ゴルフクラブ用グリップ
【課題】グリップ感及び打球方向性が向上した安価なゴルフクラブ用グリップの提供。
【解決手段】このグリップ10の一定の領域12は、二重構造を有する。グリップ10は、柔らかい樹脂からなるグリップ本体14と、硬い樹脂からなるエンドキャップ15とを備える。グリップ本体14は、エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形される。エンドキャップ15は、筒状部13を備えている。この筒状部13の軸方向の長さは、一定の寸法に設定されている。筒状部13は、グリップ本体14の後端部に挿入されている。このため、上記領域12のねじり剛性が向上されている。グリップ本体14は、ピンゲート金型による成型され、ゲート残り19が中心を示す目印を兼ねている。
【解決手段】このグリップ10の一定の領域12は、二重構造を有する。グリップ10は、柔らかい樹脂からなるグリップ本体14と、硬い樹脂からなるエンドキャップ15とを備える。グリップ本体14は、エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形される。エンドキャップ15は、筒状部13を備えている。この筒状部13の軸方向の長さは、一定の寸法に設定されている。筒状部13は、グリップ本体14の後端部に挿入されている。このため、上記領域12のねじり剛性が向上されている。グリップ本体14は、ピンゲート金型による成型され、ゲート残り19が中心を示す目印を兼ねている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用グリップの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にゴルフクラブは、ヘッド、シャフト及びグリップから構成されている。たとえばシリコーン樹脂等により構成されたグリップが従来から提供されている。このような材料からグリップが構成されることにより、ゴルファーがゴルフクラブを把持した時のグリップ感覚(握り心地)の向上や、グリップの滑止効果の向上並びにグリップの劣化に対する耐性の向上が図られている(特許文献1)。
【0003】
ところで、ゴルファーがボールを打つ際のヘッドのフェースとボールとの衝突角度は、打球方向に大きな影響を与える。ボールがゴルファーの意図する方向に飛ぶために、ボールがヘッドのフェースに垂直に当たることが重要である。また、インパクトの瞬間にゴルフクラブに加わる衝撃力は大きい。従来から、この衝撃力は、ゴルフクラブに次のような影響を与えると考えられている。すなわち、この衝撃力はシャフトにねじり変形を生じさせる。そのため、ヘッドのフェースがボールに対して垂直から傾いた角度で当たり、その結果、打球方向がゴルファーの意図する方向からずれてしまう。このような考えのもと、シャフトのねじり変形を抑えるための種々の対策が従来から提案されている(たとえば、特許文献2〜特許文献4参照)。
【0004】
前述のように、従来では、打球方向のずれは専らシャフトのねじれに起因すると考えられていた。ところが、シャフトのねじり剛性が向上されても、打球方向がゴルファーの意図する方向からずれてしまうという現象が発生する。本願発明者は、この現象の原因を研究するなかで、ゴルフクラブの構成要素であるグリップがシャフトよりも格段に弾性に富むことに着目した。そして、本願発明者は、上記衝撃力がシャフトのねじり変形を生じさせることは明らかであるものの、ヘッドのフェースとボールとの衝突角度のずれは、上記衝撃力によりグリップが弾性変形することに大きく依存するものであるとの知見を得た。
【0005】
本願発明者は、従来のグリップの構造を改良することによってヘッドのフェースとボールとの衝突角度のずれを効果的に抑えることができると考えた。ただし、その一方で、前述のようにグリップ感覚の向上のために、グリップの構成材料として柔らかい樹脂が採用されるべきとの要請もある。そして、そのような柔らかい材料でグリップが構成された場合は、グリップのねじり剛性が低下することは明らかである。そこで、本願発明者は、良好なグリップ感覚及び滑止効果を発揮しつつ、ゴルファーが意図した方向にボールを飛ばすことができるゴルフクラブ用グリップを開発し、特許を取得した(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−173978号公報
【特許文献2】特開2007−275443号公報
【特許文献3】特開2004−275324号公報
【特許文献4】特開2007−117109号公報
【特許文献5】特許第4606499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5が開示するグリップは、当該グリップの前端から後端までの全領域においてねじり剛性が向上されており、打球時のねじり変形がきわめて小さいという利点がある。ところが、このグリップは製造工程が複雑でコストが高いという問題があった。製造工程が複雑になる原因は、このグリップが、上記全領域にわたって高い剛性を有する構造となっているからである。
【0008】
本願発明者は、打球時のグリップのねじり変形を研究するなかで、さらに次のような知見を得た。すなわち、本願発明者は、グリップのねじり変形が抑えられるためには、グリップの剛性が当該グリップの全域にわたって向上される必要はなく、一定の領域において向上されるだけで大きな効果が発揮されるとの知見を得た。また、一定領域のみについて剛性が向上されるだけであるならば、当然に製造工程が簡略化されコストダウンが図られる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ゴルファーが意図した方向にボールを飛ばすことができ、かつ良好なグリップ感覚及び滑止効果を発揮するゴルフクラブ用グリップをコスト安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 上記目的が達成されるため、本発明に係るゴルフクラブ用グリップは、第1の樹脂からなる筒状のグリップ本体と、第1の樹脂よりも高硬度の第2の樹脂からなり、上記グリップ本体の後端部に設けられてグリップエンドを形成するエンドキャップとを有する。上記グリップ本体は、上記エンドキャップをインサート部材としてインサート成形されている。上記エンドキャップは、上記グリップ本体の後端部に挿入される筒状部と、上記グリップ本体の後端を塞ぐ端面板部とを備える。上記筒状部の長さは、60mm〜75mmに設定されている。
【0011】
このゴルフクラブ用グリップは、グリップ本体にエンドキャップの筒状部が挿入されることによって二重構造となっている。グリップ本体は、エンドキャップをインサート部材としてインサート成形されているから、グリップ本体はエンドキャップと強固に固着されて一体となっている。このゴルフクラブ用グリップは、ゴルフクラブシャフトに装着され、ゴルファーによって把持される。グリップ本体は、相対的に柔らかい樹脂から構成されているので、ゴルフファーにとってゴルフクラブ用グリップの握り心地が良い。また、高硬度の樹脂からなるエンドキャップがグリップ本体の後端部に装着されている。具体的には、上記筒状部が上記グリップ本体に挿入され、且つ上記端面板部が上記グリップ本体の後端を塞いでいる。これにより、グリップ本体の後端部の曲げ剛性及び座屈剛性が高くなり、ゴルファーは確実にゴルフクラブ用グリップを握ることができる。
【0012】
ところで、上記筒状部がグリップ本体に挿入されることにより、当該グリップ本体の肉厚が相対的に小さくなる。詳述すれば、まず、ゴルフクラブ用グリップはゴルファーが把持するものであるから、その外径及び肉厚は自ずと一定範囲内に限定される。すなわち、上記筒状部がグリップ本体に挿入された状態で、ゴルフクラブ用グリップの肉厚寸法tは、上記筒状部の肉厚寸法t1とグリップ本体の肉厚寸法t2とを足し合わせたものであり、この肉厚寸法tが一定の値に設定される。したがって、硬い材料からなる筒状部がグリップ本体に挿入されることにより、ゴルフクラブ用グリップのうち柔らかい材料からなる部分の肉厚(すなわちグリップ本体の肉厚t2)は、自ずと小さくなる。
【0013】
ゴルフクラブ用グリップの変形の程度は、柔らかい樹脂(上記第1の樹脂)からなるグリップ本体の変形に依るところが大きい。そうすると、硬い樹脂からなる上記筒状部がグリップ本体に挿入されることによって柔らかい樹脂からなるグリップ本体の肉厚t2が小さくなるから、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性が大きくなる。つまり、打球時のゴルフクラブ用グリップのねじり変形量が抑えられる。
【0014】
本願発明者は、上記筒状部の長さが上記寸法に設定されるだけで、ゴルフクラブ用グリップの全体のねじり変形量が抑えられるとの知見を得た。従来のようにグリップ本体のほぼ全域に筒状部が挿入されていなくても、ゴルフクラブ用グリップ全体としてのいわゆるトルク性能が向上する。その定量的原因究明は未だなされていないが、上記筒状部の長さが上記寸法に設定されることによる効果は、後述の実施例が示すとおりである。また、上記筒状部の長さが上記寸法に設定されることにより、製造工程が簡略化され、簡単且つ安価にゴルフクラブ用グリップが製造され得る。
【0015】
(2) 上記筒状部の後端部に、上記ピンゲート金型のゲートに対応する孔が径方向に貫通形成されているのが好ましい。この場合、上記グリップ本体は、ピンゲート金型を用いて成形されるのが好ましい。
【0016】
この構成では、上記グリップ本体がピンゲート金型を用いて成形されるから、成形不良率が抑えられる。具体的には、成形後に、成形品(ゴルフクラブ用グリップ)に生じる残留応力が抑えられ、いわゆる渦状変形の発生が防止される。また、いわゆるゲート残りがきわめて小さくなるから、当該ゲート残りを除去する作業(典型的には、製品の一部を切断する作業)が不要となり、製造工程をさらに簡略化してコストダウンが図られる。ただし、上記孔が上記筒状部の後端部に配置されることから、小さなゲート残りが当該部位に発生する。ところが、このような小さなゲート残りがゴルフクラブ用グリップの後端近傍に生じることから、当該ゲート残りが当該ゴルフクラブ用グリップの中心を示す目印として利用される。
【0017】
すなわち、上記筒状部に上記孔を設けるという技術的手段は、ピンゲート金型の採用を可能とし、製品の不良率を抑えると共に、ピンゲート金型が採用されることにより必然的に発生する小さなゲート残りを上記目印として機能させる。つまり、当該技術的手段は、ゴルフクラブ用グリップのコストダウン及び機能向上にきわめて巧妙に作用している。
【0018】
(3) 上記筒状部の外周面に上記グリップ本体と係合する係合突起が設けられていてもよい。当該係合突起の先端部は、上記インサート成形により上記グリップ本体と融合しているのが好ましい。
【0019】
この構成では、上記係合突起がグリップ本体の径方向(肉厚方向)に食い込んだ状態となり、当該グリップ本体と上記エンドキャップとが強固に固着される。これにより、ゴルフクラブ用グリップに偶力が作用した場合に、上記エンドキャップに対するグリップ本体の相対的変位が抑えられる。しかも、上記係合突起が設けられた部位では、グリップ本体の肉厚がさらに小さくなるから、当該グリップ本体の変形がさらに抑えられる。したがって、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性がさらに向上する。
【0020】
(4) 複数の係合突起が上記筒状部の外周面に周方向に所定のピッチで配置されているのが好ましい。
【0021】
この構成では、上記係合突起は上記エンドキャップの筒状部の外周面全体に均等に且つ間欠的に配置されることになるから、この係合突起が配置されていない部位も均等に存在することになる。すなわち、グリップ本体の肉厚が相対的に大きい部位が、ゴルフクラブ用グリップの外周面全体に均等に存在することになる。したがって、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性が高く維持されたまま、ゴルファーがゴルフクラブ用グリップを把持したときのグリップ感がさらに向上する。
【0022】
(5) 上記係合突起の横断面形状は、上記先端部が上記グリップ本体側へ突出した三角形であるのが好ましい。
【0023】
これにより、上記係合突起が確実にグリップ本体と融合する。したがって、当該グリップ本体と上記エンドキャップとが一層強固に固着される。
【0024】
(6) 上記係合突起は、上記筒状部の長手方向に延びる突条からなるのが好ましい。
【0025】
この構成では、この係合突起が上記エンドキャップと上記グリップ本体とを連結するキーの機能を発揮する。したがって、上記エンドキャップと上記グリップ本体とがさらに強固に固着され、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性が一層向上する。
【0026】
(7) 上記係合突起は、上記筒状アウターの表面ないし表面近傍に達しているのが好ましい。
【0027】
この構成によれば、ゴルファーがゴルフクラブ用グリップを把持したときに上記係合突起の存在を感知することができる。この係合突起は上記硬い樹脂(第2の樹脂)からなるので、ゴルファーにとって手に引っ掛かる感触がある。つまり、滑止効果が発揮されるという利点がある。
【0028】
(8) 上記第1の樹脂の硬度は、48〜52(JIS K 6253 タイプA)に設定されるのが好ましい。
【0029】
この構成では、ゴルファーがゴルフクラブ用グリップを把持したときに非常に高いグリップ感が得られる。
【0030】
(9) 前述のゴルフクラブ用グリップを製造する方法が提案される。この製法は、上記第2の樹脂を材料として上記エンドキャップを射出成形する第1工程と、当該射出成形されたエンドキャップの上記孔が上記ピンゲート金型のゲートに位置合わせされた状態で、当該エンドキャップが上記ピンゲート金型に装着される第2工程と、上記ピンゲート金型が型締めされた状態で上記第1の樹脂が上記ゲートから射出される第3工程と、上記ピンゲート金型が片開きされた後に成形されたゴルフクラブ用グリップが取り出される第4工程とを含むことを特徴とする。
【0031】
すなわち、まず、上記エンドキャップが射出成形により製造される。そして、このエンドキャップをインサート部材として、ピンゲート金型を用いた射出成形によりグリップ本体が成形される。これにより、ゴルフクラブ用グリップが製造される。ピンゲート金型が採用されるので、製品(ゴルフクラブ用グリップ)に不良が発生する割合が抑えられる。具体的には、成形後に、成形品(ゴルフクラブ用グリップ)に生じる残留応力(いわゆる渦状変形の発生)が抑えられる。また、いわゆるゲート残りがきわめて小さくなるから、当該ゲート残りを除去する作業(典型的には、製品の一部を切断する作業)が不要となり、製造工程が簡略化される。発生したゲート残りは、ゴルフクラブ用グリップの後端近傍に生じるから、当該ゲート残りが当該ゴルフクラブ用グリップの中心を示す目印として利用される。前述のように、グリップ本体を構成する樹脂は相対的に柔らかいので、ゴルファーにとってグリップ感に優れる。しかも、ゴルフクラブ用グリップが前述の構造を備えるから、ねじり変形が抑えられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、グリップ本体が柔らかい樹脂から構成されるので、ゴルファーは良好なグリップ感を得られる。また、グリップ本体に装着されたエンドキャップ硬い樹脂からなり、しかも、エンドキャップの筒状部がグリップ本体の後端部に挿入されていることから、ゴルフクラブ用グリップ全体の捻り変形量が抑制される。したがって、ゴルファーがボールを打った際のゴルフクラブ用グリップの捻れが抑えられ、ゴルファーの意図した方向に打球が飛ぶ。加えて、上記筒状部が上記グリップ本体の後端部にのみ挿入されるから、ゴルフクラブ用グリップの製造工程が簡略化され、コスト安価に製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るグリップの正面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るグリップの断面図である。
【図3】図3は、図2における要部拡大図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るエンドキャップの断面図である。
【図5】図5は、図5は、エンドキャップ15の右側面図である。
【図6】図6は、エンドキャップ15の拡大左側面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る突条の拡大平面図である。
【図8】図8は、図7におけるVIII−VIII断面図である。
【図9】図9は、実施形態の第1の変形例に係るエンドキャップの正面図である。
【図10】図10は、実施形態の第2の変形例に係るグリップの要部拡大断面図である。
【図11】図11は、試料グリップの試験方法の原理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、適宜図面が参照されつつ、本発明の好ましい実施形態が説明される。
【0035】
[ゴルフクラブ用グリップの概略]
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ用グリップ(以下、「グリップ」と称される。)10の正面図であり、図2は断面図である。
【0037】
このグリップ10は、ゴルフクラブ(特にウッドクラブ及びアイアンクラブ)に装着されるものである。図1が示すように、グリップ10は、ゴルフクラブのシャフト11の後端部に嵌め込まれて固定されている。シャフト11は、断面が円形の棒状に形成されており、スチールのほかカーボン繊維強化樹脂等から構成されている。なお、このシャフト11の先端にクラブヘッドが装着されている。
【0038】
このグリップ10は、ゴルファーがゴルフクラブを使用する際に把持する部材であるから、ゴルファーにとって握り易い形状であることが要請される。そのため、本実施形態に係るグリップ10は、円筒状に形成されており、その断面形状は円形である。シャフト11は、グリップ10に挿入されている。なお、グリップの断面形状は円形に限定されるものではなく、多角形であってもよい。
【0039】
図3は、図2における要部拡大図であり、グリップ10の後端部の構造を示している。
【0040】
本実施形態に係るグリップ10の特徴とするところは、図2及び図3が示すように、グリップ10の後端部の所定の領域12が二重構造となっている点、及び当該領域12の内側部分(後述の筒状部13)の硬度よりも外側部分(後述のグリップ本体14)の硬度が低くなっている点である。すなわち、上記領域12において、グリップ10の外側部分が柔らかく、内側部分が硬い。グリップ10がこのような構造を備えることにより、ゴルファーがグリップ10を把持したときに良好なグリップ感を得ることができると共に、コスト安価に且つ効果的にグリップ10のねじり剛性が向上される。
【0041】
[グリップの構造]
【0042】
図2及び図3が示すように、グリップ10は、グリップ本体14と、グリップ本体14の後端部17に設けられたエンドキャップ15とを備えている。前述のように、グリップ10は全体として円筒状を呈するが、グリップ10の先端部16の外径は、グリップ10の後端部17の外径よりも小さい。このため、グリップ10の外形形状はテーパを形成し、グリップ10は、先端部16から後端部17に向かって漸次太くなっている。グリップ10がこのような形状であることにより、ゴルファーは、グリップ10を確実に把持することができる。なお、グリップ10の全長は、本実施形態では260mmに設定されている。ただし、グリップの全長は特に限定されるものではなく、典型的には250mm〜270mm程度に設定される。
【0043】
[グリップ本体]
【0044】
図1及び図2が示すように、グリップ本体14は、樹脂(特許請求の範囲に記載された「第1の樹脂」に相当)から構成されている。グリップ本体14は、射出成形により形成される。なお、後述されるように、グリップ本体14は、上記エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形される。グリップ本体14を構成する樹脂の種類は特に限定されない。グリップ本体14の硬度は、本実施形態では50(JIS K 6253 タイプA)に設定されているが、この硬度は45〜55(JIS K 6253 タイプA)に設定されるのが好ましく、さらに48〜52(JIS K 6253 タイプA)に設定されるのがより好ましい。ただし、このグリップ本体14の硬度は特に限定されるものではなく、上記エンドキャップ15よりも低硬度であればよい。つまり、物性としてグリップ本体14がエンドキャップ15よりも柔らかい部材であればよい。
【0045】
グリップ本体14は円筒状を呈し、グリップ本体14の外形形状はテーパを形成している。本実施形態では、グリップ本体14の先端部16の外径D1は19mm、後端部17の外径D2は26mmに設定されている。グリップ本体14は、先端部16から後端部17に向かって漸次太くなっている。図3が示すように、グリップ本体14の後端部17の外径D2は、上記エンドキャップ15の端面板部18の外径と一致されている。
【0046】
前述のように、グリップ本体14は、エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形される。特に本実施形態では、いわゆるピンゲート金型が成形作業に採用される。図3が示すように、グリップ本体14は、エンドキャップ15の筒状部13を周方向に取り囲んで被覆するように上記樹脂によって成形される。これにより、グリップ本体14と、エンドキャップ15とが確実に相互に固着し、一体化する。
【0047】
このようにグリップ本体14がインサート成形されることにより、図1が示すグリップ10が形成される。また、本実施形態では、上記ピンゲート金型が採用されるので、グリップ本体14の後端部にいわゆるゲート残り19が発生する。このゲート残り19は、円形の凹部として現れる。ゲート残り19の位置は、後に詳述されるエンドキャップ15に設けられた孔21に対応している。ゲート残り19の内径はきわめて小さく、本実施形態では、1.5mm〜2.5mmに設定される。グリップ本体14が円筒形であるから、ゲート残り19は、グリップ本体14の中心軸20(グリップ10の中心軸と一致)に対して直交する。したがって、ゲート残り19は、グリップ10の中心を現す目印として機能する。本実施形態では、このゲート残り19が着色される。着色は、インクの塗布その他既知の手段により実現されるが、これにより、グリップ10の中心が一目瞭然となる。
【0048】
[エンドキャップ]
【0049】
図4はエンドキャップ15の断面図である。また、図5及び図6は、それぞれ、エンドキャップ15の右側面図、拡大左側面図である。
【0050】
エンドキャップ15は、図1及び図2が示すように、グリップ本体14の後端部17に配置され、グリップエンドを構成する。図4が示すように、エンドキャップ15は、上記筒状部13及び端面板部18とを有する。この筒状部13と端面板部18との境界に段部22が形成されており、端面板部18は筒状部13の端面から径方向に張り出している。筒状部13は、端面板部18と一体的に形成されており、樹脂(特許請求の範囲に記載された「第2の樹脂」に相当)から構成されている。エンドキャップ15は、金型を用いた射出成形により形成される。エンドキャップ15を構成する樹脂の種類は特に限定されない。ただし、エンドキャップ15の硬度は、75〜80(JIS K 6253 タイプA)に設定される。本実施形態では、エンドキャップ15の硬度は75(JIS K 6253 タイプA)に設定されている。
【0051】
筒状部13は円筒形を呈しており、図1及び図2が示すように、グリップ本体14の後端部17に挿入された状態となっている。図4が示すように、本実施形態では、筒状部13の内径d1は16mmに設定され、外径d2は19mmに設定されている。ただし、エンドキャップ15はグリップ本体14にインサートされる部材であるから、上記寸法d1、d2は、グリップ本体14のサイズに適合するように適宜設計変更され得る。
【0052】
詳述すれば、図3が示すように、グリップ本体14にエンドキャップ13が設けられることにより、上記領域12において、グリップ本体14は、外側層部23及び内側層部24に分離される。そして、本実施形態では、上記寸法d1、d2は、上記外側層部23の肉厚t1が1.4mmとなるように設定される。ただし、この外側層部23の肉厚t1は、1.4mmに限定されるものではなく、0.8mm〜2.0mmに設定されればよい。この肉厚t1が上記寸法に設定されることによる作用効果は後述される。なお、上記外側層部23の肉厚t1が上記寸法に設定される結果、上記内側層部24の肉厚t2が自動的に決定される。この肉厚t2は、特に限定されるものではない。
【0053】
図4が示すように、筒状部13の長さL(上記領域12の長さ)は、本実施形態では65mmに設定されている。ただし、この長さLは55mm〜80mm程度に設定され、特に60mm〜75mmの範囲に設定されるのが好ましい。筒状部13の長さLが上記寸法に設定されることによる効果は後述される。
【0054】
筒状部13の後端部に孔21が設けられている。この孔21は、筒状部13を径方向に貫通しており、エンドキャップ15の端面25から所定距離Aの位置に配置されている。本実施形態では、孔21の内径は4mmに設定されている。もっとも、孔21の内径は2.7mm〜3.5mmに設定され得る。また、本実施形態では、上記距離Aは15mmに設定されている。この距離Aは、15mmに限定されるものではないが、上記孔21は、上記段部22の近傍に配置されるのが好ましい。この孔21は、グリップ本体14が前述のように成形される際のゲートに対応している。したがって、この孔21を通過して樹脂がピンゲート金型内のキャビティに送り込まれるようになっている。
【0055】
図4及び図5が示すように、上記筒状部13に複数の突条26(特許請求の範囲に記載された「係合突起」に相当)が形成されている。各突条26は、軸方向20(特許請求の範囲に記載された「長手方向」に相当)に延びており、細長棒状に形成されている。各突条26は、射出成形により筒状部13と一体的に形成されている。本実施形態では、図5が示すように、8本の突条26が筒状部13の外周面29に設けられている。各突条26は、筒状部13の周方向に所定のピッチで並設されている。具体的には、筒状部13の外周面を周方向に8等分した部位に各突条26が配置されている。本実施形態では、複数の突条26が規則的に略均等に分散されているが、複数の突条26が略均等に分散していなくてもよい。また、突条26の数も特に限定されるものではない。
【0056】
図7は突条26の拡大平面図、図8は図7におけるVIII−VIII断面図であり、突条26の拡大横断面を表している。
【0057】
本実施形態では、突条26の断面形状(横断面形状)は、三角形である。このため、突条26の先端部30は、グリップ本体14側へ突出している。突条14の断面形状は正三角形である必要はないが、先端部30が尖った形状であるのが好ましい。突条26の幅Bは1.0mm、長さCは50.0mm、高さHは0.7mmに設定されている。ただし、突条26の幅B長さC、高さHは上記寸法に限定されるものではなく、適宜設計変更され得る。特に、上記高さHは、0.4mm〜1.4mmに設定され得る。突条26の断面形状が三角形であることによる作用効果は後述される。
【0058】
図4及び図6が示すように、端面板部18は円盤状に形成されており、上記筒状部13の後端に連続して形成されている。この端面板部18の外径は、上記グリップ本体14の後端部17の外径D2と一致されており、本実施形態では26mmに設定されている。端面板部18は、筒状部13に対して直交(すなわち、中心軸20に対して直交)している。図3が示すようにグリップ本体14に筒状部13が挿入された状態で、端面板部18は、グリップ本体14の後端を塞ぐように配置される。なお、端面板部18の中央に貫通孔27が設けられている。この貫通孔27は、省略されてもよい。
【0059】
[グリップの製法]
【0060】
グリップ10は、前述のように、樹脂を材料としてピンゲート金型を採用した成形により製造される。
【0061】
具体的には、まず、上記硬い樹脂(第2の樹脂)を材料としてエンドキャップ15(図4参照)が射出成形により成形される(第1工程)。この成形手法は、既知のものが採用され、いわゆるダイレクトゲート金型、サイドゲート金型、ピンゲート金型、サブマリンゲート金型、ホットランナー金型その他の金型が採用され得る。
【0062】
次に、グリップ本体14が成形される。グリップ本体14も射出成形により成形され、これにより、グリップ10が完成する。このとき、上記柔らかい樹脂(第1の樹脂)を材料として、ピンゲート金型によりグリップ本体14が成形される。
【0063】
上記第1工程により成形されたエンドキャップ15がインサート部材としてピンゲート金型内にセットされる。具体的には、エンドキャップ15の上記孔21が上記ピンゲート金型のゲートに位置合わせされ、この状態で、当該エンドキャップ15が上記ピンゲート金型に装着される(第2工程)。続いて、上記ピンゲート金型が型締めされた状態で、上記柔らかい樹脂が上記ゲートから金型のキャビティ内に射出される(第3工程)。そして、上記ピンゲート金型が片開きされた後に、成形されたグリップ10が取り出される(第4工程)。
【0064】
このように、グリップ10は、ピンゲート金型により成形されるので、成形品(グリップ10)に生じる残留応力が抑えられ、いわゆる渦状変形の発生が防止される。つまり、不良品の発生が抑制される。また、ゲート残りがきわめて小さくなるから、このゲート残りを除去する作業が不要となる。すなわち、従来の成形では、製造工程の一部にゲート残りを切断する作業が含まれていたが、ピンゲート金型が採用されることにより、かかる作用が不要となり、製造工程が簡略化される。
【0065】
一方で、ゲート残りは必ず発生する。しかし、このゲート残りは、グリップ10の後端近傍に生じるから、このゲート残りがグリップ10の中心を示す目印となる。すなわち、ピンゲート金型の採用により、製品の不良率を抑えるだけでなく、必然的に発生する小さなゲート残りがグリップ10の中心を表す目印として機能するという利点がある。
【0066】
[グリップの作用効果]
【0067】
このグリップ10は、図1が示す状態でゴルフクラブのシャフト11に装着される。ゴルファーは、グリップ10を把持してゴルフクラブをスイングさせる。これによりゴルフクラブのヘッドがボールと衝突し、ボールは所定の方向へ飛ぶ。
【0068】
グリップ10は前述のような二重構造を有しており、グリップ本体14とエンドキャップ15とが強固に固着されている。ゴルファーはグリップ10を握った際にグリップ本体14を把持することになる。グリップ本体14はエンドキャップ15よりも柔らかい樹脂から構成されるので、ゴルファーは、良好なグリップ感が得られる。特に本実施形態では、グリップ本体14の硬度が48〜52(JIS K 6253 タイプA)に設定されるから、ゴルファーがグリップ10を把持したときに非常に高いグリップ感が得られる。
【0069】
グリップ10がグリップ本体14及びエンドキャップ15を備えた二重構造を有することにより、グリップ本体14の内側に硬い材料からなる筒状部13が存在することになる。図3が示すように、グリップ本体14の肉厚寸法は、外側層部23の肉厚t1、内側層部24の肉厚t2及び筒状部13の肉厚(d2/2−d1/2)を足し合わせたものである。グリップ本体14の肉厚寸法は、自ずとゴルファーが握り易い一定範囲内の値となる。したがって、硬い材料からなる筒状部13が存在することにより、グリップ本体14のうち柔らかい材料からなる部分の肉厚(すなわち上記外側層部23の肉厚t1)は、筒状部13が存在しない場合に比べて相対的に小さくなる。
【0070】
ところで、ゴルファーがボールを打った際に発生する衝撃力は、グリップ10に偶力として作用してグリップ本体14にねじり変形を与える。このねじり変形の程度は、柔らかい樹脂からなるグリップ本体14の変形に大きく依存する。本実施形態に係るグリップ10のように、グリップ本体14に硬い材料からなる筒状部13が挿入されることにより、グリップ本体14の変形し易い部分(上記外側層部23)の肉厚t1が小さくなる。その結果、グリップ本体14のねじり剛性が向上する。
【0071】
グリップ本体14のねじり剛性が向上することにより、当然にグリップ10のねじり剛性が向上する。これにより、ゴルファーがボールを打った際のグリップ10の捻れが抑えられる。したがって、インパクトの瞬間におけるボールとヘッドのフェースとの衝突角度が直角に保たれる。その結果、ゴルファーの意図した方向へ打球が飛ぶという効果が発揮される。
【0072】
しかも、本実施形態では、グリップ本体14の一部の領域(上記領域12)のねじり剛性が向上されているだけである。すなわち、グリップ本体14のねじり変形を抑える二重構造は、上記領域12にのみ形成されているだけである。したがって、グリップ本体14の軸方向20の全域にわたって上記二重構造が形成される場合にくらべてグリップ10の製造コストが大幅に削減される。
【0073】
本実施形態では、エンドキャップ15の筒状部13に複数の突条26(図4及び図5参照)が設けられており、これら突条26は、グリップ本体14に係合している。すなわち、グリップ本体14は、エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形されることから、各突条26は、グリップ本体14側へ突出してグリップ本体14に食い込んでいる。これにより、エンドキャップ15とグリップ本体14とが強固に固着されている。したがって、グリップ10に偶力が作用した場合に、エンドキャップ15に対するグリップ本体14の相対的変位が抑えられる。加えて、突条26は、グリップ本体14に食い込んでいるから、この突条26が設けられた部位では、グリップ本体14の肉厚(上記外側層部23の肉厚t1)がさらに小さくなる。したがって、グリップ本体14の変形が一層抑えられ、その結果、グリップ10の捻れ量がさらに小さくなる。
【0074】
また、本実施形態では、突条26は、図5が示すように上記筒状部13の外周面29の全体に周方向に均等に配置されている。すなわち、突条26が配置されていない部位も均等に分散して存在することになる。換言すれば、グリップ本体14の肉厚が相対的に大きい部位が、グリップ10の外周面全体に均等に点在することになる。したがって、グリップ10のねじり剛性が高く維持されたまま、ゴルファーがグリップを把持したときのグリップ感がさらに向上するという利点がある。
【0075】
特に、本実施形態では、突条26は、グリップ本体14の軸方向20に沿って延びている。このため、突条26がグリップ本体14とエンドキャップ15とを連結するキーとして機能する。したがって、エンドキャップ15とグリップ本体14とがさらに強固に固着され、その結果、グリップ10のねじり剛性が一層向上するという利点もある。
【0076】
さらに、本実施形態では、図5及び図8が示すように、突条26の横断面形状が三角形であり、突条26がグリップ本体14側へ突出している。このため、グリップ本体14がインサート成形される際に、突条26の先端部30が溶けてグリップ本体14と融合する。現実には、突条26の先端部30は、図8において二点鎖線31で示すような形状となる。これにより、エンドキャップ15とグリップ本体14との結合がより一層強固なものとなり、グリップ10のねじり剛性がなお一層向上する。
【0077】
なお、本実施形態では、突条26の横断面形状が三角形であるが、突条26の横断面形状は半円形等その他の形状であってもよい。要するに、上記筒状部13の外周面29にグリップ本体14側に突出して当該グリップ本体14と係合する部材が設けられていればよい。また、突条26が省略されてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0079】
本実施例では、試料グリップの諸元(共通諸元)が下記のように設定され、エンドキャップの筒状部の長さが変化したときの当該試料グリップのねじれ易さ(ねじり剛性)が測定された。
【0080】
<共通諸元>
【0081】
試料グリップの全長は260mm、試料グリップの先端の外径は16mm、試料グリップの後端の外径は26mmに設定されている。試料グリップのグリップ本体の外側層部の肉厚は1.4mmである。グリップ本体を構成する樹脂の硬度は50(JIS K 6253 タイプA)に設定され、エンドキャップを構成する樹脂の硬度は75(JIS K 6253 タイプA)に設定されている。また、エンドキャップの筒状部に設けられた突条は8本である。各突条は筒状部の外周面に周方向に均等に配置されている。各突条26の幅は1.0mm、長さは50.0mm、高さは0.7mmに設定されている。
【0082】
実施例1:筒状部の長さ12(図3参照)が60mmである。
【0083】
実施例2:筒状部の長さ12(図3参照)が63mmである。
【0084】
実施例3:筒状部の長さ12(図3参照)が66mmである。
【0085】
実施例4:筒状部の長さ12(図3参照)が69mmである。
【0086】
実施例5:筒状部の長さ12(図3参照)が72mmである。
【0087】
実施例6:筒状部の長さ12(図3参照)が75mmである。
【0088】
比較例1:筒状部の長さ12(図3参照)が80mmである。
【0089】
比較例2:筒状部の長さ12(図3参照)が90mmである。
【0090】
比較例3:筒状部の長さ12(図3参照)が57mmである。
【0091】
比較例4:筒状部の長さ12(図3参照)が54mmである。
【0092】
比較例5:筒状部の長さ12(図3参照)が51mmである。
【0093】
比較例6:筒状部の長さ12(図3参照)が48mmである。
【0094】
比較例7:筒状部の長さ12(図3参照)が40mmである。
【0095】
比較例8:筒状部の長さ12(図3参照)が30mmである。
【0096】
<試験方法>
【0097】
図11は、試料グリップの断面図であって試験方法の原理を示している。
【0098】
試料グリップGが芯金Mに嵌め合わせて固定される。この固定は、通常のゴルフクラブ用シャフトにグリップを装着する要領で行われる。試料グリップGは、把持部材C1を介して挟持され、芯金Mも把持部材C2を介して固定される。把持部材C1は、試料グリップGを周方向に略均一に把持するように形成されている。把持部材C1による試料グリップGの把持力は、一般にゴルフプレー中にゴルファーがグリップを握る力に相当する大きさ(握力として計測される40kgf相当)に設定される。この状態で、芯金Mに60kgf・cmの捻りモーメントMoが付加され、芯金Mの捻り変形量dsをマイクロメータReが計測する。
【0099】
試験結果が表1に示される。表1の横軸は、エンドキャップの筒状部の長さであり、単位は「mm」である。表1の縦軸は、マイクロメータにより計測された捻り変形量dsを無次元化して表示したものである。捻り変形量dsを無次元化するのは、当該計測値が非常に小さな値となるからである。便宜上、この数値を「トルク」と称し、トルクが小さいほど捻り変形量が小さく、試料グリップのトルク性能が優れることが示される。この試験では、トルクが8.0以下の場合に所期のトルク性能が達成される。
【0100】
この試験では、エンドキャップの筒状部の長さが60mmを下回ると、測定されるトルクが極端に大きくなることが判明した。また、エンドキャップの筒状部の長さが60mm以上であれば、トルクが十分に抑えられることも判明した。一方、エンドキャップの筒状部の長さが75mm以上であれば、測定されるトルクに大きな変化はなく、しかも、当該筒状部の長さが75mmを越えてどれほど大きくなっても、測定されるトルクに変化がないことも判明した。
【0101】
【表1】
【0102】
表1が示すように、本願発明者は、上記筒状部13(図3参照)の長さが上記各実施例が示す寸法に設定されるだけで、グリップ10の十分なねじり剛性が実現され、高いトルク性能が発揮されるとの知見を得た。つまり、グリップ本体14の全長にわたって筒状部13が挿入されていなくても、グリップ10のトルク性能が向上する。
【0103】
[変形例]
【0104】
図9は、本実施形態の第1の変形例に係るエンドキャップ35の正面図である。
【0105】
本変形例に係るエンドキャップ35が上記実施形態に係るエンドキャップ15と異なるところは、上記実施形態では、各突条26は、上記筒状部13に沿って後端近傍から先端近傍まで延びているが(図4参照)、本変形例では、各突条36が軸方向20に沿って複数に分割され、間欠的に配置されている点である。すなわち、長手方向の寸法が小さい突条36が、軸方向にピッチp1で、且つ周方向にピッチp2で分散して上記筒樹部13の外周面29に配置されている。
【0106】
このような構造では、突条36が配置されていない部位、すなわちグリップ本体14の肉厚が相対的に大きい部位が、軸方向にも周方向にも均等に分散して存在することになる。したがって、グリップ10のねじり剛性が高く維持されたまま、ゴルファーがグリップ10を把持したときのグリップ感がさらに向上するという利点がある。
【0107】
図10は、本実施形態の第2の変形例に係るグリップ40の要部拡大断面図である。
【0108】
同図が示すように、この変形例に係るグリップ40が上記実施形態に係るグリップ10と異なるところは、上記実施形態では突条26がグリップ本体14の内部に埋まっていたのに対して、本変形例では、突条37がグリップ本体14の表面41に露出している点である。なお、グリップ40のその他の構成については、上記グリップ10と同様である。
【0109】
このように突条37がグリップ本体14の表面41に露出することにより、ゴルファーがグリップ40を把持したときに露出した突条37の先端面がゴルファーの手に接触する。この突条37は前述のような硬い樹脂からなるので、ゴルファーの手に対して確実に引っ掛かる。すなわち、高い滑止効果が発揮されるという利点がある。もっとも、突条37が完全に表面41上に露出していなくとも、突条37の頂部が表面41の近傍に達していれば、同様の効果がある。
【符号の説明】
【0110】
10・・・グリップ
12・・・領域
13・・・筒状部
14・・・グリップ本体
15・・・エンドキャップ
19・・・ゲート残り
21・・・孔
23・・・外側層部
24・・・内側層部
26・・・突条
29・・・外周面
35・・・エンドキャップ
36・・・突条
37・・・突条
40・・・グリップ
41・・・表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用グリップの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にゴルフクラブは、ヘッド、シャフト及びグリップから構成されている。たとえばシリコーン樹脂等により構成されたグリップが従来から提供されている。このような材料からグリップが構成されることにより、ゴルファーがゴルフクラブを把持した時のグリップ感覚(握り心地)の向上や、グリップの滑止効果の向上並びにグリップの劣化に対する耐性の向上が図られている(特許文献1)。
【0003】
ところで、ゴルファーがボールを打つ際のヘッドのフェースとボールとの衝突角度は、打球方向に大きな影響を与える。ボールがゴルファーの意図する方向に飛ぶために、ボールがヘッドのフェースに垂直に当たることが重要である。また、インパクトの瞬間にゴルフクラブに加わる衝撃力は大きい。従来から、この衝撃力は、ゴルフクラブに次のような影響を与えると考えられている。すなわち、この衝撃力はシャフトにねじり変形を生じさせる。そのため、ヘッドのフェースがボールに対して垂直から傾いた角度で当たり、その結果、打球方向がゴルファーの意図する方向からずれてしまう。このような考えのもと、シャフトのねじり変形を抑えるための種々の対策が従来から提案されている(たとえば、特許文献2〜特許文献4参照)。
【0004】
前述のように、従来では、打球方向のずれは専らシャフトのねじれに起因すると考えられていた。ところが、シャフトのねじり剛性が向上されても、打球方向がゴルファーの意図する方向からずれてしまうという現象が発生する。本願発明者は、この現象の原因を研究するなかで、ゴルフクラブの構成要素であるグリップがシャフトよりも格段に弾性に富むことに着目した。そして、本願発明者は、上記衝撃力がシャフトのねじり変形を生じさせることは明らかであるものの、ヘッドのフェースとボールとの衝突角度のずれは、上記衝撃力によりグリップが弾性変形することに大きく依存するものであるとの知見を得た。
【0005】
本願発明者は、従来のグリップの構造を改良することによってヘッドのフェースとボールとの衝突角度のずれを効果的に抑えることができると考えた。ただし、その一方で、前述のようにグリップ感覚の向上のために、グリップの構成材料として柔らかい樹脂が採用されるべきとの要請もある。そして、そのような柔らかい材料でグリップが構成された場合は、グリップのねじり剛性が低下することは明らかである。そこで、本願発明者は、良好なグリップ感覚及び滑止効果を発揮しつつ、ゴルファーが意図した方向にボールを飛ばすことができるゴルフクラブ用グリップを開発し、特許を取得した(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−173978号公報
【特許文献2】特開2007−275443号公報
【特許文献3】特開2004−275324号公報
【特許文献4】特開2007−117109号公報
【特許文献5】特許第4606499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5が開示するグリップは、当該グリップの前端から後端までの全領域においてねじり剛性が向上されており、打球時のねじり変形がきわめて小さいという利点がある。ところが、このグリップは製造工程が複雑でコストが高いという問題があった。製造工程が複雑になる原因は、このグリップが、上記全領域にわたって高い剛性を有する構造となっているからである。
【0008】
本願発明者は、打球時のグリップのねじり変形を研究するなかで、さらに次のような知見を得た。すなわち、本願発明者は、グリップのねじり変形が抑えられるためには、グリップの剛性が当該グリップの全域にわたって向上される必要はなく、一定の領域において向上されるだけで大きな効果が発揮されるとの知見を得た。また、一定領域のみについて剛性が向上されるだけであるならば、当然に製造工程が簡略化されコストダウンが図られる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ゴルファーが意図した方向にボールを飛ばすことができ、かつ良好なグリップ感覚及び滑止効果を発揮するゴルフクラブ用グリップをコスト安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 上記目的が達成されるため、本発明に係るゴルフクラブ用グリップは、第1の樹脂からなる筒状のグリップ本体と、第1の樹脂よりも高硬度の第2の樹脂からなり、上記グリップ本体の後端部に設けられてグリップエンドを形成するエンドキャップとを有する。上記グリップ本体は、上記エンドキャップをインサート部材としてインサート成形されている。上記エンドキャップは、上記グリップ本体の後端部に挿入される筒状部と、上記グリップ本体の後端を塞ぐ端面板部とを備える。上記筒状部の長さは、60mm〜75mmに設定されている。
【0011】
このゴルフクラブ用グリップは、グリップ本体にエンドキャップの筒状部が挿入されることによって二重構造となっている。グリップ本体は、エンドキャップをインサート部材としてインサート成形されているから、グリップ本体はエンドキャップと強固に固着されて一体となっている。このゴルフクラブ用グリップは、ゴルフクラブシャフトに装着され、ゴルファーによって把持される。グリップ本体は、相対的に柔らかい樹脂から構成されているので、ゴルフファーにとってゴルフクラブ用グリップの握り心地が良い。また、高硬度の樹脂からなるエンドキャップがグリップ本体の後端部に装着されている。具体的には、上記筒状部が上記グリップ本体に挿入され、且つ上記端面板部が上記グリップ本体の後端を塞いでいる。これにより、グリップ本体の後端部の曲げ剛性及び座屈剛性が高くなり、ゴルファーは確実にゴルフクラブ用グリップを握ることができる。
【0012】
ところで、上記筒状部がグリップ本体に挿入されることにより、当該グリップ本体の肉厚が相対的に小さくなる。詳述すれば、まず、ゴルフクラブ用グリップはゴルファーが把持するものであるから、その外径及び肉厚は自ずと一定範囲内に限定される。すなわち、上記筒状部がグリップ本体に挿入された状態で、ゴルフクラブ用グリップの肉厚寸法tは、上記筒状部の肉厚寸法t1とグリップ本体の肉厚寸法t2とを足し合わせたものであり、この肉厚寸法tが一定の値に設定される。したがって、硬い材料からなる筒状部がグリップ本体に挿入されることにより、ゴルフクラブ用グリップのうち柔らかい材料からなる部分の肉厚(すなわちグリップ本体の肉厚t2)は、自ずと小さくなる。
【0013】
ゴルフクラブ用グリップの変形の程度は、柔らかい樹脂(上記第1の樹脂)からなるグリップ本体の変形に依るところが大きい。そうすると、硬い樹脂からなる上記筒状部がグリップ本体に挿入されることによって柔らかい樹脂からなるグリップ本体の肉厚t2が小さくなるから、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性が大きくなる。つまり、打球時のゴルフクラブ用グリップのねじり変形量が抑えられる。
【0014】
本願発明者は、上記筒状部の長さが上記寸法に設定されるだけで、ゴルフクラブ用グリップの全体のねじり変形量が抑えられるとの知見を得た。従来のようにグリップ本体のほぼ全域に筒状部が挿入されていなくても、ゴルフクラブ用グリップ全体としてのいわゆるトルク性能が向上する。その定量的原因究明は未だなされていないが、上記筒状部の長さが上記寸法に設定されることによる効果は、後述の実施例が示すとおりである。また、上記筒状部の長さが上記寸法に設定されることにより、製造工程が簡略化され、簡単且つ安価にゴルフクラブ用グリップが製造され得る。
【0015】
(2) 上記筒状部の後端部に、上記ピンゲート金型のゲートに対応する孔が径方向に貫通形成されているのが好ましい。この場合、上記グリップ本体は、ピンゲート金型を用いて成形されるのが好ましい。
【0016】
この構成では、上記グリップ本体がピンゲート金型を用いて成形されるから、成形不良率が抑えられる。具体的には、成形後に、成形品(ゴルフクラブ用グリップ)に生じる残留応力が抑えられ、いわゆる渦状変形の発生が防止される。また、いわゆるゲート残りがきわめて小さくなるから、当該ゲート残りを除去する作業(典型的には、製品の一部を切断する作業)が不要となり、製造工程をさらに簡略化してコストダウンが図られる。ただし、上記孔が上記筒状部の後端部に配置されることから、小さなゲート残りが当該部位に発生する。ところが、このような小さなゲート残りがゴルフクラブ用グリップの後端近傍に生じることから、当該ゲート残りが当該ゴルフクラブ用グリップの中心を示す目印として利用される。
【0017】
すなわち、上記筒状部に上記孔を設けるという技術的手段は、ピンゲート金型の採用を可能とし、製品の不良率を抑えると共に、ピンゲート金型が採用されることにより必然的に発生する小さなゲート残りを上記目印として機能させる。つまり、当該技術的手段は、ゴルフクラブ用グリップのコストダウン及び機能向上にきわめて巧妙に作用している。
【0018】
(3) 上記筒状部の外周面に上記グリップ本体と係合する係合突起が設けられていてもよい。当該係合突起の先端部は、上記インサート成形により上記グリップ本体と融合しているのが好ましい。
【0019】
この構成では、上記係合突起がグリップ本体の径方向(肉厚方向)に食い込んだ状態となり、当該グリップ本体と上記エンドキャップとが強固に固着される。これにより、ゴルフクラブ用グリップに偶力が作用した場合に、上記エンドキャップに対するグリップ本体の相対的変位が抑えられる。しかも、上記係合突起が設けられた部位では、グリップ本体の肉厚がさらに小さくなるから、当該グリップ本体の変形がさらに抑えられる。したがって、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性がさらに向上する。
【0020】
(4) 複数の係合突起が上記筒状部の外周面に周方向に所定のピッチで配置されているのが好ましい。
【0021】
この構成では、上記係合突起は上記エンドキャップの筒状部の外周面全体に均等に且つ間欠的に配置されることになるから、この係合突起が配置されていない部位も均等に存在することになる。すなわち、グリップ本体の肉厚が相対的に大きい部位が、ゴルフクラブ用グリップの外周面全体に均等に存在することになる。したがって、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性が高く維持されたまま、ゴルファーがゴルフクラブ用グリップを把持したときのグリップ感がさらに向上する。
【0022】
(5) 上記係合突起の横断面形状は、上記先端部が上記グリップ本体側へ突出した三角形であるのが好ましい。
【0023】
これにより、上記係合突起が確実にグリップ本体と融合する。したがって、当該グリップ本体と上記エンドキャップとが一層強固に固着される。
【0024】
(6) 上記係合突起は、上記筒状部の長手方向に延びる突条からなるのが好ましい。
【0025】
この構成では、この係合突起が上記エンドキャップと上記グリップ本体とを連結するキーの機能を発揮する。したがって、上記エンドキャップと上記グリップ本体とがさらに強固に固着され、ゴルフクラブ用グリップのねじり剛性が一層向上する。
【0026】
(7) 上記係合突起は、上記筒状アウターの表面ないし表面近傍に達しているのが好ましい。
【0027】
この構成によれば、ゴルファーがゴルフクラブ用グリップを把持したときに上記係合突起の存在を感知することができる。この係合突起は上記硬い樹脂(第2の樹脂)からなるので、ゴルファーにとって手に引っ掛かる感触がある。つまり、滑止効果が発揮されるという利点がある。
【0028】
(8) 上記第1の樹脂の硬度は、48〜52(JIS K 6253 タイプA)に設定されるのが好ましい。
【0029】
この構成では、ゴルファーがゴルフクラブ用グリップを把持したときに非常に高いグリップ感が得られる。
【0030】
(9) 前述のゴルフクラブ用グリップを製造する方法が提案される。この製法は、上記第2の樹脂を材料として上記エンドキャップを射出成形する第1工程と、当該射出成形されたエンドキャップの上記孔が上記ピンゲート金型のゲートに位置合わせされた状態で、当該エンドキャップが上記ピンゲート金型に装着される第2工程と、上記ピンゲート金型が型締めされた状態で上記第1の樹脂が上記ゲートから射出される第3工程と、上記ピンゲート金型が片開きされた後に成形されたゴルフクラブ用グリップが取り出される第4工程とを含むことを特徴とする。
【0031】
すなわち、まず、上記エンドキャップが射出成形により製造される。そして、このエンドキャップをインサート部材として、ピンゲート金型を用いた射出成形によりグリップ本体が成形される。これにより、ゴルフクラブ用グリップが製造される。ピンゲート金型が採用されるので、製品(ゴルフクラブ用グリップ)に不良が発生する割合が抑えられる。具体的には、成形後に、成形品(ゴルフクラブ用グリップ)に生じる残留応力(いわゆる渦状変形の発生)が抑えられる。また、いわゆるゲート残りがきわめて小さくなるから、当該ゲート残りを除去する作業(典型的には、製品の一部を切断する作業)が不要となり、製造工程が簡略化される。発生したゲート残りは、ゴルフクラブ用グリップの後端近傍に生じるから、当該ゲート残りが当該ゴルフクラブ用グリップの中心を示す目印として利用される。前述のように、グリップ本体を構成する樹脂は相対的に柔らかいので、ゴルファーにとってグリップ感に優れる。しかも、ゴルフクラブ用グリップが前述の構造を備えるから、ねじり変形が抑えられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、グリップ本体が柔らかい樹脂から構成されるので、ゴルファーは良好なグリップ感を得られる。また、グリップ本体に装着されたエンドキャップ硬い樹脂からなり、しかも、エンドキャップの筒状部がグリップ本体の後端部に挿入されていることから、ゴルフクラブ用グリップ全体の捻り変形量が抑制される。したがって、ゴルファーがボールを打った際のゴルフクラブ用グリップの捻れが抑えられ、ゴルファーの意図した方向に打球が飛ぶ。加えて、上記筒状部が上記グリップ本体の後端部にのみ挿入されるから、ゴルフクラブ用グリップの製造工程が簡略化され、コスト安価に製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るグリップの正面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るグリップの断面図である。
【図3】図3は、図2における要部拡大図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るエンドキャップの断面図である。
【図5】図5は、図5は、エンドキャップ15の右側面図である。
【図6】図6は、エンドキャップ15の拡大左側面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る突条の拡大平面図である。
【図8】図8は、図7におけるVIII−VIII断面図である。
【図9】図9は、実施形態の第1の変形例に係るエンドキャップの正面図である。
【図10】図10は、実施形態の第2の変形例に係るグリップの要部拡大断面図である。
【図11】図11は、試料グリップの試験方法の原理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、適宜図面が参照されつつ、本発明の好ましい実施形態が説明される。
【0035】
[ゴルフクラブ用グリップの概略]
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ用グリップ(以下、「グリップ」と称される。)10の正面図であり、図2は断面図である。
【0037】
このグリップ10は、ゴルフクラブ(特にウッドクラブ及びアイアンクラブ)に装着されるものである。図1が示すように、グリップ10は、ゴルフクラブのシャフト11の後端部に嵌め込まれて固定されている。シャフト11は、断面が円形の棒状に形成されており、スチールのほかカーボン繊維強化樹脂等から構成されている。なお、このシャフト11の先端にクラブヘッドが装着されている。
【0038】
このグリップ10は、ゴルファーがゴルフクラブを使用する際に把持する部材であるから、ゴルファーにとって握り易い形状であることが要請される。そのため、本実施形態に係るグリップ10は、円筒状に形成されており、その断面形状は円形である。シャフト11は、グリップ10に挿入されている。なお、グリップの断面形状は円形に限定されるものではなく、多角形であってもよい。
【0039】
図3は、図2における要部拡大図であり、グリップ10の後端部の構造を示している。
【0040】
本実施形態に係るグリップ10の特徴とするところは、図2及び図3が示すように、グリップ10の後端部の所定の領域12が二重構造となっている点、及び当該領域12の内側部分(後述の筒状部13)の硬度よりも外側部分(後述のグリップ本体14)の硬度が低くなっている点である。すなわち、上記領域12において、グリップ10の外側部分が柔らかく、内側部分が硬い。グリップ10がこのような構造を備えることにより、ゴルファーがグリップ10を把持したときに良好なグリップ感を得ることができると共に、コスト安価に且つ効果的にグリップ10のねじり剛性が向上される。
【0041】
[グリップの構造]
【0042】
図2及び図3が示すように、グリップ10は、グリップ本体14と、グリップ本体14の後端部17に設けられたエンドキャップ15とを備えている。前述のように、グリップ10は全体として円筒状を呈するが、グリップ10の先端部16の外径は、グリップ10の後端部17の外径よりも小さい。このため、グリップ10の外形形状はテーパを形成し、グリップ10は、先端部16から後端部17に向かって漸次太くなっている。グリップ10がこのような形状であることにより、ゴルファーは、グリップ10を確実に把持することができる。なお、グリップ10の全長は、本実施形態では260mmに設定されている。ただし、グリップの全長は特に限定されるものではなく、典型的には250mm〜270mm程度に設定される。
【0043】
[グリップ本体]
【0044】
図1及び図2が示すように、グリップ本体14は、樹脂(特許請求の範囲に記載された「第1の樹脂」に相当)から構成されている。グリップ本体14は、射出成形により形成される。なお、後述されるように、グリップ本体14は、上記エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形される。グリップ本体14を構成する樹脂の種類は特に限定されない。グリップ本体14の硬度は、本実施形態では50(JIS K 6253 タイプA)に設定されているが、この硬度は45〜55(JIS K 6253 タイプA)に設定されるのが好ましく、さらに48〜52(JIS K 6253 タイプA)に設定されるのがより好ましい。ただし、このグリップ本体14の硬度は特に限定されるものではなく、上記エンドキャップ15よりも低硬度であればよい。つまり、物性としてグリップ本体14がエンドキャップ15よりも柔らかい部材であればよい。
【0045】
グリップ本体14は円筒状を呈し、グリップ本体14の外形形状はテーパを形成している。本実施形態では、グリップ本体14の先端部16の外径D1は19mm、後端部17の外径D2は26mmに設定されている。グリップ本体14は、先端部16から後端部17に向かって漸次太くなっている。図3が示すように、グリップ本体14の後端部17の外径D2は、上記エンドキャップ15の端面板部18の外径と一致されている。
【0046】
前述のように、グリップ本体14は、エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形される。特に本実施形態では、いわゆるピンゲート金型が成形作業に採用される。図3が示すように、グリップ本体14は、エンドキャップ15の筒状部13を周方向に取り囲んで被覆するように上記樹脂によって成形される。これにより、グリップ本体14と、エンドキャップ15とが確実に相互に固着し、一体化する。
【0047】
このようにグリップ本体14がインサート成形されることにより、図1が示すグリップ10が形成される。また、本実施形態では、上記ピンゲート金型が採用されるので、グリップ本体14の後端部にいわゆるゲート残り19が発生する。このゲート残り19は、円形の凹部として現れる。ゲート残り19の位置は、後に詳述されるエンドキャップ15に設けられた孔21に対応している。ゲート残り19の内径はきわめて小さく、本実施形態では、1.5mm〜2.5mmに設定される。グリップ本体14が円筒形であるから、ゲート残り19は、グリップ本体14の中心軸20(グリップ10の中心軸と一致)に対して直交する。したがって、ゲート残り19は、グリップ10の中心を現す目印として機能する。本実施形態では、このゲート残り19が着色される。着色は、インクの塗布その他既知の手段により実現されるが、これにより、グリップ10の中心が一目瞭然となる。
【0048】
[エンドキャップ]
【0049】
図4はエンドキャップ15の断面図である。また、図5及び図6は、それぞれ、エンドキャップ15の右側面図、拡大左側面図である。
【0050】
エンドキャップ15は、図1及び図2が示すように、グリップ本体14の後端部17に配置され、グリップエンドを構成する。図4が示すように、エンドキャップ15は、上記筒状部13及び端面板部18とを有する。この筒状部13と端面板部18との境界に段部22が形成されており、端面板部18は筒状部13の端面から径方向に張り出している。筒状部13は、端面板部18と一体的に形成されており、樹脂(特許請求の範囲に記載された「第2の樹脂」に相当)から構成されている。エンドキャップ15は、金型を用いた射出成形により形成される。エンドキャップ15を構成する樹脂の種類は特に限定されない。ただし、エンドキャップ15の硬度は、75〜80(JIS K 6253 タイプA)に設定される。本実施形態では、エンドキャップ15の硬度は75(JIS K 6253 タイプA)に設定されている。
【0051】
筒状部13は円筒形を呈しており、図1及び図2が示すように、グリップ本体14の後端部17に挿入された状態となっている。図4が示すように、本実施形態では、筒状部13の内径d1は16mmに設定され、外径d2は19mmに設定されている。ただし、エンドキャップ15はグリップ本体14にインサートされる部材であるから、上記寸法d1、d2は、グリップ本体14のサイズに適合するように適宜設計変更され得る。
【0052】
詳述すれば、図3が示すように、グリップ本体14にエンドキャップ13が設けられることにより、上記領域12において、グリップ本体14は、外側層部23及び内側層部24に分離される。そして、本実施形態では、上記寸法d1、d2は、上記外側層部23の肉厚t1が1.4mmとなるように設定される。ただし、この外側層部23の肉厚t1は、1.4mmに限定されるものではなく、0.8mm〜2.0mmに設定されればよい。この肉厚t1が上記寸法に設定されることによる作用効果は後述される。なお、上記外側層部23の肉厚t1が上記寸法に設定される結果、上記内側層部24の肉厚t2が自動的に決定される。この肉厚t2は、特に限定されるものではない。
【0053】
図4が示すように、筒状部13の長さL(上記領域12の長さ)は、本実施形態では65mmに設定されている。ただし、この長さLは55mm〜80mm程度に設定され、特に60mm〜75mmの範囲に設定されるのが好ましい。筒状部13の長さLが上記寸法に設定されることによる効果は後述される。
【0054】
筒状部13の後端部に孔21が設けられている。この孔21は、筒状部13を径方向に貫通しており、エンドキャップ15の端面25から所定距離Aの位置に配置されている。本実施形態では、孔21の内径は4mmに設定されている。もっとも、孔21の内径は2.7mm〜3.5mmに設定され得る。また、本実施形態では、上記距離Aは15mmに設定されている。この距離Aは、15mmに限定されるものではないが、上記孔21は、上記段部22の近傍に配置されるのが好ましい。この孔21は、グリップ本体14が前述のように成形される際のゲートに対応している。したがって、この孔21を通過して樹脂がピンゲート金型内のキャビティに送り込まれるようになっている。
【0055】
図4及び図5が示すように、上記筒状部13に複数の突条26(特許請求の範囲に記載された「係合突起」に相当)が形成されている。各突条26は、軸方向20(特許請求の範囲に記載された「長手方向」に相当)に延びており、細長棒状に形成されている。各突条26は、射出成形により筒状部13と一体的に形成されている。本実施形態では、図5が示すように、8本の突条26が筒状部13の外周面29に設けられている。各突条26は、筒状部13の周方向に所定のピッチで並設されている。具体的には、筒状部13の外周面を周方向に8等分した部位に各突条26が配置されている。本実施形態では、複数の突条26が規則的に略均等に分散されているが、複数の突条26が略均等に分散していなくてもよい。また、突条26の数も特に限定されるものではない。
【0056】
図7は突条26の拡大平面図、図8は図7におけるVIII−VIII断面図であり、突条26の拡大横断面を表している。
【0057】
本実施形態では、突条26の断面形状(横断面形状)は、三角形である。このため、突条26の先端部30は、グリップ本体14側へ突出している。突条14の断面形状は正三角形である必要はないが、先端部30が尖った形状であるのが好ましい。突条26の幅Bは1.0mm、長さCは50.0mm、高さHは0.7mmに設定されている。ただし、突条26の幅B長さC、高さHは上記寸法に限定されるものではなく、適宜設計変更され得る。特に、上記高さHは、0.4mm〜1.4mmに設定され得る。突条26の断面形状が三角形であることによる作用効果は後述される。
【0058】
図4及び図6が示すように、端面板部18は円盤状に形成されており、上記筒状部13の後端に連続して形成されている。この端面板部18の外径は、上記グリップ本体14の後端部17の外径D2と一致されており、本実施形態では26mmに設定されている。端面板部18は、筒状部13に対して直交(すなわち、中心軸20に対して直交)している。図3が示すようにグリップ本体14に筒状部13が挿入された状態で、端面板部18は、グリップ本体14の後端を塞ぐように配置される。なお、端面板部18の中央に貫通孔27が設けられている。この貫通孔27は、省略されてもよい。
【0059】
[グリップの製法]
【0060】
グリップ10は、前述のように、樹脂を材料としてピンゲート金型を採用した成形により製造される。
【0061】
具体的には、まず、上記硬い樹脂(第2の樹脂)を材料としてエンドキャップ15(図4参照)が射出成形により成形される(第1工程)。この成形手法は、既知のものが採用され、いわゆるダイレクトゲート金型、サイドゲート金型、ピンゲート金型、サブマリンゲート金型、ホットランナー金型その他の金型が採用され得る。
【0062】
次に、グリップ本体14が成形される。グリップ本体14も射出成形により成形され、これにより、グリップ10が完成する。このとき、上記柔らかい樹脂(第1の樹脂)を材料として、ピンゲート金型によりグリップ本体14が成形される。
【0063】
上記第1工程により成形されたエンドキャップ15がインサート部材としてピンゲート金型内にセットされる。具体的には、エンドキャップ15の上記孔21が上記ピンゲート金型のゲートに位置合わせされ、この状態で、当該エンドキャップ15が上記ピンゲート金型に装着される(第2工程)。続いて、上記ピンゲート金型が型締めされた状態で、上記柔らかい樹脂が上記ゲートから金型のキャビティ内に射出される(第3工程)。そして、上記ピンゲート金型が片開きされた後に、成形されたグリップ10が取り出される(第4工程)。
【0064】
このように、グリップ10は、ピンゲート金型により成形されるので、成形品(グリップ10)に生じる残留応力が抑えられ、いわゆる渦状変形の発生が防止される。つまり、不良品の発生が抑制される。また、ゲート残りがきわめて小さくなるから、このゲート残りを除去する作業が不要となる。すなわち、従来の成形では、製造工程の一部にゲート残りを切断する作業が含まれていたが、ピンゲート金型が採用されることにより、かかる作用が不要となり、製造工程が簡略化される。
【0065】
一方で、ゲート残りは必ず発生する。しかし、このゲート残りは、グリップ10の後端近傍に生じるから、このゲート残りがグリップ10の中心を示す目印となる。すなわち、ピンゲート金型の採用により、製品の不良率を抑えるだけでなく、必然的に発生する小さなゲート残りがグリップ10の中心を表す目印として機能するという利点がある。
【0066】
[グリップの作用効果]
【0067】
このグリップ10は、図1が示す状態でゴルフクラブのシャフト11に装着される。ゴルファーは、グリップ10を把持してゴルフクラブをスイングさせる。これによりゴルフクラブのヘッドがボールと衝突し、ボールは所定の方向へ飛ぶ。
【0068】
グリップ10は前述のような二重構造を有しており、グリップ本体14とエンドキャップ15とが強固に固着されている。ゴルファーはグリップ10を握った際にグリップ本体14を把持することになる。グリップ本体14はエンドキャップ15よりも柔らかい樹脂から構成されるので、ゴルファーは、良好なグリップ感が得られる。特に本実施形態では、グリップ本体14の硬度が48〜52(JIS K 6253 タイプA)に設定されるから、ゴルファーがグリップ10を把持したときに非常に高いグリップ感が得られる。
【0069】
グリップ10がグリップ本体14及びエンドキャップ15を備えた二重構造を有することにより、グリップ本体14の内側に硬い材料からなる筒状部13が存在することになる。図3が示すように、グリップ本体14の肉厚寸法は、外側層部23の肉厚t1、内側層部24の肉厚t2及び筒状部13の肉厚(d2/2−d1/2)を足し合わせたものである。グリップ本体14の肉厚寸法は、自ずとゴルファーが握り易い一定範囲内の値となる。したがって、硬い材料からなる筒状部13が存在することにより、グリップ本体14のうち柔らかい材料からなる部分の肉厚(すなわち上記外側層部23の肉厚t1)は、筒状部13が存在しない場合に比べて相対的に小さくなる。
【0070】
ところで、ゴルファーがボールを打った際に発生する衝撃力は、グリップ10に偶力として作用してグリップ本体14にねじり変形を与える。このねじり変形の程度は、柔らかい樹脂からなるグリップ本体14の変形に大きく依存する。本実施形態に係るグリップ10のように、グリップ本体14に硬い材料からなる筒状部13が挿入されることにより、グリップ本体14の変形し易い部分(上記外側層部23)の肉厚t1が小さくなる。その結果、グリップ本体14のねじり剛性が向上する。
【0071】
グリップ本体14のねじり剛性が向上することにより、当然にグリップ10のねじり剛性が向上する。これにより、ゴルファーがボールを打った際のグリップ10の捻れが抑えられる。したがって、インパクトの瞬間におけるボールとヘッドのフェースとの衝突角度が直角に保たれる。その結果、ゴルファーの意図した方向へ打球が飛ぶという効果が発揮される。
【0072】
しかも、本実施形態では、グリップ本体14の一部の領域(上記領域12)のねじり剛性が向上されているだけである。すなわち、グリップ本体14のねじり変形を抑える二重構造は、上記領域12にのみ形成されているだけである。したがって、グリップ本体14の軸方向20の全域にわたって上記二重構造が形成される場合にくらべてグリップ10の製造コストが大幅に削減される。
【0073】
本実施形態では、エンドキャップ15の筒状部13に複数の突条26(図4及び図5参照)が設けられており、これら突条26は、グリップ本体14に係合している。すなわち、グリップ本体14は、エンドキャップ15をインサート部材としてインサート成形されることから、各突条26は、グリップ本体14側へ突出してグリップ本体14に食い込んでいる。これにより、エンドキャップ15とグリップ本体14とが強固に固着されている。したがって、グリップ10に偶力が作用した場合に、エンドキャップ15に対するグリップ本体14の相対的変位が抑えられる。加えて、突条26は、グリップ本体14に食い込んでいるから、この突条26が設けられた部位では、グリップ本体14の肉厚(上記外側層部23の肉厚t1)がさらに小さくなる。したがって、グリップ本体14の変形が一層抑えられ、その結果、グリップ10の捻れ量がさらに小さくなる。
【0074】
また、本実施形態では、突条26は、図5が示すように上記筒状部13の外周面29の全体に周方向に均等に配置されている。すなわち、突条26が配置されていない部位も均等に分散して存在することになる。換言すれば、グリップ本体14の肉厚が相対的に大きい部位が、グリップ10の外周面全体に均等に点在することになる。したがって、グリップ10のねじり剛性が高く維持されたまま、ゴルファーがグリップを把持したときのグリップ感がさらに向上するという利点がある。
【0075】
特に、本実施形態では、突条26は、グリップ本体14の軸方向20に沿って延びている。このため、突条26がグリップ本体14とエンドキャップ15とを連結するキーとして機能する。したがって、エンドキャップ15とグリップ本体14とがさらに強固に固着され、その結果、グリップ10のねじり剛性が一層向上するという利点もある。
【0076】
さらに、本実施形態では、図5及び図8が示すように、突条26の横断面形状が三角形であり、突条26がグリップ本体14側へ突出している。このため、グリップ本体14がインサート成形される際に、突条26の先端部30が溶けてグリップ本体14と融合する。現実には、突条26の先端部30は、図8において二点鎖線31で示すような形状となる。これにより、エンドキャップ15とグリップ本体14との結合がより一層強固なものとなり、グリップ10のねじり剛性がなお一層向上する。
【0077】
なお、本実施形態では、突条26の横断面形状が三角形であるが、突条26の横断面形状は半円形等その他の形状であってもよい。要するに、上記筒状部13の外周面29にグリップ本体14側に突出して当該グリップ本体14と係合する部材が設けられていればよい。また、突条26が省略されてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0079】
本実施例では、試料グリップの諸元(共通諸元)が下記のように設定され、エンドキャップの筒状部の長さが変化したときの当該試料グリップのねじれ易さ(ねじり剛性)が測定された。
【0080】
<共通諸元>
【0081】
試料グリップの全長は260mm、試料グリップの先端の外径は16mm、試料グリップの後端の外径は26mmに設定されている。試料グリップのグリップ本体の外側層部の肉厚は1.4mmである。グリップ本体を構成する樹脂の硬度は50(JIS K 6253 タイプA)に設定され、エンドキャップを構成する樹脂の硬度は75(JIS K 6253 タイプA)に設定されている。また、エンドキャップの筒状部に設けられた突条は8本である。各突条は筒状部の外周面に周方向に均等に配置されている。各突条26の幅は1.0mm、長さは50.0mm、高さは0.7mmに設定されている。
【0082】
実施例1:筒状部の長さ12(図3参照)が60mmである。
【0083】
実施例2:筒状部の長さ12(図3参照)が63mmである。
【0084】
実施例3:筒状部の長さ12(図3参照)が66mmである。
【0085】
実施例4:筒状部の長さ12(図3参照)が69mmである。
【0086】
実施例5:筒状部の長さ12(図3参照)が72mmである。
【0087】
実施例6:筒状部の長さ12(図3参照)が75mmである。
【0088】
比較例1:筒状部の長さ12(図3参照)が80mmである。
【0089】
比較例2:筒状部の長さ12(図3参照)が90mmである。
【0090】
比較例3:筒状部の長さ12(図3参照)が57mmである。
【0091】
比較例4:筒状部の長さ12(図3参照)が54mmである。
【0092】
比較例5:筒状部の長さ12(図3参照)が51mmである。
【0093】
比較例6:筒状部の長さ12(図3参照)が48mmである。
【0094】
比較例7:筒状部の長さ12(図3参照)が40mmである。
【0095】
比較例8:筒状部の長さ12(図3参照)が30mmである。
【0096】
<試験方法>
【0097】
図11は、試料グリップの断面図であって試験方法の原理を示している。
【0098】
試料グリップGが芯金Mに嵌め合わせて固定される。この固定は、通常のゴルフクラブ用シャフトにグリップを装着する要領で行われる。試料グリップGは、把持部材C1を介して挟持され、芯金Mも把持部材C2を介して固定される。把持部材C1は、試料グリップGを周方向に略均一に把持するように形成されている。把持部材C1による試料グリップGの把持力は、一般にゴルフプレー中にゴルファーがグリップを握る力に相当する大きさ(握力として計測される40kgf相当)に設定される。この状態で、芯金Mに60kgf・cmの捻りモーメントMoが付加され、芯金Mの捻り変形量dsをマイクロメータReが計測する。
【0099】
試験結果が表1に示される。表1の横軸は、エンドキャップの筒状部の長さであり、単位は「mm」である。表1の縦軸は、マイクロメータにより計測された捻り変形量dsを無次元化して表示したものである。捻り変形量dsを無次元化するのは、当該計測値が非常に小さな値となるからである。便宜上、この数値を「トルク」と称し、トルクが小さいほど捻り変形量が小さく、試料グリップのトルク性能が優れることが示される。この試験では、トルクが8.0以下の場合に所期のトルク性能が達成される。
【0100】
この試験では、エンドキャップの筒状部の長さが60mmを下回ると、測定されるトルクが極端に大きくなることが判明した。また、エンドキャップの筒状部の長さが60mm以上であれば、トルクが十分に抑えられることも判明した。一方、エンドキャップの筒状部の長さが75mm以上であれば、測定されるトルクに大きな変化はなく、しかも、当該筒状部の長さが75mmを越えてどれほど大きくなっても、測定されるトルクに変化がないことも判明した。
【0101】
【表1】
【0102】
表1が示すように、本願発明者は、上記筒状部13(図3参照)の長さが上記各実施例が示す寸法に設定されるだけで、グリップ10の十分なねじり剛性が実現され、高いトルク性能が発揮されるとの知見を得た。つまり、グリップ本体14の全長にわたって筒状部13が挿入されていなくても、グリップ10のトルク性能が向上する。
【0103】
[変形例]
【0104】
図9は、本実施形態の第1の変形例に係るエンドキャップ35の正面図である。
【0105】
本変形例に係るエンドキャップ35が上記実施形態に係るエンドキャップ15と異なるところは、上記実施形態では、各突条26は、上記筒状部13に沿って後端近傍から先端近傍まで延びているが(図4参照)、本変形例では、各突条36が軸方向20に沿って複数に分割され、間欠的に配置されている点である。すなわち、長手方向の寸法が小さい突条36が、軸方向にピッチp1で、且つ周方向にピッチp2で分散して上記筒樹部13の外周面29に配置されている。
【0106】
このような構造では、突条36が配置されていない部位、すなわちグリップ本体14の肉厚が相対的に大きい部位が、軸方向にも周方向にも均等に分散して存在することになる。したがって、グリップ10のねじり剛性が高く維持されたまま、ゴルファーがグリップ10を把持したときのグリップ感がさらに向上するという利点がある。
【0107】
図10は、本実施形態の第2の変形例に係るグリップ40の要部拡大断面図である。
【0108】
同図が示すように、この変形例に係るグリップ40が上記実施形態に係るグリップ10と異なるところは、上記実施形態では突条26がグリップ本体14の内部に埋まっていたのに対して、本変形例では、突条37がグリップ本体14の表面41に露出している点である。なお、グリップ40のその他の構成については、上記グリップ10と同様である。
【0109】
このように突条37がグリップ本体14の表面41に露出することにより、ゴルファーがグリップ40を把持したときに露出した突条37の先端面がゴルファーの手に接触する。この突条37は前述のような硬い樹脂からなるので、ゴルファーの手に対して確実に引っ掛かる。すなわち、高い滑止効果が発揮されるという利点がある。もっとも、突条37が完全に表面41上に露出していなくとも、突条37の頂部が表面41の近傍に達していれば、同様の効果がある。
【符号の説明】
【0110】
10・・・グリップ
12・・・領域
13・・・筒状部
14・・・グリップ本体
15・・・エンドキャップ
19・・・ゲート残り
21・・・孔
23・・・外側層部
24・・・内側層部
26・・・突条
29・・・外周面
35・・・エンドキャップ
36・・・突条
37・・・突条
40・・・グリップ
41・・・表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂からなる筒状のグリップ本体と、第1の樹脂よりも高硬度の第2の樹脂からなり、上記グリップ本体の後端部に設けられてグリップエンドを形成するエンドキャップとを有するゴルフクラブ用グリップであって、
上記グリップ本体は、上記エンドキャップをインサート部材としてインサート成形されており、
上記エンドキャップは、上記グリップ本体の後端部に挿入される筒状部と、上記グリップ本体の後端を塞ぐ端面板部とを備え、
上記筒状部の長さは、60mm〜75mmに設定されているゴルフクラブ用グリップ。
【請求項2】
上記グリップ本体は、ピンゲート金型を用いて成形されており、
上記筒状部の後端部に、上記ピンゲート金型のゲートに対応する孔が径方向に貫通形成されている請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項3】
上記筒状部の外周面に上記グリップ本体と係合する係合突起が設けられており、
当該係合突起の先端部は、上記インサート成形により上記グリップ本体と融合している請求項1又は2に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項4】
複数の係合突起が上記筒状部の外周面に周方向に所定のピッチで配置されている請求項3に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項5】
上記係合突起の横断面形状は、上記先端部が上記グリップ本体側へ突出した三角形である請求項3又は4に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項6】
上記係合突起は、上記筒状部の長手方向に延びる突条からなる請求項3から5のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項7】
上記係合突起は、上記筒状アウターの表面ないし表面近傍に達している請求項3から6のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項8】
上記第1の樹脂の硬度は、48〜52(JIS K 6253 タイプA)である請求項1から7のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項9】
請求項2から8のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップの製造方法であって、
上記第2の樹脂を材料として上記エンドキャップを射出成形する第1工程と、
当該射出成形されたエンドキャップの上記孔が上記ピンゲート金型のゲートに位置合わせされた状態で、当該エンドキャップが上記ピンゲート金型に装着される第2工程と、
上記ピンゲート金型が型締めされた状態で上記第1の樹脂が上記ゲートから射出される第3工程と、
上記ピンゲート金型が片開きされた後に成形されたゴルフクラブ用グリップが取り出される第4工程とを含むゴルフクラブ用グリップの製造方法。
【請求項1】
第1の樹脂からなる筒状のグリップ本体と、第1の樹脂よりも高硬度の第2の樹脂からなり、上記グリップ本体の後端部に設けられてグリップエンドを形成するエンドキャップとを有するゴルフクラブ用グリップであって、
上記グリップ本体は、上記エンドキャップをインサート部材としてインサート成形されており、
上記エンドキャップは、上記グリップ本体の後端部に挿入される筒状部と、上記グリップ本体の後端を塞ぐ端面板部とを備え、
上記筒状部の長さは、60mm〜75mmに設定されているゴルフクラブ用グリップ。
【請求項2】
上記グリップ本体は、ピンゲート金型を用いて成形されており、
上記筒状部の後端部に、上記ピンゲート金型のゲートに対応する孔が径方向に貫通形成されている請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項3】
上記筒状部の外周面に上記グリップ本体と係合する係合突起が設けられており、
当該係合突起の先端部は、上記インサート成形により上記グリップ本体と融合している請求項1又は2に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項4】
複数の係合突起が上記筒状部の外周面に周方向に所定のピッチで配置されている請求項3に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項5】
上記係合突起の横断面形状は、上記先端部が上記グリップ本体側へ突出した三角形である請求項3又は4に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項6】
上記係合突起は、上記筒状部の長手方向に延びる突条からなる請求項3から5のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項7】
上記係合突起は、上記筒状アウターの表面ないし表面近傍に達している請求項3から6のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項8】
上記第1の樹脂の硬度は、48〜52(JIS K 6253 タイプA)である請求項1から7のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項9】
請求項2から8のいずれかに記載のゴルフクラブ用グリップの製造方法であって、
上記第2の樹脂を材料として上記エンドキャップを射出成形する第1工程と、
当該射出成形されたエンドキャップの上記孔が上記ピンゲート金型のゲートに位置合わせされた状態で、当該エンドキャップが上記ピンゲート金型に装着される第2工程と、
上記ピンゲート金型が型締めされた状態で上記第1の樹脂が上記ゲートから射出される第3工程と、
上記ピンゲート金型が片開きされた後に成形されたゴルフクラブ用グリップが取り出される第4工程とを含むゴルフクラブ用グリップの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−48736(P2013−48736A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188592(P2011−188592)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(505076832)株式会社IOMIC (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(505076832)株式会社IOMIC (5)
【Fターム(参考)】
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