説明

サンドイッチ様の抑制剤複合体を含む金属表面の活性腐食保護のための腐食抑制コーティング

本発明は、サンドイッチ様抑制剤複合体を含む金属表面の活性腐食保護のための腐食抑制コーティング、ならびにそれを調製するための方法に関する。前記腐食抑制コーティングのサンドイッチ様複合体は、有機化学種の第1の内側層と、腐食抑制層と、有機化学種の第2の外側層とを含む。前記サンドイッチ様複合体は、少なくとも1つの刺激、例えばpH変化に感受性があり、前記刺激への応答において前記腐食抑制剤を放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
背景
腐食劣化は、金属構造体の耐用年数を決定する主な要素の一つである。ここ十年間、異なる水溶液中でのアルミニウムの電気化学的な振る舞いについての新たな成果が得られている。アルミニウムの表面劣化は、腐食剤(例えば塩化物)が金属-膜界面に到達したときに生じる。塩化物が酸化物層を貫通せずに、酸化物層上に化学吸着され、反応相手として機能し、酸化物-塩化物複合体の形成を介して溶解性を助けることが示されている(L. Tomcsanyi, K. Varga, I. Bartik, G. Horanyi, E. Maleczki, Electrochemica Acta 1989, 34, 855)。それ故に、腐食プロセスは、攻撃性アニオンの吸着を防ぐ抑制剤の競合的な吸着によって、より耐性のある金属酸化物の形成によって、または金属表面上への保護コーティングの形成によって減速され得る。
【0002】
完全なコーティング系は、通常、3つの別個の層で構成される。第1の層は、表面前処理工程にある通常のコーティングである。この層は、下地金属を腐食から保護し、基板に向上した接着性を与える。第2の層は、エポキシのような有色有機樹脂で作られたプライマである。最後の層は、典型的にポリウレタン樹脂を用いて調合されたトップコートである。
【0003】
有機および無機膜は、侵食環境化学種のためのバリアを作る前/処理工程において通常使用される(J. H. Osborne, Prog. Org. Coat. 2001, 41, 280; M. Guglielmi, J. Sol-Gel Sci. Technol. 1997, 8, 443; R. L. Parkhill, E. T. Knobbe and M. S. Donley, Prog. Org. Coat. 2001, 41, 261; W.J. van Ooij, T.F. Child, CHEMTECH 1998, 28, 26)。このような膜は、腐食種に対する追加のバリアを提供し、かつ、主として金属とポリマーコーティング系の間の接着を向上させるために、金属-シロキサン結合の形成、プラズマ重合またはゾル-ゲル法によって、金属表面上に成功裏に堆積された。しかしながら、ゾル-ゲル基材中に直接組込まれる抑制剤は、それらの活性を極めて迅速に失う。さらに、抑制剤のバルクな分布は、要求に応じた抑制剤放出の制御が不可能である。
【0004】
有機、無機およびハイブリッドコーティングの耐腐食特性を強化するために、平坦な表面上に反対に帯電された高分子電解質のレイヤ-バイ-レイヤ組立て(layer-by-layer assembly) (G. Decher, J. D. Hong, J. Schmitt, Thin Solid Film 1992, 210/211, 811; G. Decher, Science 1997, 277, 1232)法が適用された。レイヤ-バイ-レイヤ膜のイオン交換容量は、無機腐食抑制剤(モリブラート、バナダート、三価のクロム種、セリウム、オキサラート、遷移金属イオン、ランタノイドイオン、亜硝酸塩、コバルトなど)を組込むために使用された(O. Kashurina, E. Knobbe, T. L. Metroke, J. W. Ostrander, N. A. Kotov, Int. J. Nanotechnology, 2004, 1, 347)。しかしながら、レイヤ-バイ-レイヤ法は時間がかかり、かつかなり値の張るプロセスである。さらに、抑制剤の共有結合性吸着は、ポリマーコーティング中に組込まれ得る活性耐食成分の量を著しく制限する。非常に有望なアプローチは、抑制剤を充填された、レイヤ-バイ-レイヤ法で組立てられたナノリザーバーの形成のために、レイヤ-バイ-レイヤ法を使用することであった(EP 06 004 993; Shchukin, M. Zheludkevich, K. Yasakau, S. Lamaka, M. Ferreira, H. Mohwald, Adv. Mat. 2006, 18, 1672)。ハイブリッドエポキシ-官能化ZrO2/SiO2ゾル-ゲルコーティング中に埋め込まれたこれらのナノ容器は、非常に高い耐食性を呈した。
【0005】
耐食コーティングの開発における有意義な成功はさておき、コストおよび耐腐食特性に関して、抑制剤とコーティング基質のさらに向上した組合せについての需要がいまだに存在する。
【0006】
したがって、本発明の目的は、抑制剤の制御された放出による金属表面の長期の腐食保護のための、新規な、経済的で、非常に有効かつ広く利用可能な手段を提供することである。
【0007】
前記問題は、金属表面上に有機化学種と抑制剤のサンドイッチ様複合体を含む、請求項1による耐食コーティングを提供することよる、本発明によって解決される。関連する側面は、請求項12による前記コーティングを調製する方法、および請求項19による腐食抑制剤の制御された放出を提供する方法である。本発明の具体的な態様は、従属請求項の対象である。
【0008】
発明の記述
本発明によれば、腐食抑制剤は有機化学種の2つの層、好ましくはポリマーまたは高分子電解質層の間にバルクで分布し、サンドイッチ様構造体または複合体と呼ばれるものを形成する。このサンドイッチ様複合体は、少なくとも1つの刺激に感受性があり、前記刺激への応答において腐食抑制剤を放出することができる。
【0009】
前記多機能性サンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体を含む本発明の耐食コーティングは、攻撃性試薬と金属表面の脱離的相互作用による有効な腐食保護を提供し、抑制剤に長期の活性を提供する。さらに、本コーティングの適用は、宇宙、航空、自動車産業および人類に重要な数々の利点を持つ。サンドイッチ様複合体は、大抵は費用対効果があり、環境に優しい。それらは、腐食抑制剤を容易に充填することができる。このような複合体の特性は、ポリマーの種類およびそれらの修飾によって、特定の用途に合わせることができる。抑制剤の放出は、外部刺激(例えば、pH、イオン強度、機械的衝撃、および温度)によって制御され得る。さらに、上記のサンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体を含む、金属表面へのこのような耐食コーティングの使用は、危険な試薬(クロム酸塩を含有する化成被覆)を避けることができる。
【0010】
本発明のサンドイッチ様複合体中の有機化学種の層は、少なくとも1つの刺激に感受性のある任意の適切な有機化学種を含み得、前記刺激への応答において抑制剤化合物を放出することができるものである。有機化学種は、ポリマー、特に帯電されたポリマー、好ましくは高分子電解質、導電性ポリマー、有機染料、蛋白質などの生体高分子およびポリアミノ酸、ベシクル、有機コロイドであり得る。より具体的には、前記有機化学種は、ポリ(アルキレンイミン)例えばポリ(エチレンイミン)、ポリ(スチレンスルホナート)例えばポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(アリルアミン)例えばポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)、ポリビニルアルコール、ポリアミド酸、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリスチレン、ポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアルキレンアルコール例えばポリエチレングリコール、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリジン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ならびにゼラチン、アガロース、セルロース、アルギン酸、デキストラン、カゼイン、ポリアルギニン、ポリグリシン、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸のような生体高分子およびポリアミノ酸からなる群より選択されるポリマーまたは高分子電解質であり得る。他の適切なポリマーは当業者に明らかであり、かつ、例えば上記で特定されたポリマー/高分子電解質または他のポリマー/高分子電解質を、当技術分野で周知の方法により特定の基を導入することにより適切に修飾することによって、得ることができる。これらの基は、ポリマー/高分子電解質に、明確な親水性、疎水性、電荷、強度、特定の刺激に対する感受性などのような特定の望ましい特性を与え得る。ポリマーまたは高分子電解質は、先述したポリマーまたは高分子電解質のコポリマーまたはブレンドのような、適切なポリマー/高分子電解質のコポリマーまたはブレンドも含み得る。本発明の具体的な態様において、抑制剤層を埋め込んだサンドイッチ様複合体の内側層および外側層の一方または両方は、正に帯電された高分子電解質、例えばポリ(エチレンイミン)の層、および負に帯電された高分子電解質、例えばポリ(スチレンスルホナート)の交互の層を含む。
【0011】
好ましくは、有機化学種の層は、200〜1000 nmの範囲の平均厚を持つナノ層である。
【0012】
サンドイッチ様複合体中に組込まれる腐食抑制剤は、任意の腐食抑制剤、好ましくは、意図した目的に適切な先行技術で既知の任意の有機腐食抑制剤であり得る。抑制剤の選択は、すなわち、保護される具体的な金属製品および構造体、腐食保護される製品の環境条件および操作条件、ならびに当業者に明らかな他の要因に依存する。
【0013】
具体的には、腐食抑制剤は、例えば、1つ以上のアミノ基を含む有機化合物、アゾール誘導体、1つ以上のカルボキシル基を含む有機化合物またはカルボン酸の塩、および1つ以上のピリジニウムもしくはピラジン基を含む有機化合物からなる群より選択される有機化合物を含み得る。
【0014】
より具体的な態様において、腐食抑制剤は、サリチルアルドキシム、8-ヒドロキシキノリン、キナルジン酸、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールからなる群より選択される。
【0015】
抑制剤の放出を引き起こす具体的な刺激は、サンドイッチ様複合体中で使用されるポリマー/高分子電解質が受容可能であることが知られているいくつかの刺激の1つ以上であり得る。典型的な刺激は、pHの変化、イオン強度、電気化学的ポテンシャル、湿度または水、温度、光、または適用される磁場もしくは電場または機械的衝撃である。
【0016】
本発明の腐食抑制コーティングのための金属基板は、任意の腐食感受性金属または金属合金であり得る。典型的であるが非限定的な例は、鉄および鉄合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金である。本発明のコーティングは、アルミニウムおよびアルミニウム合金の腐食保護のために特に有利である。
【0017】
典型的に、金属基板は平坦または本質的に平坦な表面を持つ。基板は、巨視的な次元に関しては湾曲していてもよいが、同時に「微視的に平坦」である。この文脈における「微視的に平坦」とは、マイクロメートルまたはナノメートルの範囲で著しい曲率を示さない表面を意味する。
【0018】
サンドイッチ様複合体は直接、または、好ましくは基板に強固な複合接着を与えるアンカー層を介してのいずれかで金属基板上に堆積される。それ故に、サンドイッチ様複合体は、平坦または微視的に平坦な層を含み、さらに平坦なサンドイッチ様複合体として特徴付けることができる。
【0019】
サンドイッチ様複合体の形成の前に、金属表面、例えばアルミニウムは堆積のために加工される必要がある。典型的な腐食感受性金属表面は、自然酸化物膜で被覆される。アルミニウムの場合は典型的に3〜7 nmであるこの薄層は、腐食剤に対する保護に不十分である。さらに、この自然酸化膜は塗料に対して良好な接着を与えない。そこで、金属表面、例えばアルミニウム表面は、通常、コーティングの適用の前に前処理される(C. Spadaro, C. Dispenza and C. Sunseri, J. Phys.: Condens. Matter. 2006, 18, 2007; J. D. Venables, D. K. McNamara, J. M. Chen, T. S. Sun, R. L. Hopping, Appl. Surf. Sci. 1979, 3, 88)。超音波ホーンによる水中での強烈な超音波処理が、純アルミニウムの表面「前処理」のために適用される。その結果、機械的なかみ合わせの可能性を与える微視的に高度に荒い表面が形成される。
【0020】
前処理加工における超音波処理の一つの実質的な利益は、金属、特にアルミニウムおよびアルミニウム合金の表面から自然酸化層を部分的に除去することである。これは主に、キャビテーションによって生じた、大きいが局在化された力によって達成される。さらに、キャビテーションは、いくつかの試薬、および水自体の化学組成(過酸化物の生成によって)を変えることができることが知られている。それ故に、新たな、活性の均一な酸化物層が金属(アルミニウム)表面上に迅速に形成される。
【0021】
サンドイッチ様抑制剤複合体は直接、または基板に強固な複合接着を提供するアンカー層を介してのいずれかで金属基板上に堆積される。
【0022】
本発明の好ましい態様において、前処理された金属表面は、接着を促進するアンカー層を金属基板上に堆積することによってさらに修飾される。例えば、多くの前処理された金属、特にアルミニウムおよびアルミニウム合金は、接着促進および腐食抑制の両方の特性を持つシランカップリング剤によって修飾され得る。有機官能化シランは、有機/無機界面に渡るカップリング剤として使用され得るハイブリッド有機-無機化合物である(C. J. Lund, P. D. Murphy, M. V. Plat, Silanes and other coupling agents. Ed., K. M. Mittal, VSP 1992, pp 423)。多くの有機シランはX3Si(CH2)nYのタイプの式を持ち、ここでXはメトキシまたはエトキシ(すなわちOR)のような加水分解性基を示し、Yはその後に添加される有機コーティングとの親和性のために選択される有機官能基(例えばCl、NH2、SH)である。好ましくは、有機シランはアミノ基および/またはエポキシ基を有する有機シランからなる群より選択される。適切な有機シランの具体的で非限定的な例は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたはγ-アミノプロピルトリエトキシシランである。有機シランコーティングは、超音波処理された試料を有機シランの水溶液中に浸漬することによって堆積され得る。
【0023】
正に帯電されたポリマーは、有機シランの代わりにアルミニウム表面の前処理のためにも使用され得る。このようなポリマーの適切であるが非限定的な例は、ポリ(アルキレンイミン)、好ましくはポリ(エチレンイミン)である。ポリ(エチレンイミン)は、極めて有用な支持材ポリマーと考えられる。アンカー層としてのその使用は、平滑かつ均一なポリマー膜の形成をもたらす。
【0024】
その後、
i) 有機化学種の第1の内側層と、
ii) 腐食抑制層と、
iii) 有機化学種の第2の外側層と
を含むサンドイッチ様抑制剤複合体が、有機シラン、またはポリマー例えばポリ(エチレンイミン)層のようなアンカー層によって好ましくは被覆された金属基板の表面上に堆積される。
【0025】
本発明の具体的な態様において、第1の(内側)ポリマー層は、負に帯電された高分子電解質、例えばポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)またはポリアミド酸で形成され得る。その後、適切な有機腐食抑制剤、例えばサリチルアルドキサンまたは8-ヒドロキシキノリンがポリマー層上に吸着され得る。最後に、内側ポリマー層と同一または異なり得る、負に帯電された高分子電解質のさらなる(外側)ポリマー層が抑制剤層上に堆積され得る。キナルジン酸および/またはメルカプトベンゾチアゾールが抑制剤として使用される場合、隣接するポリマー層は正に帯電されたポリマー、例えばポリ(エチレンイミン) (PEI)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)によって形成され得る。この場合、PEIアンカー層を同時に内側ポリマー層として使用することが可能である。最後に、抑制剤の層は、外側の正または負に帯電されたポリマー層で被覆される。結果として、サンドイッチ様ポリマー(高分子電解質)/抑制剤複合体が形成される。本明細書の導入部で参照されたレイヤ-バイ-レイヤ(LBL)法と比べて、抑制剤は(好ましくは)両方のポリマー層の間にバルクで分布し、LBL法の場合のように、実際に構造化される薄層自体を形成する必要がない。
【0026】
本発明についての研究は、ポリマー、特に高分子電解質のような帯電されたポリマーを有するサンドイッチ様複合体としての腐食抑制剤の堆積は、数々の利点を与えることを明らかにした。このような保護複合体は、コーティングの安定性への腐食抑制剤の任意の悪影響を防ぎ、抑制剤の耐食活性を延長し、複合体の安定性および/または腐食ピットでの腐食プロセスに関する刺激、例えばpH、イオン強度、電気化学ポテンシャル、温度、または適用される磁場もしくは電場または機械的衝撃に対するポリマーの透過性の制御に起因した、理にかなった抑制剤の放出および抑制剤活性の制御を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】LBLで被覆されたアルミニウム合金(AA2024)のスケッチ。
【図2】超音波処理後のアルミニウム合金表面のSEMイメージ(a)、異なる時間の超音波処理(10、20、30および40分)でのAA2024板のIRRAスペクトル(b)。
【図3a】Aはγ-GPSで、Bはγ-APSで修飾された試料のIRRAスペクトルである。
【図3b】CはPEIで修飾された試料のIRRAスペクトルである。
【図4】AはPEI/PSS、BはPEI/PSS/8-HQ、CはPEI/PSS/8-HQ/PSSで修飾されたAA2024板のIRRAスペクトル。
【図5】脱脂および研磨(通常の手順)後の未修飾のAA2024のSEMイメージ(a)、サンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体で被覆されたAA2024のSEMイメージ、超音波処理後の未修飾膜のSEMイメージ(c)およびサンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体で被覆された膜のSEMイメージ(d)。
【図6】サンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体で被覆されたAA2024のSEMイメージ。アンカー層-有機シラン。試料(a)は2つの高分子電解質層で調製される。試料(b)は3つの高分子電解質で調製される。
【図7】0.5 M NaCl中での長期腐食試験。1つの板はサンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体を有するものであり、1つの板は最初のAA2024である。
【図8】0.5 M NaCl中に3日間浸漬された試料のSEMイメージ。有機シランで修飾されたAA2024 (a)、サンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体を有するAA2024 (b)。
【図9】走査型振動電極法(SVET)測定によって得られた、本発明の耐食コーティングで被覆された試料基板(Al)の表面上のイオン電流マップ(A)、同じ抑制剤を含む先行技術(EP 06004993.9)のナノ容器を伴うハイブリッドゾル-ゲルによって被覆された同じ試料のイオン流マップ(B)。
【0028】
ナノ容器を伴う試料において、腐食プロセスは4 hの浸漬後に検出されたが、本発明のコーティングで被覆された試料の活性は、16 hの実験でさえも観察されなかった。これらの結果は、本発明のコーティングによる表面保護が、攻撃性溶液中においてさえも安定であることを示す。
【0029】
例1
アルミニウム合金基板上に堆積されたサンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体を含む耐食コーティングの調製および特性
本発明の具体的な態様において、先に定義されたサンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体を含む耐食コーティングが、モデル金属基板としてのアルミニウム合金AA2024上に堆積され、その耐食保護が調べられた。
【0030】
ポリ(スチレンサルフェート) (PSS)および任意で(有機シランの代替としてのアンカー層のための)ポリ(エチレンイミン) (PEI)のナノ層を用い、腐食抑制剤を組込むための基材を基板表面上に形成した。サンドイッチ様複合体は直接、または有機シランもしくはPEI支持材を使用することによっての両方でアルミニウム表面上に堆積され得る。有機シラン支持材を調製するために、アルミニウム表面がγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ-GPS)またはγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(γ-APS)によって処理された。放出の速度は、アルミニウム合金の腐食の間のpH変化によって制御することができる。サンドイッチ様に堆積されたポリマー(高分子電解質)/抑制剤膜によって保護された、アルミニウム板のスケッチが図1に示される。表面脱脂およびエッチングの後に、有機シラン(γ-APSまたはγ-GPS)、またはPEIのアンカー層が形成された。その後、PSSおよび抑制剤(8-ヒドロキシキノリン)が、以下で詳細に概説される組立て手順により堆積された。結果として、高分子電解質および抑制剤の安定な多層がアルミニウム表面上に形成された。
【0031】
ポリマーおよび有機シランの堆積の前に、アルミニウム基板がイソプロパノール流の中で脱脂され、精製水中で濯がれた。その後、試料は超音波(500 W)で10分間処理された。結果として、微視的に高度に荒い酸化アルミニウムの層が形成された。新たに形成された酸化物層は、セル構造によって特徴付けられる(D. Hennemann, W. Brockmann, J. Adhesion 1981, 12, 297) (図2a)。セルのサイズはおよそ100〜200 nmであり、壁厚はおよそ15 nmと測定された。観察されたモルフォロジーは、Venablesらによる、結合性の決定において重要な「繊維補強界面」に類似のタイプの表面を記載するボーイング リン酸陽極酸化法(PAA) (J. D. Venables, D. K. McNamara, J. M. Chen, T. S. Sun, R. L. Hopping, Appl. Surf. Sci. 1979, 3, 88)を用いて調製されたアルミニウム表面について表されたモルフォロジーと極めて類似する。このような酸化アルミニウムの十分に処理された表面は、機械的噛み合いおよび良好な表面接着に起因して容易に修飾することができる。
【0032】
IRRAS結果は、自然な酸化アルミニウムおよび新たな酸化アルミニウムの除去も証明した。スペクトル(図2b)は、擬似ベーマイト(pseudoboehmite) (Al2O3 XH2O、X≒2)として過去に(A. N. Rider, D. R. Arnott, Int. J. Adh. Adh. 2000, 20, 209)同定された3400、3100、2999、1260、1169、1088および840 cm-1のバンドを示した。US(超音波)処理時間に伴って増大する1088 cm-1の強いバンドは、Al-OHバンドの振動に帰属される(E. Wolska and W. Szajda, Zhurnal Prikladnoi Spektroskopii, 1983, 38, 160)。3400〜3600 cm-1領域の吸収は、OH基の振動に特徴的である。US処理後に減少する1260 cm-1バンドを帰属することはできなかった。このバンドは、おそらく、超音波処理の間に除去されるAl合金中のいくらかの不純物に帰属することができる。
【0033】
空気中で生成した非晶質酸化アルミニウムを原因とするAl-O-Alに帰属される960 cm-1のバンドの欠如は、超音波処理が、機械的に弱い自然酸化物を擬似ベーマイトに転換したことを示した。大きな多孔度および表面積に起因して、擬似ベーマイトは大きな容量およびアルミニウム合金に対する吸着活性を提供する。
【0034】
材料。アルミニウム合金試料AA2024が、EADS Deutschland Gmbhから供給された。ポリエチレンイミン(PEI、MW〜600000-1000000 kD)、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム) (PSS、MW〜70000)、8-ヒドロキシキノリン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン (GPS)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、塩化ナトリウム、無水ナトリウムは、Sigma-Aldrichから購入され、さらなる精製無しで使用された。水は使用の前に、三段階のMilipore Milli-Q Plus 185精製システムで精製され、18.2 MΩm・cm超の比抵抗を有していた。
【0035】
IRRAスペクトル。スペクトルは、ラングミューアトラフ機構を含む外部反射率ユニットを具備した、Bruker(Ettlingen, Germany)からのIFS 66 FT-IR分光装置により得られた。赤外ビームは、分光装置の外部ポートを通って導かれ、その後、試料表面上に集束される前に固定マウント中の3つのミラーによって反射される。A KRS-5ワイヤグリッド偏光子が、ビームが試料表面に当たる前の光路中に直接配置される。反射された光は、入射角と同じ角度で集光される。光は等価なミラー路を通り、液体窒素で冷却された、狭周波数帯の水銀-カドミウム-テルル化物検出器に導かれる。全ての実験設備は、相対湿度変動を下げるために密閉される。40 mN/mでの全ての測定について、p-偏光された放射は、70°の入射角で使用された。8 cm-1の解像度、20 kHzのスキャン速度にて、全部で128スキャンが得られた。
【0036】
スキャンは合一され、Blackman-Harris 3-term関数でアポダイズされ、4 cm-1間隔にエンコードされたスペクトルデータを作るためにゼロフィリングの一つのレベルで高速フーリエ変換された。IRRAスペクトルは、波数に対する吸光度として表される。吸光度、また、反射率-吸光度は-lg(R/R0)から得られ、ここでRは試料の単一ビーム反射率であり、R0は参照の単一ビーム反射率である。スペクトルは、ピーク位置および強度が決定される前にベースライン補正された。重なるスペクトルの特性による障害を最小化するために、積分強度よりもむしろピーク高さが使用された。
【0037】
走査型電子顕微鏡(SEM)。SEM測定は、操作電圧3 keVで、Gemini Leo 1550装置によって実行された。試料溶液の液滴がスライドガラス上に配置され、空気中で乾燥され、金がスパッタリングされた。
【0038】
原子間力顕微鏡(AFM)。AFM測定は、空気中、室温下で、タッピングモードで操作するNanoscope III Multimode AFM (Digital Instruments Inc., USA)を用いて実行された。
【0039】
超音波処理。500 Wの最大出力で、20 kHzにて操作する超音波処理装置CV 33 Sonics Inc. (Switzerland)が、AA2024の超音波前処理に使用された。
【0040】
例2
アルミニウム合金基板の有機シラン前処理
板をγ-APSまたはγ-GPSの2 %水溶液(γ-APSについて10.4のpHおよびγ-GPSについて7のpH)に2時間浸漬することによって、新たに調製されたAl合金上に有機シランのナノ膜が形成された。板を取出した後に、過剰な溶液が窒素流によって除去された。
【0041】
アルミニウム表面上に吸着された有機シラン(γ-APSおよびγ-GPS)のIRRAスペクトル(図3)は、Si-O結合の伸縮モードが位置する900〜1250 cm-1の領域中に吸着バンドを示す。1080 cm-1に観察される強いバンドはSiOの逆対称伸縮モードと、先に議論したAl-O吸着の両方に帰属することができる。有機シランで修飾されたアルミニウムのスペクトルにおける1080 cm-1のピークは、SiOおよびAlOバンドの重なりに起因して、未修飾のアルミニウムのスペクトルのものよりも幅広い。γ-APSについての1146 cm-1のバンド(図3b)、およびγ-GPSについての1160 cm-1のバンド(図3c)は、シランの部分的な縮合を示唆する(F. J. Boerio, C. A. Gosselin, R. G. Dillingham, and H. W. Liu, J. Adhesion, 1981, 13, 159)。γ-GPS膜のスペクトルは、残留SiOCH3基に帰属される1200、1080および820 cm-1のバンドを持つ。915 cm-1のピークおよび3300 cm-1の強いピークは、残留シラノールの存在を示した。1105 cm-1の強いピークは、表面上で重合したシラノールに帰属される。SiOCH3およびシラノール基の存在は、γ-GPSと酸化アルミニウムの間の相互作用が、γ-APSとアルミニウムの間のものよりも弱いことを証明する。さらに、γ-APSとγ-GPSの両方に特徴的なピークも、スペクトル上で観察することができる。1600〜1400 cm-1の範囲のバンドは、プロトン化されたγ-APSのアミノ基の変角振動に帰属することができた。1250 cm-1のバンド(エポキシ環)、および2930および2870のピークは、CH3/CH2の伸縮モードである(M.-L. Abel, J. F. Watts, R. P. Digby, J. Adhesion, 2004, 80, 291)。
【0042】
例3
アルミニウム合金基板のポリマー前処理
市販のスプレーノズル(Carl Roth GmbH)を用いて、pH≒10の、50 %エタノール中の2 mg/mL PEI溶液からスプレーコーティング法によってPEI膜が調製された。試料は周囲条件下で乾燥された。PEIのIRRAスペクトル(図3c)は、ポリマーのメチレン基のCH伸縮振動から生じる2930および2820 cm-1の2つのバンドを含む。3300 cm-1付近の最大値および3250 cm-1の肩を持つ幅広いピークは、NH伸縮バンドに帰属することができる(H. C. Haas, N. W. Schuler, N. R. Macdonald, J. Polymer Sci. 1972, 10, 3143)。3250 cm-1の肩は、複合体中でのPEI膜と酸化アルミニウムの間NH...O型の水素結合に相当すると思われる。さらに、NH、CHおよびCN変角モードから生じる広範な吸収バンドが、1600〜1200 cm-1に観察された(S. Lakard, G. Herlem, B. Lakard, B. Fahys, J. Mol. Structure 2004, 685, 83)。複合体中のN-H結合の原子価振動の周波数の減少は、極性の増大、および、結果として、プロトンの酸性度を増大させることを示す。1080 cm-1のAl-Oの吸着ピークは負である(スペクトル中の赤丸)。それ故に、PEIは、アルミニウムの表面を被覆する緻密な層を形成する。
【0043】
例4
アルミニウム合金基板上へのサンドイッチ様ポリマー(高分子電解質)/抑制剤複合体の形成
市販のスプレーノズル(Carl Roth GmbH)を使用したスプレーコーティングによって、成分が堆積された。エタノール中の2 mg/mL PSS溶液を有機シランまたはPEIで被覆された表面上にスプレーすることによって、内側ポリマー層が調製された。試料は開放空気中に静置されて1 h乾燥された。無水エタノール中の8HQの10 mg/mL溶液から、抑制剤が堆積された。試料は先述したように乾燥された。外側PSS層が、先のPSSのものと同様の手順で形成された。
【0044】
層堆積がIRRASによって確かめられた。PSSおよびHQ両方からの特徴的なバンドをスペクトル中で識別することができた(図4)。SO32-基の逆対称および対称振動吸着が、それぞれ1184および1042 cm-1のピークに帰属された(Y. Tran, P. Auroy, J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 3644)。最後に、3200と3600 cm-1の間の幅広いバンド、および、水の存在に起因する1700〜1570 cm-1におけるH2Oのはさみ振動も観察され得る(J. C. Yang, M. J. Jablonsky, J. W. Mays, Polymer 2002, 43, 5125)。1130および1011 cm-1のピークは、ベンゼン環の面内骨格振動、およびベンゼン環の面内屈曲振動に帰属することができる。さらに、PEIからの残りのバンド(1600〜1200 cm-1の領域)、およびAl-OH基からの強い負ピークも観察される。
【0045】
1606、1506、1498および1475 cm-1のバンドは、8HQ分子中の環振動、ならびに1373 cm-1は>CHO基のC-H屈曲に帰属することができた(M. D. Halls, R. Arosa, Can. J. Chem. 1998, 76, 1730)。固相中での8HQの赤外吸収スペクトルは、OH基と窒素原子の間の水素結合に特徴的な3100〜3200 cm-1の範囲にあるOH伸縮振動に起因した幅広いバンドを示す(E. Bardez, I. Devol, B. Larrey, B. Valeur, J. Phys. Chem. 1997, 101, 7786)。残念ながら、膜成分のバンドの重なりにより、この領域の正確な解釈ができない。
【0046】
表面のUS前処理で調製された被修飾試料、および前処理無しの試料のSEMイメージ(図5)は、US前処理が均一な膜の形成に重要な役割を持つことを示す。US前処理された、十分に処理された表面は、ポリマー層に対するより良好な濡れ性、接着性および化学結合性を有機した。それは、アルミニウム表面上へのポリマー膜の均一な分布をもたらす。また、一般的な脱脂および研磨手順の後、AA2024の表面上にサンドイッチ様膜の堆積を試みた。このような試料の表面は、任意の倍率下でも極めて平滑である(図5a)。堆積後のポリマーは連続的なコーティングを形成するが、基板上にランダムに塊となっている。PEI/PSSの複合体の凝集は、SEMイメージ(図5b)上で明らかに区別することができた。
【0047】
有機シラン(図6)およびPEI (図5cおよびd)で調製された、被覆された試料の表面モルフォロジーもSEMで検査された。PEIがアンカー層に使用された場合、深い凹み(図6a)によって証明されるような、表面を完全に被覆する緻密な膜が形成される。有機シランが表面の前処理に使用される場合、最終的な膜は著しく薄くなった(図6a)。最初の板の表面モルフォロジーが、SEMイメージ中でも識別することができた。この有機シランが、この場合はアルミニウム表面を連続的かつ完全に被覆するならば、それが非常に鮮明にはならない。図6bは、さらなるPEI層で調整された試料のSEMイメージである。サンドイッチ様膜が非常に薄くとも、保護コーティングは連続的かつ完全にアルミニウム表面を被覆することに疑いは無い。
【0048】
PEIで調製されたナノ膜は平滑かつ緻密である。この場合、サンドイッチ様膜は、最初の材料のモルフォロジーを完全に変える非常に緻密かつ厚いコーティングを形成することができる。
【0049】
各層の厚さはタッピングモードのAFMで評価された。γ-APS層について150±20 nm、γ-GPSについて120±20 nm、およびPEIについて250±40 nmの厚さが測定された。残念ながら、表面の大きな粗さ、ならびに小さな膜厚(およそ< 10 nm)により、サンドイッチ様複合体膜中の各層の厚さを評価することができなかった。
【0050】
例5
浸漬腐食試験
未修飾のAA2024合金の試料、および抑制剤を有するポリマー複合体で被覆された試料の使用が、0.5 M NaCl水溶液(図7)中に浸漬された。未修飾アルミニウムの腐食の最初の目視痕跡が、12 hの実験後に最初に観察された。21日後、サンドイッチ様保護コーティングは、腐食プロセスに対する非常に高い耐性をいまだ示している。IRRAスペクトルにより証明された保護コーティングの部分的な劣化に起因して、28日の浸漬後に、保護されたアルミニウムは腐食され始めた。
【0051】
浸漬腐食試験は、サンドイッチ様コーティングを有する試料、および有機シランのみで修飾された試料について実施された。シランで修飾されたアルミニウムは、3日の実験で表面腐食の最初の痕跡を呈した(図8a)。サンドイッチ様ポリマー/抑制剤複合体を有する試料は、0.5 M NaCl溶液中で非常に高い安定性を示した。これらの板の表面は、3日の実験の後にも腐食されなかった(図8b)。それ故に、サンドイッチ様ポリマー(高分子電解質)/抑制剤膜は、ポリマー膜のバリア特性および8-HQの抑制活性に起因して、AA2024の腐食を抑制することができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面の活性腐食保護のための腐食抑制コーティングであって、
i) 有機化学種の第1の内側層と、
ii) 腐食抑制層と、
iii) 有機化学種の第2の外側層と
を含む、前記金属基板上に堆積されるサンドイッチ様複合体を含み、少なくとも1つの具体的な刺激に感受性があり、前記刺激に対する応答において前記腐食抑制剤を放出することができるものである腐食抑制コーティング。
【請求項2】
アンカー層が、前記金属基板と前記サンドイッチ様複合体の間に提供される請求項1によるコーティング。
【請求項3】
前記有機化学種の層が、200〜1000 nmの範囲にある平均厚を持つナノ層である請求項1または請求項2によるコーティング。
【請求項4】
前記有機化学種が、ポリマー、特に高分子電解質のような帯電されたポリマー、導電性ポリマー、染料、蛋白質、ベシクルおよび有機コロイドからなる群より選択される請求項1〜3のうちのいずれか1項によるコーティング。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリ(アルキレンイミン)例えばポリ(エチレンイミン)、ポリ(アリルアミン)例えばポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(スチレンスルホナート)例えばポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリアミド酸、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)からなる群より選択される請求項4によるコーティング。
【請求項6】
前記抑制剤が、1つ以上のアミノ基を含む有機化合物、アゾール誘導体、1つ以上のカルボキシル基を含む有機化合物もしくはカルボン酸の塩、および1つ以上のピリジニウムもしくはピラジン基を含む有機化合物からなる群より選択される有機化合物を含む請求項1〜5のうちのいずれか1項によるコーティング。
【請求項7】
前記抑制剤が、サリチルアドキシム、8-ヒドロキシキノリン、キナルジン酸、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールからなる群より選択される請求項6によるコーティング。
【請求項8】
前記金属基板が、鉄および鉄合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金からなる群より選択される請求項1〜7のうちのいずれか1項によるコーティング。
【請求項9】
前記アンカー層が、有機シラン層またはポリマー層である請求項2〜8のうちのいずれか1項によるコーティング。
【請求項10】
前記ポリマーアンカー層が、高分子電解質層、例えばポリ(エチレンイミン)層である請求項9によるコーティング。
【請求項11】
前記刺激が、pH変化、温度、イオン強度、電気化学ポテンシャル、磁場もしくは電場、機械的衝撃からなる群より選択される請求項1〜10のうちのいずれか1項によるコーティング。
【請求項12】
金属表面の耐食性を向上させる方法であって、前記金属基板を超音波処理し、任意で前記前処理された金属基板表面上にアンカー層を堆積させることを含む前記金属表面の前処理と、請求項1または3〜7のうちのいずれか1項で定義された腐食抑制剤を含むサンドイッチ様複合体を、前記前処理された金属基板表面上または前記アンカー層上に堆積させることとを含む方法。
【請求項13】
超音波ホーンによって前記金属基板を水中で超音波処理することを含む請求項12による方法。
【請求項14】
少なくとも1つの有機シランまたはポリマーを前記金属基板上に堆積させ、前記アンカー層を形成することを含む請求項12または請求項13による方法。
【請求項15】
前記有機シランが、アミノ基および/またはエポキシ基を有する有機シランからなる群より選択される請求項14による方法。
【請求項16】
前記有機シランが、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランまたはγ-アミノプロピルトリエトキシシランである請求項15による方法。
【請求項17】
前記ポリマーがポリ(エチレンイミン)である請求項14による方法。
【請求項18】
前記有機化学種がポリマーまたは高分子電解質であり、ディープコーティングおよび/またはスプレーコーティング法によって堆積される請求項12〜17のうちのいずれか1項による方法。
【請求項19】
請求項1〜11のうちのいずれか1項によるコーティングからの腐食抑制剤の制御可能な放出を提供する方法であって、pHの変化、電気化学的ポテンシャル、イオン強度、温度、電磁放射、機械的衝撃からなる群より選択される具体的な刺激に前記コーティングを暴露し、前記コーティングを、前記腐食抑制剤を放出可能なものにすることを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−500877(P2011−500877A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528296(P2010−528296)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008320
【国際公開番号】WO2009/046915
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(594056568)マツクス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシャフテン エー フアウ (13)
【Fターム(参考)】