説明

サスペンション修正装置、サスペンションアームの製造方法、およびサスペンションアーム

【目的】本発明は、サスペンション修正装置、サスペンションアームの製造方法、およびサスペンションアームに関し、サスペンションアームのに両側のビーム部の一方あるいは両者を微小レーザスポットで線上に1あるいは複数、走査して折り曲げ結果としてサスペンションアームをねじりロール角およびピッチ角を修正し、非接触で非機械的かつ折り曲げてロール角およびピッチ角の修正を簡易な操作で確実に実現することを目的とする。
【構成】レーザビームを照射するレーザ照射装置と、サスペンションアームのヘッドを保持するためのヘッド搭載部における2本のビーム部の一方あるいは両方に対して、レーザビームによって線上にレーザ照射を行って折り曲げるにあたり、線上のレーザ照射方向角度を制御してロール角の修正量の調整を行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置(HDDという)のデータを読み書きする磁気ヘッドスライダのロール方向の傾き角となる磁気ヘッド搭載面のロール角と、ピッチ方向の傾き角となる磁気ヘッド搭載面のピッチ角とを適正な角度範囲に修正する、サスペンション修正装置、サスペンションアームの製造方法、およびサスペンションアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、HDDの磁気ヘッドは記録媒体上を微小に浮上させるため、磁気ヘッド搭載面の要求する位置精度を満足するサスペンショシアームの製造は難しくなっている。サスペンションアームの磁気ヘッド搭載面のロール角は磁気ディスクへのデータの書込み、読み出しにとって重要である浮上時の磁気ヘッドの姿勢に影響する。現在、ロール角およびピッチ角が不良のサスペンションアームは機械的に変位を与えることでロール角およびピッチ角の修正を行なっている。これは、磁気ヘッド搭載面あるいは磁気ヘッドを直接押して機械的に曲げたり、またはねじりを加える方法で、直接触れて動かすため、サスベンションアームや磁気ヘッドを破壊してしまったり、機械的な特性変化や応力至みが発生し、修正後の経時変化や環境変化等により修正前の形状に戻り勝ちであるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明もロール角およびピッチ角の修正は、サスペンションアームを変形させせて磁気ヘッド搭載面のロール各およびピッチ角を修正するが、サスペンションアームの変形をレーザ照射による金属曲げ加工を利用して実現する。レーザを金属に照射して加熱、冷却するとレーザ照射側に収縮が発生し、レーザ照射された方向(側)に曲げが生じることが知られている。この曲げ変形を利用し、ロール角およびピッチ角を修正する方法は、レーザを1点に照射し局部を加熱、冷却して曲げを発生させロール角およびピッチ角を調整する技術がある。
【0004】
しかし、HDDの小型化が進むにつれて各部品が小型化し、サスペンションアームもこれまでより薄膜化した。
【0005】
従来のレーザのビームスポット照射による曲げ加工では、照射部に孔が開いてしまったり、レーザ照射部の熱は容易に照射部の裏面にまで達し所望する曲げ変形が困難である。また、連続波では、レーザにピークがなく曲げ加工を発生させることが困難であった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するため、サスペンションアームのに両側のビーム部あるいはその近傍の一方あるいは両者を微小レーザスポットで線上に1あるいは複数、走査して折り曲げ結果としてサスペンションアームをねじりロール角およびピッチ角を修正し、非接触で非機械的かつ折り曲げてロール角およびピッチ角の修正を簡易な操作で確実に実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図1を参照して課題を解決するための手段を説明する。
図1において、サスペンションアーム1は、両側に図示のようにビーム部9を設けると共にジンバル部5に磁気ヘッドを搭載して保持するものである。
【0008】
ビーム部9は、ジンバル部5を保持するものであって、ここでは、レーザスポットで一方あるいは両方を走査して折り曲げジンバル部5に搭載した磁気ヘッドの媒体に対するロール角およびピッチ角(図1の(a)参照)を修正するものである。
【0009】
次に、動作を説明する。
サスペンションアーム1の磁気ヘッドを保持する一方あるいは両方のビーム部9あるいはその近傍をレーザビームで線上に走査して折り曲げて当該サスペンションアーム1にねじりを与えて保持する磁気ヘッドのロール角およびピッチ角を修正するようにしている。
【0010】
この際、レーザビームで線上に走査する速度を変えて修正量を調整するようにしている。
【0011】
また、レーザビームで線上に走査する同じ位置あるいは隣接する位置の回数を変えて修正量を調整するようにしている。
【0012】
また、レーザビームで線上に走査する位置を変えてロール角の修正量を調整するようにしている(図4参照)。
【0013】
また、レーザビームで線上に走査する傾きを変えてピッチ角の修正量を調整するようにしている(図5参照)。
【0014】
また、レーザビームで線上に走査するときにレーザスポット形状が同じになるようにフォーカス制御するようにしている(図6参照)。
【0015】
従って、サスペンションアーム1のに両側のビーム部9あるいはその近傍の一方あるいは両者を微小レーザスポットで線上に1あるいは複数、走査して折り曲げ結果としてサスペンションアーム1をねじりロール角およびピッチ角を修正することにより、非接触で非機械的かつ折り曲げてロール角およびピッチ角の修正を簡易な操作で確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、サスペンションアーム1の両側のビーム部9あるいはその近傍の一方あるいは両者を微小レーザスポットで線上に1あるいは複数、走査して折り曲げ結果としてサスペンションアーム1をねじりロール角およびピッチ角を修正する構成を採用しているため、非接触で非機械的かつ折り曲げてロール角およびピッチ角の修正を簡易な操作で確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、サスペンションアーム1の両側のビーム部9あるいはその近傍の一方あるいは両者を微小レーザスポットで線上に1あるいは複数、走査して折り曲げ結果としてサスペンションアーム1をねじりロール角およびピッチ角を修正することを実現できる。
【実施例1】
【0018】
本発明は、サスペンションアームのロール角およびピッチ角を修正するために、レーザはQスイッチのような光学機器を使いパルス幅が短くピークがあるレーザを毎秒数千パルス(ピーク値が10倍位と高く、間隔がms以下と短いパルス)でサスペンションアーム1のビーム部9の非対称位置に線上に走査することによって初めて実現したものである。特に、板厚が30μm以下の従来技術では不可であったサスペンションアーム1のビーム部9に対して、ピーク値が高い点が有効に作用し、良好なロール角およびピッチ角の修正ができた。レーザヘッドあるいはレーザビームあるいはサスペンションアーム1が移動あるいは鏡を使ってレーザビームを移動させ、レーザビームが線上にビーム部9を走査して照射するようにしている。これにより、サスペンションアーム1を従来の単なる曲げではなく、折り曲げてサスペンションアーム1をねじり、確実に変形を与えてロール角およびピッチ角を修正することが可能となる。
【0019】
ロール角およびピッチ角を修正させるため、レーザの種別や修正装置の構成、照射方法および照射条件(出力、スポット径、繰り返し回数、照射位置、移動速度、走査位置または角度)がある。本発明ではQスイッチユニットなどの光学機器によるYAGレーザで、サスペンションアーム1の金属部を直線状に走査し発生した金属部の折り曲げ変形によりロール角およびピッチ角を修正する。必要な変位量の制御はレーザの強度などの設定だけ
でなく、サスペンションアーム1の形状にあわせレーザを走査する方法によって制御、修正する。本発明が提供するロールおよびピッチ角の修正方法および修正装置について以下に例を挙げ順次詳細に脱明する。
【0020】
図1は、本発明のサスペンションアームの構成図を示す。
図1の(a)は、標準的なサスペンションアーム1の構成を示す。サスペンションアーム1は、アクチュエータアーム取付部2、アーム剛性部4、アームばね部3、ジンバル部5、磁気ヘッド搭載部7、磁気ヘッド6、その他電気信号ケーブルなどで構成されている。図中、先端の座標中回転方向は、ロール(ロール角)およびピッチ(ピッチ角)の回転方向をそれぞれ示す。
【0021】
図1の(b)は、図1の(a)に示すジンバル部5を示す。ジンバル部5は、ジンバルばね部8、サスペンションアーム取付部10、磁気ヘッド搭載部7、ビーム部9から構成されている。
【0022】
図1の(c)は、図1の(b)と同様に図1の(a)に示すジンバル部5であって、レーザ加工する位置である点線S1−S2を示す。点線S1−S2で折り曲げ加工することで、アーム先端P1、磁気ヘッド搭載面先端P2を変位させる。修正前のジンバル先端部11の拡大図を図2の(a)に示し、A−A断面の拡大図を図2の(b−1),(b−2)に示す。
【0023】
図2は、本発明の説明図(ロール角修正、その1)を示す。
図2の(a)の点線S1−S2にレーザを線走査することで折り曲げ変形が発生し先端の一方のP1が図2の(b−1)に示す矢印の金属面側に変位することで、磁気ヘッド搭載面先端P2が図2の(b−1)に示す矢印の媒体面側に変位するように、ねじりが加わり、図2の(b−1)に示すロール角αは図2の(b−2)に示すように修正される。
【0024】
図3は、本発明の説明図(ロール角修正、その2)を示す。この図3は、図2の(a),(b−1),(b−2)で説明したロール角の修正方向を逆にさせたい場合の方法で、磁気ヘッド搭載部7を対称にどちらか一方に加工(修正)することでロール角の修正方向を制御したものである。
【0025】
一般に、ロール角などの修正は、レーザの出力、繰り返し周波数、パルス数、スポット径などのレーザ発振条件で制御するが、本発明の設定条件は、サスペンションアーム1、修正する角度、修正する角度量に対してレーザ発振条件以外のレーザ走査速度、レーザ走査方向(角度)、レーザ走査繰り返し回数を変えることでロール角の修正量を任意に制御する。
【0026】
図4は、本発明の説明図(ロール角修正、その3)を示す。ここで、図4の(a)は走査線aから走査線bへ段階的に走査角度を変えて加工している。これにより、サスペンションアーム1の折り曲げ変形量に差が生じ、図4の(b)に示すように、走査線a,bはロール角修正量をA0,B0のように制御できる。また、走査線a,bの走査する速度をV0、V1、V2(ここで、V1<V0<V2)に変更することで走査線上のレーザ照射エネルギー量を制御し、図4の(b)に示すA1,B1やA2,B2のように修正角度量を制御できる。
【0027】
図5は、本発明の説明図(ピッチ角修正)を示す。これは、図4のロール角修正に対するピッチ角修正の例を示し、図5の(a)のR1部のa1からb1の変化ではピッチ角は変化しないが(ロール角のみ変化)、ビーム部9の加工位置を磁気ヘッド搭載部7のR1からR2のように離すことでピッチ角の修正角度を図5の(b)のA1からA2のように
減少できる。
【0028】
また、レーザ加工を繰り返し行う場合、前の加工位置とレーザ照射位置部分をを重ねたり、ずらしたりすることで、ロール角およびピッチ角の変化量を制御することができる。
【0029】
前述した修正方法は、対象となるサスペンションアーム1や磁気ヘッド搭載面の形状、材料の種類によって同じ加工であってもロール角およびピッチ角の修正量が異なる。修正量を正確に制御するには、条件設定を実験により求めて設定するようにする。
【0030】
図6は、本発明の全体構成図を示す。図6では、対象となるサスペンションアーム1は数本から数十本のロットでまとめられたもので、本装置にてロール角およびピッチ角の良否判定と修正量を測定して修正できる。修正に使用するレーザ照射装置13、配置されたサスペンションアーム1のロール角およびピッチ角と加工位置との距離を常に測定している測定部14、サスペンションアーム1を位置決めする移動部12とステージ部15、測定したロール角およびピッチ角の判定、修正角度の算出、予め修正角に必要なレーザ照射条件設定テーブルがあり、その中から条件設定を決める制御部15で構成され、必要な場合には、前後に他工程との搬送部を配置する。
【0031】
図6に示すように、ある程度まとまった数で一度に加工あるいは単体でサスペンションアーム1を加工する場合、レーザ加工を安定にさせるため、測定時に加工焦点レンズと加工位置の距離を測定し、加工時にステージ部15が適正なレーザスポット照射できるように光軸方向にレーザあるいは光学系を配置する。
【0032】
また、図6に示す装置を使って、サスペンションアーム1に対しレーザ設定条件一定で、加工条件設定をビームスポット径φ150μm,レーザ走査速度10mm/sec,加工回数1回にて、図2の(a),図3の(a)で示す加工位置に図4の(a)で示すaからbまで走査角度を変化させた1個の加工で、ロール角を−0.50〜0.50度、ピッチ角を−0.50〜0度の範囲で制御修正できた。
【0033】
本実施例の実験の結果、サスペンションアームに熱エネルギー(例えばQスイッチレーザのピーク値が高くパルス間隔ms以下のパルス状のレーザ形状)を与えることができれば修正を実現することは可能であるが、Qスイッチパルス制御YAGレーザが良好であり、他のYAGレーザではレーザパルス形状に近づける必要がある(現状では困難である)。
【0034】
また、本実施例はサスペンションアーム1に磁気ヘッドを搭載あるいは非搭載のいずれでもサスペンションアーム1のロール角およびピッチ角の修正が可能であり、例えばサスペンションアーム1自身のロール角およびピッチ角は正確でも搭載する磁気ヘッドが傾いて接着されてしまっても、当該傾いた磁気ヘッドのロール角およびピッチ角を許容値内に修正できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、サスペンションアーム1の両側のビーム部9あるいはその近傍の一方あるいは両者を微小レーザスポットで線上に1あるいは複数、走査して折り曲げ結果としてサスペンションアーム1をねじりロール角およびピッチ角を修正する、サスペンション修正装置、サスペンションアームの製造方法、およびサスペンションアームに関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のサスペンションアーム構成図である。
【図2】本発明の説明図(ロール角修正、その1)である。
【図3】本発明の説明図(ロール角修正、その2)である。
【図4】本発明の説明図(ロール角修正、その3)である。
【図5】本発明の説明図(ピッチ角修正)である。
【図6】本発明の全体構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1:サスペンションアーム
2:アタチュエータアーム取付部
3:アームばね部
4:アーム剛性部
5:ジンバル部
6:磁気ヘッド
7:磁気ヘッド搭載部
8:ジンバルばね部
9:ビーム部
10:サスペンションアーム取付部
11:ジンバル先端部
12:移動部
13:レーザ照射装置
14:測定部
15:ステージ部
16:制御部
p1:レーザ加工によるアーム先端部変位点
p2:レーザ加工によるアーム先端部変位点
p3:レーザ加工による磁気ヘッド搭載面端部変位点
p4:レーザ加工による磁気ヘッド搭載面端部変位点
S1−S2:レーザスポット走査線
S3−S4:レーザスポット走査線
a:レーザ加工位置
b:レーザ加工位置
A:ロール角変化量
B:ロール角変化量
α:磁気ヘッドスライダのロール角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションアームのロール角を修正するサスペンション修正装置において、
レーザビームを照射するレーザ照射装置と、
前記サスペンションアームのヘッドを保持するためのヘッド搭載部における2本のビーム部の一方あるいは両方に対して、レーザビームによって線上にレーザ照射を行って折り曲げるにあたり、前記線上のレーザ照射方向角度を制御して前記ロール角の修正量の調整を行う制御手段と
を備えたことを特徴とするサスペンション修正装置。
【請求項2】
サスペンションアームの製造方法において、
前記サスペンションアームのヘッド搭載部における2本のビーム部の一方あるいは両方に対して、レーザビームによって線上にレーザ照射を行って折り曲げるにあたり、前記線上のレーザ照射方向角度を制御して前記ロール角の修正量の調整を行う工程を備え、
サスペンションアームのロール角を修正することを特徴とするサスペンションアームの製造方法。
【請求項3】
前記工程において、レーザ照射の傾きを変えてレーザ照射を行うことを特徴とする請求項2記載のサスペンションアームの製造方法。
【請求項4】
アクチュエータアーム取付部と、アームばね部と、ヘッドを保持するためのヘッド搭載部が設けられたサスペンションアームにおいて、
前記ヘッド搭載部における2本のビーム部のうち一方に対して、複数の異なる位置の線上に照射方向角度を制御してレーザ照射を行なって形成された複数の線の折り曲げを有することを特徴とするサスペンションアーム。
【請求項5】
前記ヘッド搭載部における2本のビーム部の他方に対して、線上にレーザ照射を行なって形成された折り曲げをさらに有することを特徴とする請求項4に記載のサスペンションアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−176919(P2008−176919A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33783(P2008−33783)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【分割の表示】特願平11−145585の分割
【原出願日】平成11年5月25日(1999.5.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】