説明

ゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置および方法

【課題】プレプリグシートが巻き付けられている棒状部材の外側に、テープを所定のテンションで迅速かつ確実に巻き付けることができるゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置および方法を提供すること。
【解決手段】本発明のゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置は、棒状部材6を固定する固定手段8と、固定手段によって固定された棒状部材を、長手方向軸線を中心に回転させる回転手段と、回転手段によって回転させられている棒状部材にテープを供給して棒状部材の表面に前記テープを巻き付けるテープ供給手段12と、固定された棒状部材に沿って棒状部材の一端から他端に前記テープ供給手段を搬送する搬送手段14と、固定された棒状部材の他端部分で、棒状部材の表面に巻き付けられたテープを加熱し熱融着させる熱融着手段40と、熱融着されたテープを切断するテープカット手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置および方法に関し、より詳細には、繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトを製造する工程において、製造中のゴルフクラブシャフトの表面にテープを巻き付けるゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフト、釣り竿、バトミントンラケット用シャフト、自動車用ドライブシャフト、自転車用フレーム材、印刷機などに用いる工業機械用ロール、眼鏡フレーム材等の棒状部材を製造する際には、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維とマトリックス樹脂とで形成された複数枚のプリプレグシートを棒状のマンドレルの表面に積層状態または1層ずつ巻き付け、これを炉中で熱硬化させ、さらに、マンドレルを引き抜くことによって、筒状のシャフト材を得ている。(特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開平6−114131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炉の中での熱硬化に先だって、マンドレル上に巻き付けられた積層状態のプリプレグシートの外側に、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)など熱収縮性樹脂で作られたテープが隙間なく巻き付けられる。外側に巻き付けられた熱収縮性のテープは、炉内でのプリプレグの熱硬化時に収縮するので、熱硬化したプリプレグの外表面は平坦できれいな仕上がり状態となり、また、熱収縮するテープによって熱硬化時にプリプレグが外側から締め付けられて積層状態に巻き付けられている複数層のプリプレグシートの一体化が促進させる。
【0005】
従来、このテープの巻き付け作業は、手作業による取付けによって行われていた。しかしながら、マンドレル上にプレプリグシートが巻き付けられている棒状部材は比較的細いため、その外側に人手によってテープを隙間なく巻き付ける作業は、容易ではなく時間がかかる作業であった。さらに、テープは所定のテンションで巻き付けられていることが必要であるため、テープ巻き付け作業には熟練を要する。
このため、棒状部材の両端を固定して回転させながら、巻き出したテープを移動させることによりテープを巻き付ける装置が考えられるが、細くて撓み易く、部位によってはテーパーを有する棒状部材に均一なテンションで一定の間隔でテープを巻くことが困難であった。
一方、テープの巻き付けを施した棒状部材はその後の硬化工程が終了するまでテープの緊縛力を保持させる必要があるため、テープ巻き付け後テープを固定する必要がある。一般には市販の粘着テープ等で固定することが用いられているが、特にマトリックス樹脂の硬化温度が高い場合には、熱硬化の工程で粘着テープが外れる恐れがある。また、プリプレグ毎に硬化温度が異なるプリプレグを用いる場合にはそれに適した粘着テープに交換する必要がある、あるいは粘着テープで止める工程に時間が取られる問題があった。
さらに、プリプレグシートとテープが接着してしまうことを避けるため、テープ表面をシリコーン等の離型処理をする場合がある。この場合テープを粘着材等でとめることが困難となる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、プレプリグシートが巻き付けられている棒状部材の外側に、テープを所定のテンションで迅速かつ確実に巻き付けることができるゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置および方法を提供することを目的とする。
また硬化温度の高いプリプレグや離型処理を行ったテープ材を用いても、その後の硬化工程でラッピングしたテープが外れることがないゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
ゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置であって、
棒状部材を固定する固定手段と、
前記固定手段によって固定された棒状部材を、長手方向軸線を中心に回転させる回転手段と、
前記回転手段によって回転させられている前記棒状部材にテープを供給して該棒状部材の表面に前記テープを巻き付けるテープ供給手段と、
前記固定された棒状部材に沿って該棒状部材の一端から他端に前記テープ供給手段を搬送する搬送手段と、
前記固定された棒状部材の他端部分で、前記棒状部材の表面に巻き付けられたテープを加熱し熱融着させる熱融着手段と、
前記熱融着されたテープを切断するテープカット手段と、を備えている、
ことを特徴とするゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置が提供される。
【0008】
このような構成によれば、一端が固定された状態で回転させられるゴルフクラブ用のシャフト材等の細長い棒状部材に、テープ供給手段が棒状部材に沿って移動しながらテープを供給する。したがって、棒状部材の外表面全体に、テープが巻き付けられることなる。
搬送手段の搬送速度、棒状部材の回転速度等は、テープが棒状部材の外表面全体に隙間なく巻かれるように、テープの幅、棒状部材の径等に応じて、設定されている。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
ゴルフクラブシャフト製造時のテープ巻き付け方法であって、
棒状部材を固定するステップと、
前記固定手段によって固定された棒状部材を、長手方向軸線を中心に回転させるステップと、
前記回転させられている前記棒状部材にテープを供給して該棒状部材の表面に前記テープを巻き付けるテープ供給ステップと、
前記固定された棒状部材に沿って該棒状部材の一端から他端に前記テープ供給手段を搬送する搬送ステップと、
前記固定された棒状部材の他端部分で、前記棒状部材の表面に巻き付けられたテープを加熱し熱融着させる熱融着ステップと、
前記熱融着されたテープを切断するテープカットステップと、を備えている、
ことを特徴とするゴルフクラブシャフト製造時のテープ巻き付け方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
このような構成によれば、プレプリグシートが巻き付けられている棒状部材の外側に、テープを所定のテンションで迅速かつ確実に巻き付けることができるゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置および方法が提供される。また迅速にテープを融着して固定することが可能となるので、いかなるテープ素材に適用でき、その後の硬化工程でテープが解けることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい実施形態のテープ巻き付け装置を図面に沿って詳細に説明する。まず、本発明の好ましい実施形態のテープ巻き付け装置1の構成を説明する。図1は、本発明のテープ巻き付け装置1の主要部分の概略的な斜視図である。
【0012】
テープ巻き付け装置1は、ゴルフクラブシャフトの製造工程で使用される装置であり、マンドレル2とその表面に積層状態で巻き付けられているプリプレグシート4とからなる棒状部材6の表面にポリプロピレン(PP)テープまたはポリエチレンテレフタレート(PET)テープを隙間なく巻き付ける装置である。本実施形態では、プレプリグシート4は、マンドレル2の全長にわたっては巻き付けられておらず、棒状部材6の両端は、マンドレル2が露出した状態である。
【0013】
図1に示されているように、棒状部材6の一端を把持する把持装置8を備えている。把持装置8は、内部に加圧空気で作動される3本の爪を有するチャック部(図示せず)が配置され、棒状部材6の一端側で露出しているマンドレル2を爪によって把持し、棒状部材6を把持固定できるように構成されている。
さらに、把持装置8は、図示しない駆動機構により、チャック部を回転させ、把持している棒状部材6を、長手方向軸線を中心に回転させることができるように構成されている。
【0014】
テープ巻き付け装置1は、並列配置された2本の円柱状部材10を備えている。2本の円柱状部材10は、把持装置8に一端が固定された棒状部材6が、2本の円柱状部材10の間に形成される凹部上に載置されるように、把持装置8に対して位置決めされている。
【0015】
テープ巻き付け装置1は、更に、棒状部材6にテープを供給するテープ供給装置12と、テープ供給装置12を搬送する搬送装置14とを備えている。テープ供給装置12は、ポリプロピレン製テープ16のリール18を回転可能に支持するリール支持部20を備えている。テープ供給装置12は、さらに、テープ16の搬送経路を構成する、ガイドロール22、第1テンションロール24、ゴムロール26、第2テンションロール28、送りロール30、32、34、36を備えている。第1および第2テンションロール24、28は、バネ付勢され、搬送経路上のテープに所定の張力を付与する。
【0016】
図1に示されているように、テープ供給装置12は円柱状部材10の下方に配置され、テープ供給装置12から送り出されたテープ16は、2本の円柱状部材10の間から棒状部材6に供給される。
【0017】
搬送装置14は、モータ、チェーン等を備えた図示しない駆動機構によって、円柱状部材10上に載置された棒状部材6に沿って棒状部材6の一端から他端まで、テープ供給装置12を所定速度で移動させることできるように構成されている。搬送装置14は、テープ供給装置12が、棒状部材6の他端(先端)まで搬送されたことを検出するセンサ38を備えている。搬送装置14は、オペレータのスイッチ操作で、図1に示されている把持装置8に隣接した初期位置から矢印A方向に一定速度で移動し、センサ38により棒状部材6の他端まで搬送されたことが検出されると停止し、その後、自動的に初期位置に戻るように構成されている。
【0018】
テープ熱融着機構は、図2に示されている、加熱可能なヘッド部40とヘッド駆動部42とを有する。テープ巻き付けを終了後、ヘッド駆動部42に接続したセンサー38の感知により、あらかじめ所定の温度に加熱したヘッド部42と棒状部材6のテープの巻き終わり部分とを接触させて、テープを溶融・固定する。テープ融着機構は、前記並列配置された2本の円柱状部材2に対して平行に配設された部材44上に固定されている。テープ熱融着機構は、棒状部材6の長さ(つまりマンドレルの長さ)により、あらかじめこの平行に配設された部材44上で、円柱状部材2に対して平行に移動させることもできる。
ヘッド40の加熱温度は使用するテープ材質により適宜設定されるが、一般にはポリプロピレンの場合170℃以上、PETの場合250℃以上が好ましい。ヘッド部40の駆動部42はエアーシリンダー42を有しており、テープ巻き付け終了後、テープをカットし瞬時にエアーシリンダー42の駆動により加熱ヘッド40が下降してテープ巻き終わり部に接触する機構となっている。テープは1〜2秒で溶融状態となるので、テープの固定完了後は再びシリンダー42の作用により加熱ヘッドは上昇して所定のもとの位置に配置される。
またヘッドで融着すると同時に、市販の剃刀やハサミ等の刃物でテープの融着部分付近を切断することが好ましい。これにより、より早く端部の融着を完了することができる。
また、前記刃物の形状は特に限定されないが、テープ供給装置の取り付けられ、前記センサー38と連動していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態のテープ巻き付け装置の概略的な斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるテープ熱融着機構の概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1:テープ巻き付け装置
2:マンドレル(金属棒)
4:プリプレグシート
6:棒状部材
8:把持装置
10:円柱状部材
12:テープ供給装置
14:搬送装置
16:テープ
18:リール
20:リール支持部
40:ヘッダ部
42:ヘッダ駆動部
44:平行部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置であって、
棒状部材を固定する固定手段と、
前記固定手段によって固定された棒状部材を、長手方向軸線を中心に回転させる回転手段と、
前記回転手段によって回転させられている前記棒状部材にテープを供給して該棒状部材の表面に前記テープを巻き付けるテープ供給手段と、
前記固定された棒状部材に沿って該棒状部材の一端から他端に前記テープ供給手段を搬送する搬送手段と、
前記固定された棒状部材の他端部分で、前記棒状部材の表面に巻き付けられたテープを加熱し熱融着させる熱融着手段と、
前記熱融着されたテープを切断するテープカット手段と、を備えている、
ことを特徴とするゴルフクラブシャフト製造用テープ巻き付け装置。
【請求項2】
ゴルフクラブシャフト製造時のテープ巻き付け方法であって、
棒状部材を固定するステップと、
前記固定手段によって固定された棒状部材を、長手方向軸線を中心に回転させるステップと、
前記回転させられている前記棒状部材にテープを供給して該棒状部材の表面に前記テープを巻き付けるテープ供給ステップと、
前記固定された棒状部材に沿って該棒状部材の一端から他端に前記テープ供給手段を搬送する搬送ステップと、
前記固定された棒状部材の他端部分で、前記棒状部材の表面に巻き付けられたテープを加熱し熱融着させる熱融着ステップと、
前記熱融着されたテープを切断するテープカットステップと、を備えている、
ことを特徴とするゴルフクラブシャフト製造時のテープ巻き付け方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−61296(P2009−61296A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303922(P2008−303922)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【分割の表示】特願2004−287295(P2004−287295)の分割
【原出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】