ゴルフクラブ
【課題】シャフト外面に対して着脱可能な弾性部材を有し、この弾性部材の固定性や耐久性を向上させうるゴルフクラブの提供。
【解決手段】ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を備えたゴルフクラブ2である。シャフト6の外面に弾性部材10が取り付けられている。この弾性部材10は、環状であって且つ無端状である。弾性部材10は、弾性的な収縮力を維持した状態でシャフト6に外嵌している。好ましくは、弾性部材10を外側から締め付ける締め付け部材が設けられる。この締め付け部材は、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。好ましくは、締め付け部材は、上記締め付け状態においてシャフト6に接触していない。
【解決手段】ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を備えたゴルフクラブ2である。シャフト6の外面に弾性部材10が取り付けられている。この弾性部材10は、環状であって且つ無端状である。弾性部材10は、弾性的な収縮力を維持した状態でシャフト6に外嵌している。好ましくは、弾性部材10を外側から締め付ける締め付け部材が設けられる。この締め付け部材は、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。好ましくは、締め付け部材は、上記締め付け状態においてシャフト6に接触していない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブのシャフト又はホーゼルの外面に錘りを装着する技術が提案されている。特開2005−169026公報は、2片に分かれた錘りを2本の取り付けボルトによってシャフトに取り付けたゴルフクラブを開示する。特開2000−5361公報は、着脱用切込みを有する弾性体の錘りを開示する。特開2000−5361公報の図4等には、圧縮テープにより着脱用切込みの外周を連結した締結手段が記載されている。特開2000−5361公報の図8等には、引っ掛け金具等を用いた締結手段が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−169026公報
【特許文献2】特開2000−5361公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2005−169026に開示された技術では、錘りに軟質部材が用いられた場合、取り付けボルトの締め付け力により、軟質部材からなる錘りが変形しやすい。この錘りの変形により、2片の錘り同士の接合面の形状や、シャフトとの接触面の形状が変形してしまい、シャフトに対する固定の不足や、錘りの損傷が生じやすくなる。一方、特開2005−169026に開示された技術において、錘りに硬質部材が用いられた場合、締め付けボルトの締め付け力により、錘りと接触する部分のシャフト外面が損傷しやすくなる。この損傷を抑制する目的でボルトの締め付け力が弱くされた場合、シャフトに対する固定が不足する。また、錘りに硬質部材が用いられた場合、シャフト外面と錘りとの接触面積が小さくなりやすく、シャフトに対する固定が不足しやすい。
【0005】
特開2000−5361に開示された技術において、錘りに軟質部材が用いられた場合、上記締結手段によって錘りの外側を締め付けることにより錘り自体が伸長及び変形してしまうため、シャフトに対する錘りの締め付けが不十分となりやすい。一方、特開2000−5361に開示された技術において、錘りに硬質部材が用いられた場合、着脱時の変形に伴う応力が局所に集中しやすい。この応力集中により、繰り返しの着脱に対する耐久性が不足しやすい。
【0006】
本発明の目的は、シャフト外面に対して着脱可能な弾性部材を有し、この弾性部材の固定性や耐久性を向上させうるゴルフクラブの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴルフクラブは、ヘッド、シャフト及びグリップを備えている。上記シャフトの外面に弾性部材が取り付けられている。上記弾性部材は、環状であって且つ無端状である。上記弾性部材は、弾性的な収縮力を維持した状態で上記シャフトに外嵌している。
【0008】
好ましくは、上記ゴルフクラブは、上記弾性部材を外側から締め付ける締め付け部材を更に備える。この締め付け部材は、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。上記締め付け部材は、上記締め付け状態において上記シャフトに接触していない。
【0009】
好ましくは、上記締め付け部材は、上記締め付け状態において環状である。好ましくは、この締め付け部材の周長は調節可能とされている。
【0010】
好ましくは、上記弾性部材の内面に凹凸が設けられている。
【0011】
本発明に係る他のゴルフクラブは、ヘッド、シャフト、グリップ、弾性部材及び締め付け部材を備えている。上記シャフトの外面に上記弾性部材が取り付けられている。上記締め付け部材は、上記弾性部材を外側から締め付けている。この締め付け部材は、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。上記締め付け部材は、上記締め付け状態において上記シャフトに接触していない。上記弾性部材の複素弾性率は、1.4×107 (dyn/cm2 )以上2.0×1010(dyn/cm2 )以下である。
【発明の効果】
【0012】
シャフト外面に対して着脱可能な弾性部材の固定性や耐久性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、以下において、「軸方向」というときは、特に説明した場合を除き、シャフトの軸方向を意味する。以下において、「半径方向」というときは、特に説明した場合を除き、シャフトの半径方向を意味する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ2の全体図である。ゴルフクラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを有する。グリップ8は、シャフト6の一端部に取り付けられている。ヘッド4は、シャフト6の他端部に取り付けられている。
【0015】
シャフト6には、弾性部材10が取り付けられている。弾性部材10は、シャフト6の外面に取り付けられている。図1の実施形態では、3個の弾性部材10が取り付けられている。弾性部材10の個数は限定されない。
【0016】
図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。シャフト6は、管状である。シャフト6は、中空である。シャフト6の内部は、空間である。シャフト6として、いわゆるスチールシャフトやカーボンシャフトが例示される。
【0017】
シャフト6の外面12は、テーパー面である。シャフト6の外径は、ヘッドに近づくほど小さい。シャフト6の外径は、グリップ8に近づくほど大きい。
【0018】
シャフト6の外面12に弾性部材10が取り付けられている。弾性部材10は、環状である。弾性部材10は、無端状である。弾性部材10は、周方向の全周に亘って一体である。弾性部材10は、筒状である。弾性部材10の内周面14が、シャフト6の外面12と接触している。弾性部材10の内周面14は、シャフト6の外面12と面接触している。
【0019】
図3が示すように、弾性部材10の内周面14には、溝15が設けられている。図3の実施形態では、溝15は3本設けられている。溝15は、弾性部材10の周方向に延びている。弾性部材10の内面においては、溝15と、溝15以外の部分とによって凹凸が形成されている。スイング中、弾性部材10には遠心力が作用する。遠心力は、シャフト6の長手方向に略沿った方向に働く。溝15は、この遠心力に対して略直交する方向に延びている。よって、周方向に延びる溝15は、遠心力による弾性部材10の外れを効果的に抑制しうる。
【0020】
溝15の代わりにリブが設けられてもよい。この場合、リブとリブ以外の部分とによって凹凸が形成される。突起及び/又は凹みが形成されることによっても、凹凸が形成されうる。弾性部材10の内面に形成された凹凸により、弾性部材10がシャフト6に対して固定されやすくなる。
【0021】
弾性部材10の固定を確実とする観点から、弾性部材10の内面における凹凸高さh1は、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更に好ましい。凹凸高さが高すぎると、凸部分が倒れることにより、かえって弾性部材10の固定が不確実となる可能性がある。この観点から、凹凸高さh1は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下が更に好ましい。上記実施形態においては、凹凸高さh1は、溝15の深さに相当する。
【0022】
弾性部材10は、伸縮しうる。弾性部材10は、弾性的な収縮力を維持した状態で上記シャフトに外嵌している。弾性部材10に外力が作用していない状態における弾性部材10の内径は、シャフト6の最大外径よりも小さい。弾性部材10に外力が作用していない状態における弾性部材10の内径は、弾性部材10の装着位置におけるシャフト6の外径よりも小さい。好ましくは、弾性部材10に外力が作用していない状態における弾性部材10の内径は、シャフト6の最小内径よりも小さい。これにより、弾性部材10のシャフト長手方向の位置に関わらず、弾性的な収縮力を維持した状態で弾性部材10がシャフト6に取り付けられうる。
【0023】
図1において両矢印g1で示されるのは、グリップ8の最大外径である。この最大外径g1は、シャフト6の最大外径よりも大きい。弾性部材10は、その内径が上記最大外径g1よりも大きくなるように弾性変形されうる。
【0024】
弾性部材10は、ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を備えたゴルフクラブに対して着脱自在である。換言すれば、弾性部材10は、組み立てられたゴルフクラブに対して着脱自在である。
【0025】
弾性部材10は、ゴルフクラブ2の重心位置やスイングバランス等を調整するためのウエイトとして機能しうる。また弾性部材10は、シャフト6の剛性を調整するための部材として機能しうる。更に弾性部材10は、打球の衝撃により発生する振動を吸収する振動吸収材として機能しうる。なお、ウエイトとしての機能を高めるためには、弾性部材10の材質に、比重の大きな金属粉末が配合されるのが好ましい。この金属粉末の比重は、10以上が好ましく、更には15以上が好ましい。この金属粉末として、タングステン合金粉末が例示される。
【0026】
弾性部材10は、環状であって且つ無端状であるから、特定部位への応力集中や特定部位の集中的な変形が発生しにくい。よって弾性部材10は耐久性に優れる。弾性部材10は弾性を有するので、シャフト6との接触によりシャフト6を傷つけにくい。弾性部材10は弾性的に伸縮しうるので、その内径が大きくなるように引き延ばすことができる。よって弾性部材10は、ゴルフクラブのグリップを挿通させてシャフト6に装着することができる。
【0027】
以下、弾性部材10の取り付け方法の一例について説明がなされる。弾性部材10は、ゴルフクラブ2のグリップ側から装着される。弾性部材10を拡径するように引き延ばしながら、弾性部材10にゴルフクラブのグリップ8を挿通させる。次に、弾性部材10は、引き延ばされた状態のまま、シャフト6上の所望の位置にまで移動される。最後に、弾性部材10の引き延ばしが解除される。この解除により、弾性部材10が弾性的に収縮すると同時に、弾性部材10は、弾性的な収縮力が維持された状態でシャフト6上の所望の位置に配置される。
【0028】
以下、弾性部材10の取り外し方法の一例について説明がなされる。弾性部材10の取り外し方法は、弾性部材10の取り付け方法とは逆の手順によりなされうる。先ず、弾性部材10は、拡径するように引き延ばされる。次に、弾性部材10が引き延ばされた状態のまま、ゴルフクラブが引き抜かれる。弾性部材10は、グリップ8側から取り外される。
【0029】
好ましくは、上記ゴルフクラブは、弾性部材10を外側から締め付ける締め付け部材16を備える。図4は、弾性部材10の外側に締め付け部材16が装着されたゴルフクラブ18の全体図であり、図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。ゴルフクラブ18では、弾性部材10の数が1個とされている。図6は、締め付け部材16の斜視図であり、図7は、締め付け部材16の側面図である。
【0030】
図5が示すように、締め付け部材16は、弾性部材10の外周面の全周に亘って設けられている。締め付け部材16は、弾性部材10に外嵌している。締め付け部材16は、外側から弾性部材10を締め付けている。締め付け部材16は、締め付け状態において環状である。
【0031】
締め付け部材16は、その周長を調節しうる周長調節機構を有する。本実施形態の締め付け部材16では、周長調節機構として、ウォーム機構が用いられている。周長調節機構として、いわゆるホースバンドに用いられているあらゆる機構が採用されうる。
【0032】
締め付け部材16は、バンド20と、ハウジング22と、ネジ24とを有する。バンド20は、円に略沿って丸められている。バンド20の両端部は、重ね合わされている。ハウジング22は、ネジ24を軸回転可能な状態で支持している。
【0033】
図6が示すように、互いに重ね合わされたバンド20の両端部のうち、半径方向外側に配置された部分には、凹部26が設けられている。凹部26は、一定間隔おきに複数設けられている。凹部26は、バンド20の長手方向に対して傾斜した方向に延びている。一方、互いに重ね合わされたバンド20の両端部のうち、半径方向内側に配置された部分は、ハウジング22の内側部28に固定されている。
【0034】
図示されないが、ネジ24には螺旋状のネジ山が設けられている。このネジ山が、凹部26と噛み合っている。凹部26の延在方向及び設置間隔は、ネジ24のネジ山の延在方向及びピッチに対応している。凹部26の設置範囲は、周長の調整可能範囲に対応している。
【0035】
ネジ24が軸回転されると、ネジ24と噛み合っているバンド20の端部が送り出される。ネジ24の回転方向及び回転量により、バンド20の周長が調整されうる。図7の二点鎖線は、周長が短くされた状態のバンド20を示している。このように、バンド20の凹部26とネジ24との噛み合いにより、ウォーム機構が構成されている。
【0036】
バンド20の周長が短くされるほど、弾性部材10はより強く締め付けられる。強く締め付けすぎると、振動吸収性能が低下しやすい。緩く締め付けると、弾性部材10が固定されにくい。弾性部材10の固定度合いや振動吸収性能を考慮して、弾性部材10の締め付け度合いが決定されうる。
【0037】
締め付け部材16は、ヘッド4、シャフト6、グリップ8及び弾性部材10を備えたゴルフクラブに対して着脱自在である。換言すれば、締め付け部材16は、組み立てられ且つ弾性部材10が取り付けられたゴルフクラブに対して着脱自在である。
【0038】
以下、締め付け部材16の取り付け方法の一例について説明がなされる。締め付け部材16は、ゴルフクラブのグリップ側から装着される。先ず、締め付け部材16の内径がグリップ8の最大外径g1よりも大きくされる。次に、グリップ8の後端部が締め付け部材16に挿通される。次に、締め付け部材16が弾性部材10の外側に移動される。必要に応じて、締め付け部材16の内径が弾性部材10の外径よりも大きくなるように調整がなされる。最後に、ネジ24を回転させることにより、締め付け部材16の周長が短くされ、弾性部材10が締め付け部材16によって締め付けられる。締め付け部材16の取り外しは、締め付け部材16の取り付けとは逆の手順によりなされうる。締め付け部材16の周長は、(g1×π)よりも長くなるように調整されうる。(g1×π)は、グリップg1の最大外径部分の円周長さである。よって上記の通り、締め付け部材16はゴルフクラブに対して着脱自在である。
【0039】
このように、締め付け部材16は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0040】
シャフト6に外嵌した状態における弾性部材10の外径がD1であるとき、バンド20の長手方向長さは、(D1×π)よりも長い。好ましくは、シャフト6の外径が最大となる位置に弾性部材10が配置された場合において、この弾性部材10の外径がDmであるとき、バンド20の長手方向長さは、(Dm×π)よりも長い。
【0041】
締め付け部材16の周長は、上記(Dm×π)よりも長くなるように調整されうる。更に、締め付け部材16の周長は、(Ds×π)よりも短くなるように調整されうる。ここでDsは、シャフト6の外径が最小となる位置に弾性部材10が配置された場合における弾性部材10の外径である。このように締め付け部材16の周長は、シャフト6の長手方向における全ての位置において弾性部材10を締め付けうるように調節されうる。なお周長は、バンド20の内面において測定される。
【0042】
シャフト6と締め付け部材16との間には、弾性部材10が介在している。締め付け部材16は、上記締め付け状態においてシャフト6に接触していない。よって、締め付け部材16の接触によるシャフト6の傷つきが防止されている。
【0043】
締め付け部材16の材質は限定されない。締め付け部材16の材質として、金属、樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)等が例示される。金属として、鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等が例示される。ゴルフクラブの重量増加を抑制する観点から、低比重の金属が好ましく、具体的には、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等が好ましい。
【0044】
弾性部材10の材質は限定されない。弾性部材10の基材ポリマーの材質として、加硫ゴム、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が例示される。上記熱硬化性樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントとからなる熱硬化性エラストマーを含む。上記熱可塑性樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントとからなる熱可塑性エラストマーを含む。好ましくは、弾性部材10の基材は、粘弾性材とされる。この弾性部材10は、打球時の振動を効果的に吸収しうる。
【0045】
弾性部材10の基材ポリマーの具体例として、天然ゴム、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、SBRにカーボンブラックが添加されたもの、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン−ナイロン共重合体等が例示される。ポリエチレン−ナイロン共重合体として、ATOCHEM社製の商品名「PEBAX」が例示される。SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、SBRにカーボンブラックが添加されたもの、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂及びポリエチレン−ナイロン共重合体は、成形及び硬度調整が容易であり好ましい。またEPDMは、オイルの含有量により硬度を調整しやすいので好ましい。
【0046】
弾性部材10の複素弾性率は、1.4×107 (dyn/cm2 )以上が好ましい。複素弾性率が1.4×107 (dyn/cm2 )以上とされることにより、打球時におけるシャフト6の振動と弾性部材10の振動とが調和しやすくなり、振動吸収性能が向上しうる。この観点から、弾性部材10の複素弾性率は、1.0×108 (dyn/cm2 )以上がより好ましく、3.9×108 (dyn/cm2 )以上が更に好ましい。
【0047】
弾性部材10の複素弾性率は、2.0×1010(dyn/cm2 )以下が好ましい。複素弾性率が2.0×1010(dyn/cm2 )以下とされることにより、打球時におけるシャフト6の振動と弾性部材10の振動とが調和しやすくなり、振動吸収性能が向上しうる。この観点から、弾性部材10の複素弾性率は、1.4×1010(dyn/cm2 )以下がより好ましく、2.7×109(dyn/cm2 )以下が更に好ましい。
【0048】
複素弾性率は、例えば加硫ゴムの配合を変えることにより調整されうる。上記した材質において、例えばATOCHEM社製のPEBAX5533では、その複素弾性率が2.72×109dyn/cm2であり、11−NYLONでは、その複素弾性率が1.45×1010dyn/cm2であり、シリコンゴムでは、その複素弾性率が1.41×107dyn/cm2である。
【0049】
なお、上記複素弾性率は、5℃の条件下で周波数10Hzで測定される。この複素弾性率は、粘弾性測定装置を用いて測定される。この粘弾性測定装置として、島津製作所社製の粘弾性スペクトロメータDVA200が用いられうる。試験片の寸法は、幅4.0mm、厚み1.6mm、変位部分の長さ寸法20.0mmとされる。周波数が10Hzとされ、昇温速度が2℃/minとされ、初期ひずみが2mmとされ、変位振幅幅が±12.5mmとされ、引張り方向の変位を加えることで振動させて測定がなされ、5℃における値が上記複素弾性率として採用される。
【0050】
振動吸収性能を高める観点から、弾性部材10の比重は、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.4以下がより好ましい。弾性部材10の比重を高めるためには、比重の高い金属等の粉末を配合することが有効である。この配合により、弾性部材10の強度は低下しやすい。弾性部材10の強度を高める観点から、弾性部材10の比重は、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。金属の粉末の配合割合を変化させることにより、比重の調整が可能となる。この金属として、タングステン、酸化チタン、タングステン−ニッケル合金、酸化銅、等が挙げられる。
【0051】
振動吸収性能を高める観点から、弾性部材10の厚さtは、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。伸縮性を高くして着脱を容易とする観点から、弾性部材10の厚さtは、4.0mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下が更に好ましい。なお、弾性部材10の厚さtは、弾性部材10に外力が作用していない状態で測定される。換言すれば、弾性部材10の厚さtは、弾性部材10が単独で静置された状態において測定される。
【0052】
シャフト6の最細部の断面において、シャフト外面に囲まれる部分の面積が面積S1とされる。典型的には、シャフト6の最細部は、ヘッド4に隣接した部分である。シャフト6の最小外径がr1であるとき、面積S1は、半径が(r1/2)である円の面積に等しい。一方、弾性部材10の中空部の断面積が、断面積S2とされる。断面積S2は、弾性部材10の内周面14に囲まれる部分の断面積である。面積比(S2/S1)は、0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.90以上が更に好ましい。面積比(S2/S1)が0.80以上とされることにより、弾性部材10が過度に引き延ばされることが抑制され、振動吸収性能が向上しうる。また、面積比(S2/S1)が0.80以上とされることにより、移設及び着脱が容易である。面積比(S2/S1)は、1.1以下が好ましく、1.05以下がより好ましく、1.00以下が更に好ましい。面積比(S2/S1)が1.1以下とされることにより、弾性部材10とシャフト6との接触面積が増加し、振動吸収効果が向上しうる。また、面積比(S2/S1)が1.1以下とされることにより、弾性部材10が固定されやすい。なお、断面積S2は、弾性部材10に外力が作用していない状態で測定される。換言すれば、断面積S2は、弾性部材10が単独で静置された状態において測定される。
【0053】
典型的なウッド型のゴルフクラブにおいては、シャフト6の最細部の外径は8.5mmである。この場合、上記面積S1は56.7mm2となる。シャフト6に固定されやすくする観点から、弾性部材10の上記断面積S2は、56mm2以下が好ましく、50mm2以下がより好ましく、45mm2以下が更に好ましい。
【0054】
上記実施形態では、弾性部材10と締め付け部材16とは互いに別部材である。弾性部材10が締め付け部材16に固定されていてもよい。
【0055】
図8は、締め付け部材の変形例が示された断面図である。図8の実施形態に係る締め付け部材30は、分割体32、分割体34及び2つの連結ネジ36を有する。分割体32は、その断面が略半円形である。分割体32は、半円筒状である。分割体32の両端部には、連結ネジ36と螺合しうるネジ穴38が設けられている。分割体34は、半円筒状である。分割体34の両端部には、連結ネジ36と螺合しうるネジ穴38が設けられている。連結ネジ36は、分割体32と分割体34とを連結する。
【0056】
締め付け部材30は、周方向の少なくとも1箇所が途切れた有端状態となりえる。即ち締め付け部材30は、連結ネジ36を外すことにより有端状態となりえる。締め付け部材30は、周方向の2箇所が途切れた有端状態となりえる。有端状態となった締め付け部材30は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができる。連結ネジ36を締結することにより、締め付け部材30は、周方向に繋がった状態となる。換言すれば、連結ネジ36を締結することにより、締め付け部材30は、環状であって且つ無端状となる。この締結により、締め付け部材30は弾性部材10に外嵌される。連結ネジ36の締め付け度合いは調整されうる。この締め付け部材30は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができるため、着脱が容易である。このように締め付け部材30は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0057】
図9は、締め付け部材の他の変形例が示された断面図である。図9の実施形態に係る締め付け部材40は、第一部材42、第二部材44及び連結ネジ46を有する。第一部材42は、その断面が略半円形である。第一部材42は、半円筒状である。第二部材44は、その断面が略半円形である。第二部材44は、半円筒状である。第一部材42の一端部と第二部材44の一端部とは、回動連結部45によって回動可能に連結されている。第一部材42と第二部材44とで、蝶番が形成されている。第一部材42の他端部及び第二部材44の他端部には、ネジ穴48が設けられている。第一部材42の他端部と第二部材44の他端部とが、連結ネジ46により連結されている。
【0058】
締め付け部材40は、周方向の1箇所が途切れた有端状態となりえる。即ち締め付け部材40は、連結ネジ46を外すことにより有端状態となりえる。蝶番機構により、締め付け部材40は、第一部材42と第二部材44とが互いに離れるように開く。開いた状態の締め付け部材40は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができる。連結ネジ46を締結することにより、締め付け部材40は、周方向に繋がった状態となる。換言すれば、連結ネジ46を締結することにより、締め付け部材40は、環状であって且つ無端状となる。この締結により、締め付け部材40は弾性部材10に外嵌される。連結ネジ46の締め付け度合いは調整されうる。この締め付け部材40は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができるため、着脱が容易である。このように締め付け部材40は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0059】
図10は、締め付け部材の他の変形例が示された断面図である。図10の実施形態に係る締め付け部材50は、周方向の一箇所が途切れた弾性体よりなる。締め付け部材50は、例えば金属や樹脂等よりなる。締め付け部材50は、拡径するように弾性変形しうる。締め付け部材50は、グリップ8の最大外径g1よりもその内径が大きくなるように弾性変形しうる。締め付け部材50は、縮径しようとする弾性力によって弾性部材10を半径方向外側から締め付けている。
【0060】
外力が作用していない状態における締め付け部材50の内径がDnとされたとき、内径Dnは、シャフト6に外嵌した状態における弾性部材10の外径D1よりも小さい。この大小関係により、弾性部材10が締め付け部材50の弾性力によって締め付けられうる。好ましくは、この内径Dnは、上記外径Dsよりも小さい。これにより、締め付け部材50は、シャフト6の長手方向における全ての位置において弾性部材10を締め付けうる。このように締め付け部材50は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0061】
弾性部材は、無端状でなくてもよい。図11は、図5の実施形態の変形例である。図11の実施形態は、有端状の弾性部材52を備えている。弾性部材52が有端状とされた他は、図11の実施形態は、図5の実施形態と同じである。
【0062】
弾性部材52は、周方向の1箇所が途切れている。弾性部材52の断面形状は、略C字型である。弾性部材52は、端面54と端面56とを有する。端面54と端面56との間に、空間k1が存在する。弾性部材52の内面58は、シャフト6の外面12に当接している。この弾性部材52は、前述した締め付け部材16により、外側から締め付けられている。この弾性部材52は、有端状であるので、その内面14が拡張するように変形させることができる。弾性部材52は、シャフト6の半径方向外側からシャフト6に取り付けることができる。締め付け部材16により、弾性部材52はシャフト6に対して確実に固定されている。締め付け状態において、締め付け部材16はシャフト6に当接していない。弾性部材52が途切れている部分において、締め付け部材16とシャフト6との間には、空間k1が存在している。締め付け状態においても、空間k1が維持される。弾性部材52が途切れている部分において、締め付け部材16とシャフト6との間の空間k1が維持されるように、弾性部材52が構成されている。締め付け状態において空間k1が維持されるためには、端面54と端面56との間隔、弾性部材52の厚さ、弾性部材52の複素弾性率等が考慮される。有端状の弾性部材52は、上記好ましい範囲の複素弾性率に設定されることにより、締め付け状態において空間k1が維持されやすくなり、更に、高い振動吸収性能が発揮されうる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0064】
[実施例1]
ヘッド、シャフト及びグリップを組み立ててゴルフクラブを得た。グリップの最大外径g1は27mmであった。一方、環状で且つ無端状の弾性部材を成形した。弾性部材の材質はシリコンゴムであり、その複素弾性率は1.41×107dyn/cm2であった。弾性部材の厚さtは3mmであり、内径は9mmであり、幅は15mmであった。この弾性部材を引き延ばしてグリップを挿通させ、シャフト表面の所定位置に弾性部材を配置した。次に、前述した締め付け部材16と同一の締め付け部材により、弾性部材を半径方向外側から締め付けた。締め付け部材におけるバンドの幅は12mmとされた。このようにして、図4で示されるようなゴルフクラブを得た。バンドの幅が弾性部材の幅よりの狭いため、締め付け部材とシャフトとの接触は確実に防止された。このゴルフクラブで打球してみたところ、弾性部材は固定されたままであった。また、締め付け部材及び弾性部材はゴルフクラブに対して着脱可能であった。
【0065】
[実施例2]
弾性部材の厚さtが2mmとされ、弾性部材の基材ポリマーがSBRとされ、その複素弾性率が5.07×107dyn/cm2とされた他は実施例1と同様にして、実施例2に係るゴルフクラブを得た。弾性部材は、100質量部のSBRと、1.5質量部の硫黄とを混練した後加熱及び加圧して成形された。このゴルフクラブで打球してみたところ、弾性部材は固定されたままであった。また、締め付け部材及び弾性部材はゴルフクラブに対して着脱可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ウッド型ゴルフクラブ、アイアン型ゴルフクラブ、パター等、あらゆるゴルフクラブに適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブの全体図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、他の実施形態に係るゴルフクラブの全体図である。
【図5】図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6は、締め付け部材の斜視図である。
【図7】図7は、図6の締め付け部材の側面図である。
【図8】図8は、変形例の締め付け部材が装着されたゴルフクラブの断面図である。
【図9】図9は、他の変形例の締め付け部材が装着されたゴルフクラブの断面図である。
【図10】図10は、他の変形例の締め付け部材が装着されたゴルフクラブの断面図である。
【図11】図11は、図5の実施形態の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・シャフト
8・・・グリップ
10、52・・・弾性部材
16、30、40、50・・・締め付け部材
20・・・バンド
22・・・ハウジング
24・・・ネジ
26・・・凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブのシャフト又はホーゼルの外面に錘りを装着する技術が提案されている。特開2005−169026公報は、2片に分かれた錘りを2本の取り付けボルトによってシャフトに取り付けたゴルフクラブを開示する。特開2000−5361公報は、着脱用切込みを有する弾性体の錘りを開示する。特開2000−5361公報の図4等には、圧縮テープにより着脱用切込みの外周を連結した締結手段が記載されている。特開2000−5361公報の図8等には、引っ掛け金具等を用いた締結手段が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−169026公報
【特許文献2】特開2000−5361公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2005−169026に開示された技術では、錘りに軟質部材が用いられた場合、取り付けボルトの締め付け力により、軟質部材からなる錘りが変形しやすい。この錘りの変形により、2片の錘り同士の接合面の形状や、シャフトとの接触面の形状が変形してしまい、シャフトに対する固定の不足や、錘りの損傷が生じやすくなる。一方、特開2005−169026に開示された技術において、錘りに硬質部材が用いられた場合、締め付けボルトの締め付け力により、錘りと接触する部分のシャフト外面が損傷しやすくなる。この損傷を抑制する目的でボルトの締め付け力が弱くされた場合、シャフトに対する固定が不足する。また、錘りに硬質部材が用いられた場合、シャフト外面と錘りとの接触面積が小さくなりやすく、シャフトに対する固定が不足しやすい。
【0005】
特開2000−5361に開示された技術において、錘りに軟質部材が用いられた場合、上記締結手段によって錘りの外側を締め付けることにより錘り自体が伸長及び変形してしまうため、シャフトに対する錘りの締め付けが不十分となりやすい。一方、特開2000−5361に開示された技術において、錘りに硬質部材が用いられた場合、着脱時の変形に伴う応力が局所に集中しやすい。この応力集中により、繰り返しの着脱に対する耐久性が不足しやすい。
【0006】
本発明の目的は、シャフト外面に対して着脱可能な弾性部材を有し、この弾性部材の固定性や耐久性を向上させうるゴルフクラブの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴルフクラブは、ヘッド、シャフト及びグリップを備えている。上記シャフトの外面に弾性部材が取り付けられている。上記弾性部材は、環状であって且つ無端状である。上記弾性部材は、弾性的な収縮力を維持した状態で上記シャフトに外嵌している。
【0008】
好ましくは、上記ゴルフクラブは、上記弾性部材を外側から締め付ける締め付け部材を更に備える。この締め付け部材は、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。上記締め付け部材は、上記締め付け状態において上記シャフトに接触していない。
【0009】
好ましくは、上記締め付け部材は、上記締め付け状態において環状である。好ましくは、この締め付け部材の周長は調節可能とされている。
【0010】
好ましくは、上記弾性部材の内面に凹凸が設けられている。
【0011】
本発明に係る他のゴルフクラブは、ヘッド、シャフト、グリップ、弾性部材及び締め付け部材を備えている。上記シャフトの外面に上記弾性部材が取り付けられている。上記締め付け部材は、上記弾性部材を外側から締め付けている。この締め付け部材は、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。上記締め付け部材は、上記締め付け状態において上記シャフトに接触していない。上記弾性部材の複素弾性率は、1.4×107 (dyn/cm2 )以上2.0×1010(dyn/cm2 )以下である。
【発明の効果】
【0012】
シャフト外面に対して着脱可能な弾性部材の固定性や耐久性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、以下において、「軸方向」というときは、特に説明した場合を除き、シャフトの軸方向を意味する。以下において、「半径方向」というときは、特に説明した場合を除き、シャフトの半径方向を意味する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ2の全体図である。ゴルフクラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを有する。グリップ8は、シャフト6の一端部に取り付けられている。ヘッド4は、シャフト6の他端部に取り付けられている。
【0015】
シャフト6には、弾性部材10が取り付けられている。弾性部材10は、シャフト6の外面に取り付けられている。図1の実施形態では、3個の弾性部材10が取り付けられている。弾性部材10の個数は限定されない。
【0016】
図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。シャフト6は、管状である。シャフト6は、中空である。シャフト6の内部は、空間である。シャフト6として、いわゆるスチールシャフトやカーボンシャフトが例示される。
【0017】
シャフト6の外面12は、テーパー面である。シャフト6の外径は、ヘッドに近づくほど小さい。シャフト6の外径は、グリップ8に近づくほど大きい。
【0018】
シャフト6の外面12に弾性部材10が取り付けられている。弾性部材10は、環状である。弾性部材10は、無端状である。弾性部材10は、周方向の全周に亘って一体である。弾性部材10は、筒状である。弾性部材10の内周面14が、シャフト6の外面12と接触している。弾性部材10の内周面14は、シャフト6の外面12と面接触している。
【0019】
図3が示すように、弾性部材10の内周面14には、溝15が設けられている。図3の実施形態では、溝15は3本設けられている。溝15は、弾性部材10の周方向に延びている。弾性部材10の内面においては、溝15と、溝15以外の部分とによって凹凸が形成されている。スイング中、弾性部材10には遠心力が作用する。遠心力は、シャフト6の長手方向に略沿った方向に働く。溝15は、この遠心力に対して略直交する方向に延びている。よって、周方向に延びる溝15は、遠心力による弾性部材10の外れを効果的に抑制しうる。
【0020】
溝15の代わりにリブが設けられてもよい。この場合、リブとリブ以外の部分とによって凹凸が形成される。突起及び/又は凹みが形成されることによっても、凹凸が形成されうる。弾性部材10の内面に形成された凹凸により、弾性部材10がシャフト6に対して固定されやすくなる。
【0021】
弾性部材10の固定を確実とする観点から、弾性部材10の内面における凹凸高さh1は、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更に好ましい。凹凸高さが高すぎると、凸部分が倒れることにより、かえって弾性部材10の固定が不確実となる可能性がある。この観点から、凹凸高さh1は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下が更に好ましい。上記実施形態においては、凹凸高さh1は、溝15の深さに相当する。
【0022】
弾性部材10は、伸縮しうる。弾性部材10は、弾性的な収縮力を維持した状態で上記シャフトに外嵌している。弾性部材10に外力が作用していない状態における弾性部材10の内径は、シャフト6の最大外径よりも小さい。弾性部材10に外力が作用していない状態における弾性部材10の内径は、弾性部材10の装着位置におけるシャフト6の外径よりも小さい。好ましくは、弾性部材10に外力が作用していない状態における弾性部材10の内径は、シャフト6の最小内径よりも小さい。これにより、弾性部材10のシャフト長手方向の位置に関わらず、弾性的な収縮力を維持した状態で弾性部材10がシャフト6に取り付けられうる。
【0023】
図1において両矢印g1で示されるのは、グリップ8の最大外径である。この最大外径g1は、シャフト6の最大外径よりも大きい。弾性部材10は、その内径が上記最大外径g1よりも大きくなるように弾性変形されうる。
【0024】
弾性部材10は、ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を備えたゴルフクラブに対して着脱自在である。換言すれば、弾性部材10は、組み立てられたゴルフクラブに対して着脱自在である。
【0025】
弾性部材10は、ゴルフクラブ2の重心位置やスイングバランス等を調整するためのウエイトとして機能しうる。また弾性部材10は、シャフト6の剛性を調整するための部材として機能しうる。更に弾性部材10は、打球の衝撃により発生する振動を吸収する振動吸収材として機能しうる。なお、ウエイトとしての機能を高めるためには、弾性部材10の材質に、比重の大きな金属粉末が配合されるのが好ましい。この金属粉末の比重は、10以上が好ましく、更には15以上が好ましい。この金属粉末として、タングステン合金粉末が例示される。
【0026】
弾性部材10は、環状であって且つ無端状であるから、特定部位への応力集中や特定部位の集中的な変形が発生しにくい。よって弾性部材10は耐久性に優れる。弾性部材10は弾性を有するので、シャフト6との接触によりシャフト6を傷つけにくい。弾性部材10は弾性的に伸縮しうるので、その内径が大きくなるように引き延ばすことができる。よって弾性部材10は、ゴルフクラブのグリップを挿通させてシャフト6に装着することができる。
【0027】
以下、弾性部材10の取り付け方法の一例について説明がなされる。弾性部材10は、ゴルフクラブ2のグリップ側から装着される。弾性部材10を拡径するように引き延ばしながら、弾性部材10にゴルフクラブのグリップ8を挿通させる。次に、弾性部材10は、引き延ばされた状態のまま、シャフト6上の所望の位置にまで移動される。最後に、弾性部材10の引き延ばしが解除される。この解除により、弾性部材10が弾性的に収縮すると同時に、弾性部材10は、弾性的な収縮力が維持された状態でシャフト6上の所望の位置に配置される。
【0028】
以下、弾性部材10の取り外し方法の一例について説明がなされる。弾性部材10の取り外し方法は、弾性部材10の取り付け方法とは逆の手順によりなされうる。先ず、弾性部材10は、拡径するように引き延ばされる。次に、弾性部材10が引き延ばされた状態のまま、ゴルフクラブが引き抜かれる。弾性部材10は、グリップ8側から取り外される。
【0029】
好ましくは、上記ゴルフクラブは、弾性部材10を外側から締め付ける締め付け部材16を備える。図4は、弾性部材10の外側に締め付け部材16が装着されたゴルフクラブ18の全体図であり、図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。ゴルフクラブ18では、弾性部材10の数が1個とされている。図6は、締め付け部材16の斜視図であり、図7は、締め付け部材16の側面図である。
【0030】
図5が示すように、締め付け部材16は、弾性部材10の外周面の全周に亘って設けられている。締め付け部材16は、弾性部材10に外嵌している。締め付け部材16は、外側から弾性部材10を締め付けている。締め付け部材16は、締め付け状態において環状である。
【0031】
締め付け部材16は、その周長を調節しうる周長調節機構を有する。本実施形態の締め付け部材16では、周長調節機構として、ウォーム機構が用いられている。周長調節機構として、いわゆるホースバンドに用いられているあらゆる機構が採用されうる。
【0032】
締め付け部材16は、バンド20と、ハウジング22と、ネジ24とを有する。バンド20は、円に略沿って丸められている。バンド20の両端部は、重ね合わされている。ハウジング22は、ネジ24を軸回転可能な状態で支持している。
【0033】
図6が示すように、互いに重ね合わされたバンド20の両端部のうち、半径方向外側に配置された部分には、凹部26が設けられている。凹部26は、一定間隔おきに複数設けられている。凹部26は、バンド20の長手方向に対して傾斜した方向に延びている。一方、互いに重ね合わされたバンド20の両端部のうち、半径方向内側に配置された部分は、ハウジング22の内側部28に固定されている。
【0034】
図示されないが、ネジ24には螺旋状のネジ山が設けられている。このネジ山が、凹部26と噛み合っている。凹部26の延在方向及び設置間隔は、ネジ24のネジ山の延在方向及びピッチに対応している。凹部26の設置範囲は、周長の調整可能範囲に対応している。
【0035】
ネジ24が軸回転されると、ネジ24と噛み合っているバンド20の端部が送り出される。ネジ24の回転方向及び回転量により、バンド20の周長が調整されうる。図7の二点鎖線は、周長が短くされた状態のバンド20を示している。このように、バンド20の凹部26とネジ24との噛み合いにより、ウォーム機構が構成されている。
【0036】
バンド20の周長が短くされるほど、弾性部材10はより強く締め付けられる。強く締め付けすぎると、振動吸収性能が低下しやすい。緩く締め付けると、弾性部材10が固定されにくい。弾性部材10の固定度合いや振動吸収性能を考慮して、弾性部材10の締め付け度合いが決定されうる。
【0037】
締め付け部材16は、ヘッド4、シャフト6、グリップ8及び弾性部材10を備えたゴルフクラブに対して着脱自在である。換言すれば、締め付け部材16は、組み立てられ且つ弾性部材10が取り付けられたゴルフクラブに対して着脱自在である。
【0038】
以下、締め付け部材16の取り付け方法の一例について説明がなされる。締め付け部材16は、ゴルフクラブのグリップ側から装着される。先ず、締め付け部材16の内径がグリップ8の最大外径g1よりも大きくされる。次に、グリップ8の後端部が締め付け部材16に挿通される。次に、締め付け部材16が弾性部材10の外側に移動される。必要に応じて、締め付け部材16の内径が弾性部材10の外径よりも大きくなるように調整がなされる。最後に、ネジ24を回転させることにより、締め付け部材16の周長が短くされ、弾性部材10が締め付け部材16によって締め付けられる。締め付け部材16の取り外しは、締め付け部材16の取り付けとは逆の手順によりなされうる。締め付け部材16の周長は、(g1×π)よりも長くなるように調整されうる。(g1×π)は、グリップg1の最大外径部分の円周長さである。よって上記の通り、締め付け部材16はゴルフクラブに対して着脱自在である。
【0039】
このように、締め付け部材16は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0040】
シャフト6に外嵌した状態における弾性部材10の外径がD1であるとき、バンド20の長手方向長さは、(D1×π)よりも長い。好ましくは、シャフト6の外径が最大となる位置に弾性部材10が配置された場合において、この弾性部材10の外径がDmであるとき、バンド20の長手方向長さは、(Dm×π)よりも長い。
【0041】
締め付け部材16の周長は、上記(Dm×π)よりも長くなるように調整されうる。更に、締め付け部材16の周長は、(Ds×π)よりも短くなるように調整されうる。ここでDsは、シャフト6の外径が最小となる位置に弾性部材10が配置された場合における弾性部材10の外径である。このように締め付け部材16の周長は、シャフト6の長手方向における全ての位置において弾性部材10を締め付けうるように調節されうる。なお周長は、バンド20の内面において測定される。
【0042】
シャフト6と締め付け部材16との間には、弾性部材10が介在している。締め付け部材16は、上記締め付け状態においてシャフト6に接触していない。よって、締め付け部材16の接触によるシャフト6の傷つきが防止されている。
【0043】
締め付け部材16の材質は限定されない。締め付け部材16の材質として、金属、樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)等が例示される。金属として、鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等が例示される。ゴルフクラブの重量増加を抑制する観点から、低比重の金属が好ましく、具体的には、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等が好ましい。
【0044】
弾性部材10の材質は限定されない。弾性部材10の基材ポリマーの材質として、加硫ゴム、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が例示される。上記熱硬化性樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントとからなる熱硬化性エラストマーを含む。上記熱可塑性樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントとからなる熱可塑性エラストマーを含む。好ましくは、弾性部材10の基材は、粘弾性材とされる。この弾性部材10は、打球時の振動を効果的に吸収しうる。
【0045】
弾性部材10の基材ポリマーの具体例として、天然ゴム、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、SBRにカーボンブラックが添加されたもの、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン−ナイロン共重合体等が例示される。ポリエチレン−ナイロン共重合体として、ATOCHEM社製の商品名「PEBAX」が例示される。SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、SBRにカーボンブラックが添加されたもの、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂及びポリエチレン−ナイロン共重合体は、成形及び硬度調整が容易であり好ましい。またEPDMは、オイルの含有量により硬度を調整しやすいので好ましい。
【0046】
弾性部材10の複素弾性率は、1.4×107 (dyn/cm2 )以上が好ましい。複素弾性率が1.4×107 (dyn/cm2 )以上とされることにより、打球時におけるシャフト6の振動と弾性部材10の振動とが調和しやすくなり、振動吸収性能が向上しうる。この観点から、弾性部材10の複素弾性率は、1.0×108 (dyn/cm2 )以上がより好ましく、3.9×108 (dyn/cm2 )以上が更に好ましい。
【0047】
弾性部材10の複素弾性率は、2.0×1010(dyn/cm2 )以下が好ましい。複素弾性率が2.0×1010(dyn/cm2 )以下とされることにより、打球時におけるシャフト6の振動と弾性部材10の振動とが調和しやすくなり、振動吸収性能が向上しうる。この観点から、弾性部材10の複素弾性率は、1.4×1010(dyn/cm2 )以下がより好ましく、2.7×109(dyn/cm2 )以下が更に好ましい。
【0048】
複素弾性率は、例えば加硫ゴムの配合を変えることにより調整されうる。上記した材質において、例えばATOCHEM社製のPEBAX5533では、その複素弾性率が2.72×109dyn/cm2であり、11−NYLONでは、その複素弾性率が1.45×1010dyn/cm2であり、シリコンゴムでは、その複素弾性率が1.41×107dyn/cm2である。
【0049】
なお、上記複素弾性率は、5℃の条件下で周波数10Hzで測定される。この複素弾性率は、粘弾性測定装置を用いて測定される。この粘弾性測定装置として、島津製作所社製の粘弾性スペクトロメータDVA200が用いられうる。試験片の寸法は、幅4.0mm、厚み1.6mm、変位部分の長さ寸法20.0mmとされる。周波数が10Hzとされ、昇温速度が2℃/minとされ、初期ひずみが2mmとされ、変位振幅幅が±12.5mmとされ、引張り方向の変位を加えることで振動させて測定がなされ、5℃における値が上記複素弾性率として採用される。
【0050】
振動吸収性能を高める観点から、弾性部材10の比重は、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.4以下がより好ましい。弾性部材10の比重を高めるためには、比重の高い金属等の粉末を配合することが有効である。この配合により、弾性部材10の強度は低下しやすい。弾性部材10の強度を高める観点から、弾性部材10の比重は、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。金属の粉末の配合割合を変化させることにより、比重の調整が可能となる。この金属として、タングステン、酸化チタン、タングステン−ニッケル合金、酸化銅、等が挙げられる。
【0051】
振動吸収性能を高める観点から、弾性部材10の厚さtは、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。伸縮性を高くして着脱を容易とする観点から、弾性部材10の厚さtは、4.0mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下が更に好ましい。なお、弾性部材10の厚さtは、弾性部材10に外力が作用していない状態で測定される。換言すれば、弾性部材10の厚さtは、弾性部材10が単独で静置された状態において測定される。
【0052】
シャフト6の最細部の断面において、シャフト外面に囲まれる部分の面積が面積S1とされる。典型的には、シャフト6の最細部は、ヘッド4に隣接した部分である。シャフト6の最小外径がr1であるとき、面積S1は、半径が(r1/2)である円の面積に等しい。一方、弾性部材10の中空部の断面積が、断面積S2とされる。断面積S2は、弾性部材10の内周面14に囲まれる部分の断面積である。面積比(S2/S1)は、0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.90以上が更に好ましい。面積比(S2/S1)が0.80以上とされることにより、弾性部材10が過度に引き延ばされることが抑制され、振動吸収性能が向上しうる。また、面積比(S2/S1)が0.80以上とされることにより、移設及び着脱が容易である。面積比(S2/S1)は、1.1以下が好ましく、1.05以下がより好ましく、1.00以下が更に好ましい。面積比(S2/S1)が1.1以下とされることにより、弾性部材10とシャフト6との接触面積が増加し、振動吸収効果が向上しうる。また、面積比(S2/S1)が1.1以下とされることにより、弾性部材10が固定されやすい。なお、断面積S2は、弾性部材10に外力が作用していない状態で測定される。換言すれば、断面積S2は、弾性部材10が単独で静置された状態において測定される。
【0053】
典型的なウッド型のゴルフクラブにおいては、シャフト6の最細部の外径は8.5mmである。この場合、上記面積S1は56.7mm2となる。シャフト6に固定されやすくする観点から、弾性部材10の上記断面積S2は、56mm2以下が好ましく、50mm2以下がより好ましく、45mm2以下が更に好ましい。
【0054】
上記実施形態では、弾性部材10と締め付け部材16とは互いに別部材である。弾性部材10が締め付け部材16に固定されていてもよい。
【0055】
図8は、締め付け部材の変形例が示された断面図である。図8の実施形態に係る締め付け部材30は、分割体32、分割体34及び2つの連結ネジ36を有する。分割体32は、その断面が略半円形である。分割体32は、半円筒状である。分割体32の両端部には、連結ネジ36と螺合しうるネジ穴38が設けられている。分割体34は、半円筒状である。分割体34の両端部には、連結ネジ36と螺合しうるネジ穴38が設けられている。連結ネジ36は、分割体32と分割体34とを連結する。
【0056】
締め付け部材30は、周方向の少なくとも1箇所が途切れた有端状態となりえる。即ち締め付け部材30は、連結ネジ36を外すことにより有端状態となりえる。締め付け部材30は、周方向の2箇所が途切れた有端状態となりえる。有端状態となった締め付け部材30は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができる。連結ネジ36を締結することにより、締め付け部材30は、周方向に繋がった状態となる。換言すれば、連結ネジ36を締結することにより、締め付け部材30は、環状であって且つ無端状となる。この締結により、締め付け部材30は弾性部材10に外嵌される。連結ネジ36の締め付け度合いは調整されうる。この締め付け部材30は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができるため、着脱が容易である。このように締め付け部材30は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0057】
図9は、締め付け部材の他の変形例が示された断面図である。図9の実施形態に係る締め付け部材40は、第一部材42、第二部材44及び連結ネジ46を有する。第一部材42は、その断面が略半円形である。第一部材42は、半円筒状である。第二部材44は、その断面が略半円形である。第二部材44は、半円筒状である。第一部材42の一端部と第二部材44の一端部とは、回動連結部45によって回動可能に連結されている。第一部材42と第二部材44とで、蝶番が形成されている。第一部材42の他端部及び第二部材44の他端部には、ネジ穴48が設けられている。第一部材42の他端部と第二部材44の他端部とが、連結ネジ46により連結されている。
【0058】
締め付け部材40は、周方向の1箇所が途切れた有端状態となりえる。即ち締め付け部材40は、連結ネジ46を外すことにより有端状態となりえる。蝶番機構により、締め付け部材40は、第一部材42と第二部材44とが互いに離れるように開く。開いた状態の締め付け部材40は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができる。連結ネジ46を締結することにより、締め付け部材40は、周方向に繋がった状態となる。換言すれば、連結ネジ46を締結することにより、締め付け部材40は、環状であって且つ無端状となる。この締結により、締め付け部材40は弾性部材10に外嵌される。連結ネジ46の締め付け度合いは調整されうる。この締め付け部材40は、弾性部材10の半径方向外側から弾性部材10に被せることができるため、着脱が容易である。このように締め付け部材40は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0059】
図10は、締め付け部材の他の変形例が示された断面図である。図10の実施形態に係る締め付け部材50は、周方向の一箇所が途切れた弾性体よりなる。締め付け部材50は、例えば金属や樹脂等よりなる。締め付け部材50は、拡径するように弾性変形しうる。締め付け部材50は、グリップ8の最大外径g1よりもその内径が大きくなるように弾性変形しうる。締め付け部材50は、縮径しようとする弾性力によって弾性部材10を半径方向外側から締め付けている。
【0060】
外力が作用していない状態における締め付け部材50の内径がDnとされたとき、内径Dnは、シャフト6に外嵌した状態における弾性部材10の外径D1よりも小さい。この大小関係により、弾性部材10が締め付け部材50の弾性力によって締め付けられうる。好ましくは、この内径Dnは、上記外径Dsよりも小さい。これにより、締め付け部材50は、シャフト6の長手方向における全ての位置において弾性部材10を締め付けうる。このように締め付け部材50は、弾性部材10を締め付ける締め付け状態と、弾性部材10から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成されている。
【0061】
弾性部材は、無端状でなくてもよい。図11は、図5の実施形態の変形例である。図11の実施形態は、有端状の弾性部材52を備えている。弾性部材52が有端状とされた他は、図11の実施形態は、図5の実施形態と同じである。
【0062】
弾性部材52は、周方向の1箇所が途切れている。弾性部材52の断面形状は、略C字型である。弾性部材52は、端面54と端面56とを有する。端面54と端面56との間に、空間k1が存在する。弾性部材52の内面58は、シャフト6の外面12に当接している。この弾性部材52は、前述した締め付け部材16により、外側から締め付けられている。この弾性部材52は、有端状であるので、その内面14が拡張するように変形させることができる。弾性部材52は、シャフト6の半径方向外側からシャフト6に取り付けることができる。締め付け部材16により、弾性部材52はシャフト6に対して確実に固定されている。締め付け状態において、締め付け部材16はシャフト6に当接していない。弾性部材52が途切れている部分において、締め付け部材16とシャフト6との間には、空間k1が存在している。締め付け状態においても、空間k1が維持される。弾性部材52が途切れている部分において、締め付け部材16とシャフト6との間の空間k1が維持されるように、弾性部材52が構成されている。締め付け状態において空間k1が維持されるためには、端面54と端面56との間隔、弾性部材52の厚さ、弾性部材52の複素弾性率等が考慮される。有端状の弾性部材52は、上記好ましい範囲の複素弾性率に設定されることにより、締め付け状態において空間k1が維持されやすくなり、更に、高い振動吸収性能が発揮されうる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0064】
[実施例1]
ヘッド、シャフト及びグリップを組み立ててゴルフクラブを得た。グリップの最大外径g1は27mmであった。一方、環状で且つ無端状の弾性部材を成形した。弾性部材の材質はシリコンゴムであり、その複素弾性率は1.41×107dyn/cm2であった。弾性部材の厚さtは3mmであり、内径は9mmであり、幅は15mmであった。この弾性部材を引き延ばしてグリップを挿通させ、シャフト表面の所定位置に弾性部材を配置した。次に、前述した締め付け部材16と同一の締め付け部材により、弾性部材を半径方向外側から締め付けた。締め付け部材におけるバンドの幅は12mmとされた。このようにして、図4で示されるようなゴルフクラブを得た。バンドの幅が弾性部材の幅よりの狭いため、締め付け部材とシャフトとの接触は確実に防止された。このゴルフクラブで打球してみたところ、弾性部材は固定されたままであった。また、締め付け部材及び弾性部材はゴルフクラブに対して着脱可能であった。
【0065】
[実施例2]
弾性部材の厚さtが2mmとされ、弾性部材の基材ポリマーがSBRとされ、その複素弾性率が5.07×107dyn/cm2とされた他は実施例1と同様にして、実施例2に係るゴルフクラブを得た。弾性部材は、100質量部のSBRと、1.5質量部の硫黄とを混練した後加熱及び加圧して成形された。このゴルフクラブで打球してみたところ、弾性部材は固定されたままであった。また、締め付け部材及び弾性部材はゴルフクラブに対して着脱可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ウッド型ゴルフクラブ、アイアン型ゴルフクラブ、パター等、あらゆるゴルフクラブに適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブの全体図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、他の実施形態に係るゴルフクラブの全体図である。
【図5】図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6は、締め付け部材の斜視図である。
【図7】図7は、図6の締め付け部材の側面図である。
【図8】図8は、変形例の締め付け部材が装着されたゴルフクラブの断面図である。
【図9】図9は、他の変形例の締め付け部材が装着されたゴルフクラブの断面図である。
【図10】図10は、他の変形例の締め付け部材が装着されたゴルフクラブの断面図である。
【図11】図11は、図5の実施形態の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・シャフト
8・・・グリップ
10、52・・・弾性部材
16、30、40、50・・・締め付け部材
20・・・バンド
22・・・ハウジング
24・・・ネジ
26・・・凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド、シャフト及びグリップを備え、
上記シャフトの外面に弾性部材が取り付けられており、
上記弾性部材が、環状であって且つ無端状であり、
上記弾性部材は、弾性的な収縮力を維持した状態で上記シャフトに外嵌しているゴルフクラブ。
【請求項2】
上記弾性部材を外側から締め付ける締め付け部材を更に備え、
この締め付け部材が、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成され、
上記締め付け部材が、上記締め付け状態において上記シャフトに接触していない請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
上記締め付け部材が、上記締め付け状態において環状であり、
この締め付け部材の周長が調節可能とされている請求項2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
上記弾性部材の内面に凹凸が設けられている請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
ヘッド、シャフト、グリップ、弾性部材及び締め付け部材を備え、
上記シャフトの外面に上記弾性部材が取り付けられており、
上記締め付け部材が、上記弾性部材を外側から締め付けており、
この締め付け部材が、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成され、
上記締め付け部材が、上記締め付け状態において上記シャフトに接触しておらず、
上記弾性部材の複素弾性率が、1.4×107 (dyn/cm2 )以上2.0×1010(dyn/cm2 )以下であるゴルフクラブ。
【請求項1】
ヘッド、シャフト及びグリップを備え、
上記シャフトの外面に弾性部材が取り付けられており、
上記弾性部材が、環状であって且つ無端状であり、
上記弾性部材は、弾性的な収縮力を維持した状態で上記シャフトに外嵌しているゴルフクラブ。
【請求項2】
上記弾性部材を外側から締め付ける締め付け部材を更に備え、
この締め付け部材が、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成され、
上記締め付け部材が、上記締め付け状態において上記シャフトに接触していない請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
上記締め付け部材が、上記締め付け状態において環状であり、
この締め付け部材の周長が調節可能とされている請求項2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
上記弾性部材の内面に凹凸が設けられている請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
ヘッド、シャフト、グリップ、弾性部材及び締め付け部材を備え、
上記シャフトの外面に上記弾性部材が取り付けられており、
上記締め付け部材が、上記弾性部材を外側から締め付けており、
この締め付け部材が、上記弾性部材を締め付ける締め付け状態と、上記弾性部材から取り外されており且つゴルフクラブからも取り外されている取り外し状態との相互移行が可能となるように構成され、
上記締め付け部材が、上記締め付け状態において上記シャフトに接触しておらず、
上記弾性部材の複素弾性率が、1.4×107 (dyn/cm2 )以上2.0×1010(dyn/cm2 )以下であるゴルフクラブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−61220(P2009−61220A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233922(P2007−233922)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
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