説明

ゴルフシューズ

【課題】 靴底にかかる荷重の移動、特にスイングの捩れに対応した荷重の移動および踵部から前足部へ又はその逆への荷重移動をスムーズに行なってスイングの安定化に寄与し得るゴルフシューズの提供を目的としている。
【解決手段】 本発明のゴルフシューズ1は、前足部Aと、中足部Bと、踵部Cとを有する靴底本体4を備え、中足部Bには、前足部Aの外側最膨出点P2と踵部Cの外側最膨出点P3とを結んだ外側接地線L1上にその外側最膨出点P1がほぼ位置する外側張出部12が設けられ、この外側張出部12の両側に位置する前足部側部位および踵部側部位は、外側接地線L1の内側に凹状に窪んだ窪み部18,18を形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフシューズに関し、特に靴底に特徴を有するゴルフシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフにおける一連のスイングでは、左右の足間で荷重が移動するだけでなく、片方の足だけでも前後に荷重の移動が行われるため、ゴルフシューズは、このような一連のスイング中に安定して荷重を支え、また、荷重の移動をスムーズに行なうことができるように、靴底構造が様々に工夫されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、靴底の中足部(土踏まず部)の外側領域に、側方に張り出した形状を有する柔軟で弾性を有する安定化部材を固着することにより、前足部(踏み付け部)の外側最膨出点と踵部の外側最膨出点との2点に加え、安定化部材の最膨出点との3点により構成される2次元的な面を形成し、ゴルフシューズの外側エッジにかかる荷重をこの2次元的な面で支えることによって、ゴルフスイング中における幅方向の安定性を向上させるとともに、前後方向の安定の向上も図る靴底構造が開示されている。
【0004】
また、前記安定化部材は、その最膨出点が、靴底本体の前足部外側最膨出点と踵部外側最膨出点とを結んだ外側接地線の外側まで達するように設けられている。
【特許文献1】特開平11−28105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ゴルフスイング中においては、例えば右利きの場合、アドレスからバックスイングに至るまでは、右足に荷重(体重)がかかり、右足外側で荷重が支えられる。そして、ダウンスイングからインパクト、フォロースルーへと移行するにしたがって、右足から左足へと荷重が移動され、最終的に左足外側で荷重が支持されるようになる。また、ゴルフスイングは体を中心とした回転運動であるため、靴底にかかる荷重(体重)は、左右間で移動されるだけでなく、踵部から前足部へ又はその逆へも移動される。そのため、ゴルファーは、ゴルフスイング中、この荷重移動を左右の靴底の外側で支えながらバランス良く行ない、スイングの安定化を図ろうとする。
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に開示された靴底構造では、安定化部材が前記外側接地線を超えて外側へと膨出しているため、ゴルフスイング中、前記外側接地線を回転軸としてゴルフシューズが倒れ込もうとする際、まず、安定化部材の最膨出点が接地し、倒れ込みが始まるとともに安定化部材自体が変形して倒れ込みを抑制する。そのため、スイングの捩れに対応した荷重の移動がスムーズに行なえない。
【0007】
また、前述した特許文献1に開示された靴底構造では、安定化部材が前足部および踵部よりも柔軟であるため、前記倒れ込み抑制効果を保持し続けるべく、靴底にかかる荷重を安定化部材で静的に受けてその状態を保持し続けようとする傾向がある。そのため、踵部から前足部へ又はその逆への荷重移動がスムーズに行なえず、結果的に、スイングを安定に保つことが難しくなる。
【0008】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、靴底にかかる荷重の移動、特にスイングの捩れに対応した荷重の移動および踵部から前足部へ又はその逆への荷重移動をスムーズに行なってスイングの安定化に寄与し得るゴルフシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明のゴルフシューズは、前足部と、中足部と、踵部とを有する靴底本体を備え、前記中足部には、前記前足部の外側最膨出点と前記踵部の外側最膨出点とを結んだ外側接地線上にその外側最膨出点がほぼ位置する外側張出部が設けられ、この外側張出部の両側に位置する前足部側部位および踵部側部位は、前記外側接地線の内側に凹状に窪んだ窪み部を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、靴底にかかる荷重の移動、特にスイングの捩れに対応した荷重の移動および踵部から前足部へ又はその逆への荷重移動をスムーズに行なってスイングの安定化に寄与し得るゴルフシューズを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1および図2には、本発明の一実施形態に係るゴルフシューズ1が示されている。無論、ゴルフシューズ1は、左右対を成して使用されるが、図1および図2にはその片方だけ(左足用)が示されている。
【0012】
図1に示されるように、ゴルフシューズ1は、右足または左足が挿入される上靴本体2と、上靴本体2の底面に固着された靴底本体4とから成る。靴底本体4は、長手方向に沿って前側(爪先側)から順に、前足部Aと、中足部Bと、踵部Cとを有している。靴底本体4の接地側の面は、前足部Aの前端爪先部50から踵部Cの後端へと至る長手方向の略全長にわたって略平坦な主面10を形成している。
【0013】
中足部Bの外側領域には、外側に向けて湾曲状に張り出す(膨出する)外側張出部12が設けられており、また、中足部Bの内側領域には、外側張出部12の張出方向と同じ方向に湾曲状(略V字状)に窪む凹部30が土踏まず部を形成するように設けられている。なお、本明細書において、「内側」とは、左右のゴルフシューズを履いた時に対を成す図示しない他方のゴルフシューズと対向する側のことであり、「外側」とは、その反対側のことを言うものとする。
【0014】
また、ここで、前足部Aの外側端縁および踵部Cの外側端縁の両方に接する外側接地線L1を想定すると、外側張出部12の外側端縁は、この外側接地線L1上にほぼ位置するようになっている。また、外側張出部12の両側に位置する前足部側部位および踵部側部位は、外側接地線L1の内側に凹状に窪んだ窪み部18,18を形成しており、外側張出部12の湾曲形状の形成に寄与している。なお、本明細書においては、外側接地線L1と前足部Aとの接点を「前足部Aの外側最膨出点P2」と称し、外側接地線L1と外側張出部12との接点を「外側張出部12の外側最膨出点P1」と称し、外側接地線L1と踵部Cとの接点を「踵部Cの外側最膨出点P3」と称するものとする。
【0015】
なお、図4に明確に示されるように、凹部30の幅W2は、中足部Bのそれ以外の部位(外側張出部12を含む部位)の幅W2よりも大きくなっている。すなわち、凹部30以外の中足部Bの部位の幅W2は、中足部Bの全体の幅W1の半分よりも小さく設定されている。
【0016】
また、図2に明確に示されるように、前足部A、中足部B、踵部Cにはそれぞれ、主面10から同一の高さt1(図3参照)で突出する滑り止め用の複数の突起20A,20B,20C,20D,20Eが所定の位置に形成されている。具体的には、靴底本体4の外周に沿って複数の第1の突起20Aが設けられており、また、前足部Aおよび踵部Cにはそれぞれ長手方向に配列された複数の第2の突起20Bが設けられている。また、中足部Bの外側張出部12には、外側張出部12の湾曲形状に沿うように湾曲する円弧状の複数の第4の突起20Dが、直列および並列に配列されて設けられている。更に、中足部Bから前足部Aおよび踵部Cへと向かう主面10上の部位には、第4の突起20Dが形作る円弧の延長線(以下、第4の突起20Dが形作る円弧を含めて第1の基準放物線L2という)にほぼ沿って、複数の第3の突起20Cが直列に配列して設けられている。なお、本実施形態において、凹部30の湾曲形状は、第1の基準放物線L2にほぼ沿っており、第2の基準放物線L3を規定している。
【0017】
以上から分かるように、本実施形態において、第3の突起20C、第4の突起20D、凹部30の外周に沿って配列された第1の突起20Aは、外側張出部12を起点として中足部Bから前足部Aおよび踵部Cへ向かって第1または第2の基準放物線L2,L3に沿って配列されており、外側張出部12と共に所定幅Hの湾曲状の帯を形成している。また、この帯は、ゴルフスイング中における体の捻り方向にほぼ沿って延びていることが好ましい。
【0018】
なお、第1〜第4の突起20A,20B,20C,20D間の隙間には、第5の突起20Eが点在して設けられているとともに、スパイクピン25が設けられている。スパイクピン25は、金属または樹脂から成り、そのネジ部25aを介して靴底本体4に対して螺着されている(着脱自在に取り付けられている・・・図3参照)。また、図3に明確に示されるように、主面10からのスパイクピン25の高さt2は、突起20A〜20Eの高さt1よりも大きく設定されている。
【0019】
また、図2から分かるように、外側接地線L1に最も近接して位置する突起、具体的には、第1の突起20A’,20A”および第4の突起20D’は、外側接地線L1に沿ってこれと略平行に並ぶように配列形成されている。
【0020】
また、図4に明確に示されるように、第4の突起20D(20D’)は、その内側の面40が外側に向けて下方に傾斜する傾斜面として形成されており、一方、第4の突起20D(20D’)と対向する第1の突起20Aは、その外側の面42が内側に向けて下方に傾斜する傾斜面として形成されている。すなわち、互いに対向する第4の突起20D(20D’)と第1の突起20Aは、その互いに向き合う面40,42同士が逆方向に傾斜している。
【0021】
以上説明したように、本実施形態のゴルフシューズ1では、前足部Aの外側最膨出点P2と踵部Cの外側最膨出点P3とを結んだ外側接地線L1上にその外側最膨出点P1がほぼ位置する外側張出部12が中足部Bに設けられ、この外側張出部12の両側に位置する前足部側部位および踵部側部位が外側接地線L1の内側に凹状に窪んだ窪み部18,18を形成している。すなわち、外側張出部12が外側接地線L1を超えて外側へと膨出せず、しかも、外側張出部12と窪み部18,18とにより中足部Bから前足部Aおよび踵部Cへと向かう力伝達経路が形成されるため、靴底にかかる荷重を外側張出部12で静的に受けて保持してしまうようなことはなく、スイングの捩れに対応した荷重の移動をスムーズに行なうことができる。
【0022】
特に、本実施形態では、中足部Bの外側領域において外側張出部12が湾曲状に張り出すとともに、突起の一部20A,20C,20D(20D’)が、外側張出部12を起点として中足部Bから前足部Aおよび踵部Cへ向かって、外側張出部12の湾曲形状に沿って配列されているため、前記力伝達経路(すなわち、所定幅Hを有する湾曲状の前記帯)がゴルフスイング中における体の捻り方向にほぼ沿って延び、踵部Cから前足部Aへ又はその逆への荷重移動がスムーズに行なわれる。そのため、スイングを安定に保つことが容易になる。
【0023】
また、本実施形態において、凹部30の幅W2は、中足部Bのそれ以外の部位(外側張出部12を含む部位)の幅W2よりも大きくなっている。すなわち、凹部30以外の中足部Bの部位の幅W2は、中足部Bの全体の幅W1の半分よりも小さく設定されている。そのため、ゴルフスイング中、外側張出部12に作用する力、すなわち、外側接地線L1を回転軸としてゴルフシューズ1を倒れ込ませようとする力を、うまく前足部A側または踵部C側に伝えることができるようになる。
【0024】
また、本実施形態においては、主面10からのスパイクピン25の高さt2が突起20A〜20Eの高さt1よりも大きく設定されている。そのため、突起20A〜20Eによる滑り止めは無論のこと、スパイクピン25により確実に滑り止めを行なうことができるとともに、スパイクピン25の接地面と主面10との高低差を突起20A〜20Eにより埋めることができるため、スパイクピン25による足の裏への突き上げを緩和することができる。
【0025】
また、本実施形態において、互いに対向する第4の突起20D(20D’)と第1の突起20Aは、その互いに向き合う面40,42同士が逆方向に傾斜している。そのため、中足部B(外側張出部12)において左右の滑りを効果的に防止することができる。
【0026】
また、本実施形態において、外側張出部12には、湾曲状の第4の突起20D(20D’)が設けられているため、前後の滑りを効果的に防止することができる。
【0027】
また、本実施形態において、外側接地線L1に最も近接して位置する第1の突起20A’,20A”および第4の突起20D’は、外側接地線L1に沿ってこれと略平行に並ぶように配列形成されている。そのため、スイング時には、これらの突起20A’,20A”,20D’を起点として荷重を受け、この荷重を外側で確実に且つスムーズに移動させることができるようになる。したがって、スイングを安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ゴルフシューズに限らず、様々なスポーツシューズに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るゴルフシューズの側面図である。
【図2】図1のゴルフシューズの靴底本体の底面図である。
【図3】図2のX−X線に沿う断面図である。
【図4】図2のY−Y線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ゴルフシューズ
4 靴底本体
12 外側張出部
18 窪み部
20A(20A’,20A”),20B,20C,20D(20D’),20E 突起
A 前足部
B 中足部
C 踵部
L1 外側接地線
P1,P2,P3 外側最膨出点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前足部と、中足部と、踵部とを有する靴底本体を備え、
前記中足部には、前記前足部の外側最膨出点と前記踵部の外側最膨出点とを結んだ外側接地線上にその外側最膨出点がほぼ位置する外側張出部が設けられ、この外側張出部の両側に位置する前足部側部位および踵部側部位は、前記外側接地線の内側に凹状に窪んだ窪み部を形成していることを特徴とするゴルフシューズ。
【請求項2】
前記前足部、前記中足部、前記踵部にはそれぞれ、靴底本体の略平面を形成する主面から同一の高さで突出する複数の突起が所定の位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフシューズ。
【請求項3】
前記中足部の外側領域において前記外側張出部が湾曲状に張り出し、前記突起の一部は、前記外側張出部を起点として前記中足部から前記前足部および前記踵部へ向かって、前記外側張出部の湾曲形状に沿って配列されていることを特徴とする請求項2に記載のゴルフシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−68394(P2006−68394A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257581(P2004−257581)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】