ゴルフクラブ用シャフトの製造方法
【課題】ブレーディング製法を用いた際に、積層体を硬化させた後に研磨対象となる編組層を過不足なく研磨し易くして、生産性と品質の向上を図ることができるゴルフクラブ用シャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂材料を含浸させた基材繊維3を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体2を成形する際に、少なくとも最外周の第3編組層2cを形成する際には、配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて、配向角度a1<配向角度a2として基材繊維3を編組し、成形した積層体2を加熱して硬化させた後、積層体2の表面を一定厚さで研磨する。
【解決手段】樹脂材料を含浸させた基材繊維3を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体2を成形する際に、少なくとも最外周の第3編組層2cを形成する際には、配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて、配向角度a1<配向角度a2として基材繊維3を編組し、成形した積層体2を加熱して硬化させた後、積層体2の表面を一定厚さで研磨する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴルフクラブ用シャフトの製造方法に関し、さらに詳しくは、ブレーディング製法を用いた際に、積層体を硬化させた後に研磨対象となる編組層を過不足なく研磨し易くして、生産性と品質の向上を図ることができるゴルフクラブ用シャフトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブ用シャフトの製造方法としてブレーディング製法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ブレーディング製法では、マンドレル上で樹脂材料を含浸させた基材繊維をマンドレル軸方向に対して対称の配向角度で編組させて編組層を形成し、この編組層を複数積層させて先細円筒状の積層体を成形する。その後、この積層体を加熱することにより、基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させる。硬化させた積層体の表面は、編組された基材繊維の影響によって凹凸になるので、この凹凸を滑らかにするために硬化させた積層体の表面を研磨するようにしている。
【0003】
従来、ブレーディング製法では図8、図9に例示するように、積層するそれぞれの編組層(第1編組層2a、第2編組層2b、第3編組層2c)を形成する際に、基材繊維3の配向角度aを軸方向位置で変化させることなく一定にして編組している。そのため、成形した先細円筒状の積層体2の軸方向先端側の小径範囲では、図10に例示するように積層体2の外周長さに対する基材繊維3の断面積(層を形成する基材繊維3の断面積の総和)が大きくなるので、隣り合う基材繊維3どうしが圧縮しあって層厚t1が大きくなる傾向にある。一方、積層体2の軸方向後端側の大径範囲では、図11に例示するように先端側に比べて、積層体2の外周長さに対する基材繊維3の断面積(層を形成する基材繊維3の断面積の総和)が小さくなるので層厚t2が小さくなる傾向になる。即ち、図9に例示するように、それぞれの編組層2a、2b、2cにおいて、層厚が軸方向先端側が後端側よりも大きくなる。第3編組層2cに関していえば、層厚t1>層厚t2となっている。
【0004】
硬化させた積層体2の表面は、一般に、回転する研磨体を用いて、積層体2の軸方向に一定の厚さで研磨しているので、研磨対象となる最外周の第3編組層2cを研磨すると軸方向先端側の範囲には、第3編組層2cの研磨残りが生じる。積層体2の軸方向で一部に研磨残りがある場合、或いは、研磨残りの厚さにばらつきがあると、製造したシャフトの品質(性能)に悪影響が生じる。
【0005】
そのため、この研磨残りをなくすため、或いは、研磨残りの厚さのばらつきをなくすために追加的に研磨作業をする必要があった。このように、シャフトの品質を維持、向上させるために、追加的な研磨作業を行なうので生産性を向上させるには限界があった。
【特許文献1】特開2002−177424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ブレーディング製法を用いた際に、積層体を硬化させた後に研磨対象となる編組層を過不足なく研磨し易くして、生産性と品質の向上を図ることができるゴルフクラブ用シャフトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のゴルフクラブ用シャフトの製造方法は、樹脂材料を含浸させた基材繊維を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体を成形し、この積層体を加熱することにより基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させ、次いで、硬化させた積層体の表面を研磨するゴルフクラブ用シャフトの製造方法において、前記積層した編組層のうち、少なくとも最外周の編組層を形成する際には、前記配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて基材繊維を編組することを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記配向角度を変化させて形成した編組層の最大層厚と最小層厚との差を、例えば、0.1mm以下にする。また、前記配向角度を変化させる範囲を、例えば、10°〜70°にする。前記硬化させた積層体を、例えば、回転する研磨体の間を通過させることにより、表面を一定厚さ研磨する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂材料を含浸させた基材繊維を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体を成形し、この積層体を加熱することにより基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させ、次いで、硬化させた積層体の表面を研磨するゴルフクラブ用シャフトの製造方法において、前記積層した編組層のうち、少なくとも最外周の編組層を形成する際には、前記配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて基材繊維を編組するので、配向角度を変化させた編組層では、先細円筒状の積層体の軸方向位置の違いによる層厚の差を小さくすることができる。これにより、積層体を硬化させた後に研磨対象となる編組層(主に最外周の編組層)を一定の厚さで研磨すれば、この編組層を設定どおり過不足なく研磨することが可能になる。即ち、積層体の表面を軸方向全長にわたって必要以上に研磨したり、必要以上に研磨残りが生じたりすることが回避できるので生産性と品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のゴルフクラブ用シャフトの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
本発明によりゴルフクラブ用シャフト(以下、シャフト1という)を製造する際には、図5に例示するような一般的な編組装置6を用いる。この編組装置6は、基材繊維3を巻回した複数のボビン7を回転ベース6aに設置し、回転ベース6aの中心部には先細円筒状または円柱状のマンドレル5が挿通する構成になっている。基材繊維3には樹脂材料が含浸されている。
【0012】
基材繊維3としては、炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等を例示できる。基材繊維3に含浸させる樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いる。
【0013】
このマンドレル5を軸方向に移動させて回転ベース6aに挿通させつつ、回転ベース6aをマンドレル5を中心にして回転させることにより、それぞれのボビン7から基材繊維3を引出す。これにより、マンドレル5の外周上にマンドレル5の軸方向(マンドレル5の軸心CL)に対して対称に所定の配向角度aで基材繊維3が編組され、先細円筒状の第1編組層2aが形成される。この第1編組層2aの外周上に同様に第2編組層2b、第2編組層2bの外周上に同様に第3編組層3cを、マンドレル5の軸心CL(即ち、成形する積層体2の軸心CL)を中心にして同軸上に順次積層して先細円筒状の積層体2を成形する。
【0014】
ここで、例えば、第1編組層2a、第2編組層2bを形成する際には、マンドレル5の軸方向で基材繊維3の配向角度aを変化させることなく一定の角度にする。そして、積層体2の最外周の第3編組層2cを形成する際には、基材繊維3の配向角度aがマンドレル5の軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて編組する。
【0015】
第3編組層2cの基材繊維3の配向角度aを変化させるには、回転ベース6aの回転速度を一定に維持しながらマンドレル5の軸方向の送り速度を変化させることよって、容易に変化させることができる。例えば、配向角度aを大きくする場合には、マンドレル5の軸方向の送り速度を遅くし、配向角度aを小さくする場合には、マンドレル5の軸方向の送り速度を速くすればよい。
【0016】
これにより、図1に例示するように、最外周の第3編組層2cの基材繊維3の配向角度aを軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させた先細円筒状の積層体2を成形することができる。この積層体2では、先端側の配向角度a1よりも後端側の配向角度a2が大きくなっている(a1<a2)。
【0017】
ここで、積層体2の第1編組層2a、第2編組層2b、第3編組層2cの層厚と、基材繊維3の配向角度aとの関係は以下のとおりである。積層体2の横断面(軸心CLと直交する横断面)において、基材繊維3の配向角度aが小さくなる程、基材繊維3の断面積は小さくなる。そして、積層体2のその横断面位置での基材繊維3の配置数は、配向角度aに関わらず一定である。したがって、基材繊維3の配向角度aが小さい程、その横断面位置での基材繊維3の断面積の総和は小さくなるので、層厚の増大を抑制することができる。換言すると、基材繊維3の配向角度aを大きくする程、その横断面位置での基材繊維3の断面積の総和は大きくなるので、必然的に層厚は増大する。
【0018】
本発明では、積層体2の先端側では後端側に比べて基材繊維3の配向角度aが小さくなっているので、積層体2の先端側の第3編組層2cでは、図3に例示するように層厚がtとなり、積層体2の後端側の第3編組層2cでは、図4に例示するように層厚tとなり、ほぼ同じ層厚になっている。
【0019】
この積層体2を縦断面で見ると、図2に例示するように、第1編組層2a、第2編組層2bは、それぞれ基材繊維3の配向角度aを一定にしているので、層厚は後端側よりも先端側が大きくなっている。一方、第3編組層2cは、配向角度aを軸方向で徐々に変化させて後端側をより大きくしているので、軸方向位置による層厚の変化が小さく、ほぼ一定の層厚tになっている。
【0020】
成形した先細円筒状の積層体2は加熱して、基材繊維3に含浸させた樹脂材料を硬化させる。このようにして得られた硬化した積層体2は、その表面が編組された基材繊維3の影響によって凹凸になっている。
【0021】
そこで、次に、硬化させた積層体2は、第3編組層2cを実質的にすべて除去するように、図6に例示する研磨装置8によってその表面を研磨する。この研磨装置8は、回転軸を平行にして対向する一対の研磨体8a、8aを有している。この回転する一対の円筒状の研磨体8a、8aの間に積層体2を通過させることにより、その表面全体を一定厚さ研磨する。
【0022】
上述したように、この積層体2の研磨対象となる第3編組層2cは層厚が軸方向位置に関わらず、ほぼ一定になっているので、回転する研磨体8a、8aの間を通過させて表面を一定厚さ研磨すると、第3編組層2cの研磨残りがなく、或いは、研磨残りの厚さのばらつきを小さくすることができる。したがって、追加的に大幅な研磨作業を行なう必要がなくなり生産性の向上に寄与する。尚、この研磨装置8による研磨の後に、微調整の研磨等を行なって積層体2の表面を最終的に滑らかに仕上げる。
【0023】
その後、滑らかにした積層体2の表面に塗装を施して、図7に例示するような表面に塗料層4を有するシャフト1が完成する。このシャフト1では、硬化させた積層体2の最外周の第3編組層2cのみが実質的に除去されて、研磨残りがほぼない状態になっているので、製造したシャフト1の品質(性能)に悪影響が生じることがない。
【0024】
このように、本発明によれば、研磨対象となる第3編組層2cを設定どおり過不足なく研磨することが容易になり、硬化させた積層体2の表面を軸方向全長にわたって必要以上に研磨したり、必要以上に研磨残りが生じたりすることが回避できるので生産性と品質の向上を図ることができる。
【0025】
研磨対象となる第3編組層2cを過不足なく研磨し易くするために、第3編組層2cの最大層厚と最小層厚との差は、できるだけ小さくすることが好ましく、0.1mm以下、特に好ましくは0.05mm以下にする。
【0026】
また、基材繊維3の配向角度aを変化させる範囲は、例えば、10°〜70°程度、或いは20°〜60°程度にする。配向角度aは一様に変化させるだけでなく、なるべく第3編組層2cの層厚を均一にするように、成形する積層体2のテーパ具合(軸方向での外径の変化具合)に応じて変化させるとよい。
【0027】
基材繊維3の配向角度aを変化させるのは、研磨対象となる編組層であればよく、具体的には、少なくとも最外周の第3編組層2cであればよいが、その他の編組層2a、2bの基材繊維3の配向角度aを同様に変化させてもよい。
【0028】
上記実施形態では、第1編組層2a、第2編組層2b、第3編組層2cの3層を積層して積層体2を形成しているが、要求性能等に応じて適切な積層数が設定される。例えば、編組層を4、5、6層程度積層することもできる。編組層を5層積層して積層体2を形成した場合には、少なくとも最外周の第5編組層を研磨対象とする。また、それぞれの編組層における基材繊維3の本数についても適切な本数が設定される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明によって形成した先細円筒状の積層体を例示する平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図2のB−B半断面図である。
【図4】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図2のC−C半断面図である。
【図5】基材繊維を編組する工程を例示する説明図である。
【図6】硬化させた積層体の表面を研磨する工程を例示する説明図である。
【図7】図2の第3編組層を研磨した後、塗料層を形成して完成したシャフトを例示する縦断面図である。
【図8】基材繊維の配向角度を一定にして形成した先細円筒状の積層体を例示する平面図である。
【図9】図8のD−D断面図である。
【図10】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図9のE−E半断面図である。
【図11】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図9のF−F半断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 シャフト
2 積層体
2a 第1編組層
2b 第2編組層
2c 第3編組層
3 基材繊維
4 塗料層
5 マンドレル
6 編組装置
6a 回転ベース
7 ボビン
8 研磨装置
8a 研磨体
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴルフクラブ用シャフトの製造方法に関し、さらに詳しくは、ブレーディング製法を用いた際に、積層体を硬化させた後に研磨対象となる編組層を過不足なく研磨し易くして、生産性と品質の向上を図ることができるゴルフクラブ用シャフトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブ用シャフトの製造方法としてブレーディング製法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ブレーディング製法では、マンドレル上で樹脂材料を含浸させた基材繊維をマンドレル軸方向に対して対称の配向角度で編組させて編組層を形成し、この編組層を複数積層させて先細円筒状の積層体を成形する。その後、この積層体を加熱することにより、基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させる。硬化させた積層体の表面は、編組された基材繊維の影響によって凹凸になるので、この凹凸を滑らかにするために硬化させた積層体の表面を研磨するようにしている。
【0003】
従来、ブレーディング製法では図8、図9に例示するように、積層するそれぞれの編組層(第1編組層2a、第2編組層2b、第3編組層2c)を形成する際に、基材繊維3の配向角度aを軸方向位置で変化させることなく一定にして編組している。そのため、成形した先細円筒状の積層体2の軸方向先端側の小径範囲では、図10に例示するように積層体2の外周長さに対する基材繊維3の断面積(層を形成する基材繊維3の断面積の総和)が大きくなるので、隣り合う基材繊維3どうしが圧縮しあって層厚t1が大きくなる傾向にある。一方、積層体2の軸方向後端側の大径範囲では、図11に例示するように先端側に比べて、積層体2の外周長さに対する基材繊維3の断面積(層を形成する基材繊維3の断面積の総和)が小さくなるので層厚t2が小さくなる傾向になる。即ち、図9に例示するように、それぞれの編組層2a、2b、2cにおいて、層厚が軸方向先端側が後端側よりも大きくなる。第3編組層2cに関していえば、層厚t1>層厚t2となっている。
【0004】
硬化させた積層体2の表面は、一般に、回転する研磨体を用いて、積層体2の軸方向に一定の厚さで研磨しているので、研磨対象となる最外周の第3編組層2cを研磨すると軸方向先端側の範囲には、第3編組層2cの研磨残りが生じる。積層体2の軸方向で一部に研磨残りがある場合、或いは、研磨残りの厚さにばらつきがあると、製造したシャフトの品質(性能)に悪影響が生じる。
【0005】
そのため、この研磨残りをなくすため、或いは、研磨残りの厚さのばらつきをなくすために追加的に研磨作業をする必要があった。このように、シャフトの品質を維持、向上させるために、追加的な研磨作業を行なうので生産性を向上させるには限界があった。
【特許文献1】特開2002−177424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ブレーディング製法を用いた際に、積層体を硬化させた後に研磨対象となる編組層を過不足なく研磨し易くして、生産性と品質の向上を図ることができるゴルフクラブ用シャフトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のゴルフクラブ用シャフトの製造方法は、樹脂材料を含浸させた基材繊維を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体を成形し、この積層体を加熱することにより基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させ、次いで、硬化させた積層体の表面を研磨するゴルフクラブ用シャフトの製造方法において、前記積層した編組層のうち、少なくとも最外周の編組層を形成する際には、前記配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて基材繊維を編組することを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記配向角度を変化させて形成した編組層の最大層厚と最小層厚との差を、例えば、0.1mm以下にする。また、前記配向角度を変化させる範囲を、例えば、10°〜70°にする。前記硬化させた積層体を、例えば、回転する研磨体の間を通過させることにより、表面を一定厚さ研磨する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂材料を含浸させた基材繊維を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体を成形し、この積層体を加熱することにより基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させ、次いで、硬化させた積層体の表面を研磨するゴルフクラブ用シャフトの製造方法において、前記積層した編組層のうち、少なくとも最外周の編組層を形成する際には、前記配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて基材繊維を編組するので、配向角度を変化させた編組層では、先細円筒状の積層体の軸方向位置の違いによる層厚の差を小さくすることができる。これにより、積層体を硬化させた後に研磨対象となる編組層(主に最外周の編組層)を一定の厚さで研磨すれば、この編組層を設定どおり過不足なく研磨することが可能になる。即ち、積層体の表面を軸方向全長にわたって必要以上に研磨したり、必要以上に研磨残りが生じたりすることが回避できるので生産性と品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のゴルフクラブ用シャフトの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
本発明によりゴルフクラブ用シャフト(以下、シャフト1という)を製造する際には、図5に例示するような一般的な編組装置6を用いる。この編組装置6は、基材繊維3を巻回した複数のボビン7を回転ベース6aに設置し、回転ベース6aの中心部には先細円筒状または円柱状のマンドレル5が挿通する構成になっている。基材繊維3には樹脂材料が含浸されている。
【0012】
基材繊維3としては、炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等を例示できる。基材繊維3に含浸させる樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いる。
【0013】
このマンドレル5を軸方向に移動させて回転ベース6aに挿通させつつ、回転ベース6aをマンドレル5を中心にして回転させることにより、それぞれのボビン7から基材繊維3を引出す。これにより、マンドレル5の外周上にマンドレル5の軸方向(マンドレル5の軸心CL)に対して対称に所定の配向角度aで基材繊維3が編組され、先細円筒状の第1編組層2aが形成される。この第1編組層2aの外周上に同様に第2編組層2b、第2編組層2bの外周上に同様に第3編組層3cを、マンドレル5の軸心CL(即ち、成形する積層体2の軸心CL)を中心にして同軸上に順次積層して先細円筒状の積層体2を成形する。
【0014】
ここで、例えば、第1編組層2a、第2編組層2bを形成する際には、マンドレル5の軸方向で基材繊維3の配向角度aを変化させることなく一定の角度にする。そして、積層体2の最外周の第3編組層2cを形成する際には、基材繊維3の配向角度aがマンドレル5の軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて編組する。
【0015】
第3編組層2cの基材繊維3の配向角度aを変化させるには、回転ベース6aの回転速度を一定に維持しながらマンドレル5の軸方向の送り速度を変化させることよって、容易に変化させることができる。例えば、配向角度aを大きくする場合には、マンドレル5の軸方向の送り速度を遅くし、配向角度aを小さくする場合には、マンドレル5の軸方向の送り速度を速くすればよい。
【0016】
これにより、図1に例示するように、最外周の第3編組層2cの基材繊維3の配向角度aを軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させた先細円筒状の積層体2を成形することができる。この積層体2では、先端側の配向角度a1よりも後端側の配向角度a2が大きくなっている(a1<a2)。
【0017】
ここで、積層体2の第1編組層2a、第2編組層2b、第3編組層2cの層厚と、基材繊維3の配向角度aとの関係は以下のとおりである。積層体2の横断面(軸心CLと直交する横断面)において、基材繊維3の配向角度aが小さくなる程、基材繊維3の断面積は小さくなる。そして、積層体2のその横断面位置での基材繊維3の配置数は、配向角度aに関わらず一定である。したがって、基材繊維3の配向角度aが小さい程、その横断面位置での基材繊維3の断面積の総和は小さくなるので、層厚の増大を抑制することができる。換言すると、基材繊維3の配向角度aを大きくする程、その横断面位置での基材繊維3の断面積の総和は大きくなるので、必然的に層厚は増大する。
【0018】
本発明では、積層体2の先端側では後端側に比べて基材繊維3の配向角度aが小さくなっているので、積層体2の先端側の第3編組層2cでは、図3に例示するように層厚がtとなり、積層体2の後端側の第3編組層2cでは、図4に例示するように層厚tとなり、ほぼ同じ層厚になっている。
【0019】
この積層体2を縦断面で見ると、図2に例示するように、第1編組層2a、第2編組層2bは、それぞれ基材繊維3の配向角度aを一定にしているので、層厚は後端側よりも先端側が大きくなっている。一方、第3編組層2cは、配向角度aを軸方向で徐々に変化させて後端側をより大きくしているので、軸方向位置による層厚の変化が小さく、ほぼ一定の層厚tになっている。
【0020】
成形した先細円筒状の積層体2は加熱して、基材繊維3に含浸させた樹脂材料を硬化させる。このようにして得られた硬化した積層体2は、その表面が編組された基材繊維3の影響によって凹凸になっている。
【0021】
そこで、次に、硬化させた積層体2は、第3編組層2cを実質的にすべて除去するように、図6に例示する研磨装置8によってその表面を研磨する。この研磨装置8は、回転軸を平行にして対向する一対の研磨体8a、8aを有している。この回転する一対の円筒状の研磨体8a、8aの間に積層体2を通過させることにより、その表面全体を一定厚さ研磨する。
【0022】
上述したように、この積層体2の研磨対象となる第3編組層2cは層厚が軸方向位置に関わらず、ほぼ一定になっているので、回転する研磨体8a、8aの間を通過させて表面を一定厚さ研磨すると、第3編組層2cの研磨残りがなく、或いは、研磨残りの厚さのばらつきを小さくすることができる。したがって、追加的に大幅な研磨作業を行なう必要がなくなり生産性の向上に寄与する。尚、この研磨装置8による研磨の後に、微調整の研磨等を行なって積層体2の表面を最終的に滑らかに仕上げる。
【0023】
その後、滑らかにした積層体2の表面に塗装を施して、図7に例示するような表面に塗料層4を有するシャフト1が完成する。このシャフト1では、硬化させた積層体2の最外周の第3編組層2cのみが実質的に除去されて、研磨残りがほぼない状態になっているので、製造したシャフト1の品質(性能)に悪影響が生じることがない。
【0024】
このように、本発明によれば、研磨対象となる第3編組層2cを設定どおり過不足なく研磨することが容易になり、硬化させた積層体2の表面を軸方向全長にわたって必要以上に研磨したり、必要以上に研磨残りが生じたりすることが回避できるので生産性と品質の向上を図ることができる。
【0025】
研磨対象となる第3編組層2cを過不足なく研磨し易くするために、第3編組層2cの最大層厚と最小層厚との差は、できるだけ小さくすることが好ましく、0.1mm以下、特に好ましくは0.05mm以下にする。
【0026】
また、基材繊維3の配向角度aを変化させる範囲は、例えば、10°〜70°程度、或いは20°〜60°程度にする。配向角度aは一様に変化させるだけでなく、なるべく第3編組層2cの層厚を均一にするように、成形する積層体2のテーパ具合(軸方向での外径の変化具合)に応じて変化させるとよい。
【0027】
基材繊維3の配向角度aを変化させるのは、研磨対象となる編組層であればよく、具体的には、少なくとも最外周の第3編組層2cであればよいが、その他の編組層2a、2bの基材繊維3の配向角度aを同様に変化させてもよい。
【0028】
上記実施形態では、第1編組層2a、第2編組層2b、第3編組層2cの3層を積層して積層体2を形成しているが、要求性能等に応じて適切な積層数が設定される。例えば、編組層を4、5、6層程度積層することもできる。編組層を5層積層して積層体2を形成した場合には、少なくとも最外周の第5編組層を研磨対象とする。また、それぞれの編組層における基材繊維3の本数についても適切な本数が設定される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明によって形成した先細円筒状の積層体を例示する平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図2のB−B半断面図である。
【図4】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図2のC−C半断面図である。
【図5】基材繊維を編組する工程を例示する説明図である。
【図6】硬化させた積層体の表面を研磨する工程を例示する説明図である。
【図7】図2の第3編組層を研磨した後、塗料層を形成して完成したシャフトを例示する縦断面図である。
【図8】基材繊維の配向角度を一定にして形成した先細円筒状の積層体を例示する平面図である。
【図9】図8のD−D断面図である。
【図10】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図9のE−E半断面図である。
【図11】第3編組層の基材繊維の状態を模式的に示す図9のF−F半断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 シャフト
2 積層体
2a 第1編組層
2b 第2編組層
2c 第3編組層
3 基材繊維
4 塗料層
5 マンドレル
6 編組装置
6a 回転ベース
7 ボビン
8 研磨装置
8a 研磨体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を含浸させた基材繊維を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体を成形し、この積層体を加熱することにより基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させ、次いで、硬化させた積層体の表面を研磨するゴルフクラブ用シャフトの製造方法において、前記積層した編組層のうち、少なくとも最外周の編組層を形成する際には、前記配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて基材繊維を編組するゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【請求項2】
前記配向角度を変化させて形成した編組層の最大層厚と最小層厚との差を0.1mm以下にする請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【請求項3】
前記配向角度を変化させる範囲を10°〜70°にする請求項1または2に記載のゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【請求項4】
前記硬化させた積層体を、回転する研磨体の間を通過させることにより、表面を一定厚さ研磨する請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【請求項1】
樹脂材料を含浸させた基材繊維を、マンドレル外周上にマンドレル軸方向に対して所定の配向角度で編組することにより順次、先細円筒状の編組層を積層して先細円筒状の積層体を成形し、この積層体を加熱することにより基材繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させ、次いで、硬化させた積層体の表面を研磨するゴルフクラブ用シャフトの製造方法において、前記積層した編組層のうち、少なくとも最外周の編組層を形成する際には、前記配向角度が軸方向先端側よりも後端側が大きくなるように変化させて基材繊維を編組するゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【請求項2】
前記配向角度を変化させて形成した編組層の最大層厚と最小層厚との差を0.1mm以下にする請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【請求項3】
前記配向角度を変化させる範囲を10°〜70°にする請求項1または2に記載のゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【請求項4】
前記硬化させた積層体を、回転する研磨体の間を通過させることにより、表面を一定厚さ研磨する請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−136908(P2010−136908A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316431(P2008−316431)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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