サッカリド抗原のためのグリコセラミドアジュバント
本発明は:(a)キャリアに結合されるサッカリド抗原;および(b)α−グリコシルセラミドアジュバントを含有する組成物およびキットを提供する。さらに本発明は、組成物を使用する処置の方法を提供する。α−グリコシルセラミドによる抗サッカリド免疫応答の抑制は、キャリアに結合しているサッカリドにより逆転され得る。本発明の組成物中に含まれるアジュバントは、当該分野において公知の任意の適したα−グリコシルセラミドであり得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用されるすべての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、特にサッカリド抗原のためのワクチンアジュバントの分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景分野)
ワクチンは、しばしば追加免疫活性に対するアジュバントを含む。公知のアジュバントの例として、アルミニウム塩、水中油型乳剤、サポニン、サイトカイン、脂質およびCpGオリゴヌクレオチドが挙げられる。近年、アルミニウム塩およびモノホスホリル脂質MF59TMのみが、ヒトでの使用について認可されている。しかしながら、アルミニウム塩は安全性の注意を必要とし、いくつかの抗原と不適合性である。それゆえ、さらにアジュバントを開発する必要がある。
【0004】
αーガラクトシルセラミド(α−GalCer)は、糖脂質、より具体的にはグリコシルセラミドであり、本来海洋性の海綿から単離される[非特許文献1]。α−GalCerは、不変異体のナチュラルキラーT細胞に対してMHCクラスI様分子である、CD1dにより提示され、腫瘍細胞に対するナチュラルキラーT細胞応答を誘導する能力について本来調べられた[特許文献1]。不変異体のナチュラルキラーT細胞はまた、B細胞活性を誘導することが示されており、B細胞増殖および抗体産生を増強する[非特許文献2、非特許文献3]。近年、α−GalCerは、種々の共投与タンパク質抗原に関してアジュバントとして作用することが示されている[特許文献2]。照射されたスポロゾイトまたはマラリア抗原を発現している組み換えウイルスとα−GalCerとの共投与は、マウスにおいて防御性抗マラリア免疫のレベルを増強することが示されている[非特許文献4]。α−GalCerはまた、HIV−1 gag遺伝子およびHIV−1 env遺伝子をコードしているDNAワクチンに関してアジュバントとしてはたらくことが示されている[非特許文献5]。
【0005】
しかしながら、すべてのワクチンがタンパク質抗原を含有するわけではない。いくつかの市販のワクチンは、サッカリド抗原を含有する。例えば、PneumovaxTMは、23の肺炎球菌血清型由来のサッカリド抗原を含有する。MencevaxTMおよびMenomuneTMは、Neisseria meningitidis A、C、YおよびW−135由来のサッカリド抗原を含有する髄膜炎菌ワクチンである。それゆえ、サッカリド抗原に対するアジュバントとしてα−GalCerの使用を広げることが所望される。
【0006】
DNAおよびタンパク質抗原に対するアジュバントとしてのα−GalCerとの成功にもかかわらず、本発明者らは、驚くことに、いくつかのサッカリド抗原に関してアジュバントとして作用しないことを見出した。対照的に、これら抗原とα−GalCerとの投与は、アジュバントを用いないコントロールに比較して、抗体力価の実質的な減少を引き起こすことが見出されている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1018548号明細書
【特許文献2】国際公開第03/09812号パンフレット
【非特許文献1】Natoriら、「Tetrahedron」、1994年、50:p.2771〜2783
【非特許文献2】Galliら、「Vaccine」、2003年、21:S2/48〜S2/54
【非特許文献3】Galliら、「J.Exp Med」、2003年、197:p.1051〜1057
【非特許文献4】Gonzalez−Aseguinolazaら、「J.Exp Med」、2002年、5:p.617〜624
【非特許文献5】Huangら、要旨396、第10回 Conference on retroviruses and opportunistic infection
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、α−GalCerが存在する場合の、抗サッカリド抗体応答の阻害の問題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
驚くことに、サッカリド抗原がキャリアに結合体化される場合、α−GalCerの存在下おける抗サッカリド免疫応答の抑制は逆転され得、サッカリド抗原に対する免疫応答はさらに増強され得ることが見出されている。それゆえ、本発明は、(a)キャリアに結合体化されたサッカリド抗原;および(b)α−グリコシルセラミドアジュバント、を含む組成物を提供する。
【0009】
(α−グリコシルセラミドアジュバント)
本発明の組成物中に含まれるアジュバントは、当該分野において公知の任意の適したα−グリコシルセラミドであり得る。好ましくは、α−グリコシルセラミドアジュバントは、式(I)の化合物:
【0010】
【化1】
であり、ここで、
R1はHまたはOHを表し、
Xは1と30との間の整数を表し、
R2は以下(a)〜(e)からなる群;
(a)−CH2(CH2)YCH3
(b)−CH(OH)(CH2)YCH3
(c)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)2
(d)−CH=CH(CH2)YCH3
(e)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)CH2CH3
から選択される置換基を表し(ここでYは、5と17の間の整数を表す)、
R3はH、OH、NH2、NHCOCH3またはモノサッカリドを表し、
R4はOHまたはモノサッカリドを表し、
R5はH、OHまたはモノサッカリドを表し、
R6はH、OHまたはモノサッカリドを表し、そして
R7はH、CH3、CH2OHまたはモノサッカリドを表す。
【0011】
Xは、好ましくは7と27との間であり、より好ましくは9と24との間であり、そしてより好ましくは13と20との間である。Yは、好ましくは7と15との間であり、さらに好ましくは9と13との間である。
【0012】
R3がモノサッカリドである場合、好ましくはα−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノースまたはβ−D−グルコピラノースから選択される。
【0013】
R4がモノサッカリドである場合、好ましくは、β−D−ガラクトフラノースまたはN−アセチルα−D−ガラクトピラノースから選択される。
【0014】
R5がモノサッカリドである場合、好ましくは、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノースまたはβ−D−グルコピラノースから選択される。
【0015】
R6がモノサッカリドである場合、好ましくは、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノースまたはβ−D−グルコピラノースから選択される。
【0016】
R7がモノサッカリドである場合、好ましくは、メチルα−D−ガラクトピラノシド、メチルβ−D−ガラクトピラノシド、メチルα−D−グルコピラノシドまたはメチルβ−D−グルコピラノシドから選択される。
【0017】
好ましくは、R5およびR6は異なる。好ましくは、R5およびR6の1つはHである。
【0018】
本発明の組成物の含有物として適したα−グリコシルセラミドアジュバントのさらなる例は、参考文献2に提供される。
【0019】
好ましくは、α−グリコシルセラミドアジュバントは、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)(すなわち、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=HかつR7=CH2OH)である。本発明の組成物に含まれるα−GalCerは、直接海洋性の海綿体から単離されてもよいし、または化学的に合成された生成物であってもよい。本発明の組成物での使用に適したα−ガラクトシルセラミドの例は、参考文献8に提供される。好ましいα−ガラクトシルセラミドは、KRN7000であり、これは式(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオールを有する。KRN7000の合成は、参考文献8に記載される。
【0020】
α−グリコシルセラミドアジュバントはまた、α−GalCerに比較して脂肪アシル鎖および/またはスフィンゴシン鎖が切り取られたα−GalCerの短縮型アナログであり得る。α−GalCerの短縮型アナログの例は、参考文献9に提供される。α−GalCerの好ましい短縮型アナログは、「OCH」であり、好ましいα−GalCerに比較して、脂肪アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、そしてスフィンゴシン鎖は9つの炭化水素の切断を有する(すなわち、R1=H、X=21、R2=CH(OH)(CH2)4CH3、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=HおよびR7=CH2OH)。さらに好ましいα−GalCerの短縮型アナログは、α−GalCerに比較して、脂肪アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、そしてスフィンゴシン鎖が7つまたは3つの炭化水素の切断を有するアナログを含む(すなわち、R1=H、X=21、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=H、R7=CH2OHおよびR2は、CH(OH)(CH2)6CH3またはCH(OH)(CH2)10CH3である)。
【0021】
(サッカリド抗原)
好ましくは、本発明の組成物に含まれるキャリアに結合体化されるサッカリド抗原は、細菌性サッカリドであり、特に細菌性莢膜サッカリドである。
【0022】
本発明の組成物に含まれる得る細菌性莢膜サッカリドの例としては、Neisseria meningitidis(血清群A、B、C、W135またはY)、Streptococcus pneumoniae(血清型4、6B、9V、14、18C、19Fまたは23F)、Streptococcus agalactiae(Ia型、Ib型、II型、III型、IV型、V型、VI型、VII型またはVIII型)、Haemophilus influenzae(代表的株:a、b、c、d、eまたはf)、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureusなどが挙げられる。本発明の組成物に含まれ得る他のサッカリドとしては、グルカン(例えば、Candida albicansにおけるもののような真菌性グルカン)および真菌性莢膜サッカリド(例えば、Cryptococcus neoformansの莢膜由来)が挙げられる。
【0023】
N.meningitidis血清群A(MenA)莢膜は、C3およびC4の位置に部分的にO−アシル化を有する(α1→6)連結N−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェートのホモポリマーである。N.meningitidis血清群B(MenB)莢膜は、(α2→8)連結シアル酸のホモポリマーである。N.meningitidis血清群C(MenC)莢膜サッカリドは、7および/または8の位置で可変性のO−アセチル化を有する(α2→9)連結シアル酸のホモポリマーである。N.meningitidis血清群W135サッカリドは、シアル酸−ガラクトースジサッカリドユニット[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]からなるポリマーである。これはシアル酸の7および9の位置で可変性のO−アセチル化を有する[10]。ジサッカリド反復ユニットがガラクトースの代わりにグルコースを含む[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]ことを除いて、N.meningitidis血清群Yサッカリドは、血清群W135サッカリドに類似している。これはまた、シアル酸の7および9の位置で可変性のO−アセチル化を有する。
【0024】
b型H.influenzae莢膜(Hib)サッカリドは、リボース、リビトールおよびリン酸塩のポリマー[「PRP」、(ポリ−3−β−D−リボース−(1,1)−D−リビトール−5−ホスフェート)]である。
【0025】
本発明の組成物は、サッカリド抗原結合体の混合物を含有し得る。好ましくは、本発明の組成物は、1つより多いN.meningitidisの血清群由来のサッカリド抗原を含有し、例えば、組成物は、血清群A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+Y、A+C+W135+Yなど由来のサッカリド結合体を含有し得る。好ましい組成物は、血清群CおよびY由来のサッカリド結合体を含有する。他の好ましい組成物は、血清群C、W135およびY由来のサッカリド結合体を含有する。
【0026】
混合物が血清群A由来の髄膜炎菌性サッカリドおよび少なくとも1つの他の血清群サッカリドを含む場合、任意の他の血清群サッカリドに対するMenAサッカリドの比(w/w)は1より大(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれより高い)であり得る。血清群A:C:W135:Y由来のサッカリドに関する好ましい比は:1:1:1:1;1:1:1:2;2:1:1:1;4:2:1:1;8:4:2:1;4:2:1:2;8:4:1:2;4:2:2:1;2:2:1:1;4:4:2:1;2:2:1:2;4:4:1:2;および2:2:2:1である。
【0027】
さらに好ましい本発明の組成物は、Hibサッカリド結合体および少なくとも1つのN.meningitidis血清群由来のサッカリド結合体、好ましくは1つより多いN.meningitidis血清群由来のサッカリド結合体を含有する。例えば、本発明の組成物は、Hib結合体およびN.meningitidis血清群A、C、W135およびY由来の結合体を含み得る。
【0028】
本発明は、さらにStreptococcus pneumoniaeサッカリド結合体を含有する組成物を含む。好ましくは、この組成物は、1つより多いStreptococcus pneumoniaeの血清型を含有する。好ましい組成物は、Streptococcus pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F(7−バレント)由来のサッカリド結合体を含有する。組成物はさらに、Streptococcus pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1および5(9−バレント)由来のサッカリド結合体を含有し得るか、またはStreptococcus pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1、5、3および7F(11−バレント)由来のサッカリド結合体を含有し得る。
【0029】
さらに本発明の好ましい組成物は、肺炎球菌サッカリド結合体およびHibおよび/またはN.meningitidis由来のサッカリド結合体を含有する。好ましくは、本発明の組成物は、S.pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F由来のサッカリド結合体ならびにHibサッカリド結合体を含有し得る。好ましくは、本発明の組成物は、S.pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F由来のサッカリド結合体およびN.meningitidis血清型A、C、W135およびY由来のサッカリド結合体を含有し得る。本発明に従う組成物はまた、S.pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F由来のサッカリド結合体、Hibサッカリド結合体およびN.meningitidis血清型A、C、W135およびY由来のサッカリド結合体を含み得る。
【0030】
個々のサッカリド抗原結合体の防御効果は、それらを組み合わせることにより除かれないことが好ましいが、実際の免疫原性(例えば、ELISA力価)は減少され得る。
【0031】
(莢膜サッカリド抗原の調製)
莢膜サッカリド抗原の調製のための方法は、周知である。例えば参考文献11は、N.meningitidis由来のサッカリド抗原の調製を記載する。H.influenzae由来のサッカリド抗原の調製は、参考文献12の第14章に記載される。S.pneumoniae由来のサッカリド抗原およびサッカリド結合体の調製は、当該分野において記載されている。例えば、PrevenarTMは、7バレントの肺炎球菌結合体ワクチンである。S.agalactiae由来のサッカリド抗原の調製のためのプロセスは、参考文献13および14に詳細に記載される。
【0032】
サッカリド抗原は、化学的に修飾され得る。例えば、1つ以上のヒドロキシル基を保護基で置換して修飾され得る。アセチル基が保護基で置換され加水分解が妨げられる場合、これは特に髄膜炎菌血清型Aに有用である[15]。そのような修飾サッカリドは、本発明の意味においては、なお血清型Aサッカリドである。
【0033】
莢膜サッカリドはオリゴサッカリドの形成において使用され得る。これらは精製した莢膜ポリサッカリドの断片化により(例えば加水分解により)簡便に形成され、通常その後所望されるサイズの断片に精製される。
【0034】
ポリサッカリドの断片化は、好ましくは、オリゴサッカリドにおける30未満の最終的な平均重合度(DP)を与えるために実施され得る。DPは簡便に、イオン交換クロマトグラフィーまたは比色アッセイにより測定され得る[16]。
【0035】
加水分解が実施される場合、加水分解物は、一般的に短い長さのオリゴサッカリドを除去するためにサイズ分類される[17]。これは限外濾過に続くイオン交換クロマトグラフィーのような種々の方法で達成され得る。約6以下の重合度を有するオリゴサッカリドは、好ましくは血清型Aにおいて除去され、そして約4未満の重合度を有するオリゴサッカリドは、好ましくは血清型W135およびYにおいて除去される。
【0036】
(キャリア)
好ましくは、キャリアはタンパク質である。本発明の組成物においてサッカリド抗原に結合体化される好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドのような細菌毒素である。適したキャリアタンパク質としては、ジフテリア毒素のCRM197変異体[18〜20]、ジフテリアトキソイド、N.meningitidis外膜タンパク質[21]、合成ペプチド[22、23]、熱ショックタンパク質[24、25]、百日咳タンパク質[26、27]、サイトカイン[28]、リンホカイン[28]、ホルモン[28]、成長因子[28]、N19タンパク質[30]のような、種々の病原体由来抗原の複合ヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[29]、H.influenzae由来のタンパク質D[31、32]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[33]、肺炎球菌溶血素[34]、鉄取り込みタンパク質[35]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[36]などが挙げられる。
【0037】
サッカリド抗原のキャリアへの結合は、好ましくは−NH2基(例えば、キャリアタンパク質のリシン残基の側鎖またはアルギニン残基の側鎖における)を介する。サッカリドは遊離アルデヒド基を有する場合、このアルデヒド基は、キャリア中のアミンと反応して、還元アミノ化により結合体を形成する。結合はまた、−SH基(例えば、システイン残基の側鎖における)を介し得る。
【0038】
組成物が1つより多いサッカリド抗原を含有する場合、1つより多いキャリアを使用することが可能である(例えば、キャリア抑制の危険性を減少させるために)。従って、異なるキャリアが異なるサッカリド抗原について用いられ得る。例えば、Neisseria meningitidis血清型Aサッカリドは、CRM197に結合体化される一方で、C型サッカリドは、破傷風トキソイドに結合体化され得る。ある特定のサッカリド抗原に1つより多いキャリアを使用することもまた可能である。このサッカリドは、2つの群にあり、いくつかはCRM197に結合体化され、そしてその他は破傷風トキソイドに結合される。しかしながら一般的に、同じキャリアをすべてのサッカリドに使用することが好ましい。
【0039】
単一キャリアタンパク質は1つより多いサッカリド抗原を保持する[37、38]。例えば、単一キャリアタンパク質は、異なる病原体由来のサッカリドまたは同じ病原体の異なる血清型由来のサッカリドに結合体化し得る。この目的を果たすために、異なるサッカリドが結合体化反応の前に混合され得る。しかしながら一般的に、各血清群について別個の結合体を有することが好ましく、異なるサッカリドは結合体化後に混合される。別々の結合体は、同じキャリアをベースにし得る。
【0040】
1:5(すなわち、過剰のタンパク質)と5:1(すなわち、過剰のサッカリド)との間のサッカリド:タンパク質比(w/w)を有する結合体が好ましい。1:2と5:1との間の比が好ましく、同様に1:1.25と1:2.5との間の比が好ましい。
【0041】
結合体は、結合体化において遊離キャリアとともに使用され得る[39]。所定のキャリアタンパク質が本発明の組成物において遊離型および結合型の両方で存在する場合、好ましくは、非結合型形態は、全体として組成物の総キャリアタンパク質量のたったの5%にすぎず、さらに好ましくは重量で2%未満の存在である。
【0042】
結合体化の後、遊離サッカリドおよび結合体化サッカリドは別々にされ得る。多くの適した方法があり、疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過(tangential ultrafiltration)、ダイアフィルトレーションなどが挙げられる[参考文献40および41などを参照のこと]。
【0043】
任意の適した結合体化反応が、必要とされる場合、任意の適したリンカーとともに使用され得る。
【0044】
サッカリドは代表的に、結合体化前に活性化されるかまたは機能化される。活性化には、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸[42、43など])のようなシアニル化試薬が関与し得る。他の適した技術では、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシニミド、S−NHS、EDC、TSTU(参考文献44の緒言も参照のこと)を使用する。
【0045】
リンカー基を介する連結は、任意の公知の手順を使用して作られ得、例えば、この手順は、参考文献45および46に記載される。結合の1つの型としては、ポリサッカリドの還元アミノ化が挙げられ、生じるアミノ基をアジピン酸リンカー基の一方の端に結合させ、次いでタンパク質をこのアジピン酸リンカー基のもう一方の端に結合させる[47、48]。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[49]、ニトロフェニル−エチルアミン[50]、ハロアシルハライド[51]、グリコシド結合[52]、6−アミノカプロン酸[53]、ADH[54]、C4〜C12部分[55]などが挙げられる。リンカーの使用の代替として、直接的連結が使用され得る。タンパク質への直接的連結は、例えば参考文献56および57に記載されるように、ポリサッカリドの酸化およびその後のタンパク質との還元アミノ化を包含する。
【0046】
アミノ基のサッカリドへの導入(例えば、末端の=O基を−NH2で置換することによる)に続きアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシニミドジエステル)を用いる誘導体化およびキャリアタンパク質との反応を包含するプロセスが好ましい。
【0047】
結合後、遊離サッカリドおよび結合体化サッカリドは、別々にされ得る。多くの適した方法があり、疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過、ダイアフィルトレーションなどが挙げられる[参考文献58および59などを参照のこと]。
【0048】
本発明の組成物が脱重合化サッカリドを含有する場合、脱重合は結合体化より前に行うことが好ましい。
【0049】
(組成物のさらなる抗原性化合物)
本発明の組成物は、少なくとも1つのキャリアに結合体化されたサッカリド抗原を含有する。しかしながら、本発明の組成物は、上に記載されるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原に加え、1つ以上の以下の抗原を含有し得る:
−参考文献60〜66のもののような、N.meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原。タンパク質「287」(以下を参照のこと)および誘導体(例えば「ΔG287」)が特に好ましい。
−参考文献67、68、69、70などに開示されるもののような、N.meningitidis血清群B由来の外膜ベシクル(OMV)調製物。
−S.pneumoniae由来のタンパク質抗原(例えば、参考文献71に開示されるようなPhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130およびSp133由来)。
−不活化ウイルスのようなA型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、72、73;参考文献78の第15章]。
−表面抗原および/またはコア抗原のようなB型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、73、74;参考文献78の第16章]。
−C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば75]。
−必要に応じてペルタクチンおよび/または凝集原2および凝集原3とも組み合わせた、B.pertussis由来の、百日咳ホロ毒素(PT)および繊維状赤血球凝集素(FHA)のような、Bordetella pertussis由来の抗原[例えば、参考文献76および77;参考文献78の第21章]。
−ジフテリアトキソイドのようなジフテリア抗原[参考文献78の第13章]。
−破傷風トキソイドのような破傷風抗原[例えば、参考文献78の第27章]。
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、参考文献60、61、62]。
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、79、80、81、82、83、84、85]。
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、86]。
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、参考文献87]。
−IPVのようなポリオ抗原[例えば、88、89;参考文献78の第24章]。
−凍結乾燥不活化ウイルス[例えば91、RabAvertTM]のような狂犬病抗原[例えば90]。
−麻疹、ムンプスおよび/または風疹抗原[例えば、参考文献78の第19章、第20章および26章]。
−CagA[92〜95]、VacA[96、97]、NAP[98、99、100]、HopX[例えば101]、HopY[例えば101]のようなHelicobacter pylori由来の抗原および/またはウレアーゼ。
−血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質のようなインフルエンザ抗原[例えば、参考文献78の17章および18章]。
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば102]。
−Streptococcus agalactiae(ストレプトコッカスB群)由来のタンパク質抗原[例えば、103、104]。
−Streptococcus pyogenes(ストレプトコッカスA群)由来の抗原[例えば、104、105、106]。
−Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば107]。
−呼吸器合胞体ウイルス(RSV[108、109])およびパラインフルエンザウイルス(PIV3[110])のようなパラミクソウイルス由来の抗原。
−Bacillus anthracis[例えば、111、112、113]由来の抗原
−黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、4つの血清型のデング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルスのようなフラビウイルス科ファミリー(フラビウイルス属)のウイルス由来の抗原。
−古典的なブタ熱ウイルス(classical porcine fever virus)、ウシウイルス性下痢性ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルス由来のようなペスチウイルス抗原
−例えばパラボウイルスB19由来のパラボウイルス抗原。
【0050】
混合物は、さらにこれら抗原を1つ以上含有し、必要とされる場合解毒化され得る(例えば、化学的手法および/または遺伝子的手法による百日咳毒素の解毒化)。
【0051】
ジフテリア抗原が混合物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。
【0052】
混合物中の抗原は、代表的にそれぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘導するのに十分である。
【0053】
混合物中のタンパク質抗原の代替物として、抗原をコードしている核酸が使用され得る。従ってこの混合物のタンパク質成分が、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、例えばプラスミドの形成におけるDNA)により置換され得る。同様に、本発明の組成物は、サッカリド抗原を模倣したタンパク質(例えばミモトープ[114]または抗イディオタイプの抗原)を含み得る。
【0054】
(薬学的組成物の処方物)
本発明の結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントは、免疫原性組成物およびワクチンへの封入に特に適している。それゆえ本発明のプロセスは、免疫原性組成物またはワクチンとして結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントを処方する工程を包含し得る。本発明は、この方法において得ることのできる組成物およびワクチンを提供する。
【0055】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、キャリアタンパク質に結合体化されたサッカリド抗原およびα−グリコシルセラミドアジュバントに加え、代表的に「薬学的に受容可能なキャリア」を含み、このキャリアは、組成物を受ける個体に有害な抗体の産生をそれ自体では誘導しない任意のキャリアを含む。適したキャリアは、タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、トレハロース[115]、脂質凝集体(油滴またはリポソームのような)および不活化ウイルス粒子のような、代表的に大きく、ゆっくり代謝される巨大分子である。そのようなキャリアは当業者において周知である。本ワクチンはまた、水、生理食塩水、グリセロールなどのような希釈剤を含み得る。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤などのような補助剤が存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤の完全な考察は、参考文献116において入手可能である。
【0056】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効量のサッカリド抗原、および必要とされるならば、上記に言及した任意の他の成分を含む。「免疫学的有効量」とは、単回用量または一連の投与の一部としてかのいずれかにおいて、個体に投与する量が、処置または予防に関して有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康および身体的状態、年齢、処置される個体の分類学的群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成するための個体の免疫システムの能力、所望される予防の度合い、ワクチンの処方、医学的状態に関する処置医の評価および他の関連要因に依存して変化する。この量は、比較的広い範囲になることが期待され、この範囲は、慣習的な試験を通して決定され得る。投薬処置は、単回投薬スケジュールまたは複数回投薬スケジュール(例えば、追加免疫投薬が挙げられる)であり得る。
【0057】
本ワクチンは、他の免疫調節物質と併用して投与され得る。α−グリコシルセラミドは、本発明の免疫原性組成物内においてアジュバントとして作用する。本ワクチンは、付加的なアジュバントを含み得る。そのようなアジュバントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:
A.ミネラル含有組成物
本発明における、アジュバントとしての使用に適したミネラル含有組成物としては、アルミニウム塩およびカルシウム塩のような無機塩類が挙げられる。本発明は、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩などのような無機塩類[例えば、参考文献117の第8章および第9章を参照のこと]、または異なるミネラル化合物の混合物を含む。この化合物は任意の適した形態(例えば、ゲル、結晶、非結晶など)をとり、吸着することが好ましい。ミネラル含有組成物はまた、金属塩の粒子として処方され得る[118]。
【0058】
代表的なリン酸アルミニウムアジュバントは、PO4/Alモル比が0.84と0.92との間で、0.6mgのAl3+/mlにおいて含まれる非結晶性のヒドロキシリン酸アルミニウムである。低用量のリン酸アルミニウムを用いる吸着が、例えば1用量あたりの結合体あたり50μgと100μgとの間のAl3+で用いられ得る。リン酸アルミニウムを吸着に使用し、抗原をアジュバントに吸着させないことが所望される場合、このことは溶液中に遊離リン酸イオンを含むことにより(例えば、リン酸緩衝液の使用により)促進される。
【0059】
B.油性乳剤
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した油性乳剤組成物としては、MF59[参考文献117の第10章、参考文献119も参照のこと](ミクロ流動器(microfluidizer)を使用してサブミクロン粒子に処方される5%スクアレン、0.5%Tween 80、および0.5%Span 85)のようなスクアレン−水乳剤が挙げられる。フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)もまた使用され得る。
【0060】
C.サポニン処方物[参考文献117の第22章]
サポニン処方物もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、幹、根さらに花においてさえ見出されるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molinaの樹皮に由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサプリラ(sarsaprilla)、シュッコンカスミソウ(ブライデスベール(brides veil))、およびサボンソウ(サボンソウ根)から、商業的に入手され得る。サポニンアジュバント処方物としては、QS21のような精製処方物およびISCOMのような脂質処方物が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販される。
【0061】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを使用して精製される。これらの技術を使用して精製された特定の画分が同定されており、その精製画分としては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生産方法は、参考文献120に開示されている。サポニン処方物はまた、コレステロールのようなステロールを含み得る[121]。
【0062】
サポニンとコレステロールとの組み合わせが、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる固有の粒子を形成するために使用され得る[参考文献117の第23章]。ISCOMとしては、代表的に、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンのようなリン脂質が挙げられる。任意の公知のサポニンが、ISCOMにおいて使用され得る。好ましくは、ISCOMとしては、QuilA、QHAおよびQHCの1つ以上が挙げられる。ISCOMは、さらに参考文献121〜123に記載される。必要に応じて、ISCOMは余分な界面活性剤を含まない[124]。
【0063】
サポニンベースのアジュバントの開発についての概説は、参考文献125および126に見出され得る。
【0064】
D.ビロソームおよびウイルス様粒子
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造は、一般的に、必要に応じてリン脂質と組み合わせられるかまたは処方されるウイルス由来の1つ以上のタンパク質を含む。これらは、一般的に、非病原性、非複製性であり、一般的に、いかなる天然のウイルスゲノムも含まない。ウイルスタンパク質は組換えによって産生されるか、またはウイルス全体から単離され得る。ビロソームまたはVLPにおける使用に適したこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス由来のタンパク質(HAまたはNAのような)、B型肝炎ウイルス由来のタンパク質(コアタンパク質またはカプシドタンパク質のような)、E型肝炎ウイルス由来のタンパク質、麻疹ウイルス由来のタンパク質、シンドビスウイルス由来のタンパク質、ロタウイルス由来のタンパク質、口蹄疫ウイルス由来のタンパク質、レトロウイルス由来のタンパク質、ノーウォークウイルス由来のタンパク質、ヒト乳頭腫ウイルス由来のタンパク質、HIV由来のタンパク質、RNA−ファージ由来のタンパク質、Qβ−ファージ由来のタンパク質(コートタンパク質のような)、GA−ファージ由来のタンパク質、fr−ファージ由来のタンパク質、AP205ファージ由来のタンパク質、およびTy由来のタンパク質(レトロトランスポゾンTyタンパク質p1のような)が挙げられる。VLPは、参考文献127〜132でさらに考察される。ビロソームはさらに、例えば、参考文献133で考察される。
【0065】
E.細菌性または微生物性誘導体
本発明における使用に適したアジュバントとしては、腸内細菌リポポリサッカリド(LPS)の非毒性誘導体、脂質A誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチドおよびADPリボシル化毒素、ならびにそれらの解毒誘導体のような細菌性または微生物性の誘導体が挙げられる。
【0066】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4、5または6つのアシル化鎖を有する3脱−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「小粒子」形態は、参考文献55に開示される。そのような3dMPLの「小粒子」は、0.22μmの膜を通して滅菌濾過されるほど十分に小さい[134]。他の非毒性LPS誘導体としては、アミノアルキルグルコサミニドリン酸誘導体(例えば、RC−529)のようなモノホスホリル脂質A模倣物が挙げられる[135、136]。
【0067】
脂質A誘導体としては、OM−174のようなEscherichia coli由来の脂質Aの誘導体が挙げられる。OM−174は、例えば参考文献137および138に記載される。
【0068】
本発明における、アジュバントとしての使用に適した免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列(グアノシンへのリン酸結合により連結される非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含む二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0069】
CpGは、ホスホロチオエート修飾物のようなヌクレオチド修飾物/アナログを含み得、二本鎖または一本鎖であり得る。参考文献139、140および141は、可能なアナログ置換(例えばグアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによる置換)を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献142〜147においてさらに考察される。
【0070】
CpG配列は、モチーフGTCGTTまたはモチーフTTCGTTのようなTLR9に関し得る[148]。CpG−A ODNのようなCpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得るか、またはCpG−B ODNのようなCpG配列は、B細胞応答の誘導により特異的であり得る。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献149〜151において考察される。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0071】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のためにアクセス可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、その3’末端で結合され得、「イムノマー(immunomer)」を形成する。例えば、参考文献148および152〜154を参照のこと。
【0072】
細菌性ADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体は、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好ましくは、このタンパク質は、E.coli(E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ菌(「CT」)、または百日咳菌(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての解毒ADPリボシル化毒素の使用は、参考文献155に記載され、非経口アジュバントとしての使用は、参考文献156に記載される。毒素または類毒素は、好ましくは、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含むホロ毒素の形態である。好ましくは、Aサブユニットは、解毒性の変異を含み;好ましくは、Bサブユニットは変異されない。好ましくは、アジュバントは、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192のような解毒LT変異体である。ADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体、特に、LT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は、参考文献157〜164に見出され得る。アミノ酸置換に関する数の参照は、好ましくは、参考文献165に記載のADPリボシル化毒素のAサブユニットおよびBサブユニットのアラインメントをベースとし、特にその全体が本明細書中において参考として援用される。
【0073】
F.ヒト免疫調節因子
本発明において、アジュバントとして使用に適したヒト免疫調節因子としては、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[166]など)[167]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子のようなサイトカインが挙げられる。
【0074】
G.生体付着物および粘膜付着物
生体付着物および粘膜付着物もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。適した生体付着物としては、エステル型のヒアルロン酸マイクロスフィア[168]または架橋したポリ(アクリル酸)の誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリドおよびカルボキシメチルセルロースのような粘膜付着物が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る[169]。
【0075】
H.微粒子
微粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μmの粒子、より好ましくは直径約200nm〜約30μmの粒子、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)は、生体分解性および非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシブチル酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成され、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましく、必要に応じて負に荷電した表面(例えば、SDSを用いて)または正に荷電した表面(例えば、CTABのようなカチオン性界面活性剤を用いて)を有するように処理される。
【0076】
I.リポソーム(参考文献117の第13章および第14章)
アジュバントとしての使用に適したリポソーム処方物の例は、参考文献170〜172に記載される。
【0077】
J.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物
本発明における使用に適したアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる[173]。そのような処方物はさらに、オクトキシノールとの組み合わせでポリオキシエチレンソルビタンエステルのサーファクタント[174]および少なくとも1つのオクトキシノールのようなさらなる非イオン性サーファクタントとの組み合わせでポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルのサーファクタントを含む[175]。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(laureth 9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0078】
K.ポリホスファザン(PCPP)
PCPP処方物は、例えば参考文献176および177に記載される。
【0079】
L.ムラミルペプチド
本発明におけるアジュバントとしての使用に適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン MTP−PE)が挙げられる。
【0080】
M.イミダゾキノロン化合物
本発明においてアジュバントを使用するために適したイミダゾキノロン化合物の例としては、Imiquamodおよびそのホモログ(例えば、「Resiquimod 3M」)が挙げられ、さらに参考文献178および179に記載される。
【0081】
本発明はまた、上記に同定される1つ以上のアジュバントの局面の組み合わせを含む。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明において使用され得る:(1)サポニンおよび水中油型乳剤[180];(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば3dMPL)[181];(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[182];(5)例えば、QS21および/または水中油型乳剤と3dMPLとの組み合わせ[183];(6)大きい粒子サイズの乳剤を生成するためにサブミクロン乳剤中に微流動化させるかまたはボルテックスされたかのいずれかである、10%スクアラン、0.4%Tween 80TM、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDPを含むSAF;(7)2%スクアレン、0.2%Tween 80、ならびにモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコラート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1つ以上の細菌細胞壁成分を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem)、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM);ならびに(8)1つ以上の無機塩類(アルミニウム塩のような)+LPSの非毒性誘導体(3dMPLのような)。
【0082】
免疫刺激物質として作用する他の基質は、参考文献117の第7章に開示される。
【0083】
(医学的方法および医学的使用)
一度処方されると、本発明の組成物は、直接被験体に投与され得る。処置される被験体は、動物であり得;特にヒト被験体が処置され得る。本ワクチンは特に、ワクチン接種をされる子供および10代に有用である。これらは、全身ルートおよび/または粘膜ルートにより送達され得る。
【0084】
代表的に、免疫原性組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかの注射可能物として調製され;注射前の液体ビヒクルのなかで溶液に適した固体の形態または懸濁液に適した固体の形態もまた調製され得る。本調製物はまた、アジュバントの効果を増強するために乳化されるか、またはリポソームにカプセル化され得る。本組成物の直接的な送達は、一般的に非経口的である(例えば、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内のいずれかへの注射により、あるいは組織の間質に送達されることにより)。本組成物はまた、病巣に投与され得る。他の投与様式としては、経口投与、肺内投与、坐剤および経皮的(transdermal)または経皮的(transcutaneous)適用(例えば参考文献184を参照のこと)、針無しおよびハイポスプレーが挙げられる。投薬処置は、単回投薬スケジュールまたは複数回投薬スケジュールであり得る(例えば、ブースター投薬を含む)。
【0085】
本発明のワクチンは、好ましくは無菌である。これらは、好ましくは発熱物質を含まない。これらは好ましくは、例えばpH6とpH8との間、一般的には約pH7に緩衝化される。ワクチンが水酸化アルミニウム塩を含有する場合、ヒスチジン緩衝液の使用が好ましい[185]。
【0086】
本発明のワクチンは、低レベル(例えば<0.01%)で界面活性剤(例えば、Tween 80のようなTween)を含み得る。本発明のワクチンは、特に凍結乾燥される場合、糖アルコール(例えば、マンニトール)またはトレハロース(例えば、約15mg/ml)を含有し得る。
【0087】
個々の抗原の至適用量は、経験的に評価され得る。しかしながら、一般的に本発明のサッカリド抗原は、1用量あたり各サッカリド0.1μgと100μgとの間の用量で、代表的に0.5mlの投薬容量を用いて投与される。この用量は、代表的に1用量あたり5μgと20μgとの間のサッカリドである。これらの値は、サッカリドとして測定される。
【0088】
本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち感染を予防する)であるか治療的(すなわち感染後の疾患を治療するため)であるかのいずれかであってもよいが、代表的に予防的である。
【0089】
本発明は、医薬における使用のためにキャリアタンパク質およびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を提供する。
【0090】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起する方法を提供し、本発明に従って、患者にワクチンを投与する工程を包含する。特に、本発明は患者において免疫応答を惹起する方法を提供し、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を患者に投与する工程を包含する。この免疫応答は、好ましくは、髄膜炎菌性の疾患、肺炎球菌性の疾患またはH.influenzaeに対して防御的であり、そして体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を含み得る。この患者は、成人または小児であり得る。この患者は、0〜6ヶ月齢、6〜12ヶ月齢、1〜5年齢、5〜15年齢、15〜55年齢または55年齢より上の年齢であり得る。好ましくは、この患者は、子供である。本方法は、髄膜炎菌、肺炎球菌またはH.influenzaeに対してすでに初回免疫されている患者において、追加免疫応答を惹起し得る。
【0091】
サッカリド抗原結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントは、同時に、連続的に、または別々に投与され得る。例えば、α−グリコシルセラミドアジュバントは、サッカリド抗原結合体の投与前に哺乳動物を初回免疫するために投与され得るか、またはサッカリド抗原結合体の投与後その結合体に対する哺乳動物の免疫応答を高めるために投与され得る。1つより多いサッカリド抗原結合体が投与される場合、このサッカリド抗原結合体は同時に投与され得、α−グリコシルセラミドアジュバントが投与されると、このサッカリド抗原結合体の混合物に別々に、同時にまたは連続的に投与され得る。
【0092】
免疫応答を惹起する本方法は、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原の初回用量を投与する工程を包含し、そして続いてキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の任意の第2の非アジュバント性用量を投与する工程を包含する。サッカリド抗原結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントの初回用量は、同時に、連続的にまたは別々に投与され得る。
【0093】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供し、ここでこの医薬はα−グリコシルセラミドアジュバントとともに投与される。
【0094】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用を提供し、ここでこの医薬はキャリアに結合体化されたサッカリド抗原とともに投与される。
【0095】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供する。
【0096】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供し、ここでこの患者は、α−グリコシルセラミドアジュバントを用いて前処置されている。
【0097】
さらに本発明は、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用を提供し、ここで患者は、キャリアに結合体化されたサッカリドを用いて前処置されている。
【0098】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供し、ここで該患者は、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を用いて前処置されている。
【0099】
本医薬は、好ましくは免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。本医薬は、好ましくは予防および/またはNeisseria(例えば、髄膜炎菌、敗血症、淋病など)、H.influenzae(例えば、中耳炎、気管支炎、肺炎、小胞炎、心膜炎、髄膜炎など)または肺炎球菌(例えば、髄膜炎、敗血症、肺炎など)により引き起こされる疾患の予防および/または処置のためである。従って、細菌性髄膜炎のこの予防および/または処置が好ましい。
【0100】
ワクチンは、標準的動物モデルにおいて試験され得る(参考文献186を参照のこと)。
【0101】
さらに本発明は:a)キャリアに結合体化されたサッカリド抗原およびb)α−グリコシルセラミドアジュバントを含むキットを提供する。
【0102】
(定義)
用語「〜を含む(comprising)」は、「〜を含む(including)」および「〜からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、排他的にXからなり得るか、または何かの付加を含み得る(例えば、X+Y)。
【0103】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0104】
用語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないものであり得る。必要な場合、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【実施例】
【0105】
(本発明を実施するための様式)
(実施例1:α−GalCerは、サッカリド抗原に対する免疫応答を抑制する)
5匹の6週齢の雌性マウス(系統:C57BL/6)4群を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)S.pneumoniae(Streptopur)の23個の異なる血清群由来の23個のポリサッカリドの混合物3.5μg〜10μg、または4)3.5μg〜10μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて免疫した。免疫は、100μlの容量で筋肉内であった。4群すべてのマウスを、12週後3.5〜10μgのStreptopurを用いて追加免疫した。この免疫スケジュールを図1Aに示す。
【0106】
このマウスを、初回免疫から4日後、8日後および12日後および追加免疫から4日後、8日後および12日後に採血し、血液中のS.pneumoniae特異的抗体のレベルをELISAにより決定した。Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたマウスは、Streptopurのみを用いて初回免疫されたマウスに比較して、減少したS.pneumoniae特異的抗体力価(特に初回投薬後(図3A))を示した(図2および図3)。このことは、α−GalCerがサッカリド抗原に対する免疫応答を抑制することを示している。
【0107】
18〜22週後、マウスを屠殺し、脾臓中のS.pneumoniae特異的B細胞の数をElispotにより決定した。α−GalCerを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスの脾臓もまた、PBSを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスの脾臓に比較して、少ない数のS.pneumoniae特異的B細胞を含んでいた(図4)。これらの結果は、α−GalCerがサッカリド抗原に対する免疫応答を抑制するという示唆を支持する。
【0108】
さらなる実験を、Streptopurおよびα−GalCerを用いて免疫されたマウスにおいて観察されるS.pneumoniaeポリサッカリドに対する低い抗体応答が不変異体ナチュラルキラーT細胞を必要とするか評価するために実施した。6週齢の雌性マウスの4群(C57L/6 WT、CD1d+/−、CD1d−/−、またはJA18−/−)を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)3.5μgのStreptopur(SP)または4)3.5μg〜10μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて免疫した。免疫は50μlの容量で筋肉内であった。このマウスを、初回免疫から4日後、8日後および12日後に採血し、血液中のS.pneumoniae特異的抗体のレベルをELISAにより決定した。この免疫スケジュールを図1Bに示す。
【0109】
Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたC57L/6野生型マウスは、Streptopurのみを用いて初回免疫されたCD57L/6野生型マウスに比較して、減少したS.pneumoniae特異的抗体力価を示した(図8A)。このことにより、α−GalCerがS.pneumoniaeサッカリド抗原に対する免疫応答を抑制することが確認された。
【0110】
対照的に、Streptopurのみを用いて初回免疫されたJA18−/−、CD1d−/−およびCD1d−/+マウスに比較して、Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたJA18−/−、CD1d−/−およびCD1d−/+マウスにおけるS.pneumoniae特異的抗体力価に有意な差はなかった(図8B〜8D)。これらの結果は、S.pneumoniaeサッカリドに対する応答のα−GalCer誘導性の阻害が、不変異体NKT細胞を必要とすることを示唆している。
【0111】
Streptopurのみを用いて初回免疫されたJA218−/−、CD1d−/−およびCD1d−/+マウスの抗体力価に比較して、α−GalCer非存在下でStreptopurのみを用いて初回免疫されたC57L/6野生型マウスにおいて、S.pneumoniae特異的抗体力価は低かった(図9)。これらの結果は、不変異体NKT細胞が、α−GalCer非存在下でさえS.pneumoniaeサッカリドに対する抗体応答に負の作用を有し得、この負の作用がα−GalCer存在下においてさらに強力であることを示している。
【0112】
さらなる実験が、α−GalCerによるサッカリド抗原に対する免疫応答の抑制が、6週齢と8週齢の間のマウスにおいてみられることを実証している(図10)。
【0113】
(実施例2:α−GalCerは、サッカリド抗原結合体に対する免疫応答を増強する)
α−GalCerをS.pneumoniae(Streptopur)由来のサッカリド抗原とともに投与したときに観察された抗体力価の減少と対照的に、α−GalCerの投与は、キャリアタンパク質に結合体化されたサッカリドに対する抗体応答を増強させた。
【0114】
Hibヒト血清アルブミン結合体(Hib−HSA)およびα−GalCerを用いて免疫されたマウスは、Hib−HSA結合体およびPBSを用いて免疫されたマウスよりかなり高いHib特異的Ig力価を示した(図11)。同様に、MenC−CRM結合体およびα−GalCerを用いる免疫は、MenC−CRM結合体およびPBSを用いて免疫されたマウスに比較して、MenC特異的Ig力価における有意な増加を示した(図7、図1Cのスケジュールに従って免疫された)。
【0115】
図5に示されるように、MenCに対する抗体応答はMenCのみを用いて免疫されたマウスにおいて観察されなかったが、MenC−CRM結合体およびα−GalCerを用いて免疫されたマウスは、MenC−CRM結合体およびPBSを用いて免疫されたマウスに比較してMenC−特異的抗体力価における有意な上昇を示した。結合体とα−GalCerとの混合は、サッカリドおよび結合体の両方に対する抗体応答を増強した。
【0116】
MenA−CRM結合体およびα−GalCerを用いる免疫はまた、MenA−特異的Ig力価における上昇を生じた(図6)。しかしながら、同時に実施された実験において、非結合体化MenAサッカリドにおけるα−GalCerの強力な阻害作用は観察されなかった。
【0117】
まとめると、α−GalCerはサッカリド抗原に対する免疫応答を阻害し得るが、この作用は逆転され得、そしてサッカリド抗原がキャリア結合体化される場合、サッカリド抗原に対する免疫応答はα−GalCerにより増強され得る。
【0118】
本発明は例示のみによって記載されており、詳細の改変は本発明の精神および範囲から逸脱せずになされ得ることが理解される。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】A)α−GalCer有りまたは無しにおいてS.pneumoniaeポリサッカリドを用いるマウスの免疫スケジュール。6週齢の雌性マウスの4群(C57L/6 WT、CD1d+/−、CD1d−/−、またはJA18−/−)を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)S.pneumoniae(Streptopur)の23の異なる血清群由来のポリサッカリドの混合物3.5μg〜10μg、または4)3.5μg〜10μgのStreptopur(SP)および0.1μgのα−GalCerを用いて免疫した。免疫は50μlの容量で筋肉内であった。このマウスを、初回免疫から4日後、8日後および12日後に採血し(4dp1、8dp1、12dp1)、血液中のS.pneumoniaeに対する抗体のレベルをELISAにより決定した。初回免疫から10週後または12週後に、すべてのマウスを、SPのみ3.5μg〜10μgの追加免疫用量を用いて免疫した。このマウスを追加免疫から4日後、8日後および12日後に採血し(4dp2、8dp2、12dp2)、血液中のS.pneumoniaeに対する抗体のレベルをELISAにより決定した。初回免疫から18〜22週後、このマウスを屠殺し、S.pneumoniae特異的B細胞をElispotにより決定した。
【0125】
B)α−GalCer有りまたは無しにおいてS.pneumoniaeポリサッカリドを用いるマウスの免疫スケジュール。図1−Aと同様であるが、免疫には50μl中3.5μgのSPを使用した。
【0126】
C)α−GalCer有りまたは無しにおいて、タンパク質キャリアと単純に結合体化されたまたは混合された異なるサッカリドを用いるマウスの免疫スケジュール。野生型C57BL/6マウスの10群を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)10μgのMenCポリサッカリド、4)20μgのCRMタンパク質キャリア、5)30μgのMenC−CRM結合体、6)CRMタンパク質キャリアを混合された10μgMenCポリサッカリド、または3)〜6)の組成物およびα−GalCer(7〜10の群)を用いて、0日に初回免疫した。マウスを、初回免疫してから2週間後および4週間後に初回免疫した同じ組成物を用いて追加免疫した。マウスを、最初の初回免疫から2週後、4週後および6週後(2wp1、2wp2および2wp3)に採血し、MenCポリサッカリドおよびCRMキャリアの両方に対する抗体のレベルを測定した。
【図2】S.pneumoniae特異的抗体力価は、Streptopurのみを用いて初回免疫されたマウスに比較して、Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたマウスにおいて低い。3.5μgのStreptopur(SP)のみ(黒四角)または3.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCer(白四角)を用いて初回免疫してから4日後、8日後および12日後のマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価(幾何平均)を示す(*はSPのみに対するp<0.05を示し、**はSPのみに対するp<0.01を示す)。
【図3】Streptopurのみを用いて初回免疫および追加免疫されたマウスに比較して、Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスにおけるS.pneumoniae特異的抗体力価は低い。A)3.5〜11.5μgのStreptopurおよびPBSを用いて初回免疫してから8日後のマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価の変量(幾何平均)(黒)または3.5〜11.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて初回免疫してから8日後のマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価の変量(幾何平均)(グレイ)。(これらのデータは、4つの実験からプールされる)。B)3.5〜11.5μgのStreptopurを用いる追加免疫から8日後の、同じマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価の変量(幾何平均)。(これらのデータは、実験18、19および29よりプールされる)。3.5〜11.5μgのStreptopurを用いて初回免疫されたマウスの結果を黒で示し、3.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて初回免疫されたマウスの結果をグレイで示す。
【図4】PBSを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスに比較して、α−GalCerを用いて初回免疫しStreptopurを用いて追加免疫されたマウスにおいて、106個の脾細胞あたりS.pneumoniae特異的B細胞の数は少ない。2つの群のマウスを、0日に0.1μgまたは1.0μgのα−GalCer(aGC)を用いて初回免疫し、12週後11.5μgのStreptopur(SP)を用いて免疫した。第3群のマウスを、0日にPBSを用いて免疫し、12週後に11.5μgのSPを用いて免疫した。第4群のマウスを、0日および12週後の両方にPBSを用いて免疫した。最初の初回免疫から22週後、マウスを屠殺し、106個の脾細胞あたりS.pneumoniae特異的B細胞の数をElispotにより測定した。
【図5】α−GalCerは、MenC−CRM結合体においてMenCサッカリドおよびCRMタンパク質キャリアの両方に対する特異的抗体応答を増強する。野生型マウスを、CRMタンパク質キャリアを用いて混合された10μgのMenCポリサッカリド、20μgCRMタンパク質キャリア、10μgMenCポリサッカリド(MenC+CRM)または30μgのMen−CRM結合体、あるいはα−GalCerを用いて混合された同じ組成物を用いて免疫した。マウスを、初回免疫してから2週間後および4週間後に初回免疫した同じ組成物を用いて追加免疫した。図の一番上の線は、MenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体のみ(黒)、あるいはMenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体およびα−GalCer(グレイ)を用いて免疫されたマウスにおける、第2免疫から1週間後(1wp2)および第2免疫から1週間後(2wp2)のMec−特異的Ig力価を示す。図の2番目の線は、MenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体のみ(黒)、あるいはMenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体およびα−GalCer(グレイ)を用いて免疫されたマウスにおける、第2免疫から2週間後(2wp2)および第3免疫から2週間後(2wp3)のCRM−特異的Ig力価を示す。
【図6】α−GalCerは、MenA−CRM結合体に対する免疫応答を増強する。マウスを、α−GalCer有りまたは無しにおいて、10μgのMenAポリサッカリドまたはMenA−CRM結合体を用いて免疫した。MenAポリサッカリドに対する抗体力価を、初回免疫から4日後、8日後および12日後に測定した。α−GalCerは、MenAポリサッカリドに対する免疫応答を増強した。
【図7】抗体応答は、α−GalCerおよびMenC−CRM結合体を用いて免疫されたマウスにおいて増強される。マウスを、PBS(黒)またはα−GalCerと混合された30μgのMenC−CRM結合体を用いて免疫した。各群のマウスを3回免疫した。MenC特異的力価を、第2免疫から1週間後(1wp2)および第3免疫から1週間後(1wp3)に測定した。
【図8】S.pneumoniaeポリサッカリドに対する応答のα−GalCer誘導性の阻害は、不変異体NKT細胞を必要とする。3.5μgSPのみ(グレイの記号)または3.5μgSPおよび0.1μgα−GalCer(黒の記号)を用いてマウスを初回免疫してから4日後、8日後および12日後のS.pneumoniae特異的抗体のレベルを:A)野生型マウス、B)Ja18−/−マウス、C)mCD1d−/−マウスおよびD)mCD1d−/+マウスにおいて比較した。α−GalCerと組み合わせてStreptopurを用いて免疫されたJa18−/−マウス、CD1d−/−マウスおよびCD1d−/+マウスと比較して、Streptopurのみを用いて免疫されたJa18−/−マウス、CD1d−/−マウスおよびCD1d−/+マウスにおける抗体力価に有意な差は見られなかった。
【図9】不変異体NKTは、S.pneumoniaeポリサッカリドに対する抗体応答に対して負の調節役割を有する。図1Bにおけるプロトコールに従って、単にStreptopurを用いてマウスを初回投与してから4日後、8日後および12日後のS.pneumoniae特異的抗体のレベル(IgM力価幾何平均)を比較した。図9Aは、C57野生型マウスにおける抗体力価(四角)を、C57mCD1d+/−マウスにおける抗体力価(三角)と比較する。図9Bは、C57野生型マウスにおける抗体力価(四角)を、C57mCD1d−/−マウスにおける抗体力価(三角)と比較する。図9Cは、C57野生型マウスにおける抗体力価(四角)を、C57Ja281−/−マウスにおける抗体力価(丸)と比較する。野生型マウスにおける抗体力価は、Ja281−/−マウス、CD1−/−マウスおよびCD1+/−マウスより低い。
【図10】α−GalCerは、3〜8週齢のマウスにおいてStreptopurに対する免疫応答を抑制する。S.pneumoniae特異的IgM抗体のレベル(幾何平均)を3.5μgのStreptopur(SP)のみ(白)または3.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCer(黒)を用いて2週齢(2W)、3週齢(3W)、4週齢(4W)、5週齢(5W)および6〜8週齢(6〜8W)のマウスを初回免疫から8日後比較される。
【図11】抗体応答は、α−GalCerおよびHib−HSA結合体を用いて免疫されたマウスにおいて増強される。マウスを、PBS(検出されるには非常に低い結果)、α−GalCer(斜線)またはMF59(グレイ)を用いて混合された、15μgのHib−ヒト血清アルブミン(Hib−HSA)結合体を用いて免疫した。各群のマウスを3回免疫した。Hib特異的力価を第2免疫から1週間後(1wp2)および第3免疫から1週間後(1wp3)測定した。
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用されるすべての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、特にサッカリド抗原のためのワクチンアジュバントの分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景分野)
ワクチンは、しばしば追加免疫活性に対するアジュバントを含む。公知のアジュバントの例として、アルミニウム塩、水中油型乳剤、サポニン、サイトカイン、脂質およびCpGオリゴヌクレオチドが挙げられる。近年、アルミニウム塩およびモノホスホリル脂質MF59TMのみが、ヒトでの使用について認可されている。しかしながら、アルミニウム塩は安全性の注意を必要とし、いくつかの抗原と不適合性である。それゆえ、さらにアジュバントを開発する必要がある。
【0004】
αーガラクトシルセラミド(α−GalCer)は、糖脂質、より具体的にはグリコシルセラミドであり、本来海洋性の海綿から単離される[非特許文献1]。α−GalCerは、不変異体のナチュラルキラーT細胞に対してMHCクラスI様分子である、CD1dにより提示され、腫瘍細胞に対するナチュラルキラーT細胞応答を誘導する能力について本来調べられた[特許文献1]。不変異体のナチュラルキラーT細胞はまた、B細胞活性を誘導することが示されており、B細胞増殖および抗体産生を増強する[非特許文献2、非特許文献3]。近年、α−GalCerは、種々の共投与タンパク質抗原に関してアジュバントとして作用することが示されている[特許文献2]。照射されたスポロゾイトまたはマラリア抗原を発現している組み換えウイルスとα−GalCerとの共投与は、マウスにおいて防御性抗マラリア免疫のレベルを増強することが示されている[非特許文献4]。α−GalCerはまた、HIV−1 gag遺伝子およびHIV−1 env遺伝子をコードしているDNAワクチンに関してアジュバントとしてはたらくことが示されている[非特許文献5]。
【0005】
しかしながら、すべてのワクチンがタンパク質抗原を含有するわけではない。いくつかの市販のワクチンは、サッカリド抗原を含有する。例えば、PneumovaxTMは、23の肺炎球菌血清型由来のサッカリド抗原を含有する。MencevaxTMおよびMenomuneTMは、Neisseria meningitidis A、C、YおよびW−135由来のサッカリド抗原を含有する髄膜炎菌ワクチンである。それゆえ、サッカリド抗原に対するアジュバントとしてα−GalCerの使用を広げることが所望される。
【0006】
DNAおよびタンパク質抗原に対するアジュバントとしてのα−GalCerとの成功にもかかわらず、本発明者らは、驚くことに、いくつかのサッカリド抗原に関してアジュバントとして作用しないことを見出した。対照的に、これら抗原とα−GalCerとの投与は、アジュバントを用いないコントロールに比較して、抗体力価の実質的な減少を引き起こすことが見出されている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1018548号明細書
【特許文献2】国際公開第03/09812号パンフレット
【非特許文献1】Natoriら、「Tetrahedron」、1994年、50:p.2771〜2783
【非特許文献2】Galliら、「Vaccine」、2003年、21:S2/48〜S2/54
【非特許文献3】Galliら、「J.Exp Med」、2003年、197:p.1051〜1057
【非特許文献4】Gonzalez−Aseguinolazaら、「J.Exp Med」、2002年、5:p.617〜624
【非特許文献5】Huangら、要旨396、第10回 Conference on retroviruses and opportunistic infection
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、α−GalCerが存在する場合の、抗サッカリド抗体応答の阻害の問題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
驚くことに、サッカリド抗原がキャリアに結合体化される場合、α−GalCerの存在下おける抗サッカリド免疫応答の抑制は逆転され得、サッカリド抗原に対する免疫応答はさらに増強され得ることが見出されている。それゆえ、本発明は、(a)キャリアに結合体化されたサッカリド抗原;および(b)α−グリコシルセラミドアジュバント、を含む組成物を提供する。
【0009】
(α−グリコシルセラミドアジュバント)
本発明の組成物中に含まれるアジュバントは、当該分野において公知の任意の適したα−グリコシルセラミドであり得る。好ましくは、α−グリコシルセラミドアジュバントは、式(I)の化合物:
【0010】
【化1】
であり、ここで、
R1はHまたはOHを表し、
Xは1と30との間の整数を表し、
R2は以下(a)〜(e)からなる群;
(a)−CH2(CH2)YCH3
(b)−CH(OH)(CH2)YCH3
(c)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)2
(d)−CH=CH(CH2)YCH3
(e)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)CH2CH3
から選択される置換基を表し(ここでYは、5と17の間の整数を表す)、
R3はH、OH、NH2、NHCOCH3またはモノサッカリドを表し、
R4はOHまたはモノサッカリドを表し、
R5はH、OHまたはモノサッカリドを表し、
R6はH、OHまたはモノサッカリドを表し、そして
R7はH、CH3、CH2OHまたはモノサッカリドを表す。
【0011】
Xは、好ましくは7と27との間であり、より好ましくは9と24との間であり、そしてより好ましくは13と20との間である。Yは、好ましくは7と15との間であり、さらに好ましくは9と13との間である。
【0012】
R3がモノサッカリドである場合、好ましくはα−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノースまたはβ−D−グルコピラノースから選択される。
【0013】
R4がモノサッカリドである場合、好ましくは、β−D−ガラクトフラノースまたはN−アセチルα−D−ガラクトピラノースから選択される。
【0014】
R5がモノサッカリドである場合、好ましくは、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノースまたはβ−D−グルコピラノースから選択される。
【0015】
R6がモノサッカリドである場合、好ましくは、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノースまたはβ−D−グルコピラノースから選択される。
【0016】
R7がモノサッカリドである場合、好ましくは、メチルα−D−ガラクトピラノシド、メチルβ−D−ガラクトピラノシド、メチルα−D−グルコピラノシドまたはメチルβ−D−グルコピラノシドから選択される。
【0017】
好ましくは、R5およびR6は異なる。好ましくは、R5およびR6の1つはHである。
【0018】
本発明の組成物の含有物として適したα−グリコシルセラミドアジュバントのさらなる例は、参考文献2に提供される。
【0019】
好ましくは、α−グリコシルセラミドアジュバントは、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)(すなわち、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=HかつR7=CH2OH)である。本発明の組成物に含まれるα−GalCerは、直接海洋性の海綿体から単離されてもよいし、または化学的に合成された生成物であってもよい。本発明の組成物での使用に適したα−ガラクトシルセラミドの例は、参考文献8に提供される。好ましいα−ガラクトシルセラミドは、KRN7000であり、これは式(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオールを有する。KRN7000の合成は、参考文献8に記載される。
【0020】
α−グリコシルセラミドアジュバントはまた、α−GalCerに比較して脂肪アシル鎖および/またはスフィンゴシン鎖が切り取られたα−GalCerの短縮型アナログであり得る。α−GalCerの短縮型アナログの例は、参考文献9に提供される。α−GalCerの好ましい短縮型アナログは、「OCH」であり、好ましいα−GalCerに比較して、脂肪アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、そしてスフィンゴシン鎖は9つの炭化水素の切断を有する(すなわち、R1=H、X=21、R2=CH(OH)(CH2)4CH3、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=HおよびR7=CH2OH)。さらに好ましいα−GalCerの短縮型アナログは、α−GalCerに比較して、脂肪アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、そしてスフィンゴシン鎖が7つまたは3つの炭化水素の切断を有するアナログを含む(すなわち、R1=H、X=21、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=H、R7=CH2OHおよびR2は、CH(OH)(CH2)6CH3またはCH(OH)(CH2)10CH3である)。
【0021】
(サッカリド抗原)
好ましくは、本発明の組成物に含まれるキャリアに結合体化されるサッカリド抗原は、細菌性サッカリドであり、特に細菌性莢膜サッカリドである。
【0022】
本発明の組成物に含まれる得る細菌性莢膜サッカリドの例としては、Neisseria meningitidis(血清群A、B、C、W135またはY)、Streptococcus pneumoniae(血清型4、6B、9V、14、18C、19Fまたは23F)、Streptococcus agalactiae(Ia型、Ib型、II型、III型、IV型、V型、VI型、VII型またはVIII型)、Haemophilus influenzae(代表的株:a、b、c、d、eまたはf)、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureusなどが挙げられる。本発明の組成物に含まれ得る他のサッカリドとしては、グルカン(例えば、Candida albicansにおけるもののような真菌性グルカン)および真菌性莢膜サッカリド(例えば、Cryptococcus neoformansの莢膜由来)が挙げられる。
【0023】
N.meningitidis血清群A(MenA)莢膜は、C3およびC4の位置に部分的にO−アシル化を有する(α1→6)連結N−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェートのホモポリマーである。N.meningitidis血清群B(MenB)莢膜は、(α2→8)連結シアル酸のホモポリマーである。N.meningitidis血清群C(MenC)莢膜サッカリドは、7および/または8の位置で可変性のO−アセチル化を有する(α2→9)連結シアル酸のホモポリマーである。N.meningitidis血清群W135サッカリドは、シアル酸−ガラクトースジサッカリドユニット[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]からなるポリマーである。これはシアル酸の7および9の位置で可変性のO−アセチル化を有する[10]。ジサッカリド反復ユニットがガラクトースの代わりにグルコースを含む[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]ことを除いて、N.meningitidis血清群Yサッカリドは、血清群W135サッカリドに類似している。これはまた、シアル酸の7および9の位置で可変性のO−アセチル化を有する。
【0024】
b型H.influenzae莢膜(Hib)サッカリドは、リボース、リビトールおよびリン酸塩のポリマー[「PRP」、(ポリ−3−β−D−リボース−(1,1)−D−リビトール−5−ホスフェート)]である。
【0025】
本発明の組成物は、サッカリド抗原結合体の混合物を含有し得る。好ましくは、本発明の組成物は、1つより多いN.meningitidisの血清群由来のサッカリド抗原を含有し、例えば、組成物は、血清群A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+Y、A+C+W135+Yなど由来のサッカリド結合体を含有し得る。好ましい組成物は、血清群CおよびY由来のサッカリド結合体を含有する。他の好ましい組成物は、血清群C、W135およびY由来のサッカリド結合体を含有する。
【0026】
混合物が血清群A由来の髄膜炎菌性サッカリドおよび少なくとも1つの他の血清群サッカリドを含む場合、任意の他の血清群サッカリドに対するMenAサッカリドの比(w/w)は1より大(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれより高い)であり得る。血清群A:C:W135:Y由来のサッカリドに関する好ましい比は:1:1:1:1;1:1:1:2;2:1:1:1;4:2:1:1;8:4:2:1;4:2:1:2;8:4:1:2;4:2:2:1;2:2:1:1;4:4:2:1;2:2:1:2;4:4:1:2;および2:2:2:1である。
【0027】
さらに好ましい本発明の組成物は、Hibサッカリド結合体および少なくとも1つのN.meningitidis血清群由来のサッカリド結合体、好ましくは1つより多いN.meningitidis血清群由来のサッカリド結合体を含有する。例えば、本発明の組成物は、Hib結合体およびN.meningitidis血清群A、C、W135およびY由来の結合体を含み得る。
【0028】
本発明は、さらにStreptococcus pneumoniaeサッカリド結合体を含有する組成物を含む。好ましくは、この組成物は、1つより多いStreptococcus pneumoniaeの血清型を含有する。好ましい組成物は、Streptococcus pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F(7−バレント)由来のサッカリド結合体を含有する。組成物はさらに、Streptococcus pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1および5(9−バレント)由来のサッカリド結合体を含有し得るか、またはStreptococcus pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1、5、3および7F(11−バレント)由来のサッカリド結合体を含有し得る。
【0029】
さらに本発明の好ましい組成物は、肺炎球菌サッカリド結合体およびHibおよび/またはN.meningitidis由来のサッカリド結合体を含有する。好ましくは、本発明の組成物は、S.pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F由来のサッカリド結合体ならびにHibサッカリド結合体を含有し得る。好ましくは、本発明の組成物は、S.pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F由来のサッカリド結合体およびN.meningitidis血清型A、C、W135およびY由来のサッカリド結合体を含有し得る。本発明に従う組成物はまた、S.pneumoniae血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F由来のサッカリド結合体、Hibサッカリド結合体およびN.meningitidis血清型A、C、W135およびY由来のサッカリド結合体を含み得る。
【0030】
個々のサッカリド抗原結合体の防御効果は、それらを組み合わせることにより除かれないことが好ましいが、実際の免疫原性(例えば、ELISA力価)は減少され得る。
【0031】
(莢膜サッカリド抗原の調製)
莢膜サッカリド抗原の調製のための方法は、周知である。例えば参考文献11は、N.meningitidis由来のサッカリド抗原の調製を記載する。H.influenzae由来のサッカリド抗原の調製は、参考文献12の第14章に記載される。S.pneumoniae由来のサッカリド抗原およびサッカリド結合体の調製は、当該分野において記載されている。例えば、PrevenarTMは、7バレントの肺炎球菌結合体ワクチンである。S.agalactiae由来のサッカリド抗原の調製のためのプロセスは、参考文献13および14に詳細に記載される。
【0032】
サッカリド抗原は、化学的に修飾され得る。例えば、1つ以上のヒドロキシル基を保護基で置換して修飾され得る。アセチル基が保護基で置換され加水分解が妨げられる場合、これは特に髄膜炎菌血清型Aに有用である[15]。そのような修飾サッカリドは、本発明の意味においては、なお血清型Aサッカリドである。
【0033】
莢膜サッカリドはオリゴサッカリドの形成において使用され得る。これらは精製した莢膜ポリサッカリドの断片化により(例えば加水分解により)簡便に形成され、通常その後所望されるサイズの断片に精製される。
【0034】
ポリサッカリドの断片化は、好ましくは、オリゴサッカリドにおける30未満の最終的な平均重合度(DP)を与えるために実施され得る。DPは簡便に、イオン交換クロマトグラフィーまたは比色アッセイにより測定され得る[16]。
【0035】
加水分解が実施される場合、加水分解物は、一般的に短い長さのオリゴサッカリドを除去するためにサイズ分類される[17]。これは限外濾過に続くイオン交換クロマトグラフィーのような種々の方法で達成され得る。約6以下の重合度を有するオリゴサッカリドは、好ましくは血清型Aにおいて除去され、そして約4未満の重合度を有するオリゴサッカリドは、好ましくは血清型W135およびYにおいて除去される。
【0036】
(キャリア)
好ましくは、キャリアはタンパク質である。本発明の組成物においてサッカリド抗原に結合体化される好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドのような細菌毒素である。適したキャリアタンパク質としては、ジフテリア毒素のCRM197変異体[18〜20]、ジフテリアトキソイド、N.meningitidis外膜タンパク質[21]、合成ペプチド[22、23]、熱ショックタンパク質[24、25]、百日咳タンパク質[26、27]、サイトカイン[28]、リンホカイン[28]、ホルモン[28]、成長因子[28]、N19タンパク質[30]のような、種々の病原体由来抗原の複合ヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[29]、H.influenzae由来のタンパク質D[31、32]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[33]、肺炎球菌溶血素[34]、鉄取り込みタンパク質[35]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[36]などが挙げられる。
【0037】
サッカリド抗原のキャリアへの結合は、好ましくは−NH2基(例えば、キャリアタンパク質のリシン残基の側鎖またはアルギニン残基の側鎖における)を介する。サッカリドは遊離アルデヒド基を有する場合、このアルデヒド基は、キャリア中のアミンと反応して、還元アミノ化により結合体を形成する。結合はまた、−SH基(例えば、システイン残基の側鎖における)を介し得る。
【0038】
組成物が1つより多いサッカリド抗原を含有する場合、1つより多いキャリアを使用することが可能である(例えば、キャリア抑制の危険性を減少させるために)。従って、異なるキャリアが異なるサッカリド抗原について用いられ得る。例えば、Neisseria meningitidis血清型Aサッカリドは、CRM197に結合体化される一方で、C型サッカリドは、破傷風トキソイドに結合体化され得る。ある特定のサッカリド抗原に1つより多いキャリアを使用することもまた可能である。このサッカリドは、2つの群にあり、いくつかはCRM197に結合体化され、そしてその他は破傷風トキソイドに結合される。しかしながら一般的に、同じキャリアをすべてのサッカリドに使用することが好ましい。
【0039】
単一キャリアタンパク質は1つより多いサッカリド抗原を保持する[37、38]。例えば、単一キャリアタンパク質は、異なる病原体由来のサッカリドまたは同じ病原体の異なる血清型由来のサッカリドに結合体化し得る。この目的を果たすために、異なるサッカリドが結合体化反応の前に混合され得る。しかしながら一般的に、各血清群について別個の結合体を有することが好ましく、異なるサッカリドは結合体化後に混合される。別々の結合体は、同じキャリアをベースにし得る。
【0040】
1:5(すなわち、過剰のタンパク質)と5:1(すなわち、過剰のサッカリド)との間のサッカリド:タンパク質比(w/w)を有する結合体が好ましい。1:2と5:1との間の比が好ましく、同様に1:1.25と1:2.5との間の比が好ましい。
【0041】
結合体は、結合体化において遊離キャリアとともに使用され得る[39]。所定のキャリアタンパク質が本発明の組成物において遊離型および結合型の両方で存在する場合、好ましくは、非結合型形態は、全体として組成物の総キャリアタンパク質量のたったの5%にすぎず、さらに好ましくは重量で2%未満の存在である。
【0042】
結合体化の後、遊離サッカリドおよび結合体化サッカリドは別々にされ得る。多くの適した方法があり、疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過(tangential ultrafiltration)、ダイアフィルトレーションなどが挙げられる[参考文献40および41などを参照のこと]。
【0043】
任意の適した結合体化反応が、必要とされる場合、任意の適したリンカーとともに使用され得る。
【0044】
サッカリドは代表的に、結合体化前に活性化されるかまたは機能化される。活性化には、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸[42、43など])のようなシアニル化試薬が関与し得る。他の適した技術では、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシニミド、S−NHS、EDC、TSTU(参考文献44の緒言も参照のこと)を使用する。
【0045】
リンカー基を介する連結は、任意の公知の手順を使用して作られ得、例えば、この手順は、参考文献45および46に記載される。結合の1つの型としては、ポリサッカリドの還元アミノ化が挙げられ、生じるアミノ基をアジピン酸リンカー基の一方の端に結合させ、次いでタンパク質をこのアジピン酸リンカー基のもう一方の端に結合させる[47、48]。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[49]、ニトロフェニル−エチルアミン[50]、ハロアシルハライド[51]、グリコシド結合[52]、6−アミノカプロン酸[53]、ADH[54]、C4〜C12部分[55]などが挙げられる。リンカーの使用の代替として、直接的連結が使用され得る。タンパク質への直接的連結は、例えば参考文献56および57に記載されるように、ポリサッカリドの酸化およびその後のタンパク質との還元アミノ化を包含する。
【0046】
アミノ基のサッカリドへの導入(例えば、末端の=O基を−NH2で置換することによる)に続きアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシニミドジエステル)を用いる誘導体化およびキャリアタンパク質との反応を包含するプロセスが好ましい。
【0047】
結合後、遊離サッカリドおよび結合体化サッカリドは、別々にされ得る。多くの適した方法があり、疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過、ダイアフィルトレーションなどが挙げられる[参考文献58および59などを参照のこと]。
【0048】
本発明の組成物が脱重合化サッカリドを含有する場合、脱重合は結合体化より前に行うことが好ましい。
【0049】
(組成物のさらなる抗原性化合物)
本発明の組成物は、少なくとも1つのキャリアに結合体化されたサッカリド抗原を含有する。しかしながら、本発明の組成物は、上に記載されるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原に加え、1つ以上の以下の抗原を含有し得る:
−参考文献60〜66のもののような、N.meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原。タンパク質「287」(以下を参照のこと)および誘導体(例えば「ΔG287」)が特に好ましい。
−参考文献67、68、69、70などに開示されるもののような、N.meningitidis血清群B由来の外膜ベシクル(OMV)調製物。
−S.pneumoniae由来のタンパク質抗原(例えば、参考文献71に開示されるようなPhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130およびSp133由来)。
−不活化ウイルスのようなA型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、72、73;参考文献78の第15章]。
−表面抗原および/またはコア抗原のようなB型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、73、74;参考文献78の第16章]。
−C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば75]。
−必要に応じてペルタクチンおよび/または凝集原2および凝集原3とも組み合わせた、B.pertussis由来の、百日咳ホロ毒素(PT)および繊維状赤血球凝集素(FHA)のような、Bordetella pertussis由来の抗原[例えば、参考文献76および77;参考文献78の第21章]。
−ジフテリアトキソイドのようなジフテリア抗原[参考文献78の第13章]。
−破傷風トキソイドのような破傷風抗原[例えば、参考文献78の第27章]。
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、参考文献60、61、62]。
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、79、80、81、82、83、84、85]。
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、86]。
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、参考文献87]。
−IPVのようなポリオ抗原[例えば、88、89;参考文献78の第24章]。
−凍結乾燥不活化ウイルス[例えば91、RabAvertTM]のような狂犬病抗原[例えば90]。
−麻疹、ムンプスおよび/または風疹抗原[例えば、参考文献78の第19章、第20章および26章]。
−CagA[92〜95]、VacA[96、97]、NAP[98、99、100]、HopX[例えば101]、HopY[例えば101]のようなHelicobacter pylori由来の抗原および/またはウレアーゼ。
−血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質のようなインフルエンザ抗原[例えば、参考文献78の17章および18章]。
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば102]。
−Streptococcus agalactiae(ストレプトコッカスB群)由来のタンパク質抗原[例えば、103、104]。
−Streptococcus pyogenes(ストレプトコッカスA群)由来の抗原[例えば、104、105、106]。
−Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば107]。
−呼吸器合胞体ウイルス(RSV[108、109])およびパラインフルエンザウイルス(PIV3[110])のようなパラミクソウイルス由来の抗原。
−Bacillus anthracis[例えば、111、112、113]由来の抗原
−黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、4つの血清型のデング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルスのようなフラビウイルス科ファミリー(フラビウイルス属)のウイルス由来の抗原。
−古典的なブタ熱ウイルス(classical porcine fever virus)、ウシウイルス性下痢性ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルス由来のようなペスチウイルス抗原
−例えばパラボウイルスB19由来のパラボウイルス抗原。
【0050】
混合物は、さらにこれら抗原を1つ以上含有し、必要とされる場合解毒化され得る(例えば、化学的手法および/または遺伝子的手法による百日咳毒素の解毒化)。
【0051】
ジフテリア抗原が混合物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。
【0052】
混合物中の抗原は、代表的にそれぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘導するのに十分である。
【0053】
混合物中のタンパク質抗原の代替物として、抗原をコードしている核酸が使用され得る。従ってこの混合物のタンパク質成分が、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、例えばプラスミドの形成におけるDNA)により置換され得る。同様に、本発明の組成物は、サッカリド抗原を模倣したタンパク質(例えばミモトープ[114]または抗イディオタイプの抗原)を含み得る。
【0054】
(薬学的組成物の処方物)
本発明の結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントは、免疫原性組成物およびワクチンへの封入に特に適している。それゆえ本発明のプロセスは、免疫原性組成物またはワクチンとして結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントを処方する工程を包含し得る。本発明は、この方法において得ることのできる組成物およびワクチンを提供する。
【0055】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、キャリアタンパク質に結合体化されたサッカリド抗原およびα−グリコシルセラミドアジュバントに加え、代表的に「薬学的に受容可能なキャリア」を含み、このキャリアは、組成物を受ける個体に有害な抗体の産生をそれ自体では誘導しない任意のキャリアを含む。適したキャリアは、タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、トレハロース[115]、脂質凝集体(油滴またはリポソームのような)および不活化ウイルス粒子のような、代表的に大きく、ゆっくり代謝される巨大分子である。そのようなキャリアは当業者において周知である。本ワクチンはまた、水、生理食塩水、グリセロールなどのような希釈剤を含み得る。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤などのような補助剤が存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤の完全な考察は、参考文献116において入手可能である。
【0056】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効量のサッカリド抗原、および必要とされるならば、上記に言及した任意の他の成分を含む。「免疫学的有効量」とは、単回用量または一連の投与の一部としてかのいずれかにおいて、個体に投与する量が、処置または予防に関して有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康および身体的状態、年齢、処置される個体の分類学的群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成するための個体の免疫システムの能力、所望される予防の度合い、ワクチンの処方、医学的状態に関する処置医の評価および他の関連要因に依存して変化する。この量は、比較的広い範囲になることが期待され、この範囲は、慣習的な試験を通して決定され得る。投薬処置は、単回投薬スケジュールまたは複数回投薬スケジュール(例えば、追加免疫投薬が挙げられる)であり得る。
【0057】
本ワクチンは、他の免疫調節物質と併用して投与され得る。α−グリコシルセラミドは、本発明の免疫原性組成物内においてアジュバントとして作用する。本ワクチンは、付加的なアジュバントを含み得る。そのようなアジュバントとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:
A.ミネラル含有組成物
本発明における、アジュバントとしての使用に適したミネラル含有組成物としては、アルミニウム塩およびカルシウム塩のような無機塩類が挙げられる。本発明は、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩などのような無機塩類[例えば、参考文献117の第8章および第9章を参照のこと]、または異なるミネラル化合物の混合物を含む。この化合物は任意の適した形態(例えば、ゲル、結晶、非結晶など)をとり、吸着することが好ましい。ミネラル含有組成物はまた、金属塩の粒子として処方され得る[118]。
【0058】
代表的なリン酸アルミニウムアジュバントは、PO4/Alモル比が0.84と0.92との間で、0.6mgのAl3+/mlにおいて含まれる非結晶性のヒドロキシリン酸アルミニウムである。低用量のリン酸アルミニウムを用いる吸着が、例えば1用量あたりの結合体あたり50μgと100μgとの間のAl3+で用いられ得る。リン酸アルミニウムを吸着に使用し、抗原をアジュバントに吸着させないことが所望される場合、このことは溶液中に遊離リン酸イオンを含むことにより(例えば、リン酸緩衝液の使用により)促進される。
【0059】
B.油性乳剤
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した油性乳剤組成物としては、MF59[参考文献117の第10章、参考文献119も参照のこと](ミクロ流動器(microfluidizer)を使用してサブミクロン粒子に処方される5%スクアレン、0.5%Tween 80、および0.5%Span 85)のようなスクアレン−水乳剤が挙げられる。フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)もまた使用され得る。
【0060】
C.サポニン処方物[参考文献117の第22章]
サポニン処方物もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、幹、根さらに花においてさえ見出されるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molinaの樹皮に由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサプリラ(sarsaprilla)、シュッコンカスミソウ(ブライデスベール(brides veil))、およびサボンソウ(サボンソウ根)から、商業的に入手され得る。サポニンアジュバント処方物としては、QS21のような精製処方物およびISCOMのような脂質処方物が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販される。
【0061】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを使用して精製される。これらの技術を使用して精製された特定の画分が同定されており、その精製画分としては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生産方法は、参考文献120に開示されている。サポニン処方物はまた、コレステロールのようなステロールを含み得る[121]。
【0062】
サポニンとコレステロールとの組み合わせが、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる固有の粒子を形成するために使用され得る[参考文献117の第23章]。ISCOMとしては、代表的に、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンのようなリン脂質が挙げられる。任意の公知のサポニンが、ISCOMにおいて使用され得る。好ましくは、ISCOMとしては、QuilA、QHAおよびQHCの1つ以上が挙げられる。ISCOMは、さらに参考文献121〜123に記載される。必要に応じて、ISCOMは余分な界面活性剤を含まない[124]。
【0063】
サポニンベースのアジュバントの開発についての概説は、参考文献125および126に見出され得る。
【0064】
D.ビロソームおよびウイルス様粒子
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造は、一般的に、必要に応じてリン脂質と組み合わせられるかまたは処方されるウイルス由来の1つ以上のタンパク質を含む。これらは、一般的に、非病原性、非複製性であり、一般的に、いかなる天然のウイルスゲノムも含まない。ウイルスタンパク質は組換えによって産生されるか、またはウイルス全体から単離され得る。ビロソームまたはVLPにおける使用に適したこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス由来のタンパク質(HAまたはNAのような)、B型肝炎ウイルス由来のタンパク質(コアタンパク質またはカプシドタンパク質のような)、E型肝炎ウイルス由来のタンパク質、麻疹ウイルス由来のタンパク質、シンドビスウイルス由来のタンパク質、ロタウイルス由来のタンパク質、口蹄疫ウイルス由来のタンパク質、レトロウイルス由来のタンパク質、ノーウォークウイルス由来のタンパク質、ヒト乳頭腫ウイルス由来のタンパク質、HIV由来のタンパク質、RNA−ファージ由来のタンパク質、Qβ−ファージ由来のタンパク質(コートタンパク質のような)、GA−ファージ由来のタンパク質、fr−ファージ由来のタンパク質、AP205ファージ由来のタンパク質、およびTy由来のタンパク質(レトロトランスポゾンTyタンパク質p1のような)が挙げられる。VLPは、参考文献127〜132でさらに考察される。ビロソームはさらに、例えば、参考文献133で考察される。
【0065】
E.細菌性または微生物性誘導体
本発明における使用に適したアジュバントとしては、腸内細菌リポポリサッカリド(LPS)の非毒性誘導体、脂質A誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチドおよびADPリボシル化毒素、ならびにそれらの解毒誘導体のような細菌性または微生物性の誘導体が挙げられる。
【0066】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4、5または6つのアシル化鎖を有する3脱−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「小粒子」形態は、参考文献55に開示される。そのような3dMPLの「小粒子」は、0.22μmの膜を通して滅菌濾過されるほど十分に小さい[134]。他の非毒性LPS誘導体としては、アミノアルキルグルコサミニドリン酸誘導体(例えば、RC−529)のようなモノホスホリル脂質A模倣物が挙げられる[135、136]。
【0067】
脂質A誘導体としては、OM−174のようなEscherichia coli由来の脂質Aの誘導体が挙げられる。OM−174は、例えば参考文献137および138に記載される。
【0068】
本発明における、アジュバントとしての使用に適した免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列(グアノシンへのリン酸結合により連結される非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含む二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0069】
CpGは、ホスホロチオエート修飾物のようなヌクレオチド修飾物/アナログを含み得、二本鎖または一本鎖であり得る。参考文献139、140および141は、可能なアナログ置換(例えばグアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによる置換)を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献142〜147においてさらに考察される。
【0070】
CpG配列は、モチーフGTCGTTまたはモチーフTTCGTTのようなTLR9に関し得る[148]。CpG−A ODNのようなCpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得るか、またはCpG−B ODNのようなCpG配列は、B細胞応答の誘導により特異的であり得る。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献149〜151において考察される。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0071】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のためにアクセス可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、その3’末端で結合され得、「イムノマー(immunomer)」を形成する。例えば、参考文献148および152〜154を参照のこと。
【0072】
細菌性ADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体は、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好ましくは、このタンパク質は、E.coli(E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ菌(「CT」)、または百日咳菌(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての解毒ADPリボシル化毒素の使用は、参考文献155に記載され、非経口アジュバントとしての使用は、参考文献156に記載される。毒素または類毒素は、好ましくは、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含むホロ毒素の形態である。好ましくは、Aサブユニットは、解毒性の変異を含み;好ましくは、Bサブユニットは変異されない。好ましくは、アジュバントは、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192のような解毒LT変異体である。ADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体、特に、LT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は、参考文献157〜164に見出され得る。アミノ酸置換に関する数の参照は、好ましくは、参考文献165に記載のADPリボシル化毒素のAサブユニットおよびBサブユニットのアラインメントをベースとし、特にその全体が本明細書中において参考として援用される。
【0073】
F.ヒト免疫調節因子
本発明において、アジュバントとして使用に適したヒト免疫調節因子としては、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[166]など)[167]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子のようなサイトカインが挙げられる。
【0074】
G.生体付着物および粘膜付着物
生体付着物および粘膜付着物もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。適した生体付着物としては、エステル型のヒアルロン酸マイクロスフィア[168]または架橋したポリ(アクリル酸)の誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリドおよびカルボキシメチルセルロースのような粘膜付着物が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る[169]。
【0075】
H.微粒子
微粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μmの粒子、より好ましくは直径約200nm〜約30μmの粒子、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)は、生体分解性および非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシブチル酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成され、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましく、必要に応じて負に荷電した表面(例えば、SDSを用いて)または正に荷電した表面(例えば、CTABのようなカチオン性界面活性剤を用いて)を有するように処理される。
【0076】
I.リポソーム(参考文献117の第13章および第14章)
アジュバントとしての使用に適したリポソーム処方物の例は、参考文献170〜172に記載される。
【0077】
J.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物
本発明における使用に適したアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる[173]。そのような処方物はさらに、オクトキシノールとの組み合わせでポリオキシエチレンソルビタンエステルのサーファクタント[174]および少なくとも1つのオクトキシノールのようなさらなる非イオン性サーファクタントとの組み合わせでポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルのサーファクタントを含む[175]。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(laureth 9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0078】
K.ポリホスファザン(PCPP)
PCPP処方物は、例えば参考文献176および177に記載される。
【0079】
L.ムラミルペプチド
本発明におけるアジュバントとしての使用に適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン MTP−PE)が挙げられる。
【0080】
M.イミダゾキノロン化合物
本発明においてアジュバントを使用するために適したイミダゾキノロン化合物の例としては、Imiquamodおよびそのホモログ(例えば、「Resiquimod 3M」)が挙げられ、さらに参考文献178および179に記載される。
【0081】
本発明はまた、上記に同定される1つ以上のアジュバントの局面の組み合わせを含む。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明において使用され得る:(1)サポニンおよび水中油型乳剤[180];(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば3dMPL)[181];(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[182];(5)例えば、QS21および/または水中油型乳剤と3dMPLとの組み合わせ[183];(6)大きい粒子サイズの乳剤を生成するためにサブミクロン乳剤中に微流動化させるかまたはボルテックスされたかのいずれかである、10%スクアラン、0.4%Tween 80TM、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDPを含むSAF;(7)2%スクアレン、0.2%Tween 80、ならびにモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコラート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1つ以上の細菌細胞壁成分を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem)、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM);ならびに(8)1つ以上の無機塩類(アルミニウム塩のような)+LPSの非毒性誘導体(3dMPLのような)。
【0082】
免疫刺激物質として作用する他の基質は、参考文献117の第7章に開示される。
【0083】
(医学的方法および医学的使用)
一度処方されると、本発明の組成物は、直接被験体に投与され得る。処置される被験体は、動物であり得;特にヒト被験体が処置され得る。本ワクチンは特に、ワクチン接種をされる子供および10代に有用である。これらは、全身ルートおよび/または粘膜ルートにより送達され得る。
【0084】
代表的に、免疫原性組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかの注射可能物として調製され;注射前の液体ビヒクルのなかで溶液に適した固体の形態または懸濁液に適した固体の形態もまた調製され得る。本調製物はまた、アジュバントの効果を増強するために乳化されるか、またはリポソームにカプセル化され得る。本組成物の直接的な送達は、一般的に非経口的である(例えば、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内のいずれかへの注射により、あるいは組織の間質に送達されることにより)。本組成物はまた、病巣に投与され得る。他の投与様式としては、経口投与、肺内投与、坐剤および経皮的(transdermal)または経皮的(transcutaneous)適用(例えば参考文献184を参照のこと)、針無しおよびハイポスプレーが挙げられる。投薬処置は、単回投薬スケジュールまたは複数回投薬スケジュールであり得る(例えば、ブースター投薬を含む)。
【0085】
本発明のワクチンは、好ましくは無菌である。これらは、好ましくは発熱物質を含まない。これらは好ましくは、例えばpH6とpH8との間、一般的には約pH7に緩衝化される。ワクチンが水酸化アルミニウム塩を含有する場合、ヒスチジン緩衝液の使用が好ましい[185]。
【0086】
本発明のワクチンは、低レベル(例えば<0.01%)で界面活性剤(例えば、Tween 80のようなTween)を含み得る。本発明のワクチンは、特に凍結乾燥される場合、糖アルコール(例えば、マンニトール)またはトレハロース(例えば、約15mg/ml)を含有し得る。
【0087】
個々の抗原の至適用量は、経験的に評価され得る。しかしながら、一般的に本発明のサッカリド抗原は、1用量あたり各サッカリド0.1μgと100μgとの間の用量で、代表的に0.5mlの投薬容量を用いて投与される。この用量は、代表的に1用量あたり5μgと20μgとの間のサッカリドである。これらの値は、サッカリドとして測定される。
【0088】
本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち感染を予防する)であるか治療的(すなわち感染後の疾患を治療するため)であるかのいずれかであってもよいが、代表的に予防的である。
【0089】
本発明は、医薬における使用のためにキャリアタンパク質およびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を提供する。
【0090】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起する方法を提供し、本発明に従って、患者にワクチンを投与する工程を包含する。特に、本発明は患者において免疫応答を惹起する方法を提供し、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を患者に投与する工程を包含する。この免疫応答は、好ましくは、髄膜炎菌性の疾患、肺炎球菌性の疾患またはH.influenzaeに対して防御的であり、そして体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を含み得る。この患者は、成人または小児であり得る。この患者は、0〜6ヶ月齢、6〜12ヶ月齢、1〜5年齢、5〜15年齢、15〜55年齢または55年齢より上の年齢であり得る。好ましくは、この患者は、子供である。本方法は、髄膜炎菌、肺炎球菌またはH.influenzaeに対してすでに初回免疫されている患者において、追加免疫応答を惹起し得る。
【0091】
サッカリド抗原結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントは、同時に、連続的に、または別々に投与され得る。例えば、α−グリコシルセラミドアジュバントは、サッカリド抗原結合体の投与前に哺乳動物を初回免疫するために投与され得るか、またはサッカリド抗原結合体の投与後その結合体に対する哺乳動物の免疫応答を高めるために投与され得る。1つより多いサッカリド抗原結合体が投与される場合、このサッカリド抗原結合体は同時に投与され得、α−グリコシルセラミドアジュバントが投与されると、このサッカリド抗原結合体の混合物に別々に、同時にまたは連続的に投与され得る。
【0092】
免疫応答を惹起する本方法は、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原の初回用量を投与する工程を包含し、そして続いてキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の任意の第2の非アジュバント性用量を投与する工程を包含する。サッカリド抗原結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントの初回用量は、同時に、連続的にまたは別々に投与され得る。
【0093】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供し、ここでこの医薬はα−グリコシルセラミドアジュバントとともに投与される。
【0094】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用を提供し、ここでこの医薬はキャリアに結合体化されたサッカリド抗原とともに投与される。
【0095】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供する。
【0096】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供し、ここでこの患者は、α−グリコシルセラミドアジュバントを用いて前処置されている。
【0097】
さらに本発明は、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用を提供し、ここで患者は、キャリアに結合体化されたサッカリドを用いて前処置されている。
【0098】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用を提供し、ここで該患者は、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を用いて前処置されている。
【0099】
本医薬は、好ましくは免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。本医薬は、好ましくは予防および/またはNeisseria(例えば、髄膜炎菌、敗血症、淋病など)、H.influenzae(例えば、中耳炎、気管支炎、肺炎、小胞炎、心膜炎、髄膜炎など)または肺炎球菌(例えば、髄膜炎、敗血症、肺炎など)により引き起こされる疾患の予防および/または処置のためである。従って、細菌性髄膜炎のこの予防および/または処置が好ましい。
【0100】
ワクチンは、標準的動物モデルにおいて試験され得る(参考文献186を参照のこと)。
【0101】
さらに本発明は:a)キャリアに結合体化されたサッカリド抗原およびb)α−グリコシルセラミドアジュバントを含むキットを提供する。
【0102】
(定義)
用語「〜を含む(comprising)」は、「〜を含む(including)」および「〜からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、排他的にXからなり得るか、または何かの付加を含み得る(例えば、X+Y)。
【0103】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0104】
用語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないものであり得る。必要な場合、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【実施例】
【0105】
(本発明を実施するための様式)
(実施例1:α−GalCerは、サッカリド抗原に対する免疫応答を抑制する)
5匹の6週齢の雌性マウス(系統:C57BL/6)4群を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)S.pneumoniae(Streptopur)の23個の異なる血清群由来の23個のポリサッカリドの混合物3.5μg〜10μg、または4)3.5μg〜10μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて免疫した。免疫は、100μlの容量で筋肉内であった。4群すべてのマウスを、12週後3.5〜10μgのStreptopurを用いて追加免疫した。この免疫スケジュールを図1Aに示す。
【0106】
このマウスを、初回免疫から4日後、8日後および12日後および追加免疫から4日後、8日後および12日後に採血し、血液中のS.pneumoniae特異的抗体のレベルをELISAにより決定した。Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたマウスは、Streptopurのみを用いて初回免疫されたマウスに比較して、減少したS.pneumoniae特異的抗体力価(特に初回投薬後(図3A))を示した(図2および図3)。このことは、α−GalCerがサッカリド抗原に対する免疫応答を抑制することを示している。
【0107】
18〜22週後、マウスを屠殺し、脾臓中のS.pneumoniae特異的B細胞の数をElispotにより決定した。α−GalCerを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスの脾臓もまた、PBSを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスの脾臓に比較して、少ない数のS.pneumoniae特異的B細胞を含んでいた(図4)。これらの結果は、α−GalCerがサッカリド抗原に対する免疫応答を抑制するという示唆を支持する。
【0108】
さらなる実験を、Streptopurおよびα−GalCerを用いて免疫されたマウスにおいて観察されるS.pneumoniaeポリサッカリドに対する低い抗体応答が不変異体ナチュラルキラーT細胞を必要とするか評価するために実施した。6週齢の雌性マウスの4群(C57L/6 WT、CD1d+/−、CD1d−/−、またはJA18−/−)を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)3.5μgのStreptopur(SP)または4)3.5μg〜10μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて免疫した。免疫は50μlの容量で筋肉内であった。このマウスを、初回免疫から4日後、8日後および12日後に採血し、血液中のS.pneumoniae特異的抗体のレベルをELISAにより決定した。この免疫スケジュールを図1Bに示す。
【0109】
Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたC57L/6野生型マウスは、Streptopurのみを用いて初回免疫されたCD57L/6野生型マウスに比較して、減少したS.pneumoniae特異的抗体力価を示した(図8A)。このことにより、α−GalCerがS.pneumoniaeサッカリド抗原に対する免疫応答を抑制することが確認された。
【0110】
対照的に、Streptopurのみを用いて初回免疫されたJA18−/−、CD1d−/−およびCD1d−/+マウスに比較して、Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたJA18−/−、CD1d−/−およびCD1d−/+マウスにおけるS.pneumoniae特異的抗体力価に有意な差はなかった(図8B〜8D)。これらの結果は、S.pneumoniaeサッカリドに対する応答のα−GalCer誘導性の阻害が、不変異体NKT細胞を必要とすることを示唆している。
【0111】
Streptopurのみを用いて初回免疫されたJA218−/−、CD1d−/−およびCD1d−/+マウスの抗体力価に比較して、α−GalCer非存在下でStreptopurのみを用いて初回免疫されたC57L/6野生型マウスにおいて、S.pneumoniae特異的抗体力価は低かった(図9)。これらの結果は、不変異体NKT細胞が、α−GalCer非存在下でさえS.pneumoniaeサッカリドに対する抗体応答に負の作用を有し得、この負の作用がα−GalCer存在下においてさらに強力であることを示している。
【0112】
さらなる実験が、α−GalCerによるサッカリド抗原に対する免疫応答の抑制が、6週齢と8週齢の間のマウスにおいてみられることを実証している(図10)。
【0113】
(実施例2:α−GalCerは、サッカリド抗原結合体に対する免疫応答を増強する)
α−GalCerをS.pneumoniae(Streptopur)由来のサッカリド抗原とともに投与したときに観察された抗体力価の減少と対照的に、α−GalCerの投与は、キャリアタンパク質に結合体化されたサッカリドに対する抗体応答を増強させた。
【0114】
Hibヒト血清アルブミン結合体(Hib−HSA)およびα−GalCerを用いて免疫されたマウスは、Hib−HSA結合体およびPBSを用いて免疫されたマウスよりかなり高いHib特異的Ig力価を示した(図11)。同様に、MenC−CRM結合体およびα−GalCerを用いる免疫は、MenC−CRM結合体およびPBSを用いて免疫されたマウスに比較して、MenC特異的Ig力価における有意な増加を示した(図7、図1Cのスケジュールに従って免疫された)。
【0115】
図5に示されるように、MenCに対する抗体応答はMenCのみを用いて免疫されたマウスにおいて観察されなかったが、MenC−CRM結合体およびα−GalCerを用いて免疫されたマウスは、MenC−CRM結合体およびPBSを用いて免疫されたマウスに比較してMenC−特異的抗体力価における有意な上昇を示した。結合体とα−GalCerとの混合は、サッカリドおよび結合体の両方に対する抗体応答を増強した。
【0116】
MenA−CRM結合体およびα−GalCerを用いる免疫はまた、MenA−特異的Ig力価における上昇を生じた(図6)。しかしながら、同時に実施された実験において、非結合体化MenAサッカリドにおけるα−GalCerの強力な阻害作用は観察されなかった。
【0117】
まとめると、α−GalCerはサッカリド抗原に対する免疫応答を阻害し得るが、この作用は逆転され得、そしてサッカリド抗原がキャリア結合体化される場合、サッカリド抗原に対する免疫応答はα−GalCerにより増強され得る。
【0118】
本発明は例示のみによって記載されており、詳細の改変は本発明の精神および範囲から逸脱せずになされ得ることが理解される。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】A)α−GalCer有りまたは無しにおいてS.pneumoniaeポリサッカリドを用いるマウスの免疫スケジュール。6週齢の雌性マウスの4群(C57L/6 WT、CD1d+/−、CD1d−/−、またはJA18−/−)を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)S.pneumoniae(Streptopur)の23の異なる血清群由来のポリサッカリドの混合物3.5μg〜10μg、または4)3.5μg〜10μgのStreptopur(SP)および0.1μgのα−GalCerを用いて免疫した。免疫は50μlの容量で筋肉内であった。このマウスを、初回免疫から4日後、8日後および12日後に採血し(4dp1、8dp1、12dp1)、血液中のS.pneumoniaeに対する抗体のレベルをELISAにより決定した。初回免疫から10週後または12週後に、すべてのマウスを、SPのみ3.5μg〜10μgの追加免疫用量を用いて免疫した。このマウスを追加免疫から4日後、8日後および12日後に採血し(4dp2、8dp2、12dp2)、血液中のS.pneumoniaeに対する抗体のレベルをELISAにより決定した。初回免疫から18〜22週後、このマウスを屠殺し、S.pneumoniae特異的B細胞をElispotにより決定した。
【0125】
B)α−GalCer有りまたは無しにおいてS.pneumoniaeポリサッカリドを用いるマウスの免疫スケジュール。図1−Aと同様であるが、免疫には50μl中3.5μgのSPを使用した。
【0126】
C)α−GalCer有りまたは無しにおいて、タンパク質キャリアと単純に結合体化されたまたは混合された異なるサッカリドを用いるマウスの免疫スケジュール。野生型C57BL/6マウスの10群を:1)PBS、2)0.1μgのα−GalCer、3)10μgのMenCポリサッカリド、4)20μgのCRMタンパク質キャリア、5)30μgのMenC−CRM結合体、6)CRMタンパク質キャリアを混合された10μgMenCポリサッカリド、または3)〜6)の組成物およびα−GalCer(7〜10の群)を用いて、0日に初回免疫した。マウスを、初回免疫してから2週間後および4週間後に初回免疫した同じ組成物を用いて追加免疫した。マウスを、最初の初回免疫から2週後、4週後および6週後(2wp1、2wp2および2wp3)に採血し、MenCポリサッカリドおよびCRMキャリアの両方に対する抗体のレベルを測定した。
【図2】S.pneumoniae特異的抗体力価は、Streptopurのみを用いて初回免疫されたマウスに比較して、Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫されたマウスにおいて低い。3.5μgのStreptopur(SP)のみ(黒四角)または3.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCer(白四角)を用いて初回免疫してから4日後、8日後および12日後のマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価(幾何平均)を示す(*はSPのみに対するp<0.05を示し、**はSPのみに対するp<0.01を示す)。
【図3】Streptopurのみを用いて初回免疫および追加免疫されたマウスに比較して、Streptopurおよびα−GalCerを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスにおけるS.pneumoniae特異的抗体力価は低い。A)3.5〜11.5μgのStreptopurおよびPBSを用いて初回免疫してから8日後のマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価の変量(幾何平均)(黒)または3.5〜11.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて初回免疫してから8日後のマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価の変量(幾何平均)(グレイ)。(これらのデータは、4つの実験からプールされる)。B)3.5〜11.5μgのStreptopurを用いる追加免疫から8日後の、同じマウスにおけるS.pneumoniae特異的IgM力価の変量(幾何平均)。(これらのデータは、実験18、19および29よりプールされる)。3.5〜11.5μgのStreptopurを用いて初回免疫されたマウスの結果を黒で示し、3.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCerを用いて初回免疫されたマウスの結果をグレイで示す。
【図4】PBSを用いて初回免疫され、Streptopurを用いて追加免疫されたマウスに比較して、α−GalCerを用いて初回免疫しStreptopurを用いて追加免疫されたマウスにおいて、106個の脾細胞あたりS.pneumoniae特異的B細胞の数は少ない。2つの群のマウスを、0日に0.1μgまたは1.0μgのα−GalCer(aGC)を用いて初回免疫し、12週後11.5μgのStreptopur(SP)を用いて免疫した。第3群のマウスを、0日にPBSを用いて免疫し、12週後に11.5μgのSPを用いて免疫した。第4群のマウスを、0日および12週後の両方にPBSを用いて免疫した。最初の初回免疫から22週後、マウスを屠殺し、106個の脾細胞あたりS.pneumoniae特異的B細胞の数をElispotにより測定した。
【図5】α−GalCerは、MenC−CRM結合体においてMenCサッカリドおよびCRMタンパク質キャリアの両方に対する特異的抗体応答を増強する。野生型マウスを、CRMタンパク質キャリアを用いて混合された10μgのMenCポリサッカリド、20μgCRMタンパク質キャリア、10μgMenCポリサッカリド(MenC+CRM)または30μgのMen−CRM結合体、あるいはα−GalCerを用いて混合された同じ組成物を用いて免疫した。マウスを、初回免疫してから2週間後および4週間後に初回免疫した同じ組成物を用いて追加免疫した。図の一番上の線は、MenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体のみ(黒)、あるいはMenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体およびα−GalCer(グレイ)を用いて免疫されたマウスにおける、第2免疫から1週間後(1wp2)および第2免疫から1週間後(2wp2)のMec−特異的Ig力価を示す。図の2番目の線は、MenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体のみ(黒)、あるいはMenC、CRM、MenC+CRMまたはMenC−CRM結合体およびα−GalCer(グレイ)を用いて免疫されたマウスにおける、第2免疫から2週間後(2wp2)および第3免疫から2週間後(2wp3)のCRM−特異的Ig力価を示す。
【図6】α−GalCerは、MenA−CRM結合体に対する免疫応答を増強する。マウスを、α−GalCer有りまたは無しにおいて、10μgのMenAポリサッカリドまたはMenA−CRM結合体を用いて免疫した。MenAポリサッカリドに対する抗体力価を、初回免疫から4日後、8日後および12日後に測定した。α−GalCerは、MenAポリサッカリドに対する免疫応答を増強した。
【図7】抗体応答は、α−GalCerおよびMenC−CRM結合体を用いて免疫されたマウスにおいて増強される。マウスを、PBS(黒)またはα−GalCerと混合された30μgのMenC−CRM結合体を用いて免疫した。各群のマウスを3回免疫した。MenC特異的力価を、第2免疫から1週間後(1wp2)および第3免疫から1週間後(1wp3)に測定した。
【図8】S.pneumoniaeポリサッカリドに対する応答のα−GalCer誘導性の阻害は、不変異体NKT細胞を必要とする。3.5μgSPのみ(グレイの記号)または3.5μgSPおよび0.1μgα−GalCer(黒の記号)を用いてマウスを初回免疫してから4日後、8日後および12日後のS.pneumoniae特異的抗体のレベルを:A)野生型マウス、B)Ja18−/−マウス、C)mCD1d−/−マウスおよびD)mCD1d−/+マウスにおいて比較した。α−GalCerと組み合わせてStreptopurを用いて免疫されたJa18−/−マウス、CD1d−/−マウスおよびCD1d−/+マウスと比較して、Streptopurのみを用いて免疫されたJa18−/−マウス、CD1d−/−マウスおよびCD1d−/+マウスにおける抗体力価に有意な差は見られなかった。
【図9】不変異体NKTは、S.pneumoniaeポリサッカリドに対する抗体応答に対して負の調節役割を有する。図1Bにおけるプロトコールに従って、単にStreptopurを用いてマウスを初回投与してから4日後、8日後および12日後のS.pneumoniae特異的抗体のレベル(IgM力価幾何平均)を比較した。図9Aは、C57野生型マウスにおける抗体力価(四角)を、C57mCD1d+/−マウスにおける抗体力価(三角)と比較する。図9Bは、C57野生型マウスにおける抗体力価(四角)を、C57mCD1d−/−マウスにおける抗体力価(三角)と比較する。図9Cは、C57野生型マウスにおける抗体力価(四角)を、C57Ja281−/−マウスにおける抗体力価(丸)と比較する。野生型マウスにおける抗体力価は、Ja281−/−マウス、CD1−/−マウスおよびCD1+/−マウスより低い。
【図10】α−GalCerは、3〜8週齢のマウスにおいてStreptopurに対する免疫応答を抑制する。S.pneumoniae特異的IgM抗体のレベル(幾何平均)を3.5μgのStreptopur(SP)のみ(白)または3.5μgのStreptopurおよび0.1μgのα−GalCer(黒)を用いて2週齢(2W)、3週齢(3W)、4週齢(4W)、5週齢(5W)および6〜8週齢(6〜8W)のマウスを初回免疫から8日後比較される。
【図11】抗体応答は、α−GalCerおよびHib−HSA結合体を用いて免疫されたマウスにおいて増強される。マウスを、PBS(検出されるには非常に低い結果)、α−GalCer(斜線)またはMF59(グレイ)を用いて混合された、15μgのHib−ヒト血清アルブミン(Hib−HSA)結合体を用いて免疫した。各群のマウスを3回免疫した。Hib特異的力価を第2免疫から1週間後(1wp2)および第3免疫から1週間後(1wp3)測定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キャリアに結合体化されたサッカリド抗原;および(b)α−グリコシルセラミドアジュバント、を含有する、組成物。
【請求項2】
前記α−グリコシルセラミドアジュバントが、α−ガラクトシルセラミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記α−ガラクトシルセラミドが、(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記サッカリド抗原が、細菌性莢膜サッカリドである、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
前記細菌性莢膜サッカリドが、Neisseria meningitidis、Haemophilus influenzaeまたはStreptococcus pneumoniae由来である、請求項4の組成物。
【請求項6】
1つより多いサッカリド結合体を含有する、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
前記キャリアがタンパク質である、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記キャリアがジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドのような細菌性毒素である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬において使用するための、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化された、サッカリド抗原。
【請求項10】
患者において免疫応答を惹起する方法であって、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記サッカリド抗原結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントが同時に、連続的にまたは別々に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫応答が、ナイセリア(例えば、髄膜炎、敗血症、淋病など)、H.influenzae(例えば、中耳炎、気管支炎、肺炎、小胞炎、心膜炎、髄膜炎など)または肺炎球菌(例えば、髄膜炎、敗血症、肺炎など)により引き起こされる疾患の予防および/または処置のためである、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬が細菌性髄膜炎の予防および/または処置のためである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用であって、該医薬がα−グリコシルセラミドアジュバントとともに投与される、使用。
【請求項15】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用であって、該医薬がキャリアに結合体化されたサッカリド抗原とともに投与される、使用。
【請求項16】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原の使用。
【請求項17】
患者において免疫応答を上昇させるための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用であって、患者がα−グリコシルセラミドアジュバントを用いて前処置される、使用。
【請求項18】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用であって、該患者がキャリアに結合体化されたサッカリド結合体を用いて前処置される、使用。
【請求項19】
前記医薬がナイセリア(例えば、髄膜炎、敗血症、淋病など)、H.influenzae(例えば、中耳炎、気管支炎、肺炎、小胞炎、心膜炎、髄膜炎など)または肺炎球菌(例えば、髄膜炎、敗血症、肺炎など)により引き起こされる疾患の予防および/または処置のためである、請求項14〜請求項18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記医薬が細菌性髄膜炎の予防および/または処置のためである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
(a)キャリアに結合体化されたサッカリド;および(b)α−グリコシルセラミドアジュバントを含む、キット。
【請求項1】
(a)キャリアに結合体化されたサッカリド抗原;および(b)α−グリコシルセラミドアジュバント、を含有する、組成物。
【請求項2】
前記α−グリコシルセラミドアジュバントが、α−ガラクトシルセラミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記α−ガラクトシルセラミドが、(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記サッカリド抗原が、細菌性莢膜サッカリドである、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
前記細菌性莢膜サッカリドが、Neisseria meningitidis、Haemophilus influenzaeまたはStreptococcus pneumoniae由来である、請求項4の組成物。
【請求項6】
1つより多いサッカリド結合体を含有する、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
前記キャリアがタンパク質である、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記キャリアがジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドのような細菌性毒素である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬において使用するための、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化された、サッカリド抗原。
【請求項10】
患者において免疫応答を惹起する方法であって、キャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原を患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記サッカリド抗原結合体およびα−グリコシルセラミドアジュバントが同時に、連続的にまたは別々に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫応答が、ナイセリア(例えば、髄膜炎、敗血症、淋病など)、H.influenzae(例えば、中耳炎、気管支炎、肺炎、小胞炎、心膜炎、髄膜炎など)または肺炎球菌(例えば、髄膜炎、敗血症、肺炎など)により引き起こされる疾患の予防および/または処置のためである、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬が細菌性髄膜炎の予防および/または処置のためである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用であって、該医薬がα−グリコシルセラミドアジュバントとともに投与される、使用。
【請求項15】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用であって、該医薬がキャリアに結合体化されたサッカリド抗原とともに投与される、使用。
【請求項16】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるキャリアおよびα−グリコシルセラミドアジュバントに結合体化されたサッカリド抗原の使用。
【請求項17】
患者において免疫応答を上昇させるための医薬の製造におけるキャリアに結合体化されたサッカリド抗原の使用であって、患者がα−グリコシルセラミドアジュバントを用いて前処置される、使用。
【請求項18】
患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造におけるα−グリコシルセラミドアジュバントの使用であって、該患者がキャリアに結合体化されたサッカリド結合体を用いて前処置される、使用。
【請求項19】
前記医薬がナイセリア(例えば、髄膜炎、敗血症、淋病など)、H.influenzae(例えば、中耳炎、気管支炎、肺炎、小胞炎、心膜炎、髄膜炎など)または肺炎球菌(例えば、髄膜炎、敗血症、肺炎など)により引き起こされる疾患の予防および/または処置のためである、請求項14〜請求項18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記医薬が細菌性髄膜炎の予防および/または処置のためである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
(a)キャリアに結合体化されたサッカリド;および(b)α−グリコシルセラミドアジュバントを含む、キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−512371(P2008−512371A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529396(P2007−529396)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002788
【国際公開番号】WO2006/027685
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002788
【国際公開番号】WO2006/027685
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】
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