説明

サポータ

【課題】使用中の位置ずれを防止する。
【解決手段】伸縮性の筒状体10の両サイドに縦方向の調整部12、12を配置して前後の本体部11、11に区分し、本体部11、調整部12のハード部、ソフト部の各バイアス方向の伸長強度To 、Ta 、Tb をTb <To <Ta に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ひざ、ひじなどの関節部に特に好適に装着することができるサポータに関する。
【背景技術】
【0002】
サポータは、ひざ、ひじなどの関節部に装着すると、使用中の屈伸運動によって装着位置がずれてしまい、不都合を来たすことが少なくない。そこで、このような使用中の位置ずれを防止することを目的として、複数の提案がなされている。
【0003】
たとえば、縦横に伸縮性を有する筒状体のうち、関節部の内側に当たる部分を外側に当たる部分より密に編み、外側の部分を相対的に伸び易くすることにより、屈伸運動による位置ずれを防止することができる(特許文献1)。また、横方向に伸縮性を有するように編み立てる筒状体を単に二重構造にするだけでも、同様の効果があるという(特許文献2)。
【特許文献1】特開平5−329180号公報
【特許文献2】実用新案登録第3009341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術の前者によるときは、伸縮性が異なる外側部分、内側部分を一挙に編み立てることができるから、生産効率が高いという利点があるが、実現し得る位置ずれ防止機能が必ずしも十分ではないという問題がある。また、後者によるときは、筒状体の全体が二重構造であるから、生産効率が半減してしまう上、全体的に分厚くなり、良好な装着感が得られないという問題がある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、ハード部、ソフト部からなる調整部を筒状体の両サイドに配置することによって、装着感、生産効率を阻害することなく、実用的に十分な位置ずれ防止機能を実現することができるサポータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、共通の素材によって全体を編み立てる伸縮性の筒状体からなり、筒状体は、両サイドに配置する縦方向の調整部を介して前後の本体部に区分し、各調整部は、縦方向のハード部、ソフト部を横方向に交互に配置し、本体部、ハード部、ソフト部は、それぞれのバイアス方向の伸長強度To 、Ta 、Tb としてTb <To <Ta に設定することをその要旨とする。ただし、ここでいう縦方向、横方向とは、それぞれ筒状体のウェール方向(長手方向)、コース方向(周方向)をいう。
【0007】
なお、Tb =(0.7〜0.97)To 、Ta =(1.05〜1.5)To に設定することができ、ハード部、ソフト部の幅Wa 、Wb としてWb ≦Wa =5〜40mmに設定することができる。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、伸縮性の筒状体は、両サイドに配置する一対の縦方向の調整部を介して前後の本体部に区分されている。また、各調整部は、縦方向のハード部、ソフト部を横方向に交互に配置して構成されている。そこで、前後の本体部をそれぞれひざ、ひじなどの関節部の外側、内側に対応させるようにして装着すると、各調整部は、関節部の左右に位置することになり、屈伸運動によって関節部の外側、内側の前後の本体部が互いに逆方向に伸縮しても、一方の影響が他方に波及することが少なく、全体として良好な位置ずれ防止機能を実現することができる。各調整部のハード部は、全体の捩れを防止する骨部材として働き、ソフト部は、両側に隣接するハード部の相対移動を吸収するように働くからである。なお、各調整部は、1本以上のソフト部と2本以上のハード部とを組み合わせることにより、前後の本体部に連続する両外側にハード部を配置することが好ましい。
【0009】
筒状体は、編糸として非ストレッチ性の主編糸にストレッチ性の副編糸を添加して用いるとともに、コース方向にもストレッチ糸を混入し、縦横の双方向にそれぞれ適度の伸縮性を有するものとする。このような筒状体は、全体を共通の素材によって一挙に効率よく編み立てることができる上、過大に分厚くなることがなく、良好な装着感を実現することができる。なお、本体部、ハード部、ソフト部の伸長強度は、コース方向、ウェール方向の双方に対して45°のバイアス方向に着目して比較するものとし、したがって、コース方向またはウェール方向の各伸長強度は、必ずしもソフト部、本体部、ハード部の順に大きくなっている必要がない。また、両サイドの調整部は、筒状体の周を2分する位置に対称的に配置して前後の本体部を同幅にしてもよく、たとえば関節部の外側に対応させる前の本体部が内側に対応させる後の本体部より幅広となるように、筒状体の周方向に偏心させて配置してもよい。
【0010】
筒状体は、コース方向に混入するストレッチ糸の供給量を調節することにより、装着前の上下の開口面積を滑らかに変化させ、全体として直線的なテーパ状、凸または凹の曲線的なテーパ状、中細または中太の変形筒状などに形成することができる。また、前後の本体部は、同一の伸縮特性に形成してもよく、たとえば関節部の外側に対応させる前の本体部が内側に対応させる後の本体部より横方向に伸び易いように、異なる伸縮特性に形成してもよい。
【0011】
ハード部、ソフト部のバイアス方向の伸長強度Ta 、Tb は、それぞれ本体部のバイアス方向の伸長強度To に対して一定範囲に設定することが好ましい。ソフト部の伸長強度Tb が小さ過ぎると、ソフト部に生じる伸びが過大となって形崩れを生じ易くなるおそれがあり、ハード部の伸長強度Ta が過大であると、装着感を損うおそれがある。なお、前後の本体部の各バイアス方向の伸長強度が異なる場合、ソフト部、ハード部の各伸長強度Ta 、Tb は、それぞれ本体部の伸長強度の大きい方より大きくし、小さい方より小さくするものとする。
【0012】
ハード部、ソフト部は、それぞれの幅Wa 、Wb としてWa =5〜40mm、Wb ≦Wa に設定することが好ましい。幅Wa が過大であると、前後の本体部の幅が十分に確保できず、装着感を損うおそれがあり、過小であると、骨部材としての捩れ防止効果が不足して位置ずれ防止機能を損うおそれがある。また、Wb >Wa とすると、ソフト部の伸び量が大きくなり過ぎて形崩れを生じるおそれがある。なお、ここでいう幅Wa 、Wb は、いずれも装着前のフリー状態で計測するものとする。また、幅Wa が異なる複数のハード部を設けるとき、幅Wb は、最小の幅Wa 以下に設定するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
サポータは、共通の素材によって全体を編み立てる伸縮性の筒状体10からなる(図1)。
【0015】
筒状体10は、非ストレッチ性の主編糸にストレッチ性の副編糸を添加する編糸と、コース方向に混入するストレッチ糸とにより、縦方向(ウェール方向(筒状体10の長手方向))、横方向(コース方向(筒状体10の周方向))の双方向にそれぞれ適度の伸縮性を有するものとする。なお、図1の筒状体10は、コース方向のストレッチ糸の供給量を連続的に滑らかに変化させることにより、全体としてテーパ状に形成されている。
【0016】
筒状体10は、両サイドに配置する縦方向の調整部12、12を介し、前後の本体部11、11に区分されている(図1、図2)。各調整部12は、縦方向のハード部12a、12a、ソフト部12bを横方向に交互に配置して構成されている。なお、ハード部12a、12aは、ソフト部12bの両外側に配置され、それぞれ前または後の本体部11に連続している。
【0017】
ハード部12a、ソフト部12bは、それぞれの幅Wa 、Wb として、Wa =5〜40mm、Wb ≦Wa に設定することが好ましい。また、各本体部11、ハード部12a、ソフト部12bは、それぞれのバイアス方向の伸長強度To 、Ta 、Tb として、Tb <To <Ta 、特にTb =(0.7〜0.97)To 、Ta =(1.05〜1.5)To に設定することが好ましい。なお、このような伸長強度To 、Ta 、Tb に関する条件は、筒状体10を編み立てる際の主編糸、副編糸、ストレッチ糸を適切に選択するとともに、各本体部11、ハード部12a、ソフト部12bの編組織を適切に設定することにより実現することができる。
【0018】
かかるサポータは、たとえばひざに装着し(図3)、前後の本体部11、11をそれぞれひざの外側、内側に対応させるとともに、両サイドの調整部12、12をひざの左右に位置させる。ひざを屈伸させると、前後の本体部11、11は、一方が伸長するとき、他方が収縮し、互いに逆方向に伸縮する。しかし、本体部11、11間は、調整部12、12を介して連続しているため、各調整部12のハード部12a、12aが骨部材として働き、ソフト部12bがハード部12a、12aの相対移動を弾力的に吸収するため、使用中の捩れや位置ずれを有効に防止することができる。なお、調整部12、12は、筒状体10に対し、対称的に配置して前後の本体部11、11を同幅にしてもよく(図4(A))、周方向に偏心させることにより前後の本体部11、11を異なる幅にしてもよい(同図(B))。
【0019】
サポータの具体的な実施例1〜4を図5に例示する。これらの実施例1〜4は、いずれも良好な位置ずれ防止機能を有し、装着感も良好であった。なお、図5において、素材欄の上段、中段は、それぞれ筒状体10を編み立てる際の非ストレッチ性の主編糸、ストレッチ性の副編糸を示し、下段は、コース方向に混入するストレッチ糸を示す。また、本体部11の編組織欄の「タック/メッシュ」、「平/タック」は、それぞれタック編とメッシュ編、平編とタック編の混用編組織を示す。
【0020】
本体部11、ハード部12a、ソフト部12bの各バイアス方向の伸長強度To 、Ta 、Tb の計測要領を図6に示す。すなわち、本体部11、ハード部12a、ソフト部12bのそれぞれについて、5×12cmのサンプル片Sをバイアス方向に採取し(図6(A))、自記装置付定速伸長形引張試験機(島津製作所製オートグラフDCS−100形)のクランプC、Cにより両端部を把持させる。ただし、クランプC、Cによる両端のつかみ代各1cmとし、クランプC、C間のサンプル片Sの無負荷時の引張長さ10cmとする。試験機を作動させ、サンプル片Sの伸びδ=100%まで伸長させて直ちに回復させ、伸長時、回復時の各伸びδ=50%における伸長強度T1 、T2 とするとき(図6(B))、サンプル片Sのバイアス方向の伸長強度T=(T1 +T2 )/2を得る。ただし、伸長時、回復時とも、一方のクランプCを固定し、他方のクランプCを駆動速度100mm/分で移動させるものとする。
【0021】
以上の説明において、図5に示す主編糸、副編糸、ストレッチ糸は、単なる一例である。すなわち、主編糸は、任意の天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維や、これらの混紡糸、複合糸などの素材を使用することができ、副編糸は、ポリウレタン系のストレッチ糸の他、フィラメント加工糸も使用可能である。また、ストレッチ糸は、ポリウレタン系の他、天然ゴム系、合成ゴム系のダブルカバードヤーンであってもよく、ポリウレタン系のベア糸であってもよい。
【0022】
また、各調整部12は、ハード部12a、12aを両外側に配置する限り、ハード部12a、ソフト部12bの各本数に格別な制限がない(図7〜図9)。また、複数のハード部12a、12a…は、互いに同一幅としてもよく(図7、図8)、異なる幅に設定してもよい(図9)。複数のソフト部12b、12b…についても、同様である。ただし、いずれの場合であっても、伸長強度To 、Ta 、Tb 、幅Wa 、Wb に関する各条件を満たすものとする。
【0023】
なお、このサポータは、ひざに限らず、ひじなどの他の関節部にも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】全体構成模式図
【図2】図1のA部拡大図
【図3】使用状態説明図
【図4】図1の横断面模式説明図
【図5】各実施例の説明図表
【図6】試験要領説明図
【図7】他の実施の形態を示す図2相当図(1)
【図8】他の実施の形態を示す図2相当図(2)
【図9】他の実施の形態を示す図2相当図(3)
【符号の説明】
【0025】
10…筒状体
11…本体部
12…調整部
12a…ハード部
12b…ソフト部

特許出願人 吉田司株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の素材によって全体を編み立てる伸縮性の筒状体からなり、該筒状体は、両サイドに配置する縦方向の調整部を介して前後の本体部に区分し、前記各調整部は、縦方向のハード部、ソフト部を横方向に交互に配置し、前記本体部、ハード部、ソフト部は、それぞれのバイアス方向の伸長強度To 、Ta 、Tb としてTb <To <Ta に設定することを特徴とするサポータ。
【請求項2】
Tb =(0.7〜0.97)To 、Ta =(1.05〜1.5)To に設定することを特徴とする請求項1記載のサポータ。
【請求項3】
前記ハード部、ソフト部の幅Wa 、Wb としてWb ≦Wa =5〜40mmに設定することを特徴とする請求項1または請求項2記載のサポータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−185430(P2007−185430A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7640(P2006−7640)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(399038240)吉田司株式会社 (1)
【Fターム(参考)】