説明

サブミクロンおよびナノサイズのバンドギャップ構造を有するガラス構造ならびにその製造方法

サブミクロンおよびナノサイズのバンドギャップ構造を有するガラス構造、および前記ガラス構造を製作するための方法が提供される。マイクロメートル規模の特徴を有する第1のガラス構造を作り、その後、第1のガラス構造を、前記構造が可視光および赤外光のための偏光子として機能することを可能にする、サブミクロンおよびナノサイズ化した特徴を有する第2のガラス構造へとドローする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、「サブミクロンおよびナノサイズのバンドギャップ構造を有するガラス構造ならびにその生産方法(Glass Structure Having Sub-Micron and Nano-Size Bandgap Structures and Method of Producing Same)」なる発明の名称のもと、2008年4月21日に出願した、米国特許出願第12/148,591号の優先権およびその利益を主張する。その内容は信頼するに値し、参照することにより、その全体的が本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、サブミクロンおよびナノサイズの構造、具体的にはガラス構造を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ミリメートルおよびマイクロメートル規模のバンドギャップ構造として用いられる構造は、セラミック材料およびさまざまな技術を使用して製造されている。 例えば、このようなマイクロメートル規模の構造を作る方法の1つに、ラピッドプロトタイピングとして知られるものがある。これは、典型的には、コンピュータと、構造を製作するための層化工程とを組み合わせた技術である。所望の構造モデルは、コンピュータを用いて所定の厚さの層に区分される。構造の各層は積層することによって再構築され、原初部品が再現される。最終的な形状の細部および複雑度は、個々の開始層の厚さに応じて決まる。次に、構造は、有機結合剤の燃焼(burnout)工程および最終的な焼結工程にさらされる。この工程について記載されている特許が幾つか存在する。これらには、例えば、特許文献1および2が挙げられ、その開示は参照することによって本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第5,738,817号明細書
【特許文献2】米国特許出願第5,997,795号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
サブミクロンおよびナノサイズのガラス構造を製造する方法であって、
ガラス粉末および結合剤を含むガラス混合物を、一度に1つの層に分配して、所定の構造を生成し、
前記結合剤の燃焼工程の間に、前記結合剤の少なくとも75%を前記所定の構造から除去し、
前記所定の構造を焼結して所定の断面積を有する第1のガラス構造を生成し、
前記ガラス構造を第2のガラス構造へとドローする、
各工程を有してなり、
前記第2のガラス構造が、前記第1のガラス構造の所定の断面積の少なくとも10分の1、一部の事例では少なくとも50分の1、一部の事例では少なくとも100分の1の大きさしかない断面積を有することを特徴とする、方法について開示する。好ましくは、前記分配工程は、複数の層を分配する工程を有してなり、各層は、一度に1つの層が堆積し、一部の好ましい実施の形態では、これらの堆積は、10を超える、さらに好ましくは20を超える複数の層の堆積を含みうる。一部の好ましい実施の形態では、各層の厚さは、2mm未満、さらに好ましくは1mm未満であって差し支えなく、一部の実施の形態では、500マイクロメートル未満である。一部の実施の形態では、ドロー工程は、第1のガラス構造の所定の断面積の少なくとも500分の1、一部の事例では少なくとも800分の1の大きさしかない断面積を有する、第2のガラス構造を生じうる。よって、この工程は、約数十または数百ナノメートルの幅、長さ、または直径の寸法を有する立体構造(standing structure)の形成を可能にする。
【0006】
別の態様では、光を偏光させるためのガラス構造が開示され、前記ガラス構造は、単一ガラス構造および単一ガラス構造を通って延在する複数の開口部を備え、前記単一ガラス構造に位置する前記開口部は約200ナノメートルの直径を有する。
【0007】
本発明の追加の特性および利点は、後述する詳細な説明に記載され、一部には、その記載から当業者に容易に明らかになるであろうし、あるいは、後述する詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含めた本明細書に記載される発明を実施することによって認識されよう。
【0008】
本発明の実施の形態についての前述の概要および後述する詳細な説明は、両方とも、典型例および説明の目的であって、特許請求の範囲に記載される本発明の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することが意図されているものと理解されたい。添付の図面は、本発明のさらなる理解をもたらすためのものであって、本明細書に取り込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明のさまざまな実施の形態を説明と共に例証し、本発明の原理および動作を説明する役割をする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に従った第1の単一ガラス構造の正面図。
【図2】図1の単一ガラス構造の一部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これより、本発明の好ましい実施の形態について詳細に述べるが、その実施例は添付の図面に例証されている。同一または同様の部分についての言及には、可能な限り、図面全体を通じて同一の参照番号が用いられる。
【0011】
1つの典型的な実施の形態では、図1および2に例証される所定の構造100の製作に用いることができる、ガラス混合物が調製されうる。これらの構造は、数ミリメートル以下の寸法を有する構造を堆積または形成することができる任意の方法を使用して、製作することができる。好ましい堆積技術としては、限定はしないが、ラピッドプロトタイピングおよびマイクロペンなど、マイクロディスペンサーを用いて分配する技術が挙げられる。例えば、1つの典型的な実施の形態では、所定の構造100は、それによってガラス混合物の複数の層が「プリント」される、ラピッドプロトタイピング用の機械を使用して作製して差し支えなく、各層は、一度に1層ずつプリントされ、それによって三次元構造を生じる。ガラス混合物は、任意のガラス組成物でありうる。例えば、一部の実施の形態では、ガラス混合物はシリカ系ガラス、例えばホウケイ酸ガラスであって差し支えない。ガラス混合物は、所望のガラス組成物のガラス粉末でできていることが好ましい。ガラス粉末中のガラスの大きさは、マイクロメートルの範囲であることが好ましい。ガラス混合物はまた、任意の適切な市販の結合剤でありうる、有機結合剤を含むことが好ましい。ガラス混合物は、60〜90%のガラス粉末および10〜40%の結合剤であることが好ましく、70〜80%のガラス粉末および20〜30%の結合剤であることがさらに好ましい。次に、ラピッドプロトタイピング機械から適切に分配されるように、ガラス混合物のコンシステンシーを調節する。
【0012】
次に、機械によってガラス混合物を分配し、図1および2に例証されるように、所定の構造100を形成する。図1および2に例証される所定の構造は正方形/長方形の形態であるが、任意の形態が「プリント」されて差し支えなく、それらも本発明の範囲内にあることに留意すべきである。サブ構造または所定の構造の精密寸法は本発明にとって必須ではないが、図1および2に例証される所定の構造は、およそ50mm×50mm×2mmの複数のサブ構造から構成されることにも留意されたい。複数の2mmの厚さのサブ構造を融合させて、より長い(または、より厚い)所定の構造100を作る。しかしながら、所定の構造は単一のサブ構造であってもよく、これも本発明の範囲内でありうる。図1および2に示すように、所定の構造は、およそ0.20mmの穴または開口部102を有するが、以下にさらに詳細に記載するように、最終的な構造において100〜1500nmになるような任意の適切な大きさであって差し支えない。事実、開口部は、円形のように図示されているが、そうである必要はなく、直径約0.10mm〜約0.5mm程度であって差し支えない。融合して、より長い所定の構造100を製作する前に、各サブ構造おける開口部102を、近接するサブ構造における開口部102と位置調整することが好ましいが、必ずしも必要ではないことにも留意されたい。
【0013】
次に、所定の構造100を適切なオーブンに入れ、結合剤を燃焼させて、所定の構造内にガラス粉末のみを残す。結合剤は、構造変形およびガスの封入を避けるために、ガラス遷移温度Tg未満の温度で燃焼させることが好ましい。次に、後述する焼結工程は、ガラスの結晶化を防ぐために、ガラスの結晶化温度Tx未満で行うことが好ましい。そうでなければ、その後の構造を再ドローする工程段階が妨げられる可能性があろう。結合剤は燃やし尽くされ、かつ、焼結工程は使用材料の焼結温度に至るまで行うことができるであろう、他の材料、例えば、セラミック、金属、金属合金などと比較して、これらの要件は、さらに制限的である。さらには、結合剤の燃焼は、例えば、ヘリウム、アルゴン、または窒素などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。 燃焼が酸素の存在下で起こり、ガラスが、例えばシリカ系ガラスの場合には、所定の構造内にクリストバライトが形成されることがあり、その使用目的に適さなくなってしまう可能性がある。
【0014】
1つの好ましい実施の形態では、燃焼スケジュールは、所定の構造を室温(または周囲温度)から1時間で150℃まで加熱することによって開始する。次に、所定の構造を150℃から350℃まで約10℃/時間の昇温速度で加熱し、350℃で少なくとも1時間保持することによって燃焼を継続する。最後に、所定の構造を、350℃から650℃まで約10℃/時間の昇温速度で加熱し、650℃の温度で少なくとも1時間保持する。
【0015】
この燃焼スケジュールで、所定の構造から結合剤の約90%が排除されるであろう。燃焼スケジュールの縮小も可能だが、好ましくは、結合剤の燃焼工程の間に、前記結合剤の少なくとも75%が所定の構造から除去されるべきである。
【0016】
次に、これも好ましくは同一のオーブン内、かつ、同様の不活性雰囲気下、所定の構造100を焼結して、ガラス粉末を固める。焼結を別のオーブンまたは場所で行う場合には、焼結工程の前に構造を移動させる間に、構造が乱れないように、注意を払わなければならない。焼結段階の間に、所定の構造100は、所定の構造の配置と大きさが本質的に同一の、第1のガラス構造になる。
【0017】
次に、第1のガラス構造を加熱し、当技術分野で周知のように縮小直径に至るまでドローまたは引き伸ばして、第1のガラス構造と比較して断面の大きさが縮小された第2のガラス構造を製造する。第1のガラス構造は、第1のガラス構造をドローするのに適切な温度まで加熱することができ、ガラス構造の組成に応じて決まる。例えば、ガラスがケイ酸塩ガラスの場合には、1000℃より高い、または1100℃よりも高い温度を使用して、ガラス構造を縮小された直径に至るまでドローして差し支えなさそうである。しかしながら、特にガラスが非ケイ酸塩ガラス組成物の場合には、より低いドロー温度も採用することができよう。1つの典型的な実施の形態では、第1のガラス構造は、その原長の約1000倍までドローされる。第1のガラス構造をドローする場合において、第2のガラス構造の断面は、第1のガラス構造の10分の1未満、500分の1未満、および800分の1未満しかない大きさまで縮小されうる。よって、例えば、第1のガラス構造を第2のガラス構造へとドローする場合において、第1のガラス構造における直径0.2mmの開口部は、第2のガラス構造において直径約200nm以下になり、第2のガラス構造の断面は、約0.5mm×0.5mmになる。再ドロー工程全体を通じて第1のガラス構造の対称性を維持するために、差分圧制御システムを使用することが好ましい。差分圧制御システムでは、第1のガラス構造は加圧され続け、差分圧は、再ドローの工程段階全体を通じて制御される。よって、例えば穴102は、直径の縮小段階の際に崩壊しないように、ドロー工程の間に加圧されうる。
【0018】
次に、引き伸ばされた第2のガラス構造を、所望の用途に適切な長さに区切って差し支えない。典型的な用途の1つは、サブミクロンおよびナノサイズ化した特徴を有するガラスでできた、フォトニックまたはフォノニック・バンドギャップ構造である。例えば、これらの構造は、光スペクトルの可視領域または赤外領域における偏光子として使用できる。例えば、図2を参照すると、約2〜300nmのピッチ(穴の中心同士の距離)の穴または開口部102を有する構造は、フォトニック偏光子として使用することができる。この構造は、第1のガラス構造をドローすることによって達成することができ、ここで、穴は、約100マイクロメートル〜1mmのピッチを有しうる。1つの実施の形態では、開始時(最初の)ガラス構造の穴は約100マイクロメートルのピッチを有するが、直径の1000分の1の縮小に匹敵する、100nmの直径を有する第2のガラス構造へとドローされる。これは、内部に500マイクロメートル未満、さらに好ましくは250マイクロメートル未満のピッチを有する繰り返し構造(例えば、穴)を有するガラス構造が、開始時のガラス構造の3000分の1未満、さらに好ましくは2000分の1未満、およびさらに好ましくはわずか1000分の1への直径の縮小によって達成することができることを例証している。第2のガラス構造は区分化されることから、サブ構造間の開口部102のずれは明らかとなり、それらの区分は容易に廃棄することができる。
【0019】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明には、さまざまな変更および変形がなされうることは当業者にとって明らかであろう。よって、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入ることを条件に、本発明が、本発明の変更および変形にも及ぶことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブミクロンまたはナノサイズのガラスバンドギャップ構造を製造する方法であって、
ガラス粉末および結合剤を含むガラス混合物を、一度に1つの層に分配して、所定の構造を生成し、
前記結合剤の燃焼工程の間に、前記結合剤の少なくとも75%を前記所定の構造から除去し、
前記所定の構造を焼結して、所定の断面積を有する第1の単一ガラス構造を生成し、
前記第1の単一ガラス構造を第2の単一ガラス構造へとドローする、
各工程を有してなり、
前記第2の単一ガラス構造が、前記第1の単一ガラス構造の所定の断面積よりも少なくとも10倍小さい断面積を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記構造が、フォトニックおよびフォノニック・バンドギャップ構造の1つであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記構造が、フォトニック偏光子であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1の単一ガラス構造が、直径約100〜500マイクロメートルの開口部を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第2の単一ガラス構造が、直径約50〜1500ナノメートルの開口部を有することを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−520746(P2011−520746A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506263(P2011−506263)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/002445
【国際公開番号】WO2009/131653
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】