ゴルフクラブヘッドの設計方法
【課題】飛距離の増大を図ると共に、スイートエリアの拡大を図る上で有利なゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブヘッド10のフェース面1のトウ8側からヒール5側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面1の中心点Cの座標を(0,0)とする。重心点Pの座標を(X1,Y1)とし、最大たわみ点Qの座標を(X2,Y2)としたとき、以下の条件を満たすようにする。X1は、0mm以上10mm以下の範囲内であり、Y1は、0mm以上10mm以下の範囲内である。X2は、−10mm以上0mm以下の範囲内であり、Y2は、−10mm以上10mm以下の範囲内である。重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLは5〜15mmであり、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φは0〜70度である。
【解決手段】ゴルフクラブヘッド10のフェース面1のトウ8側からヒール5側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面1の中心点Cの座標を(0,0)とする。重心点Pの座標を(X1,Y1)とし、最大たわみ点Qの座標を(X2,Y2)としたとき、以下の条件を満たすようにする。X1は、0mm以上10mm以下の範囲内であり、Y1は、0mm以上10mm以下の範囲内である。X2は、−10mm以上0mm以下の範囲内であり、Y2は、−10mm以上10mm以下の範囲内である。重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLは5〜15mmであり、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φは0〜70度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェース面上におけるスイートスポットの位置と最高反発点の位置とを適切に配置することで打球の飛距離を向上させるゴルフクラブヘッドが提供されている(特許文献1参照)。
ここでスイートスポットとは、フェース面と直交しヘッド重心を通る直線とフェース面との交点であり、言い換えると重心点である。
また、最高反発点とは、フェース面上の点のうち、反発係数が最大となる点である。
ここで、反発係数は、U.S.G.A(全米ゴルフ協会)のCOR測定方法(Procedure for Measuring the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e,Revision2(February 8,1999))によって測定されるものである。
反発係数の測定は、ゴルフクラブヘッドが静止した状態で行われる。
このゴルフクラブヘッドでは、最高反発点をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面の中心点近傍に配置することで飛距離の増大を図っている。また、スイートスポットをフェース面のヒール寄りに配置することでフェース面のヒール寄りで打撃した場合であっても飛距離をある程度確保するようにしている。
この場合、最高反発点でボールを打撃することによってボールの初速が最高となる。
ここで、ボールの初速が最高となるフェース面の点を最高初速点とすると、最高反発点が最高初速点と一致することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−188366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際にゴルフクラブをスウィングすることによりフェース面でボールを打撃する場合、フェース面の速度分布は一様ではなく、フェース面の速度分布はシャフト長さ依存分とゴルフクラブヘッドのローリング(シャフト回りの回転)依存分とによって決定される。
具体的には、フェース面の速度は、フェース面のヒール側上部からトウ側下部に向けて次第に大きくなる。
このような知見に基づいて従来技術を検討すると次の問題点が判明した。
すなわち、実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面でボールを打撃する場合の最高初速点の位置は、上述したようなフェース面の速度分布の影響を受けることによって、上記最高反発点の位置よりもトウ側寄りかつ下方にずれる。
そのため、従来技術に基づいて最高反発点が配置されたゴルフクラブヘッドでは、飛距離の増大を図る上では必ずしも十分なものとはいえない。
また、ゴルフクラブヘッドにおいてはスイートエリアの拡大、すなわち、フェース面において最高初速点の例えば99%以上の初速が得られる打点の領域の拡大を図ることが重要とされているが、従来技術ではスイートエリアの拡大が図られていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、飛距離の増大を図ると共に、スイートエリアの拡大を図る上で有利なゴルフクラブヘッドの設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のゴルフクラブヘッドの設計方法は、ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドをセットした状態で前記ゴルフクラブヘッドのフェース面のトウ側からヒール側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面の中心点の座標を(0,0)とし、前記ゴルフクラブヘッドの重心位置を前記フェース面に垂直に投影させた重心点の座標を(X1,Y1)とし、前記フェース面の1次振動における最大たわみ点の座標を(X2,Y2)としたとき、X1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、Y1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、X2を、−10mm以上0mm以下の範囲内とし、Y2を、−10mm以上10mm以下の範囲内とし、前記重心点と前記最大たわみ点の離間距離を、5〜15mmの範囲内とし、前記重心点と前記最大たわみ点とを結ぶ直線がX方向となす角度を0〜70度の範囲内とし、前記ゴルフクラブヘッドをシャフトに取着したゴルフクラブをスウィングして前記フェース面でゴルフボールを打撃する場合に、前記ゴルフボールの最高初速が得られる前記フェース面の打点を最高初速点とし、前記最高初速点の座標を(X3,Y3)としたとき、X3を−5mm以上5mm以下の範囲内とし、Y3を−5mm以上5mm以下の範囲内とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フェース面の速度分布を考慮して重心点および最大たわみ点を配置するようにしたので、フェース面の最高初速点の位置をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面の中心点に合致、あるいは、近接させることができ、これにより、飛距離の増大を図る上で有利となる。
また、スイートエリアを拡大することにより、打点がばらついても飛距離が低下することを効果的に抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のゴルフクラブヘッドの設計方法の対象となるゴルフクラブヘッド10を示す正面図である。
【図2】本発明方法を実行するために使用されるコンピュータ30の構成を示すブロック図である。
【図3】コンピュータ30の機能ブロック図である。
【図4】ゴルフクラブヘッド10のヘッド本体4のローリングの説明図である。
【図5】ゴルフクラブヘッド10のフェース面1に設定されたスピード分布を示す説明図である。
【図6】ヘッド本体4のローリング量が最小である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
【図7】ヘッド本体4のローリング量が平均値である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
【図8】ヘッド本体4のローリング量が最大である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
【図9】(A)、(B)はフェース面1の速度分布の影響による最高初速点Rのずれを説明するための模式図である。
【図10】(A)、(B)、(C)はフェース面1の速度分布の影響による最高初速点Rのずれを説明するための模式図である。
【図11】(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図12】(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図13】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図14】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図15】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図16】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図17】重心位置P0と重心点Pとの関係を示すゴルフクラブヘッド10の断面図である。
【図18】フェース面1の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッド10の正面図である。
【図19】フェース面1の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッド10の断面図である。
【図20】フェース面1の中心点Cの定義を説明するゴルフクラブヘッド10の正面図である。
【図21】フェース面1の速度分布と重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとを示す説明図である。
【図22】(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図23】重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLとボール初速Vbとの関係を示す模式図である。
【図24】(A)は第1のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第1のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図25】(A)は第2のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第2のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図26】(A)は第3のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第3のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図27】(A)は第4のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第4のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図28】(A)は第5のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第5のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図29】フェース面1上における打点位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図30】実験例1乃至17の実験結果を示す表である。
【図31】トウ寄り重心ヘッドにおける重心点P、最大たわみ点Q、最高初速点Rの位置関係を示す説明図である。
【図32】ヒール重心ヘッドにおける重心点P、最大たわみ点Q、最高初速点Rの位置関係を示す説明図である。
【図33】トウ寄り重心ヘッドおよびヒール重心ヘッドにおける打点位置と飛距離との関係を示す説明図である。
【図34】多数のゴルファによる打点位置の計測結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の設計方法の対象となるゴルフクラブヘッドについて説明する。
図1に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、金属製の中空構造ヘッド本体4を備えている。
ヘッド本体4の金属材料は、チタン合金やアルミニウム合金などの高強度の低比重金属が好ましく用いられる。
ヘッド本体4は、ゴルフボールを打撃するフェース面1と、フェース面1に連接するクラウン部2及びソール部3とを備えている。
また、クラウン部2には、フェース面1側でかつヒール5寄りの位置にシャフト6に接続するホーゼル7が設けられている。
また、フェース面1を正面から見てヘッド本体4のヒール5と反対側がトウ8である。
【0009】
このようなゴルフクラブヘッドの設計方法の実施の形態について以下に詳述する。
本発明者らは、上記のゴルフクラブヘッド10の有限要素モデルであるゴルフクラブヘッドモデルを用いて有限要素解析を行うと共に、スイングロボットによる実験および検証を行った。
その結果、ゴルフクラブのスイング時におけるフェース面1の速度分布と、ゴルフクラブヘッド10の重心点と、フェース面1の最大たわみ点との位置関係が特定の条件を満たすときに、スイートエリアおよび飛距離の増大を図る上で有利となることを見出した。
なお、本明細書において、重心点とは、ゴルフクラブヘッド10の重心位置をフェース面1に垂直に投影させた点をいう。
また、最大たわみ点とは、フェース面1の1次振動における最大たわみ点をいう。
また、本明細書では、スイートエリアとは、フェース面1でゴルフボールを打撃したときの該ゴルフボールの初速が予め定められた閾値以上となるフェース面1上の領域をいうものとする。
なお、スイートエリアの別の規定として、フェース面1でゴルフボールを打撃したときの該ゴルフボールの飛距離が予め定められた閾値以上となるフェース面1上の領域をいう場合もある。
以下では、単に「スイートエリア」と記載した場合、あるいは、「初速に関するスイートエリア」と記載した場合には前者のスイートエリアを示すものとする。
また、後者のスイートエリアについて言及する場合には、「飛距離に関するスイートエリア」という用語を用いることにする。
以下、フェース面1の速度分布と重心点と最大たわみ点との位置関係が特定の条件を満たすときに、スイートエリアおよび飛距離の増大を図る上で有利となることについて説明する。
【0010】
図2はゴルフクラブヘッド10の有限要素解析を行うためのコンピュータ30の構成を示すブロック図である。
コンピュータ30は、CPU32と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM34、RAM36、ハードディスク装置38、ディスク装置40、キーボード42、マウス44、ディスプレイ46、プリンタ48、入出力インターフェース50などを有している。
ROM34は制御プログラムなどを格納し、RAM36はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置38はゴルフクラブヘッド10の有限要素解析を行う有限要素解析プログラムを格納している。
有限要素解析プログラムとして、有限要素解析を行う従来公知のさまざまな市販の有限要素解析ソフトウェア、例えば、ABAQUS(SIMULIA Americas社の登録商標)などを用いることができる。
ディスク装置40はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード42およびマウス44は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ46はデータを表示出力するものであり、プリンタ48はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ46およびプリンタ48によってデータを出力する。
入出力インターフェース50は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
【0011】
図3はコンピュータ30の機能ブロック図である。
図3に示すように、コンピュータ30は、機能的には、入力手段30A、処理手段30B、出力手段30Cを含んで構成されている。
入力手段30Aは、ゴルフクラブヘッド10を有限要素法によって解析するために必要なデータを入力するものである。
上記データは、有限要素モデルからなるゴルフクラブヘッドモデルを設定すると共に、該設定されたゴルフクラブヘッドモデルを有限要素法によって解析するための有限要素解析用データd1を含む。
処理手段30Bは、有限要素解析用データd1に基づいて、ゴルフクラブヘッドモデルを構築する。
また、処理手段30Bは、第2のデータd2に基づいて、後述するゴルフクラブヘッドモデルにおけるフェース面1の速度分布、重心点、最大たわみ点などをゴルフクラブヘッドモデルを用いて有限要素解析を行うことによって求める。
処理手段30Bは、ハードディスク装置38に格納されている有限要素解析プログラムがRAM36にロードされ、CPU32がそれらプログラムに基づいて動作することで実現される。
出力手段30Cは、処理手段30Bによる計算結果を出力するものである。
【0012】
以下、ゴルフクラブヘッド10の解析について説明する。
まず、処理手段30Bは、入力手段30Aから供給される有限要素解析用データd1に基づいて有限要素モデルで構成されたゴルフクラブヘッドモデルを設定する。
また、処理手段30Bは、ゴルフボールについてもゴルフクラブヘッドモデルと同様に入力手段30Aから供給される有限要素解析用データに基づいて有限要素モデルで構成されたゴルフボールモデルを設定する。
具体的には、ヘッド本体4を複数の有限要素Xijkに、ゴルフボールを複数の有限要素Yijk(i、j、kは整数)に、それぞれ分割する。
ここで有限要素とは、有限要素法による解析を行うための要素であって、梁要素、シェル要素及び固体要素などが例示される。
また、計算に必要な物性値としては、ロフト角、重心深さ、バルジ&ロール半径、FP値(フェースプログレッション)や、慣性モーメント、ヘッド質量などが例示される。これら物性値は有限要素解析用データd1に含まれる。
【0013】
次に、処理手段30Bは、上記で設定したゴルフクラブヘッドモデルを用いて、フェース面1の速度分布を計算によって求め、フェース面1の速度分布をフェース面1に設定する。
ここで、フェース面1の速度分布とは、プレイヤーがヘッド本体4を有するゴルフクラブでゴルフボールを打撃したときに、打撃直前におけるフェース面1の速度分布を意味するものである。
フェース面1の速度分布は、シャフト6の長さに依存する成分と、ヘッド本体4のローリング(シャフト6の回りの回転)による成分とから主に決定される。
図4に示すように、前者のシャフト6の長さに依存する成分は、シャフト6の中心軸の延長線Lの垂線が、ヘッド本体4のソール部3に接する点Aにおいて最大となる。
また、後者のヘッド本体4のローリングに依存する成分は、シャフト6の中心軸の延長線Lから最も離れた点B(ヘッド本体4のトウ8側端部)において最大となる。
従って、フェース速度は、図5に示すように、フェース面1のヒール5側の上部aからトウ8側の下部gへ向けて次第に大きくなるように分布する。なお、図5においては、速度0.5m/s毎に等高線vを示している。
ここでスピード分布の等高線vとは、フェース速度の分布を示すために、フェース面1上において互いに等しいフェーススピードの点を結んだ線である。
なお、有限要素解析に際しては、シャフト6の長さと、ヘッド本体4のローリングの大きさとを、平均的なゴルフクラブにおけるシャフト6の長さと、平均的なゴルフクラブにおけるヘッド本体4のローリングの大きさに設定した。
【0014】
次に、上述のように有限要素解析によって得られたフェース面1の速度分布の計算結果の妥当性を確認するために、多数のゴルファのスイングデータを測定した。
より具体的には、多数のゴルファがゴルフクラブを実際にスウィングした際のフェース面のフェース速度を測定してフェーススピード分布を得た。
なお、フェース速度の測定は、例えば、特開2005−34619号公報(ゴルフクラブヘッドの挙動計測装置)に示されているような従来公知の計測装置を用いて行った。
図6はヘッド本体4のローリング量が最小である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
図7はヘッド本体4のローリング量が平均値である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
図8はヘッド本体4のローリング量が最大である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
図6乃至図8において横軸はX方向の座標値X(mm)を、縦軸はY方向の座標値Y(mm)を示している。また、フェース面1の中心点Cの座標を(0,0)とする。
各ハッチングはフェース面1の速度(フェーススピード)Vf(m/sec)を示しており、フェース面1の速度は、フェース面1のヒール5側の上部からトウ8側の下部へ向けて次第に大きくなるように分布している。
なお、ハッチングが施された矩形の領域は、速度分布を測定する対象となるインパクトエリアを示す。
本実施の形態では、有限要素解析によって得られたフェース面1の速度分布は、図7に示すヘッド本体4のローリング量が平均値である場合におけるフェース面1の速度分布とほぼ同じ結果となり、有限要素解析によって算出されたフェース面1の速度分布の数値の妥当性を確認することができた。
【0015】
次に、フェース面1の速度分布を考慮しない場合における重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点R(ボールの初速が最高となるフェース面1の点)との関係について説明する。
図9は、フェース面1の速度分布を考慮しない場合における重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置関係を示す模式図である。
フェース面1の打点におけるボール初速は、重心点Pの位置が寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置が寄与する成分とを足し合わせた値で決定されるものと考えられる。
図中、符号p1、p2は重心点Pの位置が寄与する成分を示す分布を示す等高線を示しており、寄与する成分の大小関係はp1>p2となる。
また、符号q1、q2は最大たわみ点Qの位置が寄与する成分を示す分布を示す等高線を示しており、寄与する成分の大小関係はq1>q2となる。
したがって、図9に示すように、最高初速点Rは、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶほぼ直線LA上に位置することになる。ただし、ヘッド形状やフェース面のバルジ、ロール等によって最高初速点Rは直線LAから多少ずれる場合もある。
すなわち、フェース面1の速度分布を考慮しない場合は、最高初速点Rがフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接するように、重心点Pと最大たわみ点Qとを配置すれば、スイートエリアおよび飛距離の増大を図る上で有利となることになる。
【0016】
ゴルファがゴルフクラブをスウィングしてゴルフクラブヘッド10のフェース面1でゴルフボールを打撃する場合には、前述したようにフェース面1の速度分布が発生する。
最高初速点Rは、このようなフェーススピードの影響を受けることになるため、図9に示す位置からずれることになる。
図10(A)に示すように、フェース面1の速度分布を示す等高線v(図5参照)に対して直交し、言い換えると、フェーススピードの変化量が最大となる点を結び、かつ、最高初速点Rを通る直線L0を想定する。
すると、図10(B)に示すように、最高初速点Rは、フェース面1の速度分布の影響を受けることで、直線LAと直線L0とが交差する角度をθとしたとき、ほぼθの角度に沿った方向に移動することになる(例えば約3〜5mm)。なお、角度θは、たわみ量分布やフェース面の速度分布によって変わる。具体的には、最高反発点Rはトウ5側寄りでかつ下方向に移動する。
さらに、図10(C)に示すように、最高初速点Rは、フェース面1が曲面を呈している(フェース面1にRが付与されている)影響を受けることで、さらに下方向に移動することになる(例えば総移動距離約6〜10mm)。
図10(C)に示すように、最高初速点Rがさらに下方向に移動する理由は次のとおりであある。すなわち、通常のウッドヘッドのフェース面1には、トウ8とヒール5とを結ぶ方向の曲面(バルジ)と、クラウン4とヒール3とを結ぶ方向の曲面(ロール)とが形成されている。
フェース面1にこのような曲面が形成されていることでフェース面1のロフト角が変化する。その影響で、最高初速点Rは、下方向に移動する。下方向の移動量は、フェース面1の曲面の違いだけでなく、たわみ量分布やフェース面の速度分布によっても変化する。
したがって、実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置は、上述したようにフェース面1の速度分布の影響を受けることによって、図10(A)に示した最高反発点Rの位置よりもトウ側寄りでかつ下方にずれることになる。
すなわち、実際の最高初速点Rは、フェース面1の速度分布の影響を受けることにより、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LA上から外れた箇所に位置することがわかった。
本発明は、このような知見に基づいて、実際の最高初速点Rがゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接するように、重心点Pと最大たわみ点Qとを配置することで、飛距離の増大を図ると共に、スイートエリアの拡大を図り、ひいては、打点がばらついても飛距離低下を効果的に抑制できるようにしたものである。
【0017】
図11は第1の実施の形態における重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置関係を示すゴルフクラブヘッド10の正面図である。
本実施の形態では、ライ角通りにゴルフクラブヘッド10をセットした状態でゴルフクラブヘッド10のフェース面1のトウ8側からヒール5側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面1の中心点Cの座標を(0,0)とする。
【0018】
なお、フェース面1の中心点Cは、フェース面1の幾何学的中心であり、例えば、以下のようにして規定されるものである。なお、フェース面1の中心点Cの規定方法として以下に説明するような従来公知のさまざまな規定方法が採用可能である。
【0019】
まず、フェース面1と他のヘッド本体4の部分との境目が明確である場合、言い換えると、フェース面1の周縁が稜線によって特定される場合のフェース面1の中心点Cの規定方法を説明する。この場合はフェース面1が明瞭に定義されることになる。
図13乃至図16はフェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
(1)まず、図13に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上にゴルフクラブヘッド10(ヘッド本体4)を載置する。このときのゴルフクラブヘッド10の状態を基準状態とする。なお、ライ角およびフック角の設定値は、例えば製品カタログに記載された値である。
【0020】
(2)次にクラウン部2及びソール部3を結ぶ方向における仮中心点c0を求める。
すなわち、図13に示すように、トウ8及びヒール5を結ぶ地面と平行な線(以下水平線という)の概略中心点と交差する垂線f0を引く。
この垂線f0とフェース面1の上縁とが交差するa0点と、垂線f0とフェース面1の下縁とが交差するb0点の中点を仮中心点c0とする。
【0021】
(3)次に図14に示すように仮中心点c0を通る水平線g0を引く。
(4)次に図15に示すように水平線g0とフェース面1のトウ8側の縁とが交差するd0点と、水平線g0とフェース面1のヒール5側の縁とが交差するe0点の中点を仮中心点c1とする。
(5)次に図16に示すように仮中心点c1を通る垂線f1を引き、この垂線f1とフェース面1の上縁とが交差するa1点と、垂線f1とフェース面1の下縁とが交差するb1点の中点を仮中心点c2とする。
ここで、仮中心点c1とc2とが合致したならばその点をフェース面1の中心点Cとして規定する。
仮中心点c1とc2が合致しなければ、(2)乃至(5)の手順を繰り返す。
なお、フェース面1は曲面を呈しているため、水平線g0の中点、垂線f0,f1の中点を求める場合の水平線g0の長さ、垂線f0,f1の長さはフェース面1の曲面に沿った長さを用いるものとする。
【0022】
次に、フェース面1の周縁と他のヘッド本体4の部分との間が曲面で接続されておりフェース面1が明瞭に定義できない場合のフェース面1の中心点Cの規定方法を説明する。
【0023】
図17に示すように、ゴルフクラブヘッド10は中空であり、符号P0はゴルフクラブヘッド10の重心位置を示し、符号Lpは重心位置P0と重心点Pとを結ぶ直線であり、言い換えると、直線Lpは重心位置P0を通るフェース面1の垂線である。
ここで、図18に示すように、重心位置P0と重心点Pとを結ぶ直線Lpを含む多数の平面H1、H2、H3、…、Hnを考える。
ゴルフクラブヘッド10を各平面H1、H2、H3、…、Hnに沿って破断したときの断面において、図19に示されるように、ゴルフクラブヘッド10の外面の曲率半径r0を測定する。
曲率半径r0の測定に際して、フェース面1上のフェースライン、パンチマーク等が無いもとして扱う。
曲率半径r0は、フェース面1の中心点Cから外方向(図19における上方向、下方向)に向かって連続的に測定される。
そして、測定において曲率半径r0が最初に所定の値以下となる部分をフェース面1の周縁を表わす輪郭線Iとして定義する。所定の値は例えば200mmである。
多数の平面H1、H2、H3、…、Hnに基づいて決定された輪郭線Iによって囲まれた領域が、図18、図19に示すように、フェース面1として定義される。
次に、図20に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上にゴルフクラブヘッド10(ヘッド本体4)を載置する。
直線LTは、フェース面1のトウ側点PTを通過して鉛直方向に延在する。
直線LHは、フェース面1のヒール側点PHを通過して鉛直方向に延在する。
直線LCは、直線LTおよび直線LHと平行である。直線LCと直線LTとの距離は、直線LCと直線LHとの距離と等しい。
符号Puは、フェース面1の上側点を示し、符号Pdはフェース面1の下側点である。上側点Puおよび下側点Pdは、いずれも直線LCと輪郭線Iとの交点である。
中心点Cは、上側点Puと下側点Pdとを結ぶ線分の中点で定義される。
【0024】
図11に戻って説明を続ける。
本実施の形態では、重心点Pの座標を(X1,Y1)とし、最大たわみ点Qの座標を(X2,Y2)としたとき、以下の条件を満たすようにゴルフクラブヘッド10を設計する。
X1は、0mm以上10mm以下の範囲内であり、Y1は、0mm以上10mm以下の範囲内とする。
X2は、−10mm以上0mm以下の範囲内であり、Y2は、−10mm以上10mm以下の範囲内とする。
なお、図11は、X2が−10mm以上0mm以下の範囲内で、Y2が0mm以上10mm以下の範囲内である場合について示し、図12は、X2が−10mm以上0mm以下の範囲内で、Y2が−10mm以上0mm以下の範囲内である場合を示している。以下では図11について説明するが、図12の場合も上記の重心点Pおよび最大たわみ点Qの範囲が適用される。
図11において、符号A1は重心点Pの座標(X1,Y1)の範囲を示し、符号A2は最大たわみ点Qの座標(X2,Y2)の範囲を示す。
重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とする。
重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とする。
なお、本明細書では、角度φは、X軸とY軸とがなす座標面において重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線の傾きが正となる範囲の角度φの値を正の値とし、前記の傾きが負となる範囲の角度φの値を負の値とする。
このような条件を満たすように重心点Pと最大たわみ点Qとを配置することによって、ゴルファが実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させることができ、これにより、飛距離の増大を図る上で有利となる。さらには、スイートエリアを拡大することができ、したがって、打点がばらついても飛距離の低下を効果的に抑制する上で有利となる。
【0025】
ここで、フェース面1の中心点Cがゴルファの打点分布の中心付近となることについて説明しておく。
図34は多数のゴルファによる打点位置の計測結果の一例を示す説明図である。
具体的には、1つのゴルフクラブヘッドについてゴルファ743名が合計3757スウィングした場合の打点を計測し、その打点位置をフェース面1上に◆の記号でプロットしている。
X軸、Y軸上の数値はフェース面1の中心点Cを原点(0,0)とした場合の打点位置を示す座標値であり単位はmmである。
打点位置の平均値は図中□の記号で示しており、次のとおりであった。
X座標値:1.8mm(中心点Cよりもヒール5方向に1.8mm)
Y座標値:3.9mm(中心点Cよりもクラウン2方向に3.9mm)
すなわち、ゴルファの打点分布の中心は中心点C近傍に位置している。
したがって、ゴルファが実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置をフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させれば、大多数のゴルファにとって、飛距離の増大を図る上で有利となり、スイートエリアを拡大することができ、したがって、打点がばらついても飛距離の低下を効果的に抑制する上で有利となる。
【0026】
図21はフェース面1の速度分布と重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとを示す説明図である。
図21において横軸はX方向の座標値X(mm)を、縦軸はY方向の座標値Y(mm)を示している。
各ハッチングはフェース面1の速度(フェーススピード)Vf(m/sec)を示しており、フェース面1の速度は、図5に示すように、フェース面1のヒール5側の上部からトウ8側の下部へ向けて次第に大きくなるように分布している。
【0027】
図22(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
ある打点におけるボール初速Vbは、フェーススピードVfと、重心点Pの位置と、最大たわみ点Qの位置との3つの要素が寄与して決定されるものと考えられる。
すなわち、打点におけるフェーススピードVfが高いほどボール初速Vbは高速となる。
また、打点に重心点Pが近いほどボール初速Vbは高速となる。
また、打点に最大たわみ点Qが近いほどボール初速Vbは高速となる。
すなわち、図22(B)に示すように、ある打点におけるボール初速Vbは、フェーススピードVfが寄与する成分と、重心点Pの位置が寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置が寄与する成分とを足し合わせた値で決定されるものと考えられる。
なお、図22(A)において破線Apは重心点Pの位置が寄与する成分の等高線を示し、破線Aqは最大たわみ点Qの位置が寄与する成分の等高線を示し、破線Avbはボール初速Vbの等高線を示す。
そして、それら足し合わせた値が最大となる位置、言い換えると、ゴルフボールの最高初速が得られるフェース面1の打点が最高初速点Rとなる。
本実施の形態では、上述の条件を満たしたゴルフクラブヘッド10における最高初速点Rの座標を(X3,Y3)としたとき、X3が−5mm以上5mm以下の範囲内であり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内であり、したがって、最高初速点Rの位置をフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させることができる。
【0028】
また、最高初速点Rでボールを打撃したときのボール初速Vbを100%とし、ボール初速Vbの例えば99%以上となるフェース面1上の領域をスイートエリアとしたとき、スイートエリアは最高初速点Rを中心として分布する。具体的には、スイートエリアは最高初速点Rを中心としてボール初速Vbの等高線Avb(図22(A))に沿って分布することになる。
したがって、最高初速点Rの位置をフェース面1の中心点Cにほぼ合致、あるいは、近接させることにより、スイートエリアの中心がフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接することになる。
そのため、最も打点分布が高い位置であるフェース面1の中心点Cがスイートエリアの中心に合致あるいは近接するため、飛距離の増大を図る上で有利となる。
【0029】
また、ボール初速Vbは、最大たわみ点Qでのたわみ量が大きいほど増大することが周知の事実である。したがって、フェース面1のうち、たわみ量が大きい領域をより大きな面積で確保すると、ボールの飛距離の増大を図る上で有利となる。
このような観点から、最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面の面積をたわみ面積とした場合、たわみ面積が150mm2以上となるようにすると、ボールの飛距離の増大を図る上でより一層有利となる。
また、最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面の面積をたわみ面積とした場合、たわみ面積がフェース面積に占める割合が4%以上となるようにすると、ボールの飛距離の増大を図る上でより一層有利となる。
【0030】
フェース面1のたわみ量、たわみ面積の計測方法として従来公知のさまざまな計測方法が使用可能である。
例えば、特開2004−138584号公報(ゴルフクラブヘッドの打撃面の振動分布測定方法およびゴルフクラブヘッドの評価方法)に記載されている方法を用いることができる。
すなわち、この方法では、ゴルフクラブヘッドのフェース面(打撃面)をその垂直方向に加振させて打撃面を振動させ、フェース面と対向する位置に配したレーザ振動計によりフェース面における振動分布(振幅分布)を測定する。
そして、その振動分布(振幅分布)の測定結果に基づいて、各点のたわみ量を算出し、最大たわみ点でのたわみ量を100%とし、たわみ量が95%以上となるフェース面の面積を算出すればよい。
より具体的には、フェース面1の中心点Cを中心にした四角形の測定エリアを設定すると共に、この測定エリアに複数の測定点を設定し、各測定点について振幅分布を測定する。
その後、スプライン補間を行い、最大たわみ点を算出し、最大たわみ点でのたわみ量を100%とし、たわみ量が95%以上となるフェース面1の面積を算出すればよい。
前記の測定エリアとして、例えば、フェース面1の中心点Cを中心にトウ方向およびヒール方向にそれぞれ28mmずつ、フェース面1の中心点Cを中心にクラウン方向およびソール方向にそれぞれ12mmずつの四角のエリアを設定する。
すなわち、本例では、測定エリアは、トウ−ヒール方向に56mm、クラウン−ソール方向に24mmの四角形状となる。
また、前記の測定点として、例えば、トウ−ヒール方向およびクラウン−ソール方向において約0.8mmピッチで各測定点を設定する。
すなわち、本例では、測定エリアにおける全測定点は2048点となる。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、フェース面1の速度分布を考慮して重心点Pおよび最大たわみ点Qをフェース面1に配置する。したがって、ゴルファが実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させることができるので、飛距離の増大を図る上で有利となる。
特に、前述した従来技術のようにフェース面1の速度分布を考慮することなく、ゴルフクラブヘッドが静止した状態で測定された最高反発点をフェース面の中心点近傍に配置する場合に比較して、本発明は、フェース面1の速度分布を考慮して重心点Pおよび最大たわみ点Qを配置している点が大きく異なるものである。
このようにすることで、本発明では、最高初速点Rの位置をより的確にフェース面1の中心点Cに合致あるいは近接させる上で有利となり、したがって、従来技術に比較して飛距離の増大を図る上で有利となる。
また、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とし、かつ、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内としたので、図22(B)に示すように、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となる。以下その理由について説明する。
なお、以下では、最大初速点Rに対応する反発係数が0.83、最大初速点Rにおけるボール初速の99%に対応する反発係数が0.81であるものとして説明する。
【0032】
まず、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とすることがスイートエリアの面積を拡大する上で有利となる理由について説明する。
図23は重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLとボール初速Vbとの関係を示す模式図である。
離間距離ΔLが5mm未満であると、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山(ピーク)と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが近いか、あるいは、合致することになるため、最大初速点Rは高くなる反面、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積は狭いものとなる。
離間距離ΔLが15mm以上であると、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが離れすぎるため、最大初速点Rは低下し反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積はほとんどなくなってしまう。
離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であると、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが適正な距離で離間することになるため、最大初速点Rの大きさを確保しつつ、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も十分に確保することができる。
【0033】
次に、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とすることがスイートエリアの面積を拡大する上で有利となる理由について説明する。
図6乃至図8から明らかなように、ゴルファがゴルフクラブを実際にスイングした場合、フェース面1の速度分布を示す等高線に対して直交する直線とX軸とがなす角度αは次のとおりである。
図6に示すローリング量が最小の場合:角度αは65度
図7に示すローリング量が平均値の場合:角度αは36度
図8に示すローリング量が最大の場合:角度αは7度
したがって、ゴルファがゴルフクラブを実際にスイングした場合、上記角度αは7度以上65度の範囲内となる。
そのため、図22(B)に示すように、最大たわみ点Qをフェース速度のより速い位置に配置すると、言い換えると、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを上記角度αの範囲内に設定すると、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で有利となる。
その結果、ボール初速Vbの山の高さを高くすることができて、高初速エリアをより広く確保する上で有利となり、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となるのである。
なお、本実施の形態では、ゴルファがゴルフクラブを実際にスイングした場合の角度αのばらつきを考慮して、角度φを0〜70度の範囲内としている。
【0034】
次に、実験例を参照して、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とし、かつ、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とすることがスイートエリアの面積を拡大する上で有利となることを具体的に説明する。
離間距離ΔLの範囲および角度φの範囲を以下のように設定した5種類のゴルフクラブヘッド10について説明する。
以下では、5種類のゴルフクラブヘッド10をそれぞれ第1乃至第5のゴルフクラブヘッドとして説明する。
第1乃至第5のゴルフクラブヘッドは、離間距離ΔLの範囲および角度φの範囲を以下のように設定したものである。
(第1のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5〜15mmの範囲内、角度φ:0〜70度の範囲内
(第2のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5mm未満、角度φ:0〜70度の範囲内
(第3のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:15mmを超過、角度φ:0〜70度の範囲内
(第4のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5〜15mmの範囲内、角度φ:70度を超過
(第5のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5〜15mmの範囲内、角度φ:0度未満
図24乃至図28はそれぞれ第1のゴルフクラブヘッド乃至5のそれぞれに対応する図であり、(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【0035】
(第1のゴルフクラブヘッド)
図24に示すように、角度φが0〜70度の範囲内であることから最大たわみ点Qがフェース速度のより速い位置に配置される。したがって、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で有利となっている。
また、離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であるため、ボール初速Vbの山の高さを確保しつつ、反発係数が0.81以上となる高初速エリア(等高線Avbで囲まれた領域)をより広く確保する上で有利となり、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となっている。
【0036】
(第2のゴルフクラブヘッド)
図25に示すように、角度φが0〜70度の範囲内であっても、離間距離ΔLが5mm未満であるため、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山(ピーク)と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが近いか、あるいは、合致する。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83に相当して高くなる反面、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積は狭いものとなる。
【0037】
(第3のゴルフクラブヘッド)
図26に示すように、角度φが0〜70度の範囲内であっても、離間距離ΔLが15mmを超過しているため、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山(ピーク)と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが離間している。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83を下回り、また、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も狭いものとなる。
【0038】
(第4のゴルフクラブヘッド)
図27に示すように、離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であっても、角度φが70度を超過しているため、第1のゴルフクラブヘッドに比較して、最大たわみ点Qがフェース速度のより遅い位置に配置される。したがって、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で不利となっている。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83を下回り、また、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も狭いものとなる。
【0039】
(第5のゴルフクラブヘッド)
図28に示すように、離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であっても、角度φが0度未満であるため、第1のゴルフクラブヘッドに比較して、最大たわみ点Qがフェース速度のより遅い位置に配置される。したがって、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で不利となっている。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83を下回り、また、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も狭いものとなる。
【0040】
以上説明した第1のゴルフクラブヘッド乃至5の結果により、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とし、かつ、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とすることによって、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となることが明らかである。
このようにスイートエリアの面積を拡大することによって、打点がばらついても飛距離の低下を効果的に抑制する上で有利となる。
【0041】
(実験例)
次に実験例について説明する。
実験条件は次の通りである。
ゴルフクラブヘッド10を有するゴルフクラブを従来公知のスウィングロボットを用いてスウィングさせてゴルフボールを打撃した。
図29に示すように、フェース面1上における打点位置はフェース面1の中心点Cを中心にしてX方向に7mmピッチで9打点、中心点Cを中心にしてY方向に5打点、合計41打点とした。
なお、図中、格子の交点は各打点を示し、各打点の近傍の数字は各打点を識別するために付した打点番号を示す。
ヘッドスピードは40m/sとした。
中心点Cでゴルフボールを打撃した場合のサイドスピンは±200rpm、打ち出し角は13.5度±0.5度とした。
ゴルフボールは、一般的な3ピースボールとした。
41個の打点についてそれぞれ3回ずつ打撃してボール初速と飛距離とを測定して平均値を求め、各打点についてボール初速と飛距離とを求めた。
フェース面1の速度分布を示す等高線に対して直交する直線とX軸とがなす角度αは65度とした、この角度αは、図6に示したローリング量が最小のゴルファの場合と同様の角度である。
【0042】
図30は実験例1乃至22の実験結果を示す表である。
評価項目は以下の5つである。
(1)ボール初速に関するスイートエリアの面積SS1
まず、41打点のボール初速データから、データ補間(スプライン補間)を行い、最高初速点を求めた。
次いで、41打点のボール初速データから、データ補間(スプライン補間)を行い、前記の最高初速点を100%とした場合に、99%以上のボール初速となるフェース面1の領域をボール初速に関するスイートエリアとして求めた。
図30においては、ボール初速に関するスイートエリアの面積SS1(mm2)を記載すると共に、面積の大小関係をわかりやすく表示するため、カッコ内に面積SS1を指数で表示した。この指数は、実験例1の面積SS1を100とした場合における残りの実験例2〜22の面積SS1の比率を百分率で表示したものである。
【0043】
(2)飛距離に関するスイートエリアの面積SS2
まず、41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、最高飛距離点を求めた。
次いで、41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、前記の最高飛距離点を100%とした場合に、99%以上の飛距離となるフェース面1の領域を飛距離に関するスイートエリアとして求めた。
図30においては、飛距離に関するスイートエリアの面積SS2(mm2)を記載すると共に、面積の大小関係をわかりやすく表示するため、カッコ内に面積SS2を指数で表示した。この指数は、実験例1の面積SS2を100とした場合における残りの実験例2〜22の面積SS2の比率を百分率で表示したものである。
【0044】
(3)中心点Cから上方15mmでの飛距離指数
41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、中心点Cから上方に(Y方向に)15mm離間した打点における飛距離を求めた。
図30においては、前記の最高飛距離に対する上方15mmでの飛距離の比率を百分率で表示した。
【0045】
(4)中心点Cからヒール側20mmでの飛距離指数
41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、中心点Cからヒール5側に(X方向に)20mm離間した打点における飛距離を求めた。
図30においては、前記の最高飛距離に対するヒール側20mmでの飛距離の比率を百分率で表示した。
【0046】
(5)中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数
41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、中心点Cからトウ8側に(X方向に)20mm離間した打点における飛距離を求めた。
図30においては、前記の最高飛距離に対するトウ側20mmでの飛距離の比率を百分率で表示した。
なお、図30において中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数の下方のカッコ内の数値は、上述した3つの飛距離指数(中心点Cから上方15mmでの飛距離指数、中心点Cからヒール側20mmでの飛距離指数、中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数)の合計からなる飛距離指数合計値を示す。
【0047】
各実験例で異ならせた数値は以下の通りである。
(1)たわみ面積(mm2)
最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面1の面積。
実験例1〜9、11〜22では、たわみ面積を153mm2とし本発明で規定する150mm2を上回る値とした。
実験例10では、たわみ面積を148mm2とし本発明で規定する150mm2を下回る値とした。
【0048】
(2)たわみ面積比率(%)
最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面1の面積をたわみ面積とした場合、たわみ面積がフェース面積に占める比率。
実験例1〜9、11〜22では、たわみ率を4.0%として本発明で規定する4%以上となる値とした。
実験例10では、たわみ率を3.9%とし、本発明で規定する4%を下回る値とした。
【0049】
(3)重心点Pの座標値 X1(mm)、Y1(mm)
実験例1〜10、13〜18、20、22では、X1=0.0〜6.5mm、Y1=0.0〜7.0mmとし、本発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲内となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例11では、X1=10.4mm、Y1=6.5mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲外となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例12では、X1=4.0mm、Y1=10.5mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲内となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
実験例19では、X1=−1.0mm、Y1=6.5mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲外となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例20では、X1=4.0mm、Y1=−1.0mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲内となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
【0050】
(4)最大たわみ点Qの座標値 X2(mm)、Y2(mm)
実験例1〜16、19、21では、X2=−8.0mm〜0.0mm、Y2=−4.0mm〜4.0mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲内となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例17では、X2=−10.4mm、Y2=0.0mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲外となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例18では、X2=−1.5mm、Y2=10.5mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲内となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
実験例20では、X2=2.1mm、Y2=1.0mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲外となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例22では、X2=−1.5mm、Y2=−10.4mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲内となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
【0051】
(5)重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔL(mm)
実験例1〜12、15、16、18〜21では、ΔL=5.3mm〜15.0mmとし、本発明で規定するΔLが5〜15mmの範囲内となる値とした。
実験例13では、ΔL=16.2mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
実験例14では、ΔL=4.0mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
実験例17では、ΔL=15.8mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
実験例22では、ΔL=17.8mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
【0052】
(6)重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線がX方向となす角度φ(度)
実験例1〜14、17では、φ=0.0度〜70.0度とし、本発明で規定するφが0〜70度の範囲内となる値とした。
実験例15では、φ=−1.0度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例16では、φ=71.3度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例18では、φ=−36.0度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例19では、φ=85.6度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例20では、φ=70.9度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例21では、φ=−10.3度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例22では、φ=72.0度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
【0053】
(7)最高初速点Rの座標値 X3(mm)、Y3(mm)
実験例1〜7、10〜22では、X3=−4.9mm〜4.9mm、Y3=−5.0mm〜4.5mmとし、本発明で規定するX3が−5mm以上5mm以下の範囲内となり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内となる値とした。
実験例8では、X3=−6.0mm、Y3=1.2mmとし、本発明で規定するX3が−5mm以上5mm以下の範囲外となり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内となる値とした。
実験例9では、X3=−1.1mm、Y3=−6.2mmとし、本発明で規定するX3が−5mm以上5mm以下の範囲内となり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲外となる値とした。
【0054】
次に実験例と評価項目とについて説明する。
評価項目としてスイートエリアの面積SS1、SS2の指数を見ると次のことが明らかである。
重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲内の値となっている実験例1〜9は、スイートエリアの面積SS1、SS2の指数がそれぞれ78以上と高い値となっている。
一方、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φが本発明で規定された範囲内の値となっているものの、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲外の値となっている実験例10は、スイートエリアの面積SS1の指数が67、SS2の指数が68と実施例1〜9に比較して低下している。
また、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φの何れかが本発明で規定された範囲外の値となっている実験例11〜22は、スイートエリアの面積SS1、SS2の指数がそれぞれ52〜80、52〜77と実施例1〜9に比較して低下している。
以上のことから、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率を本発明で規定された範囲内の値とすることで、スイートエリアの面積を大きく確保する上で有利であることがわかる。
【0055】
また、評価項目として中心点Cから上方15mmでの飛距離指数、中心点Cからヒール側20mmでの飛距離指数、中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数、飛距離指数合計値を見ると次のことが明らかである。
重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲内の値となり、かつ、最高初速点Rの位置が本発明で規定された範囲内となっている実験例1〜7は、上記3つの飛距離指数が何れも99.0%以上であり、飛距離指数合計値は297%以上である。
重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲内の値となっているが、最高初速点Rの位置が本発明で規定された範囲外となっている実験例8、9は、上記3つの飛距離指数が97.5%〜98.0%であり、飛距離指数合計値は294%であり、実験例1〜7に比較して若干低下している。
以上のことから、最高初速点Rの位置を本発明で規定された範囲内とすることで、ゴルフボールを打撃する打点が中心点Cから上方にあるいはヒール側あるいはトウ側に多少ずれた場合であっても飛距離の低下を抑制する上でより有利となっていることがわかる。
なお、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率の何れかが本発明で規定された範囲外の値となっている実験例10〜22は、飛距離指数合計値が288〜294%であり、実施例1〜7に比較して明らかに低下している。したがって、ゴルフボールを打撃する打点が中心点Cから上方にあるいはヒール側あるいはトウ側に多少ずれた場合に飛距離の低下を抑制する上で不利となっていることがわかる。
【0056】
次に、重心点P、最大たわみ点Q、最高初速点Rの位置を本発明で規定された範囲内とすることによって、打点がばらついた場合に飛距離低下をより一層効果的に抑制できる理由について実験例を参照してさらに説明する。
【0057】
以下に示す2種類のゴルフクラブヘッドを作成した。
一方のゴルフクラブヘッドは、図31に示すように、重心点Pの位置は、X1=−2mm、Y=8mmであり、X方向における重心点Pの位置が中心点Cよりトウ側にずれている。以下では説明の便宜上、図31に示すゴルフクラブヘッドを「トウ寄り重心ヘッド」という。
また、最大たわみ点Qの位置は、X2=−7mm、Y2=3mmで、本発明で規定するX2は、−10mm以上0mm以下の範囲内であり、Y2は、−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
符号R0は、フェース面1の速度分布を考慮しない場合における最高初速点を示し、符号R1はフェース面1の速度分布を考慮した場合における最高初速点を示す。
ここで、フェース面1の速度分布を考慮しない最高初速点R0に対してフェース面1の速度分布を考慮した最高初速点Rの位置はトウ側に移動する。
最高初速点Rの位置は、X3=6mm、Y3=0mmとなり、したがって、最高初速点Rは中心点Cよりもトウ側に6mm偏った位置となっている。
【0058】
他方のゴルフクラブヘッドは、図32に示すように、重心点Pの位置は、X1=3.5mm、Y=8mmであり、X方向における重心点Pの位置は中心点Cよりもヒール側に偏っている。以下では説明の便宜上、図32に示すゴルフクラブヘッドを「ヒール重心ヘッド」という。
また、最大たわみ点Qの位置は、図31と同様である。
この場合も、フェース面1の速度分布を考慮しない最高初速点R0に対してフェース面1の速度分布を考慮した最高初速点Rはトウ側に移動する。
最高初速点Rの位置は、X3=0mm、Y3=0mmとなり、したがって、最高初速点Rは中心点Cと一致する。
【0059】
上述したトウ寄り重心ヘッド、ヒール重心ヘッドを用いて以下の実験を行った。
トウ寄り重心ヘッド、ヒール重心ヘッドのそれぞれにおいて以下の打点でゴルフボールを実際に打撃して飛距離を測定した。
ゴルフボールを打撃する打点は、図29に示すように、中心点C(打点番号1)と、X方向に沿って中心点Cを挟んでヒール側3箇所の打点(打点番号4、15、31)と、トウ側3箇所の打点(打点番号8、23、28)の合計7つとした。
【0060】
測定結果を図33に示す。
図33から明らかなように、ヒール重心ヘッドでは、飛距離は中心点Cを最大値としており、打点位置が中心点Cから離れるにしたがって、飛距離が低下するが、飛距離が低下する傾きはトウ側およびヒール側でほぼ均等となっており、バランスがとれている。
一方、トウ寄り重心ヘッドでは、飛距離は打点番号8の打点を最大値としており、打点位置が打点番号8の打点から離れるにしたがって、飛距離が低下するが、飛距離が低下する傾きは、トウ側に比べてヒール側がより顕著となっており、バランスがとれていない。
特に、トウ寄り重心ヘッドはヒール重心ヘッドに比較して、飛距離が打点番号15では4ヤード低下し、打点番号31では7ヤード低下している。
【0061】
以上のことから次のことがいえる。
前述したように、ゴルファの打点位置の平均は中心点Cであり、したがって、最高初速点Rは中心点Cに合致、あるいは、近接させて配置することが飛距離を確保する上で有利となる。
図31、図32に示すように、最高初速点Rの位置は、フェース面1の速度分布の影響、言い換えると、ゴルファのスイングによるローリングの影響を受けることにより重心点P近辺から速度分布が速い方向に移動する。
したがって、最高初速点Rを中心点Cに合致、あるいは、近接させて配置するためには重心点Pをヒール寄りに配置することが必要である。
すなわち、図32に示すヒール重心ヘッドでは、最高初速点Rが中心点Cに合致、あるいは、近接させて配置されているため、飛距離を確保する上で有利となる。さらに、打点がヒール側あるいはトウ側にばらついた場合に、ヒール側およびトウ側の双方において飛距離が低下する度合いのバランスがとれたものとなり、打点のばらつきに対する飛距離の低下を抑制する上でより一層有利となる。
言い換えると、最高初速点Rの位置を本発明で規定された範囲内、すなわち、最高初速点Rの位置をX3が−5mm以上5mm以下の範囲内とし、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内とすることで上述の効果が奏される。
【0062】
これに対して、図31に示すトウ寄り重心ヘッドでは、最高初速点Rが中心点Cよりもトウ側に偏って配置されているため、打点がヒール側あるいはトウ側にばらついた場合に、ヒール寄りの打点での飛距離の低下がトウ寄りの打点での飛距離の低下に比較して顕著なものとなる。
したがって、打点がヒール寄りであるか、トウ寄りであるかによって、飛距離が低下する度合いのバランスが偏ったものとなり、打点のばらつきに対する飛距離の低下を抑制する上で不利となる。
【符号の説明】
【0063】
1……フェース面、5……ヒール、6……シャフト、8……トウ、10……ゴルフクラブヘッド、P……重心点、Q……最大たわみ点、ΔL……重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離、φ……重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線がX方向となす角度、R……最高初速点。
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェース面上におけるスイートスポットの位置と最高反発点の位置とを適切に配置することで打球の飛距離を向上させるゴルフクラブヘッドが提供されている(特許文献1参照)。
ここでスイートスポットとは、フェース面と直交しヘッド重心を通る直線とフェース面との交点であり、言い換えると重心点である。
また、最高反発点とは、フェース面上の点のうち、反発係数が最大となる点である。
ここで、反発係数は、U.S.G.A(全米ゴルフ協会)のCOR測定方法(Procedure for Measuring the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e,Revision2(February 8,1999))によって測定されるものである。
反発係数の測定は、ゴルフクラブヘッドが静止した状態で行われる。
このゴルフクラブヘッドでは、最高反発点をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面の中心点近傍に配置することで飛距離の増大を図っている。また、スイートスポットをフェース面のヒール寄りに配置することでフェース面のヒール寄りで打撃した場合であっても飛距離をある程度確保するようにしている。
この場合、最高反発点でボールを打撃することによってボールの初速が最高となる。
ここで、ボールの初速が最高となるフェース面の点を最高初速点とすると、最高反発点が最高初速点と一致することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−188366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際にゴルフクラブをスウィングすることによりフェース面でボールを打撃する場合、フェース面の速度分布は一様ではなく、フェース面の速度分布はシャフト長さ依存分とゴルフクラブヘッドのローリング(シャフト回りの回転)依存分とによって決定される。
具体的には、フェース面の速度は、フェース面のヒール側上部からトウ側下部に向けて次第に大きくなる。
このような知見に基づいて従来技術を検討すると次の問題点が判明した。
すなわち、実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面でボールを打撃する場合の最高初速点の位置は、上述したようなフェース面の速度分布の影響を受けることによって、上記最高反発点の位置よりもトウ側寄りかつ下方にずれる。
そのため、従来技術に基づいて最高反発点が配置されたゴルフクラブヘッドでは、飛距離の増大を図る上では必ずしも十分なものとはいえない。
また、ゴルフクラブヘッドにおいてはスイートエリアの拡大、すなわち、フェース面において最高初速点の例えば99%以上の初速が得られる打点の領域の拡大を図ることが重要とされているが、従来技術ではスイートエリアの拡大が図られていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、飛距離の増大を図ると共に、スイートエリアの拡大を図る上で有利なゴルフクラブヘッドの設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のゴルフクラブヘッドの設計方法は、ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドをセットした状態で前記ゴルフクラブヘッドのフェース面のトウ側からヒール側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面の中心点の座標を(0,0)とし、前記ゴルフクラブヘッドの重心位置を前記フェース面に垂直に投影させた重心点の座標を(X1,Y1)とし、前記フェース面の1次振動における最大たわみ点の座標を(X2,Y2)としたとき、X1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、Y1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、X2を、−10mm以上0mm以下の範囲内とし、Y2を、−10mm以上10mm以下の範囲内とし、前記重心点と前記最大たわみ点の離間距離を、5〜15mmの範囲内とし、前記重心点と前記最大たわみ点とを結ぶ直線がX方向となす角度を0〜70度の範囲内とし、前記ゴルフクラブヘッドをシャフトに取着したゴルフクラブをスウィングして前記フェース面でゴルフボールを打撃する場合に、前記ゴルフボールの最高初速が得られる前記フェース面の打点を最高初速点とし、前記最高初速点の座標を(X3,Y3)としたとき、X3を−5mm以上5mm以下の範囲内とし、Y3を−5mm以上5mm以下の範囲内とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フェース面の速度分布を考慮して重心点および最大たわみ点を配置するようにしたので、フェース面の最高初速点の位置をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面の中心点に合致、あるいは、近接させることができ、これにより、飛距離の増大を図る上で有利となる。
また、スイートエリアを拡大することにより、打点がばらついても飛距離が低下することを効果的に抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のゴルフクラブヘッドの設計方法の対象となるゴルフクラブヘッド10を示す正面図である。
【図2】本発明方法を実行するために使用されるコンピュータ30の構成を示すブロック図である。
【図3】コンピュータ30の機能ブロック図である。
【図4】ゴルフクラブヘッド10のヘッド本体4のローリングの説明図である。
【図5】ゴルフクラブヘッド10のフェース面1に設定されたスピード分布を示す説明図である。
【図6】ヘッド本体4のローリング量が最小である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
【図7】ヘッド本体4のローリング量が平均値である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
【図8】ヘッド本体4のローリング量が最大である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
【図9】(A)、(B)はフェース面1の速度分布の影響による最高初速点Rのずれを説明するための模式図である。
【図10】(A)、(B)、(C)はフェース面1の速度分布の影響による最高初速点Rのずれを説明するための模式図である。
【図11】(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図12】(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図13】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図14】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図15】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図16】フェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
【図17】重心位置P0と重心点Pとの関係を示すゴルフクラブヘッド10の断面図である。
【図18】フェース面1の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッド10の正面図である。
【図19】フェース面1の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッド10の断面図である。
【図20】フェース面1の中心点Cの定義を説明するゴルフクラブヘッド10の正面図である。
【図21】フェース面1の速度分布と重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとを示す説明図である。
【図22】(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図23】重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLとボール初速Vbとの関係を示す模式図である。
【図24】(A)は第1のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第1のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図25】(A)は第2のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第2のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図26】(A)は第3のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第3のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図27】(A)は第4のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第4のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図28】(A)は第5のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図、(B)は第5のゴルフクラブヘッドにおける重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【図29】フェース面1上における打点位置を示すゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図30】実験例1乃至17の実験結果を示す表である。
【図31】トウ寄り重心ヘッドにおける重心点P、最大たわみ点Q、最高初速点Rの位置関係を示す説明図である。
【図32】ヒール重心ヘッドにおける重心点P、最大たわみ点Q、最高初速点Rの位置関係を示す説明図である。
【図33】トウ寄り重心ヘッドおよびヒール重心ヘッドにおける打点位置と飛距離との関係を示す説明図である。
【図34】多数のゴルファによる打点位置の計測結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の設計方法の対象となるゴルフクラブヘッドについて説明する。
図1に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、金属製の中空構造ヘッド本体4を備えている。
ヘッド本体4の金属材料は、チタン合金やアルミニウム合金などの高強度の低比重金属が好ましく用いられる。
ヘッド本体4は、ゴルフボールを打撃するフェース面1と、フェース面1に連接するクラウン部2及びソール部3とを備えている。
また、クラウン部2には、フェース面1側でかつヒール5寄りの位置にシャフト6に接続するホーゼル7が設けられている。
また、フェース面1を正面から見てヘッド本体4のヒール5と反対側がトウ8である。
【0009】
このようなゴルフクラブヘッドの設計方法の実施の形態について以下に詳述する。
本発明者らは、上記のゴルフクラブヘッド10の有限要素モデルであるゴルフクラブヘッドモデルを用いて有限要素解析を行うと共に、スイングロボットによる実験および検証を行った。
その結果、ゴルフクラブのスイング時におけるフェース面1の速度分布と、ゴルフクラブヘッド10の重心点と、フェース面1の最大たわみ点との位置関係が特定の条件を満たすときに、スイートエリアおよび飛距離の増大を図る上で有利となることを見出した。
なお、本明細書において、重心点とは、ゴルフクラブヘッド10の重心位置をフェース面1に垂直に投影させた点をいう。
また、最大たわみ点とは、フェース面1の1次振動における最大たわみ点をいう。
また、本明細書では、スイートエリアとは、フェース面1でゴルフボールを打撃したときの該ゴルフボールの初速が予め定められた閾値以上となるフェース面1上の領域をいうものとする。
なお、スイートエリアの別の規定として、フェース面1でゴルフボールを打撃したときの該ゴルフボールの飛距離が予め定められた閾値以上となるフェース面1上の領域をいう場合もある。
以下では、単に「スイートエリア」と記載した場合、あるいは、「初速に関するスイートエリア」と記載した場合には前者のスイートエリアを示すものとする。
また、後者のスイートエリアについて言及する場合には、「飛距離に関するスイートエリア」という用語を用いることにする。
以下、フェース面1の速度分布と重心点と最大たわみ点との位置関係が特定の条件を満たすときに、スイートエリアおよび飛距離の増大を図る上で有利となることについて説明する。
【0010】
図2はゴルフクラブヘッド10の有限要素解析を行うためのコンピュータ30の構成を示すブロック図である。
コンピュータ30は、CPU32と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM34、RAM36、ハードディスク装置38、ディスク装置40、キーボード42、マウス44、ディスプレイ46、プリンタ48、入出力インターフェース50などを有している。
ROM34は制御プログラムなどを格納し、RAM36はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置38はゴルフクラブヘッド10の有限要素解析を行う有限要素解析プログラムを格納している。
有限要素解析プログラムとして、有限要素解析を行う従来公知のさまざまな市販の有限要素解析ソフトウェア、例えば、ABAQUS(SIMULIA Americas社の登録商標)などを用いることができる。
ディスク装置40はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード42およびマウス44は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ46はデータを表示出力するものであり、プリンタ48はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ46およびプリンタ48によってデータを出力する。
入出力インターフェース50は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
【0011】
図3はコンピュータ30の機能ブロック図である。
図3に示すように、コンピュータ30は、機能的には、入力手段30A、処理手段30B、出力手段30Cを含んで構成されている。
入力手段30Aは、ゴルフクラブヘッド10を有限要素法によって解析するために必要なデータを入力するものである。
上記データは、有限要素モデルからなるゴルフクラブヘッドモデルを設定すると共に、該設定されたゴルフクラブヘッドモデルを有限要素法によって解析するための有限要素解析用データd1を含む。
処理手段30Bは、有限要素解析用データd1に基づいて、ゴルフクラブヘッドモデルを構築する。
また、処理手段30Bは、第2のデータd2に基づいて、後述するゴルフクラブヘッドモデルにおけるフェース面1の速度分布、重心点、最大たわみ点などをゴルフクラブヘッドモデルを用いて有限要素解析を行うことによって求める。
処理手段30Bは、ハードディスク装置38に格納されている有限要素解析プログラムがRAM36にロードされ、CPU32がそれらプログラムに基づいて動作することで実現される。
出力手段30Cは、処理手段30Bによる計算結果を出力するものである。
【0012】
以下、ゴルフクラブヘッド10の解析について説明する。
まず、処理手段30Bは、入力手段30Aから供給される有限要素解析用データd1に基づいて有限要素モデルで構成されたゴルフクラブヘッドモデルを設定する。
また、処理手段30Bは、ゴルフボールについてもゴルフクラブヘッドモデルと同様に入力手段30Aから供給される有限要素解析用データに基づいて有限要素モデルで構成されたゴルフボールモデルを設定する。
具体的には、ヘッド本体4を複数の有限要素Xijkに、ゴルフボールを複数の有限要素Yijk(i、j、kは整数)に、それぞれ分割する。
ここで有限要素とは、有限要素法による解析を行うための要素であって、梁要素、シェル要素及び固体要素などが例示される。
また、計算に必要な物性値としては、ロフト角、重心深さ、バルジ&ロール半径、FP値(フェースプログレッション)や、慣性モーメント、ヘッド質量などが例示される。これら物性値は有限要素解析用データd1に含まれる。
【0013】
次に、処理手段30Bは、上記で設定したゴルフクラブヘッドモデルを用いて、フェース面1の速度分布を計算によって求め、フェース面1の速度分布をフェース面1に設定する。
ここで、フェース面1の速度分布とは、プレイヤーがヘッド本体4を有するゴルフクラブでゴルフボールを打撃したときに、打撃直前におけるフェース面1の速度分布を意味するものである。
フェース面1の速度分布は、シャフト6の長さに依存する成分と、ヘッド本体4のローリング(シャフト6の回りの回転)による成分とから主に決定される。
図4に示すように、前者のシャフト6の長さに依存する成分は、シャフト6の中心軸の延長線Lの垂線が、ヘッド本体4のソール部3に接する点Aにおいて最大となる。
また、後者のヘッド本体4のローリングに依存する成分は、シャフト6の中心軸の延長線Lから最も離れた点B(ヘッド本体4のトウ8側端部)において最大となる。
従って、フェース速度は、図5に示すように、フェース面1のヒール5側の上部aからトウ8側の下部gへ向けて次第に大きくなるように分布する。なお、図5においては、速度0.5m/s毎に等高線vを示している。
ここでスピード分布の等高線vとは、フェース速度の分布を示すために、フェース面1上において互いに等しいフェーススピードの点を結んだ線である。
なお、有限要素解析に際しては、シャフト6の長さと、ヘッド本体4のローリングの大きさとを、平均的なゴルフクラブにおけるシャフト6の長さと、平均的なゴルフクラブにおけるヘッド本体4のローリングの大きさに設定した。
【0014】
次に、上述のように有限要素解析によって得られたフェース面1の速度分布の計算結果の妥当性を確認するために、多数のゴルファのスイングデータを測定した。
より具体的には、多数のゴルファがゴルフクラブを実際にスウィングした際のフェース面のフェース速度を測定してフェーススピード分布を得た。
なお、フェース速度の測定は、例えば、特開2005−34619号公報(ゴルフクラブヘッドの挙動計測装置)に示されているような従来公知の計測装置を用いて行った。
図6はヘッド本体4のローリング量が最小である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
図7はヘッド本体4のローリング量が平均値である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
図8はヘッド本体4のローリング量が最大である場合におけるフェース面1の速度分布を示す説明図である。
図6乃至図8において横軸はX方向の座標値X(mm)を、縦軸はY方向の座標値Y(mm)を示している。また、フェース面1の中心点Cの座標を(0,0)とする。
各ハッチングはフェース面1の速度(フェーススピード)Vf(m/sec)を示しており、フェース面1の速度は、フェース面1のヒール5側の上部からトウ8側の下部へ向けて次第に大きくなるように分布している。
なお、ハッチングが施された矩形の領域は、速度分布を測定する対象となるインパクトエリアを示す。
本実施の形態では、有限要素解析によって得られたフェース面1の速度分布は、図7に示すヘッド本体4のローリング量が平均値である場合におけるフェース面1の速度分布とほぼ同じ結果となり、有限要素解析によって算出されたフェース面1の速度分布の数値の妥当性を確認することができた。
【0015】
次に、フェース面1の速度分布を考慮しない場合における重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点R(ボールの初速が最高となるフェース面1の点)との関係について説明する。
図9は、フェース面1の速度分布を考慮しない場合における重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置関係を示す模式図である。
フェース面1の打点におけるボール初速は、重心点Pの位置が寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置が寄与する成分とを足し合わせた値で決定されるものと考えられる。
図中、符号p1、p2は重心点Pの位置が寄与する成分を示す分布を示す等高線を示しており、寄与する成分の大小関係はp1>p2となる。
また、符号q1、q2は最大たわみ点Qの位置が寄与する成分を示す分布を示す等高線を示しており、寄与する成分の大小関係はq1>q2となる。
したがって、図9に示すように、最高初速点Rは、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶほぼ直線LA上に位置することになる。ただし、ヘッド形状やフェース面のバルジ、ロール等によって最高初速点Rは直線LAから多少ずれる場合もある。
すなわち、フェース面1の速度分布を考慮しない場合は、最高初速点Rがフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接するように、重心点Pと最大たわみ点Qとを配置すれば、スイートエリアおよび飛距離の増大を図る上で有利となることになる。
【0016】
ゴルファがゴルフクラブをスウィングしてゴルフクラブヘッド10のフェース面1でゴルフボールを打撃する場合には、前述したようにフェース面1の速度分布が発生する。
最高初速点Rは、このようなフェーススピードの影響を受けることになるため、図9に示す位置からずれることになる。
図10(A)に示すように、フェース面1の速度分布を示す等高線v(図5参照)に対して直交し、言い換えると、フェーススピードの変化量が最大となる点を結び、かつ、最高初速点Rを通る直線L0を想定する。
すると、図10(B)に示すように、最高初速点Rは、フェース面1の速度分布の影響を受けることで、直線LAと直線L0とが交差する角度をθとしたとき、ほぼθの角度に沿った方向に移動することになる(例えば約3〜5mm)。なお、角度θは、たわみ量分布やフェース面の速度分布によって変わる。具体的には、最高反発点Rはトウ5側寄りでかつ下方向に移動する。
さらに、図10(C)に示すように、最高初速点Rは、フェース面1が曲面を呈している(フェース面1にRが付与されている)影響を受けることで、さらに下方向に移動することになる(例えば総移動距離約6〜10mm)。
図10(C)に示すように、最高初速点Rがさらに下方向に移動する理由は次のとおりであある。すなわち、通常のウッドヘッドのフェース面1には、トウ8とヒール5とを結ぶ方向の曲面(バルジ)と、クラウン4とヒール3とを結ぶ方向の曲面(ロール)とが形成されている。
フェース面1にこのような曲面が形成されていることでフェース面1のロフト角が変化する。その影響で、最高初速点Rは、下方向に移動する。下方向の移動量は、フェース面1の曲面の違いだけでなく、たわみ量分布やフェース面の速度分布によっても変化する。
したがって、実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置は、上述したようにフェース面1の速度分布の影響を受けることによって、図10(A)に示した最高反発点Rの位置よりもトウ側寄りでかつ下方にずれることになる。
すなわち、実際の最高初速点Rは、フェース面1の速度分布の影響を受けることにより、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LA上から外れた箇所に位置することがわかった。
本発明は、このような知見に基づいて、実際の最高初速点Rがゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接するように、重心点Pと最大たわみ点Qとを配置することで、飛距離の増大を図ると共に、スイートエリアの拡大を図り、ひいては、打点がばらついても飛距離低下を効果的に抑制できるようにしたものである。
【0017】
図11は第1の実施の形態における重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置関係を示すゴルフクラブヘッド10の正面図である。
本実施の形態では、ライ角通りにゴルフクラブヘッド10をセットした状態でゴルフクラブヘッド10のフェース面1のトウ8側からヒール5側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面1の中心点Cの座標を(0,0)とする。
【0018】
なお、フェース面1の中心点Cは、フェース面1の幾何学的中心であり、例えば、以下のようにして規定されるものである。なお、フェース面1の中心点Cの規定方法として以下に説明するような従来公知のさまざまな規定方法が採用可能である。
【0019】
まず、フェース面1と他のヘッド本体4の部分との境目が明確である場合、言い換えると、フェース面1の周縁が稜線によって特定される場合のフェース面1の中心点Cの規定方法を説明する。この場合はフェース面1が明瞭に定義されることになる。
図13乃至図16はフェース中心の規定方法の一例を示す説明図である。
(1)まず、図13に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上にゴルフクラブヘッド10(ヘッド本体4)を載置する。このときのゴルフクラブヘッド10の状態を基準状態とする。なお、ライ角およびフック角の設定値は、例えば製品カタログに記載された値である。
【0020】
(2)次にクラウン部2及びソール部3を結ぶ方向における仮中心点c0を求める。
すなわち、図13に示すように、トウ8及びヒール5を結ぶ地面と平行な線(以下水平線という)の概略中心点と交差する垂線f0を引く。
この垂線f0とフェース面1の上縁とが交差するa0点と、垂線f0とフェース面1の下縁とが交差するb0点の中点を仮中心点c0とする。
【0021】
(3)次に図14に示すように仮中心点c0を通る水平線g0を引く。
(4)次に図15に示すように水平線g0とフェース面1のトウ8側の縁とが交差するd0点と、水平線g0とフェース面1のヒール5側の縁とが交差するe0点の中点を仮中心点c1とする。
(5)次に図16に示すように仮中心点c1を通る垂線f1を引き、この垂線f1とフェース面1の上縁とが交差するa1点と、垂線f1とフェース面1の下縁とが交差するb1点の中点を仮中心点c2とする。
ここで、仮中心点c1とc2とが合致したならばその点をフェース面1の中心点Cとして規定する。
仮中心点c1とc2が合致しなければ、(2)乃至(5)の手順を繰り返す。
なお、フェース面1は曲面を呈しているため、水平線g0の中点、垂線f0,f1の中点を求める場合の水平線g0の長さ、垂線f0,f1の長さはフェース面1の曲面に沿った長さを用いるものとする。
【0022】
次に、フェース面1の周縁と他のヘッド本体4の部分との間が曲面で接続されておりフェース面1が明瞭に定義できない場合のフェース面1の中心点Cの規定方法を説明する。
【0023】
図17に示すように、ゴルフクラブヘッド10は中空であり、符号P0はゴルフクラブヘッド10の重心位置を示し、符号Lpは重心位置P0と重心点Pとを結ぶ直線であり、言い換えると、直線Lpは重心位置P0を通るフェース面1の垂線である。
ここで、図18に示すように、重心位置P0と重心点Pとを結ぶ直線Lpを含む多数の平面H1、H2、H3、…、Hnを考える。
ゴルフクラブヘッド10を各平面H1、H2、H3、…、Hnに沿って破断したときの断面において、図19に示されるように、ゴルフクラブヘッド10の外面の曲率半径r0を測定する。
曲率半径r0の測定に際して、フェース面1上のフェースライン、パンチマーク等が無いもとして扱う。
曲率半径r0は、フェース面1の中心点Cから外方向(図19における上方向、下方向)に向かって連続的に測定される。
そして、測定において曲率半径r0が最初に所定の値以下となる部分をフェース面1の周縁を表わす輪郭線Iとして定義する。所定の値は例えば200mmである。
多数の平面H1、H2、H3、…、Hnに基づいて決定された輪郭線Iによって囲まれた領域が、図18、図19に示すように、フェース面1として定義される。
次に、図20に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上にゴルフクラブヘッド10(ヘッド本体4)を載置する。
直線LTは、フェース面1のトウ側点PTを通過して鉛直方向に延在する。
直線LHは、フェース面1のヒール側点PHを通過して鉛直方向に延在する。
直線LCは、直線LTおよび直線LHと平行である。直線LCと直線LTとの距離は、直線LCと直線LHとの距離と等しい。
符号Puは、フェース面1の上側点を示し、符号Pdはフェース面1の下側点である。上側点Puおよび下側点Pdは、いずれも直線LCと輪郭線Iとの交点である。
中心点Cは、上側点Puと下側点Pdとを結ぶ線分の中点で定義される。
【0024】
図11に戻って説明を続ける。
本実施の形態では、重心点Pの座標を(X1,Y1)とし、最大たわみ点Qの座標を(X2,Y2)としたとき、以下の条件を満たすようにゴルフクラブヘッド10を設計する。
X1は、0mm以上10mm以下の範囲内であり、Y1は、0mm以上10mm以下の範囲内とする。
X2は、−10mm以上0mm以下の範囲内であり、Y2は、−10mm以上10mm以下の範囲内とする。
なお、図11は、X2が−10mm以上0mm以下の範囲内で、Y2が0mm以上10mm以下の範囲内である場合について示し、図12は、X2が−10mm以上0mm以下の範囲内で、Y2が−10mm以上0mm以下の範囲内である場合を示している。以下では図11について説明するが、図12の場合も上記の重心点Pおよび最大たわみ点Qの範囲が適用される。
図11において、符号A1は重心点Pの座標(X1,Y1)の範囲を示し、符号A2は最大たわみ点Qの座標(X2,Y2)の範囲を示す。
重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とする。
重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とする。
なお、本明細書では、角度φは、X軸とY軸とがなす座標面において重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線の傾きが正となる範囲の角度φの値を正の値とし、前記の傾きが負となる範囲の角度φの値を負の値とする。
このような条件を満たすように重心点Pと最大たわみ点Qとを配置することによって、ゴルファが実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させることができ、これにより、飛距離の増大を図る上で有利となる。さらには、スイートエリアを拡大することができ、したがって、打点がばらついても飛距離の低下を効果的に抑制する上で有利となる。
【0025】
ここで、フェース面1の中心点Cがゴルファの打点分布の中心付近となることについて説明しておく。
図34は多数のゴルファによる打点位置の計測結果の一例を示す説明図である。
具体的には、1つのゴルフクラブヘッドについてゴルファ743名が合計3757スウィングした場合の打点を計測し、その打点位置をフェース面1上に◆の記号でプロットしている。
X軸、Y軸上の数値はフェース面1の中心点Cを原点(0,0)とした場合の打点位置を示す座標値であり単位はmmである。
打点位置の平均値は図中□の記号で示しており、次のとおりであった。
X座標値:1.8mm(中心点Cよりもヒール5方向に1.8mm)
Y座標値:3.9mm(中心点Cよりもクラウン2方向に3.9mm)
すなわち、ゴルファの打点分布の中心は中心点C近傍に位置している。
したがって、ゴルファが実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置をフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させれば、大多数のゴルファにとって、飛距離の増大を図る上で有利となり、スイートエリアを拡大することができ、したがって、打点がばらついても飛距離の低下を効果的に抑制する上で有利となる。
【0026】
図21はフェース面1の速度分布と重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとを示す説明図である。
図21において横軸はX方向の座標値X(mm)を、縦軸はY方向の座標値Y(mm)を示している。
各ハッチングはフェース面1の速度(フェーススピード)Vf(m/sec)を示しており、フェース面1の速度は、図5に示すように、フェース面1のヒール5側の上部からトウ8側の下部へ向けて次第に大きくなるように分布している。
【0027】
図22(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
ある打点におけるボール初速Vbは、フェーススピードVfと、重心点Pの位置と、最大たわみ点Qの位置との3つの要素が寄与して決定されるものと考えられる。
すなわち、打点におけるフェーススピードVfが高いほどボール初速Vbは高速となる。
また、打点に重心点Pが近いほどボール初速Vbは高速となる。
また、打点に最大たわみ点Qが近いほどボール初速Vbは高速となる。
すなわち、図22(B)に示すように、ある打点におけるボール初速Vbは、フェーススピードVfが寄与する成分と、重心点Pの位置が寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置が寄与する成分とを足し合わせた値で決定されるものと考えられる。
なお、図22(A)において破線Apは重心点Pの位置が寄与する成分の等高線を示し、破線Aqは最大たわみ点Qの位置が寄与する成分の等高線を示し、破線Avbはボール初速Vbの等高線を示す。
そして、それら足し合わせた値が最大となる位置、言い換えると、ゴルフボールの最高初速が得られるフェース面1の打点が最高初速点Rとなる。
本実施の形態では、上述の条件を満たしたゴルフクラブヘッド10における最高初速点Rの座標を(X3,Y3)としたとき、X3が−5mm以上5mm以下の範囲内であり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内であり、したがって、最高初速点Rの位置をフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させることができる。
【0028】
また、最高初速点Rでボールを打撃したときのボール初速Vbを100%とし、ボール初速Vbの例えば99%以上となるフェース面1上の領域をスイートエリアとしたとき、スイートエリアは最高初速点Rを中心として分布する。具体的には、スイートエリアは最高初速点Rを中心としてボール初速Vbの等高線Avb(図22(A))に沿って分布することになる。
したがって、最高初速点Rの位置をフェース面1の中心点Cにほぼ合致、あるいは、近接させることにより、スイートエリアの中心がフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接することになる。
そのため、最も打点分布が高い位置であるフェース面1の中心点Cがスイートエリアの中心に合致あるいは近接するため、飛距離の増大を図る上で有利となる。
【0029】
また、ボール初速Vbは、最大たわみ点Qでのたわみ量が大きいほど増大することが周知の事実である。したがって、フェース面1のうち、たわみ量が大きい領域をより大きな面積で確保すると、ボールの飛距離の増大を図る上で有利となる。
このような観点から、最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面の面積をたわみ面積とした場合、たわみ面積が150mm2以上となるようにすると、ボールの飛距離の増大を図る上でより一層有利となる。
また、最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面の面積をたわみ面積とした場合、たわみ面積がフェース面積に占める割合が4%以上となるようにすると、ボールの飛距離の増大を図る上でより一層有利となる。
【0030】
フェース面1のたわみ量、たわみ面積の計測方法として従来公知のさまざまな計測方法が使用可能である。
例えば、特開2004−138584号公報(ゴルフクラブヘッドの打撃面の振動分布測定方法およびゴルフクラブヘッドの評価方法)に記載されている方法を用いることができる。
すなわち、この方法では、ゴルフクラブヘッドのフェース面(打撃面)をその垂直方向に加振させて打撃面を振動させ、フェース面と対向する位置に配したレーザ振動計によりフェース面における振動分布(振幅分布)を測定する。
そして、その振動分布(振幅分布)の測定結果に基づいて、各点のたわみ量を算出し、最大たわみ点でのたわみ量を100%とし、たわみ量が95%以上となるフェース面の面積を算出すればよい。
より具体的には、フェース面1の中心点Cを中心にした四角形の測定エリアを設定すると共に、この測定エリアに複数の測定点を設定し、各測定点について振幅分布を測定する。
その後、スプライン補間を行い、最大たわみ点を算出し、最大たわみ点でのたわみ量を100%とし、たわみ量が95%以上となるフェース面1の面積を算出すればよい。
前記の測定エリアとして、例えば、フェース面1の中心点Cを中心にトウ方向およびヒール方向にそれぞれ28mmずつ、フェース面1の中心点Cを中心にクラウン方向およびソール方向にそれぞれ12mmずつの四角のエリアを設定する。
すなわち、本例では、測定エリアは、トウ−ヒール方向に56mm、クラウン−ソール方向に24mmの四角形状となる。
また、前記の測定点として、例えば、トウ−ヒール方向およびクラウン−ソール方向において約0.8mmピッチで各測定点を設定する。
すなわち、本例では、測定エリアにおける全測定点は2048点となる。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、フェース面1の速度分布を考慮して重心点Pおよび最大たわみ点Qをフェース面1に配置する。したがって、ゴルファが実際にゴルフクラブをスウィングしてフェース面1でボールを打撃する場合の最高初速点Rの位置をゴルファの打点分布の中心付近となるフェース面1の中心点Cに合致、あるいは、近接させることができるので、飛距離の増大を図る上で有利となる。
特に、前述した従来技術のようにフェース面1の速度分布を考慮することなく、ゴルフクラブヘッドが静止した状態で測定された最高反発点をフェース面の中心点近傍に配置する場合に比較して、本発明は、フェース面1の速度分布を考慮して重心点Pおよび最大たわみ点Qを配置している点が大きく異なるものである。
このようにすることで、本発明では、最高初速点Rの位置をより的確にフェース面1の中心点Cに合致あるいは近接させる上で有利となり、したがって、従来技術に比較して飛距離の増大を図る上で有利となる。
また、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とし、かつ、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内としたので、図22(B)に示すように、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となる。以下その理由について説明する。
なお、以下では、最大初速点Rに対応する反発係数が0.83、最大初速点Rにおけるボール初速の99%に対応する反発係数が0.81であるものとして説明する。
【0032】
まず、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とすることがスイートエリアの面積を拡大する上で有利となる理由について説明する。
図23は重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLとボール初速Vbとの関係を示す模式図である。
離間距離ΔLが5mm未満であると、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山(ピーク)と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが近いか、あるいは、合致することになるため、最大初速点Rは高くなる反面、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積は狭いものとなる。
離間距離ΔLが15mm以上であると、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが離れすぎるため、最大初速点Rは低下し反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積はほとんどなくなってしまう。
離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であると、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが適正な距離で離間することになるため、最大初速点Rの大きさを確保しつつ、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も十分に確保することができる。
【0033】
次に、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とすることがスイートエリアの面積を拡大する上で有利となる理由について説明する。
図6乃至図8から明らかなように、ゴルファがゴルフクラブを実際にスイングした場合、フェース面1の速度分布を示す等高線に対して直交する直線とX軸とがなす角度αは次のとおりである。
図6に示すローリング量が最小の場合:角度αは65度
図7に示すローリング量が平均値の場合:角度αは36度
図8に示すローリング量が最大の場合:角度αは7度
したがって、ゴルファがゴルフクラブを実際にスイングした場合、上記角度αは7度以上65度の範囲内となる。
そのため、図22(B)に示すように、最大たわみ点Qをフェース速度のより速い位置に配置すると、言い換えると、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを上記角度αの範囲内に設定すると、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で有利となる。
その結果、ボール初速Vbの山の高さを高くすることができて、高初速エリアをより広く確保する上で有利となり、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となるのである。
なお、本実施の形態では、ゴルファがゴルフクラブを実際にスイングした場合の角度αのばらつきを考慮して、角度φを0〜70度の範囲内としている。
【0034】
次に、実験例を参照して、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とし、かつ、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とすることがスイートエリアの面積を拡大する上で有利となることを具体的に説明する。
離間距離ΔLの範囲および角度φの範囲を以下のように設定した5種類のゴルフクラブヘッド10について説明する。
以下では、5種類のゴルフクラブヘッド10をそれぞれ第1乃至第5のゴルフクラブヘッドとして説明する。
第1乃至第5のゴルフクラブヘッドは、離間距離ΔLの範囲および角度φの範囲を以下のように設定したものである。
(第1のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5〜15mmの範囲内、角度φ:0〜70度の範囲内
(第2のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5mm未満、角度φ:0〜70度の範囲内
(第3のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:15mmを超過、角度φ:0〜70度の範囲内
(第4のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5〜15mmの範囲内、角度φ:70度を超過
(第5のゴルフクラブヘッド)離間距離ΔL:5〜15mmの範囲内、角度φ:0度未満
図24乃至図28はそれぞれ第1のゴルフクラブヘッド乃至5のそれぞれに対応する図であり、(A)は重心点Pと最大たわみ点Qと最高初速点Rとの位置を示すゴルフクラブヘッド10の正面図、(B)は重心点Pの位置がボール初速に寄与する成分と、最大たわみ点Qの位置がボール初速に寄与する成分との関係を示す模式図である。
【0035】
(第1のゴルフクラブヘッド)
図24に示すように、角度φが0〜70度の範囲内であることから最大たわみ点Qがフェース速度のより速い位置に配置される。したがって、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で有利となっている。
また、離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であるため、ボール初速Vbの山の高さを確保しつつ、反発係数が0.81以上となる高初速エリア(等高線Avbで囲まれた領域)をより広く確保する上で有利となり、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となっている。
【0036】
(第2のゴルフクラブヘッド)
図25に示すように、角度φが0〜70度の範囲内であっても、離間距離ΔLが5mm未満であるため、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山(ピーク)と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが近いか、あるいは、合致する。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83に相当して高くなる反面、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積は狭いものとなる。
【0037】
(第3のゴルフクラブヘッド)
図26に示すように、角度φが0〜70度の範囲内であっても、離間距離ΔLが15mmを超過しているため、重心点Pの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山(ピーク)と、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山とが離間している。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83を下回り、また、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も狭いものとなる。
【0038】
(第4のゴルフクラブヘッド)
図27に示すように、離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であっても、角度φが70度を超過しているため、第1のゴルフクラブヘッドに比較して、最大たわみ点Qがフェース速度のより遅い位置に配置される。したがって、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で不利となっている。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83を下回り、また、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も狭いものとなる。
【0039】
(第5のゴルフクラブヘッド)
図28に示すように、離間距離ΔLが5〜15mmの範囲内であっても、角度φが0度未満であるため、第1のゴルフクラブヘッドに比較して、最大たわみ点Qがフェース速度のより遅い位置に配置される。したがって、最大たわみ点Qの位置がボール初速Vbに寄与する成分の山の高さをより高くする上で不利となっている。したがって、最大初速点Rは反発係数0.83を下回り、また、反発係数が0.81以上となる高初速エリアの面積も狭いものとなる。
【0040】
以上説明した第1のゴルフクラブヘッド乃至5の結果により、重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔLを5〜15mmの範囲内とし、かつ、重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線LAがX方向となす角度φを、0〜70度の範囲内とすることによって、スイートエリアの面積を拡大する上で有利となることが明らかである。
このようにスイートエリアの面積を拡大することによって、打点がばらついても飛距離の低下を効果的に抑制する上で有利となる。
【0041】
(実験例)
次に実験例について説明する。
実験条件は次の通りである。
ゴルフクラブヘッド10を有するゴルフクラブを従来公知のスウィングロボットを用いてスウィングさせてゴルフボールを打撃した。
図29に示すように、フェース面1上における打点位置はフェース面1の中心点Cを中心にしてX方向に7mmピッチで9打点、中心点Cを中心にしてY方向に5打点、合計41打点とした。
なお、図中、格子の交点は各打点を示し、各打点の近傍の数字は各打点を識別するために付した打点番号を示す。
ヘッドスピードは40m/sとした。
中心点Cでゴルフボールを打撃した場合のサイドスピンは±200rpm、打ち出し角は13.5度±0.5度とした。
ゴルフボールは、一般的な3ピースボールとした。
41個の打点についてそれぞれ3回ずつ打撃してボール初速と飛距離とを測定して平均値を求め、各打点についてボール初速と飛距離とを求めた。
フェース面1の速度分布を示す等高線に対して直交する直線とX軸とがなす角度αは65度とした、この角度αは、図6に示したローリング量が最小のゴルファの場合と同様の角度である。
【0042】
図30は実験例1乃至22の実験結果を示す表である。
評価項目は以下の5つである。
(1)ボール初速に関するスイートエリアの面積SS1
まず、41打点のボール初速データから、データ補間(スプライン補間)を行い、最高初速点を求めた。
次いで、41打点のボール初速データから、データ補間(スプライン補間)を行い、前記の最高初速点を100%とした場合に、99%以上のボール初速となるフェース面1の領域をボール初速に関するスイートエリアとして求めた。
図30においては、ボール初速に関するスイートエリアの面積SS1(mm2)を記載すると共に、面積の大小関係をわかりやすく表示するため、カッコ内に面積SS1を指数で表示した。この指数は、実験例1の面積SS1を100とした場合における残りの実験例2〜22の面積SS1の比率を百分率で表示したものである。
【0043】
(2)飛距離に関するスイートエリアの面積SS2
まず、41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、最高飛距離点を求めた。
次いで、41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、前記の最高飛距離点を100%とした場合に、99%以上の飛距離となるフェース面1の領域を飛距離に関するスイートエリアとして求めた。
図30においては、飛距離に関するスイートエリアの面積SS2(mm2)を記載すると共に、面積の大小関係をわかりやすく表示するため、カッコ内に面積SS2を指数で表示した。この指数は、実験例1の面積SS2を100とした場合における残りの実験例2〜22の面積SS2の比率を百分率で表示したものである。
【0044】
(3)中心点Cから上方15mmでの飛距離指数
41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、中心点Cから上方に(Y方向に)15mm離間した打点における飛距離を求めた。
図30においては、前記の最高飛距離に対する上方15mmでの飛距離の比率を百分率で表示した。
【0045】
(4)中心点Cからヒール側20mmでの飛距離指数
41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、中心点Cからヒール5側に(X方向に)20mm離間した打点における飛距離を求めた。
図30においては、前記の最高飛距離に対するヒール側20mmでの飛距離の比率を百分率で表示した。
【0046】
(5)中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数
41打点の飛距離データから、データ補間(スプライン補間)を行い、中心点Cからトウ8側に(X方向に)20mm離間した打点における飛距離を求めた。
図30においては、前記の最高飛距離に対するトウ側20mmでの飛距離の比率を百分率で表示した。
なお、図30において中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数の下方のカッコ内の数値は、上述した3つの飛距離指数(中心点Cから上方15mmでの飛距離指数、中心点Cからヒール側20mmでの飛距離指数、中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数)の合計からなる飛距離指数合計値を示す。
【0047】
各実験例で異ならせた数値は以下の通りである。
(1)たわみ面積(mm2)
最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面1の面積。
実験例1〜9、11〜22では、たわみ面積を153mm2とし本発明で規定する150mm2を上回る値とした。
実験例10では、たわみ面積を148mm2とし本発明で規定する150mm2を下回る値とした。
【0048】
(2)たわみ面積比率(%)
最大たわみ点Qでのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となるフェース面1の面積をたわみ面積とした場合、たわみ面積がフェース面積に占める比率。
実験例1〜9、11〜22では、たわみ率を4.0%として本発明で規定する4%以上となる値とした。
実験例10では、たわみ率を3.9%とし、本発明で規定する4%を下回る値とした。
【0049】
(3)重心点Pの座標値 X1(mm)、Y1(mm)
実験例1〜10、13〜18、20、22では、X1=0.0〜6.5mm、Y1=0.0〜7.0mmとし、本発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲内となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例11では、X1=10.4mm、Y1=6.5mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲外となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例12では、X1=4.0mm、Y1=10.5mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲内となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
実験例19では、X1=−1.0mm、Y1=6.5mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲外となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例20では、X1=4.0mm、Y1=−1.0mmとし、発明で規定するX1が0mm以上10mm以下の範囲内となり、Y1が0mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
【0050】
(4)最大たわみ点Qの座標値 X2(mm)、Y2(mm)
実験例1〜16、19、21では、X2=−8.0mm〜0.0mm、Y2=−4.0mm〜4.0mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲内となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例17では、X2=−10.4mm、Y2=0.0mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲外となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例18では、X2=−1.5mm、Y2=10.5mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲内となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
実験例20では、X2=2.1mm、Y2=1.0mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲外となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
実験例22では、X2=−1.5mm、Y2=−10.4mmとし、本発明で規定するX2が−10mm以上0mm以下の範囲内となり、Y2が−10mm以上10mm以下の範囲外となる値とした。
【0051】
(5)重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離ΔL(mm)
実験例1〜12、15、16、18〜21では、ΔL=5.3mm〜15.0mmとし、本発明で規定するΔLが5〜15mmの範囲内となる値とした。
実験例13では、ΔL=16.2mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
実験例14では、ΔL=4.0mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
実験例17では、ΔL=15.8mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
実験例22では、ΔL=17.8mmとし、本発明で規定する離間距離ΔLが5〜15mmの範囲外となる値とした。
【0052】
(6)重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線がX方向となす角度φ(度)
実験例1〜14、17では、φ=0.0度〜70.0度とし、本発明で規定するφが0〜70度の範囲内となる値とした。
実験例15では、φ=−1.0度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例16では、φ=71.3度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例18では、φ=−36.0度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例19では、φ=85.6度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例20では、φ=70.9度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例21では、φ=−10.3度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
実験例22では、φ=72.0度とし、本発明で規定する角度φ=0.0度〜70.0度の範囲外となる値とした。
【0053】
(7)最高初速点Rの座標値 X3(mm)、Y3(mm)
実験例1〜7、10〜22では、X3=−4.9mm〜4.9mm、Y3=−5.0mm〜4.5mmとし、本発明で規定するX3が−5mm以上5mm以下の範囲内となり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内となる値とした。
実験例8では、X3=−6.0mm、Y3=1.2mmとし、本発明で規定するX3が−5mm以上5mm以下の範囲外となり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内となる値とした。
実験例9では、X3=−1.1mm、Y3=−6.2mmとし、本発明で規定するX3が−5mm以上5mm以下の範囲内となり、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲外となる値とした。
【0054】
次に実験例と評価項目とについて説明する。
評価項目としてスイートエリアの面積SS1、SS2の指数を見ると次のことが明らかである。
重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲内の値となっている実験例1〜9は、スイートエリアの面積SS1、SS2の指数がそれぞれ78以上と高い値となっている。
一方、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φが本発明で規定された範囲内の値となっているものの、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲外の値となっている実験例10は、スイートエリアの面積SS1の指数が67、SS2の指数が68と実施例1〜9に比較して低下している。
また、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φの何れかが本発明で規定された範囲外の値となっている実験例11〜22は、スイートエリアの面積SS1、SS2の指数がそれぞれ52〜80、52〜77と実施例1〜9に比較して低下している。
以上のことから、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率を本発明で規定された範囲内の値とすることで、スイートエリアの面積を大きく確保する上で有利であることがわかる。
【0055】
また、評価項目として中心点Cから上方15mmでの飛距離指数、中心点Cからヒール側20mmでの飛距離指数、中心点Cからトウ側20mmでの飛距離指数、飛距離指数合計値を見ると次のことが明らかである。
重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲内の値となり、かつ、最高初速点Rの位置が本発明で規定された範囲内となっている実験例1〜7は、上記3つの飛距離指数が何れも99.0%以上であり、飛距離指数合計値は297%以上である。
重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率が本発明で規定された範囲内の値となっているが、最高初速点Rの位置が本発明で規定された範囲外となっている実験例8、9は、上記3つの飛距離指数が97.5%〜98.0%であり、飛距離指数合計値は294%であり、実験例1〜7に比較して若干低下している。
以上のことから、最高初速点Rの位置を本発明で規定された範囲内とすることで、ゴルフボールを打撃する打点が中心点Cから上方にあるいはヒール側あるいはトウ側に多少ずれた場合であっても飛距離の低下を抑制する上でより有利となっていることがわかる。
なお、重心点Pの位置、最大たわみ点Qの位置、離間距離ΔL、角度φ、たわみ面積、たわみ面積比率の何れかが本発明で規定された範囲外の値となっている実験例10〜22は、飛距離指数合計値が288〜294%であり、実施例1〜7に比較して明らかに低下している。したがって、ゴルフボールを打撃する打点が中心点Cから上方にあるいはヒール側あるいはトウ側に多少ずれた場合に飛距離の低下を抑制する上で不利となっていることがわかる。
【0056】
次に、重心点P、最大たわみ点Q、最高初速点Rの位置を本発明で規定された範囲内とすることによって、打点がばらついた場合に飛距離低下をより一層効果的に抑制できる理由について実験例を参照してさらに説明する。
【0057】
以下に示す2種類のゴルフクラブヘッドを作成した。
一方のゴルフクラブヘッドは、図31に示すように、重心点Pの位置は、X1=−2mm、Y=8mmであり、X方向における重心点Pの位置が中心点Cよりトウ側にずれている。以下では説明の便宜上、図31に示すゴルフクラブヘッドを「トウ寄り重心ヘッド」という。
また、最大たわみ点Qの位置は、X2=−7mm、Y2=3mmで、本発明で規定するX2は、−10mm以上0mm以下の範囲内であり、Y2は、−10mm以上10mm以下の範囲内となる値とした。
符号R0は、フェース面1の速度分布を考慮しない場合における最高初速点を示し、符号R1はフェース面1の速度分布を考慮した場合における最高初速点を示す。
ここで、フェース面1の速度分布を考慮しない最高初速点R0に対してフェース面1の速度分布を考慮した最高初速点Rの位置はトウ側に移動する。
最高初速点Rの位置は、X3=6mm、Y3=0mmとなり、したがって、最高初速点Rは中心点Cよりもトウ側に6mm偏った位置となっている。
【0058】
他方のゴルフクラブヘッドは、図32に示すように、重心点Pの位置は、X1=3.5mm、Y=8mmであり、X方向における重心点Pの位置は中心点Cよりもヒール側に偏っている。以下では説明の便宜上、図32に示すゴルフクラブヘッドを「ヒール重心ヘッド」という。
また、最大たわみ点Qの位置は、図31と同様である。
この場合も、フェース面1の速度分布を考慮しない最高初速点R0に対してフェース面1の速度分布を考慮した最高初速点Rはトウ側に移動する。
最高初速点Rの位置は、X3=0mm、Y3=0mmとなり、したがって、最高初速点Rは中心点Cと一致する。
【0059】
上述したトウ寄り重心ヘッド、ヒール重心ヘッドを用いて以下の実験を行った。
トウ寄り重心ヘッド、ヒール重心ヘッドのそれぞれにおいて以下の打点でゴルフボールを実際に打撃して飛距離を測定した。
ゴルフボールを打撃する打点は、図29に示すように、中心点C(打点番号1)と、X方向に沿って中心点Cを挟んでヒール側3箇所の打点(打点番号4、15、31)と、トウ側3箇所の打点(打点番号8、23、28)の合計7つとした。
【0060】
測定結果を図33に示す。
図33から明らかなように、ヒール重心ヘッドでは、飛距離は中心点Cを最大値としており、打点位置が中心点Cから離れるにしたがって、飛距離が低下するが、飛距離が低下する傾きはトウ側およびヒール側でほぼ均等となっており、バランスがとれている。
一方、トウ寄り重心ヘッドでは、飛距離は打点番号8の打点を最大値としており、打点位置が打点番号8の打点から離れるにしたがって、飛距離が低下するが、飛距離が低下する傾きは、トウ側に比べてヒール側がより顕著となっており、バランスがとれていない。
特に、トウ寄り重心ヘッドはヒール重心ヘッドに比較して、飛距離が打点番号15では4ヤード低下し、打点番号31では7ヤード低下している。
【0061】
以上のことから次のことがいえる。
前述したように、ゴルファの打点位置の平均は中心点Cであり、したがって、最高初速点Rは中心点Cに合致、あるいは、近接させて配置することが飛距離を確保する上で有利となる。
図31、図32に示すように、最高初速点Rの位置は、フェース面1の速度分布の影響、言い換えると、ゴルファのスイングによるローリングの影響を受けることにより重心点P近辺から速度分布が速い方向に移動する。
したがって、最高初速点Rを中心点Cに合致、あるいは、近接させて配置するためには重心点Pをヒール寄りに配置することが必要である。
すなわち、図32に示すヒール重心ヘッドでは、最高初速点Rが中心点Cに合致、あるいは、近接させて配置されているため、飛距離を確保する上で有利となる。さらに、打点がヒール側あるいはトウ側にばらついた場合に、ヒール側およびトウ側の双方において飛距離が低下する度合いのバランスがとれたものとなり、打点のばらつきに対する飛距離の低下を抑制する上でより一層有利となる。
言い換えると、最高初速点Rの位置を本発明で規定された範囲内、すなわち、最高初速点Rの位置をX3が−5mm以上5mm以下の範囲内とし、Y3が−5mm以上5mm以下の範囲内とすることで上述の効果が奏される。
【0062】
これに対して、図31に示すトウ寄り重心ヘッドでは、最高初速点Rが中心点Cよりもトウ側に偏って配置されているため、打点がヒール側あるいはトウ側にばらついた場合に、ヒール寄りの打点での飛距離の低下がトウ寄りの打点での飛距離の低下に比較して顕著なものとなる。
したがって、打点がヒール寄りであるか、トウ寄りであるかによって、飛距離が低下する度合いのバランスが偏ったものとなり、打点のばらつきに対する飛距離の低下を抑制する上で不利となる。
【符号の説明】
【0063】
1……フェース面、5……ヒール、6……シャフト、8……トウ、10……ゴルフクラブヘッド、P……重心点、Q……最大たわみ点、ΔL……重心点Pと最大たわみ点Qの離間距離、φ……重心点Pと最大たわみ点Qとを結ぶ直線がX方向となす角度、R……最高初速点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドの設計方法であって、
ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドをセットした状態で前記ゴルフクラブヘッドのフェース面のトウ側からヒール側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面の中心点の座標を(0,0)とし、
前記ゴルフクラブヘッドの重心位置を前記フェース面に垂直に投影させた重心点の座標を(X1,Y1)とし、
前記フェース面の1次振動における最大たわみ点の座標を(X2,Y2)としたとき、
X1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、Y1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、
X2を、−10mm以上0mm以下の範囲内とし、Y2を、−10mm以上10mm以下の範囲内とし、
前記重心点と前記最大たわみ点の離間距離を、5〜15mmの範囲内とし、
前記重心点と前記最大たわみ点とを結ぶ直線がX方向となす角度を0〜70度の範囲内とし、
前記ゴルフクラブヘッドをシャフトに取着したゴルフクラブをスウィングして前記フェース面でゴルフボールを打撃する場合に、
前記ゴルフボールの最高初速が得られる前記フェース面の打点を最高初速点とし、
前記最高初速点の座標を(X3,Y3)としたとき、
X3を−5mm以上5mm以下の範囲内とし、Y3を−5mm以上5mm以下の範囲内とした、
ゴルフクラブヘッドの設計方法。
【請求項2】
前記最大たわみ点でのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となる前記フェース面の面積をたわみ面積とした場合、
前記たわみ面積を150mm2以上とした、
請求項1記載のゴルフクラブヘッドの設計方法。
【請求項3】
前記最大たわみ点でのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となる前記フェース面の面積をたわみ面積とした場合、
前記たわみ面積が前記フェース面積に占める割合を4%以上とした、
請求項1記載のゴルフクラブヘッドの設計方法。
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドの設計方法であって、
ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドをセットした状態で前記ゴルフクラブヘッドのフェース面のトウ側からヒール側に向かう水平方向をX方向とし、鉛直上向きの方向をY方向とし、フェース面の中心点の座標を(0,0)とし、
前記ゴルフクラブヘッドの重心位置を前記フェース面に垂直に投影させた重心点の座標を(X1,Y1)とし、
前記フェース面の1次振動における最大たわみ点の座標を(X2,Y2)としたとき、
X1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、Y1を、0mm以上10mm以下の範囲内とし、
X2を、−10mm以上0mm以下の範囲内とし、Y2を、−10mm以上10mm以下の範囲内とし、
前記重心点と前記最大たわみ点の離間距離を、5〜15mmの範囲内とし、
前記重心点と前記最大たわみ点とを結ぶ直線がX方向となす角度を0〜70度の範囲内とし、
前記ゴルフクラブヘッドをシャフトに取着したゴルフクラブをスウィングして前記フェース面でゴルフボールを打撃する場合に、
前記ゴルフボールの最高初速が得られる前記フェース面の打点を最高初速点とし、
前記最高初速点の座標を(X3,Y3)としたとき、
X3を−5mm以上5mm以下の範囲内とし、Y3を−5mm以上5mm以下の範囲内とした、
ゴルフクラブヘッドの設計方法。
【請求項2】
前記最大たわみ点でのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となる前記フェース面の面積をたわみ面積とした場合、
前記たわみ面積を150mm2以上とした、
請求項1記載のゴルフクラブヘッドの設計方法。
【請求項3】
前記最大たわみ点でのたわみ量を100%とした時に、たわみ量が95%以上となる前記フェース面の面積をたわみ面積とした場合、
前記たわみ面積が前記フェース面積に占める割合を4%以上とした、
請求項1記載のゴルフクラブヘッドの設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2013−48963(P2013−48963A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−271147(P2012−271147)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2011−52467(P2011−52467)の分割
【原出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2011−52467(P2011−52467)の分割
【原出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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