ゴルフクラブセット
【課題】ウッド型ゴルフクラブを含めた各番手のゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さのばらつきを抑制し、番手間での飛距離の差を略等しくすることにより、ゴルファーが意図する飛距離に応じて、該ゴルファーが最適なゴルフクラブを選択しやすくなるゴルフクラブセットを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブセットは、ウッド型ゴルフクラブと、アイアン型ゴルフクラブとを含んで構成される。さらに、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアンに代えて、ウッド系のユーティリティゴルフクラブが用いられる。そして、3番ウッドのロフト角とドライバーのロフト角との差が、3番のユーティリティゴルフクラブのロフト角と3番ウッドのロフト角との差よりも大きく設定される。
【解決手段】ゴルフクラブセットは、ウッド型ゴルフクラブと、アイアン型ゴルフクラブとを含んで構成される。さらに、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアンに代えて、ウッド系のユーティリティゴルフクラブが用いられる。そして、3番ウッドのロフト角とドライバーのロフト角との差が、3番のユーティリティゴルフクラブのロフト角と3番ウッドのロフト角との差よりも大きく設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブセットに関し、特に、複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットが記載された文献としては、たとえば、特開昭58−41575号公報(特許文献1)、特許第3055380号公報(特許文献2)、特公平06−26637号公報(特許文献3)、特開2007−29257号公報(特許文献4)、特開2003−144587号公報(特許文献5)、特開2005−211570号公報(特許文献6)および特開2002−17902号公報(特許文献7)などが挙げられる。
【0003】
一般的に、ゴルフクラブセットは、ウッドクラブ(ドライバー、フェアウェイウッド)とアイアンクラブ(ロングアイアン、ミドルアイアン、ショートアイアン、ウェッジ)にパターを加えた14本から構成されている。
【0004】
全てのクラブに求められる機能として、1番に優先されることは、ゴルファーが意図する飛距離を正確にミス無く打てることである。
【0005】
他方、ゴルフというゲームにおいて飛距離はゲームをより簡単にするという観点から非常に重要視されている。特にウッドクラブにおいてはそれが顕著であり、更にドライバーにおいてはそれが最も優先される機能である。
【0006】
但し、近年の反発規制において、ドライバーのボール初速が規制され、ボールの弾道を決定するボール初速、飛び出し角、スピン量の3要素の中で、特に飛び出し角とスピン量が重視されている。また、打点のばらつきに対するボール初速の低下を軽減することも重視されている。
【0007】
ゴルフクラブセットにおいて、ウッド型クラブについては1W,3W,5Wという構成が一般的である。番手が大きくなるにつれ、ライ角、ロフト角が漸次大きくなり、クラブ長さを漸次短くすることにより飛距離を徐々に低減させ、ゴルファーが意図する飛距離を打ち分けれるように考慮されている。
【0008】
また、アイアン型クラブについては、たとえば、ロングアイアンと呼ばれる3I,4Iと、ミドルアイアンと呼ばれる5I,6I,7Iと、ショートアイアンと呼ばれる8I,9Iと、ウェッジと呼ばれるPW,FW,SWとに分類される。
【0009】
アイアン型クラブにおいても、番手が大きくなるにつれ、ライ角、ロフト角が漸次大きくなり、クラブ長さも漸次短くすることにより飛距離を徐々に低減させ、ゴルファーが意図する飛距離を打ち分けれるように考慮されている。
【0010】
しかしながら、ロングアイアンと呼ばれる3I,4Iについては、クラブ長さが長く、ヘッド質量が軽く、スイートエリアが小さいために、少しの打点のばらつきに対して大きな飛距離低下や球が上がらないといった結果を招きやすい。したがって、近年ではロングアイアンの代わりにショートウッドと呼ばれる7W,9W、さらにはユーティリティゴルフクラブと呼ばれるクラブをクラブセッティングの中で用いるケースが多く見られるようになってきた。
【0011】
ゴルフクラブに求められる他の重要な要素として、弾道の高さが挙げられる。ゴルフクラブに対して、そのゴルフクラブが打ちやすいクラブであるかを判断する大きな基準は、打球の上がりやすさである。実際の球の上がりやすさは、ゴルフクラブのインパクト後のボールの飛び出し角に対応するが、実際のゴルファーには、ボールの飛び出し角が高いか低いかの判断はできない。そのため、弾道の最大高さによって、打球の上がりやすいか上がりにくいか、ひいてはゴルフクラブが打ちやすいか否かの判断を行っている。
【特許文献1】特開昭58−41575号公報
【特許文献2】特許第3055380号公報
【特許文献3】特公平06−26637号公報
【特許文献4】特開2007−29257号公報
【特許文献5】特開2003−144587号公報
【特許文献6】特開2005−211570号公報
【特許文献7】特開2002−17902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来から、弾道高さについては色々な研究がなされてきていたが、近年、実際のインパクト後の弾道を実測することが可能となった。本願発明者らは、プロゴルファーや一般アマチュアゴルファーの弾道を実測することにより、下記のような事実を解明した。
【0013】
その事実とは、体力的および技術的に非常に優れたプロゴルファーの弾道高さは、各番手でほぼ一定であるのに対し、一般アマチュアゴルファーの場合、フェアウェイウッド(3Wなど)やロングアイアン(3I,4Iなど)を用いた際に、弾道が低くなりやすい傾向にあるということである。
【0014】
打球のトータル飛距離は、ボールが落下するまでの「キャリー」とボールが落下した後の「ラン」とにより構成される。上記のように、一般アマチュアゴルファーがフェアウェイウッドやロングアイアンで打球した場合、弾道が低くなりやすいため、打球のトータル飛距離に対するランの占める割合が高くなる。この結果、打球の落下地点の状況によって、飛距離が影響を受けやすいということになり、ゴルフクラブの番手の選択によって飛距離を正確に打ち分けるということが難しくなる。
【0015】
ところで、特許文献1では、ゴルフクラブセットを構成する各ゴルフクラブの慣性モーメントや重心位置を調整することが記載されている。
【0016】
また、特許文献2では、ゴルフクラブセットを構成するロフト角が大きいゴルフクラブにベントポイントを手元寄りに設けた手元調子のシャフトを装着することが記載されている。
【0017】
また、特許文献3では、ゴルフクラブセットを構成するアイアンゴルフクラブの中空構造の中空部の度合い、ヘッド重心位置およびソール幅を調整することが記載されている。
【0018】
また、特許文献4では、ピッチングウェッジよりも飛ばない領域のゴルフクラブを2本以上加えたアイアンゴルフクラブのセット方法が記載されている。
【0019】
また、特許文献5では、ゴルフクラブシャフトの後端部を固定した状態で先端部を振動させて測定した単位時間当たりの振動数と、ゴルフクラブシャフトの先端部を固定した状態で後端部を振動させて測定した単位時間当たりの振動数との比率の大きさを、ゴルフクラブの番手の順序に関連付けて設定することが記載されている。
【0020】
また、特許文献6では、ゴルフクラブセットを構成する各ゴルフクラブにおけるロフト角と重心高さとの関係を調整することが記載されている。
【0021】
また、特許文献7では、アイアン型ゴルフクラブにユーティリティゴルフクラブを加えたゴルフクラブセットが記載されている。
【0022】
しかしながら、特許文献1〜7においては、ゴルフクラブセットを構成する各ゴルフクラブのロフト角を調整することによって、フェアウェイウッド(たとえば3Wなど)の弾道高さを他のゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さと略一致させることは記載されていない。
【0023】
さらに、特許文献1〜6における「ゴルフクラブセット」は、アイアン型のゴルフクラブのみから構成されるものである。また、特許文献7における「ゴルフクラブセット」は、アイアン型のゴルフクラブのみから構成されるゴルフクラブセットの一部をユーティリティゴルフクラブに置き換えただけのものである。このように、特許文献1〜7におけるゴルフクラブセットは、ウッド型ゴルフクラブを含めたものである本願発明に係るゴルフクラブセットとは、全く前提を異にするものである。
【0024】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ウッド型ゴルフクラブを含めた各番手のゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さのばらつきを抑制し、番手間での飛距離の差を略等しくすることにより、ゴルファーが意図する飛距離に応じて、該ゴルファーが最適なゴルフクラブを選択しやすくなるゴルフクラブセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係るゴルフクラブセットは、複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットである。上記複数のゴルフクラブは、複数のウッド型ゴルフクラブと、アイアン型ゴルフクラブと、ウッド型ゴルフクラブとアイアン型ゴルフクラブとの中間的形状を有するユーティリティゴルフクラブとを含む。ユーティリティゴルフクラブは、複数のウッド型ゴルフクラブよりもロフト角が大きく、かつ、アイアン型ゴルフクラブよりもロフト角が小さい。複数のウッド型ゴルフクラブは、該ウッド型ゴルフクラブのうち最も小さい第1のロフト角を有する第1のゴルフクラブと、ウッド型ゴルフクラブのうち第1のロフト角の次に小さい第2のロフト角を有する第2のゴルフクラブとを含む。第2のロフト角と第1のロフト角との差は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と第2のロフト角との差よりも大きい(より好ましくは、第2のロフト角と第1のロフト角との差は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値と第2のロフト角との差よりも大きい)。
【0026】
なお、上記構成において、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値とは、ユーティリティゴルフクラブが1つしかない場合には、そのクラブのロフト角を意味し、ユーティリティゴルフクラブが複数ある場合には、当該複数のクラブの中の最小のロフト角を意味する。他方、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値とは、ユーティリティゴルフクラブが1つしかない場合には、そのクラブのロフト角を意味し、ユーティリティゴルフクラブが複数ある場合には、当該複数のクラブの中の最大のロフト角を意味する。
【0027】
上記構成によれば、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアン(3I,4Iなど)の距離に対応するゴルフクラブとして、ユーティリティゴルフクラブを用いることにより、この距離に対応する領域において、弾道高さを高く保つことができる。また、フェアウェイウッドのロフト角である第2のロフト角とドライバーのロフト角である第1のロフト角との差を、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と上記第2のロフト角との差よりも大きくすることにより、フェアウェイウッドの距離に対応する領域において、弾道高さを高く保つことができる。このように、本発明に係るゴルフクラブセットによれば、従来のゴルフクラブセットを用いた場合に一般アマチュアゴルファーによる打球の弾道高さが低くなりやすかったフェアウェイウッドやロングアイアンの距離に対応する領域において、弾道高さを高くすることができる。この結果、一般アマチュアゴルファーにおいても、プロゴルファーと同様に、各番手のゴルフクラブによる打球の弾道高さを略一致させることができるので、意図する飛距離に適したゴルフクラブが選択しやすくなるという効果が得られる。
【0028】
好ましくは、上記ゴルフクラブセットにおいて、ユーティリティゴルフクラブは第1のシャフトを含み、アイアン型ゴルフクラブは第2のシャフトを含み、第1のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性は、第2のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性よりも低い。
【0029】
上記構成によれば、ユーティリティゴルフクラブのシャフトを柔らかくすることで、この領域での弾道高さをさらに向上させることができるので、番手間での弾道高さをばらつきを、さらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ウッド型ゴルフクラブを含めた各番手のゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さのばらつきが抑制され、番手間での飛距離の差が略等しくなることにより、ゴルファーが意図する飛距離に応じて、該ゴルファーが最適なゴルフクラブを選択しやすくなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
図22は、本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブセットを示した図である。図22を参照して、本実施の形態に係るゴルフクラブセット1000は、ウッド型ゴルフクラブWOと、アイアン型ゴルフクラブIRと、ユーティリティゴルフクラブUTYとを含んで構成される。
【0032】
本実施の形態に係るゴルフクラブセットは、合計14本のフルセットに含まれるパター以外のゴルフクラブ群(すなわち13本のセット)であるが、当該ゴルフクラブセットは、たとえば、合計7本のハーフセットに含まれるパター以外のゴルフクラブ群(すなわち6本のセット)であってもよい。
【0033】
上記ゴルフクラブセットにおいて、ウッド型ゴルフクラブWOは、ドライバーWO1と、フェアウェイウッドWO2とを含んで構成される。フェアウェイウッドWO2としては、典型的には、複数本(たとえば3W,5W,7Wの3本)のゴルフクラブが用意されるが、フェアウェイウッドWO2は、単数であってもよい。
【0034】
ウッド型ゴルフクラブのロフト角は、番手に応じて順次大きくなる。ドライバーWO1では、たとえば8°以上14°以下程度(好ましくは、8°以上12°以下程度)のロフト角が適用され、3Wでは、たとえば16°以上18°以下程度のロフト角が適用され、5Wでは、たとえば19°以上21°以下程度のロフト角が適用され、7Wでは、たとえば22°以上24°以下程度のロフト角が適用される。すなわち、ウッド型ゴルフクラブWOは、最も小さい「第1のロフト角」を有する「第1のゴルフクラブ」としてのドライバーWO1と、「第1のロフト角」の次に小さい「第2のロフト角」を有する「第2のゴルフクラブ」としての3番ウッド(3W)とを含む。
【0035】
ウッド型ゴルフクラブを構成するウッド型ゴルフクラブヘッドは、典型的には、金属製外殻構造を有するゴルフクラブヘッドであって、フェース部、バック部、ヒール部、トウ部、ソール部およびクラウン部を含んで構成される。
【0036】
ウッド型ゴルフクラブヘッドは、単一の金属からなるものであってもよいし、複数の金属が組み合わされたものであってもよい。さらには、金属と炭素繊維強化樹脂などが組み合わされたものであってもよい。また、ゴルフクラブヘッドの外殻構造の内部は空洞であってもよいし、発泡体などが充填されていてもよい。
【0037】
ウッド型ゴルフクラブヘッドを構成する金属としては、たとえば、軟鉄などの鉄,チタン,特殊鋼,ステンレス,アルミニウム,マグネシウム,タングステン,銅,ニッケル,ジルコニウム,コバルト,マンガン,亜鉛,シリコン,錫,クロムおよびこれらを含む合金などが用いられる。
【0038】
ウッド型ゴルフクラブヘッドは、単一の部材から構成されてもよいし、複数の部材を組合わせることで構成されてもよい。ウッド型ゴルフクラブヘッドを複数の部材から構成する場合、たとえば、鍛造により作製されたフェース部材と、精密鋳造により成形されたその他の部分とを溶接により接合することが考えられる。また、クラウン部と他の部分とを別部材により構成することも考えられる。
【0039】
上記ゴルフクラブセットにおいて、ユーティリティゴルフクラブUTYは、ウッド型ゴルフクラブとアイアン型ゴルフクラブとの中間的形状を有するゴルフクラブである。一般的に、ユーティリティゴルフクラブと言えば、比較的アイアン型のクラブヘッドに近い形状を有するアイアン系のクラブと、比較的ウッド型のクラブヘッドに近い形状を有するウッド系クラブとを含むが、本実施の形態に係るユーティリティゴルフクラブUTYは、典型的には、中空構造を有するウッド系クラブである。
【0040】
ユーティリティゴルフクラブUTYとしては、典型的には、複数本(たとえば3W−UTY,4W−UTYの2本)のゴルフクラブが用意されるが、ユーティリティゴルフクラブUTYは、単数であってもよい。
【0041】
ユーティリティゴルフクラブUTYが複数準備される場合、ユーティリティゴルフクラブのロフト角は、番手に応じて順次大きくなる。たとえば、3番のユーティリティクラブ(3W−UTY)では、たとえば20°以上22°以下程度のロフト角が適用され、4番のユーティリティクラブ(4W−UTY)では、たとえば21°以上25°以下程度のロフト角が適用される。ただし、ユーティリティゴルフクラブUTYのロフト角は、アイアン系ゴルフクラブIRのロフト角よりも小さい。
【0042】
ウッド系のユーティリティゴルフクラブUTYを構成するゴルフクラブヘッドは、ウッド型ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドと同様に、フェース部、バック部、ヒール部、トウ部、ソール部およびクラウン部を含んで構成される。当該クラブヘッドは、単一の金属からなるものであってもよいし、複数の金属やその他の材料が組み合わされたものであってもよい。当該クラブヘッドを構成し得る素材は、ウッド型ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドと同様である。さらには、単一の部材から構成されてもよいし、複数の部材を組合わせることで構成されてもよい点も、ウッド型ゴルフクラブヘッドの場合と同様である。
【0043】
上記ゴルフクラブセットにおいて、アイアン型ゴルフクラブIRは、典型的には、複数本(たとえば、5I,6I,7I,8I,9I,PW,FW,SWの8本)のゴルフクラブにより構成される。アイアン型ゴルフクラブのロフト角は、番手に応じて(5I,6I,7I,8I,9I,PW,FW,SWの順に)順次大きくなる。
【0044】
アイアン型ゴルフクラブを構成するアイアン型ゴルフクラブヘッドは、典型的には、フェース部、バック部、ヒール部、トウ部およびソール部を含んで構成される。
【0045】
アイアン型ゴルフクラブヘッドは、単一の素材からなるものであってもよいし、複数の素材が組み合わされたものであってもよい。
【0046】
アイアン型ゴルフクラブヘッドを構成する金属としては、たとえば、軟鉄などの鉄,チタン,ステンレスおよびこれらを含む合金などが用いられる。
【0047】
アイアン型ゴルフクラブヘッドは、単一の部材から構成されてもよいし、複数の部材を組合わせることで構成されてもよい。アイアン型ゴルフクラブヘッドを複数の部材から構成する場合、たとえば、鍛造により作製されたフェース部材と、精密鋳造により成形されたその他の部分とを溶接により接合することが考えられる。
【0048】
本実施の形態に係るゴルフクラブセットの1つの特徴は、3番ウッドのロフト角とドライバーのロフト角との差を、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)のロフト角と3番ウッドのロフト角との差よりも大きく設定したことにある。より具体的には、たとえば、3番ウッドのロフト角とドライバーのロフト角との差は6°以上8°以下程度に設定され、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)のロフト角と3番ウッドのロフト角との差は3°以上5°以下程度に設定される。このようにすることで、体力面および技術面でプロゴルファーには及ばない一般アマチュアゴルファーであっても、3番ウッドを用いて打球した際に比較的高い弾道高さを得ることができる。
【0049】
本実施の形態に係るゴルフクラブセットの他の特徴は、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアン(3I,4Iなど)に代えて、ウッド系のユーティリティゴルフクラブUTYを用いたことにある。このようにすることで、ロングアイアンの距離に対応する領域において、弾道高さを高く保つことができる。
【0050】
本実施の形態に係るゴルフクラブヘッドのさらに他の特徴は、ユーティリティゴルフクラブUTYのシャフトとして、アイアン系のシャフトに対して比較的柔らかいウッド系のシャフトを用いたことにある。より具体的には、ユーティリティゴルフクラブUTYに含まれる「第1のシャフト」の軸方向中央部における曲げ剛性は、アイアン型ゴルフクラブIRに含まれる「第2のシャフト」の軸方向中央部における曲げ剛性よりも低く設定されている。このようにすることで、ユーティリティゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さをさらに向上させることができる。
【0051】
このように、本実施の形態に係るゴルフクラブセットによれば、従来のゴルフクラブセットを用いた場合に一般アマチュアゴルファーによる打球の弾道高さが低くなりやすかったフェアウェイウッドやロングアイアンの距離に対応する領域において、弾道高さを高くすることができる。この結果、一般アマチュアゴルファーにおいても、プロゴルファーと同様に、各番手のゴルフクラブによる打球の弾道高さを略一致させることができるので、意図する飛距離に適したゴルフクラブが選択しやすくなるという効果が得られる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の1つの実施例について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0053】
図1〜図4は、本実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるウッド型ゴルフクラブを示す図である。なお、図2〜図4は、それぞれ、図1に示されるゴルフクラブを矢印II,矢印III,矢印IVの方向からみた状態を示している。
【0054】
図1〜図4を参照して、ウッドゴルフクラブ100は、本実施例に係るゴルフクラブセットにおけるドライバー(1W)またはフェアウェイウッド(3W,5W,7W)を構成するものであって、フェース部110と、バック部120と、ヒール部130と、トウ部140と、ソール部150と、クラウン部160とを含んで構成される。
【0055】
本実施例に係るウッドゴルフクラブ100のヘッドは、図3,図4に示すように、略五角形の平面形状を有する。このようにすることで、ヘッドを略球状に形成する場合と比較して、ヘッド重量をトウ−ヒール方向に分散させ、トウ−ヒール方向の慣性モーメント(上下方向軸周りの慣性モーメント)を増大させることができる。この結果、シャフトのねじれ剛性を若干低下させることが許容されるので、比較的ねじれ剛性の低いシャフトを用いて、スイング時にゴルフクラブヘッドがスムーズに走るようにすることが可能になる。
【0056】
本実施例に係るドライバー(1W)のクラブヘッドは、チタン合金(Ti−4.5Al−2Mo−1.6V)からなる鍛造のフェース部材と、チタン合金(Ti−6Al−4V)からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成される。
【0057】
上記ドライバーの仕様は、表1,表2に示される通りである。
ここで、表1および後述する表3,表5における「ロフト角」、「ライ角」および「フェース角」について、図18〜図20を用いて説明する。
【0058】
図18に示すように、ロフト角θ1とは、フェース部11と、バック部12と、ヒール部13と、トウ部14と、ソール部15と、クラウン部16とを含むゴルフクラブ10を所定の角度でアドレスした際の鉛直面とフェース面とのなす角度を意味する。また、ゴルフクラブ10の重心Gからフェース面に向かって下ろした垂線とフェイス部11との交点が、ゴルフクラブ10のスイートスポットSSとなる。そして、重心GとスイートスポットSSとの距離が重心深度Dとなる。
【0059】
図19に示すように、ライ角θ2とは、ゴルフクラブ10を所定の角度でアドレスした際の水平面とシャフト軸線とのなす角度を意味する。
【0060】
図20に示すように、フェース角θ3とは、ゴルフクラブ10を所定の角度でアドレスした際の打球線に垂直な方向の平面とフェース面とのなす角度を意味する。
【0061】
また、表1および後述する表3,表5,表7,表9における「クラブ長さ」(シャフトグリップの上端(手元側先端)からクラブヘッドのソール外面をシャフトの軸線に沿って測った長さ)については、インチ表示とメートル表示とを併記している(括弧内がメートル表示による値)。
【0062】
また、表1,表2および後述する表3〜表8におけるシャフトの「硬さ」は、各々のシャフトの曲げ剛性に対応するパラメータであり、表1〜表8の例では、「S」,「SR」,「R」の順で柔らかく(すなわち、曲げ剛性が低く)なる。
【0063】
また、表1および後述する表3,表5,表7,表9における「バランス」は、各々のゴルフクラブの手元から重心までの距離に対応するパラメータであり、表1,表3,表5,表7の例では、「D3」,「D2」,「D1」,「D0」,「C9」の順で、手元から重心までの距離の距離が短くなる。
【0064】
また、表2および後述する表4,表6,表8における「トルク」は、所定のねじり力を作用させた際のシャフトのねじれ角に対応するパラメータであり、この値が大きくなるほど、シャフトがねじれやすい(すなわち、ねじれ剛性が低い)ということを意味する。
【0065】
また、表2および後述する表4,表6,表8における「調子」は、シャフトのしなりやすい部位がどの部分にあるかで、「先」,「中」,「手元(元)」という表現で言い表されるものである。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
図5は、本実施例に係るドライバーを構成するシャフト(図5中のα)と、比較例に係るドライバーを構成するシャフト(図5中のβ)との曲げ剛性の分布(EI分布)を示した図である。なお、図5および後述する図9における横軸は、ゴルフクラブシャフトのクラブヘッド側端部からの距離を示す。
【0069】
図5を参照して、α,βの例ともに、シャフトの曲げ剛性は、クラブヘッド側からグリップ側に向かって大きくなる。他方、本実施例に係るドライバー(図5中のα)では、比較例に係るドライバー(図5中のβ)と比較して、軸方向中央部の曲げ剛性を若干高く形成している。
【0070】
本実施例に係るフェアウェイウッド(3W,5W,7W)のクラブヘッドは、β系チタン合金(Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al)からなる鍛造のクラウン部材(厚み:0.45mm)と、SUS630からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成される。このように、クラウン部材を軽量化することにより、クラブヘッドの低重心化を図ることができる。
【0071】
上記フェアウェイウッドの仕様は、表3,表4に示される通りである。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
図6は、本実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるユーティリティゴルフクラブを示す図である。
【0075】
図6を参照して、ユーティリティゴルフクラブ200は、金属製外殻構造(中空構造)を有するウッド系のユーティリティゴルフクラブであって、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアン(3I,4I)に代えて用いられるものである。ユーティリティゴルフクラブ200は、図6に示すように、フェース部210と、バック部220と、ヒール部230と、トウ部240と、ソール部250と、クラウン部(図6においては図示せず)とを含んで構成される。
【0076】
なお、本願明細書では、従来のゴルフクラブセットにおける3番アイアン、4番アイアンに相当するユーティリティゴルフクラブを、それぞれ、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)、4番のユーティリティゴルフクラブ(4W−UTY)と称する。
【0077】
本実施例に係るユーティリティゴルフクラブ200(3W−UTY,4W−UTY)のクラブヘッドは、たとえばSUS630からなる鍛造のフェース部材と、SUS630からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成される。
【0078】
上記ユーティリティゴルフクラブの仕様は、表5,表6に示される通りである。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
ところで、上述した表1および表3に示すように、本実施例においては、ドライバー(1W)のロフト角は9〜11°であり、3番ウッド(3W)のロフト角は17°である。すなわち、3番ウッドとドライバーとのロフト角の差は、6〜8°である。
【0082】
他方、表5に示すように、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)は21°であり、4番のユーティリティゴルフクラブ(4W−UTY)は24°である。すなわち、ユーティリティゴルフクラブ200のロフト角の最小値(21°)と3番ウッドのロフト角(17°)との差は4°であり、ユーティリティゴルフクラブ200のロフト角の最小値(24°)と3番ウッドのロフト角(17°)との差は7°である。
【0083】
このように、本実施例においては、3番ウッドとドライバーとのロフト角の差(6〜8°)は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と3番ウッドのロフト角との差(4°)よりも大きく形成されている。また、ドライバーのロフト角が9°の場合には、さらに、3番ウッドとドライバーとのロフト角の差(8°)は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値と3番ウッドのロフト角との差(7°)よりも大きく形成されている。
【0084】
図7,図8は、本実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるアイアン型ゴルフクラブを示す図である。なお、図8は、図7に示されるアイアン型ゴルフクラブの分解斜視図である。
【0085】
図7,図8を参照して、アイアンゴルフクラブ300は、本実施例に係るゴルフクラブセットにおけるミドルアイアン(5I,6I,7I)、ショートアイアン(8I,9I)およびウェッジ(PW,FW,SW)を構成するものであって、フェース部310と、バック部320と、ヒール部330と、トウ部340と、ソール部350とを含んで構成される。
【0086】
本実施例に係るアイアンゴルフクラブ300(5I〜SW)のクラブヘッドは、5I〜PWについては、β系チタン合金(Ti−15Mo−5Zr−3Al)からなる鍛造のフェース部材(厚み:2.2mm)と、SUS630からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成され、FWおよびSWについては、SUS630からなる精密鋳造の本体部材により構成される。
【0087】
上記アイアンゴルフクラブの仕様は、表7,表8に示される通りである。
ここで、表7における「ソール角」について、図21を用いて説明する。なお、表7における「ロフト角」および「ライ角」については、表1,表3および表5の場合と同様である。
【0088】
図21に示すように、ソール角θ4とは、フェース部21と、バック部22と、ソール部25とを含むゴルフクラブ20を所定の角度でアドレスした際のリーディングエッジ側のソール面と水平面とのなす角度を意味する。
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
図9は、上述した各ゴルフクラブを構成するシャフトの曲げ剛性の分布(EI分布)を示した図である。図9の例では、ゴルフクラブシャフトの曲げ剛性は、クラブヘッド側からグリップ側に向かって大きくなる。
【0092】
図9を参照して、各シャフトの軸方向中央付近(たとえば図9中における横軸:500mmの位置)に注目すると、ドライバーを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のA)と、フェアウェイウッドを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のB)とは、略一致し、アイアンゴルフクラブを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のD)は、それよりも高い領域にある。そして、ユーティリティゴルフクラブを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のC)は、ウッドゴルフクラブ(上記A,B)とアイアンゴルフクラブ(上記D)との中間にある。このように、本実施例では、ユーティリティゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性は、シャフトの軸方向中心の領域において、アイアンゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性よりも低くなるように形成されている。
【0093】
以下に、ゴルフクラブシャフトの曲げ剛性分布の測定方法について説明する。
曲げ剛性値は、3点曲げ試験による変位−荷重の傾きから以下の計算式により求められる。
EI=(W/δ)×L3/48
EI:曲げ剛性値、W:荷重、δ:荷重点のたわみ量(変位)、L:スパン(支点間距離)
本願発明者らが行なった3点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0094】
支点は、R10(半径10mm)のものを、その支点間の距離:スパンLを200mmに設定し、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、支点間の中央部で負荷するように設定する。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:10kgf(98N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、荷重点の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0095】
一方、4点曲げ試験による曲げ剛性値の計測は、外径の割に肉厚が薄い場合(特に手元部)に有効である。4点曲げ試験の場合は、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W/δ)×(a/48)×(3L2−4a2)
EI:曲げ剛性値、W:荷重(但し、荷重点は2箇所で、各々の荷重はW/2)、L:スパン(支点間距離)、δ:スパンの中央部(支点間中央部)のたわみ量(変位)、a:片側の支点から隣り合う荷重点までの距離、(L−a)/2:2ヶ所の荷重点間の距離
本願発明者らが行なった4点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0096】
支点は、R75(半径75mm)のものを、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、その支点間の距離:スパンLを300mmに設定し、2ヶ所の荷重点間の距離を130mmに、すなわち、片側の支点から隣り合う荷重点までの距離:aを85mmに設定した。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:15kgf(147N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、2ヶ所の荷重点の中央部の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0097】
また、曲げ剛性値を測定したい位置に、一方向の歪みゲージをゴルフクラブシャフトの長手方向に貼付し、該シャフトのグリップ部を固定し、該シャフトのヘッド側に荷重を負荷する際の歪み変化εを計測することにより、曲げ剛性値EIを算出する方法もある。この場合、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W×L)×(d/2)/ε
EI:曲げ剛性値、W:荷重、L:歪み計測位置から荷重点までの距離、d:歪み測定位置の外径、ε:歪み量
本願発明者らが行なった歪みゲージを用いた時の試験での諸条件を次に示す。
【0098】
まず、曲げ剛性値を計測したい位置に歪みゲージを貼付する。次に、該シャフトのグリップ側の50mmを、円筒用チャック(三つ爪チャック)で、歪みゲージが上面になるように固定する。荷重点は、歪みゲージの位置から該シャフトのヘッド側L:700mmの位置に負荷する。負荷方法は、W:1kgf(9.8N)の錘を吊り下げる。その錘を吊り下げる前後の歪みゲージの出力される値を歪み量εとして用いる。なお、歪み測定位置の外径dは、別途計測される。
【0099】
次に、本実施例に係るゴルフクラブセットによる効果について説明する。本願発明者は、本実施例に係るゴルフクラブセットを開発するに際し、体力面および技術面においてそれぞれ事情の異なるサンプルとして、一般アマチュアゴルファー、女子プロゴルファーおよび男子プロゴルファーの試打者による実験を行なっている。
【0100】
図10,図11は、それぞれ、一般アマチュアゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフである。なお、図10に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、46.6m/sであり、図11に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、42.7m/sである。
【0101】
なお、図10,図11および後述する図12〜図17において、棒グラフは、打球の最高到達高さ(m)を示し、折れ線グラフは、その打球のキャリー(打球地点から落下地点までの距離)を示している。なお、図10〜図17において、キャリーに関しては、ヤード表示とメートル表示とを併記(括弧内がメートル表示)している。
【0102】
図10,図11を参照して、双方の一般アマチュアゴルファーに共通していることは、比較的長い距離に対応する3W,3I,4Iによる打球の最高到達高さ(弾道高さ)が比較的低い(25m以下)ということである。このように、長い距離を打つためのクラブで弾道高さが低いと、その打球のトータル飛距離におけるラン(落下地点から停止地点までの距離)の割合が高くなるため、トータル飛距離がボールの落下地点の状況(地面の傾斜角度、芝面の状況等)の影響を受けやすくなる。
【0103】
図12,図13は、それぞれ、女子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフである。なお、図12に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、39.4m/sであり、図13に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、38.3m/sである。
【0104】
図12,図13を参照して、女子プロゴルファーにおいても、双方のゴルファーに共通して、比較的長い距離に対応する3W,4Iによる打球の弾道高さが比較的低いという結果が見られた。
【0105】
なお、男子プロゴルファー(図14,図15)の場合、各番手のゴルフクラブによる打球の最高到達高さが略一致しているのに対し、一般のアマチュアゴルファー(図10,図11)や女子プロゴルファー(図12,図13)の場合は、一部のゴルフクラブによる打球の最高到達高さが低くなる原因として、アマチュアゴルファーに関しては、技術的に打点がばらつく、さらには、インパクトのロフト角やブロー角にバラツキが生じる、という要因が考えられ(インパクトのロフト角とは実際のスイング時において、ボールを打撃する(インパクト)直前のロフト角を示す。つまり、シャフトの撓りやゴルフヘッドの慣性特性の影響により、スイング中にゴルフヘッドは様々な傾きを有するため、静止状態でのロフト角とインパクト直前のロフト角が異なる場合があることを表している。ブロー角とは、インパクト時のゴルフヘッドの軌道を表現しており、大きく分けてダウンブローとアッパーブローに大別される。ダウンブローとは、スイング中において、ゴルフヘッドの挙動がインパクト時に水平面に対して上から下に向かう場合を表わし、アッパーブローとはゴルフヘッドの挙動がインパクト時に水平面に対して下から上に向かう場合を表わす。つまり、ブロー角とは上記角度を表している。)、女子プロゴルファーに関しては、相対的にヘッドスピードが若干遅い(40m/s以下)という要因が考えられる。なお、ヘッドスピードと、弾道の最高到達高さおよびキャリーとの関係(3Wの場合)は、図17に示すシミュレーション結果により説明される。図17に示すように、ヘッドスピードが大きくなれば、弾道の最高到達高さおよびキャリーも大きくなる。逆に、ヘッドスピードが小さくなれば、弾道の最高到達高さおよびキャリーも小さくなる。
【0106】
図16は、本実施例に係るゴルフクラブセットを用いて打球した際の打球の各番手の最高到達高さおよびキャリーのシミュレーション結果(条件:1Wでヘッドスピード43m/s)を示すグラフである。
【0107】
図16を参照して、本実施例に係るゴルフクラブを用いて打球した場合には、従来弾道が低くなりがちであった3W,3I,4Iに対応するクラブ(3W,3W−UTY,4W−UTY)においても、高い弾道(最高到達高さ:25m以上)を確保することができている。そして、図16のグラフ上において、折れ線グラフは、ほぼ直線状に形成されている。これは、各々の番手間のキャリーの差が略一定であることを意味している。このように、本実施例に係るゴルフクラブセットによれば、各番手間のキャリーの差を略一定にすることで、プレイ中の番手の選択を容易にし、ゲームメークを行ないやすくすることができる。
【0108】
また、本実施例においては、上述したように、ユーティリティゴルフクラブのシャフトとして、アイアンゴルフクラブのシャフトよりも柔らかい(曲げ剛性が低い)もの(以下、「ウッド用シャフト」と称する)を適用している。このようにすることによる効果を実証するため、本願発明者は、5名の試打者による試験を行なった。
【0109】
上記試験の方法に用いるクラブとしては、表9に示す2つのスペックで、それぞれ、アイアン用のシャフトを備えたクラブと、アイアン用よりも柔らかいウッド用シャフトを備えたクラブとを準備する(すなわち、2×2=4種類のクラブを準備する)。そして、それぞれのスペックごとに、アイアン用シャフトとウッド用シャフトとで試打を行ない、弾道高さおよび飛距離について官能による相対評価を行なう。この評価結果は、表10に示される。
【0110】
【表9】
【0111】
【表10】
【0112】
表10に示される結果から、アイアン用シャフトに対するウッド用シャフトの優位性が明らかになった。この傾向は、特に、ロフト角の小さい3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)において顕著である。
【0113】
上述した実施例に係るゴルフクラブセットの各番手のロフト角を表11に示す。なお、近年は、比較的飛距離の短い番手のクラブのロフト角を立てる傾向にあるが、本実施例においても、4W−UTY〜SWの範囲で、上述した例よりもロフト角を立てるようにしてもよい。表11では、このような変形例を「ストロングロフト角」として示している。
【0114】
【表11】
【0115】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるウッド型ゴルフクラブをトウ部側から見た状態を示す図である。
【図2】図1に示されるウッド型ゴルフクラブを矢印IIの方向から見た状態を示す図である。
【図3】図1に示されるウッド型ゴルフクラブを矢印IIIの方向から見た状態を示す図である。
【図4】図1に示されるウッド型ゴルフクラブを矢印IVの方向から見た状態を示す図である。
【図5】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるドライバーのシャフト曲げ剛性分布を示す図である。
【図6】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるユーティリティゴルフクラブをソール部側から見た状態を示す図である。
【図7】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるアイアン型ゴルフクラブを示す斜視図である。
【図8】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるアイアン型ゴルフクラブを示す分解斜視図である。
【図9】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれる複数のゴルフクラブのシャフト曲げ剛性分布を示す図である。
【図10】アマチュアゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その1)である。
【図11】アマチュアゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その2)である。
【図12】女子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その1)である。
【図13】女子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その2)である。
【図14】男子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その1)である。
【図15】男子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その2)である。
【図16】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットを構成する各番手のゴルフクラブを用いて打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図17】フェアウェイウッドを用いて打球する際のヘッドスピードと打球の最高到達高さおよびキャリーのシミュレーション結果を示したグラフである。
【図18】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その1)である。
【図19】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その2)である。
【図20】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その3)である。
【図21】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その4)である。
【図22】本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブセットを構成するゴルフクラブを示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10,20 ゴルフクラブ、11,21,110,210,310 フェース部、12,22,120,220,320 バック部、13,130,230,330 ヒール部、14,140,240,340 トウ部、15,25,150,250,350 ソール部、16,160 クラウン部、100 ウッドゴルフクラブ、200 ユーティリティゴルフクラブ、300 アイアンゴルフクラブ、1000 ゴルフクラブセット、WO ウッド型ゴルフクラブ、WO1 ドライバー、WO2 フェアウェイウッド、UTY ユーティリティゴルフクラブ、IR アイアン型ゴルフクラブ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブセットに関し、特に、複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットが記載された文献としては、たとえば、特開昭58−41575号公報(特許文献1)、特許第3055380号公報(特許文献2)、特公平06−26637号公報(特許文献3)、特開2007−29257号公報(特許文献4)、特開2003−144587号公報(特許文献5)、特開2005−211570号公報(特許文献6)および特開2002−17902号公報(特許文献7)などが挙げられる。
【0003】
一般的に、ゴルフクラブセットは、ウッドクラブ(ドライバー、フェアウェイウッド)とアイアンクラブ(ロングアイアン、ミドルアイアン、ショートアイアン、ウェッジ)にパターを加えた14本から構成されている。
【0004】
全てのクラブに求められる機能として、1番に優先されることは、ゴルファーが意図する飛距離を正確にミス無く打てることである。
【0005】
他方、ゴルフというゲームにおいて飛距離はゲームをより簡単にするという観点から非常に重要視されている。特にウッドクラブにおいてはそれが顕著であり、更にドライバーにおいてはそれが最も優先される機能である。
【0006】
但し、近年の反発規制において、ドライバーのボール初速が規制され、ボールの弾道を決定するボール初速、飛び出し角、スピン量の3要素の中で、特に飛び出し角とスピン量が重視されている。また、打点のばらつきに対するボール初速の低下を軽減することも重視されている。
【0007】
ゴルフクラブセットにおいて、ウッド型クラブについては1W,3W,5Wという構成が一般的である。番手が大きくなるにつれ、ライ角、ロフト角が漸次大きくなり、クラブ長さを漸次短くすることにより飛距離を徐々に低減させ、ゴルファーが意図する飛距離を打ち分けれるように考慮されている。
【0008】
また、アイアン型クラブについては、たとえば、ロングアイアンと呼ばれる3I,4Iと、ミドルアイアンと呼ばれる5I,6I,7Iと、ショートアイアンと呼ばれる8I,9Iと、ウェッジと呼ばれるPW,FW,SWとに分類される。
【0009】
アイアン型クラブにおいても、番手が大きくなるにつれ、ライ角、ロフト角が漸次大きくなり、クラブ長さも漸次短くすることにより飛距離を徐々に低減させ、ゴルファーが意図する飛距離を打ち分けれるように考慮されている。
【0010】
しかしながら、ロングアイアンと呼ばれる3I,4Iについては、クラブ長さが長く、ヘッド質量が軽く、スイートエリアが小さいために、少しの打点のばらつきに対して大きな飛距離低下や球が上がらないといった結果を招きやすい。したがって、近年ではロングアイアンの代わりにショートウッドと呼ばれる7W,9W、さらにはユーティリティゴルフクラブと呼ばれるクラブをクラブセッティングの中で用いるケースが多く見られるようになってきた。
【0011】
ゴルフクラブに求められる他の重要な要素として、弾道の高さが挙げられる。ゴルフクラブに対して、そのゴルフクラブが打ちやすいクラブであるかを判断する大きな基準は、打球の上がりやすさである。実際の球の上がりやすさは、ゴルフクラブのインパクト後のボールの飛び出し角に対応するが、実際のゴルファーには、ボールの飛び出し角が高いか低いかの判断はできない。そのため、弾道の最大高さによって、打球の上がりやすいか上がりにくいか、ひいてはゴルフクラブが打ちやすいか否かの判断を行っている。
【特許文献1】特開昭58−41575号公報
【特許文献2】特許第3055380号公報
【特許文献3】特公平06−26637号公報
【特許文献4】特開2007−29257号公報
【特許文献5】特開2003−144587号公報
【特許文献6】特開2005−211570号公報
【特許文献7】特開2002−17902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来から、弾道高さについては色々な研究がなされてきていたが、近年、実際のインパクト後の弾道を実測することが可能となった。本願発明者らは、プロゴルファーや一般アマチュアゴルファーの弾道を実測することにより、下記のような事実を解明した。
【0013】
その事実とは、体力的および技術的に非常に優れたプロゴルファーの弾道高さは、各番手でほぼ一定であるのに対し、一般アマチュアゴルファーの場合、フェアウェイウッド(3Wなど)やロングアイアン(3I,4Iなど)を用いた際に、弾道が低くなりやすい傾向にあるということである。
【0014】
打球のトータル飛距離は、ボールが落下するまでの「キャリー」とボールが落下した後の「ラン」とにより構成される。上記のように、一般アマチュアゴルファーがフェアウェイウッドやロングアイアンで打球した場合、弾道が低くなりやすいため、打球のトータル飛距離に対するランの占める割合が高くなる。この結果、打球の落下地点の状況によって、飛距離が影響を受けやすいということになり、ゴルフクラブの番手の選択によって飛距離を正確に打ち分けるということが難しくなる。
【0015】
ところで、特許文献1では、ゴルフクラブセットを構成する各ゴルフクラブの慣性モーメントや重心位置を調整することが記載されている。
【0016】
また、特許文献2では、ゴルフクラブセットを構成するロフト角が大きいゴルフクラブにベントポイントを手元寄りに設けた手元調子のシャフトを装着することが記載されている。
【0017】
また、特許文献3では、ゴルフクラブセットを構成するアイアンゴルフクラブの中空構造の中空部の度合い、ヘッド重心位置およびソール幅を調整することが記載されている。
【0018】
また、特許文献4では、ピッチングウェッジよりも飛ばない領域のゴルフクラブを2本以上加えたアイアンゴルフクラブのセット方法が記載されている。
【0019】
また、特許文献5では、ゴルフクラブシャフトの後端部を固定した状態で先端部を振動させて測定した単位時間当たりの振動数と、ゴルフクラブシャフトの先端部を固定した状態で後端部を振動させて測定した単位時間当たりの振動数との比率の大きさを、ゴルフクラブの番手の順序に関連付けて設定することが記載されている。
【0020】
また、特許文献6では、ゴルフクラブセットを構成する各ゴルフクラブにおけるロフト角と重心高さとの関係を調整することが記載されている。
【0021】
また、特許文献7では、アイアン型ゴルフクラブにユーティリティゴルフクラブを加えたゴルフクラブセットが記載されている。
【0022】
しかしながら、特許文献1〜7においては、ゴルフクラブセットを構成する各ゴルフクラブのロフト角を調整することによって、フェアウェイウッド(たとえば3Wなど)の弾道高さを他のゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さと略一致させることは記載されていない。
【0023】
さらに、特許文献1〜6における「ゴルフクラブセット」は、アイアン型のゴルフクラブのみから構成されるものである。また、特許文献7における「ゴルフクラブセット」は、アイアン型のゴルフクラブのみから構成されるゴルフクラブセットの一部をユーティリティゴルフクラブに置き換えただけのものである。このように、特許文献1〜7におけるゴルフクラブセットは、ウッド型ゴルフクラブを含めたものである本願発明に係るゴルフクラブセットとは、全く前提を異にするものである。
【0024】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ウッド型ゴルフクラブを含めた各番手のゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さのばらつきを抑制し、番手間での飛距離の差を略等しくすることにより、ゴルファーが意図する飛距離に応じて、該ゴルファーが最適なゴルフクラブを選択しやすくなるゴルフクラブセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係るゴルフクラブセットは、複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットである。上記複数のゴルフクラブは、複数のウッド型ゴルフクラブと、アイアン型ゴルフクラブと、ウッド型ゴルフクラブとアイアン型ゴルフクラブとの中間的形状を有するユーティリティゴルフクラブとを含む。ユーティリティゴルフクラブは、複数のウッド型ゴルフクラブよりもロフト角が大きく、かつ、アイアン型ゴルフクラブよりもロフト角が小さい。複数のウッド型ゴルフクラブは、該ウッド型ゴルフクラブのうち最も小さい第1のロフト角を有する第1のゴルフクラブと、ウッド型ゴルフクラブのうち第1のロフト角の次に小さい第2のロフト角を有する第2のゴルフクラブとを含む。第2のロフト角と第1のロフト角との差は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と第2のロフト角との差よりも大きい(より好ましくは、第2のロフト角と第1のロフト角との差は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値と第2のロフト角との差よりも大きい)。
【0026】
なお、上記構成において、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値とは、ユーティリティゴルフクラブが1つしかない場合には、そのクラブのロフト角を意味し、ユーティリティゴルフクラブが複数ある場合には、当該複数のクラブの中の最小のロフト角を意味する。他方、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値とは、ユーティリティゴルフクラブが1つしかない場合には、そのクラブのロフト角を意味し、ユーティリティゴルフクラブが複数ある場合には、当該複数のクラブの中の最大のロフト角を意味する。
【0027】
上記構成によれば、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアン(3I,4Iなど)の距離に対応するゴルフクラブとして、ユーティリティゴルフクラブを用いることにより、この距離に対応する領域において、弾道高さを高く保つことができる。また、フェアウェイウッドのロフト角である第2のロフト角とドライバーのロフト角である第1のロフト角との差を、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と上記第2のロフト角との差よりも大きくすることにより、フェアウェイウッドの距離に対応する領域において、弾道高さを高く保つことができる。このように、本発明に係るゴルフクラブセットによれば、従来のゴルフクラブセットを用いた場合に一般アマチュアゴルファーによる打球の弾道高さが低くなりやすかったフェアウェイウッドやロングアイアンの距離に対応する領域において、弾道高さを高くすることができる。この結果、一般アマチュアゴルファーにおいても、プロゴルファーと同様に、各番手のゴルフクラブによる打球の弾道高さを略一致させることができるので、意図する飛距離に適したゴルフクラブが選択しやすくなるという効果が得られる。
【0028】
好ましくは、上記ゴルフクラブセットにおいて、ユーティリティゴルフクラブは第1のシャフトを含み、アイアン型ゴルフクラブは第2のシャフトを含み、第1のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性は、第2のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性よりも低い。
【0029】
上記構成によれば、ユーティリティゴルフクラブのシャフトを柔らかくすることで、この領域での弾道高さをさらに向上させることができるので、番手間での弾道高さをばらつきを、さらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ウッド型ゴルフクラブを含めた各番手のゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さのばらつきが抑制され、番手間での飛距離の差が略等しくなることにより、ゴルファーが意図する飛距離に応じて、該ゴルファーが最適なゴルフクラブを選択しやすくなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
図22は、本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブセットを示した図である。図22を参照して、本実施の形態に係るゴルフクラブセット1000は、ウッド型ゴルフクラブWOと、アイアン型ゴルフクラブIRと、ユーティリティゴルフクラブUTYとを含んで構成される。
【0032】
本実施の形態に係るゴルフクラブセットは、合計14本のフルセットに含まれるパター以外のゴルフクラブ群(すなわち13本のセット)であるが、当該ゴルフクラブセットは、たとえば、合計7本のハーフセットに含まれるパター以外のゴルフクラブ群(すなわち6本のセット)であってもよい。
【0033】
上記ゴルフクラブセットにおいて、ウッド型ゴルフクラブWOは、ドライバーWO1と、フェアウェイウッドWO2とを含んで構成される。フェアウェイウッドWO2としては、典型的には、複数本(たとえば3W,5W,7Wの3本)のゴルフクラブが用意されるが、フェアウェイウッドWO2は、単数であってもよい。
【0034】
ウッド型ゴルフクラブのロフト角は、番手に応じて順次大きくなる。ドライバーWO1では、たとえば8°以上14°以下程度(好ましくは、8°以上12°以下程度)のロフト角が適用され、3Wでは、たとえば16°以上18°以下程度のロフト角が適用され、5Wでは、たとえば19°以上21°以下程度のロフト角が適用され、7Wでは、たとえば22°以上24°以下程度のロフト角が適用される。すなわち、ウッド型ゴルフクラブWOは、最も小さい「第1のロフト角」を有する「第1のゴルフクラブ」としてのドライバーWO1と、「第1のロフト角」の次に小さい「第2のロフト角」を有する「第2のゴルフクラブ」としての3番ウッド(3W)とを含む。
【0035】
ウッド型ゴルフクラブを構成するウッド型ゴルフクラブヘッドは、典型的には、金属製外殻構造を有するゴルフクラブヘッドであって、フェース部、バック部、ヒール部、トウ部、ソール部およびクラウン部を含んで構成される。
【0036】
ウッド型ゴルフクラブヘッドは、単一の金属からなるものであってもよいし、複数の金属が組み合わされたものであってもよい。さらには、金属と炭素繊維強化樹脂などが組み合わされたものであってもよい。また、ゴルフクラブヘッドの外殻構造の内部は空洞であってもよいし、発泡体などが充填されていてもよい。
【0037】
ウッド型ゴルフクラブヘッドを構成する金属としては、たとえば、軟鉄などの鉄,チタン,特殊鋼,ステンレス,アルミニウム,マグネシウム,タングステン,銅,ニッケル,ジルコニウム,コバルト,マンガン,亜鉛,シリコン,錫,クロムおよびこれらを含む合金などが用いられる。
【0038】
ウッド型ゴルフクラブヘッドは、単一の部材から構成されてもよいし、複数の部材を組合わせることで構成されてもよい。ウッド型ゴルフクラブヘッドを複数の部材から構成する場合、たとえば、鍛造により作製されたフェース部材と、精密鋳造により成形されたその他の部分とを溶接により接合することが考えられる。また、クラウン部と他の部分とを別部材により構成することも考えられる。
【0039】
上記ゴルフクラブセットにおいて、ユーティリティゴルフクラブUTYは、ウッド型ゴルフクラブとアイアン型ゴルフクラブとの中間的形状を有するゴルフクラブである。一般的に、ユーティリティゴルフクラブと言えば、比較的アイアン型のクラブヘッドに近い形状を有するアイアン系のクラブと、比較的ウッド型のクラブヘッドに近い形状を有するウッド系クラブとを含むが、本実施の形態に係るユーティリティゴルフクラブUTYは、典型的には、中空構造を有するウッド系クラブである。
【0040】
ユーティリティゴルフクラブUTYとしては、典型的には、複数本(たとえば3W−UTY,4W−UTYの2本)のゴルフクラブが用意されるが、ユーティリティゴルフクラブUTYは、単数であってもよい。
【0041】
ユーティリティゴルフクラブUTYが複数準備される場合、ユーティリティゴルフクラブのロフト角は、番手に応じて順次大きくなる。たとえば、3番のユーティリティクラブ(3W−UTY)では、たとえば20°以上22°以下程度のロフト角が適用され、4番のユーティリティクラブ(4W−UTY)では、たとえば21°以上25°以下程度のロフト角が適用される。ただし、ユーティリティゴルフクラブUTYのロフト角は、アイアン系ゴルフクラブIRのロフト角よりも小さい。
【0042】
ウッド系のユーティリティゴルフクラブUTYを構成するゴルフクラブヘッドは、ウッド型ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドと同様に、フェース部、バック部、ヒール部、トウ部、ソール部およびクラウン部を含んで構成される。当該クラブヘッドは、単一の金属からなるものであってもよいし、複数の金属やその他の材料が組み合わされたものであってもよい。当該クラブヘッドを構成し得る素材は、ウッド型ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドと同様である。さらには、単一の部材から構成されてもよいし、複数の部材を組合わせることで構成されてもよい点も、ウッド型ゴルフクラブヘッドの場合と同様である。
【0043】
上記ゴルフクラブセットにおいて、アイアン型ゴルフクラブIRは、典型的には、複数本(たとえば、5I,6I,7I,8I,9I,PW,FW,SWの8本)のゴルフクラブにより構成される。アイアン型ゴルフクラブのロフト角は、番手に応じて(5I,6I,7I,8I,9I,PW,FW,SWの順に)順次大きくなる。
【0044】
アイアン型ゴルフクラブを構成するアイアン型ゴルフクラブヘッドは、典型的には、フェース部、バック部、ヒール部、トウ部およびソール部を含んで構成される。
【0045】
アイアン型ゴルフクラブヘッドは、単一の素材からなるものであってもよいし、複数の素材が組み合わされたものであってもよい。
【0046】
アイアン型ゴルフクラブヘッドを構成する金属としては、たとえば、軟鉄などの鉄,チタン,ステンレスおよびこれらを含む合金などが用いられる。
【0047】
アイアン型ゴルフクラブヘッドは、単一の部材から構成されてもよいし、複数の部材を組合わせることで構成されてもよい。アイアン型ゴルフクラブヘッドを複数の部材から構成する場合、たとえば、鍛造により作製されたフェース部材と、精密鋳造により成形されたその他の部分とを溶接により接合することが考えられる。
【0048】
本実施の形態に係るゴルフクラブセットの1つの特徴は、3番ウッドのロフト角とドライバーのロフト角との差を、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)のロフト角と3番ウッドのロフト角との差よりも大きく設定したことにある。より具体的には、たとえば、3番ウッドのロフト角とドライバーのロフト角との差は6°以上8°以下程度に設定され、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)のロフト角と3番ウッドのロフト角との差は3°以上5°以下程度に設定される。このようにすることで、体力面および技術面でプロゴルファーには及ばない一般アマチュアゴルファーであっても、3番ウッドを用いて打球した際に比較的高い弾道高さを得ることができる。
【0049】
本実施の形態に係るゴルフクラブセットの他の特徴は、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアン(3I,4Iなど)に代えて、ウッド系のユーティリティゴルフクラブUTYを用いたことにある。このようにすることで、ロングアイアンの距離に対応する領域において、弾道高さを高く保つことができる。
【0050】
本実施の形態に係るゴルフクラブヘッドのさらに他の特徴は、ユーティリティゴルフクラブUTYのシャフトとして、アイアン系のシャフトに対して比較的柔らかいウッド系のシャフトを用いたことにある。より具体的には、ユーティリティゴルフクラブUTYに含まれる「第1のシャフト」の軸方向中央部における曲げ剛性は、アイアン型ゴルフクラブIRに含まれる「第2のシャフト」の軸方向中央部における曲げ剛性よりも低く設定されている。このようにすることで、ユーティリティゴルフクラブを用いて打球した際の弾道高さをさらに向上させることができる。
【0051】
このように、本実施の形態に係るゴルフクラブセットによれば、従来のゴルフクラブセットを用いた場合に一般アマチュアゴルファーによる打球の弾道高さが低くなりやすかったフェアウェイウッドやロングアイアンの距離に対応する領域において、弾道高さを高くすることができる。この結果、一般アマチュアゴルファーにおいても、プロゴルファーと同様に、各番手のゴルフクラブによる打球の弾道高さを略一致させることができるので、意図する飛距離に適したゴルフクラブが選択しやすくなるという効果が得られる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の1つの実施例について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0053】
図1〜図4は、本実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるウッド型ゴルフクラブを示す図である。なお、図2〜図4は、それぞれ、図1に示されるゴルフクラブを矢印II,矢印III,矢印IVの方向からみた状態を示している。
【0054】
図1〜図4を参照して、ウッドゴルフクラブ100は、本実施例に係るゴルフクラブセットにおけるドライバー(1W)またはフェアウェイウッド(3W,5W,7W)を構成するものであって、フェース部110と、バック部120と、ヒール部130と、トウ部140と、ソール部150と、クラウン部160とを含んで構成される。
【0055】
本実施例に係るウッドゴルフクラブ100のヘッドは、図3,図4に示すように、略五角形の平面形状を有する。このようにすることで、ヘッドを略球状に形成する場合と比較して、ヘッド重量をトウ−ヒール方向に分散させ、トウ−ヒール方向の慣性モーメント(上下方向軸周りの慣性モーメント)を増大させることができる。この結果、シャフトのねじれ剛性を若干低下させることが許容されるので、比較的ねじれ剛性の低いシャフトを用いて、スイング時にゴルフクラブヘッドがスムーズに走るようにすることが可能になる。
【0056】
本実施例に係るドライバー(1W)のクラブヘッドは、チタン合金(Ti−4.5Al−2Mo−1.6V)からなる鍛造のフェース部材と、チタン合金(Ti−6Al−4V)からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成される。
【0057】
上記ドライバーの仕様は、表1,表2に示される通りである。
ここで、表1および後述する表3,表5における「ロフト角」、「ライ角」および「フェース角」について、図18〜図20を用いて説明する。
【0058】
図18に示すように、ロフト角θ1とは、フェース部11と、バック部12と、ヒール部13と、トウ部14と、ソール部15と、クラウン部16とを含むゴルフクラブ10を所定の角度でアドレスした際の鉛直面とフェース面とのなす角度を意味する。また、ゴルフクラブ10の重心Gからフェース面に向かって下ろした垂線とフェイス部11との交点が、ゴルフクラブ10のスイートスポットSSとなる。そして、重心GとスイートスポットSSとの距離が重心深度Dとなる。
【0059】
図19に示すように、ライ角θ2とは、ゴルフクラブ10を所定の角度でアドレスした際の水平面とシャフト軸線とのなす角度を意味する。
【0060】
図20に示すように、フェース角θ3とは、ゴルフクラブ10を所定の角度でアドレスした際の打球線に垂直な方向の平面とフェース面とのなす角度を意味する。
【0061】
また、表1および後述する表3,表5,表7,表9における「クラブ長さ」(シャフトグリップの上端(手元側先端)からクラブヘッドのソール外面をシャフトの軸線に沿って測った長さ)については、インチ表示とメートル表示とを併記している(括弧内がメートル表示による値)。
【0062】
また、表1,表2および後述する表3〜表8におけるシャフトの「硬さ」は、各々のシャフトの曲げ剛性に対応するパラメータであり、表1〜表8の例では、「S」,「SR」,「R」の順で柔らかく(すなわち、曲げ剛性が低く)なる。
【0063】
また、表1および後述する表3,表5,表7,表9における「バランス」は、各々のゴルフクラブの手元から重心までの距離に対応するパラメータであり、表1,表3,表5,表7の例では、「D3」,「D2」,「D1」,「D0」,「C9」の順で、手元から重心までの距離の距離が短くなる。
【0064】
また、表2および後述する表4,表6,表8における「トルク」は、所定のねじり力を作用させた際のシャフトのねじれ角に対応するパラメータであり、この値が大きくなるほど、シャフトがねじれやすい(すなわち、ねじれ剛性が低い)ということを意味する。
【0065】
また、表2および後述する表4,表6,表8における「調子」は、シャフトのしなりやすい部位がどの部分にあるかで、「先」,「中」,「手元(元)」という表現で言い表されるものである。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
図5は、本実施例に係るドライバーを構成するシャフト(図5中のα)と、比較例に係るドライバーを構成するシャフト(図5中のβ)との曲げ剛性の分布(EI分布)を示した図である。なお、図5および後述する図9における横軸は、ゴルフクラブシャフトのクラブヘッド側端部からの距離を示す。
【0069】
図5を参照して、α,βの例ともに、シャフトの曲げ剛性は、クラブヘッド側からグリップ側に向かって大きくなる。他方、本実施例に係るドライバー(図5中のα)では、比較例に係るドライバー(図5中のβ)と比較して、軸方向中央部の曲げ剛性を若干高く形成している。
【0070】
本実施例に係るフェアウェイウッド(3W,5W,7W)のクラブヘッドは、β系チタン合金(Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al)からなる鍛造のクラウン部材(厚み:0.45mm)と、SUS630からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成される。このように、クラウン部材を軽量化することにより、クラブヘッドの低重心化を図ることができる。
【0071】
上記フェアウェイウッドの仕様は、表3,表4に示される通りである。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
図6は、本実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるユーティリティゴルフクラブを示す図である。
【0075】
図6を参照して、ユーティリティゴルフクラブ200は、金属製外殻構造(中空構造)を有するウッド系のユーティリティゴルフクラブであって、従来のゴルフクラブセットにおけるロングアイアン(3I,4I)に代えて用いられるものである。ユーティリティゴルフクラブ200は、図6に示すように、フェース部210と、バック部220と、ヒール部230と、トウ部240と、ソール部250と、クラウン部(図6においては図示せず)とを含んで構成される。
【0076】
なお、本願明細書では、従来のゴルフクラブセットにおける3番アイアン、4番アイアンに相当するユーティリティゴルフクラブを、それぞれ、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)、4番のユーティリティゴルフクラブ(4W−UTY)と称する。
【0077】
本実施例に係るユーティリティゴルフクラブ200(3W−UTY,4W−UTY)のクラブヘッドは、たとえばSUS630からなる鍛造のフェース部材と、SUS630からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成される。
【0078】
上記ユーティリティゴルフクラブの仕様は、表5,表6に示される通りである。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
ところで、上述した表1および表3に示すように、本実施例においては、ドライバー(1W)のロフト角は9〜11°であり、3番ウッド(3W)のロフト角は17°である。すなわち、3番ウッドとドライバーとのロフト角の差は、6〜8°である。
【0082】
他方、表5に示すように、3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)は21°であり、4番のユーティリティゴルフクラブ(4W−UTY)は24°である。すなわち、ユーティリティゴルフクラブ200のロフト角の最小値(21°)と3番ウッドのロフト角(17°)との差は4°であり、ユーティリティゴルフクラブ200のロフト角の最小値(24°)と3番ウッドのロフト角(17°)との差は7°である。
【0083】
このように、本実施例においては、3番ウッドとドライバーとのロフト角の差(6〜8°)は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と3番ウッドのロフト角との差(4°)よりも大きく形成されている。また、ドライバーのロフト角が9°の場合には、さらに、3番ウッドとドライバーとのロフト角の差(8°)は、ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値と3番ウッドのロフト角との差(7°)よりも大きく形成されている。
【0084】
図7,図8は、本実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるアイアン型ゴルフクラブを示す図である。なお、図8は、図7に示されるアイアン型ゴルフクラブの分解斜視図である。
【0085】
図7,図8を参照して、アイアンゴルフクラブ300は、本実施例に係るゴルフクラブセットにおけるミドルアイアン(5I,6I,7I)、ショートアイアン(8I,9I)およびウェッジ(PW,FW,SW)を構成するものであって、フェース部310と、バック部320と、ヒール部330と、トウ部340と、ソール部350とを含んで構成される。
【0086】
本実施例に係るアイアンゴルフクラブ300(5I〜SW)のクラブヘッドは、5I〜PWについては、β系チタン合金(Ti−15Mo−5Zr−3Al)からなる鍛造のフェース部材(厚み:2.2mm)と、SUS630からなる精密鋳造の本体部材とを接合することにより形成され、FWおよびSWについては、SUS630からなる精密鋳造の本体部材により構成される。
【0087】
上記アイアンゴルフクラブの仕様は、表7,表8に示される通りである。
ここで、表7における「ソール角」について、図21を用いて説明する。なお、表7における「ロフト角」および「ライ角」については、表1,表3および表5の場合と同様である。
【0088】
図21に示すように、ソール角θ4とは、フェース部21と、バック部22と、ソール部25とを含むゴルフクラブ20を所定の角度でアドレスした際のリーディングエッジ側のソール面と水平面とのなす角度を意味する。
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
図9は、上述した各ゴルフクラブを構成するシャフトの曲げ剛性の分布(EI分布)を示した図である。図9の例では、ゴルフクラブシャフトの曲げ剛性は、クラブヘッド側からグリップ側に向かって大きくなる。
【0092】
図9を参照して、各シャフトの軸方向中央付近(たとえば図9中における横軸:500mmの位置)に注目すると、ドライバーを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のA)と、フェアウェイウッドを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のB)とは、略一致し、アイアンゴルフクラブを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のD)は、それよりも高い領域にある。そして、ユーティリティゴルフクラブを構成するシャフトの曲げ剛性(図9中のC)は、ウッドゴルフクラブ(上記A,B)とアイアンゴルフクラブ(上記D)との中間にある。このように、本実施例では、ユーティリティゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性は、シャフトの軸方向中心の領域において、アイアンゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性よりも低くなるように形成されている。
【0093】
以下に、ゴルフクラブシャフトの曲げ剛性分布の測定方法について説明する。
曲げ剛性値は、3点曲げ試験による変位−荷重の傾きから以下の計算式により求められる。
EI=(W/δ)×L3/48
EI:曲げ剛性値、W:荷重、δ:荷重点のたわみ量(変位)、L:スパン(支点間距離)
本願発明者らが行なった3点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0094】
支点は、R10(半径10mm)のものを、その支点間の距離:スパンLを200mmに設定し、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、支点間の中央部で負荷するように設定する。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:10kgf(98N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、荷重点の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0095】
一方、4点曲げ試験による曲げ剛性値の計測は、外径の割に肉厚が薄い場合(特に手元部)に有効である。4点曲げ試験の場合は、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W/δ)×(a/48)×(3L2−4a2)
EI:曲げ剛性値、W:荷重(但し、荷重点は2箇所で、各々の荷重はW/2)、L:スパン(支点間距離)、δ:スパンの中央部(支点間中央部)のたわみ量(変位)、a:片側の支点から隣り合う荷重点までの距離、(L−a)/2:2ヶ所の荷重点間の距離
本願発明者らが行なった4点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0096】
支点は、R75(半径75mm)のものを、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、その支点間の距離:スパンLを300mmに設定し、2ヶ所の荷重点間の距離を130mmに、すなわち、片側の支点から隣り合う荷重点までの距離:aを85mmに設定した。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:15kgf(147N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、2ヶ所の荷重点の中央部の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0097】
また、曲げ剛性値を測定したい位置に、一方向の歪みゲージをゴルフクラブシャフトの長手方向に貼付し、該シャフトのグリップ部を固定し、該シャフトのヘッド側に荷重を負荷する際の歪み変化εを計測することにより、曲げ剛性値EIを算出する方法もある。この場合、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W×L)×(d/2)/ε
EI:曲げ剛性値、W:荷重、L:歪み計測位置から荷重点までの距離、d:歪み測定位置の外径、ε:歪み量
本願発明者らが行なった歪みゲージを用いた時の試験での諸条件を次に示す。
【0098】
まず、曲げ剛性値を計測したい位置に歪みゲージを貼付する。次に、該シャフトのグリップ側の50mmを、円筒用チャック(三つ爪チャック)で、歪みゲージが上面になるように固定する。荷重点は、歪みゲージの位置から該シャフトのヘッド側L:700mmの位置に負荷する。負荷方法は、W:1kgf(9.8N)の錘を吊り下げる。その錘を吊り下げる前後の歪みゲージの出力される値を歪み量εとして用いる。なお、歪み測定位置の外径dは、別途計測される。
【0099】
次に、本実施例に係るゴルフクラブセットによる効果について説明する。本願発明者は、本実施例に係るゴルフクラブセットを開発するに際し、体力面および技術面においてそれぞれ事情の異なるサンプルとして、一般アマチュアゴルファー、女子プロゴルファーおよび男子プロゴルファーの試打者による実験を行なっている。
【0100】
図10,図11は、それぞれ、一般アマチュアゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフである。なお、図10に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、46.6m/sであり、図11に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、42.7m/sである。
【0101】
なお、図10,図11および後述する図12〜図17において、棒グラフは、打球の最高到達高さ(m)を示し、折れ線グラフは、その打球のキャリー(打球地点から落下地点までの距離)を示している。なお、図10〜図17において、キャリーに関しては、ヤード表示とメートル表示とを併記(括弧内がメートル表示)している。
【0102】
図10,図11を参照して、双方の一般アマチュアゴルファーに共通していることは、比較的長い距離に対応する3W,3I,4Iによる打球の最高到達高さ(弾道高さ)が比較的低い(25m以下)ということである。このように、長い距離を打つためのクラブで弾道高さが低いと、その打球のトータル飛距離におけるラン(落下地点から停止地点までの距離)の割合が高くなるため、トータル飛距離がボールの落下地点の状況(地面の傾斜角度、芝面の状況等)の影響を受けやすくなる。
【0103】
図12,図13は、それぞれ、女子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフである。なお、図12に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、39.4m/sであり、図13に係るゴルファーのヘッドスピード(1W)は、38.3m/sである。
【0104】
図12,図13を参照して、女子プロゴルファーにおいても、双方のゴルファーに共通して、比較的長い距離に対応する3W,4Iによる打球の弾道高さが比較的低いという結果が見られた。
【0105】
なお、男子プロゴルファー(図14,図15)の場合、各番手のゴルフクラブによる打球の最高到達高さが略一致しているのに対し、一般のアマチュアゴルファー(図10,図11)や女子プロゴルファー(図12,図13)の場合は、一部のゴルフクラブによる打球の最高到達高さが低くなる原因として、アマチュアゴルファーに関しては、技術的に打点がばらつく、さらには、インパクトのロフト角やブロー角にバラツキが生じる、という要因が考えられ(インパクトのロフト角とは実際のスイング時において、ボールを打撃する(インパクト)直前のロフト角を示す。つまり、シャフトの撓りやゴルフヘッドの慣性特性の影響により、スイング中にゴルフヘッドは様々な傾きを有するため、静止状態でのロフト角とインパクト直前のロフト角が異なる場合があることを表している。ブロー角とは、インパクト時のゴルフヘッドの軌道を表現しており、大きく分けてダウンブローとアッパーブローに大別される。ダウンブローとは、スイング中において、ゴルフヘッドの挙動がインパクト時に水平面に対して上から下に向かう場合を表わし、アッパーブローとはゴルフヘッドの挙動がインパクト時に水平面に対して下から上に向かう場合を表わす。つまり、ブロー角とは上記角度を表している。)、女子プロゴルファーに関しては、相対的にヘッドスピードが若干遅い(40m/s以下)という要因が考えられる。なお、ヘッドスピードと、弾道の最高到達高さおよびキャリーとの関係(3Wの場合)は、図17に示すシミュレーション結果により説明される。図17に示すように、ヘッドスピードが大きくなれば、弾道の最高到達高さおよびキャリーも大きくなる。逆に、ヘッドスピードが小さくなれば、弾道の最高到達高さおよびキャリーも小さくなる。
【0106】
図16は、本実施例に係るゴルフクラブセットを用いて打球した際の打球の各番手の最高到達高さおよびキャリーのシミュレーション結果(条件:1Wでヘッドスピード43m/s)を示すグラフである。
【0107】
図16を参照して、本実施例に係るゴルフクラブを用いて打球した場合には、従来弾道が低くなりがちであった3W,3I,4Iに対応するクラブ(3W,3W−UTY,4W−UTY)においても、高い弾道(最高到達高さ:25m以上)を確保することができている。そして、図16のグラフ上において、折れ線グラフは、ほぼ直線状に形成されている。これは、各々の番手間のキャリーの差が略一定であることを意味している。このように、本実施例に係るゴルフクラブセットによれば、各番手間のキャリーの差を略一定にすることで、プレイ中の番手の選択を容易にし、ゲームメークを行ないやすくすることができる。
【0108】
また、本実施例においては、上述したように、ユーティリティゴルフクラブのシャフトとして、アイアンゴルフクラブのシャフトよりも柔らかい(曲げ剛性が低い)もの(以下、「ウッド用シャフト」と称する)を適用している。このようにすることによる効果を実証するため、本願発明者は、5名の試打者による試験を行なった。
【0109】
上記試験の方法に用いるクラブとしては、表9に示す2つのスペックで、それぞれ、アイアン用のシャフトを備えたクラブと、アイアン用よりも柔らかいウッド用シャフトを備えたクラブとを準備する(すなわち、2×2=4種類のクラブを準備する)。そして、それぞれのスペックごとに、アイアン用シャフトとウッド用シャフトとで試打を行ない、弾道高さおよび飛距離について官能による相対評価を行なう。この評価結果は、表10に示される。
【0110】
【表9】
【0111】
【表10】
【0112】
表10に示される結果から、アイアン用シャフトに対するウッド用シャフトの優位性が明らかになった。この傾向は、特に、ロフト角の小さい3番のユーティリティゴルフクラブ(3W−UTY)において顕著である。
【0113】
上述した実施例に係るゴルフクラブセットの各番手のロフト角を表11に示す。なお、近年は、比較的飛距離の短い番手のクラブのロフト角を立てる傾向にあるが、本実施例においても、4W−UTY〜SWの範囲で、上述した例よりもロフト角を立てるようにしてもよい。表11では、このような変形例を「ストロングロフト角」として示している。
【0114】
【表11】
【0115】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるウッド型ゴルフクラブをトウ部側から見た状態を示す図である。
【図2】図1に示されるウッド型ゴルフクラブを矢印IIの方向から見た状態を示す図である。
【図3】図1に示されるウッド型ゴルフクラブを矢印IIIの方向から見た状態を示す図である。
【図4】図1に示されるウッド型ゴルフクラブを矢印IVの方向から見た状態を示す図である。
【図5】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるドライバーのシャフト曲げ剛性分布を示す図である。
【図6】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるユーティリティゴルフクラブをソール部側から見た状態を示す図である。
【図7】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるアイアン型ゴルフクラブを示す斜視図である。
【図8】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれるアイアン型ゴルフクラブを示す分解斜視図である。
【図9】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットに含まれる複数のゴルフクラブのシャフト曲げ剛性分布を示す図である。
【図10】アマチュアゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その1)である。
【図11】アマチュアゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その2)である。
【図12】女子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その1)である。
【図13】女子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その2)である。
【図14】男子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その1)である。
【図15】男子プロゴルファーが各番手のゴルフクラブで打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーの一例を示すグラフ(その2)である。
【図16】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブセットを構成する各番手のゴルフクラブを用いて打球した際の打球の最高到達高さおよびキャリーのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図17】フェアウェイウッドを用いて打球する際のヘッドスピードと打球の最高到達高さおよびキャリーのシミュレーション結果を示したグラフである。
【図18】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その1)である。
【図19】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その2)である。
【図20】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その3)である。
【図21】ゴルフクラブにおける各種設計値について説明する図(その4)である。
【図22】本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブセットを構成するゴルフクラブを示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10,20 ゴルフクラブ、11,21,110,210,310 フェース部、12,22,120,220,320 バック部、13,130,230,330 ヒール部、14,140,240,340 トウ部、15,25,150,250,350 ソール部、16,160 クラウン部、100 ウッドゴルフクラブ、200 ユーティリティゴルフクラブ、300 アイアンゴルフクラブ、1000 ゴルフクラブセット、WO ウッド型ゴルフクラブ、WO1 ドライバー、WO2 フェアウェイウッド、UTY ユーティリティゴルフクラブ、IR アイアン型ゴルフクラブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットであって、
複数の前記ゴルフクラブは、複数のウッド型ゴルフクラブと、アイアン型ゴルフクラブと、前記ウッド型ゴルフクラブと前記アイアン型ゴルフクラブとの中間的形状を有するユーティリティゴルフクラブとを含み、
前記ユーティリティゴルフクラブは、複数の前記ウッド型ゴルフクラブよりもロフト角が大きく、かつ、前記アイアン型ゴルフクラブよりもロフト角が小さく、
複数の前記ウッド型ゴルフクラブは、該ウッド型ゴルフクラブのうち最も小さい第1のロフト角を有する第1のゴルフクラブと、前記ウッド型ゴルフクラブのうち前記第1のロフト角の次に小さい第2のロフト角を有する第2のゴルフクラブとを含み、
前記第2のロフト角と前記第1のロフト角との差は、前記ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と前記第2のロフト角との差よりも大きい、ゴルフクラブセット。
【請求項2】
前記第2のロフト角と前記第1のロフト角との差は、前記ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値と前記第2のロフト角との差よりも大きい、請求項1に記載のゴルフクラブセット。
【請求項3】
前記ユーティリティゴルフクラブは第1のシャフトを含み、
前記アイアン型ゴルフクラブは第2のシャフトを含み、
前記第1のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性は、前記第2のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性よりも低い、請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブセット。
【請求項1】
複数のゴルフクラブを備えたゴルフクラブセットであって、
複数の前記ゴルフクラブは、複数のウッド型ゴルフクラブと、アイアン型ゴルフクラブと、前記ウッド型ゴルフクラブと前記アイアン型ゴルフクラブとの中間的形状を有するユーティリティゴルフクラブとを含み、
前記ユーティリティゴルフクラブは、複数の前記ウッド型ゴルフクラブよりもロフト角が大きく、かつ、前記アイアン型ゴルフクラブよりもロフト角が小さく、
複数の前記ウッド型ゴルフクラブは、該ウッド型ゴルフクラブのうち最も小さい第1のロフト角を有する第1のゴルフクラブと、前記ウッド型ゴルフクラブのうち前記第1のロフト角の次に小さい第2のロフト角を有する第2のゴルフクラブとを含み、
前記第2のロフト角と前記第1のロフト角との差は、前記ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最小値と前記第2のロフト角との差よりも大きい、ゴルフクラブセット。
【請求項2】
前記第2のロフト角と前記第1のロフト角との差は、前記ユーティリティゴルフクラブのロフト角の最大値と前記第2のロフト角との差よりも大きい、請求項1に記載のゴルフクラブセット。
【請求項3】
前記ユーティリティゴルフクラブは第1のシャフトを含み、
前記アイアン型ゴルフクラブは第2のシャフトを含み、
前記第1のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性は、前記第2のシャフトの軸方向中央部における曲げ剛性よりも低い、請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−22337(P2009−22337A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185515(P2007−185515)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
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