サイレントチェーン
【課題】チェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して円滑に摺接走行するとともにフリクションロスを減少して優れた耐摩耗性を発揮するサイレントチェーンを提供すること。
【解決手段】チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁Wが、チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに連結ピン120からプレート背面111bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレート110で編成されているサイレントチェーン100。
【解決手段】チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁Wが、チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに連結ピン120からプレート背面111bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレート110で編成されているサイレントチェーン100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、産業機械等の動力伝達機構、搬送機構などに用いられるサイレントチェーンに関するものであって、特に、チェーンガイドとの摺接摩耗を抑制するサイレントチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結してなるサイレントチェーンとして、ガイド列プレートとガイドプレートとの背面がチェーン伸展時に略同一平面内に位置する平坦面に形成され、残りの関節列プレートの背面が前記平坦面より低い高さに形成されているとともに、ガイドプレートの背面の高さがガイド列プレートの背面よりやや低く形成されているサイレントチェーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3122072号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のサイレントチェーンは、チェーン走行時の摩擦抵抗を減少させるために、チェーン外周側に配置されたチェーンガイドなどのシュー面と摺接しているチェーン背面全体の面積を少なくしているが、シュー面との接触面積を少なくすると、接触面積あたりの接触圧が増大して両者の接触摩耗が加速度的に増大するため、耐久性を著しく損なうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、前述した従来技術の問題を解決するものであって、チェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して円滑に摺接走行するとともにフリクションロスを減少して優れた耐摩耗性を発揮するサイレントチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本請求項1に係る発明は、多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結して前記リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するサイレントチェーンにおいて、前記チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁が、前記チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに前記連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0006】
そして、本請求項2には、請求項1に係るサイレントチェーンの構成に加えて、前記背面高さの高いリンクプレートが、前記チェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面で構成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のサイレントチェーンは、多数のリンクプレートが連結ピンで無端状に連結していることにより、リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0008】
すなわち、本請求項1に係るサイレントチェーンは、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁がチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることにより、チェーン走行ライン付近に存在する潤滑油がこのV字状油誘導壁に沿ってチェーン外周側に配置したチェーンガイドとチェーン背面との間に順次誘導されてくるため、チェーンガイドとチェーン背面との間のフリクションを低減してチェーンガイドに対する円滑な摺接走行を達成することができるとともに優れた耐摩耗性を発揮することができる。
【0009】
そして、本請求項2に係るサイレントチェーンは、請求項1に係るサイレントチェーンが奏する効果に加えて、背面高さの高いリンクプレートがチェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面で構成されていることにより、チェーンガイドとチェーン背面との間の接触面積が大幅に低減するため、チェーンガイドに対してさらに一段と円滑な摺接走行を達成してフリクションロスを大幅に減少させることができるとともに、この円弧状に膨出したプレート背面がチェーンガイドの摺接面との間で潤滑油を走行しながら順次飲み込んで摺接するため、優れた耐摩耗性をさらに一段と発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のサイレントチェーンは、多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結して前記リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するものであって、前記チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁がチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに前記連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成され、チェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して円滑に摺接走行するとともにフリクションロスを減少して優れた耐摩耗性を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても良い。
【0011】
たとえば、本発明のサイレントチェーンで用いるリンクプレートのリンク歯は、チェーン内周側でスプロケットと噛み合う形状であれば、スプロケットのスプロケット歯と外側フランクと称する外側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座するもの、スプロケットのスプロケット歯と内側フランクと称する内側歯面で噛み合い開始して内側歯面で着座するもの、スプロケットのスプロケット歯と内側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座するものの、いずれであっても良いが、スプロケットのスプロケット歯と内側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座するものの場合には、スプロケットとの噛み合い時に生じる噛み合い騒音を著しく低減することができる。
【0012】
さらに、本発明のサイレントチェーンで用いる背面高さの高いリンクプレートのプレート背面は、通常のプレス打ち抜き加工した状態のもの、あるいは、その後加工としてシェービング加工を施したもの、ファインブランキング加工を施したものなどのいずれであっても良いが、シェービング加工を施したもの、ファインブランキング加工を施したものを採用した場合は、チェーンガイドとの摺接抵抗を大幅に低減するため、チェーンガイドに対して円滑な摺接走行を達成することができるとともに優れた耐摩耗性を発揮することができる。
【0013】
また、本発明のサイレントチェーンで用いる背面高さの高いリンクプレートのプレート背面は、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁を突出形成することができる形状であれば良く、チェーン外周側に向けて円弧状に膨出した形状であっても良く、チェーン外周側に向けて平坦面状に膨出した形状であっても良い。
さらに、前述したV字状油誘導壁Wの設置間隔は、チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されていれば良く、リンクプレート二枚分置きの離間間隔、リンクプレート三枚分置きの離間間隔、あるいは、それ以上の離間間隔であっても良く、それらの離間間隔をランダムに組み合わせたものであっても良い。
【0014】
加えて、前述したV字状油誘導壁Wを突出形成する背面高さの高いリンクプレートの編成形態については、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚して潤滑油をチェーン背面におけるチェーン幅中央部分に掻き集めることができる編成形態であれば良く、背面高さの高いリンクプレートがチェーン全幅で相互に半ピッチずらした配列状態で順次配置することにより形成されるV字状編成形態であれば、V字状編成形態が鋭角なV字状であっても緩やかなV字状であってもコの字状に近いV字状であっても何ら構わない。
【0015】
また、本発明のサイレントチェーンで用いる連結ピンは、多数のリンクプレートを無端状に連結するピンであれば良く、丸ピンであっても良く、ロッカージョイントピンであっても何ら差し支えない。
【実施例】
【0016】
本発明の一実施例であるサイレントチェーンを図1乃至図13に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施例であるサイレントチェーンの使用態様を示す図であり、図2は、図1に示すサイレントチェーンを拡大した斜視図であり、図3は、図2に示すサイレントチェーンのチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図であり、図4は、図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが低いリンクプレートを示す図であり、図5は、図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが高いリンクプレートを示す図であり、図6は、図3のA−A断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図であり、
図7は、図3のB−B断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図であり、図8は、図3に示すリンクプレート配列状態の第1変形例を説明する図であり、図9は、図3に示すリンクプレート配列状態の第2変形例を説明する図であり、図10は、本発明の第2実施例であるサイレントチェーンを拡大した斜視図であり、図11は、図10に示すサイレントチェーンのチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図であり、図12は、図10のサイレントチェーンで用いた背面高さが低いリンクプレートを示す図であり、図13は、図10のサイレントチェーンで用いた背面高さが高いリンクプレートを示す図である。
【0017】
まず、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100は、図1に示すような自動車エンジンのタイミングシステムに用いるものであって、図2に示すようなインナープレート111とガイドプレート112からなる多数のリンクプレート110を丸ピンからなる連結ピン120で無端状に連結されている。
そして、リンクプレート110の一部を構成するインナープレート111のリンク歯111aがチェーン内周側で駆動スプロケットS1、従動スプロケットS2と噛み合うとともに、インナープレート111の平坦面状を呈したプレート背面111bとガイドプレート112の平坦面状を呈したプレート背面112bとで構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドGに対して摺接走行するものである。
ここで、前述したリンクプレート110のプレート背面に、通常のプレス打ち抜き加工の後加工としてシェービング加工を施したものを採用すると、チェーンガイドとの摺接抵抗を低減されることは言うまでもない。
【0018】
なお、図1には、本実施例のサイレントチェーン100が摺接走行するチェーンガイドGとして、テンショナTpと協動しながら揺動自在に摺接して最適なチェーン張力に調整する可動ガイドTgとチェーン軌道に沿って走行案内する固定ガイドFgがそれぞれ配置されている。
また、図1における符号S1は、クランク軸側に配置した駆動スプロケットであり、符号S2は、カム軸側に配置した従動スプロケットであり、矢印は、駆動スプロケットS1と従動スプロケットS2の回転方向であってチェーン走行方向を示唆している。
そして、本実施例のサイレントチェーン100は、駆動スプロケットS1と従動スプロケットS2のスプロケット歯と内側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座する噛み合い動作を呈するものであって、噛み合い時に生じる噛み合い騒音を著しく低減するようになっている。
【0019】
そこで、本実施例のサイレントチェーン100が最も特徴としているチェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するように形成されたV字状油誘導壁Wについて、以下に詳しく説明する。
すなわち、V字状油誘導壁Wは、図2乃至図3に示すようにチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに、チェーン走行方向に沿って多段階状に形成されている。
そして、このV字状油誘導壁Wは、図4乃至図5に示すような連結ピン120からプレート背面111bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレート110を用いることによって形成され、図5に示すような背面高さの高いリンクプレート110の一部を構成するチェーン外周側に向けて平坦面状に膨出した形状を備えたインナープレート111をチェーン全幅で相互に半ピッチずらした配列状態で順次配置することによって編成されている。
【0020】
また、図2乃至図3に示すように、本実施例のサイレントチェーン100では、背面高さの高いリンクプレート110の一部としてチェーン外周側に向けて平坦面状に膨出した形状を備えたガイドプレート112を用いていることも言うまでもない。換言すれば、本実施例のサイレントチェーン100では、プレート背面112bまでの背面高さを異ならしめた2種類のガイドプレート112を用いている。
なお、図3に示す点線の矢印は、チェーンガイドGと摺接走行する際に生じる潤滑油の流れである。図3では、背面高さの高いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを梨地状色調で、他方、表示背面高さの低いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを無地状色調でそれぞれ表示することにより、発明のより良く理解するための両者の区別が便宜的に視認できるようになっている。
また、図5における仮想線は、図4に示すインナープレート111の背面高さを投影した線である。
【0021】
このようにして得られた本実施例のサイレントチェーン100は、上述したようなテンショナTpと協動しながら揺動自在に摺接して最適なチェーン張力に調整する可動ガイドTg、もしくは、チェーン軌道に沿って走行案内する固定ガイドFgからなるチェーンガイドGと摺接走行する際に、図6乃至図7に示すような摺接走行状態となる。
すわなち、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するように形成されたV字状油誘導壁Wが、図6と図7に示すような摺接走行状態を走行しながら順次繰り返してチェーンガイドGの摺接面との間でチェーン走行ライン付近に存在する潤滑油を確保ながら摺接するようになっている。
【0022】
また、本実施例のサイレントチェーン100におけるV字状油誘導壁Wでは、図3に示したように、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁Wがチェーン背面上にチェーン走行方向にリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているが、図8乃至図9に示すようなリンクプレート配列状態であっても何ら構わない。
なお、図8乃至図9に示す点線の矢印は、チェーンガイドGと摺接走行する際に生じる潤滑油の流れである。さらに、図8乃至図9では、背面高さの高いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを梨地状色調で、他方、表示背面高さの低いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを無地状色調でそれぞれ表示することにより、発明のより良く理解するための両者の区別が便宜的に視認できるようになっている。
【0023】
したがって、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100は、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁Wがチェーン背面上にチェーン走行方向にリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに連結ピン120からプレート背面111bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることにより、チェーン走行ライン付近に存在する潤滑油がこのV字状油誘導壁Wに沿ってチェーン外周側に配置したチェーンガイドGとチェーン背面との間に順次誘導されてくるため、チェーンガイドGとチェーン背面との間のフリクションを低減してチェーンガイドGに対して円滑な摺接走行を達成することができるとともに優れた耐摩耗性を発揮することができるなど、その効果は甚大である。
【0024】
つぎに、本発明の第2実施例であるサイレントチェーン200について、図10乃至図13に基づいて以下に説明する。
すなわち、本発明の第2実施例であるサイレントチェーン200は、前述した本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100と基本的な構造において何ら変わることが無く同じであるため、その基本的な構造については図中に示す符号の100番台を200番台に読み替えることによってその説明を省略し、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100と異なっている部分のみ以下に説明する。
【0025】
本実施例のサイレントチェーン200は、図10に示すようなインナープレート211とガイドプレート212からなる多数のリンクプレート210を丸ピンからなる連結ピン220で無端状に連結されている。
そこで、本実施例のサイレントチェーン200におけるV字状油誘導壁Wは、図10乃至図11に示すようにチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに、チェーン走行方向に沿って多段階状に形成されている。
【0026】
そして、このV字状油誘導壁Wは、図12乃至図13に示すような連結ピン220からプレート背面211bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレート210を用いることによって形成され、図13に示すような背面高さの高いリンクプレート210の一部を構成するチェーン外周側に向けて円弧状に膨出した形状を備えたインナープレート211をチェーン全幅で相互に半ピッチずらした配列状態で順次配置することによって編成されている。
【0027】
また、図10乃至図11に示すように、本実施例のサイレントチェーン200では、背面高さの高いリンクプレート210の一部としてチェーン外周側に向けて円弧状に膨出した形状を備えたガイドプレート212を用いていることも言うまでもない。換言すれば、本実施例のサイレントチェーン200では、プレート背面212bまでの背面高さを異ならしめた2種類のガイドプレート212を用いている。
なお、図11に示す点線の矢印は、チェーンガイドGと摺接走行する際に生じる潤滑油の流れである。図11では、背面高さの高いインナープレート211のプレート背面211bとガイドプレート212のプレート背面212bを梨地状色調で、他方、表示背面高さの低いインナープレート211のプレート背面211bとガイドプレート212のプレート背面212bを無地状色調でそれぞれ表示することにより、発明のより良く理解するための両者の区別が便宜的に視認できるようになっている。
また、図13における仮想線は、図12に示すインナープレート211の背面高さを投影した線である。
【0028】
したがって、本発明の第2実施例であるサイレントチェーン200は、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100が奏する効果に加えて、背面高さの高いリンクプレート210がチェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面211bで構成されていることにより、チェーンガイドGとチェーン背面との間の接触面積が大幅に低減するため、チェーンガイドGに対してさらに一段と円滑な摺接走行を達成してフリクションロスを大幅に減少させることができるとともに、この円弧状に膨出したプレート背面211bがチェーンガイドGの摺接面との間で潤滑油を走行しながら順次飲み込んで摺接するため、優れた耐摩耗性をさらに一段と発揮することができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施例であるサイレントチェーンの使用態様を示す図。
【図2】図1に示すサイレントチェーンを拡大した斜視図。
【図3】図2のチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図。
【図4】図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが低いリンクプレートを示す図。
【図5】図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが高いリンクプレートを示す図。
【図6】図3のA−A断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図。
【図7】図3のB−B断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図。
【図8】図3に示すリンクプレート配列状態の第1変形例を説明する図。
【図9】図3に示すリンクプレート配列状態の第2変形例を説明する図。
【図10】本発明の第2実施例であるサイレントチェーンを拡大した斜視図。
【図11】図10のチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図。
【図12】図10の背面高さが低いリンクプレートを示す図。
【図13】図10の背面高さが高いリンクプレートを示す図。
【符号の説明】
【0030】
100 ,200 ・・・サイレントチェーン
110 ,210 ・・・リンクプレート
111 ,211 ・・・インナープレート
111a,211a ・・・リンク歯
111b,211b ・・・プレート背面
112 ,212 ・・・ガイドプレート
112b,212b ・・・プレート背面
120 ,220 ・・・連結ピン
S1・・・駆動スプロケット
S2・・・従動スプロケット
Tp・・・テンショナ
G ・・・チェーンガイド
Tg・・・可動ガイド
Fg・・・固定ガイド
W ・・・V字状油誘導壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、産業機械等の動力伝達機構、搬送機構などに用いられるサイレントチェーンに関するものであって、特に、チェーンガイドとの摺接摩耗を抑制するサイレントチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結してなるサイレントチェーンとして、ガイド列プレートとガイドプレートとの背面がチェーン伸展時に略同一平面内に位置する平坦面に形成され、残りの関節列プレートの背面が前記平坦面より低い高さに形成されているとともに、ガイドプレートの背面の高さがガイド列プレートの背面よりやや低く形成されているサイレントチェーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3122072号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のサイレントチェーンは、チェーン走行時の摩擦抵抗を減少させるために、チェーン外周側に配置されたチェーンガイドなどのシュー面と摺接しているチェーン背面全体の面積を少なくしているが、シュー面との接触面積を少なくすると、接触面積あたりの接触圧が増大して両者の接触摩耗が加速度的に増大するため、耐久性を著しく損なうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、前述した従来技術の問題を解決するものであって、チェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して円滑に摺接走行するとともにフリクションロスを減少して優れた耐摩耗性を発揮するサイレントチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本請求項1に係る発明は、多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結して前記リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するサイレントチェーンにおいて、前記チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁が、前記チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに前記連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0006】
そして、本請求項2には、請求項1に係るサイレントチェーンの構成に加えて、前記背面高さの高いリンクプレートが、前記チェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面で構成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のサイレントチェーンは、多数のリンクプレートが連結ピンで無端状に連結していることにより、リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0008】
すなわち、本請求項1に係るサイレントチェーンは、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁がチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることにより、チェーン走行ライン付近に存在する潤滑油がこのV字状油誘導壁に沿ってチェーン外周側に配置したチェーンガイドとチェーン背面との間に順次誘導されてくるため、チェーンガイドとチェーン背面との間のフリクションを低減してチェーンガイドに対する円滑な摺接走行を達成することができるとともに優れた耐摩耗性を発揮することができる。
【0009】
そして、本請求項2に係るサイレントチェーンは、請求項1に係るサイレントチェーンが奏する効果に加えて、背面高さの高いリンクプレートがチェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面で構成されていることにより、チェーンガイドとチェーン背面との間の接触面積が大幅に低減するため、チェーンガイドに対してさらに一段と円滑な摺接走行を達成してフリクションロスを大幅に減少させることができるとともに、この円弧状に膨出したプレート背面がチェーンガイドの摺接面との間で潤滑油を走行しながら順次飲み込んで摺接するため、優れた耐摩耗性をさらに一段と発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のサイレントチェーンは、多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結して前記リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するものであって、前記チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁がチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに前記連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成され、チェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して円滑に摺接走行するとともにフリクションロスを減少して優れた耐摩耗性を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても良い。
【0011】
たとえば、本発明のサイレントチェーンで用いるリンクプレートのリンク歯は、チェーン内周側でスプロケットと噛み合う形状であれば、スプロケットのスプロケット歯と外側フランクと称する外側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座するもの、スプロケットのスプロケット歯と内側フランクと称する内側歯面で噛み合い開始して内側歯面で着座するもの、スプロケットのスプロケット歯と内側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座するものの、いずれであっても良いが、スプロケットのスプロケット歯と内側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座するものの場合には、スプロケットとの噛み合い時に生じる噛み合い騒音を著しく低減することができる。
【0012】
さらに、本発明のサイレントチェーンで用いる背面高さの高いリンクプレートのプレート背面は、通常のプレス打ち抜き加工した状態のもの、あるいは、その後加工としてシェービング加工を施したもの、ファインブランキング加工を施したものなどのいずれであっても良いが、シェービング加工を施したもの、ファインブランキング加工を施したものを採用した場合は、チェーンガイドとの摺接抵抗を大幅に低減するため、チェーンガイドに対して円滑な摺接走行を達成することができるとともに優れた耐摩耗性を発揮することができる。
【0013】
また、本発明のサイレントチェーンで用いる背面高さの高いリンクプレートのプレート背面は、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁を突出形成することができる形状であれば良く、チェーン外周側に向けて円弧状に膨出した形状であっても良く、チェーン外周側に向けて平坦面状に膨出した形状であっても良い。
さらに、前述したV字状油誘導壁Wの設置間隔は、チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されていれば良く、リンクプレート二枚分置きの離間間隔、リンクプレート三枚分置きの離間間隔、あるいは、それ以上の離間間隔であっても良く、それらの離間間隔をランダムに組み合わせたものであっても良い。
【0014】
加えて、前述したV字状油誘導壁Wを突出形成する背面高さの高いリンクプレートの編成形態については、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚して潤滑油をチェーン背面におけるチェーン幅中央部分に掻き集めることができる編成形態であれば良く、背面高さの高いリンクプレートがチェーン全幅で相互に半ピッチずらした配列状態で順次配置することにより形成されるV字状編成形態であれば、V字状編成形態が鋭角なV字状であっても緩やかなV字状であってもコの字状に近いV字状であっても何ら構わない。
【0015】
また、本発明のサイレントチェーンで用いる連結ピンは、多数のリンクプレートを無端状に連結するピンであれば良く、丸ピンであっても良く、ロッカージョイントピンであっても何ら差し支えない。
【実施例】
【0016】
本発明の一実施例であるサイレントチェーンを図1乃至図13に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施例であるサイレントチェーンの使用態様を示す図であり、図2は、図1に示すサイレントチェーンを拡大した斜視図であり、図3は、図2に示すサイレントチェーンのチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図であり、図4は、図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが低いリンクプレートを示す図であり、図5は、図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが高いリンクプレートを示す図であり、図6は、図3のA−A断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図であり、
図7は、図3のB−B断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図であり、図8は、図3に示すリンクプレート配列状態の第1変形例を説明する図であり、図9は、図3に示すリンクプレート配列状態の第2変形例を説明する図であり、図10は、本発明の第2実施例であるサイレントチェーンを拡大した斜視図であり、図11は、図10に示すサイレントチェーンのチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図であり、図12は、図10のサイレントチェーンで用いた背面高さが低いリンクプレートを示す図であり、図13は、図10のサイレントチェーンで用いた背面高さが高いリンクプレートを示す図である。
【0017】
まず、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100は、図1に示すような自動車エンジンのタイミングシステムに用いるものであって、図2に示すようなインナープレート111とガイドプレート112からなる多数のリンクプレート110を丸ピンからなる連結ピン120で無端状に連結されている。
そして、リンクプレート110の一部を構成するインナープレート111のリンク歯111aがチェーン内周側で駆動スプロケットS1、従動スプロケットS2と噛み合うとともに、インナープレート111の平坦面状を呈したプレート背面111bとガイドプレート112の平坦面状を呈したプレート背面112bとで構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドGに対して摺接走行するものである。
ここで、前述したリンクプレート110のプレート背面に、通常のプレス打ち抜き加工の後加工としてシェービング加工を施したものを採用すると、チェーンガイドとの摺接抵抗を低減されることは言うまでもない。
【0018】
なお、図1には、本実施例のサイレントチェーン100が摺接走行するチェーンガイドGとして、テンショナTpと協動しながら揺動自在に摺接して最適なチェーン張力に調整する可動ガイドTgとチェーン軌道に沿って走行案内する固定ガイドFgがそれぞれ配置されている。
また、図1における符号S1は、クランク軸側に配置した駆動スプロケットであり、符号S2は、カム軸側に配置した従動スプロケットであり、矢印は、駆動スプロケットS1と従動スプロケットS2の回転方向であってチェーン走行方向を示唆している。
そして、本実施例のサイレントチェーン100は、駆動スプロケットS1と従動スプロケットS2のスプロケット歯と内側歯面で噛み合い開始して外側歯面で着座する噛み合い動作を呈するものであって、噛み合い時に生じる噛み合い騒音を著しく低減するようになっている。
【0019】
そこで、本実施例のサイレントチェーン100が最も特徴としているチェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するように形成されたV字状油誘導壁Wについて、以下に詳しく説明する。
すなわち、V字状油誘導壁Wは、図2乃至図3に示すようにチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに、チェーン走行方向に沿って多段階状に形成されている。
そして、このV字状油誘導壁Wは、図4乃至図5に示すような連結ピン120からプレート背面111bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレート110を用いることによって形成され、図5に示すような背面高さの高いリンクプレート110の一部を構成するチェーン外周側に向けて平坦面状に膨出した形状を備えたインナープレート111をチェーン全幅で相互に半ピッチずらした配列状態で順次配置することによって編成されている。
【0020】
また、図2乃至図3に示すように、本実施例のサイレントチェーン100では、背面高さの高いリンクプレート110の一部としてチェーン外周側に向けて平坦面状に膨出した形状を備えたガイドプレート112を用いていることも言うまでもない。換言すれば、本実施例のサイレントチェーン100では、プレート背面112bまでの背面高さを異ならしめた2種類のガイドプレート112を用いている。
なお、図3に示す点線の矢印は、チェーンガイドGと摺接走行する際に生じる潤滑油の流れである。図3では、背面高さの高いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを梨地状色調で、他方、表示背面高さの低いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを無地状色調でそれぞれ表示することにより、発明のより良く理解するための両者の区別が便宜的に視認できるようになっている。
また、図5における仮想線は、図4に示すインナープレート111の背面高さを投影した線である。
【0021】
このようにして得られた本実施例のサイレントチェーン100は、上述したようなテンショナTpと協動しながら揺動自在に摺接して最適なチェーン張力に調整する可動ガイドTg、もしくは、チェーン軌道に沿って走行案内する固定ガイドFgからなるチェーンガイドGと摺接走行する際に、図6乃至図7に示すような摺接走行状態となる。
すわなち、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するように形成されたV字状油誘導壁Wが、図6と図7に示すような摺接走行状態を走行しながら順次繰り返してチェーンガイドGの摺接面との間でチェーン走行ライン付近に存在する潤滑油を確保ながら摺接するようになっている。
【0022】
また、本実施例のサイレントチェーン100におけるV字状油誘導壁Wでは、図3に示したように、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁Wがチェーン背面上にチェーン走行方向にリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているが、図8乃至図9に示すようなリンクプレート配列状態であっても何ら構わない。
なお、図8乃至図9に示す点線の矢印は、チェーンガイドGと摺接走行する際に生じる潤滑油の流れである。さらに、図8乃至図9では、背面高さの高いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを梨地状色調で、他方、表示背面高さの低いインナープレート111のプレート背面111bとガイドプレート112のプレート背面112bを無地状色調でそれぞれ表示することにより、発明のより良く理解するための両者の区別が便宜的に視認できるようになっている。
【0023】
したがって、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100は、チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁Wがチェーン背面上にチェーン走行方向にリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに連結ピン120からプレート背面111bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることにより、チェーン走行ライン付近に存在する潤滑油がこのV字状油誘導壁Wに沿ってチェーン外周側に配置したチェーンガイドGとチェーン背面との間に順次誘導されてくるため、チェーンガイドGとチェーン背面との間のフリクションを低減してチェーンガイドGに対して円滑な摺接走行を達成することができるとともに優れた耐摩耗性を発揮することができるなど、その効果は甚大である。
【0024】
つぎに、本発明の第2実施例であるサイレントチェーン200について、図10乃至図13に基づいて以下に説明する。
すなわち、本発明の第2実施例であるサイレントチェーン200は、前述した本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100と基本的な構造において何ら変わることが無く同じであるため、その基本的な構造については図中に示す符号の100番台を200番台に読み替えることによってその説明を省略し、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100と異なっている部分のみ以下に説明する。
【0025】
本実施例のサイレントチェーン200は、図10に示すようなインナープレート211とガイドプレート212からなる多数のリンクプレート210を丸ピンからなる連結ピン220で無端状に連結されている。
そこで、本実施例のサイレントチェーン200におけるV字状油誘導壁Wは、図10乃至図11に示すようにチェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに、チェーン走行方向に沿って多段階状に形成されている。
【0026】
そして、このV字状油誘導壁Wは、図12乃至図13に示すような連結ピン220からプレート背面211bまでの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレート210を用いることによって形成され、図13に示すような背面高さの高いリンクプレート210の一部を構成するチェーン外周側に向けて円弧状に膨出した形状を備えたインナープレート211をチェーン全幅で相互に半ピッチずらした配列状態で順次配置することによって編成されている。
【0027】
また、図10乃至図11に示すように、本実施例のサイレントチェーン200では、背面高さの高いリンクプレート210の一部としてチェーン外周側に向けて円弧状に膨出した形状を備えたガイドプレート212を用いていることも言うまでもない。換言すれば、本実施例のサイレントチェーン200では、プレート背面212bまでの背面高さを異ならしめた2種類のガイドプレート212を用いている。
なお、図11に示す点線の矢印は、チェーンガイドGと摺接走行する際に生じる潤滑油の流れである。図11では、背面高さの高いインナープレート211のプレート背面211bとガイドプレート212のプレート背面212bを梨地状色調で、他方、表示背面高さの低いインナープレート211のプレート背面211bとガイドプレート212のプレート背面212bを無地状色調でそれぞれ表示することにより、発明のより良く理解するための両者の区別が便宜的に視認できるようになっている。
また、図13における仮想線は、図12に示すインナープレート211の背面高さを投影した線である。
【0028】
したがって、本発明の第2実施例であるサイレントチェーン200は、本発明の第1実施例であるサイレントチェーン100が奏する効果に加えて、背面高さの高いリンクプレート210がチェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面211bで構成されていることにより、チェーンガイドGとチェーン背面との間の接触面積が大幅に低減するため、チェーンガイドGに対してさらに一段と円滑な摺接走行を達成してフリクションロスを大幅に減少させることができるとともに、この円弧状に膨出したプレート背面211bがチェーンガイドGの摺接面との間で潤滑油を走行しながら順次飲み込んで摺接するため、優れた耐摩耗性をさらに一段と発揮することができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施例であるサイレントチェーンの使用態様を示す図。
【図2】図1に示すサイレントチェーンを拡大した斜視図。
【図3】図2のチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図。
【図4】図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが低いリンクプレートを示す図。
【図5】図2のサイレントチェーンで用いた背面高さが高いリンクプレートを示す図。
【図6】図3のA−A断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図。
【図7】図3のB−B断面でみたチェーンガイドとの摺接走行状態の説明図。
【図8】図3に示すリンクプレート配列状態の第1変形例を説明する図。
【図9】図3に示すリンクプレート配列状態の第2変形例を説明する図。
【図10】本発明の第2実施例であるサイレントチェーンを拡大した斜視図。
【図11】図10のチェーン背面側から見たリンクプレート配列状態の説明図。
【図12】図10の背面高さが低いリンクプレートを示す図。
【図13】図10の背面高さが高いリンクプレートを示す図。
【符号の説明】
【0030】
100 ,200 ・・・サイレントチェーン
110 ,210 ・・・リンクプレート
111 ,211 ・・・インナープレート
111a,211a ・・・リンク歯
111b,211b ・・・プレート背面
112 ,212 ・・・ガイドプレート
112b,212b ・・・プレート背面
120 ,220 ・・・連結ピン
S1・・・駆動スプロケット
S2・・・従動スプロケット
Tp・・・テンショナ
G ・・・チェーンガイド
Tg・・・可動ガイド
Fg・・・固定ガイド
W ・・・V字状油誘導壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結して前記リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するサイレントチェーンにおいて、
前記チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁が、前記チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに前記連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることを特徴とするサイレントチェーン。
【請求項2】
前記背面高さの高いリンクプレートが、前記チェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面で構成されていることを特徴とする請求項1記載のサイレントチェーン。
【請求項1】
多数のリンクプレートを連結ピンで無端状に連結して前記リンクプレートのリンク歯がチェーン内周側でスプロケットと噛み合うとともに前記リンクプレートのプレート背面で構成されるチェーン背面がチェーン外周側に配置されたチェーンガイドに対して摺接走行するサイレントチェーンにおいて、
前記チェーン背面上のチェーン全幅でチェーン走行方向に向かって開脚するV字状油誘導壁が、前記チェーン背面上にチェーン走行方向に少なくともリンクプレート一枚分置きの離間間隔で突出形成されているとともに前記連結ピンからプレート背面までの背面高さを異ならしめた2種類のリンクプレートで編成されていることを特徴とするサイレントチェーン。
【請求項2】
前記背面高さの高いリンクプレートが、前記チェーン外周側に向けて円弧状に膨出したプレート背面で構成されていることを特徴とする請求項1記載のサイレントチェーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−41630(P2009−41630A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206077(P2007−206077)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
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