説明

ゴルフクラブ用シャフトセット

【課題】同じセット内にあるクラブの各番手に要求される飛距離、方向性等の機能を満たすと共に、番手毎に近似した良好な打球フィーリングが得られるゴルフクラブ用シャフトセットを提供すること。
【解決手段】クラブヘッドが取付けられる先端領域Fと、グリップ18が取付けられる後端領域Rと、先端部と後端部の間の中間領域Mとをそれぞれが有し、番手が大きくなるに従って長さが順次短くなるゴルフクラブセットに用いるゴルフクラブ用シャフトセットであって、各シャフト12の中間領域Mに曲げ剛性値が最小となる最小曲げ剛性部S3を配置し、この最小曲げ剛性部S3から先端及び後端に向かって曲げ剛性を大きく形成し、各シャフト12の先端領域Fの長さ及び曲げ剛性値をシャフトセット内で等しく、かつ、番手が大きくなるに従って中間領域Mの曲げ剛性値を大きく形成したシャフトセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用シャフトセットに関し、特に、クラブヘッドが取付けられる先端領域と、グリップが取付けられる後端領域と、先端部と後端部の間の中間領域とを有し、番手が大きくなるに従ってシャフトが順次短くなるゴルフクラブセットに用いるゴルフクラブ用シャフトセットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴルフクラブセットは、ゴルフボールを遠くまで飛ばす飛距離を主目的としたクラブから、ゴルフボールの飛距離及び方向の正確性を主目的としたクラブまで、番手の異なる複数のクラブから構成されており、状況に応じて適宜のクラブを使い分けつつプレーする。番手が大きくなるにつれて、ロフトすなわちクラブフェースの傾斜角度が大きく、シャフトの長さが短くなる。
【0003】
通常、このようなゴルフクラブセットを形成するクラブのシャフトは、長いテーパ状のシャフトの先端を、番手が大きくなるにつれて順に切り詰めて形成し、シャフトの撓りによる復元力を飛距離の増大に利用する低番手のゴルフクラブに対して、番手の大きくなるほどシャフトの全体的な曲げ剛性を高くし、打球方向の精度を高めることができるようになっている。クラブセットを形成する各クラブの曲げ剛性は一定範囲に収められるが、番手の大きくなる程、先端部の曲げ剛性が大きくなる。
【0004】
そして、クラブヘッドに取り付ける先端側の最も小さな曲げ剛性値をセット内の各クラブ毎に同じ範囲に形成し、グリップ側の一定範囲内における曲げ剛性を番手が大きくなる程大きく形成することにより、番手の大きなクラブでもシャフトの撓りを利用して、飛距離を向上させ、セット内における各クラブ毎の打球のタイミングや打球位置を一定とし、番手が大きくなる程方向性を向上させることができるようにしたゴルフクラブセットのためのシャフトセットが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−279558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このシャフトセットは、打球のタイミングや打球位置を一定とすることが可能であるとしても、クラブヘッドを取り付ける側の曲げ剛性がシャフトの先端側に向けて次第に小さくなるため、打球時にクラブヘッドがぶれ易く、打球の方向が制御し難くなる虞がある。また、シャフトのグリップ側の一定範囲で曲げ剛性の変化の小さい領域が形成され、各シャフトの先端側の曲げ剛性値の小さい範囲からグリップ側に向けて曲げ剛性が変化する位置が、番手が大きくなるにつれてグリップ側に移行するため、先端側の曲げ剛性値の概略同じ範囲の長さが番手の大きなシャフト程長く形成されることになる。このため、先端側の撓りがセット内のクラブ毎に異なり、番手の異なるクラブ間でスイングに違和感を生じさせることになり、番手毎のスイング調整が必要で、フィーリングに相違が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、同じセット内にあるクラブの各番手に要求される飛距離、方向性等の機能を満たすと共に、番手毎に近似した良好な打球フィーリングが得られるゴルフクラブ用シャフトセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によると、クラブヘッドが取付けられる先端領域と、グリップが取付けられる後端領域と、先端領域と後端領域の間の中間領域とをそれぞれが有し、番手が大きくなるに従って長さが順次短くなるゴルフクラブセットに用いるゴルフクラブ用シャフトセットであって、各シャフトの中間領域に曲げ剛性値が最小となる最小曲げ剛性部を配置し、この最小曲げ剛性部から先端及び後端に向かって曲げ剛性を大きく形成し、各シャフトの先端領域の長さ及び曲げ剛性値をシャフトセット内で等しく、かつ、番手が大きくなるに従って中間領域の曲げ剛性値を大きく形成したシャフトセットが提供される。
【0009】
前記先端領域の長さが、クラブヘッドを取付けるヘッド取付け領域の長さの2倍以上であることが好ましい。
【0010】
また、セット内のクラブを、ロングクラブとミドルクラブとショートクラブとの群に区分したときに、各郡のクラブのシャフトの中間領域における各位置の曲げ剛性値を番手が大きくなるに従って等間隔で大きく形成することもできる。
【0011】
最も番手の小さいクラブのシャフトの最小曲げ剛性部から先端まで曲げ剛性値を滑らかに変化させて形成し、このシャフトの最小曲げ剛性部から先端までの曲げ剛性の変化を基準として、番手の大きいクラブのシャフトの中間領域の曲げ剛性値を大きく形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフクラブ用シャフトセットによると、シャフトセット内の各シャフトが中間領域に曲げ剛性値が最小となる最小曲げ剛性部を配置され、この最小曲げ剛性部から先端及び後端に向かって曲げ剛性を大きく形成され、各シャフトの先端領域の長さ及び曲げ剛性値をシャフトセット内で等しく、かつ、番手が大きくなるに従って中間領域の曲げ剛性値を大きく形成されたことにより、スイングの際及び打球時の先端側の撓りが番手の異なるクラブ間で近似させることができ、中間領域でスイングコントロールしても、クラブヘッドの挙動が近似し、同じセット内にあるクラブの各番手に要求される飛距離、方向性等の機能を満たすと共に、番手毎に近似した良好な打球フィーリングを得ることができる。
【0013】
先端領域の長さを、クラブヘッドを取付けるヘッド取付け領域の長さの2倍以上に形成する場合には、先端領域を十分に撓らせることができ、打球の飛距離を向上させることができる。
【0014】
また、セット内のクラブを、ロングクラブとミドルクラブとショートクラブとの群に区分したときに、各郡のクラブのシャフトの中間領域における各位置の曲げ剛性値を番手が大きくなるに従って等間隔で大きく形成する場合には、各郡のクラブ毎に要求される機能が得られ、それぞれの郡内のクラブにより良好なフィーリングが得られる。
【0015】
最も番手の小さいクラブのシャフトの最小曲げ剛性部から先端まで曲げ剛性値を滑らかに変化させて形成し、このシャフトの最小曲げ剛性部から先端までの曲げ剛性の変化を基準として、番手の大きいクラブのシャフトの中間領域の曲げ剛性値を大きく形成する場合には、番手が大きいクラブのシャフトの先端領域の曲げ剛性を番手が小さいクラブの先端領域の曲げ剛性と一致させることで、打球が上がり易く、打球の飛距離の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるシャフトセットを用いたゴルフクラブセットのクラブの説明。
【図2】各シャフトの先端からの長さ(横軸)に対する曲げ剛性値(縦軸)の変化を例示するグラフ図。
【図3】各シャフトを形成するプリプレグの配置例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態によるシャフトセットを用いた複数本のクラブからなるゴルフクラブセットの内の1本のアイアンクラブ10を示す。このクラブ10は、シャフト12の先端をクラブヘッド14のホーゼル16に取付け、天然ゴムあるいは合成ゴム等の柔軟性や軟質材料で形成したグリップ18を後端部に取付けてある。このクラブ10は、番手が大きくなるにつれて、クラブヘッド14のフェース14aに付されたロフト角αが大きく形成され、シャフト12の長さは短くなる。なお、ロフト角αは、例えばボールを置く地面等の基準水平面Bに垂直な面に対するフェース14aの角度であり、ロフト角αが大きくなる程、打球が高く上がり、飛距離は短くなる。
【0018】
このようなゴルフクラブセットを形成するクラブは、クラブヘッドの形式や用途に応じて種々の群に区分することが可能であるが、シャフト1の全長寸法にしたがって、シャフト12の長さが例えば989〜951mmの1番から4番のロングクラブと、例えば938から912mmの5番から7番のミドルクラブと、例えば900〜874mmの8番から10番のショートクラブとの複数の群に区分することができる。
【0019】
このようなクラブ10を形成するシャフト12は、クラブヘッド14が取付けられる先端部に向けて全体的に外径を縮径させた先細状に形成してある。このシャフト12は、全長のほぼ20〜30%程度の長さにわたる軸方向前方部位の先端領域Fと、全長のほぼ25〜30%の範囲で200〜250mm程度の長さが好ましい後方部位の後端領域Rと、全長のほぼ35〜45%の範囲で300〜400mm程度の長さが好ましい中間領域Mとを有し、先端領域Fの先端部の約30〜50mm程度のヘッド取付領域hがクラブヘッド14のホーゼル16内に挿入され、このクラブヘッド14に一体的に固定される。ヘッド取付領域hの長さをこのように設定するのは、ホーゼル16内に挿入されるシャフトの長さが短すぎると、クラブヘッド14との固定力が小さくなり、長すぎると、クラブ10のシャフト有効長が短くなるためである。
【0020】
また、後部領域Rは、その全体がグリップ18内に収容され、中間領域Mも、その後部領域Rに隣接する一部がグリップ18内に収容される。このグリップ18内には、シャフト12の外径が変化する部位を配置することにより、グリップ18から突出する部位が滑らかなテーパ状の外観をなし、構えたときに、外径の変化による違和感を生じさせることがない。なお、滑らかなテーパ状とは、目視により判別できる程度の段部又は凹凸状の外形が形成されないことをいう。
【0021】
図2は、このようなシャフトセットを形成する種々の番手に対応したシャフト12の軸方向に沿う先端領域F、中間領域M及び後部領域Rにおける曲げ剛性値の変化を示す。この図2では、明瞭にするために、1番(#1)から9番(#9)までの奇数番手のシャフトについて示してあるが、偶数番手のシャフトについても、それぞれ隣接するシャフト間に位置することは明らかである。
【0022】
図2は、シャフト12の先端の位置S0から略200mmの位置S1までの範囲を先端領域Fとし、この先端領域Fの終端である位置S1から略730mmの位置S2までの範囲を中間領域Mとし、この中間領域Mの終端である位置S2から後方を後部領域Rとしてある。このように領域を分けたのは、例えば先端部の外径が直径8.0〜10.0mmの範囲で、後端の外径(最大外径)が直径15.0〜17.0mmの範囲のときに、先端部の略30〜50mmをクラブヘッド14のホーゼル16内に挿入したシャフト12の打球時にシャフト12の動きに違いが生じるからである。先端領域Fが終端する位置S1は、ホーゼル16内への挿入長さの相違を考慮して、各番手のシャフト間で、好ましくは±5mmで±20mmの範囲内でばらつきを生じてもよい。
【0023】
いずれの場合も、先端領域Fは、ヘッド取付領域hの2倍以上で5倍内に設定することが好ましく、このような範囲に設定することで、打球時に先端領域Fを確実に撓らせることができ、打球の飛距離を向上させることができる。
【0024】
図2に示すように、シャフトセットを形成する各番手のシャフト12は、先端領域Fで曲げ剛性値が同様に変化しており、位置S0から後方に向けて先端領域Fが終端する位置S1まで次第に低下する。この曲げ剛性値の変化は、各番手のシャフト毎に同様な比率で変化することが好ましく、番手間のばらつきは、好ましくは2〜3%の範囲で5から10%の範囲であれば打球時のフィーリングに与える影響を小さくし、番手毎で同様な打球感覚を得ることができる。
【0025】
中間領域M内では、各シャフト12の曲げ剛性が位置S1から後方に向けて滑らかに低下し、位置S3を超えた後、中間領域Mの終端である位置S2まで滑らかに増大する。したがって、位置S3は、曲げ剛性値が最も小さい最小曲げ剛性部を形成する。この最小曲げ剛性部を形成する位置S3は、中間領域M内の中央位置よりも先端側で、位置S1から100〜200mmの範囲に配置することが好ましい。なお、曲げ剛性が滑らかに低下又は増大するとは、直線状に変化することに限らず、曲線状に変化する場合も含む。
【0026】
シャフトセットを形成する各シャフト12のそれぞれの領域の曲げ剛性の大きさすなわちEI値は、先端領域で30〜45N/m、最小曲げ剛性部で20〜35N/m、後端領域60から120N/mの範囲に形成することが好ましい。
【0027】
このような最小曲げ剛性部を形成する位置S3は、各番手のシャフト12のいずれも先端から等しい位置に配置することが好ましいが、各番手における曲げ剛性の相違やヘッド取付領域の長さの相違を考慮して±20mmの範囲で、±5mmの範囲内に配置することが好ましい。
【0028】
いずれの場合も、最小曲げ剛性部S3から先端に向けて曲げ剛性値が増大しているため、インパクト時にクラブヘッドの姿勢制御がし易く、したがってぶれ難くすることができる。
【0029】
更に、この中間領域M内では、各番手のシャフト12毎に曲げ剛性及びその変化率が相違しており、位置S1から最小曲げ剛性部である位置S3までの曲げ剛性の変化は、低番手のシャフトほど大きく、位置S3から中間領域Mの終端である位置S2までの曲げ剛性の変化は高番手のシャフト12ほど大きく形成してある。このため、位置S3では、番手間のそれぞれのシャフト12の曲げ剛性が2〜5%程度大きくなり、中間領域Mの終端である位置S2では、3〜8%程度と大きくなる。
【0030】
いずれの場合も、番手毎の曲げ剛性の変化は、ロングクラブの群、ミドルクラブの群、及び、ショートクラブの群のそれぞれで、番手毎に等間隔に変化することが好ましい。これにより、各郡のクラブ毎に要求されるそれぞれの機能が得られ、それぞれの郡内のクラブにより良好なフィーリングが得られる。
【0031】
また、シャフトセットにおけるシャフト12の中間領域の曲げ剛性値は、最も番手の小さい1番のクラブ用シャフトの最小曲げ剛性部である位置S3から先端の位置S0まで曲げ剛性値を滑らかに変化させて形成し、この1番のシャフト12の位置S3から先端の位置S0までの曲げ剛性の変化を基準として、順に、これよりも番手の大きなシャフト12の曲げ剛性値を大きく形成することが好ましい。
【0032】
これにより、番手が大きいクラブのシャフトの先端領域Fの曲げ剛性を番手が小さいクラブの先端領域の曲げ剛性と一致させることで、打球が上がり易く、打球の飛距離の向上を図ることができる。
【0033】
また、番手が大きくなるにしたがって、曲げ剛性最小部S3も上昇しているため、シャフト12にしっかり感を持たせて操作し易くすることができる。
【0034】
更に、後端領域Rでは、中間領域Mの終端である位置S2から80〜150mmの範囲で好ましくは略100mm後方に離隔した位置S4まで、曲げ剛性の変化が小さい調整領域R1と、位置S4を超えた後、後端まで曲げ剛性が滑らかに増大する末端領域R2とを配置してある。末端領域R2は、握り易くさせるために外径を滑らかに増大させてグリップ性を向上させ、調整領域R1は、中間領域Mと末端領域R2との間で、外径が急激に変化するのを防止する。そして、グリップ18は、各シャフト12の終端から、図2に鎖線Gで示す領域まで配置され、外径が変化する部分がグリップ18で隠蔽される。これにより、グリップ18の先端側では、ほぼ滑らかなテーパ状のシャフト12が露出し、クラブ10を構えたときに違和感を生じるのを防止することができる。
【0035】
表1及び表2は、このように形成した1番から10番のクラブ10を形成するためのシャフトセットの2つの実施例を示す。これらの表における曲げ剛性値は、シャフト12を水平に配置した状態で下側から2点で支え、その中間点に上側から圧接部材を押圧する3点曲げにより行う通常の試験機により行ったものである。シャフト12を支える2つの支点は、300mm離隔させ、圧接部材を降下させてシャフト12を2mm程度撓ませるのに必要な力を測定することで行ったものである。測定点は、60mm程度の間隔で行った。
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
このようにシャフト12のセットは、各シャフト12の最小曲げ剛性部をクラブヘッド14から例えば200〜400mm離隔した位置に配置することにより、クラブヘッド14に近接する領域の曲げ剛性を低下させることなく、各番手毎のシャフト12の特に先端領域Fにおける撓り特性を互いに近似させることができる。このため、スイングに際して、中間領域Mでスイングコントロールしても、番手の異なるクラブ10のクラブヘッド14の挙動が互いに近似し、同じセット内にあるクラブ10の各番手に要求される飛距離、方向性等の機能を満たすと共に、番手毎に近似した良好な打球フィーリングを得ることができる。
【0038】
特に、シャフトはスイング動作におけるトップ位置からインパクト位置にかけて、シャフトの元すなわち後端側から先すなわち先端側に徐々に撓りが移行していく。そして、先が撓るタイミングは、インパクトの直前のため、人の感覚で制御することは困難であり、このように、シャフトの先側の曲げ剛性に関する剛性バランスを一定にしておくことが極めて重要でかつ有益である。
【0039】
図3は、このようなシャフト12を形成するプリプレグの配置例を芯金20と共に示す。
【0040】
本実施形態の芯金20は、シャフト12の全長よりも長く、例えば約1400〜1600mmの全長を有し、繊維強化プリプレグを巻回する外周領域に、シャフト12の先端領域Fを形成するための前部テーパ部22と、シャフト12の後端領域Rを形成するための後部テーパ部24と、シャフト12の中間領域Mを形成するための中間テーパ部26とを有する。この芯金20の後端には、この芯金20を操作するための操作部28を配置してある。
【0041】
前部テーパ部22は、先端の外径を約2.5〜4.0mm程度の大きさに形成し、後方に向けて、後述する補強プリプレグ30の前部領域30aに対応する部位で7.0/1000〜8.0/1000、後部領域30bに対応する部位で25.0/1000〜35.0/1000程度の勾配を形成する。また、シャフト12の中間領域Mから後部領域Rに対応する部位の勾配を8.0/1000〜10.0/1000程度に形成し、末端の外径が14.0〜15.0mm程度に形成される。
【0042】
そして、中間テーパ部26は、8.0/1000〜10.0/1000程度の勾配で形成される。
【0043】
本実施形態では、強化繊維が芯金20の軸芯に対して傾斜方向に配置された斜向繊維層と、強化繊維が芯金20の軸芯に沿う軸長方向に配置された軸方向繊維層と、強化繊維が芯金20の周方向に配置された周方向繊維層とを有する本体層を全長にわたって形成し、前部テーパ部22に巻回する補強用プリプレグ30,32により、最小曲げ剛性位置S3の位置を調整すると共に、先端領域Fの曲げ調整値を調整している。
【0044】
本体層は、斜向繊維層によりねじれ剛性を所要範囲に調整し、軸方向繊維層により曲げ剛性を調整し、周方向繊維層により、シャフト12のつぶれに対する剛性を調整することができる。
【0045】
本実施形態の斜向繊維層は、内周側に、芯金20の軸芯に対して強化繊維を+35度から+55度の範囲の傾斜方向に配向させた第1プリプレグ34と、強化繊維を−35から−55度の範囲の傾斜方向に配向させた第2プリプレグ36とを互いに重ね合わせて芯金20に巻回して形成され、このバイアス層の外周側に、順に軸方向繊維層と周方向繊維層と軸方向繊維層とを重ねた状態で形成してある。
【0046】
また、内周側の軸方向繊維層は強化繊維を芯金20の軸方向に配置した軸方向プリプレグ38で形成され、周方向繊維層は、強化繊維を芯金20の周方向に配置した周方向プリプレグ40で形成され、外周側の軸方向繊維層は強化繊維を軸方向に配置した軸方向プリプレグ42で形成してある。
【0047】
この本体層を形成するプリプレグ34−42の芯金20に対する巻回数は、先端側と後端側とで同じにすることが可能であるが、その巻回数を変化させることで、軸方向に沿って曲げ剛性を変化させることができる。
【0048】
本実施形態では、本体層の内周側に配置した補強用プリプレグ30は、シャフト12の先端位置S0と先端領域Fの終端である位置S1との間で巻回される台形状の前部領域30aと、位置S1と位置S3(最小曲げ剛性部)との間で巻回される三角形状の後部領域30bとを有し、この後部領域30bが後方に向けて幅すなわち周方向長さが減少することにより、後方に向けて曲げ剛性を減少させている。また、外周側に配置される補強用プリプレグ32は、位置S0とS1との間で巻回される三角形状に形成され、後方に向けて幅が減少する。これにより、シャフト12の先端領域Fの曲げ剛性を先端側に向けて大きく形成している。
【0049】
各番手毎の曲げ剛性の差は、強化繊維と樹脂量との比率を調整し、プリプレグの厚さ又は巻回数を調整することで所要の範囲に設定することができる。
【0050】
本体層を形成するプリプレグ34−42は、弾性率が20〜40ton/mm程度の強化繊維にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を20〜30%程度含浸させ、0.05〜0.15mm程度の厚さを有するものを用いることが好ましい。また、補強用プリプレグ30,32は、シャフト折れ防止のために、強化繊維として、カーボン繊維のみや、カーボン繊維とその他の材質の繊維からなる強化繊維を用い、含浸する樹脂は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を20〜30%程度含浸させたものが好ましい。
【0051】
なお、最小曲げ剛性部は、上述のようにプリプレグの巻回数、補強用プリプレグ30,32の寸法、及び、その種類によってその位置大きさを変更するだけでなく、芯金20の外面に形成するテーパ面の勾配の変化によっても調整することができる。
【0052】
上述の実施形態は、種々に変更することが可能であり、例えば図3に示す本体層を形成するプリプレグ34−42の積層順を変更してもよく、補強層30,32の少なくとも一方を、本体層を形成するプリプレグ間に配置することも可能である。
【0053】
更に、アイアンクラブ用のシャフトに限らず、ウッドタイプのクラブやフェアーウェイウッド等種々のクラブ用のシャフトにも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…クラブ、12…シャフト、14…クラブヘッド、18…グリップ、F…先端領域、M…中間領域、R…後端領域、S3…最小曲げ剛性部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラブヘッドが取付けられる先端領域と、グリップが取付けられる後端領域と、先端領域と後端領域の間の中間領域とをそれぞれが有し、番手が大きくなるに従って長さが順次短くなるゴルフクラブセットに用いるゴルフクラブ用シャフトセットであって、各シャフトの中間領域に曲げ剛性値が最小となる最小曲げ剛性部を配置し、この最小曲げ剛性部から先端及び後端に向かって曲げ剛性を大きく形成し、各シャフトの先端領域の長さ及び曲げ剛性値をシャフトセット内で等しく、かつ、番手が大きくなるに従って中間領域の曲げ剛性値を大きく形成したことを特徴とするゴルフクラブ用シャフトセット。
【請求項2】
前記先端領域の長さが、クラブヘッドを取付けるヘッド取付け領域の長さの2倍以上である請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフトセット。
【請求項3】
セット内のクラブを、ロングクラブとミドルクラブとショートクラブとの群に区分したときに、各郡のクラブのシャフトの中間領域における各位置の曲げ剛性値を番手が大きくなるに従って等間隔で大きく形成した請求項1又は2に記載のゴルフクラブ用シャフトセット。
【請求項4】
最も番手の小さいクラブのシャフトの最小曲げ剛性部から先端まで曲げ剛性値を滑らかに変化させて形成し、このシャフトの最小曲げ剛性部から先端までの曲げ剛性の変化を基準として、番手の大きいクラブのシャフトの中間領域の曲げ剛性値を大きく形成した請求項1から3のいずれか1つに記載のゴルフクラブ用シャフトセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−212284(P2011−212284A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84092(P2010−84092)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】