説明

サラシナショウマ属植物の種子発芽方法

【課題】効率良く、サラシナショウマ属植物の発根乃至発芽を促進させることができる、種子発芽方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るサラシナショウマ属植物の種子発芽は、サラシナショウマ属植物の種子を発芽までに植物成長剤に継続的に接触させて、前記サラシナショウマ属植物の種子を発芽させる、発芽工程、を有する。植物成長剤は、ジベレリン類、オーキシン類、サイトカイニン類、エチレンガス、アブシジン酸、ブラシノステロイド、ジャスモン酸及びフロリゲンのうち少なくともいずれか一つを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サラシナショウマ属植物の種子発芽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本に自生するキンポウゲ科RANUNCULACEAEのサラシナショウマCimicifuga simplexは、同属植物で中国に自生するCimicifuga dahurica、Cimicifuga foetidaまたはCimicifuga heracleifoliaとともに、日本薬局方に規定される生薬「升麻」の基原植物である。
【0003】
サラシナショウマは、自然の土壌に播種した場合、およそ2年後に発芽するが、発芽するものは播種した中のほんの一部だけであることが認められている。
【0004】
また、実験室においてサラシナショウマの種子を発芽試験に供する場合は、比較的多くの種子が発根することが認められているが、正常に子葉まで展開するのはおよそ1年半後にごく一部のものであることが認められている。
【0005】
このように、自然土壌若しくは実験室におけるサラシナショウマ属植物の栽培は困難であり、薬草として有益であるサラシナショウマ属植物の栽培方法の確立が求められる。
【0006】
キンポウゲ科植物の栽培を促進させるため、植物成長剤を付与する方法が、例えば、特許文献1に記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、サラシナショウマ属植物の生長を発芽まで促進させるのは非常に困難である。
【特許文献1】特開2004−129614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、効率良く、サラシナショウマ属植物の発根乃至発芽を促進させることができる、サラシナショウマ属植物の種子発芽方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るサラシナショウマ属植物の種子発芽方法は、
サラシナショウマ属植物の種子を発芽までに植物成長剤に継続的に接触させて、前記サラシナショウマ属植物の種子を発芽させる、発芽工程、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
また、前記植物成長剤は、ジベレリン類、オーキシン類、サイトカイニン類、エチレンガス、アブシジン酸、ブラシノステロイド、ジャスモン酸及びフロリゲンのうち少なくともいずれか一つを含有する、ことも可能である。
【0011】
また、前記発芽工程の前に、前記サラシナショウマ属植物の種子の種皮を柔らかくすることで前記植物成長剤の浸透を促進させる、種皮柔化工程、を有する、ことも可能である。
【0012】
また、前記種子柔化工程は、サラシナショウマ属植物の種子を、アルカリ性水溶液に浸漬する、ことも可能である。
【0013】
また、前記種子柔化工程は、サラシナショウマ属植物の種子を、次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する、ことも可能である。
【0014】
また、前記サラシナショウマ属植物の種子を、次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する浸漬時間は、0.5時間以上3時間以下である、ことも可能である。
【0015】
また、前記植物成長剤の濃度は、0.1ppm以上100ppm以下である、ことも可能である。
【0016】
また、前記発芽工程における、前記サラシナショウマ属植物の種子に作用する温度は、10℃以上19℃以下である、ことも可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法は、効率良く、サラシナショウマ属植物の発根乃至発芽を促進させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施形態1)
本実施形態における、サラシナショウマ属植物の種子発芽方法は、サラシナショウマ属植物の種子を発芽までに植物成長剤に継続的に接触させる。
【0019】
種子を発芽までに植物成長剤に接触させるとは、発芽床を植物成長剤で湿潤させ、種子をその発芽床に設置し、種子が発芽するまで植物成長剤に接するようにさせることである。
【0020】
また、種子を継続的に植物成長剤に接触させるとは、発芽までに常に種子を植物成長剤に接触させることはもちろん、発芽状態の観測等の一時的な処理乃至測定のためにいったん種子を植物成長剤に接触している状態を解除し、すぐに、再度、種子を植物成長剤に接触している状態に戻すことを含む。
【0021】
発芽床は、例えば土、砂、綿、濾紙等の発根及び発芽の支持できるものを使用することができ、植物成長剤で湿潤させることができるものであればよい。
【0022】
サラシナショウマ属植物としては、例えば、サラシナショウマ(Cimicifuga simplex)及び同属植物が適用される。
【0023】
発芽とは、地上部となる芽が生じることであり、正常に子葉が展開する状態をいう。それに対して、発根とは根が生じることである。
【0024】
植物成長剤とは、植物ホルモン乃至植物ホルモンと同じ生理活性を示す物質と同様の意義であり、植物の生理過程を調節する物質である。
【0025】
具体的な植物成長剤としては、ジベレリン類、オーキシン類、サイトカイニン類、エチレンガス、アブシジン酸、ブラシノステロイド、ジャスモン酸、フロリゲン、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0026】
ジベレリン類としては、ジベレリンAからジベレリンA136までが使用可能であり、特に好ましくはジベレリンA(C1922)を使用することが可能である。
【0027】
植物成長剤の濃度は、0.000001ppm以上100ppm以下とすることが可能であり、0.1ppm以上100ppm以下とすることが好ましい。より好適には、1ppm以上100ppm以下である。なぜならば、植物成長剤が0.000001ppm程度でも、植物成長剤の種類によっては非常に高い効果を有する場合があるからである。一方、植物成長剤の濃度が100ppmよりも高いと、種子に予期せぬ副作用が生じる可能性があるからである。
【0028】
サラシナショウマ属植物の種子を発芽させるのに必要な期間である発芽期間における温度は、10℃以上19℃以下とすることが好ましく、より好ましくは13℃以上18℃以下である。発芽期間における温度が10℃よりも低いと、成長に必要な温度が低すぎて発芽がなされない可能性があるからである。一方、発芽期間における温度が19℃よりも高いと、発芽に好ましくない影響が生じる可能性があるからである。
【0029】
実施形態1における、サラシナショウマ属植物の種子発芽方法によれば、効率良く、サラシナショウマ属植物の発芽を促進させることができる。特に、従来のように、サラシナショウマ属植物の種子を予め植物成長剤に浸漬処理し、浸漬処理が終了した種子を蒸留水で湿潤させた発芽床に設置させる方法では、ほとんど発芽に至る種子はなかったところ、本実施形態に係る方法では、大半の種子を発芽させることができる。さらに、本実施形態に係る発明を実施するために必要とされる器具や植物成長剤等の試薬は、一般農家でも入手可能であるので、誰でも簡単に本発明を実施することが可能である。さらには、本発明の種子改善方法は、サラシナショウマ属植物の種子だけでなく、その他の種類の植物の種子にも応用できることが考えられ、本発明の利益は計り知れない。
【0030】
(実施形態2)
実施形態2では、発芽工程の前に、サラシナショウマ属植物の種子の種皮を柔らかくすることで植物成長剤の浸透を促進させる、種皮柔化工程、を有する。
【0031】
種子の種皮を柔らかくするとは、種子の種皮を柔らかくする、種皮を剥く、若しくは、種皮の一部を破壊することである。このように、種子の種皮を柔らかくすることにより、植物成長剤を種子内部へ浸透させることを促進し、後の発芽工程において、種子の発芽をさらに促進させるのである。植物成長剤を種子内部へ浸透させるとは、種皮より内部にある胚乳、子葉、胚軸等へ植物成長剤を到達させることである。
【0032】
種子の種皮を柔らかくするためには、具体的には、サラシナショウマ属植物の種子を、次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する。
【0033】
次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、有効塩素濃度にて、0.1%以上10%以下とすることが望ましい。次亜塩素酸ナトリウムの濃度が有効塩素濃度にて0.1%よりも低いと、種子の前処理としての作用が少なくなる可能性があるからである。一方、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が有効塩素濃度にて10%よりも多いと、種子の成長に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0034】
種皮柔化工程において、種子を次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する浸漬時間は、0.5時間以上3時間以下とすることが好ましく、より好ましくは1時間以上2時間以下である。種子を浸漬する時間が0.5時間よりも少ないと、種皮の柔化が不十分となる可能性があるからである。一方、種子を浸漬する時間が3時間よりも多いと、種皮及びその内部に予期しない作用が生じる可能性があるからである。
【0035】
種皮柔化工程において、次亜塩素酸ナトリウムに浸漬させた後の種子は、発芽工程に至る前に、蒸留水若しくは水道水で次亜塩素酸ナトリウムを洗い流すことが好ましい。発芽工程において、次亜塩素酸ナトリウムが種子に残留していると、種子の発芽に予期せぬ悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0036】
このように、発芽工程の前に、種子柔化工程を行うことにより、さらに、播種した種子の発芽率を向上させることができ、しかも、種子を播種してから発芽までの期間をより短くすることができるのである。
【0037】
なお、本実施形態では、サラシナショウマ属植物の種子を次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する具体例を示したが、そのような実施形態に限定されることはなく、アルカリ性水溶液に浸漬させることも可能である。アルカリ性水溶液としては、例えばアルカリ性界面活性剤を使用することができる。
【0038】
上述の実施形態では、植物成長剤としてジベレリン類を使用する例を示したが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、オーキシン類、サイトカイニン類、エチレンガス、アブシジン酸、ブラシノステロイド、ジャスモン酸、フロリゲン、又はこれらの混合物を用いる場合でも、サラシナショウマ属植物の種子を有効に発芽させることができる。
【実施例】
【0039】
〈種子の前処理法と発根率・発芽率の関係〉
サラシナショウマの種子を、ジベレリンGA3の濃度を0ppm(ジベレリンを含有させず蒸留水で処理する)、1ppm若しくは100ppmとして、ジベレリンGA3に継続的に接触させた(種子柔化工程をしていない無処理の場合)。
【0040】
サラシナショウマの種子を99%エタノール中に5分間浸漬した後、蒸留水で3回洗浄した。次に、エタノールで洗浄したサラシナショウマの種子は、有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬して1時間攪拌した。そして、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬した後は、流水(蒸留水)で3時間濯いだ。ジベレリンGA3の濃度を0ppm(ジベレリンを含有させず蒸留水で処理する)、1ppm若しくは100ppmとして、ジベレリンGA3に継続的に接触させた(種子柔化工程として次亜塩素酸処理の場合)。
【0041】
次に、サラシナショウマの種子を、2%濃度のアルカリ性洗剤(一般実験用)に浸漬して1時間攪拌した。そして、アルカリ性洗剤に浸漬した後は、流水(蒸留水)で3時間濯いだ。ジベレリンGA3の濃度を0ppm、1ppm若しくは100ppmとして、ジベレリンGA3に継続的に接触させた(種子柔化工程としてアルカリ性洗剤処理の場合)。
【0042】
このようにして、無処理の場合、次亜塩素酸処理の場合、アルカリ性洗剤処理の場合につき、それぞれ、ジベレリン濃度(ppm)を変化させて、発根及び発芽のようすを観察した。係る結果を表1に示す。測定値は試験を3回繰り返して得られた数値の平均値である。置床後の日数は、種子を播種した当日を0日目とした経過日数である。
【0043】
【表1】

【0044】
まず、種子柔化工程をしていない無処理の場合でも、ジベレリン濃度が1ppm若しくは100ppmのいずれでも、発芽が観察された。
【0045】
次に、種子柔化工程としてアルカリ洗浄処理をした場合も、ジベレリン濃度が100ppmの場合、発芽が観察された。116日目には4.0%の高い発芽率を示した。
ジベレリン濃度が1ppmの場合、102.5日目にして発芽を開始し、116日目には1.3%の発芽率を示した。
ジベレリン濃度が0ppmの場合(比較例となる)は、112.0日目にして発芽を開始し、116日目の発芽率は0.7%という低い発芽率であった。
【0046】
次に、種子柔化工程として次亜塩素酸処理をした場合も、ジベレリン濃度が100ppmの場合、発芽が観察された。48.0日目には既に発芽を開始し、116日目には4.0%の高い発芽率を示した。
ジベレリン濃度が1ppmの場合、65.0日目にして発芽を開始し、116日目には2.0%の発芽率を示した。
ジベレリン濃度が0ppmの場合(比較例となる)は、106.5日目にして発芽を開始し、116日目の発芽率は1.3%という低い発芽率であった。
【0047】
以上、表1の結果から、サラシナショウマの種子に、発芽までにジベレリンGA3を継続的に接触させることで、発芽を大幅に可能乃至促進させることができたことが判明した。さらに、前処理として、種子柔化工程を行えばさらに発芽が促進され、特に、前処理として次亜塩素酸処理が優れていることが判明した。
【0048】
〈ジベレリンGA3浸漬処理における発根率・発芽率〉
上述した次亜塩素酸処理をしたサラシナショウマの種子を、5℃の低温条件にて、120時間(5日間)、ジベレリンGA3に浸漬した(ジベレリンGA3浸漬処理)。そして、このサラシナショウマの種子を、蒸留水で湿潤させた発芽床で発芽試験を行った。
【0049】
上述したアルカリ性洗浄処理をしたサラシナショウマの種子を、5℃の低温条件にて、120時間、ジベレリンGA3に浸漬した。そして、このサラシナショウマの種子を、蒸留水で湿潤させた発芽床で発芽試験を行った。
【0050】
また、種子柔化工程として無処理のサラシナショウマの種子を、5℃の低温条件にて、120時間、ジベレリンGA3に浸漬した。そして、このサラシナショウマの種子を、蒸留水で湿潤させた発芽床で発芽試験を行った。
これらの発芽試験の結果を表2に示す。測定値は試験を3回繰り返して得られた数値の平均値である。置床後の日数は、種子を播種した当日を0日目とした経過日数である。
【0051】
【表2】

【0052】
前処理として次亜塩素酸処理を行い、ジベレリン濃度が100ppmの場合は、110日目にして74.2%の発根率を示したが、サラシナショウマの種子は発根をするのみで、発芽はなく、さらに観察を続行しても発芽の可能性は低いと予想される。
【0053】
前処理としてアルカリ性水溶液処理を行った場合は、ジベレリン濃度が100ppmの場合、110日目にして65.3%の発根率を示すにすぎなかった。さらに観察を続行しても発芽の可能性は低いと予想される。
【0054】
前処理として無処理の場合は、ジベレリン濃度が100ppmの場合、110日目にして67.3%程度の発根率を示すにすぎず、さらに観察を続行しても発芽の可能性は低いと予想される。
【0055】
以上、表2の結果から、サラシナショウマの種子に、従来法であるジベレリンGA3浸漬処理を行ったとしても、発芽の観察は困難であることが判明した。この従来法との比較より、サラシナショウマの種子に、発芽までにジベレリンGA3を継続的に接触させるという本願発明における方法の優れた効果が理解される。
【0056】
〈ジベレリン濃度と発根率・発芽率の関係〉
複数のサラシナショウマの種子を99%エタノール中に5分間浸漬した後、蒸留水で3回洗浄した。この洗浄したサラシナショウマの種子につき、有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬して1時間攪拌した。そして、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬した後は、蒸留水中で3時間濯いだ。ジベレリンGA3の濃度を0ppm(ジベレリンを含有せず蒸留水のみ)、0.01ppm、0.10ppm、1.00ppm、10.00ppm、100.00ppmとして、ジベレリンGA3に継続的に接触させた。
【0057】
このようにして、種子柔化工程として次亜塩素酸処理の場合において、ジベレリン濃度を変化させ、発根率及び発芽率を観察した。係る結果を表3に示す。測定値は試験を3回繰り返して得られた数値の平均値である。置床後の日数は、種子を播種した当日を0日目とした経過日数である。
【0058】
【表3】

【0059】
ジベレリンが含有されていない場合(ジベレリン濃度が0.00ppmの場合)は置床後50日目の発根率が0%で、置床後116日目の発根率が59.3%という低いものであった。置床後116日目で1.3%という低い発芽率であった。
【0060】
ジベレリン濃度が0.01ppmの場合は、置床後116日目に発根率が77.3%という高い数値を示した。置床後116日目で発芽率は0%であったが、発根率が高いのでそのまま観察を続ければ高い発芽率が予想される。
ジベレリン濃度が0.1ppmの場合は、置床後116日目に発根率が78.0%という高い数値を示した。そして置床後116日目で発芽率は1.3%であった。
【0061】
ジベレリン濃度が1ppmの場合は、置床後116日目に発根率が85.3%という高い数値を示した。そして置床後100日目で発芽率1.3%であり、置床後116日目で発芽率2.0%であった。
ジベレリン濃度が10ppmの場合は、置床後50日目に発根率22.0%であり、置床後116日目に発根率64.7%であった。そして置床後100日目で発芽率9.3%、置床後116日目で発芽率10.0%という非常に高い数値であった。
【0062】
ジベレリン濃度が100ppmの場合は、置床後50日目に発根率66.0%、置床後116日目に発根率68.7%という高い数値であった。そして置床後100日目で発芽率4.0%、置床後116日目で発芽率4.0%という高い数値であった。
このように、ジベレリン濃度は、0.1ppm以上100ppm以下とすることが好ましいことがわかった。さらに好ましくは1ppm以上100ppm以下であることがわかった。
【0063】
〈試験温度が発根率等に及ぼす影響〉
複数のサラシナショウマの種子を99%エタノール中に5分間浸漬した後、蒸留水で3回洗浄した。この洗浄したサラシナショウマの種子を、ジベレリンGA3の濃度を1ppmとして、ジベレリンGA3に継続的に接触させた。そして、サラシナショウマの種子をジベレリンに継続的に接触させる間の試験温度を15℃、20℃、25℃として、成長のようすを観察した。この結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
試験温度が15℃の場合は、100日目にして2.0%の発芽率を示した。しかしながら、試験温度が20℃の場合は、置床後100日目にして2.0%の発根率を示すのみで、置床後100日目の発芽率は0%であった。試験温度が25℃の場合は、置床後100日目における発根率は0%であった。さらに10℃を下回る温度では発根は期待できなかった。このことから、サラシナショウマ属植物の種子は、10℃以上19℃以下の範囲で、ジベレリンに継続的に接触させるのが好適であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシナショウマ属植物の種子を発芽までに植物成長剤に継続的に接触させて、前記サラシナショウマ属植物の種子を発芽させる、発芽工程、を有する、
ことを特徴とするサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。
【請求項2】
前記植物成長剤は、ジベレリン類、オーキシン類、サイトカイニン類、エチレンガス、アブシジン酸、ブラシノステロイド、ジャスモン酸及びフロリゲンのうち少なくともいずれか一つを含有する、
ことを特徴とする請求項1記載のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。
【請求項3】
前記発芽工程の前に、前記サラシナショウマ属植物の種子の種皮を柔らかくすることで前記植物成長剤の浸透を促進させる、種皮柔化工程、を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。
【請求項4】
前記種子柔化工程は、サラシナショウマ属植物の種子を、アルカリ性水溶液に浸漬する、
ことを特徴とする請求項3記載のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。
【請求項5】
前記種子柔化工程は、サラシナショウマ属植物の種子を、次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する、
ことを特徴とする請求項3記載のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。
【請求項6】
前記サラシナショウマ属植物の種子を、次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する浸漬時間は、0.5時間以上3時間以下である、
ことを特徴とする請求項5記載のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。
【請求項7】
前記植物成長剤の濃度は、0.1ppm以上100ppm以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。
【請求項8】
前記発芽工程における、前記サラシナショウマ属植物の種子に作用する温度は、10℃以上19℃以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のサラシナショウマ属植物の種子発芽方法。

【公開番号】特開2009−219461(P2009−219461A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69729(P2008−69729)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】