説明

ゴルフクラブ用シャフト

【課題】 補強層をシャフトの最内層に形成しても、シャフトの内周面に生じる段差及び内周側のテーパ変化を抑制でき、補強層の肉厚を大きくは変化させずに所望の補強効果を出すことができ、異方性の発生を極力生じ難くできるゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【解決手段】 ゴルフクラブ用シャフト12は共通の中心軸Cを有する軸方向前方側の前部テーパ部26と後部テーパ部30との間に、これらのテーパ部に対して勾配が緩い中間テーパ部28を連続して配置した先細状の芯金20に対して、繊維強化プリプレグを巻回して形成する。芯金の中間テーパ部28から後部テーパ部に補強プリプレグ48を巻回して補強層74を形成するとともに中間テーパ部に位置する補強層の前部に外径調整部位74aを形成して、補強層の外周面のテーパを前部テーパ部のテーパと略同一とし、前部テーパ部及び補強層の外側に本体層76を巻回して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、繊維強化複合材により形成されるゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されたゴルフクラブ用シャフトは、先端(ヘッド側)から後端(グリップ側)に向かって外径が拡径するテーパ状のシャフトが開示されている。このシャフトの後端(グリップ側)から500mmまでの内径は一定で、その位置(シャフトの後端から500mmの範囲)の最内層の全体又は一部に補強層を形成している。このとき、シャフトを作製する際にプリプレグシートが巻回されるマンドレルの補強層形成部位を補強層の厚み分程度にテーパ形状に対して相対的に細くなるストレートとしている。そして、マンドレルの補強層形成部位に補強層を形成するプリプレグシートを巻回すると、そのプリプレグシートはテーパ変化が少ない状態で巻回されることになるので、シャフトの外周面に段差を発生させ難く、巻き付け不良の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−46566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、マンドレルの補強層形成部位が拡径せずストレートとして細くなる分だけ徐々に拡径する外周面との間に補強層を形成できる。しかし、補強層の端部には補強層の厚み分の段差が生じ、巻き付け不良が発生し易い。また、徐々に内径が拡径する外層と、ストレートのマンドレルとの間の補強層は肉厚が変化しているので、補強効果が補強層の先端側と後端側で異なり、剛性調整が煩雑となる。
また、シートワインディング法による形成で補強層を形成する際には補強層を形成するシートの先端側から後端側に少なくとも0プライから数プライまで三角形状のシートを巻回するが、周方向で巻回数が異なり、周方向に異方性が生じる。したがって、ゴルフクラブをスイングしたときに、安定したスイングをするのが難しくなるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、補強層をシャフトの最内層に形成しても、その外側に巻回するシートの内側に生じる段差や、テーパ変化を少なくでき、また、補強層の肉厚を大きくは変化させずに所望の補強効果を出すことができ、異方性の発生を極力生じ難くでき、方向性の良いゴルフクラブ用シャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る、共通の中心軸を有する軸方向前方側の前部テーパ部と前記前部テーパ部よりも軸方向後方側の後部テーパ部との間に、これらのテーパ部に対して勾配が緩い中間テーパ部を連続して配置した先細状の芯金に対して、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成するゴルフクラブ用シャフトは、前記芯金の前記中間テーパ部から後部テーパ部に補強プリプレグを巻回して補強層を形成するとともに前記中間テーパ部に位置する前記補強層の前部に外径調整部位を形成して、前記補強層の外周面のテーパを前記前部テーパ部のテーパと略同一とし、前記前部テーパ部及び前記補強層の外側に本体層を巻回して形成されることを特徴とする。
また、前記前部テーパ部のテーパ角度と、前記後部テーパ部のテーパ角度とを略同一としたことが好ましい。
また、前記中間テーパ部は、シャフト全長Lの後端から50%から70%に位置し、前記補強層の6%から10%の幅を有することが好ましい。
また、前記本体層のうち、最内層の本体層の強化繊維の繊維方向が、前記シャフトの軸長方向に対して傾斜していることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、補強層の外周面のテーパ角度を芯金の前部テーパ部のテーパ角度と略同一とすることができるので、これらの外側に本体層を巻回したときに、シャフトの外周に段差が形成されるのを防止できる。また、シャフトの内周は、補強層の外径調整部位を芯金の中間テーパ部の外周位置で形成することにより、中間テーパ部の外周に対応するシャフトの内周面を、中間テーパ部に隣接する前部テーパ部の外周面に近づけることができる。そして、芯金の前部テーパ部の外側に本体層を直接巻回することができるので、軸長方向に強化繊維の繊維方向を配する場合はもちろん、軸長方向から外れる方向に強化繊維の繊維方向を配する場合でも、強化繊維の蛇行を抑制できる。
前部テーパ部のテーパ角度と、後部テーパ部のテーパ角度とを略同一とすることによって、後部テーパ部の外側の補強層の肉厚を略一定とすることができる。そして、補強層を積層した部分の外径テーパが芯金のテーパと略同一となり、本体層を積層するのに段差がないため、本体層を容易に積層することができる。
中間テーパ部をシャフトの軸長方向中央よりも前側(ヘッド側)とすることによって、グリップ側の剛性を高く、ヘッド側をグリップ側よりも撓り易くして、打球を上がり易くすることができる。また、中間テーパ部は補強層の6%から10%程度の軸方向幅しか有さないので、シャフトに対する異方性の発生を抑制できる。
本体層の最内層の強化繊維の繊維方向を軸方向に対して傾斜させることによって、捩り剛性を強化することができる。また、一般に、芯金の軸方向に対して傾斜した方向に強化繊維の繊維方向を有するプリプレグ材を積層する場合、軸長方向に強化繊維の繊維方向を有するプリプレグ材を積層するよりも巻き付けが難しいが、本体層の最内層を芯金に直接巻き付けることで、芯金の軸方向に対して傾斜した方向に強化繊維の繊維方向を有するプリプレグ材を積層する場合であっても、より強固に巻き付けることができる。また、上述したように、芯金に直接プリプレグを巻回するので、強化繊維の蛇行を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1及び第2実施形態に係るゴルフクラブを示す概略図。
【図2】第1及び第2実施形態に係るゴルフクラブ用シャフトを示す概略図。
【図3】第1実施形態に係るゴルフクラブ用シャフトを製造する際に用いる芯金、芯金に対するプリプレグシートの形状、強化繊維の繊維方向、巻回順を示す概略図。
【図4】第1実施形態に係るゴルフクラブ用シャフトを製造する際に芯金に対してプリプレグシートを巻回した状態の概略的な断面図。
【図5】第2実施形態に係るゴルフクラブ用シャフトを製造する際に用いる芯金、芯金に対するプリプレグシートの形状、強化繊維の繊維方向、巻回順を示す概略図。
【図6】第2実施形態に係るゴルフクラブ用シャフトを製造する際に芯金に対してプリプレグシートを巻回した状態の概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
第1の実施の形態について図1から図4を用いて説明する。
【0010】
図1に示すように、ゴルフクラブ10は、繊維強化プリプレグシートの積層体からなる中空のシャフト(繊維強化複合材料製の管状体)12と、このシャフト12の先端(一端)12a(図2参照)の細径部分にヘッド14が取り付けられ、シャフト12の後端(他端)12b(図2参照)の太径部分に例えばゴム製や皮革製等のグリップ16が取り付けられている。なお、図1に示すシャフト12の先端12aはヘッド14のホーゼル14a内に挿入された状態で固定されている。
【0011】
このゴルフクラブ用シャフト12は例えば全長Lが850mmから1100mm程度のアイアン用シャフトに用いられる。シャフト12の先端12aの外径は約4.0mmから6.0mm程度であり、シャフト12の後端12bの外径は約14.5mmから16.5mm程度である。シャフト12の外周面は中心軸Cに対して約6/1000から10/1000程度の傾き(テーパ角度)を有し、特に8/1000の傾きを有するようにテーパ状に形成されていることが好ましい。すなわち、これは、シャフト12の先端径に対するグリップ径の関係でゴルファーがグリップを握り易く、グリップ力を発揮し易い外径としている。
【0012】
図3に示すように、この実施の形態に係るシャフト12を作製するための芯金(マンドレル)20は、その先端20aから後端20bに向かって順に、第1テーパ部22と、第2テーパ部24と、第3テーパ部(前部テーパ部)26と、第4テーパ部(中間テーパ部)28と、第5テーパ部(後部テーパ部)30と、ストレート部32とを有する。
すなわち、第1テーパ部22と第2テーパ部24との間、第2テーパ部24と第3テーパ部26との間、第3テーパ部26と第4テーパ部28との間、第4テーパ部28と第5テーパ部30との間、第5テーパ部30とストレート部32との間には、それぞれ芯金20の外周面の傾きを変化させるための境目となる円周状の変位部23,25,27,29,31が形成されている。
【0013】
以下の表1には、芯金20の中心軸Cに対する各テーパ部の傾き(テーパ角度)、及び、シャフト12の全長Lに対する各テーパ部(隣接する変位部23,25,27,29,31間)の長さ割合を示す。例えば第1テーパ部22は中心軸Cに対して8.5/1000から9.5/1000程度の傾きを有し、かつ、シャフト12の全長Lに対して16%から25%の長さを有する。なお、第1テーパ部22は中心軸Cに対して8.9/1000程度の傾きを有することが特に好ましく、第1テーパ部22はシャフト12の全長Lに対して先端12aから20%以内の長さを有することが特に好ましいが、これはヘッド14のホーゼル14aの長さによって適宜に設定される。
【表1】

【0014】
第2テーパ部24は第1テーパ部22に対して略4倍傾きが大きい。第4テーパ部(中間テーパ部)28は、第5テーパ部(後部テーパ部)30に対して長さが短く緩い(傾きが小さい)テーパである。言い換えると、第5テーパ部30は、第4テーパ部28に対して、長く急な(傾きが大きい)テーパである。
また、第3テーパ部(前部テーパ部)26と第5テーパ部30とは略同一の傾きであることが好ましい。第5テーパ部30にある一定肉厚のプリプレグシートを載せたときに、そのプリプレグシートの外周面と第3テーパ部26の外周面とが面一になるからである。そして、これら第3テーパ部26及び第5テーパ部30の傾きは、シャフト12の外周面の上述した傾きと略同一である。
なお、例えば第5テーパ部30がシャフト12の全長に対して50%の位置にある場合、第1テーパ部22と第3テーパ部26とを合わせた長さをシャフト12の全長に対して32%から42%とすることが好ましい。このように設定するのは、例えば芯金20の第1テーパ部22の外周に形成される後述する第1及び第2前部補強層72,80の長さをヘッド14のホーゼル14aの長さに対応させたり、芯金20の第3テーパ部26の外周に形成される後述する第1及び第2本体層76,78だけの部分の長さを調整してゴルフクラブ10のスイング時に撓らせたい範囲を適宜に設定するためである。
【0015】
シャフト12は、それぞれ強化繊維に合成樹脂が含浸した繊維強化プリプレグシートである、第1から第3の前部補強シート42,44,46と、後部補強シート48と、第1から第3の本体シート50,52,54と、第4の前部補強シート56とを芯金20に巻回することにより形成されている。
各プリプレグシートの強化繊維には、主に炭素繊維が用いられるが、金属繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等、種々の繊維を用いても良い。強化繊維に含浸させるマトリクス樹脂(合成樹脂)としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれを用いても良い。熱硬化性樹脂であれば、例えばエポキシ、ピスマレイミド、ポリイミド、フェノール等が用いられる。熱可塑性樹脂であれば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)等が用いられる。
【0016】
そして、以下の表2には、シャフト12を構成する各プリプレグシートの芯金20に対する強化繊維の繊維方向及びプリプレグシートの厚さを示す。
【表2】

【0017】
表2に示すように、例えば、第1から第3前部補強シート42,44,46は、それぞれ芯金20の軸長方向に繊維方向を配し、厚さは0.10mmから0.30mm程度である。すなわち、第1から第3前部補強シート42,44,46はそれぞれ芯金20の軸長方向に繊維方向を配する軸長方向繊維層を形成し、曲げ剛性の調整に用いられる。第1から第3の前部補強シート42,44,46は樹脂量(繊維含有率)が20〜40wt%、引張弾性率:10〜400GPaである。
第4前部補強シート56も第1から第3の前部補強シート42,44,46と同様に、芯金20の軸長方向に繊維方向を配する軸長方向繊維層を形成し、曲げ剛性の調整に用いられる。第4前部補強シート56は樹脂量(繊維含有率)が20〜40wt%、引張弾性率が10〜400GPaである。
【0018】
後部補強シート48としては編成シート(ここではシートを円筒状にしたときに軸長方向及び軸長方向に対する傾斜方向(周方向含む)の全ての方向を1つのシートで補強できるように形成された種々のシートや、それぞれ軸長方向及び周方向に繊維方向を有するプリプレグシートが張り合わせられたもの)が用いられることが好ましい。また、編成シートとして例えば強化繊維が±45度の方向に編み込まれたプリプレグシート等が用いられることも好ましい。なお、ここでは0.15mm以上の厚いシート(後部補強シート48)の略三角形状部分48aよりも後方側を芯金20に対して略0.95〜1プライ巻回することで、剛性調整が行い易く、異方性を少なくできる。
【0019】
第1及び第2本体シート50,52は芯金20の軸長方向に対して傾斜した傾斜方向繊維層を形成し、捩れ剛性の調整用に用いられる。第1本体シート50は強化繊維が軸長方向に対して例えば+(プラス)30度から50度程度(特に好ましくは+45度)傾斜し、第2本体シート52は強化繊維が軸長方向に対して例えば−(マイナス)30度から50度程度(特に好ましくは−45度)傾斜している。第1及び第2本体シート50,52は樹脂量(繊維含有率)が20〜40wt%、引張弾性率が10〜400GPaである。
第3本体シート54は芯金20の軸長方向に繊維方向を配する軸長方向繊維層を形成し、曲げ剛性の調整に用いられる。第3本体シート54は樹脂量(繊維含有率)が20〜40wt%、引張弾性率が10〜400GPaである。
なお、第1から第3の前部補強シート42,44,46、後部補強シート48、第1から第3の本体シート50,52,54、第4の前部補強シート56はそれぞれ一定肉厚のものが用いられる。
【0020】
そして、図3に示すように、第1前部補強シート42は芯金20の第1テーパ部22と、第2テーパ部24の前側部分に巻回される。第2及び第3前部補強シート44,46は、第1前部補強シート42の先端に第2及び第3前部補強シート44,46の先端を合わせた状態で第1前部補強シート42の外周に巻回される。このとき、第2及び第3前部補強シート44,46は芯金20の第1テーパ部22と、第2テーパ部24との外周に巻回されることとなる。このため、芯金20の先端(一端)20a側には第1前部補強層72が形成される。
【0021】
このとき、第1前部補強層72の外周面は芯金20の第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周面と略面一である。
図3に示す第1前部補強シート42は略三角形状部分42aを有し、第2及び第3の前部補強シート44,46は略四角形状部分44a,46aを有する。これら略三角形部分42a及び略四角形状部分44a,46aは芯金20の第2テーパ部24に巻回され、第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周面と第1の前部補強層72の外周面とを略面一にする外径調整層(外径調整部位)72aを形成している。
この外径調整層72aは第1及び第2テーパ部22,24間の変位部23の外側位置のシャフト12の内周面と、第2及び第3テーパ部24,26間の変位部25の外側位置のシャフト12の内周面とを滑らかに連続させる。このとき、芯金20の第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周面とシャフト12の第1の前部補強層72の外周面とを略面一に形成するので、第1及び第2テーパ部22,24間の変位部23の外側位置のシャフト12の第1前部補強層72の肉厚を後端側に向かうにつれて徐々に減肉させて、第2及び第3テーパ部24,26間の変位部25の外側位置でのシャフト12の第1前部補強層72の肉厚を略0としている。なお、ここでの減肉は、第1から第3前部補強シート42,44,46自体を減肉させるものではなく、各シート42,44,46の略三角形状部分42a、略四角形状部分44a,46aを芯金20の第2テーパ部24に巻回することにより次第に減肉させた状態と同様の状態にしていくものである。
したがって、この外径調整層72aにより、シャフト12の内周側に急激な段差が生じるのを防止できるとともに、シャフト12の軸方向に沿った方向の急激な強度変化を防止することができる。すなわち、外径調整層72aは、シャフト12のうち、第1テーパ部22の外周位置に対応する部位と第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周位置に対応する部位との間の剛性差を、急激な段差を有する場合よりも緩やかに変化させることができる。
【0022】
図3に示すように、後部補強シート48は、肉厚が一定であり、第4テーパ部(中間テーパ部)28及び第5テーパ部(後部テーパ部)30に巻回される。このため、図4に示すように、第4テーパ部28及び第5テーパ部30の外周面には後部補強層74が形成されている。
このとき、第1前部補強層72及び後部補強層74の外周面は芯金20の第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周面と略面一である。
【0023】
そして、図3に示す後部補強シート48は略三角形状部分48aを有する。この略三角形状部分48aは第4テーパ部(中間テーパ部)28に巻回され、芯金20の第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周面と、第4テーパ部28及び第5テーパ部(後部テーパ部)30に巻回されたシャフト12の後部補強層74の外周面とを面一にする外径調整層(外径調整部位)74aを形成している。
この外径調整層74aは第3及び第4テーパ部26,28間の変位部27の外側位置のシャフト12の内周面と、第4及び第5テーパ部28,30間の変位部29の外側位置のシャフト12の内周面とを滑らかに連続させる。このとき、芯金20の第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周面とシャフト12の後部補強層74の外周面とを略面一に形成するので、第4及び第5テーパ部28,30間の変位部29の外側位置のシャフト12の後部補強層74の肉厚を先端側に向かうにつれて徐々に減肉させて、第3及び第4テーパ部26,28間の変位部27の外側でのシャフト12の後部補強層74の肉厚を略0としている。なお、ここでの減肉は、後部補強シート48自体を減肉させるものではなく、シート48の略三角形状部分48aを芯金20の第4テーパ部28に巻回することにより次第に減肉させた状態と同様の状態にしていくものである。
したがって、この外径調整層74aにより、シャフト12の内周側に急激な段差が生じるのを防止できるとともに、シャフト12の軸方向に沿った方向の急激な強度変化を防止することができる。すなわち、外径調整層74aは、シャフト12のうち、第3テーパ部(前部テーパ部)26の外周位置に対応する部位と第5テーパ部(後部テーパ部)30の外周位置に対応する部位との間の剛性差を緩やかに変化させることができる。
【0024】
なお、表1にも示しているが、第4テーパ部(中間テーパ部)28の長さ、すなわち、後部補強層74の外径調整層74aの軸方向長さは、シャフト12の全長Lに対して4%から6%程度、又は、後部補強層74に対して6%から10%程度の軸方向幅であることが好ましい。後部補強層74の外径調整層74aの軸方向長さがシャフト12の全長Lに対して4%から6%程度、又は、後部補強層74に対して6%から10%程度よりも割合が大きい(長い)と、後部補強シート48の三角形状のシート(略三角形状部分48a)によりシャフト12に異方性が生じ易くなる。一方、割合が小さい(短い)と、第3テーパ部(前部テーパ部)26と第5テーパ部(後部テーパ部)30とに連続する第4テーパ部28で段差が形成されたのと略同様の状態となり、シャフト12のうち、軸方向に隣接する位置の剛性差が急激に変化し過ぎることとなる。
これは、第1前部補強層72の外径調整層72aも同様である。
【0025】
第1本体シート50は、第1から第3の前部補強シート42,44,46と、後部補強シート48との外周に巻回される。このため、図3に示すように、第1本体シート50が直接芯金20に巻回されるのは、第3テーパ部(前部テーパ部)26だけである。
このとき、第1本体シート50の強化繊維の繊維方向は芯金20の中心軸C(軸長方向)に対して傾斜しているので、芯金20の軸長方向に強化繊維の繊維方向を有するプリプレグ材を積層するよりも巻き付けが難しいため強化繊維を巻回する際に蛇行し易くなるが、第1本体シート50を硬度のある芯金20の第3テーパ部26に直接巻回できるので、プリプレグシート(第1前部補強層72及び後部補強層74)上に第1本体シート50を巻回するよりも強固に巻き付けることができ、第3テーパ部26の外周での強化繊維の蛇行量を少なくすることができる。また、後述するように、第3テーパ部26の外周に相当する位置はシャフト12の全長Lの50%以上前(半分より前側)にあり、この位置は相対的に径が細く、剛性が低い部位であり、ヘッド14のコントロール、撓りによる打球の上がり易さに影響が大きい位置であるが、その位置の強化繊維の蛇行を少なくできる。したがって、シャフト12は所望の安定した強度を得ることができる。
このように、芯金20の第3テーパ部26の外周に直接、軸長方向に対して傾斜した方向に強化繊維を有するプリプレグシートを巻回するので、シャフト12の強度を安定化することができる。なお、軸長方向に対して傾斜した方向として、軸長方向に対して直交する周方向に強化繊維を有するプリプレグシートを巻回する場合も同様である。
なお、第3テーパ部26の外周面と第1の前部補強層72の外周面との間、第3テーパ部26の外周面と後部補強層74の外周面との間は略面一であるので、略同一テーパ角度を有する。この外周に肉厚が一定の第1本体シート50を巻回するので、第1本体シート50の外周面もシャフト12の外周面と略同一のテーパ角度(上述したように、例えば約6/1000から10/1000程度の傾き)を有する。このとき、第3テーパ部26の外周面と第1の前部補強層72の外周面との間、第3テーパ部26の外周面と後部補強層74の外周面との間に段差がないので、第1本体シート50を巻回する際に容易に巻回(積層)できる。
【0026】
そして、肉厚が一定の第2本体シート52を第1本体シート50の外周に巻回し、第1本体シート50及び第2本体シート52で第1本体層76を形成する。このため、第1本体層76の外周面はシャフト12の外周面と略同一のテーパ角度(上述したように、例えば約6/1000から10/1000程度の傾き)を有する。
また、第1本体シート50、第2本体シート52は強化繊維の繊維方向が軸長方向に対して互いに反対方向に例えば略等角度ずつずらしているので、シャフト12の捩り剛性を良好に発揮させることができる。
【0027】
第1本体層76の外周に肉厚が一定の第3本体シート54を巻回して第2本体層78を形成する。そして、第2本体層78の外周面はシャフト12の外周面であり、芯金20の中心軸Cに対して一定のテーパ角度(上述したように、例えば約6/1000から10/1000程度の傾き)を有する。
なお、このとき、第3本体シート54の強化繊維の繊維方向は軸長方向であるので、シャフト12の曲げ剛性を良好に発揮させることができる。
【0028】
第4前部補強シート56は、第1から第3前部補強シート42,44,46、第1から第3本体シート50,52,54の先端に第4前部補強シート56の先端を合わせた状態で第3本体シート54の外周に巻回される。このため、第4前部補強シート56で第2本体層78の先端部外周に第2前部補強層80を形成している。
【0029】
そして、通常の成形と同様に、第2本体層78及び第2前部補強層80の外側からテーピングにより締め付け成型、芯金20及びシャフト12の加熱硬化、芯金20の除去、テーピングのテープの除去、研磨等により、ゴルフクラブ用シャフト12を得ることができる。
【0030】
図4に示すように、シャフト12の内側から除去された芯金20の第1テーパ部22及び第2テーパ部24の外周に対応する位置には第1から第3の前部補強シート42,44,46により第1前部補強層72が形成されている。さらに、第4前部補強シート56により第2前部補強層80が形成されている。すなわち、軸長方向に強化繊維の繊維方向を有する第1前部補強層72及び第2前部補強層80によって、曲げ剛性に対する耐性が強化されている。このため、シャフト12の先端(第1前部補強層72及び第2前部補強層80)12aがヘッド14のホーゼル14a内に差し込まれて固定された状態でゴルフクラブ10をスイングしても、シャフト12を良好な状態に維持することができる。
【0031】
除去された芯金20の第4テーパ部(中間テーパ部)28及び第5テーパ部(後部テーパ部)30の外周に対応する位置には、後部補強シート48により後部補強層74が形成されている。このとき、後部補強層74は編成シートで形成されているので、シャフト12の曲げ剛性、捩れ剛性、潰れ剛性等を強化している。
一方、シャフト12の後部補強層74に対して先端側に隣接する部位には第1及び第2本体層76,78だけが存在し、後部補強層が存在しない。したがって、この部分は第1及び第2本体層76,78に加えて後部補強層74が配設されたシャフト12の後端側の部位に比べて撓り易く形成されている。
そして、特に、第1及び第2本体層76,78だけの部分はシャフト12の後端12bから全長Lに対して50%から70%の位置に形成されている。すなわち、第1及び第2本体層76,78だけの部分はシャフト12の全長Lの50%よりも前側に配置されている。
したがって、ゴルフクラブ10をスイングしたときに、剛性が高いゴルフクラブ10のグリップ16側(後端側)でのコントロールが確実に行え、前部(先端側)がグリップ16側(手元側)よりも撓るので打球を上がり易くすることができる。
また、後部補強層74の外径調整層74aはその軸長方向長さ(軸長方向幅)がシャフト12の全長Lに対して4%から6%程度で小さい。このため、シャフト12に生じる異方性の存在を抑制できる。
【0032】
以上説明したように、この実施形態に係るシャフト12にヘッド14およびグリップ16を固定したゴルフクラブ10を用いる場合、後部補強層74を有することによりグリップ16側の剛性がその先端側に隣接する部位の層に比べて高く形成されている。このため、ゴルフクラブ10をスイングしたときに、グリップ16側に剛性を持たせているのでゴルフクラブ10のコントロールを行い易くすることができるとともに、後部補強層74の先端側に隣接する部位をグリップ16側に比べて撓らせることで打球を上がり易くすることができる。
また、第3テーパ部(前部テーパ部)26と第5テーパ部(後部テーパ部)30とは略同一の傾きであるので、後部補強層74を構成する後部補強シート48の肉厚を一定とすることができ、効率的な補強をすることができる。
【0033】
次に、第2の実施の形態について図5および図6を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例である。
【0034】
図5に示すように、この実施形態に係る芯金120は、その先端120aから後端120bに向かって順に、第1テーパ部122と、第2テーパ部124と、第3テーパ部(第1前部テーパ部)126と、第4テーパ部(第1中間テーパ部)128と、第5テーパ部(第1後部テーパ部)130と、第6テーパ部132と、第7テーパ部(第2前部テーパ部)134と、第8テーパ部(第2中間テーパ部)136と、第9テーパ部(第2後部テーパ部)138と、ストレート部140とを有する。
すなわち、第1テーパ部122と第2テーパ部124との間、第2テーパ部124と第3テーパ部(第1前部テーパ部)126との間、第3テーパ部126と第4テーパ部(第1中間テーパ部)128との間、第4テーパ部128と第5テーパ部(第1後部テーパ部)130との間、第5テーパ部130と第6テーパ部132との間、第6テーパ部132と第7テーパ部(第2前部テーパ部)134との間、第7テーパ部134と第8テーパ部(第2中間テーパ部)136との間、第8テーパ部136と第9テーパ部(第2後部テーパ部)138との間、第9テーパ部138とストレート部140との間には、それぞれ芯金20の外周面の傾きを変化させるための円環状の変位部123,125,127,129,131,133,135,137,139が形成されている。
【0035】
以下の表3には、芯金120の中心軸Cに対する各テーパ部の傾き(テーパ角度)、及び、シャフト112の全長Lに対する各テーパ部(隣接する変位部123,125,127,129,131,133,135,137,139間)の長さ割合を示す。
【表3】

【0036】
この実施形態の芯金120は、第1実施形態の芯金20に対して、第3テーパ部(第1前部テーパ部)126、第4テーパ部(第1中間テーパ部)128、第5テーパ部(第1後部テーパ部)130を追加している。すなわち、この実施形態の芯金120の第1テーパ部122、第2テーパ部124は、第1実施形態の芯金20の第1テーパ部22、第2テーパ部24にそれぞれ対応する。また、この実施形態の芯金120の第7テーパ部(第2前部テーパ部)134、第8テーパ部(第2中間テーパ部)136、第9テーパ部(第2後部テーパ部)138は、第1実施形態の芯金20の第3テーパ部(前部テーパ部)26、第4テーパ部(中間テーパ部)28、第5テーパ部(後部テーパ部)30にそれぞれ対応する。
このため、この実施形態の芯金120の第1テーパ部122、第2テーパ部124、第7テーパ部(第2前部テーパ部)134、第8テーパ部(第2中間テーパ部)136、第9テーパ部(第2後部テーパ部)138の主な説明を省略する。
【0037】
この実施形態に係るシャフト112は、第1から第3の前部補強シート152,154,156と、中間補強シート158と、後部補強シート160と、第1から第3の本体シート162,164,166と、第4の前部補強シート168とで形成されている。これら第1から第3の前部補強シート152,154,156、中間補強シート158、後部補強シート160、第1から第3の本体シート162,164,166、第4の前部補強シート168は、それぞれ一定肉厚のプリプレグシートが用いられる。
【0038】
そして、以下の表4には、シャフト112を構成する各プリプレグシートの芯金120に対する強化繊維の繊維方向及びプリプレグシートの厚さを示す。
【表4】

【0039】
表4に示す第1から第3の前部補強シート152,154,156、第4前部補強シート168は第1実施形態の第1から第3の前部補強シート42,44,46、第4前部補強シート56と同様のプリプレグシートが用いられる。後部補強シート160は第1実施形態の後部補強シート48と同様のプリプレグシートが用いられる。第1から第3の本体シート162,164,166は第1実施形態の第1から第3の本体シート50,52,54と同様のプリプレグシートが用いられる。
中間補強シート158はこの実施形態では軸長方向に強化繊維の繊維方向を有するプリプレグシート、及び、軸長方向に対して例えば90度傾斜した周方向に繊維方向を有するプリプレグシートが張り合わせられたものが用いられる。なお、周方向に繊維方向を有するプリプレグシートは潰れ剛性の調整に用いられる。
【0040】
そして、図6に示すように、第1から第3前部補強シート152,154,156で芯金120の先端(一端)120a側に第1前部補強層172が形成される。図5に示す第1前部補強シート152の略三角形状部分152a、第2及び第3の前部補強シート154,156は略四角形状部分154a,156aにより、第1実施形態の外径調整層72aに対応する外径調整層172aを形成している。したがって、第1前部補強層172の外周面は芯金120の第3テーパ部(第1前部テーパ部)126の外周面と略面一である。
【0041】
図5に示すように、後部補強シート160は、第8テーパ部(第2中間テーパ部)136及び第9テーパ部(第2後部テーパ部)138に巻回される。このため、図6に示すように、第8テーパ部136及び第9テーパ部138の外周面には後部補強層176が形成されている。
このとき、後部補強シート160の略三角形状部分160a(第1実施形態の略三角形状部分48aに対応)により、外径調整層176a(第1実施形態の外径調整層74aに対応)を形成している。このため、シャフト112の後部補強層176の外周面は芯金120の第7テーパ部(第2前部テーパ部)134の外周面と略面一である。
【0042】
図5に示すように、中間補強シート158は、第4テーパ部(第1中間テーパ部)128、第5テーパ部(第1後部テーパ部)130及び第6テーパ部132に巻回される。このため、図6に示すように、第4テーパ部128、第5テーパ部130及び第6テーパ部132の外周面には中間補強層174が形成されている。
このとき、中間補強層174の外周面は芯金120の第3テーパ部(第1前部テーパ部)126の外周面及び第7テーパ部(第2前部テーパ部)134の外周面と略面一である。
【0043】
そして、図5に示す中間補強シート158は略三角形状部分158a,158bを有する。
中間補強シート158の前側の略三角形状部分158aは芯金120の第4テーパ部(第1中間テーパ部)128に巻回され、芯金120の第3テーパ部(前部テーパ部)126の外周面と、第4テーパ部128及び第5テーパ部(後部テーパ部)130に巻回された中間補強層174の外周面とを面一にするのに用いられる。すなわち、略三角形状部分158aは外径調整層174aを形成している。
【0044】
中間補強シート158の後側の略三角形状部分158bは芯金120の第6テーパ部132に巻回され、芯金120の第7テーパ部(第2前部テーパ部)134の外周面と、第5テーパ部130及び第6テーパ部132に巻回された中間補強層174の外周面とを面一にするのに用いられる。すなわち、略三角形状部分158bは外径調整層174bを形成している。
なお、外径調整層174aは芯金120の変位部127に近づくほど減肉して変位部127で肉厚が略0となり、外径調整層174bは芯金120の変位部133に近づくほど減肉して変位部133で肉厚が略0となる。なお、ここでの減肉は、中間補強シート158自体を減肉させるものではなく、シート158の略三角形状部分158a,158bを芯金120の第4テーパ部128、第6テーパ部132にそれぞれ巻回することにより次第に減肉させた状態と同様の状態にしていくものである。
【0045】
これら外径調整層174a,174bにより、シャフト112の内周側に急激な段差が生じるのを防止できるとともに、急激な強度変化を防止することができる。すなわち、外径調整層174aは、シャフト112のうち、第3テーパ部(第1前部テーパ部)26の外周位置に対応する部位と第5テーパ部(第1後部テーパ部)130の外周位置に対応する部位との間の剛性差を緩やかにすることができる。また、外径調整層174bは、シャフト112のうち、第5テーパ部(第1後部テーパ部)130の外周位置に対応する部位と第7テーパ部(第2前部テーパ部)134の外周位置に対応する部位との間の剛性差を緩やかにすることができる。
【0046】
なお、表3にも示しているが、第4テーパ部(第1中間テーパ部)128及び第8テーパ部(第2中間テーパ部)136の長さ、すなわち、中間補強層174の外径調整層174aの軸方向長さ、後部補強層176の外径調整層176aの軸方向長さは、シャフト112の全長Lに対してそれぞれ4%から6%程度、又は、中間補強層174や後部補強層176に対して6%から10%程度の軸方向幅であることが好ましい。これよりも割合が大きい(長い)と、中間補強シート158、後部補強シート160の三角形状のシート(略三角形状部分158a,160a)により異方性が生じ易くなる。一方、割合が小さい(短い)と、第3テーパ部(第1前部テーパ部)126と第5テーパ部(第1後部テーパ部)130とに連続する第4テーパ部128で段差が形成されたのと略同様の状態となり、また、第7テーパ部(第2前部テーパ部)134と第9テーパ部(第2後部テーパ部)138とに連続する第8テーパ部136で段差が形成されたのと略同様の状態となり、シャフト112のうち、軸方向に隣接する位置の剛性差が急激に変化し過ぎることとなる。
【0047】
第1本体シート162は、第1から第3の前部補強シート152,154,156と、中間補強シート158と、後部補強シート160との外周に巻回される。このため、図5に示すように、第1本体シート162が直接芯金120に巻回されるのは、第3テーパ部(第1前部テーパ部)126及び第7テーパ部(第2前部テーパ部)134の2箇所だけである。
このとき、第3テーパ部126及び第7テーパ部134の外周での強化繊維の蛇行量を少なくすることができる。したがって、シャフト112は所望の安定した強度を得ることができる。
そして、第2本体シート164を第1本体シート162の外周に巻回し、第1本体シート162及び第2本体シート164で第1本体層178を形成する。
また、第1本体層178の外周に、第3本体シート166で第2本体層180を形成する。このため、第2本体層180の外周面は芯金20の中心軸Cに対して一定のテーパ角度(上述したように、例えば約6/1000から10/1000程度の傾き)を有する。
【0048】
第4前部補強シート168は、第1から第3前部補強シート152,154,156、第1から第3本体シート162,164,166の先端に第4前部補強シート168の先端を合わせた状態で第3本体シート166の外周に巻回される。このため、第4前部補強シート168で第2前部補強層182を形成している。
【0049】
そして、通常の成形と同様に、第2本体層180及び第2前部補強層182の外側からテーピングにより締め付け成型、芯金120及びシャフト112の加熱硬化、芯金120の除去、テーピングのテープの除去、研磨等により、ゴルフクラブ用シャフト112を得ることができる。
このシャフト112の先端(第1前部補強層172及び第2前部補強層182)がヘッド14のホーゼル14a内に差し込まれて固定された状態でゴルフクラブ10をスイングしても、シャフト112を良好な状態に維持することができる。
【0050】
シャフト112から除去した芯金120の第4から第6テーパ部128,130,132外周に対応する位置には中間補強シート158により中間補強層174が形成され、第8及び第9テーパ部136,138の外周に対応する位置には後部補強シート160により後部補強層176が形成されている。このとき、中間補強層174及び後部補強層176は肉厚が一定のプリプレグシート158,160を用いることで、中間補強層174及び後部補強層176の外周面と、第3テーパ部126、第7テーパ部134の外周面とを段差なく略面一とすることができるので、中間補強層174内、後部補強層176内での強度差が生じるのを防止することができる。
【0051】
中間補強層174は軸長方向及び周方向に強化繊維の繊維方向を有するので、曲げ剛性及び潰れ剛性を強化している。また、後部補強層176は編成シートで形成されているので、シャフト112の曲げ剛性、捩れ剛性、潰れ剛性等を強化している。
一方、シャフト112の中間補強層174と後部補強層176との間の部位、中間補強層174よりも前側(先端側)の部位は第1及び第2本体層178,180だけが存在し、補強層が存在しない。したがって、中間補強層174と後部補強層176との間の部位、及び、中間補強層174よりも前側(先端側)の部位は、第1及び第2本体層178,180に加えて中間補強層174や後部補強層176が配設されたシャフト112の部位に比べて撓り易い。
【0052】
なお、第1実施形態のシャフト12の後部補強層74はシャフト12の全長Lに対して後端から50%から70%の範囲が好適である、と説明したが、この実施形態のシャフト112では、中間補強層174及び後部補強層176を合わせた長さがシャフト112の全長Lに対して50%から70%の範囲にあることが好ましい。そして、中間補強層174の軸長方向長さはシャフト112の全長Lに対して25%から35%程度であることが好適であり、後部補強層176の軸長方向長さはシャフト112の全長Lに対して25%から35%程度であることが好適である。なお、中間補強層174の軸長方向長さは後部補強層176の軸長方向長さよりも長くても良く、その逆でも良い。
また、シャフト112の第3テーパ部(第1前部テーパ部)126、第7テーパ部(第2前部テーパ部)134はそれぞれシャフト112の全長Lに対して12%から25%の範囲にあることが好ましい。
【0053】
なお、例えば中間補強層174及び後部補強層176を合わせた長さがシャフト112の全長Lに対して50%である場合、第1テーパ部122と第3テーパ部(第1前部テーパ部)126と第7テーパ部(第2前部テーパ部)134とを合わせた長さをシャフト112の全長に対して32%から42%とすることが好ましい。
【0054】
そして、芯金120の第3テーパ部126をできるだけ長くした場合、第7テーパ部134が短くなるので、シャフト112のグリップ16側の剛性を維持しつつシャフト112のヘッド14側をグリップ16側に比べて撓り易くすることができる。すなわち、打球を上げ易くなる。
また、第7テーパ部134をできるだけ長くした場合、第3テーパ部126が短くなるので、前者よりもグリップ16側の剛性は低下するが、ヘッド14側に加えてグリップ16側も撓り易くなるので、打球を上げ易くなる。この場合でも、後部補強層176を中間補強層174よりも剛性を高くするなどの調整を行えば、グリップ16側でのコントロール性を維持しつつ、ヘッド14側でシャフト112を撓らせて打球を上げ易くすることができる。
なお、この実施形態では1つの中間補強層174を形成する場合について説明したが、中間補強層174は2つ以上あっても良い。
【0055】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0056】
C…中心軸、L…シャフト全長、10…ゴルフクラブ、12…シャフト、12a…先端、12b…後端、14…ヘッド、14a…ホーゼル、16…グリップ、20…芯金、20a…先端、20b…後端、22…第1テーパ部、24…第2テーパ部、26…第3テーパ部(前部テーパ部)、28…第4テーパ部(中間テーパ部)、30…第5テーパ部(後部テーパ部)、32…ストレート部、23,25,27,29,31…変位部、42…第1前部補強シート、44…第2前部補強シート、46…第3前部補強シート、48…後部補強シート、48a…略三角形状部分、50,52,54…本体シート、56…第4前部補強シート、72…第1前部補強層、72a…外径調整層、74…後部補強層、74a…外径調整層、76…第1本体層、78…第2本体層、80…第2前部補強層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の中心軸を有する軸方向前方側の前部テーパ部と前記前部テーパ部よりも軸方向後方側の後部テーパ部との間に、これらのテーパ部に対して勾配が緩い中間テーパ部を連続して配置した先細状の芯金に対して、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成するゴルフクラブ用シャフトであって、
前記芯金の前記中間テーパ部から前記後部テーパ部に補強プリプレグを巻回して補強層を形成するとともに前記中間テーパ部に位置する前記補強層の前部に外径調整部位を形成して、前記補強層の外周面のテーパを前記前部テーパ部のテーパと略同一とし、
前記前部テーパ部及び前記補強層の外側に本体層を巻回して形成されることを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
【請求項2】
前記前部テーパ部のテーパ角度と、前記後部テーパ部のテーパ角度とを略同一としたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項3】
前記中間テーパ部は、シャフト全長Lの後端から50%から70%に位置し、前記補強層の6%から10%の幅を有することを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項4】
前記本体層のうち、最内層の本体層の強化繊維の繊維方向が、前記シャフトの軸長方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載のゴルフクラブ用シャフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10799(P2012−10799A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148215(P2010−148215)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】