説明

サンドイッチ状樹脂成型品、及びサンドイッチ状樹脂成型品の製造方法

【課題】例えば、抗菌特性あるいは香り特性を十分に発揮できる成型品を低廉なコストで提供することである。
【解決手段】外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に射出成型されてなる樹脂成型品であって、
前記外層樹脂は、有機物チップを含有し、
前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンドイッチ状樹脂成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木片などの有機物を配合した樹脂材料を用いて、例えば押出成型により成型した樹脂成型品が提案されている。すなわち、配合した有機物に由来する質感などの特長を成型品にも持たせようとして提案され、これが注目を浴び始めている。
例えば、木粉と熱可塑性樹脂とから構成される樹脂組成物を混練し、押出成型して得られる木質樹脂板が提案(特開2004−306325)されている。又、木粉と樹脂とを混練し、木質感を持った押出成型材が市販されている。
【0003】
しかしながら、これ等の成型品は、重量が通常の木材と比べて重く、その適用用途が限られている。
【0004】
そこで、金型を調整することによって、押出成型品の中身を中空にし、木粉と樹脂との使用量を削減したものが提案・市販されている。
しかしながら、押出成型品は、角材や板材に限られており、商品バリエーションに限度が有る。
【0005】
又、合成樹脂と茶とを合成樹脂:茶=40〜60:60〜40の比率で配合し、これを溶融し、低剪断力で弱混練・押出してなる樹脂コンパウンドが提案(特開2003−96319)されている。
しかしながら、上記樹脂コンパウンドは、合成樹脂と茶とを溶融・混練・押出ししている為、コストが高く付いている。
【特許文献1】特開2004−306325
【特許文献2】特開2003−96319
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、上記樹脂コンパウンドは、単に、茶を配合したものであると言っても、その製造は簡単なものでは無く、コストが高いものである。
【0007】
そこで、上記樹脂コンパウンドの使用量を削減して成型品を低廉なものとする為、上記樹脂コンパウンドに通常の樹脂ペレットを配合し、この組成物を用いて成型することを試みた。
【0008】
しかしながら、単に、希釈した樹脂コンパウンドを用いて成型した成型品は、有機物、例えば茶が奏する特長が奏されてなかった。
【0009】
すなわち、茶が持つ抗菌特性や香り特性を十分に奏させようとすると、通常の樹脂ペレットによる希釈率を大幅に小さくせざるを得ず、これでは、希釈の意味が大きく失われてしまう。
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、前記の問題点を解決することである。特に、有機物に由来する特長を十分に発揮できる成型品を低廉なコストで提供することである。中でも、抗菌特性あるいは香り特性を十分に発揮できる成型品を低廉なコストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する為の研究開発を、鋭意、押し進めて行く中に、本発明者は、上記樹脂コンパウンドに通常の樹脂ペレットを配合して希釈した組成物を用いて成型するのでは、表面層における有機物の濃度が低下することから、有機物に由来する特長を十分に発揮できないことに気付くに至り、そこで、目的とする表面層における有機物濃度が高ければ、有機物に由来する特長を発揮できるであろうと考えるに至った。
【0012】
そこで、本発明者は、上記知見を基にしてサンドイッチタイプの積層品を成型した。特に、サンドイッチ構造の積層品であって、表面層にのみ有機物を存在させた成型品を成型した。
【0013】
その結果、驚いたことに、有機物表面露出量が増大していることが突き止められた。すなわち、有機物の配合量から計算した有機物表面露出量(面積)よりも、実際に測定した有機物表面露出量が大きなことが突き止められたのである。
【0014】
ところで、有機物による特長は、成型品の表面に有機物が露出している(又は、表面層における有機物存在量が多い)ことから、奏されるものである。してみれば、上記のように有機物表面露出量が増大した成型品は、それだけ、大きな特長を奏することになる。言い換えれば、或る特定量の同一の特長を奏させるのであれば、例えば或る一定の抗菌特性とか一定の香り特性を奏させるのであれば、それだけ有機物量を減らせられることになる。
【0015】
このことは、引いては、有機物含有樹脂コンパウンドにおける含有有機物量を少なくできることを意味し、それだけ、低廉なコストで出来るようになる。
【0016】
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。
【0017】
すなわち、前記の課題は、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に成型されてなる樹脂成型品であって、
前記外層樹脂は、有機物チップを含有し、
前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品によって解決される。
【0018】
特に、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に射出成型されてなる樹脂成型品であって、
前記外層樹脂は、有機物チップを含有し、
前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品によって解決される。
【0019】
更には、上記サンドイッチ状樹脂成型品であって、有機物チップが植物性のものであるサンドイッチ状樹脂成型品によって解決される。
【0020】
中でも、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に射出成型されてなる樹脂成型品であって、
前記外層樹脂は、茶の中から選ばれた有機物チップを含有し、
前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品によって解決される。
【0021】
そして、上記サンドイッチ状樹脂成型品であって、外層樹脂における有機物チップ含有量が5〜60wt%(望ましくは、6wt%以上。更には、6.5wt%以上。特に、7wt%以上。上限値は、コスト面からの要請が強く、60%以下ならば良いものの、出来れば50wt%以下が好ましい。更には、40wt%以下。特に、30wt%以下。中でも、20wt%以下。)であるサンドイッチ状樹脂成型品によって、特に、解決される。更には、上記サンドイッチ状樹脂成型品であって、外層樹脂における有機物チップ含有量が5〜60wt%(望ましくは、6wt%以上。更には、6.5wt%以上。特に、7wt%以上。上限値は、コスト面からの要請が強く、60%以下ならば良いものの、出来れば50wt%以下が好ましい。更には、40wt%以下。特に、30wt%以下。中でも、20wt%以下。)であり、樹脂全体における有機物チップ含有量が3〜15wt%(望ましくは、4wt%以上。更には、4.2wt%以上。そして、12wt%以下。)であるサンドイッチ状樹脂成型品によって、特に、解決される。又、上記サンドイッチ状樹脂成型品であって、外層樹脂における有機物チップ含有量が5〜60wt%(望ましくは、6wt%以上。更には、6.5wt%以上。特に、7wt%以上。上限値は、コスト面からの要請が強く、60%以下ならば良いものの、出来れば50wt%以下が好ましい。更には、40wt%以下。特に、30wt%以下。中でも、20wt%以下。)であり、(外層樹脂の厚さ)/(内層樹脂の厚さ)=0.4〜4(望ましくは、0.7以上。更には、0.8以上。そして、3以下。特に、2.5以下。)であるサンドイッチ状樹脂成型品によって、特に、解決される。
【0022】
又、前記の課題は、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に成型されてなる樹脂成型品の製造方法であって、
前記外層樹脂材料として有機物チップを含有する材料が用いられ、
前記内層樹脂材料として有機物チップを、実質上、含有しない材料が用いられ、
成型手段として射出成型手段(中でも、コ・インジェクション手段)が用いられてなる
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品の製造方法によって解決される。
【0023】
特に、上記のサンドイッチ状樹脂成型品の製造方法である上記サンドイッチ状樹脂成型品の製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0024】
本発明になる成型品は、上記のように構成させたので、有機物が奏する特長を十分に奏する。かつ、成型品が低廉なコストで得られる。
【0025】
特に、成型手段として射出成型手段(中でも、コ・インジェクション手段)を用い、かつ、外層樹脂材料として有機物チップを含有する材料を用いると共に、内層樹脂材料として有機物チップを、実質上、含有しない材料を用いて成型したので、有機物の表面露出が高く、従って有機物が奏する特長を大きく奏する成型品が低廉なコストで得られる。
【0026】
例えば、有機物として茶が用いられた場合、抗菌特性や香り特性に優れた成型品が低廉なコストで得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明になる樹脂成型品は、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に成型されてなる樹脂成型品であって、前記外層樹脂は、有機物(特に、植物性)チップを含有し、前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない。特に、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に射出成型(中でも、コ・インジェクション)されてなる樹脂成型品であって、前記外層樹脂は、有機物(特に、植物性)チップを含有し、前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない。中でも、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に射出成型(中でも、コ・インジェクション)されてなる樹脂成型品であって、前記外層樹脂は、茶の中から選ばれた有機物チップを含有し、前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない。外層樹脂における有機物チップ含有量は、例えば5〜60wt%である。望ましくは、6wt%以上、更には6.5wt%以上、特に7wt%である。上限値は、コスト面からの要請が強く、60%以下(多すぎると、成型品にコゲや寸法の狂いが生じ易い。)ならば良いものの、出来れば50wt%以下、更には40wt%以下、特に30wt%以下、中でも20wt%以下である。そして、前記限定に加えて、成型品における樹脂全体での有機物チップ含有量は、例えば3〜15wt%である。望ましくは、4wt%以上、更には4.2wt%以上である。上限値は、コスト面からの要請が強く、12wt%以下が望ましい。或いは、前記限定に加えて、(外層樹脂の厚さ)/(内層樹脂の厚さ)が、例えば0.4〜4である。望ましくは、0.7以上、更には0.8以上である。そして、望ましくは3以下、特に2.5以下である。これは、外層樹脂の厚さが薄すぎると、内層樹脂が露出し易く、浮き出しにより外観不良となり易いからである。逆に、外層樹脂の厚さが厚すぎると、極端に言うと、外層樹脂のみになり、これでは意味が無くなるからである。尚、前記の値は全体における平均値であって、部分的に薄い箇所が有ったり、逆に、厚い箇所が有ったりもする。
【0028】
本発明の成型品における外層樹脂は有機物チップを含有したものである。すなわち、通常の樹脂と有機物とが混ざった樹脂(複合樹脂)である。内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有しない。そして、これ等に用いられる樹脂は、基本的には、如何なる樹脂であっても良い。但し、外層樹脂に用いられる樹脂と内層樹脂に用いられる樹脂とは、基本的には、似た特性のものであることが好ましい。すなわち、サンドイッチ状に積層されることから、両者の樹脂は、例えば成形温度や成形収縮率が略同程度のものであることが好ましい。このような特徴を備えておれば、如何なる樹脂でも良い。例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂が用いられる。その他にも適宜な熱可塑性樹脂が用いられる。例えば、スチレン系樹脂なども用いられる。単独でも混合のものでも良い。尚、外層樹脂は表面に在るのに対して、内層樹脂は表面に露出していない。従って、内層樹脂には工業廃材や一般プラスチック廃棄物類を利用することも出来る。例えば、食品トレーを分別回収した再生ペレットや、ラミネート加工されたシート端材等を用いることも出来る。尚、射出成型によって成型することから、外層樹脂は、MI値が7g/10分〜20g/10分のものが好ましく、そして内層樹脂は、MI値が5g/10分〜15g/10分のものが好ましい。すなわち、過度にMI値が高い樹脂を用いると、金型内で外層樹脂と内層樹脂とが混錬してしまい、逆に、MI値が低い樹脂を用いると、末端部やウエルド部より内層樹脂が露出する場合がある。又、本発明で用いる樹脂は、ブロック状あるいは粉末状何れのものでも良い。
【0029】
本発明になる樹脂成型品で用いられる有機物は、例えば緑茶、烏龍茶、紅茶、ジャスミン茶などの茶(例えば、茶葉や茶殻(茶成分抽出後の残渣)、その他にも茶成分を含有する有機物質)が特に用いられる。その他に、例えば桧や杉、カキ等の樹木(樹皮・樹幹・葉)を用いることも出来る。その他にも孟宗竹などの竹(葉も含まれる)も用いられる。或いは、ヨモギやシソ等を用いることも出来る。その他にも、グレープフルーツやオレンジ等の柑橘類、ブドウやリンゴ表皮、ワイン抽出残渣等も用いることが出来る。特に、抗菌特性を持っていたり、或いは香り特性を有する(勿論、好ましくは、両方の特性を有している)植物性のものであれば、好ましく用いることが出来る。尚、本明細書において、チップとは、三次元的なブロック状のもののみならず、二次元的なもの、或いは破砕されて粉末状になったものでも良い。
【0030】
本発明になる樹脂成型品の製造方法は、外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に成型されてなる樹脂成型品(特に、上記構造の樹脂成型品)の製造方法であって、前記外層樹脂材料として有機物チップを含有する材料が用いられ、前記内層樹脂材料として有機物チップを、実質上、含有しない材料が用いられ、成型手段として射出成型手段(中でも、コ・インジェクション手段)が用いられてなる。例えば、外層樹脂材料のペレットを170〜200℃の温度条件にて金型に流し込み、次いで(或いは、その後で共に)内層樹脂材料のペレットを170〜210℃の温度条件にて金型に流し込み、サンドイッチ構造の成型品を成型する。ここで、成型温度を上記のようにしたのは、有機物のコゲ・炭化を防止する為である。又、フローマークやウエルドラインの発生を防止する為である。そして、上記のようにして得られた樹脂成型品は、従来の有機物含有樹脂成型品に比べて有機物配合量が少ないにもかかわらず、有機物本来の機能が大きく発揮されている。
以下、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0031】
[実施例]
有機物チップとして緑茶葉を用いた。外層樹脂材料として、MI=10.0g/10分のポリプロピレンを用いた。そして、前記材料を用い、又、特開2003−96319号に開示の技術を用いて茶葉配合樹脂コンパウンドを得た。
【0032】
内層樹脂材料として、ラミネートPP(ポリプロピレン)シート端材からなる再生樹脂(MI=8.0g/10分)を用意した。
【0033】
上記の材料を用い、又、射出成型装置(コ・インジェクション装置)を用いて成型した。すなわち、外層樹脂材料を180℃にて射出後、内層樹脂材料を共に射出し、三層(厚さ2mmの外層―厚さ3mmの内層―厚さ2mmの外層)にサンドイッチ成型された板材A1,A2,A3,A4,A5を得た。
【0034】
尚、板材A1の外層における有機物含有量は5wt%であるが、板材全体における有機物含有量は3wtである。
板材A2の外層における有機物含有量は6wt%であるが、板材全体における有機物含有量は3.6wtである。
板材A3の外層における有機物含有量は7wt%であるが、板材全体における有機物含有量は4.2wtである。
板材A4の外層における有機物含有量は8wt%であるが、板材全体における有機物含有量は4.8wtである。
板材A5の外層における有機物含有量は10wt%であるが、板材全体における有機物含有量は6.0wtである。
【0035】
又、比較の為、上記外層樹脂材料のみを用い、180℃にて射出成型してなる厚さ2mmの板材Z1,Z2,Z3,Z4,Z5を得た。
尚、板材Z1における有機物含有量は5wt%である。
板材Z2における有機物含有量は6wt%である。
板材Z3における有機物含有量は7wt%である。
板材Z4における有機物含有量は8wt%である。
板材Z5における有機物含有量は10wt%である。
【0036】
さて、上記板材A1,A2,A3,A4,A5及び板材Z1,Z2,Z3,Z4,Z5について、その表面特性を調べた。
すなわち、サンドイッチ射出成型は、通常の射出成型に比べて、射出時間および冷却時間が長い。従って、必然的に、射出装置内での樹脂の滞留時間も長くなるので、茶葉(有機物)の変性が起こり易いと考えられる。そこで、板材A1,A2,A3,A4,A5及び板材Z1,Z2,Z3,Z4,Z5の表面性状(コゲや変色)を、実体顕微鏡(BS−D8000 Ver.6.14(ソニック株式会社製);倍率50倍)にて調べた。
その結果、何れも、コゲや変色は認められなかった。
【0037】
次に、板材A1,A2,A4,A5及び板材Z1,Z2,Z4,Z5における有機物(茶葉)の表面露出面積を調べた。
【0038】
本来なら、有機物(茶葉)の表面露出面積は、表面層における有機物(茶葉)含有量が同じであるから、
(板材A1における有機物(茶葉)の表面露出面積)=(板材Z1における有機物(茶葉)の表面露出面積)、
(板材A2における有機物(茶葉)の表面露出面積)=(板材Z2における有機物(茶葉)の表面露出面積)、
(板材A4における有機物(茶葉)の表面露出面積)=(板材Z4における有機物(茶葉)の表面露出面積)、
(板材A5における有機物(茶葉)の表面露出面積)=(板材Z5における有機物(茶葉)の表面露出面積)
の筈である。
【0039】
しかしながら、ここで、非常に興味の有る結果が示された。
【0040】
すなわち、
(板材A1における有機物(茶葉)の表面露出面積:0.8%)>(板材Z1における有機物(茶葉)の表面露出面積:0.5%)、
(板材A2における有機物(茶葉)の表面露出面積:1.1%)>(板材Z2における有機物(茶葉)の表面露出面積:0.8%)、
(板材A4における有機物(茶葉)の表面露出面積:2.5%)>(板材Z4における有機物(茶葉)の表面露出面積:1.9%)、
(板材A5における有機物(茶葉)の表面露出面積:4.2%)>(板材Z5における有機物(茶葉)の表面露出面積:3.8%)
であったと言うことである。
【0041】
尚、有機物(茶葉)の表面露出面積は次のようにして求められた。板材A1,A2,A4,A5及び板材Z1,Z2,Z4,Z5の各々を、乳酸鉄水溶液に24時間浸漬し、表面上に露出している緑茶葉を黒色発色させた。この後、実体顕微鏡(BS−D8000 Ver.6.14(ソニック株式会社製);倍率100倍)にて観察し、黒色変化部分の面積をWin roof Ver.5.5.0(MITANI社製)にて測定し、下記の式を用いて算出した。
有機物露出面積(%)
=黒色変化部分面積(μm)/サンプル面積(4890×6050μm
【0042】
すなわち、本発明にあっては、その理論的解明は不十分なるものの、サンドイッチ状に射出成型される際に、表面層(外層樹脂)に存在する茶葉が表面に押し出され、露出したものと推測される。
【0043】
このことは、表面層(外層樹脂)における有機物(茶)の含有量が同じでも、表面露出面積が本発明のものは大きいことから、抗菌特性や香り特性において、好ましい結果を奏するであろうことを示している。
【0044】
因みに、抗菌特性や香り特性を調べた処、表−1に示される通り、このことが裏付けられた。
【0045】
表−1
板材 抗菌特性(CFU/枚) 香り特性
A2 2.6×105 2.2
A3 <10 2.7
A4 <10 3
A5 <10 3
Z3 1.2×104 1.4
Z4 1.8×102 1.9
〔抗菌特性〕
各々の板材を5cm×5cmの大きさにカットし、1/500普通ブイヨンに浸漬した。この後、抗菌製品技術協議会のフィルム密着法を用いてサンプル上の菌液(MRSA:メスチリン耐性黄色ブドウ球菌)の生菌数(CFU/枚)を測定した。
〔香り特性〕
各々の板材を3cm×3cmの大きさにカットし、切口をパラフィルムにより密封したサンプル表面上の香りを被験者10人にて官能検査した。そして、緑茶の香りが確認できた場合を3点とし、香りが確認できた場合を2点とし、香りが確認できなかった場合を1点として点数計算を行った。この点数が2以上のものが合格品である。
【0046】
すなわち、表面層(外層樹脂)における有機物(茶)の含有量が同じでも、本発明になるものは、抗菌特性や香り特性が良いものになっている。
従って、同程度の抗菌特性・香り特性のものを得ようとすると、本発明にあっては、有機物(茶)の使用量を減らすことが出来、それだけ簡単、かつ、低廉なコストで得られる。特に、コスト低廉効果は非常に大きなものである。

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に成型されてなる樹脂成型品であって、
前記外層樹脂は、有機物チップを含有し、
前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品。
【請求項2】
外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に射出成型されてなる樹脂成型品であって、
前記外層樹脂は、有機物チップを含有し、
前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品。
【請求項3】
有機物チップは植物性のものであることを特徴とする請求項1又は請求項2のサンドイッチ状樹脂成型品。
【請求項4】
外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に射出成型されてなる樹脂成型品であって、
前記外層樹脂は、茶の中から選ばれた有機物チップを含有し、
前記内層樹脂は、実質上、有機物チップを含有していない
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品。
【請求項5】
外層樹脂における有機物チップ含有量が5〜60wt%であることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかのサンドイッチ状樹脂成型品。
【請求項6】
外層樹脂における有機物チップ含有量が5〜60wt%であり、樹脂全体における有機物チップ含有量が3〜15wt%であることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかのサンドイッチ状樹脂成型品。
【請求項7】
(外層樹脂の厚さ)/(内層樹脂の厚さ)=0.4〜4であることを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかのサンドイッチ状樹脂成型品。
【請求項8】
外層樹脂と内層樹脂とがサンドイッチ状に成型されてなる樹脂成型品の製造方法であって、
前記外層樹脂材料として有機物チップを含有する材料が用いられ、
前記内層樹脂材料として有機物チップを、実質上、含有しない材料が用いられ、
成型手段として射出成型手段が用いられてなる
ことを特徴とするサンドイッチ状樹脂成型品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7いずれかのサンドイッチ状樹脂成型品の製造方法であることを特徴とする請求項8のサンドイッチ状樹脂成型品の製造方法。


【公開番号】特開2007−111990(P2007−111990A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305533(P2005−305533)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【出願人】(391011825)中央化学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】