソケットにより吸収する効果を可及的に大きくしたゴルフクラブを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み本発明では請求項1において、シャフトをヘッドに挿入結合しており、該挿入結合部の直ぐ上部に筒状のソケットを配設したゴルフクラブであって、ソケットの本体がゴム程度の弾性を有する弾性材で形成されており、該本体とシャフトとの間に該本体の弾性よりも低弾性な粘着材の層を具備していることを特徴とするゴルフクラブを提供する。ヘッドはホーゼルが有る場合はそのホーゼルを含む意味で使用しており、挿入結合部の直ぐ上部とは、ソケットの下端がヘッドに接触していてもよく、また幾分か離れていてもよい。離れる距離はせいぜい数センチメートルである。更には、一部がヘッドに挿入されていて、残りが挿入部の上部に出ていてもよい。また、本願におけるソケットとは、前述のようにヘッドに接触していなくてもよいのであり、元来の狭い意味でのソケットとは異なる形態も含む広い意味で使用している。粘着材の層は、本体の全長に亘って設けられていてもよいが、長手方向の一部に設けられていてもよい。筒状ソケットがヘッドとシャフトとの挿入部の直ぐ上部に配設されているため、打球時にゴルファーが構えた際にヘッドとシャフトとの挿入結合部が直接目に入ることなく、従来のソケットと何ら変わりなく見えて違和感を持たないで打撃できる。また、ソケット本体が低弾性な粘着材の層によってシャフトに接合されているため、打撃を繰り返しても接合部にひび割れ等が発生せず、剥がれ難く、強い。
【0005】請求項2においては、前記ソケット本体の外側であって、上端部と下端部とを除いた位置に凹部を形成し、該凹部に前記管体を配設させ、ソケット本体の弾性よりも高弾性な材料からなる管体の外側表面がソケット本体の前記上端部と下端部の各表面と概ね面一か或いは低く構成されてなる請求項1記載のゴルフクラブを提供する。請求項1の作用効果に加え、本体よりも高弾性な管体が本体の凹部に概ね面一か埋没しているため、ゴルフ道具の運搬に際して当該ソケット外周部の管体によって他のゴルフクラブが傷付けられたりすることが防止される。また、シャフトの外側には本体よりも低弾性な粘着材の層、その外側にはゴム程度の弾性を有する弾性材の本体層、更に外側には本体の弾性よりも高弾性な材料の管体の層という順に並んで配設されているため、シャフトの振動が効率良く吸収できる。
【0006】請求項3では、前記粘着材の層は両面テープの層であり、ソケット本体がゴム製であり、前記管体が金属製である請求項2記載のゴルフクラブを提供する。請求項2の作用効果に加えて、両面テープ、ゴム、金属は極めて容易に入手可能な部材であり、これらによってソケット部分が構成できるため、製造が容易になる。また、ゴムに比べて外側の金属は相当に硬く、両層の硬度差が大きくなるため、振動吸収が効率的に行える。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。図1は本発明に係るゴルフクラブのヘッド近くの斜視図であり、図2はその要部の拡大縦断面図である。更に図3は図2のC部の拡大図である。図1では、所謂ウッドタイプのヘッドを図示しているが、材質がウッドであっても、チタン等の金属であってもよく、また、アイアンタイプのヘッドを有するゴルフクラブであってもよい。こうしたヘッド10に、シャフト12の先部を挿入して接着等によって固定する孔10Hを設けている。シャフト12は金属製、或いは炭素繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂製でもよい。
【0008】ホーゼルを有するヘッドの場合は、上記孔10Hは、ホーゼルのみ、或いはホーゼルとヘッドの本体部とに亘って形成されている。この形態例ではホーゼルを有していないヘッドであり、こうした構成にすることによって、ホーゼルが存在しない分、ヘッド近くのシャフト12を撓み易くでき、ウッドタイプのゴルフクラブのように(言い換えると、番手の小さなクラブのように)本来的に打球の上がり難いクラブであっても、打球を上げ易くできる。
【0009】この形態例の様にシャフトを撓みやすくしたクラブの場合、従来のように硬目のソケットを付けて接合領域上部の剛性を向上させては意味がなく、そうしたソケットを装着しないことも考えられる。然しながら、ソケットを無くしては、ソケット付きのゴルフクラブに慣れ親しんだ殆どのゴルファーにとっては、打球に際して構えた際に、ヘッドとシャフトとの接合部が直に見えて違和感を抱きやすい。従って、従来のような外郭形状のソケット14が、挿入結合部の直ぐ上部に存在することは好ましい。更には、装着部においてシャフト12の撓りを妨げないように撓み剛性の低いソケットが好ましい。また、打撃時の振動が手元のグリップに伝達されるのを防止することが望まれる。更に当然のことながら、装着されたソケットが外れるような不具合は防止されなければならない。
【0010】以上の観点から、ここではゴムを材料とするソケット本体14Hを有するソケット部品14’をヘッド10の上面から数センチメートル以内の距離(例えば5mm)離して装着している。このソケット本体は筒状体であり、シャフトの挿入できる孔14HBを筒状本体の長手方向に貫通させている。本体の外周には凹部14HAが設けられている。凹部は全周に亘って形成されており、また、本体の長手方向の上端部14Uと下端部14Lに凹部は形成されていない。凹部には、本体の弾性よりも高弾性な材料からなる管体14Tが嵌め込まれて装着されている。この形態例では、管体の外周が本体の上下端部の外周と概ね面一になるように構成している。また、下端部14Lの外周には、デザインとしての1条の溝14Kが全周に亘って形成されている。
【0011】この部品をシャフトに接合させるためと、既述の振動吸収の目的から、シャフトの所定位置に両面テープ14Nを貼り付ける。その後、その両面テープの表面に、例えば、ソルベントやアルコールのような溶剤を塗り、ソケット本体14Hの貫通孔内に該両面テープ部位が円滑に挿入できるようにしつつ、挿入させる。この後、溶剤が蒸発すれば両面テープの粘着力でソケット本体がシャフトに接合される。この両面テープの層14Nは、中央の支持フィルム体14NCと、内側の粘着材層14NAと、外側の粘着材層14NBとを有し、層14N全体としてソケット本体14Hよりも低弾性な粘着材の層となっている。
【0012】接合部材としての両面テープ14Nは、接着剤のように硬化しないため、打撃時のシャフトの撓みに追随しやすく、また、打撃時の振動によっても剥離等を生じ難く、接合強度が強い。また、以上の構成の結果、シャフト12の外側に、最も低弾性な層14N、その外側に中間弾性の本体層14H、その外側に最も高弾性な(硬い)管体の層14Tが配設され、打撃時にヘッド10に生じた振動がシャフトに伝達されるが、これら弾性が外側方向に順次大きくなる3つの層(或いは、4つ以上の層であってもよい)14N,14H,14Tを有するソケット14の存在によって当該振動を効果的に吸収できる。本体14Hの貫通孔14HBの壁面には、低弾性層14Nを受け入れる凹部を予め形成していてもよいが、これを設けず、貫通孔壁面上に低弾性層をそのまま接合させてもよい。
【0013】上記管体14Tはソケット本体の上下端部14U,14Lの存在によって脱落が防止されると共に、既述の概ね面一であるため、複数本を束ねたクラブの運搬時に、他のクラブを傷付けることが防止される。上記管体14Tはソケット本体14Hよりも高弾性であればよく、そうした弾性の合成樹脂でも金属でもよい。特に金属の場合は比重が5程度以下のものを使用するとゴルフクラブの重量を大きく増加させないため好ましい。例えば、チタン、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金等である。
【0014】ソケット本体10Hは、弾性率が10〜10N/m程度のゴムや合成樹脂(発泡性樹脂を含む)が好ましい。硬さでいえば、JIS K6253の試験による硬さ(タイプAデュロメータによる測定硬さ)でA30以上であって、A90以下が好ましく、A70程度がより好ましい。また、比重が1未満、好ましくは0.9未満の材料で形成すると比較的軽くでき、クラブの重量バランスを悪化させずに形成し易い。更に、本体材料が、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れた特性を有していると、クラブの劣化が防止でき、更に耐溶剤性に優れていると、クラブ組立時に使用する溶剤による劣化が防止できる。特に、エチレンプロピレンターポリマー、又はエチレンプロピレンゴムを用いることが好ましい。
【0015】低弾性な粘着材層14Nは、上記と同じJISによる測定でA30未満の硬さを有し、厚さ0.01〜1.0mmが好ましく、両面テープ以外では、アクリル又はシリコン等の粘着材自体の層とする形態がある。勿論、こうしたアクリルやシリコン等の粘着材は両面テープの支持フィルム体14NCに塗布する粘着材として使用でき、こうした両面テープを低弾性層とすることは既述の通りである。上記実施形態例ではソケット14はヘッド10から上方に離れているが、ソケットの下端がヘッドに当接していたり、或いは一部がヘッドに埋まっていてもよい。ヘッドとシャフト挿入部との間に半径方向の隙間を設けた上記形態例と異なり、シャフトの挿入部分全体を密着させたゴルフクラブであってもよい。
【0016】ソケット本体14Hを単品で販売でき、ゴルフクラブメーカーにおいて外側に管体14Tを設け、かつ内側に粘着材層14Nを介してシャフトに一体化できる。また、ソケット本体14Hの外側に管体14Tを配設したソケット部品14’を単品で販売でき、ゴルフクラブメーカーにおいて内側に粘着材層14Nを介してシャフトに一体化できる。なお、ソケット本体の貫通孔の壁面に、予め両面テープ14N等の粘着材層を設けておいてもよく、この場合は、粘着材層の表面を適宜なシート材で被覆しておき、シャフトへの装着時にシート材を除いて溶剤を塗り、シャフトへ装着させる.
【0017】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明によれば、本体の柔らかなソケットのシャフトへの接合強度の向上を図ったゴルフクラブの提供が可能になる。またこれに加えて、打球時のヘッドの振動を受けたシャフトの振動をソケットにより吸収する効果を可及的に大きくしたゴルフクラブが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係るゴルフクラブのヘッド近くの斜視図である。
【図2】図1の要部拡大縦断面図である。
【図3】図2のC部の拡大図である。
【図4】ソケット部品の縦断面図である。
【符号の説明】
10 ヘッド
12 シャフト
14 ソケット
14N 粘着材層
14H ソケット本体
14T 筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シャフトをヘッドに挿入結合しており、該挿入結合部の直ぐ上部に筒状のソケットを配設したゴルフクラブであって、ソケットの本体がゴム程度の弾性を有する弾性材で形成されており、該本体とシャフトとの間に該本体の弾性よりも低弾性な粘着材の層を具備していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】 前記ソケット本体の外側であって、上端部と下端部とを除いた位置に凹部を形成し、該凹部に前記ソケット本体の弾性よりも高弾性な材料からなる管体を配設させ、該管体の外側表面がソケット本体の前記上端部と下端部の各表面と概ね面一か或いは低く構成されてなる請求項1記載のゴルフクラブ。
【請求項3】 前記粘着材の層は両面テープの層であり、ソケット本体がゴム製であり、前記管体が金属製である請求項2記載のゴルフクラブ。
【請求項4】 ゴルフクラブのシャフトに挿入可能な孔の貫通形成された筒状ソケット部品であって、ゴム程度の弾性を有する弾性材で形成されている本体を具備することを特徴とするゴルフクラブ用ソケット部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−190713(P2001−190713A)
【公開日】平成13年7月17日(2001.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−2237(P2000−2237)
【出願日】平成12年1月11日(2000.1.11)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】