説明

ゴルフクラブ

【課題】複数種類のシャフトフレックスを揃えた同一モデルのゴルフクラブにおいて、各シャフトフレックスのゴルフクラブヘッドの特性や性能のばらつきを低減して品質を維持する。
【解決手段】ゴルフクラブ1は、ヘッド部2とシャフト部3とグリップ部4とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたものである。ゴルフクラブ1はウッド型のゴルフクラブであり、各ゴルフクラブ1のスイングバランスが、シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ増加し、かつ各ゴルフクラブ1のシャフト部3の質量が、シャフトフレックスが硬くなるに従って6g以上8.5g以下の量ずつ増加するように、スイングバランスとシャフト部の質量とをシャフトフレックスに応じて調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、特に、同一モデルで3種類以上の異なるシャフトフレックス展開をしたゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヘッドスピードが速い人またはスイングテンポが速い人は、硬いシャフトフレックスが適合する傾向があり、ヘッドスピードが遅い人またはスイングテンポが遅い人は、軟らかいシャフトフレックスが適合する傾向が一般的に見られる。
【0003】
ここで、「スイングテンポ」とは、各々のゴルファのスイングのテンポを意味する。このスイングテンポは、典型的には、スイングにおけるシャフトの最大撓み量、すなわち、シャフト手元部に対する先端部の最大変位量に基づいて評価されるが、スイング時間、トップオブスイングの所定時間前のクラブヘッド速度およびトップオブスイング近傍におけるクラブヘッド加速度のいずれかに基づいて評価してもよい。また「シャフトフレックス」とは、ゴルフクラブのシャフトの硬さ(曲げ剛性)のことであり、シャフトの先端部に一定質量(荷重)を付与したときのシャフトの撓み量によって何種類かのシャフトフレックスに区別される。
【0004】
上記のようにヘッドスピードやスイングテンポの違いにより適合するシャフトフレックスが異なることから、同一モデルにおいても、ゴルファのスイングタイプ別に2つまたは3つ以上の種類のシャフトフレックスを揃えたゴルフクラブが多くのモデルで発売されている。
【0005】
また、ヘッドスピードが速い人またはスイングテンポが速い人は、比較的体格・筋力に優れ、重いバランス(ヘッド側に質量配分を多くする)や質量の大きいゴルフクラブが適合することも一般的である。
【0006】
そのため、3種類以上のシャフトフレックスを有するタイプのゴルフクラブにおいて、隣り合うレベルのシャフトフレックスのゴルフクラブにおけるバランスを、シャフトフレックスが硬くなるに従い、1ポイント(1段階)ずつ漸次増加させるモデルも多くなってきた。たとえばシャフトフレックスの種類が「硬さ1」〜「硬さ3」の3種類である場合(硬さ1〜3の順に硬くなる)、隣り合うレベルのシャフトフレックスである「硬さ1」と「硬さ2」について、「硬さ2」のシャフトを「硬さ1」のシャフトよりもバランスを1ポイント増加させることとなる。
【0007】
従来より、隣り合うレベルのシャフトフレックスのゴルフクラブにおけるシャフト質量を、シャフトフレックスが硬くなるに従い、2gまたは3gずつ等少量を増加させたモデルは存在する。これは、たとえばカーボンシャフトにおいては、少しの部材の方向を変更したり、少しの部材において弾性率の違う材料に置き換えたりするだけで、または、少しの部材を追加するだけで非常に簡単に効率よく、硬さの異なるシャフトを生産することが可能となるためである。
【0008】
また、ゴルフクラブのスイングバランスを調整するために、ゴルフクラブヘッドの質量調整も行なっている。このとき、各シャフトフレックスのゴルフクラブの中で、シャフトにゴルフクラブヘッドを組み付ける前の最も軽いゴルフクラブヘッドの質量を基準とし、それよりも重くする必要のあるゴルフクラブヘッドに粘着材や錘等の質量を付加することでスイングバランスを調整している。
【0009】
ここで、「スイングバランス」とは、ゴルフクラブをスイングした時に感じられるヘッド重さを意味し、本願明細書において「スイングバランス」とは、14インチのロリスミック計(またはプロリスミック計)によるバランス(以下「14インチスイングバランス」ともいう)をいう。
【0010】
なお、ゴルフクラブヘッドの質量を調整する手法としては様々な手法が考えられるが、該質量調整法は、たとえば特開2002−11123号公報、特開2001−204858号公報、特開2001−112893号公報、特開2000−5350号公報等に記載されている。
【特許文献1】特開2002−11123号公報
【特許文献2】特開2001−204858号公報
【特許文献3】特開2001−112893号公報
【特許文献4】特開2000−5350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のようにゴルフクラブのスイングバランスを調整すべくゴルフクラブヘッドに粘着材や錘等の質量を付加すると、スイングバランスについては調整できるものの、該ゴルフクラブの飛距離に大きく影響を及ぼすゴルフクラブヘッドの反発特性やスイートエリアの大きさに影響を与えることとなる。また、上記にような粘着材や錘等の付加質量は、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントや重心位置にも影響を与える。つまり、シャフトフレックスの異なる同一モデルのゴルフクラブ間で、ゴルフクラブヘッドの特性や性能が変化することとなる。
【0012】
特に、従来のようにシャフト質量の変化量を3g程度に小さく抑えた場合には、必然的にゴルフクラブヘッドへ付加する質量が多くなり、ゴルフクラブヘッドの特性や性能が大きく変化することとなる。
【0013】
したがって、複数種類のシャフトフレックス展開をしているタイプのゴルフクラブにおいて、各シャフトフレックスのゴルフクラブの特性や性能のばらつきを低減して高品質に維持するという観点からは、ゴルフクラブヘッドへの付加質量が多いことは望ましくないといえる。
【0014】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数種類のシャフトフレックスを揃えた同一モデルのゴルフクラブにおいて、各シャフトフレックスのゴルフクラブヘッドの特性や性能のばらつきを低減して品質を維持することが可能なゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るゴルフクラブは、1つの局面では、ヘッド部とシャフト部とグリップ部とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたウッド型のゴルフクラブであって、各ゴルフクラブのスイングバランスが、シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ増加し、かつ各ゴルフクラブのシャフト部の質量が、シャフトフレックスが硬くなるに従って6g以上8.5g以下の量ずつ増加するように、スイングバランスとシャフト部の質量とをシャフトフレックスに応じて調整したものである。
【0016】
好ましくは、上記シャフト部に組み付ける前の状態の各ゴルフクラブのヘッド部間の質量差の最大値が0.5g以下となるように、ヘッド部の質量を設定する。
【0017】
本発明に係るゴルフクラブは、他の局面では、ヘッド部とシャフト部とグリップ部とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたウッド型のゴルフクラブであって、シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブのスイングバランスが増加し、シャフトフレックスが硬くなるに従って3g以上7.2g未満の量ずつシャフト部の質量が増加し、かつシャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部の重心率が増加するように、スイングバランスとシャフト部の質量とシャフト部の重心率とをシャフトフレックスに応じて調整したものである。ここで、「シャフト重心率」とは、シャフト部全長に対する、シャフト部のグリップエンド側から重心位置までの距離の割合を、%表示したものである。
【0018】
本発明に係るゴルフクラブは、さらに他の局面では、ヘッド部とシャフト部とグリップ部とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたウッド型のゴルフクラブであって、シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブのスイングバランスが増加し、シャフトフレックスが硬くなるに従って7.2gより多く12g以下の量ずつシャフト部の質量が増加し、かつシャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部の重心率が減少するように、スイングバランスとシャフト部の質量とシャフト部の重心率とをシャフトフレックスに応じて調整したものである。
【0019】
本発明に係るゴルフクラブは、さらに他の局面では、ヘッド部とシャフト部とグリップ部とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたゴルフクラブであって、シャフト部に組み付ける前の状態の各ゴルフクラブのヘッド部間の質量差の最大値が0.5g以下となるように、シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブのスイングバランスを増加させるとともに、シャフトフレックスが硬くなるに従って各ゴルフクラブのシャフト部の質量を増加させるようにしたものである。なお、上記シャフトフレックスに応じてシャフト部の重心率を調整するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シャフトフレックスに応じたシャフト部の質量やシャフト部の重心率の変化量を工夫することで、シャフトフレックスの異なる同一モデルの各ゴルフクラブの組付け前のヘッド部間の質量差を格段に低減することができる。それにより、シャフト部への組付け前のヘッド部に付加すべき質量を低減あるいは省略することができ、各シャフトフレックスのゴルフクラブのヘッド部間の特性や性能のばらつきを低減することができる。その結果、シャフトフレックスの異なる同一モデルのゴルフクラブ間で品質を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図2を用いて説明する。図1は、本実施の形態のゴルフクラブ1の正面図である。
【0022】
図1に示すように、ゴルフクラブ1は、ヘッド部2と、シャフト部3と、グリップ部4とを備える。なお、図1の例では、ゴルフクラブ1としてウッド型ゴルフクラブを例示しているが、本発明はアイアン型ゴルフクラブにも適用可能である。
【0023】
ヘッド部2は、たとえば金属製外殻構造を有し、チタンやチタン合金をはじめとする様々な金属材料で作製可能である。また、複数のパーツを組合せてヘッド部2を作製してもよく、金属部材と非金属部材のような異種材料の部材を組合せてヘッド部2を作製することも可能である。該ヘッド部2には、粘着材や錘部材等の様々な部材を装着可能である。
【0024】
シャフト部3の材質としては様々なものが考えられるが、たとえばカーボン繊維強化樹脂でシャフト部3を作製することができる。カーボン繊維強化樹脂でシャフト部3を作製する場合、たとえば棒状のマンドレル上にプリプレグ(カーボン繊維強化樹脂シート)を所望の形状に切断して複数層巻付け、たとえばポリプロピレン等からなる延伸テープでテーピングをして加熱硬化させる。その後、上下端を切断し、研磨等の所定の仕上げ処理を行なってシャフト部3を作製することができる。
【0025】
なお、シャフト部3の作製に際しては、シャフト部3の軸方向に対するカーボン繊維配向角が様々なプリプレグ(たとえば+45°、−45°等)や、繊維配向角を有しないストレート層用のプリプレグをはじめとする様々なプリプレグを使用可能である。
【0026】
グリップ部4は、テーパ筒状の形状を有し、ゴム等の弾性材料によって作製することができる。このグリップ部4内にシャフト部3の基端部が圧入され、固定される。
【0027】
本実施の形態のゴルフクラブ1は、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたものである。
【0028】
たとえばシャフトフレックス(硬さ:曲げ剛性)が3種類である場合、各ゴルフクラブ1は、「硬さ1」、「硬さ2」、「硬さ3」の3段階の硬さのシャフト部3を備えることとなる。本実施の形態では、「硬さ1」、「硬さ2」、「硬さ3」の順にシャフト部3は硬くなるものとする。なお、4種類以上のシャフトフレックス展開を行なうことも可能である。
【0029】
本実施の形態のゴルフクラブ1では、上記「硬さ1」〜「硬さ3」の各ゴルフクラブ1のシャフト部3に組付ける前の状態のヘッド部2の質量がほぼ同一となる(ヘッド部2の質量差の最大値が0.5g以下)ように、各ゴルフクラブ1のスイングバランスやシャフト部3の質量等を調整する。たとえば、シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブ1のスイングバランスを増加させるとともに、シャフトフレックスが硬くなるに従って各ゴルフクラブ1のシャフト部3の質量を増加させる。
【0030】
スイングバランスの指標としては、たとえばA0〜A9、B0〜B9、C0〜C9、D0〜D9、E0〜E9までの50段階の指標が存在するが、本実施の形態のゴルフクラブ1では、「硬さ1」〜「硬さ3」のシャフトフレックスの変化に応じて、1段階ずつスイングバランスを増加させる。
【0031】
たとえば、シャフトフレックスが「硬さ1」のゴルフクラブ1のスイングバランスを「C9」とした場合、シャフトフレックスが「硬さ2」のゴルフクラブ1のスイングバランスを「D0」とし、シャフトフレックスが「硬さ3」のゴルフクラブ1のスイングバランスを「D1」とする。市場には、シャフトフレックス(硬さ・曲げ剛性)が異なっても、同じスイングバランスとするゴルフクラブが多く存在するが、本実施の形態のように、「硬さ1」のスイングバランスを軽めにして、「硬さ3」のスイングバランスを重めにすることにより、「硬さ1」を非力なゴルファーに、「硬さ3」を力のあるゴルファーに提供することにより、幅広い対象のゴルファーに合致したゴルフクラブを提供することが可能となる。
【0032】
各ゴルフクラブ1のシャフト部3の質量は、ウッド型ゴルフクラブの場合、各シャフトフレックス間で6〜8.5gずつ変化させる。たとえば、シャフトフレックスが「硬さ1」のゴルフクラブ1のシャフト部3の質量を48gとした場合、シャフトフレックスが「硬さ2」のゴルフクラブ1のシャフト部3の質量を55gとし、シャフトフレックスが「硬さ3」のゴルフクラブ1のシャフト部3の質量を62gとする。
【0033】
なお、上記各ゴルフクラブ1のグリップ部4の質量は41gであり、シャフト部3の重心率は48%であり、クラブ長さは45インチ(1143mm)である。
【0034】
上記のようにスイングバランスを各シャフトフレックス間で1段階ずつ増加させる一方で、各シャフトフレックス間でシャフト部3の質量を6〜8.5gずつ変化させることにより、シャフト部3に組付ける前の各ゴルフクラブ1のヘッド部2間の質量差の最大値を0.5g以下に抑えることができる。それにより、ヘッド部2に付加すべき質量を低減しながらゴルフクラブ1のバランスをも調整することができ、各シャフトフレックスのゴルフクラブ1のヘッド部2間の特性や性能のばらつきを低減することができる。その結果、シャフトフレックスの異なる同一モデルのゴルフクラブ1のヘッド部2間で品質を維持することができる。
【0035】
なお、上記ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量が1g変化することで、反発係数(COR)は最大0.003程度変化し、慣性モーメントは最大40g・cm程度変化し、ヘッド部2の重心位置は最大0.3mm程度変化する可能性がある。これらの各値の変化量は、ヘッド部2の質量変化が大きいほど大きくなる。因みにプロゴルファの中には、ゴルフクラブの質量が1g変化しても見極める人がいるが、0.5g程度の変化では、プロゴルファといえども違いを見極めるのは困難であると考えられる。
【0036】
下記の表1に、本実施の形態の各モデルのゴルフクラブ1のシャフトフレックス(Flex)、14インチスイングバランス(Balance)、シャフト部3の質量(SW(g))、シャフト部3の重心率(SCG(%))、ヘッド部2の質量(HW(g))、ヘッド部2の質量差(HWD(g))の各値を示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示すように、シャフトフレックスが「硬さ1」〜「硬さ3」と硬くなるに従って各ゴルフクラブ1のスイングバランスを「C9」〜「D1」に1段階ずつ増加させるとともに、シャフトフレックスが硬くなるに従って各ゴルフクラブ1のシャフト部3の質量を7g〜8gずつ増加させたモデル3〜5については、各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差の最大値を0.5g以下とすることができることがわかる。
【0039】
ここで、本願発明者等は、異なるシャフトフレックスのゴルフクラブ1間のシャフト部3の質量差と、異なるシャフトフレックスのゴルフクラブ1間のヘッド部2の質量差との関係についても検討したので、その結果について図2を用いて説明する。
【0040】
図2には、異なるシャフトフレックスのゴルフクラブ1間のシャフト部3の質量差(フレックス間の質量差)と、異なるシャフトフレックスのゴルフクラブ1間のヘッド部2の質量差(フレックス間のヘッド質量差)との関係を示す。なお、図2では、表1に示すモデル1〜6以外のモデルのデータも記載している。
【0041】
図2に示すように、各ゴルフクラブ1のシャフト部3の質量差が6g以上8.5g以下の場合に、各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差の最大値を0.5g以下とすることができることがわかる。また、各ゴルフクラブのシャフト部3の質量差を7.2gとすることにより、ヘッド部2の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができる。
【0042】
次に、本願発明者等は、14インチスイングバランス(Balance)と、シャフト部3の質量(SW(g))と、シャフト部3の重心率(SCG(%))とを変化させたモデルについても検討したので、その結果について表2を用いて説明する。下記の表2には、14インチスイングバランスと、シャフト部3の質量と、シャフト部3の重心率とを変化させたモデル7〜12の各値を示す。なお、シャフト部3の重心率を変化させるには、たとえば、硬さを調整するためにも、一層多く繊維層を配置するが、よりシャフト重心から離れた位置に配置することで重心率を大きく変化させることができる。
【0043】
【表2】

【0044】
表2のモデル7〜9に示すように、シャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部3の質量を3g〜6gの範囲で増加させた場合でも、シャフト部3の重心率をシャフトフレックスが硬くなるに従って増加させることで、各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができる。なお、シャフト部3の質量を7.2gずつ変化させた場合には、上述のようにシャフト部3の重心率を変化させなくても各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができることから、シャフト部3の質量の変化量を3g以上7.2g未満とした場合に、シャフト部3の重心率をシャフトフレックスが硬くなるに従って適切に増加させることで、各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができるものと考えられる。
【0045】
また、表2のモデル10〜12に示すように、シャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部3の質量を9g〜12gの範囲で増加させた場合でも、シャフト部3の重心率をシャフトフレックスが硬くなるに従って減少させることで、各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができる。よって、シャフト部3の質量の変化量を7.2gより大きく12g以下とした場合も、シャフト部3の重心率をシャフトフレックスが硬くなるに従って適切に減少させることで、各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができるものと考えられる。
【0046】
つまり、ウッド型のゴルフクラブ1について、シャフト部3の質量変化が6〜8.5gの範囲外である場合でも、シャフト部3の重心率を適切に調整することで、各ゴルフクラブ1のヘッド部2の質量差を低減することができる。
【0047】
次に、本願発明者等は、アイアン型のゴルフクラブについても同様の検討を行なったので、その結果について表3を用いて説明する。
【0048】
表3は、5番アイアンについてのモデル13,14と、サンドウェッジについてのモデル15,16についてのシャフトフレックス(Flex)、14インチスイングバランス(Balance)、シャフト部の質量(SW(g))、シャフト部の重心率(SCG(%))、ヘッド部の質量(HW(g))、ヘッド部の質量差(HWD(g))の各値を示す。
【0049】
【表3】

【0050】
表3のモデル13に示すように、アイアン型のゴルフクラブの場合に、シャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部の質量を11.75gずつ増加させることで、各ゴルフクラブのヘッド部の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができる。
【0051】
また、表3のモデル14に示すように、シャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部の質量を10gずつ増加させ、かつシャフト部の重心率をシャフトフレックスが硬くなるに従って増加させることで、各ゴルフクラブのヘッド部の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができる。
【0052】
また、表3のモデル15に示すように、シャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部の質量を約26gずつ増加させることで、各ゴルフクラブのヘッド部の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができる。
【0053】
また、表3のモデル16に示すように、シャフトフレックスが硬くなるに従ってシャフト部の質量を7gずつ増加させ、かつシャフト部の重心率をシャフトフレックスが硬くなるに従って増加させることで、各ゴルフクラブのヘッド部の質量差をほぼ0(ゼロ)gとすることができる。
【0054】
上記のように、アイアン型のゴルフクラブの場合も、ウッド型のゴルフクラブの場合と同様に、シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブのスイングバランスを増加させるとともに、シャフトフレックスが硬くなるに従って各ゴルフクラブのシャフト部の質量を所定量だけ増加させることで、シャフト部に組み付ける前の各ゴルフクラブのヘッド部間の質量差の最大値を0.5g以下とすることができる。また、シャフト部の質量のみならずシャフト部の重心率をも変化させることで、シャフト部の質量変化範囲を拡張することができ、設計の自由度を向上することができる。
【0055】
以上のように、本実施の形態のゴルフクラブ1は、同一モデルで異なるシャフトフレックスを有していても、シャフト部3との組付け前のヘッド部2の質量(粘着材、シャフト先端内部錘を含む)をほぼ同一に設定することができる。それにより、異なるシャフトフレックス展開をしている同一モデルのゴルフクラブ1間で、ヘッド部2の反発特性や慣性モーメントや重心位置の望ましくない変動を効果的に抑制することができる。その結果、同一モデルでシャフトフレックスの異なる全てのゴルフクラブの品質精度のばらつきを抑制することができ、シャフトフレックスの異なる同一モデルのゴルフクラブ1間での品質を高品質に維持することができる。
【0056】
なお、上述の実施の形態では、ゴルフクラブ1のヘッド部2をシャフト部3に接着剤等により固着する例について説明したが、ヘッド部2をシャフト部3から取外し可能としてもよい。たとえば、ヘッド部2のホーゼル部とシャフト部3の先端部にそれぞれネジ部を形成し、該ネジ部同士を螺着することで、ヘッド部2をシャフト部3に取外し可能に固着することができる。
【0057】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の1つの実施の形態におけるゴルフクラブの正面図である。
【図2】異なるシャフトフレックスのゴルフクラブ間のシャフト部の質量差とヘッド部の質量差との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ゴルフクラブ、2 ヘッド部、3 シャフト部、4 グリップ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部(2)とシャフト部(3)とグリップ部(4)とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたウッド型のゴルフクラブであって、
各ゴルフクラブのスイングバランスが、前記シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ増加し、かつ前記各ゴルフクラブのシャフト部(3)の質量が、前記シャフトフレックスが硬くなるに従って6g以上8.5g以下の量ずつ増加するように、前記スイングバランスと前記シャフト部(3)の質量とを前記シャフトフレックスに応じて調整した、ゴルフクラブ。
【請求項2】
前記シャフト部(3)に組み付ける前の状態の前記各ゴルフクラブのヘッド部(2)間の質量差の最大値が0.5g以下となるように、前記ヘッド部(2)の質量が設定された、請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
ヘッド部(2)とシャフト部(3)とグリップ部(4)とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたウッド型のゴルフクラブであって、
前記シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブのスイングバランスが増加し、前記シャフトフレックスが硬くなるに従って3g以上7.2g未満の量ずつ前記シャフト部(3)の質量が増加し、かつ前記シャフトフレックスが硬くなるに従って前記シャフト部(3)の重心率が増加するように、前記スイングバランスと前記シャフト部(3)の質量と前記シャフト部(3)の重心率とを前記シャフトフレックスに応じて調整した、ゴルフクラブ。
【請求項4】
ヘッド部(2)とシャフト部(3)とグリップ部(4)とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたウッド型のゴルフクラブであって、
前記シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブのスイングバランスが増加し、前記シャフトフレックスが硬くなるに従って7.2gより多く12g以下の量ずつ前記シャフト部(3)の質量が増加し、かつ前記シャフトフレックスが硬くなるに従って前記シャフト部(3)の重心率が減少するように、前記スイングバランスと前記シャフト部(3)の質量と前記シャフト部(3)の重心率とを前記シャフトフレックスに応じて調整した、ゴルフクラブ。
【請求項5】
ヘッド部(2)とシャフト部(3)とグリップ部(4)とを備え、硬さの異なる3種類以上のシャフトフレックス展開をしたゴルフクラブであって、
前記シャフト部(3)に組み付ける前の状態の前記各ゴルフクラブの前記ヘッド部(2)間の質量差の最大値が0.5g以下となるように、前記シャフトフレックスが硬くなるに従って1段階ずつ各ゴルフクラブのスイングバランスを増加させるとともに、前記シャフトフレックスが硬くなるに従って前記各ゴルフクラブの前記シャフト部(3)の質量を増加させるようにした、ゴルフクラブ。
【請求項6】
前記シャフトフレックスに応じて前記シャフト部(3)の重心率をも調整した、請求項5に記載のゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−240627(P2009−240627A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92432(P2008−92432)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】