説明

サルメテロールキシナホエート用計量式吸入器

【課題】HFA推進剤中に懸濁させたサルメテロールキシナホエートの製剤の懸濁液濃度、用量およびFPMを安定化させる。
【解決手段】A)吸入療法に有用である別の薬剤との組み合せであってもよい粒子状サルメテロールキシナホエート、およびこれが懸濁される。B)1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物からなる液化推進剤、から基本的に構成される医薬エアロゾル製剤が入った、計量用チャンバー4を有している計量バルブで密封されたキャニスターを有する容器であって;前記製剤が界面活性剤および、前記液化推進剤ガスより高い極性を有する成分を実質的に含んでおらず、前記バルブが、実質的にEPDMのポリマーから形成された1個以上のシール用ガスケット12を有しており且つその計量用チャンバーの表面が前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器障害の治療で用いることができる、所定量の医薬製剤、特にサルメテロールキシナホエート製剤を投薬するのに使用される計量式吸入器(MDI)用容器を提供する。
【背景技術】
【0002】
4−ヒドロキシ−α−[[[6−(4−フェニルブトキシ)ヘキシル]アミノ]メチル]−1,3−ベンゼンジメタノールは、(特許文献1)において、広範囲の気管支拡張剤の一つであると記載されている。この化合物はサルメテロールという一般名によっても知られ、その1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(キシナホエート)塩は、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの炎症性疾患の非常に効果的な治療薬として広く知られるようになっている。
【0003】
エアロゾル製剤用の容器は通常、バルブに結合されたバイアル体(キャニスター)を有している。バルブには、製剤が投薬時に通過するバルブステム[軸部]がある。一般にバルブには、バルブステムが往復運動できるようにするためのゴム製バルブシール部材があり、それによって容器からの推進剤の漏出が防止される。計量式吸入器には、起動ごとに計量された所定量のエアロゾル製剤を患者に投薬するよう設計されているバルブがある。そのような計量バルブには通常、所定の容量を有し、正確な所定用量を起動ごとに投与するための計量用チャンバー[空洞部]がある。
【0004】
計量バルブには、バルブからの推進剤の漏出を防止するためのガスケット(シール部材とも称される)が組み込まれている。ガスケットは、例えば低密度ポリエチレン、クロロブチル、黒色および白色ブタジエンアクリロニトリルゴム、ブチルゴムおよびネオプレンなどの好適な弾性材料からなる。
【0005】
MDI用のバルブは、エアロゾル業界で周知の製造業者から、例えばフランスのバロア社(Valois)(例:DF10、DF30、DF60)、英国のベスパック社(Bespak plc)(例:BK300、BK356、BK357)および英国の3M−ネオテクニック社(3M-Neotechnic Limited)(例:スプレーマイザー(Spraymiser))から入手可能である。計量バルブは、医薬エアロゾル製剤を投薬するのに好適なアルミニウムキャニスターのような金属キャニスターなどの、市販されているキャニスターと組み合わせて使用される。
【0006】
上記のようなバルブガスケットを組み込んだMDIは、推進剤11(CClF)、推進剤114(CFClCFCl)および推進剤12(CCl)またはそれらの混合物などのクロロフルオロカーボン系推進剤で十分な機能を発揮する。しかしながらこれらの推進剤は現在、成層圏オゾンの分解を誘発すると考えられていることから、いわゆる「オゾンに優しい」推進剤を用いる医薬用エアロゾル製剤を提供する必要がある。
【0007】
従来のクロロフルオロカーボン系推進剤と比較してオゾン減少効果が小さいと考えられている種類の推進剤には、ヒドロフルオロアルカン類(HFA類)、特に1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)およびそれらの混合物などがある。しかしながら、その新たな種類の推進剤を用いて製造される医薬エアロゾル製剤の安定化に関連して問題が生じている。
【0008】
医薬エアロゾル製剤には、液剤または懸濁液などがあり得る。溶液製剤の中には、中に入っている薬剤物質が分解を受けやすいという欠点を有するものがある。さらに、治療方式に影響する液滴径の制御に関する問題がある。そのため、懸濁液が一般に好ましい。
【0009】
懸濁液エアロゾル製剤は通常、粒子状医薬、1以上の液体推進剤、適宜の共推進剤、および適宜の溶媒もしくは界面活性剤などの補助剤を含む。エアロゾル製剤は、キャニスター中で加圧下にある。MDIなどのエアロゾル装置の効率は、肺の適切な部位に付着する用量の関数である。付着はいくつかの要素によって影響され、そのうちの最も重要なものの一つは空気力学的粒径である。エアロゾル製剤中の固体粒子および/または液滴は、それの空気力学的直径質量中央値(MMAD、質量空気力学的直径がその回りに等しく分布している径)によって特徴付けることができる。
【0010】
懸濁液製剤では、粒径は主として、通常は微粒子化によって固体医薬が小さくされる時の大きさにより、製造時に制御される。しかしながら、懸濁薬剤が推進剤中への溶解度を少しでも有すると、オストワルド成長と称される現象のために、粒径が大きくなる場合がある。また粒子は、凝集したり、あるいはキャニスターまたはバルブなどのMDIの部分に付着する傾向を有している場合がある。さらに薬剤は、特に長期間保管した場合に、バルブのゴム製構成要素中に吸収される傾向を有している場合がある。特に、微粒子が優先的に吸収される可能性がある。オストワルド成長および特に薬剤付着の影響は、低用量で製剤する必要がある強力な薬剤(サルメテロールキシナホエートなど)の場合に特に重大となり得る。
【0011】
上記の問題に関しては、例えば(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)および(特許文献6)に開示されているように、アルコール類、アルカン類、ジメチルエーテル、界面活性剤(フッ素化および非フッ素化界面活性剤、カルボン酸類、ポリエトキシレート類など)のような1以上の補助剤を加えることで、さらには起こり得るオゾンの破壊を最小限とすることを意図して従来のクロロフルオロカーボン系推進剤を少量加えることで対応が行われている。
【0012】
サルメテロールキシナホエートの賦形剤を含まない製剤が、(特許文献7)に記載されている。さらに(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)および(特許文献11)には、1以上の非フルオロカーボン系ポリマーとの組み合せであってもよい1以上のフルオロカーボン系ポリマーでコーティングされたエアロゾルキャニスターが開示されている。
【0013】
MDIから患者に投与される処方用量のエアロゾル医薬が常に、製造者が謳う仕様を満足し、FDAその他の規制当局の要求事項に適合することが必須である。すなわち、缶から投与される全ての用量が、狭い許容範囲内で同じでなければならない。従って、製剤が投与される用量全てにおいて製品の寿命を通して実質的に均一であることが重要である。また、長期間にわたって保管した時に、懸濁液の濃度が大きく変化しないことも重要である。
【0014】
規制当局の許可を得るには、医薬エアロゾル製剤製品は厳しい規格を満足しなければならない。規格が通常設定されている一つのパラメータは、微粒子質量(FPM)である。これは、一定の範囲内の、通常は5μm未満の径を有する薬剤粒子の量に基づいて、肺内部、すなわち呼吸細気管支および肺胞に達する能力を有する薬剤物質の量を評価する手段である。
【0015】
MDIからの起動FPMは、標準的なHPLC分析によって測定されるアンダーセン(Andersen)カスケード衝撃スタックの段階3、4および5で付着する薬剤物質の量の合計に基づいて計算することができる。
【0016】
MDIを長期間にわたって保管した後であっても、MDIから投与される全ての用量についての医薬エアロゾル製剤のFPMが設定された規格内であることが重要である。
【0017】
理論に拘束されることを望むものではないが、懸濁液中の薬剤の濃度、従って投与される用量は多くの場合(特に粒子状のサルメテロールキシナホエートとHFAとの製剤)、薬剤がバルブのゴム製構成要素中に吸着されることで経時的に減少する可能性があると、本発明者らは仮設している。それは、缶の全薬剤含量(TDC)における減少として観察することができる。この現象は、製剤中への水分の侵入によって加速され得る。
【0018】
この仮説は、表1に示したように40℃、75%相対湿度および40℃、20%相対湿度で保管した従来のMDI中のサルメテロールキシナホエートHFA134aエアロゾル製剤を用いる試験によって裏付けられている。
【0019】
さらなる証拠から、一部の粒子状エアロゾル製剤、例えばサルメテロールキシナホエートHFA134a製剤のFPMおよび平均用量が、製剤中への水分の侵入および/または付着および/または吸収によって経時的に低下して、MDIの性能低下を生じることが示されている。
【0020】
40℃、75%相対湿度で保管された従来のMDI中のサルメテロールキシナホエートHFA134aエアロゾル製剤のFPMに対する影響を、表2および表4に示してある。表3および表5からは、40℃、75%相対湿度で保管された場合の、従来のMDIから投与される平均用量に目立った経時的低下があることがわかる。
【0021】
他のバルブ構成要素、特には計量用チャンバーへの薬剤粒子の付着もまた、起動の回数が多くなると特に顕著になる、投与される用量に観察される不安定性などの製剤安定性上の問題に寄与し得るものである。
【0022】
付着に伴う問題は、推進剤1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)をベースとして賦形剤を含まないエアロゾル製剤を用いる場合に特に悪化し、エアロゾルの保管期間が長くなるに連れて、特に高温および/または高湿で保管すると大きくなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】英国特許出願公開第2140800号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0372777号明細書
【特許文献3】国際公開第91/04011号パンフレット
【特許文献4】国際公開第91/11173号パンフレット
【特許文献5】国際公開第91/11495号パンフレット
【特許文献6】国際公開第91/14422号パンフレット
【特許文献7】国際公開第93/11743号パンフレット
【特許文献8】国際公開第96/32345号パンフレット
【特許文献9】国際公開第96/32151号パンフレット
【特許文献10】国際公開第96/32150号パンフレット
【特許文献11】国際公開第96/32099号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
驚くべきことに本発明者らは、特定のバルブ材料を用いることで、バルブ構成要素への付着を減少させ、ゴム製構成要素への薬剤吸収を減少させ、ないしは保管および使用時における製剤中への水の侵入を効果的に抑制することによって、MDIから得られる、HFA推進剤中に懸濁させた粒子状医薬、例えばHFA推進剤中に懸濁させたサルメテロールキシナホエートの製剤の懸濁液濃度、用量およびFPMを安定化させることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0025】
従って本発明は、
(A)吸入療法に有用である別の薬剤との組み合せであってもよい粒子状サルメテロールキシナホエート、およびこれが懸濁されている
(B)1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物を含む液化推進剤ガス、
から基本的に構成される医薬エアロゾル製剤が入っている、計量用チャンバーを有している計量バルブで封止されたキャニスターからなる容器であって;前記製剤が、界面活性剤ならびに前記液化推進剤ガスより高い極性を有する成分を実質的に含んでおらず;前記バルブが、実質的にエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)のポリマーから形成された1個以上のシール[密封]用ガスケットを有し、前記計量用チャンバーの表面が前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供していることを特徴とする容器を提供する。
【0026】
好ましくは前記製剤は、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物に懸濁させた、吸入療法に有用である別の薬剤との組み合せであってもよい粒子状サルメテロールキシナホエートからなる。
【0027】
より好ましくは、前記液化推進剤ガスは1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】下方に向いたバルブを有するMDIの断面図の一部を示す図である。
【図2】MDIバルブの別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、特に高温および高湿条件下での保管後に、投与される用量およびFPMが減少するという、特にサルメテロールキシナホエートにおいて認められる傾向は、実質的にEPDMのポリマーから形成された1個以上のガスケットを使用することで改善できることを見い出した。しかしながら、投与される用量およびFPMの絶対値は大きくは増加しない。従って、装置を起動するごとに患者が正しい用量を得られるようにするため、製剤にはいわゆるロスを補うために過剰の薬剤物質(「過多量」とも称される)を入れておかなければならない。有利なことには、前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供する計量用チャンバーと組み合せて前記ガスケットを使用すると、患者が取り込み可能な医薬の絶対用量が上がり、しかも同時に、投与される用量およびFPMにおける安定化が維持または改善される。これは、前記医薬のラベル上に取り込み可能であると表示された全用量が投与される患者にとっては恩恵をもたらし、FDAおよび他の規制当局の厳しい基準を満足する可能性が高くなる。さらに、製品の損失量が減少することから、経済的な利点もある。
【0030】
さらに、計量用チャンバーのフッ素化表面には撥水性があり、製剤中への経時的な水分侵入をさらに減少させ、これらによって上記の望ましくない結果を低減することができる。
【0031】
本発明の独特な態様は上記の容器であって、この場合実質的にEPDMのポリマーから形成された缶/首部シール用ガスケット(3)によって前記バルブが前記キャニスターに対して封止されている。
【0032】
特に好ましいものは上記の容器であって、この場合前記計量バルブが、壁ならびに、バルブステム(7および8)が通過する際に中側を通る上側(12)および下側(9)シール用ガスケットによって画定される計量用チャンバー(4)を有し、前記2個のシール用ガスケットが実質的にEPDMのポリマーから形成され、前記計量用チャンバーの表面が、内部に収容される製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供することを特徴としている。
【0033】
また特に好ましいのが前記の容器であって、この場合前記バルブが、実質的にEPDMポリマーから形成される缶シール用ガスケット(3)によって前記キャニスターに対して封止され、前記下側(9)シール用ガスケットが実質的にEPDMポリマーから形成されている。
【0034】
最も好ましくは、前記計量バルブにおける全てのシール用ガスケットが、実質的にEPDMポリマーから形成される。
【0035】
前記において、「EPDMのポリマー」および「EPDMポリマー」という表現は互換的に使用される。
【0036】
本明細書で使用される場合のシール用ガスケットとは、首部/キャニスターガスケットおよび/または下側シール用ガスケットおよび/または上側シール用ガスケットを意味するものと理解される。
【0037】
図1には、下方に向いたバルブを有するMDIの断面図の一部を示してある。ガスケットは、缶/首部シール部材(3)、下側計量用チャンバーシール部材(9)および上側計量用チャンバーシール部材(12)によって表されている。計量用チャンバーは4で示され、ステムは7および8で示されている。
【0038】
図2には、MDIバルブの別の断面図を示してある。
【0039】
HFA推進剤中の粒子状医薬のエアロゾル製剤とともに用いるバルブにおけるガスケット材料として使用される場合のEPDMポリマーによって、従来の材料から製造されるガスケットと比較して、前記ガスケット上への薬剤粒子の付着が低減されるように思われる。
【0040】
さらに、EPDMポリマーの特性は、ゴムの中に薬剤が吸収されることに関して、従来から用いられている材料より優れていることが見い出された。
【0041】
さらにEDPMポリマーは、ヒドロフルオロカーボンを使った医薬エアロゾル製剤中への水分侵入の抑制に関しても、優れた特性を有している可能性がある。これについては、EPDMポリマー製のガスケットを用いたMDI中のサルメテロールキシナホエートHFA134a製剤が、40℃、相対湿度75%で6ヶ月間にわたって保管した場合であっても、使用開始時に安定なFPMおよび投与用量であることが表2に示されている。
【0042】
表3および表5は使用開始における平均用量および用量範囲のデータを示すもので、バルブガスケットがEPDMポリマーから形成されているサルメテロールキシナホエートHFA134a製剤の場合は製剤の安定性が改善されることをさらに裏付けている。
【0043】
加えて、EPDMポリマー製のガスケットの寿命は、その材料がヒドロフルオロカーボン含有製剤に対してより安定であり、分解および/または歪みに対する耐性が高いことから、従来のガスケットの寿命より長いように思われる。従って、製品の寿命を通じてEPDMポリマーの利点が、装置の機能が損なわれることなく享受される。
【0044】
EPDMポリマーは、ウェスト・アンド・パーカー・シールズ(West and Parker Seals)(米国)などの各種の供給業者から入手可能である。
【0045】
本明細書で使用される場合に、実質的にEPDMのポリマーから形成されたガスケットとは、90%を超えるEPDMポリマー、詳細には95%を超えるEPDMポリマー、特には99%を超えるEPDMポリマーから形成されているガスケットを意味するものと理解する。
【0046】
本発明はまた上記したように容器に関するもので、計量用チャンバーが製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供している。それによって、従来からあったバルブと比較して、サルメテロールキシナホエートHFA製剤のようなエアロゾルHFA製剤と組み合せて使用した場合に、計量用チャンバーでの薬剤付着が低減されるという利点がある。
【0047】
前記計量用チャンバーは、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートPBT(ポリエステル)、アセタール(ポリオキシメチレン)およびテトラブチレンテレフタレート(TBT)などの従来から使用されているプラスチック材料、あるいは、前記製剤とともに用いるのに適合性のある金属材料、例えばステンレス鋼またはアルミニウムなどの適切な特性を有する材料から形成することができる。金属製バルブの一つの例は、3M−ネオテクニック(Neotechnic)バルブである。
【0048】
計量用チャンバー(特に、プラスチック材料から形成される場合)には好ましくは前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供するよう表面処理を施こす。
【0049】
好ましくは表面処理は、パーフルオロシクロアルカンを含むC1−10パーフルオロアルカン類;C2−10パーフルオロアルケン類;フルオロシクロアルカンを含むフルオロアルカン類または水素が高い割合でフッ素で置き換わっているフルオロアルケン類、あるいはそれらのブレンドなどの高度にフッ素化された小分子を用いるプラズマコーティング方法で行う。さらに、前記フッ素化分子またはそれらのブレンドは、1以上の非フルオロカーボン化合物と組み合せて使用してもよい。特に好ましい小分子には、C1−10パーフルオロアルカン類がある。
【0050】
前記プラズマコーティングは、重合または、バルブ材料中の水素イオンをフッ素イオンで交換することによる材料表面の直接変性によって、バルブ構成要素、好ましくは計量用チャンバーの表面に成膜されたフッ素化ポリマーであってよい。このコーティング工程は代表的には、室温で減圧下にて行う。コーティングする構成要素をチャンバ内に入れ、排気を行う。フッ素モノマーまたはフッ素源を、制御された速度でチャンバに導入する。プラズマをチャンバ内で着火し、所定時間にわたって選択されたパワー設定に維持する。処理終了後、プラズマを消し、チャンバのフラッシングを行い、できた物を回収する。この重合方法では、プラズマポリマーの薄層がバルブ構成要素、好ましくは計量用チャンバーの表面、またはコーティングすべきバルブの他の表面に結合される。
【0051】
プラズマ重合には代表的には、約20℃〜約100℃の範囲の温度が用いられる。
【0052】
構成要素、特に計量用チャンバーの表面は、より効果的な表面のコーティングを得るために、その表面へのコーティングの付着を向上させるために活性化を必要とする場合がある。
【0053】
好ましくは、プラズマコーティングすべき構成要素を前処理して、表面の汚染物を除去したり、表面を活性化する。これは、例えば酸素またはアルゴンなどのエッチングガスで構成要素を処理することで行うことができる。この工程では、ラジカルがプラスチックもしくは金属基材と反応する。例えば、構成要素が低圧酸素プラズマ環境に曝露され、それによって構成要素表面上に極性基が形成され、それによって、施されるプラズマコーティングとの結合がさらに形成されやすくなる。
【0054】
あるいは、計量用チャンバー(特に、例えば上記したもののようなプラスチック材料から形成されている場合)を、フルオロプラズマコーティングに対して上述したものと同様の方法を用いて、ジメチルシロキサンのようなシロキサンで表面処理することもできる。
【0055】
あるいは、計量用チャンバーは適切な実質的にフッ素化された材料から形成することで製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供する。好適なフッ素化材料には、フッ素化ポリマー/コポリマーまたはそれらのブレンドあるいは、アセタール、ポリエステル(PBT)などのバルブの製造に従来から使用されている非フッ素化ポリマーと組み合せたフッ素化ポリマーのブレンドなどがある。好適なフッ素化ポリマーの例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニルジエン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)などがある。好適なコポリマーには、テトラフルオロエチレン(TFE)とPFAのコポリマー、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(DYNEONからFEP 6107およびFEP 100として入手可能)、VDFとHFPとのコポリマー(バイトン(Viton)Aとして市販)、TFEとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)とのコポリマー(DYNEONからPFA 6515Nとして入手可能)、TFE、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのブレンド(DYNEONからTHV 200Gとして市販)などがある。
【0056】
しかしながら注記すべき点として、フッ素化ポリマーを含んでおり且つ本発明による吸入器に使用されるバルブを製造するのに用いることができる従来からあるポリマー、コポリマーまたはそれらのブレンドはいずれも好適であり得る。ポリマーおよび/またはコポリマーのブレンドの例は、例えば最高80重量%のフッ素化ポリマー、適宜に最高40重量%のフッ素化ポリマー、適宜に最高20重量%のフッ素化ポリマーまたは適宜に最高5重量%のフッ素化ポリマーを含む。好ましくは、PTFE、PVFおよびPCTFEから選択されるフッ素化ポリマーを、非フッ素化ポリマーと一緒にブレンドとして用いる。例えば好適な材料は、5%PTFE/アセタールブレンドであるHOSTAFORM X329(商標名)(ヘキスト)、20%PTFE/アセタールブレンドであるHOSTAFORM C9021TF 、PTFE/PBTブレンド(例えばLNP WL4040)、PTFE/PBT/シリコーンブレンド(例えば、LNP WL4540)である。
【0057】
本発明で使用されるフッ素化ポリマーおよびそれのブレンドは、例えば射出成形法、プラスチック成型法などにより従来からの方法で成型することができる。
【0058】
あるいは、計量用チャンバー(特に、アルミニウムもしくはステンレス鋼などの金属材料から形成されている場合)は、テトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ビニルジエンフルオライド(PVDF)および塩素化エチレンテトラフルオロエチレンのうちの1以上のモノマー単位の複数からつくられたフルオロカーボンポリマーを含むフルオロカーボンポリマーを用いて、従来法によってコーティングすることができる。パーフルオロカーボンポリマー(例:PTFE、PFAもしくはFEP)などの、炭素に対するフッ素の比が比較的高いフッ素化ポリマーが好ましいと考えられ、特にはPTFEおよびFEPから選択されるポリマーが好ましい。
【0059】
本計量用チャンバーは、製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供するように、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびアミン−ホルムアルデヒド熱硬化性樹脂などの非フッ素化ポリマーとブレンドされていてもよいフッ素化ポリマーでコーティングすることによって処理してもよい。これらの追加されるポリマーは多くの場合、基材へのポリマーコーティングの付着を向上させる。好ましいポリマーブレンドは、PTFE/FEP/ポリアミドイミド、PTFE/ポリエーテルスルホン(PES)およびFEP−ベンゾグアナミンである。最も好ましいポリマーコーティングは、PTFEとPESのブレンドである。純粋なFEPのコーティングも、かなり興味深いものである。
【0060】
例えばアルミニウムまたはステンレス鋼のような金属にそのようなコーティングを施す1つの技術では、その金属をコイルストックとして前コーティングし、硬化させてから、型打ちまたは延伸して缶形状とする。この方法は、2つの理由により大量生産に適している。第1に、コイルストックのコーティングの技術分野は十分に発達しており、いくつかの製造業者が高い均一性水準および広範囲の厚さで金属コイルストックをカスタムコーティングすることができる。第2に、前コーティングしたストックを、コーティングしていないストックの延伸や型打ちに用いるのと基本的に同じ方法によって、高速かつ高精度で型打ちまたは延伸することができる。
【0061】
コーティング法の他の方法には、静電式乾燥粉末コーティング法あるいはフッ素化ポリマー/ポリマーブレンドをコーティングする処方で前成型されたMDI構成要素をスプレーしそのあと硬化させる方法がある。前成型されたMDI構成要素は、フルオロカーボンポリマー/ポリマーブレンドコーティング処方に浸漬し、硬化させることもでき、内側外側をコーティングすることもできる。フルオロカーボンポリマー/ポリマーブレンド処方をMDI構成要素の内側に注入し、次に排液することで、内部にポリマーのコーティングが残るようにすることもできる。
【0062】
適切な硬化温度は、コーティングに選択されるポリマーブレンドおよび使用されるコーティング法によって決まる。
【0063】
しかしながら、コイルコーティングおよびスプレーコーティングの場合、ポリマーの融点より高い温度が必要とされる場合が普通であり、例えば融点より約50℃高い温度で、最大約20分、例えば5〜10分間(例:約8分間)または必要に応じた時間で行う。上記した好ましいおよび特に好ましいポリマーブレンドの場合、約300℃〜約400℃の範囲、例えば約350℃〜380℃の範囲の硬化温度が好適である。
【0064】
構成要素をコーティングし、そのあと硬化させる場合、基材構成成分が前記プロセスに耐えられるようにそれらを強化材料から製造してもよい。
【0065】
従って本発明の1つの態様は上記したように容器の製造方法であり、この場合前記計量用チャンバーの表面処理が、非フルオロカーボンポリマーとの組み合せであってもよいフルオロカーボンポリマーのコーティングを施す方法によるものである。
【0066】
これに代えて、前記構成要素には、ポリマー化合物の溶液が入った処理槽にディップされるか浴浸漬される、別のポリマーコーティングを用いることもできる。通常、この構成要素は少なくとも1時間、例えば12時間にわたって室温でこの溶液に浸漬され、内部および外部の両方が処理される。
【0067】
処理された構成要素は好ましくは、溶媒で洗浄し、適宜に減圧下で例えば50〜100℃の高温で乾燥する。
【0068】
好適なコーティング材料の例には、カルボキシル、エステル、アミド、ヒドロキシル、イソシアネート、エポキシ、シラン、例えば−CONR[式中RおよびRは独立に、特に水素またはシリルエーテル(例:SiR(OR)3−t)から選択することができる]などの基材にコーティングを固定することができる官能基を有するパーフルオロポリエーテル樹脂などの米国特許第4746550号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような一般式R−O−(CO)(CFX)−Y−Zを有する官能末端基を有するフルオロポリエーテル類、あるいは:米国特許第6071564号(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような−CFCHOH、−CFCFXCHOH[式中、XはClまたはFである]または−CF(CF)CHOH型のヒドロキシル官能基を有するフルオロポリエーテル;米国特許第3492374号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような式[XCFCFO(CFXCFO)CFXCHO]PO(OM)のリン酸ジエステルまたは欧州特許出願公開第0687533号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような式[R−O−CFY−L−O]P=O(O3−m[式中:Lは2価の有機基であり;m=1であり;Yは−Fまたは−CFであり;ZはH、M(Mはアルカリ金属である)、N(R)[式中R基は独立に、HまたはC1−6アルキルを表す]から選択され;Rはポリパーフルオロアルキレンオキサイド鎖である]のリン酸モノエステル;がある。
【0069】
上記のフルオロポリエーテルは、場合により架橋基(CHCH(qは1〜6の整数を表す)を介してパーフルオロアルキル基−CF、−CFCFX(XはClまたはFである)またはCF(CF)に直接連結された−CHOH末端を有するモノ官能性フルオロポリエーテルと組み合せて用いることもできる。
【0070】
他の好適なコーティング材料には、分子量の範囲が1600〜1750であるパーフルオロポリオキシアルカンのシラン誘導体であるポリマー化合物ならびに下記一般式のものなどがある。
【0071】
−(CH−CFO−(CO)−(CFO)CF−(CH−R
(1)
[式中、Rは−(OCH−CH−OPO(OH)であり;x、yおよびzは、化合物の分子量が900〜2100となるような値であり、vおよびwは独立に1または2を表す]。
【0072】
本発明はまた上述のように、バルブステムが前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供している容器に関するものでもある。
【0073】
プラズマコーティングされるステムについては、前処理を行って、表面の汚染を除去したり、ないしは表面を活性化してもよい。
【0074】
あるいは、非フルオロカーボンポリマーとの組み合せであってもよいフルオロカーボンポリマーを用いる従来の方法によってステムをコーティングすることもでき、この場合、上述したようにコーティングを行ったあとにキュアリングを行う必要がある。
【0075】
加えて、計量用チャンバーについて前述したように50〜100℃の温度での乾燥を必要とするフルオロカーボンポリマーを用いる方法によってステムをコーティングすることもできる。
【0076】
あるいはステムは、適切なフッ素化材料から形成されたものとすることで、実質的にフッ素化された表面を前記製剤に提供する。
【0077】
計量用チャンバーについて前述したものと同様の方法および材料が、本発明によるバルブステムの製造に好適である。
【0078】
好ましくは、実質的にフッ素化された表面が、ステムの表面処理によって得られる。最も好ましくは前記表面処理は、上述のようなシクロアルカンを含むC1−10パーフルオロアルカン類;C2−10パーフルオロアルケン類;フルオロシクロアルカンを含むフルオロアルカン類または水素が高い割合でフッ素によって置き換わっているフルオロアルケン、あるいはそれらのブレンドなどの高度にフッ素化された小分子を用いるプラズマコーティング方法によるものである。
【0079】
好ましくは本発明による容器は、アルミニウム製のキャニスターである。
【0080】
好ましくはそのキャニスターも、製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供する。
【0081】
好ましくは前記キャニスターは、それに入っている製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供するように表面処理する。
【0082】
より好ましくは前記キャニスターは、例えば上述の材料を用いて、非フルオロカーボンポリマーとの組み合せであってもよいフルオロカーボンポリマーでコーティングすることで表面処理する。FEPおよびPTFEから選択されるフルオロカーボンポリマーが、キャニスターの表面処理には特に好ましい。FEPが特に好ましい。PTFEおよびPESのポリマーブレンドも特に好ましい。
【0083】
キャニスターの表面処理は、バルブ構成要素について前述したものと同様の方法によって行うことができる。
【0084】
好ましくは、サルメテロールキシナホエートが唯一の医薬である。しかしながら、サルメテロールキシナホエートと組み合せて、本発明によるエアロゾル製剤で投与することができる医薬には、吸入療法に有用であるすべての薬剤が含まれ、それらには例えば:クロモグリク酸化合物(例:ナトリウム塩として)、ケトチフェンまたはネドクロミル(例:ナトリウム塩として)などの抗アレルギー薬;ベクロメタゾン(例:ジプロピオン酸エステルとして)、フルチカゾン(例:プロピオン酸エステルとして)、フルニソリド、ブデソニド、ロフレポニド、モメタゾン(例:フロン酸エステルとして)、シクレソニド、トリアムシノロンアセトニドなどの抗炎症ステロイド剤;イプラトロピウム(例:臭化物として)、チオトロピウム、アトロピンまたはオキシトロピウムおよびそれらの塩などの抗コリン作働薬などがある。当業者には、適宜に医薬を、塩の形で(例:アルカリ金属塩またはアミン塩あるいは酸付加塩として)、またはエステルとして(例:低級アルキルエステル)、または溶媒和物(例:水和物)として用いて、その医薬の活性および/または安定性を至適化したり、ないしは医薬の推進剤中での溶解度を最小とすることができることは明らかであろう。
【0085】
サルメテロールキシナホエートと組み合せて使用される興味深い具体的な医薬には、プロピオン酸フルチカゾンまたは臭化イプラトロピウムがある。
【0086】
本明細書に記載の容器およびバルブは、例えば水の侵入の受け易さによる、薬剤付着および他の薬剤のロスなどの同様の製剤上の問題を生じるサルメテロールキシナホエート以外の医薬を入れるのにも好適である。一般にこれらの問題は、低用量で投与される強力な医薬で特に厳しい。例としては、サルメテロールおよびそれの塩、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモテロールおよびそれの塩がある。他の医薬の例には、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデゾニド、クロモグリク酸ナトリウム、アルブテロールおよびそれの塩ならびにそれらの組み合せがある。
【0087】
医薬は、ラセミ体の形で、あるいはR−サルメテロールまたはS−サルメテロールのような純粋な異性体の形で用いることができる。
【0088】
粒子状(例:微粉砕された)医薬の粒径は、エアロゾル製剤投与時に肺の中に実質的に全ての医薬が吸入されるようなものとすべきであり、従って100μm未満、望ましくは20μm未満、好ましくは1〜10μmの範囲、例えば1〜5μmの範囲である。
【0089】
製剤中の医薬の濃度は通常、0.01〜10重量%であり、例えば0.01〜2重量%、詳細には0.01〜1重量%、特には0.03〜0.25重量%である。サルメテロールキシナホエートが唯一の医薬である場合、それの製剤中での濃度は、0.03〜0.15重量%である。
【0090】
本発明の製剤は、成層圏オゾンの分解を誘発し得る成分を含まないことが望ましい。詳細にはその製剤が、CClF、CClおよびCFCClなどのクロロフルオロカーボンを実質的に含まないことが望ましい。本発明の製剤が、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタンおよびイソペンタンなどの飽和炭化水素または例えばジメチルエーテルなどのジアルキルエーテルのような揮発性補助剤を実質的に含まないことが望ましい。
【0091】
本発明の製剤が、界面活性剤を実質的に含まないことが望ましい。「実質的に含まない」とは、医薬重量に基づいて、0.01重量%未満、特に0.0001重量%未満を含むことを意味するものと理解される。
【0092】
本発明の製剤が、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロールおよびそれらの混合物などのC2−6脂肪族アルコール類および多価アルコール類のような極性補助剤を実質的に含まないことが望ましい。「実質的に含まない」とは、製剤の重量に基づいて、0.01重量%未満、特に0.0001重量%未満を含むことを意味するものと理解する。極性は、例えば欧州特許出願公開第0327777号明細書に記載の方法によって測定することができる。
【0093】
従って1つの態様において本発明は、粒子状医薬および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物の液化推進剤ガスを含む医薬エアロゾル製剤が入った容器を提供する。好ましくはその医薬エアロゾル製剤は、粒子状医薬および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物の液化推進剤ガスからなる、あるいは基本的にそれらからなるものである。
【0094】
最も好ましくは前記推進剤ガスは、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
【0095】
「計量式吸入器」またはMDIという用語は、キャニスター、前記キャニスターの口を覆う圧着キャップ、前記キャップ内に設置された製剤計量バルブを有しているユニットを意味する。MDIシステムには、適切なチャネリング装置がある。好適なチャネリング装置は、例えばバルブ用アクチュエーターならびに、充填されたキャニスターから計量バルブを介して患者の鼻または口に医薬を送ることができる円筒形または円錐状流路を有する(例:マウスピースアクチュエーター)。
【0096】
MDIキャニスターは通常、陽極処理、ラッカーコーティングおよび/またはプラスチックコーティング(例えば参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第96/32150号パンフレットのもので、1以上の非フルオロカーボンポリマーとの組み合せであってもよい1以上のフルオロカーボンポリマーで缶の内部表面の全体または一部がコーティングされる)されていてもよい、プラスチック製もしくはプラスチックコーティングされたガラス瓶または好ましくは金属製キャニスター(例えば、アルミニウムもしくはそれの合金の)などの、使用される推進剤の蒸気圧に耐えることができる容器からなる。
【0097】
超音波溶接またはレーザー溶接などの溶接、ネジ式嵌合または圧着によって、キャニスターの上にキャップを取り付けることができる。本明細書で教示するMDIは、当業界の方法によって製造することができる(例えば、バイロン(Byron)の上記の報告および国際公開第96/32150号パンフレット参照)。好ましくはキャニスターには、製剤計量バルブがキャップの中に取り付けられ、そのキャップが所定位置に圧着されているキャップアセンブリを取り付ける。
【0098】
本発明のさらに別の態様は、前述のように内部にエアロゾル製剤が入った計量式吸入器のような、推進剤を液体として維持するのに必要な圧力に耐えることができる前述の密封容器である。本発明の製剤は、例えば超音波処理または高剪断混合機を利用して、適切な容器中で選択された推進剤中に医薬を分散させることで製造することができる。この工程は望ましくは、湿度を制御した条件下で行う。
【0099】
本発明によるエアロゾル製剤の化学的および物理的安定性ならびに医薬上の許容性は、当業者には周知の方法によって測定することができる。従って、本構成成分の化学的安定性は、例えば製品の長期保管後にHPLC分析によって測定することができる。物理的安定性データは、漏出試験、バルブ送出アッセイ(1起動当たりの平均発射重量)、用量再現性アッセイ(1起動当たりの有効成分)およびスプレー分布分析などのその他の従来からの分析法から得ることができる。
【0100】
本発明によるエアロゾル製剤の懸濁安定性は、例えばバックライト散乱装置を用いる凝集径分布の測定による、またはカスケード衝撃による粒径分布の測定による、あるいは「ツイン・インピンジャー」分析法による従来からの方法によって測定することができる。本明細書で使用される場合の「ツイン・インピンジャー」アッセイは、文献(British Pharmacopaeia 1988, pp.A204-207, Appendix XVII C)に定義のように「装置Aを用いた、加圧型吸入での発射用量付着の測定」を意味する。そのような方法によって、エアロゾル製剤の「吸入可能割合」を計算することができる。「吸入可能割合」を計算するのに用いられる一つの方法については、上記のツイン・インピンジャー法を用いて1起動当たり発射される活性成分の総量のパーセントとして表される1起動当たりの、下側衝突チャンバで回収される活性成分の量である「微粒子割合」を参照することによる方法である。
【0101】
医薬エアロゾル製造の当業者に周知である在来の大量製造方法および装置を、充填キャニスターの商業的生産用の大規模バッチの製造に用いることができる。従って例えば、1つの大量製造方法では、計量バルブをアルミニウム缶上に圧着して、空のキャニスターを形成する。本粒子状医薬を仕込み用容器に入れ、液化推進剤を、その界面活性剤を含んだ液化推進剤とともにこの仕込み用容器を通過させて製造用容器の中に加圧充填する。この薬剤懸濁液を混和してから、充填機に循環させ、そして薬剤懸濁液の一部を前記計量バルブを通してキャニスター中に充填する。
【0102】
別の工程では、液化製剤の一部を、製剤が気化しないよう十分低温にした条件下で開いているキャニスターに入れ、そのあと計量バルブがキャニスター上に圧着される。
【0103】
代表的には、医薬用に製造されるバッチでは、各充填済みキャニスターは重量検査され、バッチ番号が付番され、保管用トレーに詰められ、出荷検査される。
【0104】
都合よくは各充填済キャニスターは、使用の前に適切なチャネリング装置に取り付けて、患者の肺または鼻腔への医薬投与用の計量式吸入器系を形成させる。計量式吸入器は、起動または「パフ(一吹き)」当たり所定の単位用量の医薬、例えばパフ当たり10〜5000μgの範囲の医薬を投与するように設計する。
【0105】
医薬の投与は、軽度、中等度、重度の急性もしくは慢性症状の治療、あるいは予防的処置に指示され得る。投与される正確な用量は、患者の年齢および状態、使用される特定の粒子状医薬および投与回数によって決まるものであり、最終的には担当医の裁量に委ねられるものであることは理解されよう。医薬の併用を行う場合、その組み合せの各成分の用量は、単独で用いられる場合に各成分に対して使用される用量となる。代表的には投与は、1回または複数回、例えば1日1〜8回行うことができ、例えば各回1、2、3または4パフであってよい。
【0106】
好適な1日用量は、例えばサルメテロール50〜200μgの範囲とすることができるが、疾患の重度によって決まる。
【0107】
従って例えば、各バルブ起動によって、サルメテロール(キシナホエートとして)25μgが投与される。代表的には、計量式吸入器システムで用いられる各充填キャニスターには、60、100、120、160または240計量用量またはパフ分の医薬が入っている。
【0108】
他の医薬に対する適切な投与法は知られているか、あるいは当業者であれば容易に分かることである。
【0109】
本発明のもう1つの別の態様は、吸入療法に有用である別の薬剤との組み合せであってもよいサルメテロールキシナホエートなどの粒子状医薬、および、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物あるいはこれらの混合物である液化推進剤から基本的に構成される医薬エアロゾル製剤における、バルブ構成要素上への、特にMDIで使用される計量用チャンバーおよび/またはシール用ガスケットの薬剤付着を低減する方法を提供し、その方法は実質的にEPDMのポリマーから形成される少なくとも1個のシール用ガスケットを使用すること、実質的にフッ素化された計量用チャンバーの表面を、中に入っている医薬ヒドロフルオロカーボンエアロゾル製剤に対して提供することからなっている。
【0110】
本発明のさらなる態様はシール用ガスケットの製造におけるEPDMポリマーの使用であり、これは、実質的にフッ素化された計量用チャンバー表面、ならびに、サルメテロールキシナホエートなどの粒子状医薬と、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物である液化推進剤とから構成されるまたはそれらから実質的に構成される医薬エアロゾル製剤を有しているバルブと組み合せて使用した場合に、上述した利点を提供する。
【0111】
そこで本発明は、上述したように、適切なチャネリング装置を取り付けた容器からなるMDIを提供する。
【0112】
上述したように呼吸器障害の治療または予防のための吸入療法でのMDIの使用は、本発明の別の態様である。具体的には上記のMDIシステムは、喘息またはCOPDの治療または予防に用いることができる。
【0113】
さらに本発明は、喘息またはCOPDなどの呼吸器障害を治療する方法を含み、その方法は患者が上述したようにMDIを使用することからなる。
【0114】
さらに、例えば米国特許第6119853号明細書に記載のような、推進剤ガスの侵出に対して実質的に透過性であり、大気中の水分の侵入に対しては実質的に不透過性である材料から形成された可撓性ラッパー[包装用包み]内に入った前記MDIを有する包装物が、本発明のもう1つの態様である。
【0115】
好ましくは前記包装物は、内部に乾燥剤も含む。乾燥剤は、MDIシステムの内部および/またはMDIシステムの外部にあってよい。
【0116】
さらに別の態様において本発明は医薬エアロゾル製剤を入れるのに好適な容器を提供し、その容器は計量バルブで封止されたキャニスターからなり、該バルブが上側および下側シール用ガスケットを有している計量用チャンバーならびにバルブステムを有し、前記バルブが首部シール用ガスケットによってキャニスターに封止されており、少なくとも1個のガスケットが実質的にEPDMのポリマーから形成され且つ前記計量用チャンバーの表面が前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供していることを特徴とする。
【0117】
特に好ましいのは、前記計量バルブが、壁ならびにバルブステム(7および8)が中を通る上側(12)および下側(9)シール用ガスケットによって画定される計量用チャンバー(4)を有し、前記2個のシール用ガスケットが実質的にEPDMのポリマーから形成され且つ前記計量用チャンバーの表面が内部に収容可能な製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供していることを特徴とする、上述の容器である。
【0118】
また、前記バルブが、実質的にEPDMポリマーから形成される缶シール用ガスケット(3)によって前記キャニスターに対して封止され、前記下側(9)シール用ガスケットも実質的にEPDMポリマーから形成されている、上述の容器も特に好ましい。
【0119】
最も好ましくは、前記計量バルブにおける全てのシール用ガスケットを、実質的にEPDMポリマーから形成する。
【0120】
さらに通常は、前記計量用チャンバーの表面を、製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供するように処理する。
【0121】
従って本発明は、計量バルブで封止されたキャニスターを有し、前記バルブが上側および下側シール用ガスケットを有している計量用チャンバーならびにバルブステムを有しており、(i)前記バルブが、実質的にEPDMのポリマーから形成された首部シール用ガスケットによってキャニスターに封止されており;(ii)前記上側および下側計量用チャンバーのシール用ガスケットが実質的にEPDMのポリマーから形成されており;(iii)前記計量用チャンバーが、前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供するように表面処理されていることを特徴とする、医薬エアロゾル製剤を入れるのに好適な容器を包含する。
【0122】
加えて本発明は、上側および下側シール用ガスケットを有している計量用チャンバーならびにバルブステムを有している計量バルブを有し、少なくとも1個のガスケットが実質的にEPDMのポリマーから形成され且つ前記計量用チャンバーの表面が前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供していることを特徴とする、医薬エアロゾル製剤を投与するのに好適な計量バルブ、およびそれの使用を提供する。
【0123】
本発明に従って使用されるバルブの例を図1に示してあり、そのバルブは圧着によって口輪2に封止されたバルブボディ[体]1を有し、その口輪自体は周知の方法でガスケット3(缶シール部材)を介在させて容器頸部(不図示)上に設置されている。
【0124】
バルブボディ1の下側部分には計量用チャンバー4が形成されており、それの上側部分には、戻しバネ6用のハウジングとしての役割も果たすサンプリングチャンバー5が形成されている。本発明に従い本計量用チャンバーは、少なくとも一部がフッ素化ポリマーで、および/またはフッ素化コーティングで形成されている。「上側」および「下側」という言葉は、容器を使用方向とした時の容器について用いられるものであり、容器の頸部およびバルブは容器の下側端部にあり、それは図1で示したバルブの方向に対応している。バルブボディ1の内側にはバルブステム7が配置されており、その一部である8が、下側ステムシール部材9および口輪2を通ってバルブの外に延びている。ステム8は、ステムの外側端部で開放し、半径方向通路11と連通している内側のステム方向または長手方向流路10を有して形成されている。
【0125】
ステム7の上側部分は、それが上側ステムシール部材12にある開口を通ってスライドでき、シールを提供する程度にその開口部の周囲に係合するような直径を有している。上側ステムシール部材12は、下側ステムシール部材9と上側ステムシール部材12との間で計量用チャンバー4を画定するスリーブ14によって、前記下側部分と上側部分との間でバルブボディ1に形成された階段部13に押圧されて所定位置に保持されている。バルブステム7は通路15を有し、それはステムが図示の非動作位置にある場合に、計量用チャンバー4とサンプリングチャンバー5の間に連通を提供するものであり、そのサンプリングチャンバーはそれ自体、バルブボディ1の側面に形成されたオリフィス26を介して本容器内部と連通している。
【0126】
バルブステム7は、戻しバネ6によって下方に非動作位置の方に押されており、下側ステムシール部材9に当接しているショルダー部17を有する。図1に示した非動作位置において、ショルダー17は下側ステムシール部材9に当接しており、半径方向通路11は下側ステムシール部材9の下で開口していることで、計量用チャンバー4は流路10から隔絶されており、内部の懸濁液が外に出ることができないようになっている。
【0127】
半径方向に延びた「U」字形状の断面を有するリング18が、オリフィス26の下でバルブボディ周囲に配置されていることで、バルブボディ周囲に谷部19を形成している。図1からわかるように、このリングはバルブボディ1の上側部分で摩擦嵌合するのに好適な直径の内側環状接触リムを有する別の構成要素として形成されており、そのリングはオリフィス26の下で階段部13に乗っている。しかしながらリング18は別の形態として、バルブボディ1の一体成形部分として形成することもできる。
【0128】
この装置を使用するには、本容器を最初に振盪して、容器内の懸濁液を均質とする。次に使用者は、バネ6の力に抗してバルブステム7を押す。バルブステムが押されると、通路15の両端が、計量用チャンバー4から遠い上側ステムシール部材12の側面に来る。その結果、フッ素化計量用チャンバー内で用量が計量される。バルブステムを続けて押すと、半径方向通路11が移動して計量用チャンバー4に入り、その一方で上側ステムシール部材12がバルブステム本体に当たって封止を行う。その結果計量用量を、半径方向通路11および出口流路10を通って放出することができる。
【0129】
バルブステムを放すと、バネ6の力によってそれは図示の位置に戻る。このあと通路15は再度、計量用チャンバー4とサンプリングチャンバー6の間を連通させる。従ってこの段階で、液体が加圧下に本容器からオリフィス26を通り、通路15を通って、計量用チャンバー4に流れ込んで、それを満たす。
【0130】
図2には、バルブの別の図を示してあり、図中においてガスケットシール部材ならびに下側および上側ステムシール部材はそれぞれ、3、9および12で示されている。
【0131】
以下、本発明を下記の実施例を参照しながら説明するが、これらは本発明についてさらに説明する上で役立つが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0132】
サンプル製造
表1〜5にデータを示したMDIは、国際公開第96/32150号パンフレットに記載されているようにPTFE/PESポリマーブレンドでコーティングし、ベスパック(Bespak)バルブで封止されたアルミニウムキャニスター中に製造し、ガスケットはいずれも在来のニトリルゴム(比較例として)またはEPDMポリマー(本発明による)製とし、計量用チャンバーはPBT製で、従来からのものであるか、あるいはC1−10パーフルオロアルカンのプラズマコーティングで表面処理したものである。
【0133】
さらに前記アルミニウムキャニスターには、サルメテロールキシナホエート4.2mgおよびHFA134a 12gを含む医薬エアロゾル製剤を入れた。
【0134】
各装置は、別段の断りがない限り、40℃および相対湿度75%で保管した。
【0135】
サルメテロールキシナホエートおよびHFA134aの入ったMDIにおける総薬剤含量(TDC)の測定方法
各被験MDIキャニスター(使用前)を、ドライアイスおよびメタノールの凍結混合物で約5分間冷却してから、クランプ留めし、バルブアセンブリを適切なチューブカッターで切り離した。缶の内容物を、既知容量の容器に定量的に移し入れ、缶、バルブおよびバルブ構成要素を定量的に洗浄した。合わせた缶内容物およびそれに伴う洗浄液について次にHPLC分析を行い、TDCを計算した。計算値より低いTDC値は、薬剤のバルブ構成要素への吸収を示唆する。
【0136】
平均缶内容量は、重量差によって計算されるキャニスターに入っていた製剤の重量である。
【0137】
用量およびFPMの測定方法
各被験MDIキャニスターを、清浄なアクチュエーターに入れ、4回噴射することで準備を行った。次に、アンダーセンカスケードインパクタ中に10回噴射し、そのインパクタを定量的に洗浄し、そこに付着していた薬剤の量をその洗浄液のHPLC分析によって定量した。
【0138】
これから、投与された用量(カスケードインパクタに付着した薬剤の合計量)およびFPM(ステージ2、3、4および5に付着した薬剤の合計量)のデータを計算した。計算値より低いFPM値は、(i)吸収、(ii)付着または(iii)粒子成長のうちの1以上を示唆するものである。
【0139】
平均投与用量は、3回の用量投与測定値の平均である。装置出FPM%は、患者が取り込み可能な用量の評価尺度となるものである。
【0140】
目視で調べたところ、40℃および20%RHで保管された従来のMDI(すなわち、ニトリル製ガスケットおよび通常の計量用チャンバーを有しているもの[表1に示されている])から得られた薬剤物質が同じ外観を呈し、初期の時点から変化しないように見えることが観察された。しかしながら、40℃および75%RHで保管された従来のMDIからの薬剤物質は外観上明らかに結晶を呈しており、一部が溶解および再結晶したことを示していた。
【0141】
表1には、40℃、75%RHおよび40℃、20%RHで保管した従来のMIDについて得られたTDC値を示してある。前者は、初期の時点のものおよび低湿度条件で保管されたものよりかなり低いTDC値を有していた。
【0142】
表2には、従来のMDI(対照)によって投与される用量が40℃および75%RHで保管した場合に減少していることが示されている。この傾向は、6/7ヶ月の時点で非常に明瞭である。この傾向は、全てのガスケットがEPDMポリマー製であるMDIでは認められない。この傾向は、プラズマ処理した計量用チャンバーを有しているMDIにおいてあり得るが、あったとしても、その傾向は従来のMDIの場合ほど顕著なものとは思われない。
【0143】
ニトリル製ガスケットを用いる従来のMDIにおけるFPMデータからは、40℃および75%RHでの保管後にかなりの低下が示されている。全てのガスケットがEPDMポリマー製であるMDIでは、初期値が相対的に高いことに加えて、この傾向も顕著に低くなっている。プラズマ処理した計量用チャンバーを有しているMDIについてのデータは、対照MDIおよびEPDMポリマーMDIのいずれよりも高いFPMの初期値を示しているように思われる。しかしながらデータからは、40℃および75%RHで保管した場合にその値が低下することが示唆されている。ただし、従来のMDIで認められる低下ほど大きいものではない。
【0144】
表3のデータは、表2で認められた傾向を支持するものである。
【0145】
表4のデータは、従来のMDIあるいは実質的にEPDMのポリマーから形成されたガスケットを有しているかもしくはフッ素化された表面を有する計量用チャンバーを有しているものと比較して、ガスケットが実質的にEPDMのポリマーから形成され且つ実質的にフッ素化された表面を有する計量用チャンバーを有しているMDIでは、投与用量がμg単位で増加し、特に高湿度条件下で製品を保管した場合に認められる投与用量の低下が実質的になくなり、しかも同時に観察されるFPMの低下が低減されることを示している。
【0146】
表5におけるデータは、表4で認められる傾向を支持するものである。
【0147】
表4および表5に示したデータを得るのにアンダーセンカスケードインパクタで使用されたスロートピースは、前記USPのタイプのものであった。従って、表2および表3に対して前述したのと同じ手順を用いてデータを得ているが、それはグラクソ・ウェルカム社(Glaxo Welcome)向けに製造されたスロートを用いた後者とは直接比較できるものではない。これらの表から、液化HFA推進剤中の粒子状医薬、特にサルメテロールキシナホエートの医薬エアロゾル製剤が入ったMDIにおいて、EPDMガスケットおよび、実質的にフッ素化された表面を有する計量用チャンバーを使用することで、従来のMDIあるいは、EDPMガスケットを使ったものもしくはフッ素化コーティングでプラズマコーティングされた計量用チャンバーを有しているものと比較して、安定性が向上した製剤が得られるということが結論できる。
【0148】
表1:サルメテロール吸入器の総薬剤含量に対する保管条件の影響
【表1】


【0149】
注:結果はいずれも3つの個別の結果の平均であり、TDCは初期の時点で約4.2mgである。
【0150】
表2:サルメテロール吸入器の投与用量およびFPMに対する保管条件の影響
【表2】


【0151】
表3:サルメテロール吸入器における平均投与用量および投与用量の範囲に対する保管条件の影響
【表3】


【0152】
表4:サルメテロール吸入器の投与用量およびFPMに対する保管条件の影響
【表4】


【0153】
表5:サルメテロール吸入器における平均投与用量および投与用量の範囲に対する保管条件の影響
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)吸入療法に有用である別の薬剤との組み合せであってもよい粒子状サルメテロールキシナホエート;ならびにこれが懸濁されている
(B)1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物を含む液化推進剤ガス;
から基本的に構成される医薬エアロゾル製剤が入った、計量用チャンバーを有している計量バルブで密封されたキャニスターからなる容器であって、
前記製剤が界面活性剤および、前記液化推進剤ガスより高い極性を有する成分を実質的に含んでおらず、
前記バルブが実質的にEPDMのポリマーから形成された1個以上のシール用ガスケットを有し、前記計量用チャンバーの表面が前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供していることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記液化推進剤ガスが1,1,1,2−テトラフルオロエタンである請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記吸入療法に有用である別の薬剤がプロピオン酸フルチカゾンまたは臭化イプラトロピウムである請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
サルメテロールキシナホエートが唯一の医薬である請求項1または2に記載の容器。
【請求項5】
前記バルブが、実質的にEPDMのポリマーから形成された首部シール用ガスケットによって前記キャニスターに対して密封されている請求項1ないし4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
前記計量バルブが、上側および下側シール用ガスケットを有している計量用チャンバーおよびバルブステムを有し、前記2個のシール用ガスケットが実質的にEPDMのポリマーから形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の容器。
【請求項7】
前記計量用チャンバーがプラスチック材料製である請求項1ないし6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
前記プラスチック材料が、ナイロン、PBTまたはアセタールである請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記計量用チャンバーが、前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面が提供されるよう表面処理されている請求項1ないし8のいずれかに記載の容器。
【請求項10】
前記表面処理が、C1−10パーフルオロアルカンによるプラズマコーティング方法によるものである請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記計量用チャンバーが、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリビニルジエンフルオライド、ポリパーフルオロアルコキシアルカン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素化ポリエチレンプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンとポリパーフルオロアルコキシアルカンのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレンとポリヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリビニルジエンフルオライドとポリヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレンとポリパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)のコポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオライドのブレンド、それらのブレンドならびにそれらの組み合せからなる群から選択される材料製である請求項7に記載の容器。
【請求項12】
前記計量用チャンバーが金属材料製である請求項1ないし6のいずれかに記載の容器。
【請求項13】
前記金属材料がアルミニウムまたはステンレス鋼である請求項12に記載の容器。
【請求項14】
前記計量用チャンバーが、前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面が提供されるように表面処理されている請求項12または13に記載の容器。
【請求項15】
前記表面処理が、非フルオロカーボンポリマーとの組み合せであってもよいフルオロカーボンポリマーのコーティングを施す方法によるものである請求項14に記載の容器。
【請求項16】
フルオロカーボンポリマーがFEPおよびPTFEから選択される請求項14または15に記載の容器。
【請求項17】
前記コーティングがFEPのコーティングである請求項14ないし16のいずれかに記載の容器。
【請求項18】
前記コーティングがPTFEおよびPESのブレンドのコーティングである請求項14ないし16のいずれかに記載の容器。
【請求項19】
前記キャニスターがアルミニウム製である請求項1ないし18のいずれかに記載の容器。
【請求項20】
前記キャニスターが、前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面が提供されるように表面処理されている請求項19に記載の容器。
【請求項21】
前記キャニスターが、非フルオロカーボンポリマーとの組み合せであってもよいフルオロカーボンポリマーでコーティングすることで表面処理されている請求項20に記載の容器。
【請求項22】
フルオロカーボンポリマーがFEPおよびPTFEから選択される請求項20または21に記載の容器。
【請求項23】
前記コーティングがFEPのコーティングである請求項20ないし22のいずれかに記載の容器。
【請求項24】
前記コーティングがPTFEおよびPESのブレンドのコーティングである請求項20ないし22のいずれかに記載の容器。
【請求項25】
適当なチャネリング装置が取り付けられた、請求項1ないし24のいずれかに記載の容器を有する計量式吸入器。
【請求項26】
患者の喘息またはCOPDの治療に使用するための、請求項25に記載の計量式吸入器。
【請求項27】
推進剤ガスの侵出に対して実質的に透過性であり、大気中の水分の侵入に対しては実質的に不透過性である材料製の可撓性ラッパー内に入った、請求項25に記載の計量式吸入器、を有している包装物。
【請求項28】
前記可撓性ラッパー内に乾燥剤も入っている請求項27に記載の包装物。
【請求項29】
缶内に乾燥剤が入っている請求項28に記載の包装物。
【請求項30】
上側および下側シール用ガスケットを有している計量用チャンバーならびにバルブステムを有している計量バルブで封止されたキャニスターを有する、医薬エアロゾル製剤を入れるのに好適な容器であって、前記バルブが首部シール用ガスケットによって前記キャニスターに対して密封されている容器において、少なくとも1個のガスケットが、実質的にEPDMのポリマーから形成され且つ前記計量用チャンバーの表面が前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面を提供していることを特徴とする容器。
【請求項31】
前記上側、下側および首部シール用ガスケットが、実質的にEPDMのポリマーから形成されている、請求項30に記載の医薬エアロゾル製剤を入れるのに好適な容器。
【請求項32】
前記計量用チャンバーが、前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面が提供されるように表面処理されている、請求項30または31に記載の医薬エアロゾル製剤を入れるのに好適な容器。
【請求項33】
前記表面処理が、C1−10パーフルオロアルカンでのプラズマコーティング方法によるものである請求項32に記載の容器。
【請求項34】
前記計量用チャンバーがプラスチック材料製である請求項30ないし33のいずれかに記載の容器。
【請求項35】
前記プラスチック材料がナイロン、PBTまたはアセタールである請求項34に記載の容器。
【請求項36】
前記キャニスターがアルミニウム製である請求項30ないし35のいずれかに記載の容器。
【請求項37】
前記キャニスターが、前記製剤に対して実質的にフッ素化された表面が提供されるように表面処理されている請求項36に記載の容器。
【請求項38】
前記キャニスターが、非フルオロカーボンポリマーとの組み合せであってもよいフルオロカーボンポリマーでコーティングすることで表面処理されている請求項37に記載の容器。
【請求項39】
粒子状医薬ならびに1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの混合物の液化推進剤ガスを含む医薬エアロゾル製剤が入った請求項30ないし38のいずれかに記載の容器。
【請求項40】
前記推進剤ガスが1,1,1,2−テトラフルオロエタンである請求項39に記載の容器。
【請求項41】
前記粒子状医薬が、サルメテロールキシナホエート、プロピオン酸フルチカゾン、アルブテロールまたはそれの塩、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ホルモテロールまたはそれの塩、臭化イプラトロピウム、ブデゾニド、クロモグリク酸ナトリウムおよびそれらの組み合せから選択される請求項39または40に記載の容器。
【請求項42】
前記粒子状医薬が、プロピオン酸フルチカゾンとの組み合せであってもよいサルメテロールキシナホエートである請求項41に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−142663(P2009−142663A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22343(P2009−22343)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【分割の表示】特願2002−552624(P2002−552624)の分割
【原出願日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】