サイドプレート、ドラフト装置及び繊維機械
【課題】 ドラフト装置の複数のドラフトローラを位置決めするために用いられるサイドプレートにおいて、ゲージ変更作業を容易に行えるとともに製造コストを低減できる構成を提供する。
【解決手段】サイドプレート70は、ドラフト装置への取付位置が固定されるフロント部21と、ドラフト装置に対する位置を所定のストローク範囲内で変更可能なバック部22と、に分割して構成されている。フロント部21は、ドラフトローラを支持するローラ支持部78,76を備える。バック部も同様に、ドラフトローラを支持するローラ支持部75,74を備える。バック部22がストローク範囲の一端にあるときは、ローラ支持部76,75に支持されるドラフトローラ間に、予め定められた所定のピッチP1が実現される。バック部22がストローク範囲の他端にあるときは、上記ドラフトローラ間に、前記ピッチP1と異なるように予め定められた所定のピッチが実現される。
【解決手段】サイドプレート70は、ドラフト装置への取付位置が固定されるフロント部21と、ドラフト装置に対する位置を所定のストローク範囲内で変更可能なバック部22と、に分割して構成されている。フロント部21は、ドラフトローラを支持するローラ支持部78,76を備える。バック部も同様に、ドラフトローラを支持するローラ支持部75,74を備える。バック部22がストローク範囲の一端にあるときは、ローラ支持部76,75に支持されるドラフトローラ間に、予め定められた所定のピッチP1が実現される。バック部22がストローク範囲の他端にあるときは、上記ドラフトローラ間に、前記ピッチP1と異なるように予め定められた所定のピッチが実現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、ドラフト装置が備えるサイドプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紡績機のドラフト装置においては、ドラフトローラにニップされていない浮遊繊維が多くなるとドラフトが適正に行われないため、ドラフトローラの配置間隔(ゲージ)を適切な距離に合わせる必要がある。また、設定すべきドラフトローラのゲージは、紡績する繊維の種類や用途等に応じて異なってくる。このため、従来から、ドラフト装置の複数のドラフトローラを位置決めするためのサイドプレートが用いられている。
【0003】
この種のサイドプレートとしては、例えば特許文献1に開示されるものがある。この特許文献1は以下の構成のゲージ調整機構を開示する。即ち、エプロンバンドを装架したセカンドトップローラより後方に位置する各トップローラのローラ軸を個々に支持するローラ軸支持部材を、クレードルのサイドプレートに移動可能に取り付ける。そして、該ローラ軸支持部材をドラフト装置の前後方向に移動することにより、ローラ間のゲージを変更調節可能とする。特許文献1は、この構成により、ゲージ間を所望のゲージに調整できるので多種多様のサイドプレートを用意する必要がなくなり、また、ゲージ変更の都度、サイドプレートを取り替えて再び取り付ける手間がなくなるとする。
【特許文献1】実開平4−123268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成は、ゲージ調整機構の支持部材はスリット及びネジによってサイドプレートに移動可能に取り付けられている。従って、所望のゲージを実現する位置にドラフトローラを正確に位置させてドラフトのムラを防ぐには、支持部材の位置をスリットの範囲で厳密に調整しながらネジ止めしなければならなかった。従って、ゲージ変更及び微調整の作業が煩雑であり、時間と工数が相当に掛かっていた。
【0005】
特に、大規模な紡績工場等において、紡績する繊維の種類が変更された場合は、多数の紡績ユニットのそれぞれにおいてゲージ変更を行うことになるため、ゲージ変更作業の時間と工数の低減が強く望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、製造コストを抑えるとともに、ゲージ調整を容易かつ確実に行うことができるサイドプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、ドラフト装置の複数のドラフトローラを位置決めするために用いられるサイドプレートの以下の構成が提供される。即ち、前記サイドプレートは、固定部と、移動部と、を備える。固定部は、ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置への取付位置が固定されている。移動部は、ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置に対する位置を所定のストローク範囲内で変えることができる。そして、前記移動部が前記ストローク範囲の一端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に予め定められた第1ピッチが実現される。一方、前記移動部が前記ストローク範囲の他端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に前記第1ピッチと異なる予め定められた第2ピッチが実現される。
【0009】
この構成により、移動部の取付位置をそのストローク範囲の一端か他端かで異ならせることで、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間のゲージを簡単に変更することができる。また、移動部をストローク範囲の一端又は他端に位置させることで第1ピッチ又は第2ピッチが正確に実現されるので、移動部の位置の微調整作業が不要になり、この点でもゲージ変更作業が簡単になる。また、固定部及び移動部のローラ支持部からドラフトローラを外すことなくゲージ調整を行うこともでき、ゲージ変更作業の手間と時間を軽減できる。
【0010】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部は複数のローラ支持部を備え、前記移動部を移動させると前記複数のローラ支持部が一体的に移動することが好ましい。
【0011】
この構成では、移動部を移動させるだけで、当該移動部に支持されるドラフトローラ間のゲージを保ったまま、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間のゲージを簡単に変更することができる。従って、ゲージ変更作業の効率を向上させることができる。
【0012】
前記サイドプレートにおいては、前記固定部をドラフト装置に固定した状態で、前記移動部を、ローラ支持部間の間隔が異なる他の移動部と交換可能に構成することが好ましい。
【0013】
これにより、移動部に支持されるドラフトローラのゲージを変更したい場合でも、固定部はそのままドラフト装置へ固定しておき、移動部を交換するだけで良いことになる。また、固定部に支持されるドラフトローラを取り外さずに移動部を交換できるので、ゲージ変更作業を効率的に行える。また、固定部を共通として、移動部の移動及び交換だけで各種のゲージ変更に対応することができる。これにより、サイドプレートの製造コストを低減できる。
【0014】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部は当て面を備えており、この当て面が前記固定部と接触することで、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることが好ましい。
【0015】
これにより、簡単な構成で、前記第1ピッチ又は第2ピッチを再現性良く得ることができる。
【0016】
前記サイドプレートにおいては、前記固定部又は前記移動部の少なくとも何れか一方に長孔又は溝が備えられており、この長孔又は溝の端部によって、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることが好ましい。
【0017】
これにより、簡単な構成で、前記第1ピッチ又は第2ピッチを再現性良く得ることができる。
【0018】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部は一端が開放された長孔を備え、この長孔に取付部材の軸部が挿通された状態で前記移動部が前記ドラフト装置又は前記固定部に取り付けられることが好ましい。
【0019】
この構成により、移動部の交換の際に、取付部材を外さずに移動部をドラフト装置から取り外すことができる。従って、取付部材の取付け/取外しの作業を省略できるので、移動部の交換作業が容易になる。
【0020】
前記サイドプレートにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記固定部は基準表示部を備え、前記移動部は2つの位置表示部を備える。前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置しているときに、前記基準表示部が2つの前記位置表示部の何れかと一致するように構成する。
【0021】
この構成により、基準表示部と位置表示部を読み取ることで、移動部が確実にストローク範囲の端部に位置しているか否かを容易に確認することができる。
【0022】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部において、それぞれの前記位置表示部の近傍に、前記第1ピッチ及び前記第2ピッチが数字で表示されていることが好ましい。
【0023】
この構成により、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間でどのゲージが実現されているかを簡単に知ることができる。
【0024】
本発明の第2の観点によれば、前記サイドプレートを備えたドラフト装置及び前記ドラフト装置を備えた繊維機械が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2を備えた、繊維機械としての紡績機1を示している。
【0026】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、巻取装置12と、を主要な構成として有している。ドラフト装置7は紡績機1本体のケーシング6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で下方へ送られ、糸の欠陥を検出して糸切断を行って糸欠陥部分を除去するためのクリアラー(糸欠陥検出器)52を経て、巻取装置12によって巻き取られ、パッケージ45を形成する。
【0027】
この紡績機1には、ブロアボックス80と、原動機ボックス81とが装備される。また、図では省略したが、紡績機1は、紡績ユニット2が並べられる方向に走行自在に設けられた糸継台車と、この糸継台車とは独立に走行自在に設けられた玉揚台車を備える。
【0028】
図2にドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11の拡大側面図を示す。ドラフト装置7は、スライバ13を延伸して繊維束8にするためのドラフトローラを備える。前記ドラフトローラは、互いに対向して配置されるトップローラとボトムローラにより構成されている。
【0029】
トップローラは、バックローラ14、サードローラ15、エプロンベルト17を装架したミドルローラ16、及びフロントローラ18の4つのローラから構成されている。これらのトップローラ14,15,16,18は、ドラフト装置7が備えるカバー状のクレードル20に取り付けられている。一方、ボトムローラは、バックボトムローラ24、サードボトムローラ25、エプロンベルト27を装架したミドルボトムローラ26、及びフロントボトムローラ28の4つのローラから構成されている。それぞれのボトムローラ24,25,26,28はドラフト装置7本体側に取り付けられるとともに、前記トップローラ14,15,16,18に対向するように配置されている。
【0030】
クレードル20の内部には図略のスプリングボックスが備えられ、このスプリングボックスによって、前記トップローラ14,15,16,18が前記ボトムローラ24,25,26,28に対し押圧されるように付勢される。これによって、スライバ13をトップローラ14,15,16,18とボトムローラ24,25,26,28とでニップすることができる。
【0031】
それぞれのトップローラ14,15,16,18は、クレードル20の側面に取り付けられるサイドプレート70によって位置決めされ、これにより、トップローラ14,15,16,18のスライバに対するニップ点の間隔(ゲージ)が所定の間隔となるよう定められる。前記クレードル20は、図1に示すように2つの紡績ユニット2に対して1つ設けられ、サイドプレート70はクレードル20の両側の面に1つずつ取り付けられる。なお、サイドプレート70の構成の詳細については後述する。
【0032】
以上の構成で、ドラフト装置7に送られたスライバ13は、図2に示すように、速度をそれぞれ異ならせながら回転駆動されるドラフトローラによって延伸され、繊維束8となって紡績装置9へ送られる。紡績装置9は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績する。空気紡績された繊維束8は紡績糸10となって糸送り装置11に送られる。
【0033】
糸送り装置11は、紡績機1本体のケーシングに支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に接離自在に設けられたニップローラ40と、を備える。この構成で、紡績装置9から排出された紡績糸10をデリベリローラ39とニップローラ40との間に挟んでデリベリローラ39を回転駆動させることにより、紡績糸10を巻取装置12側へ送ることができる。
【0034】
前記クレードル20は、ドラフト装置7に対して回動軸部29を中心に回動可能に備えられている。また、クレードル20にはクレードルハンドル23が固定されている。この構成で、紡績機1の稼動時にはクレードル20は図2に示す位置とされ、図略のロック機構によってロックされている。このロック機構のロックを外し、クレードルハンドル23を持ち上げることで、クレードル20が開いた状態となる。この状態で、トップローラ14,15,16,18やボトムローラ24,25,26,28の交換をはじめとしたメンテナンス作業や、後述するドラフトローラのゲージ調整作業等を行う。
【0035】
次に、クレードル20に取り付けられるサイドプレート70について説明する。図3に本発明に係る一実施形態のサイドプレート70の全体図を示す。図3に示すように、サイドプレート70はフロント部(固定部)21とバック部(移動部)22とに分割されている。フロント部21及びバック部22は、何れも金属製であり、所定の厚さを有する平板状に形成されている。
【0036】
フロント部21は、フロントローラ18を支持するフロントローラ支持部78と、ミドルローラ16を支持するミドルローラ支持部76と、を備える。また、バック部22は、サードローラ15を支持するサードローラ支持部75と、バックローラ14を支持するバックローラ支持部74と、を備える。ローラ支持部74,75,76,78はそれぞれ凹部を有しており、この凹部内に各トップローラ14,15,16,18の軸受部を位置決めしつつ支持することで、それぞれのトップローラ14,15,16,18を位置決めすることができる。
【0037】
フロントローラ支持部78及びミドルローラ支持部76は、両方ともフロント部21に形成されている。従って、フロントローラ18−ミドルローラ16間のゲージは不変となっている。同様に、サードローラ支持部75及びバックローラ支持部74は、両方ともバック部22に形成されている。従って、サードローラ15−バックローラ14間のゲージは不変となっている。
【0038】
各ローラ支持部74,75,76,78の位置は、前記フロントローラ18−ミドルローラ16間のゲージ、及びサードローラ15−バックローラ14間のゲージが、予め定めた所定の間隔となるように設定されている。ただし、バック部22においては、サードローラ15−バックローラ14間のゲージを種々異ならせたものを複数製造して用意しておく。
【0039】
サイドプレート70のフロント部21には、円形かつ貫通状の取付孔69,69が形成されている。フロント部21は、この取付孔69,69に取付部材としてのネジ91,92を挿通してネジ止めすることで、クレードル20に取り付けられる(図4を参照)。このネジ止めにより、サイドプレート70はクレードル20に対して移動不能に固定される。従って、フロントローラ支持部78及びミドルローラ支持部76の位置も固定となり、その位置は不変である。
【0040】
図3に示すように、サイドプレート70のバック部22には、切欠き部63と長孔部61が形成されている。切欠き部63及び長孔部61は、ローラ支持部74,75,76,78が並べられる方向(スライバ13の進行方向)に沿って細長く形成されている。切欠き部63は、長孔のフロント部21側の一端を開放したような形状に構成されている。また、長孔部61は、フロント部21から遠い側の端部に配置される。
【0041】
バック部22は、取付部材としてのネジ93,94を切欠き部63及び長孔部61に挿通してネジ止めすることで、クレードル20に対し固定される(図4を参照)。また、図3に示すように、バック部22は突合せ部62を備えており、この突合せ部62の面(当て面)はフロント部21の端面に当接可能になっている。
【0042】
前記クレードル20には、前記ネジ91〜94をネジ止めするためのメネジ穴が形成されている。また、前記メネジ穴の位置においては、クレードル20の内側の部分に溶接等によって肉盛りが施され、強度が確保されている。
【0043】
バック部22は、取付けのための前記ネジ93,94(図4)を緩めることで、切欠き部63及び長孔部61に沿って所定のストローク範囲で移動させることができる。これは、前記フロントローラ18−ミドルローラ16間のゲージ、及びサードローラ15−バックローラ14間のゲージを一定に保ったまま、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを変更できることを意味する。
【0044】
バック部22をフロント部21へ近づく方向へ移動させていくと、図4に示すように、前記突合せ部62の当て面がフロント部21に接触した状態となり、それ以上のフロント部21側への移動が阻止される。これによって、バック部22の前記ストローク範囲の一端が規定される。なお、この状態では、図4の鎖線で囲った部分の拡大図である図5に示すように、前記長孔部61に挿通されているネジ94の軸部79は、当該長孔部61の長手方向中途部に位置する。
【0045】
そして、バック部22がストローク範囲の一端に位置している図4の状態では、予め定められた第1ピッチ(ゲージ)P1がミドルローラ16−サードローラ15間において実現されるように、各ローラ支持部74,75,76,78の位置、及び突合せ部62の当て面の位置等が定められている。
【0046】
一方、バック部22をフロント部21から離れる方向へ移動させていくと、図6の状態となったときに、前記長孔部61の一端に、当該長孔部61に挿通されているネジ94の軸部79が接触した状態となる(図6の鎖線で囲った部分の拡大図である図7を参照)。これにより、フロント部21から離れる方向へのバック部22の移動が阻止され、バック部22の前記ストローク範囲の他端が規定される。
【0047】
そして、このバック部22がストローク範囲の他端に位置している図6の状態では、予め定められた第2ピッチ(ゲージ)P2がミドルローラ16−サードローラ15間において実現されるように、各ローラ支持部74,75,76,78、前記長孔部61及びネジ94の位置等が定められている。また、この第2ピッチP2は、バック部22が前記ストローク範囲の反対側の端部に位置しているときの前記第1ピッチP1(図4)より大きくなるように設定されている。
【0048】
従って、バック部22を移動させて、そのストローク範囲の一端又は他端の何れかにバック部22を位置させて前記ネジを締める簡単な作業により、予め定められた第1ピッチP1及び第2ピッチP2の何れかをミドルローラ16−サードローラ15間のゲージとして得ることができる。特に、2つのピッチP1,P2はバック部22のストローク範囲の両端に定められているから、バック部22をストローク範囲の途中の位置に厳密に調整する煩雑な作業が不要になるとともに、所望のピッチを再現性良く得ることができる。
【0049】
図3に示すように、フロント部21にはバック部22に向かって突出する凸部71が設けられるとともに、この凸部71に対応する位置においてバック部22には凹部が設けられている。フロント部21の凸部71の部分には、基準表示部としての基準線64が備えられている。一方、バック部22において前記凹部の脇の部分には、位置表示部としての長ゲージ線65と短ゲージ線67が備えられている。長ゲージ線65及び短ゲージ線67の近傍には、それぞれ長ゲージ表示部66及び短ゲージ表示部68が備えられている。2つの表示部66,68には、実際のミドルローラ16−サードローラ15間のゲージ(第1ピッチP1及び第2ピッチP2)が、例えばmm単位の数値で直接表示されている。
【0050】
そして、バック部22を前記ストローク範囲の一端に移動させると、基準線64が短ゲージ線67と図4のように一致し、一方、ストローク範囲の他端では、基準線64が長ゲージ線65と図6のように一致するように、基準線64、長ゲージ線65及び短ゲージ線67の位置が定められている。従って、基準線64と2つのゲージ線67,65の位置関係を読み取ることで、前記バック部22がストローク範囲の端部に位置しているか否かを簡単に確認することができる。
【0051】
ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージ変更作業は、以下のようにして行う。即ち、図8に示すようにクレードル20を開いた状態とし、工具を使用して、バック部22を固定しているネジ93,94を緩める。そしてバック部22を、そのストローク範囲の一端から他端まで移動させ、再びネジ93,94を締めて固定する。なお、図2に示すミドルボトムローラ26−サードボトムローラ25間のゲージ変更作業も、クレードル20を開いた状態で適宜行う。その後、クレードル20を閉じて、ピッチ変更作業を完了する。
【0052】
なお、このピッチ変更作業は、図8に示すように、各トップローラ14,15,16,18をサイドプレート70の各ローラ支持部74,75,76,78に保持した状態で行うことができる。従って、トップローラ14,15,16,18を外して再び取り付ける作業が不要になり、ゲージ変更作業が容易になる。
【0053】
なお、バック部22の移動時には、サードローラ15及びバックローラ14もバック部22とともに同時に移動することになる。従って、クレードル20に備えられる前記スプリングボックスは、サードローラ15やバックローラ14が移動しても常に適切な付勢力を付与できるように、その付勢力の作用位置を予め調整しておくこととする。
【0054】
一方、サードローラ15−バックローラ14間のピッチ変更は、バック部22の交換が必要になるので、以下のようにして行う。
【0055】
即ち、最初にクレードル20を開いた状態として、サードローラ15及びバックローラ14(図2を参照)を、バック部22のローラ支持部75,74から取り外す。次に、工具を使用して、切欠き部63の部分でバック部22をネジ止めしているネジ93(図4を参照)を適宜緩める。また、長孔部61の部分でバック部22をネジ止めしているネジ94を取り外しておく。
【0056】
そして、図9の状態から矢印で示すように、バック部22をフロント部21から離れる方向に引き抜く。すると、切欠き部63の開放側の一端から前記ネジ93の軸部が抜けるので、ネジ93をクレードル20側に取り付けた状態で残したまま、バック部22をクレードル20から簡単に取り外すことができる。
【0057】
そして、図10に示すように、以前のバック部22とはサードローラ15−バックローラ14間のピッチ(ゲージ)が異なっているバック部22Xを、その切欠き部63に前記ネジ93の軸部が差し込まれるようにしてセットし、長孔部61に前記ネジ94を再び挿通する。そして、ネジ93,94を緩めた状態のままで、バック部22Xをそのストローク範囲の一端又は他端に位置させる。その後、ネジ93,94を締めて、バック部22Xをクレードル20に対し固定する。
【0058】
なお、このピッチ変更作業は、図9及び図10に示すように、フロント部21の交換は不要で、かつ、フロント部21側のトップローラ18,16を各ローラ支持部78,76に保持した状態で行うことができる。従って、各種部品を外して再び取り付ける作業が不要になるので、ゲージ変更作業が容易になる。
【0059】
なお、前記ネジ93の近傍には、例えばトップローラ14,15,16,18の表面を清掃するクリーナ等の各種機構が配置されているので、ネジ93の取付け/取外しのための作業空間を確保できない場合が多い。この点、本実施形態のバック部22(22X)は、開放部を有する長孔状の切欠き部63を備えた構成となっている。従って、ドライバー等の工具をネジ93の頭部のネジ溝に差し込んで当該ネジ93を緩めておきさえすれば、ネジ93をクレードル20から完全に取り外さなくても、前記開放部を介して当該ネジ93の軸部を切欠き部63に差し込んだり抜いたりすることができる。従って、バック部22の交換を簡単に行うことができる。
【0060】
以上に示すように、本実施形態のドラフト装置7において、複数のドラフトローラ(トップローラ14,15,16,18)を位置決めするために用いられるサイドプレート70は、以下のように構成されている。即ち、このサイドプレート70は、ドラフト装置7への取付位置が固定される固定部としてのフロント部21と、ドラフト装置7に対する位置を所定のストローク範囲内で変えることができる移動部としてのバック部22と、に分割して構成されている。フロント部21は、フロントローラ支持部78及びミドルローラ支持部76を備える。また、バック部22は、サードローラ支持部75及びローラ支持部74を備える。バック部22が前記ストローク範囲の一端に位置しているときは(図4)、フロント部21側のミドルローラ16とバック部22側のサードローラ15との間で、予め定められた第1ピッチP1が実現される。バック部22が前記ストローク範囲の他端に位置しているときは(図6)、フロント部21側のミドルローラ16とバック部22側のサードローラ15との間で、前記第1ピッチP1と異なる予め定められた第2ピッチP2が実現される。
【0061】
この構成により、バック部22の取付位置をそのストローク範囲の一端か他端かで異ならせることで、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを簡単に変更できる。また、バック部22をストローク範囲の一端又は他端に位置させることで第1ピッチP1又は第2ピッチP2が正確に実現されるから、バック部22の位置の厳密な調整作業が不要になり、この点でもゲージ変更作業が簡単になる。また、図8に示すように、サイドプレート70に保持されているトップローラ14,15,16,18を取り外すことなくゲージ調整を行うことができる。従って、ゲージ変更作業の手間と時間を軽減できる。
【0062】
また本実施形態のサイドプレート70においては、バック部22はサードローラ支持部75と、バックローラ支持部74と、を備える。そして、バック部22を移動させるとサードローラ支持部75及びバックローラ支持部74が一体的に移動するように構成されている。
【0063】
この構成により、バック部22を移動させるだけで、サードローラ15−バックローラ14間のゲージを保ったまま、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを簡単に変更することができる。従って、ゲージ変更作業の効率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態のサイドプレート70は、図9及び図10に示すように、フロント部21をドラフト装置7に固定した状態で、前記バック部22を、ローラ支持部間の間隔が異なる他のバック部22Xと交換可能に構成している。
【0065】
この構成により、サードローラ15−バックローラ14間のゲージを変更したい場合でも、フロント部21はそのままドラフト装置7へ固定しておき、バック部22を取り替えるだけで良いことになる。また、フロントローラ18とミドルローラ16をフロント部21側に保持した状態でバック部22を交換することができる。従って、ゲージ変更作業を効率的に行える。更に、フロント部21を共通として、バック部22の移動及び交換だけで各種のゲージ変更に対応することができる。従って、サイドプレート70の材料費や金型製作費等の製造コストを低減できる。
【0066】
また、本実施形態において、前記バック部22は突合せ部62の部分に当て面を備えており、この当て面がフロント部21と図4のように接触することで、前記バック部22が前記ストローク範囲の端部に位置決めされるようになっている。
【0067】
これにより、簡単な構成で、前記第1ピッチP1を再現性良く得ることができる。
【0068】
また、本実施形態において、前記バック部22には長孔部61が備えられており、この長孔部61の端部によって、前記バック部22が図6及び図7のように前記ストローク範囲の端部に位置決めされるようになっている。
【0069】
これにより、簡単な構成で、前記第2ピッチP2を再現性良く得ることができる。
【0070】
また、本実施形態において、前記バック部22は一端が開放された長孔としての切欠き部63を備え、この切欠き部63にネジ93の軸部が挿通された状態で前記クレードル20に取り付けられている。
【0071】
この構成により、バック部22の交換の際に、図9に示すように、ネジ93をドラフト装置7に捩じ込んで付けた状態のまま、バック部22をドラフト装置7から外すことができる。従って、ネジ93の取付け/取外しの作業を省略できるので、バック部22の交換作業が容易になる。
【0072】
また、本実施形態においては、前記フロント部21は基準線64を備え、前記バック部22は2つのゲージ線65,67を備える。そして、図4や図6に示すように、バック部22が前記ストローク範囲の端部に位置しているときは、基準線64が2つの前記ゲージ線65,67の何れかと一致するようになっている。
【0073】
この構成により、基準線64とゲージ線65,67を読み取ることで、バック部22が確実にストローク範囲の端部に位置しているか否かを容易に確認することができる。
【0074】
また、本実施形態においては、前記バック部22において、それぞれのゲージ線65,67の近傍に表示部66,68が設けられ、この表示部66,68の部分に、前記第1ピッチP1及び前記第2ピッチP2が数字で表示されている。
【0075】
この構成により、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを簡単に知ることができる。
【0076】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は例えば以下のように変更することができる。
【0077】
バック部22は、ドラフト装置7に対し直接取り付けられる場合に限定されない。例えば、ドラフト装置7に固定されたフロント部21に対し、バック部22を所定のストローク範囲で移動可能に取り付けることもできる。
【0078】
上記実施形態のバック部22は、貫通状の長孔部61の端部によって位置決めを行うように構成している。しかしながらこれに限定されず、例えばバック部22のドラフト装置7側を向く面に非貫通状の溝を凹設する一方、ドラフト装置7からピンを突出させて前記溝に挿入し、このピンが溝の端部に当たることでバック部22の位置決めを実現することもできる。
【0079】
また、バック部22からピンを突設して、このピンが、フロント部21に設けた長孔又は溝に挿入されるようにし、当該長孔や溝の端部にピンが接触することでバック部22の位置決めを実現することもできる。
【0080】
直線状の基準線64やゲージ線65,67の代わりに、例えば小さな円形や三角形のマーク等を基準表示部及び位置表示部として備えることができる。
【0081】
上記実施形態のサイドプレート70は、4線式のドラフト装置の場合に限らず、例えば5線式やそれ以外の方式のドラフト装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図。
【図2】ドラフト装置の様子を示す側面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るサイドプレートの全体図。
【図4】バック部がストローク範囲の一端に位置している様子を示す側面図。
【図5】図4の鎖線で囲った部分を示す拡大図。
【図6】バック部がストローク範囲の他端に位置している様子を示す側面図。
【図7】図6の鎖線で囲った部分を示す拡大図。
【図8】ミドルローラ−サードローラ間のゲージ変更作業を説明する側面図。
【図9】サイドプレートのバック部を交換のために取り外す作業を説明する側面図。
【図10】新しいバック部を取り付ける作業を説明する側面図。
【符号の説明】
【0083】
14 バックローラ
15 サードローラ
16 ミドルローラ
18 フロントローラ
20 クレードル
21 フロント部(固定部)
22,22X バック部(移動部)
23 クレードルハンドル
61 長孔部
62 突合せ部
63 切欠き部
70 サイドプレート
79 ネジの軸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、ドラフト装置が備えるサイドプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紡績機のドラフト装置においては、ドラフトローラにニップされていない浮遊繊維が多くなるとドラフトが適正に行われないため、ドラフトローラの配置間隔(ゲージ)を適切な距離に合わせる必要がある。また、設定すべきドラフトローラのゲージは、紡績する繊維の種類や用途等に応じて異なってくる。このため、従来から、ドラフト装置の複数のドラフトローラを位置決めするためのサイドプレートが用いられている。
【0003】
この種のサイドプレートとしては、例えば特許文献1に開示されるものがある。この特許文献1は以下の構成のゲージ調整機構を開示する。即ち、エプロンバンドを装架したセカンドトップローラより後方に位置する各トップローラのローラ軸を個々に支持するローラ軸支持部材を、クレードルのサイドプレートに移動可能に取り付ける。そして、該ローラ軸支持部材をドラフト装置の前後方向に移動することにより、ローラ間のゲージを変更調節可能とする。特許文献1は、この構成により、ゲージ間を所望のゲージに調整できるので多種多様のサイドプレートを用意する必要がなくなり、また、ゲージ変更の都度、サイドプレートを取り替えて再び取り付ける手間がなくなるとする。
【特許文献1】実開平4−123268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成は、ゲージ調整機構の支持部材はスリット及びネジによってサイドプレートに移動可能に取り付けられている。従って、所望のゲージを実現する位置にドラフトローラを正確に位置させてドラフトのムラを防ぐには、支持部材の位置をスリットの範囲で厳密に調整しながらネジ止めしなければならなかった。従って、ゲージ変更及び微調整の作業が煩雑であり、時間と工数が相当に掛かっていた。
【0005】
特に、大規模な紡績工場等において、紡績する繊維の種類が変更された場合は、多数の紡績ユニットのそれぞれにおいてゲージ変更を行うことになるため、ゲージ変更作業の時間と工数の低減が強く望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、製造コストを抑えるとともに、ゲージ調整を容易かつ確実に行うことができるサイドプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、ドラフト装置の複数のドラフトローラを位置決めするために用いられるサイドプレートの以下の構成が提供される。即ち、前記サイドプレートは、固定部と、移動部と、を備える。固定部は、ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置への取付位置が固定されている。移動部は、ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置に対する位置を所定のストローク範囲内で変えることができる。そして、前記移動部が前記ストローク範囲の一端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に予め定められた第1ピッチが実現される。一方、前記移動部が前記ストローク範囲の他端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に前記第1ピッチと異なる予め定められた第2ピッチが実現される。
【0009】
この構成により、移動部の取付位置をそのストローク範囲の一端か他端かで異ならせることで、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間のゲージを簡単に変更することができる。また、移動部をストローク範囲の一端又は他端に位置させることで第1ピッチ又は第2ピッチが正確に実現されるので、移動部の位置の微調整作業が不要になり、この点でもゲージ変更作業が簡単になる。また、固定部及び移動部のローラ支持部からドラフトローラを外すことなくゲージ調整を行うこともでき、ゲージ変更作業の手間と時間を軽減できる。
【0010】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部は複数のローラ支持部を備え、前記移動部を移動させると前記複数のローラ支持部が一体的に移動することが好ましい。
【0011】
この構成では、移動部を移動させるだけで、当該移動部に支持されるドラフトローラ間のゲージを保ったまま、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間のゲージを簡単に変更することができる。従って、ゲージ変更作業の効率を向上させることができる。
【0012】
前記サイドプレートにおいては、前記固定部をドラフト装置に固定した状態で、前記移動部を、ローラ支持部間の間隔が異なる他の移動部と交換可能に構成することが好ましい。
【0013】
これにより、移動部に支持されるドラフトローラのゲージを変更したい場合でも、固定部はそのままドラフト装置へ固定しておき、移動部を交換するだけで良いことになる。また、固定部に支持されるドラフトローラを取り外さずに移動部を交換できるので、ゲージ変更作業を効率的に行える。また、固定部を共通として、移動部の移動及び交換だけで各種のゲージ変更に対応することができる。これにより、サイドプレートの製造コストを低減できる。
【0014】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部は当て面を備えており、この当て面が前記固定部と接触することで、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることが好ましい。
【0015】
これにより、簡単な構成で、前記第1ピッチ又は第2ピッチを再現性良く得ることができる。
【0016】
前記サイドプレートにおいては、前記固定部又は前記移動部の少なくとも何れか一方に長孔又は溝が備えられており、この長孔又は溝の端部によって、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることが好ましい。
【0017】
これにより、簡単な構成で、前記第1ピッチ又は第2ピッチを再現性良く得ることができる。
【0018】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部は一端が開放された長孔を備え、この長孔に取付部材の軸部が挿通された状態で前記移動部が前記ドラフト装置又は前記固定部に取り付けられることが好ましい。
【0019】
この構成により、移動部の交換の際に、取付部材を外さずに移動部をドラフト装置から取り外すことができる。従って、取付部材の取付け/取外しの作業を省略できるので、移動部の交換作業が容易になる。
【0020】
前記サイドプレートにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記固定部は基準表示部を備え、前記移動部は2つの位置表示部を備える。前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置しているときに、前記基準表示部が2つの前記位置表示部の何れかと一致するように構成する。
【0021】
この構成により、基準表示部と位置表示部を読み取ることで、移動部が確実にストローク範囲の端部に位置しているか否かを容易に確認することができる。
【0022】
前記サイドプレートにおいては、前記移動部において、それぞれの前記位置表示部の近傍に、前記第1ピッチ及び前記第2ピッチが数字で表示されていることが好ましい。
【0023】
この構成により、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間でどのゲージが実現されているかを簡単に知ることができる。
【0024】
本発明の第2の観点によれば、前記サイドプレートを備えたドラフト装置及び前記ドラフト装置を備えた繊維機械が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2を備えた、繊維機械としての紡績機1を示している。
【0026】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、巻取装置12と、を主要な構成として有している。ドラフト装置7は紡績機1本体のケーシング6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で下方へ送られ、糸の欠陥を検出して糸切断を行って糸欠陥部分を除去するためのクリアラー(糸欠陥検出器)52を経て、巻取装置12によって巻き取られ、パッケージ45を形成する。
【0027】
この紡績機1には、ブロアボックス80と、原動機ボックス81とが装備される。また、図では省略したが、紡績機1は、紡績ユニット2が並べられる方向に走行自在に設けられた糸継台車と、この糸継台車とは独立に走行自在に設けられた玉揚台車を備える。
【0028】
図2にドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11の拡大側面図を示す。ドラフト装置7は、スライバ13を延伸して繊維束8にするためのドラフトローラを備える。前記ドラフトローラは、互いに対向して配置されるトップローラとボトムローラにより構成されている。
【0029】
トップローラは、バックローラ14、サードローラ15、エプロンベルト17を装架したミドルローラ16、及びフロントローラ18の4つのローラから構成されている。これらのトップローラ14,15,16,18は、ドラフト装置7が備えるカバー状のクレードル20に取り付けられている。一方、ボトムローラは、バックボトムローラ24、サードボトムローラ25、エプロンベルト27を装架したミドルボトムローラ26、及びフロントボトムローラ28の4つのローラから構成されている。それぞれのボトムローラ24,25,26,28はドラフト装置7本体側に取り付けられるとともに、前記トップローラ14,15,16,18に対向するように配置されている。
【0030】
クレードル20の内部には図略のスプリングボックスが備えられ、このスプリングボックスによって、前記トップローラ14,15,16,18が前記ボトムローラ24,25,26,28に対し押圧されるように付勢される。これによって、スライバ13をトップローラ14,15,16,18とボトムローラ24,25,26,28とでニップすることができる。
【0031】
それぞれのトップローラ14,15,16,18は、クレードル20の側面に取り付けられるサイドプレート70によって位置決めされ、これにより、トップローラ14,15,16,18のスライバに対するニップ点の間隔(ゲージ)が所定の間隔となるよう定められる。前記クレードル20は、図1に示すように2つの紡績ユニット2に対して1つ設けられ、サイドプレート70はクレードル20の両側の面に1つずつ取り付けられる。なお、サイドプレート70の構成の詳細については後述する。
【0032】
以上の構成で、ドラフト装置7に送られたスライバ13は、図2に示すように、速度をそれぞれ異ならせながら回転駆動されるドラフトローラによって延伸され、繊維束8となって紡績装置9へ送られる。紡績装置9は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績する。空気紡績された繊維束8は紡績糸10となって糸送り装置11に送られる。
【0033】
糸送り装置11は、紡績機1本体のケーシングに支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に接離自在に設けられたニップローラ40と、を備える。この構成で、紡績装置9から排出された紡績糸10をデリベリローラ39とニップローラ40との間に挟んでデリベリローラ39を回転駆動させることにより、紡績糸10を巻取装置12側へ送ることができる。
【0034】
前記クレードル20は、ドラフト装置7に対して回動軸部29を中心に回動可能に備えられている。また、クレードル20にはクレードルハンドル23が固定されている。この構成で、紡績機1の稼動時にはクレードル20は図2に示す位置とされ、図略のロック機構によってロックされている。このロック機構のロックを外し、クレードルハンドル23を持ち上げることで、クレードル20が開いた状態となる。この状態で、トップローラ14,15,16,18やボトムローラ24,25,26,28の交換をはじめとしたメンテナンス作業や、後述するドラフトローラのゲージ調整作業等を行う。
【0035】
次に、クレードル20に取り付けられるサイドプレート70について説明する。図3に本発明に係る一実施形態のサイドプレート70の全体図を示す。図3に示すように、サイドプレート70はフロント部(固定部)21とバック部(移動部)22とに分割されている。フロント部21及びバック部22は、何れも金属製であり、所定の厚さを有する平板状に形成されている。
【0036】
フロント部21は、フロントローラ18を支持するフロントローラ支持部78と、ミドルローラ16を支持するミドルローラ支持部76と、を備える。また、バック部22は、サードローラ15を支持するサードローラ支持部75と、バックローラ14を支持するバックローラ支持部74と、を備える。ローラ支持部74,75,76,78はそれぞれ凹部を有しており、この凹部内に各トップローラ14,15,16,18の軸受部を位置決めしつつ支持することで、それぞれのトップローラ14,15,16,18を位置決めすることができる。
【0037】
フロントローラ支持部78及びミドルローラ支持部76は、両方ともフロント部21に形成されている。従って、フロントローラ18−ミドルローラ16間のゲージは不変となっている。同様に、サードローラ支持部75及びバックローラ支持部74は、両方ともバック部22に形成されている。従って、サードローラ15−バックローラ14間のゲージは不変となっている。
【0038】
各ローラ支持部74,75,76,78の位置は、前記フロントローラ18−ミドルローラ16間のゲージ、及びサードローラ15−バックローラ14間のゲージが、予め定めた所定の間隔となるように設定されている。ただし、バック部22においては、サードローラ15−バックローラ14間のゲージを種々異ならせたものを複数製造して用意しておく。
【0039】
サイドプレート70のフロント部21には、円形かつ貫通状の取付孔69,69が形成されている。フロント部21は、この取付孔69,69に取付部材としてのネジ91,92を挿通してネジ止めすることで、クレードル20に取り付けられる(図4を参照)。このネジ止めにより、サイドプレート70はクレードル20に対して移動不能に固定される。従って、フロントローラ支持部78及びミドルローラ支持部76の位置も固定となり、その位置は不変である。
【0040】
図3に示すように、サイドプレート70のバック部22には、切欠き部63と長孔部61が形成されている。切欠き部63及び長孔部61は、ローラ支持部74,75,76,78が並べられる方向(スライバ13の進行方向)に沿って細長く形成されている。切欠き部63は、長孔のフロント部21側の一端を開放したような形状に構成されている。また、長孔部61は、フロント部21から遠い側の端部に配置される。
【0041】
バック部22は、取付部材としてのネジ93,94を切欠き部63及び長孔部61に挿通してネジ止めすることで、クレードル20に対し固定される(図4を参照)。また、図3に示すように、バック部22は突合せ部62を備えており、この突合せ部62の面(当て面)はフロント部21の端面に当接可能になっている。
【0042】
前記クレードル20には、前記ネジ91〜94をネジ止めするためのメネジ穴が形成されている。また、前記メネジ穴の位置においては、クレードル20の内側の部分に溶接等によって肉盛りが施され、強度が確保されている。
【0043】
バック部22は、取付けのための前記ネジ93,94(図4)を緩めることで、切欠き部63及び長孔部61に沿って所定のストローク範囲で移動させることができる。これは、前記フロントローラ18−ミドルローラ16間のゲージ、及びサードローラ15−バックローラ14間のゲージを一定に保ったまま、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを変更できることを意味する。
【0044】
バック部22をフロント部21へ近づく方向へ移動させていくと、図4に示すように、前記突合せ部62の当て面がフロント部21に接触した状態となり、それ以上のフロント部21側への移動が阻止される。これによって、バック部22の前記ストローク範囲の一端が規定される。なお、この状態では、図4の鎖線で囲った部分の拡大図である図5に示すように、前記長孔部61に挿通されているネジ94の軸部79は、当該長孔部61の長手方向中途部に位置する。
【0045】
そして、バック部22がストローク範囲の一端に位置している図4の状態では、予め定められた第1ピッチ(ゲージ)P1がミドルローラ16−サードローラ15間において実現されるように、各ローラ支持部74,75,76,78の位置、及び突合せ部62の当て面の位置等が定められている。
【0046】
一方、バック部22をフロント部21から離れる方向へ移動させていくと、図6の状態となったときに、前記長孔部61の一端に、当該長孔部61に挿通されているネジ94の軸部79が接触した状態となる(図6の鎖線で囲った部分の拡大図である図7を参照)。これにより、フロント部21から離れる方向へのバック部22の移動が阻止され、バック部22の前記ストローク範囲の他端が規定される。
【0047】
そして、このバック部22がストローク範囲の他端に位置している図6の状態では、予め定められた第2ピッチ(ゲージ)P2がミドルローラ16−サードローラ15間において実現されるように、各ローラ支持部74,75,76,78、前記長孔部61及びネジ94の位置等が定められている。また、この第2ピッチP2は、バック部22が前記ストローク範囲の反対側の端部に位置しているときの前記第1ピッチP1(図4)より大きくなるように設定されている。
【0048】
従って、バック部22を移動させて、そのストローク範囲の一端又は他端の何れかにバック部22を位置させて前記ネジを締める簡単な作業により、予め定められた第1ピッチP1及び第2ピッチP2の何れかをミドルローラ16−サードローラ15間のゲージとして得ることができる。特に、2つのピッチP1,P2はバック部22のストローク範囲の両端に定められているから、バック部22をストローク範囲の途中の位置に厳密に調整する煩雑な作業が不要になるとともに、所望のピッチを再現性良く得ることができる。
【0049】
図3に示すように、フロント部21にはバック部22に向かって突出する凸部71が設けられるとともに、この凸部71に対応する位置においてバック部22には凹部が設けられている。フロント部21の凸部71の部分には、基準表示部としての基準線64が備えられている。一方、バック部22において前記凹部の脇の部分には、位置表示部としての長ゲージ線65と短ゲージ線67が備えられている。長ゲージ線65及び短ゲージ線67の近傍には、それぞれ長ゲージ表示部66及び短ゲージ表示部68が備えられている。2つの表示部66,68には、実際のミドルローラ16−サードローラ15間のゲージ(第1ピッチP1及び第2ピッチP2)が、例えばmm単位の数値で直接表示されている。
【0050】
そして、バック部22を前記ストローク範囲の一端に移動させると、基準線64が短ゲージ線67と図4のように一致し、一方、ストローク範囲の他端では、基準線64が長ゲージ線65と図6のように一致するように、基準線64、長ゲージ線65及び短ゲージ線67の位置が定められている。従って、基準線64と2つのゲージ線67,65の位置関係を読み取ることで、前記バック部22がストローク範囲の端部に位置しているか否かを簡単に確認することができる。
【0051】
ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージ変更作業は、以下のようにして行う。即ち、図8に示すようにクレードル20を開いた状態とし、工具を使用して、バック部22を固定しているネジ93,94を緩める。そしてバック部22を、そのストローク範囲の一端から他端まで移動させ、再びネジ93,94を締めて固定する。なお、図2に示すミドルボトムローラ26−サードボトムローラ25間のゲージ変更作業も、クレードル20を開いた状態で適宜行う。その後、クレードル20を閉じて、ピッチ変更作業を完了する。
【0052】
なお、このピッチ変更作業は、図8に示すように、各トップローラ14,15,16,18をサイドプレート70の各ローラ支持部74,75,76,78に保持した状態で行うことができる。従って、トップローラ14,15,16,18を外して再び取り付ける作業が不要になり、ゲージ変更作業が容易になる。
【0053】
なお、バック部22の移動時には、サードローラ15及びバックローラ14もバック部22とともに同時に移動することになる。従って、クレードル20に備えられる前記スプリングボックスは、サードローラ15やバックローラ14が移動しても常に適切な付勢力を付与できるように、その付勢力の作用位置を予め調整しておくこととする。
【0054】
一方、サードローラ15−バックローラ14間のピッチ変更は、バック部22の交換が必要になるので、以下のようにして行う。
【0055】
即ち、最初にクレードル20を開いた状態として、サードローラ15及びバックローラ14(図2を参照)を、バック部22のローラ支持部75,74から取り外す。次に、工具を使用して、切欠き部63の部分でバック部22をネジ止めしているネジ93(図4を参照)を適宜緩める。また、長孔部61の部分でバック部22をネジ止めしているネジ94を取り外しておく。
【0056】
そして、図9の状態から矢印で示すように、バック部22をフロント部21から離れる方向に引き抜く。すると、切欠き部63の開放側の一端から前記ネジ93の軸部が抜けるので、ネジ93をクレードル20側に取り付けた状態で残したまま、バック部22をクレードル20から簡単に取り外すことができる。
【0057】
そして、図10に示すように、以前のバック部22とはサードローラ15−バックローラ14間のピッチ(ゲージ)が異なっているバック部22Xを、その切欠き部63に前記ネジ93の軸部が差し込まれるようにしてセットし、長孔部61に前記ネジ94を再び挿通する。そして、ネジ93,94を緩めた状態のままで、バック部22Xをそのストローク範囲の一端又は他端に位置させる。その後、ネジ93,94を締めて、バック部22Xをクレードル20に対し固定する。
【0058】
なお、このピッチ変更作業は、図9及び図10に示すように、フロント部21の交換は不要で、かつ、フロント部21側のトップローラ18,16を各ローラ支持部78,76に保持した状態で行うことができる。従って、各種部品を外して再び取り付ける作業が不要になるので、ゲージ変更作業が容易になる。
【0059】
なお、前記ネジ93の近傍には、例えばトップローラ14,15,16,18の表面を清掃するクリーナ等の各種機構が配置されているので、ネジ93の取付け/取外しのための作業空間を確保できない場合が多い。この点、本実施形態のバック部22(22X)は、開放部を有する長孔状の切欠き部63を備えた構成となっている。従って、ドライバー等の工具をネジ93の頭部のネジ溝に差し込んで当該ネジ93を緩めておきさえすれば、ネジ93をクレードル20から完全に取り外さなくても、前記開放部を介して当該ネジ93の軸部を切欠き部63に差し込んだり抜いたりすることができる。従って、バック部22の交換を簡単に行うことができる。
【0060】
以上に示すように、本実施形態のドラフト装置7において、複数のドラフトローラ(トップローラ14,15,16,18)を位置決めするために用いられるサイドプレート70は、以下のように構成されている。即ち、このサイドプレート70は、ドラフト装置7への取付位置が固定される固定部としてのフロント部21と、ドラフト装置7に対する位置を所定のストローク範囲内で変えることができる移動部としてのバック部22と、に分割して構成されている。フロント部21は、フロントローラ支持部78及びミドルローラ支持部76を備える。また、バック部22は、サードローラ支持部75及びローラ支持部74を備える。バック部22が前記ストローク範囲の一端に位置しているときは(図4)、フロント部21側のミドルローラ16とバック部22側のサードローラ15との間で、予め定められた第1ピッチP1が実現される。バック部22が前記ストローク範囲の他端に位置しているときは(図6)、フロント部21側のミドルローラ16とバック部22側のサードローラ15との間で、前記第1ピッチP1と異なる予め定められた第2ピッチP2が実現される。
【0061】
この構成により、バック部22の取付位置をそのストローク範囲の一端か他端かで異ならせることで、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを簡単に変更できる。また、バック部22をストローク範囲の一端又は他端に位置させることで第1ピッチP1又は第2ピッチP2が正確に実現されるから、バック部22の位置の厳密な調整作業が不要になり、この点でもゲージ変更作業が簡単になる。また、図8に示すように、サイドプレート70に保持されているトップローラ14,15,16,18を取り外すことなくゲージ調整を行うことができる。従って、ゲージ変更作業の手間と時間を軽減できる。
【0062】
また本実施形態のサイドプレート70においては、バック部22はサードローラ支持部75と、バックローラ支持部74と、を備える。そして、バック部22を移動させるとサードローラ支持部75及びバックローラ支持部74が一体的に移動するように構成されている。
【0063】
この構成により、バック部22を移動させるだけで、サードローラ15−バックローラ14間のゲージを保ったまま、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを簡単に変更することができる。従って、ゲージ変更作業の効率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態のサイドプレート70は、図9及び図10に示すように、フロント部21をドラフト装置7に固定した状態で、前記バック部22を、ローラ支持部間の間隔が異なる他のバック部22Xと交換可能に構成している。
【0065】
この構成により、サードローラ15−バックローラ14間のゲージを変更したい場合でも、フロント部21はそのままドラフト装置7へ固定しておき、バック部22を取り替えるだけで良いことになる。また、フロントローラ18とミドルローラ16をフロント部21側に保持した状態でバック部22を交換することができる。従って、ゲージ変更作業を効率的に行える。更に、フロント部21を共通として、バック部22の移動及び交換だけで各種のゲージ変更に対応することができる。従って、サイドプレート70の材料費や金型製作費等の製造コストを低減できる。
【0066】
また、本実施形態において、前記バック部22は突合せ部62の部分に当て面を備えており、この当て面がフロント部21と図4のように接触することで、前記バック部22が前記ストローク範囲の端部に位置決めされるようになっている。
【0067】
これにより、簡単な構成で、前記第1ピッチP1を再現性良く得ることができる。
【0068】
また、本実施形態において、前記バック部22には長孔部61が備えられており、この長孔部61の端部によって、前記バック部22が図6及び図7のように前記ストローク範囲の端部に位置決めされるようになっている。
【0069】
これにより、簡単な構成で、前記第2ピッチP2を再現性良く得ることができる。
【0070】
また、本実施形態において、前記バック部22は一端が開放された長孔としての切欠き部63を備え、この切欠き部63にネジ93の軸部が挿通された状態で前記クレードル20に取り付けられている。
【0071】
この構成により、バック部22の交換の際に、図9に示すように、ネジ93をドラフト装置7に捩じ込んで付けた状態のまま、バック部22をドラフト装置7から外すことができる。従って、ネジ93の取付け/取外しの作業を省略できるので、バック部22の交換作業が容易になる。
【0072】
また、本実施形態においては、前記フロント部21は基準線64を備え、前記バック部22は2つのゲージ線65,67を備える。そして、図4や図6に示すように、バック部22が前記ストローク範囲の端部に位置しているときは、基準線64が2つの前記ゲージ線65,67の何れかと一致するようになっている。
【0073】
この構成により、基準線64とゲージ線65,67を読み取ることで、バック部22が確実にストローク範囲の端部に位置しているか否かを容易に確認することができる。
【0074】
また、本実施形態においては、前記バック部22において、それぞれのゲージ線65,67の近傍に表示部66,68が設けられ、この表示部66,68の部分に、前記第1ピッチP1及び前記第2ピッチP2が数字で表示されている。
【0075】
この構成により、ミドルローラ16−サードローラ15間のゲージを簡単に知ることができる。
【0076】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は例えば以下のように変更することができる。
【0077】
バック部22は、ドラフト装置7に対し直接取り付けられる場合に限定されない。例えば、ドラフト装置7に固定されたフロント部21に対し、バック部22を所定のストローク範囲で移動可能に取り付けることもできる。
【0078】
上記実施形態のバック部22は、貫通状の長孔部61の端部によって位置決めを行うように構成している。しかしながらこれに限定されず、例えばバック部22のドラフト装置7側を向く面に非貫通状の溝を凹設する一方、ドラフト装置7からピンを突出させて前記溝に挿入し、このピンが溝の端部に当たることでバック部22の位置決めを実現することもできる。
【0079】
また、バック部22からピンを突設して、このピンが、フロント部21に設けた長孔又は溝に挿入されるようにし、当該長孔や溝の端部にピンが接触することでバック部22の位置決めを実現することもできる。
【0080】
直線状の基準線64やゲージ線65,67の代わりに、例えば小さな円形や三角形のマーク等を基準表示部及び位置表示部として備えることができる。
【0081】
上記実施形態のサイドプレート70は、4線式のドラフト装置の場合に限らず、例えば5線式やそれ以外の方式のドラフト装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図。
【図2】ドラフト装置の様子を示す側面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るサイドプレートの全体図。
【図4】バック部がストローク範囲の一端に位置している様子を示す側面図。
【図5】図4の鎖線で囲った部分を示す拡大図。
【図6】バック部がストローク範囲の他端に位置している様子を示す側面図。
【図7】図6の鎖線で囲った部分を示す拡大図。
【図8】ミドルローラ−サードローラ間のゲージ変更作業を説明する側面図。
【図9】サイドプレートのバック部を交換のために取り外す作業を説明する側面図。
【図10】新しいバック部を取り付ける作業を説明する側面図。
【符号の説明】
【0083】
14 バックローラ
15 サードローラ
16 ミドルローラ
18 フロントローラ
20 クレードル
21 フロント部(固定部)
22,22X バック部(移動部)
23 クレードルハンドル
61 長孔部
62 突合せ部
63 切欠き部
70 サイドプレート
79 ネジの軸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフト装置の複数のドラフトローラを位置決めするために用いられるサイドプレートにおいて、
ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置への取付位置が固定される固定部と、
ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置に対する位置を所定のストローク範囲内で変えることができる移動部と、
を備え、
前記移動部が前記ストローク範囲の一端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に予め定められた第1ピッチが実現され、
前記移動部が前記ストローク範囲の他端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に前記第1ピッチと異なる予め定められた第2ピッチが実現されることを特徴とするサイドプレート。
【請求項2】
請求項1に記載のサイドプレートであって、
前記移動部は複数のローラ支持部を備え、
前記移動部を移動させると前記複数のローラ支持部が一体的に移動することを特徴とするサイドプレート。
【請求項3】
請求項2に記載のサイドプレートであって、
前記固定部をドラフト装置に固定した状態で、前記移動部を、ローラ支持部の間隔が異なる他の移動部と交換可能に構成したことを特徴とするサイドプレート。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記移動部は当て面を備えており、この当て面が前記固定部と接触することで、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることを特徴とするサイドプレート。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記固定部又は前記移動部の少なくとも何れか一方に長孔又は溝が備えられており、この長孔又は溝の端部によって、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることを特徴とするサイドプレート。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記移動部は一端が開放された長孔を備え、この長孔に取付部材の軸部が挿通された状態で前記移動部が前記ドラフト装置又は前記固定部に取り付けられることを特徴とするサイドプレート。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記固定部は基準表示部を備え、
前記移動部は2つの位置表示部を備え、
前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置しているときに、前記基準表示部が2つの前記位置表示部の何れかと一致するように構成したことを特徴とするサイドプレート。
【請求項8】
請求項7に記載のサイドプレートであって、
前記移動部において、それぞれの前記位置表示部の近傍に、前記第1ピッチ及び前記第2ピッチが数字で表示されていることを特徴とするサイドプレート。
【請求項9】
請求項1から8までに記載のサイドプレートを備えるドラフト装置。
【請求項10】
請求項9に記載のドラフト装置を備える繊維機械。
【請求項1】
ドラフト装置の複数のドラフトローラを位置決めするために用いられるサイドプレートにおいて、
ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置への取付位置が固定される固定部と、
ドラフトローラを支持するローラ支持部を備えるとともに、ドラフト装置に対する位置を所定のストローク範囲内で変えることができる移動部と、
を備え、
前記移動部が前記ストローク範囲の一端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に予め定められた第1ピッチが実現され、
前記移動部が前記ストローク範囲の他端に位置しているときは、固定部側のドラフトローラと移動部側のドラフトローラとの間に前記第1ピッチと異なる予め定められた第2ピッチが実現されることを特徴とするサイドプレート。
【請求項2】
請求項1に記載のサイドプレートであって、
前記移動部は複数のローラ支持部を備え、
前記移動部を移動させると前記複数のローラ支持部が一体的に移動することを特徴とするサイドプレート。
【請求項3】
請求項2に記載のサイドプレートであって、
前記固定部をドラフト装置に固定した状態で、前記移動部を、ローラ支持部の間隔が異なる他の移動部と交換可能に構成したことを特徴とするサイドプレート。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記移動部は当て面を備えており、この当て面が前記固定部と接触することで、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることを特徴とするサイドプレート。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記固定部又は前記移動部の少なくとも何れか一方に長孔又は溝が備えられており、この長孔又は溝の端部によって、前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置決めされることを特徴とするサイドプレート。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記移動部は一端が開放された長孔を備え、この長孔に取付部材の軸部が挿通された状態で前記移動部が前記ドラフト装置又は前記固定部に取り付けられることを特徴とするサイドプレート。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のサイドプレートであって、
前記固定部は基準表示部を備え、
前記移動部は2つの位置表示部を備え、
前記移動部が前記ストローク範囲の端部に位置しているときに、前記基準表示部が2つの前記位置表示部の何れかと一致するように構成したことを特徴とするサイドプレート。
【請求項8】
請求項7に記載のサイドプレートであって、
前記移動部において、それぞれの前記位置表示部の近傍に、前記第1ピッチ及び前記第2ピッチが数字で表示されていることを特徴とするサイドプレート。
【請求項9】
請求項1から8までに記載のサイドプレートを備えるドラフト装置。
【請求項10】
請求項9に記載のドラフト装置を備える繊維機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−1928(P2009−1928A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162645(P2007−162645)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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