説明

サポーター

【課題】着用時にズレにくいサポーターを提供する。
【解決手段】単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aを含む編地でサポーターを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手首、肘、膝などに取り付けて用いられるサポーターであって、着用時にズレにくいサポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手首、肘、膝のなどの動きをスムーズにしたりまたは保護するためサポーターが用いられている。また、サポーターは、身体に容易に追従するよう伸縮性のある生地で構成されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来のサポーターでは、着用時にズレやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−308861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、着用時にズレにくいサポーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、極細フィラメント糸を含む編地でサポーターを構成すると、着用時にズレにくいサポーターが得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aを含む編地で構成されることを特徴とするサポーター。」が提供される。
その際、前記編地において、表裏少なくともどちらか一方表面に前記フィラメント糸Aが露出していることが好ましい。また、前記編地がメッシュ組織の経編地であることが好ましい。また、前記フィラメント糸Aがポリエステルからなることが好ましい。また、前記フィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上であることが好ましい。また、前記フィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。また、他の糸として、単繊維径が1000nmより大の弾性繊維糸が前記編地に含まれることが好ましい。また、前記編地にバッフィング加工またはブラシ処理加工が施されていることが好ましい。また、前記編地の表裏どちらか一方の表面において、表面摩擦係数が2.5以上であることが好ましい。また、前記編地の表裏どちらか一方の表面において、温度20℃、湿度65%RHにおける接触冷感の値が0.02以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用時にズレにくいサポーターが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明において、採用することのできるパワーメッシュ組織の編組織を示す図である。
【図2】実施例1で得られた編地の編組織を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、フィラメント糸A(以下、「ナノファイバー」と称することもある。)において、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nm(好ましくは100〜900nm、特に好ましくは550〜900nm)の範囲内であることが肝要である。かかる単繊維径を単繊維繊度に換算すると、0.000001〜0.01dtexに相当する。該単繊維径が10nmよりも小さい場合は繊維強度が低下するため実用上好ましくない。逆に、該単繊維径が1000nmよりも大きい場合は、編地(サポーター)と皮膚との摩擦係数があまり大きくならず、サポーターを着用した際にズレやすくなるおそれがあり好ましくない。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。また、単繊維繊度のばらつきが−20%〜+20%の範囲内であることが好ましい。
【0010】
前記フィラメント糸Aにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、サポーターをズレにくくする上で500本以上(より好ましくは2000〜10000本)であることが好ましい。また、フィラメント糸Aの総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、5〜150dtexの範囲内であることが好ましい。
【0011】
前記フィラメント糸Aの繊維形態は特に限定されず、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし、短繊維でもよい。長繊維(マルチフィラメント)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
【0012】
前記フィラメント糸Aを形成するポリマーの種類としては特に限定されないが、優れた繊維強度を得る上でポリエステル系ポリマーが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−01694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0013】
本発明において、編地には前記のフィラメント糸Aが編地の表面(表裏少なくともどちらか一方表面)に前記のフィラメント糸Aが露出していることが好ましい。
ここで、編地は前記のフィラメント糸Aのみで構成されていてもよいが、編地重量に対して85重量%以下であれば、他の糸条が1種類または複数種類含まれていてもよい。その際、かかる他の糸条としては、単繊維径が1000nmより大の、前記のようなポリエステルからなるポリエスエテル糸条や弾性繊維糸が好ましい。特に、他の糸条として弾性繊維糸が含まれていると、編地にストレッチ性が付加され好ましい。
【0014】
ここで、かかる弾性繊維糸としては、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる吸水性ポリエーテルエステル弾性繊維糸、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリテトラメチレンオキシドグリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる非吸水性ポリエーテルエステル弾性繊維糸、ポリウレタン弾性繊維糸、ポリトリメチレンテレフタレート糸、合成ゴム系弾性繊維糸、天然ゴム系弾性繊維糸などが好適に例示される。
【0015】
前記弾性繊維糸の総繊度としては、78〜1200dtex(より好ましくは280〜620dtex)の範囲内であることが好ましい。弾性繊維糸の総繊度がこれらの範囲より大きいと、伸縮性がなくなり、編地の風合いを阻害したり、編地風合いを悪くするおそれがある。また、これらの範囲より小さいと、糸の摩擦力により伸縮性が損なわれ、伸縮回復力に欠けたり、編地の耐久性が失われたりするおそれがある。なお、前記弾性繊維糸の破断伸度は400%以上のものが好ましく、染色加工時の熱処理によって性能を損なわないものが好ましい。
【0016】
また、前記編地において、前記フィラメント糸Aと弾性繊維糸とが交編されていることが好ましい。前記フィラメント糸Aと弾性繊維糸とが交編されていると、編地表面には前記フィラメント糸Aのみが露出するため、編地(サポーター)と皮膚との摩擦係数が大きくなり、その結果、サポーターを着用した際にズレにくくなり好ましい。また同時に、編地に弾性繊維糸が含まれているため編地がストレッチ性を有し、サポーターが身体に追従しやすくなり好ましい。
なお、経編地には、さらに他の繊維としてポリエステル繊維などが含まれていてもさしつかえない。
【0017】
前記の編地は例えば以下の製造方法により製造することができる。まず、海成分と、その径が10〜1000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維)を用意する。かかる海島型複合繊維としては、特開2007−2364号公報に開示された海島型複合繊維マルチフィラメント(島数100〜1500)が好ましく用いられる。
【0018】
ここで、海成分ポリマーとしては、繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
【0019】
一方、島成分ポリマーは、前記のような、繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0020】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。また、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。その際、該径が真円でない場合は外接円の直径を求める。前記の海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
【0021】
かかる海島型複合繊維マルチフィラメントは、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型断面複合繊維マルチフィラメントは、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。さらに、仮撚捲縮加工を施してもよい。かかる海島型複合繊維マルチフィラメントにおいて、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度0.5〜10.0dtex、フィラメント数5〜75本、総繊度30〜170dtex(好ましくは30〜100dtex)の範囲内であることが好ましい。
【0022】
次いで、総繊度30〜170dtexの海島型複合繊維マルチフィラメントを単独で用いるか、必要に応じて単繊維径が1000nmより大の弾性繊維糸など他の糸とともに用いて、編地を製編する。その際、使用する経編機としては48GG以上の経編機(例えば、カールマイヤー(株)製 シングルラッセル56GG機など)が好ましい。
【0023】
また、編地の編組織としては、優れた通気性を得る上でメッシュ組織の経編地が好ましい。特に、図1に編組織を示すように、他の糸条として弾性繊維糸を用いたパワーメッシュ組織の経編地が好適に例示される。さらには、トリスキン、サテン、ラセット等の無地およびリバーシブル組織の経編地も好適に例示される。
【0024】
次いで、該編地にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維マルチフィラメントの海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維マルチフィラメントを単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aとする。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。
【0025】
また、常法の起毛加工、撥水加工、さらには、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。特に、編地にバッフィング加工またはブラシ処理加工を施すと、編地(サポーター)と皮膚との摩擦係数がさらに大きくなり、サポーターを着用した際にさらにズレにくくなり好ましい。
【0026】
かくして得られた編地において、編地の目付けとしては、350g/m以下(より好ましくは250g/m以下)の範囲内であることが好ましい。また、編地の密度としては60〜100コース/2.54cm、かつ30〜50ウエール/2.54cmの範囲内であることが好ましい。
【0027】
かかる編地には、超極細のフィラメント糸Aが含まれているので、編地表面の摩擦係数が大きくなる。その際、編地の表裏どちらか一方の表面(好ましくは両方の表面)において、表面摩擦係数が2.5以上(より好ましくは3.0以上)であることが好ましい。ただし、表面摩擦係数は下記の方法により測定する。すなわち、底面積5×8cm、高さ3cm、重量98cN(100g)の木製ヘッドに試料を取り付けたのち、シリコンゴムを敷いた平滑台にヘッドを乗せ、自記記録装置付定速伸長形引張試験機を用いて移動速度100mm/minにてヘッドを移動させ、移動距離10mm〜150mmの平均値(g)を計測し、100で割った数値を算出する。
【0028】
また、かかる編地には、超極細のフィラメント糸Aが含まれているので接触冷感にも優れる。その際、前記編地の表裏どちらか一方の表面において、温度20℃、湿度65%RHにおける接触冷感の値が、カトーテック社製のサーモラボIIにて測定した接触冷感(q−Max値)で測定して0.02以上であることが好ましい。
【0029】
本発明のサポーターは前記編地を用いてなるサポーターである。かかるサポーターは通常、前記編地を用いて筒状に縫製されている。サポーターに付属品を取り付けたり、他の布帛と組合せてもさしつかえない。また、腕抜きとして使用してもよい。なお、前記編地において、表裏どちらか1方の表面にのみフィラメント糸Aが露出している場合は、フィラメント糸Aが露出している面が肌側になるよう縫製するとよい。
【0030】
本発明のサポーターは、超極細のフィラメント糸Aを含む編地で構成されているので、サポーター(編地)と対象物(皮膚)との摩擦係数が大きくなり、サポーターを着用した際にサポーターがズレにくい。
【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0032】
(1)溶融粘度
乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットする。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見る。
【0033】
(2)溶解速度
海・島成分の各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取り、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製する。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0034】
(3)単繊維径
透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定した。n数5で測定しその平均値を求めた。
【0035】
(4)溶解速度
海・島ポリマーの各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取りし、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製した。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0036】
(5)厚み
JIS L 1018−1998 6.5により編地の厚さを測定した。
【0037】
(6)摩擦係数
底面積5×8cm、高さ3cm、重量98cN(100g)の木製ヘッドに試料を取り付けたのち、シリコンゴムを敷いた平滑台にヘッドを乗せ、自記記録装置付定速伸長形引張試験機を用いて移動速度100mm/minにてヘッドを移動させ、移動距離10mm〜150mmの平均値(g)を計測し、100で割った数値を算出した。
【0038】
(7)接触冷感
標準状態について、カトーテック社製のサーモラボIIを用いて接触冷感(q-Max値)を測定した。ただし、標準状態とは、温度20℃、湿度65%RHである。
【0039】
(8)着用評価
試験者3人で、サポーターのズレ防止性について屈伸運動による官能評価を行った。3級:ズレ防止性に優れる、2級:普通、1級:ズレ防止性に劣る、の3段階に評価した。
【0040】
<単繊維径>
編地を電子顕微鏡で写真撮影した後、n数5で単繊維径を測定しその平均値を求めた。
【0041】
[実施例1]
島成分としてポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1200ポイズ)、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1750ポイズ)を用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合延伸糸は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は700nmであった。
【0042】
次いで、56GGの経編機(カールマイヤー(株)製 RS4)の経編機を使用して、L1筬とL2筬に前記海島型複合延伸糸を用い、一方、L3筬とL4筬にポリウレタンモノフィラメント弾性糸(オペロンテックス(株)製、総繊度470dtex/1fill、単繊維径300μm)を用いて、図1に示すパワーメッシュ組織の経編地を編成した。得られた編地を90℃にて湿熱処理した後、プレセットとして190℃で乾熱セットを行い、その後、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、2.5%NaOH水溶液で、70℃にて30%アルカリ減量した。その後、130℃にて高圧染色を行い、最終セットとして170℃の乾熱セット行った。
【0043】
得られた編地を走査型電子顕微鏡SEMで生地表面および断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、かつ、島成分(単繊維径700nm)が均一に開繊されていることを確認した。また、編地の表裏両方の表面にフィラメント糸A(単繊維径700nm)のみが露出していた。
得られた編地において、厚みは0.478mm、目付けは219.6g/m、編地表面の摩擦係数は表裏の表面の平均で3.03、接触冷感(q−max)は表裏の表面の平均で0.028であり、ズレ防止性(3級)に優れ、超極細繊維特有の風合いを呈するものであった。
前記編地を用いて肘当てサポーターを縫製し、着用したところ、軽量で肌との密着性、形状安定性(3級)に優れるため、非常に着用快適性に優れていた。
【0044】
[比較例1]
実施例1において、L1筬に、綿60番手(単繊維径11.4μm)にナイロン糸条(総繊度22dtexT、単繊維径16〜18μm)をシングルカバリングしたカバリング糸条を用い、L2筬にナイロン糸条(総繊度78dtex、単繊維径18〜20μm)を用い、L3筬とL4筬にポリウレタンモノフィラメント弾性糸(オペロンテックス(株)製、総繊度470dtex/1fill、単繊維径300μm)を用いて、かつアルカリ減量しないこと以外は実施例1と同様にした。
得られた編地において、厚みは0.662mm、目付けは227.2g/m、編地表面の摩擦係数は表裏の表面の平均で0.20、接触冷感(q−max)は表裏の表面の平均で0.025であったが、ズレ防止性(1級)で劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、着用時にズレにくいサポーターが提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aを含む編地で構成されることを特徴とするサポーター。
【請求項2】
前記編地において、表裏少なくともどちらか一方表面に前記フィラメント糸Aが露出している、請求項1に記載のサポーター。
【請求項3】
前記編地がメッシュ組織の経編地である、請求項1または請求項2に記載のサポーター。
【請求項4】
前記フィラメント糸Aがポリエステルからなる、請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター。
【請求項5】
前記フィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のサポーター。
【請求項6】
前記フィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条である、請求項1〜5のいずれかに記載のサポーター。
【請求項7】
他の糸として、単繊維径が1000nmより大の弾性繊維糸が前記編地に含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載のサポーター。
【請求項8】
前記編地にバッフィング加工またはブラシ処理加工が施されている、請求項1〜7のいずれかに記載のサポーター。
【請求項9】
前記編地の表裏どちらか一方の表面において、表面摩擦係数が2.5以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のサポーター。
【請求項10】
前記編地の表裏どちらか一方の表面において、温度20℃、湿度65%RHにおける接触冷感の値が0.02以上である、請求項1〜9のいずれかに記載のサポーター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−195969(P2011−195969A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60939(P2010−60939)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】