説明

サンプリング装置、液状合成樹脂の製造方法及びそれに使用する製造管理制御装置

【課題】
自動的にサンプリングが行える装置を提供する。
【解決手段】
液状合成樹脂の製造タンク又は調合タンクに付設されるサンプリング装置であって、液状合成樹脂を貯蔵するサンプル容器と、液状合成樹脂をサンプル容器に供給するサンプル供給配管と、タンク内の液状合成樹脂を吸引してサンプル容器に供給するポンプと、サンプル容器内に設置された合成樹脂の特性値を測定する計器の検出部と、サンプル容器内の液状合成樹脂を重力又は加圧により元の液状合成樹脂のタンクに戻すように設置された洗浄用配管と、を有することを特徴とするサンプリング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング装置、液状合成樹脂の製造方法及びそれに使用する製造管理制御装置に関し、省力化が可能となるとともに品質が安定した液状合成樹脂が提供できる。
【背景技術】
【0002】
現在、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂やこれらの樹脂を使用した変性樹脂などのポリエステル系樹脂は、塗料用樹脂として広く使用されている。
【0003】
一般的なポリエステル系樹脂の製造は、ポリエステル系樹脂用原料を反応タンクに仕込み、約230℃の反応温度で反応を行い、経時でサンプリングを行い、粘度と樹脂酸価の追跡によって終点を決定して製造される。
【0004】
そのサンプリングの方法及び粘度、樹脂酸価の測定は、すべて人による手作業であるため、生産性、安全性、人為的測定誤差などの問題を含んでいる。
【0005】
従来、樹脂の製造方法として、近赤外線吸光度を測定しながら反応を行うフェノール樹脂の製造方法(特許文献1参照)、落体式粘度計や振動式粘度計を用いて反応樹脂液の粘度を逐次測定し、指定した粘度に達した時点で反応を終了する(不飽和)ポリエステル樹脂の反応制御方法(特許文献1及び2参照)が知られている。
【0006】
特許文献1に記載のものは、樹脂溶液が入った反応装置中にNIR光を照射する部位と系内から透過した又は反射した光を受光する部位を有するプローブを設置して測定する方法であり、該方法では樹脂の流動や気泡により安定な測定が困難であるといった問題点があった。
【0007】
特許文献2及び3に記載のものは、反応釜の外部で循環ポンプを使用して検出ユニットに樹脂液を供給し、粘度を測定するものであるが、樹脂の流動や気泡により安定な測定が困難であること、検出ユニットのセンサー部にゲル物が付着し易く継続的な測定が不可能であるといった問題点があった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−322054号公報
【特許文献2】特開2004−99795号公報
【特許文献3】特開2003−252973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、樹脂の流動や気泡により安定な測定が困難であること、検出部の洗浄が不十分となるため、センサー部にゲル物が付着し易く継続的な測定が不可能であるといった点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わるサンプリング装置は、液状合成樹脂の製造タンク又は調合タンクに付設されるサンプリング装置であって、液状合成樹脂を貯蔵するサンプル容器と、液状合成樹脂をサンプル容器に供給するサンプル供給配管と、タンク内の液状合成樹脂を吸引してサンプル容器に供給するポンプと、サンプル容器内に設置された液状合成樹脂の特性値を測定する計器の検出部と、サンプル容器内の液状合成樹脂を重力又は加圧により元の液状合成樹脂のタンクに戻すように設置された洗浄用配管と、を有することを特徴としている。
【0011】
サンプル容器を仲介して真空ポンプにより吸引しているので、サンプル容器内に供給される反応樹脂液は気泡がなく、更に測定時には樹脂液が流動していないので正確な特性値(例えば、粘度など)が測定できること、サンプル容器内の洗浄が容易であり次に測定される反応樹脂液と混合する恐れがないといった効果がある。
【0012】
本発明に係わるサンプリング装置は、計器が、粘度計及び近赤外分光分析計であり、粘度計が、特に回転振動型自動粘度計であり、近赤外分光分析計が、検出部が近赤外照射と受光部で構成され、該部位と近赤外線を発生する近赤外線分光分析装置とが光ファイバーケーブルを介して接続されているものである。
【0013】
特に回転振動型自動粘度計は、粘度追跡が容易であること、測定値の再現性が良いこと、温度補正が可能であること、センサー部の洗浄が容易であるといった効果がある。
【0014】
また、近赤外分光分析計は、酸価追跡が容易であること、測定値の再現性が良いこと、温度補正が可能であること、センサー部の洗浄が容易であるといった効果がある。
【0015】
本発明に係わるサンプリング装置は、サンプル容器が、透明な部分を有する。
【0016】
これにより、液状合成樹脂の状態や計器の状態が外部から視認できる。
本発明に係わるサンプリング装置は、液状合成樹脂の製造タンクが、反応タンク、攪拌機、コンデンサー、加熱及び冷却器、分離器を具備したポリエステル系合成樹脂を製造するためのバッチ式反応製造タンクである。
【0017】
これにより特に上記した効果が有効に発揮される。
本発明に係わるサンプリング装置は、洗浄用配管が、液状合成樹脂の液体相の上相である気体相の位置に配管されている。
これによりサンプル容器内の洗浄が容易となる。
本発明に係わる液状合成樹脂の製造方法は、上記のサンプリング装置を用いて液状合成樹脂を製造又は調合することを特徴としている。
【0018】
これにより液状合成樹脂の流動や気泡により安定な測定ができること、検出部の洗浄が充分であり、且つゲル物が付着し難く継続的な測定が可能であるといった効果がある。
本発明に係わる液状合成樹脂の製造方法は、ポリエステル系合成樹脂用原料を反応して液状合成樹脂を製造する方法であって、反応液状樹脂を逐次サンプリングを行い、その反応液状樹脂粘度を回転振動型自動粘度計にて測定するとともに該樹脂酸価を近赤外分光分析計にて測定する。
【0019】
特に回転振動型自動粘度計は、粘度追跡が容易であること、測定値の再現性が良いこと、温度補正が可能であること、センサー部の洗浄が容易であるといった効果がある。
【0020】
また、特に近赤外分光分析計は、酸価追跡が容易であること、測定値の再現性が良いこと、温度補正が可能であること、センサー部の洗浄が容易であるといった効果がある。
本発明に係わる製造管理制御装置は、液状合成樹脂の製造管理制御装置であって、
(1)あらかじめ液状合成樹脂の製造に適した、反応温度条件情報、反応時間条件情報、該反応温度条件情報及び該反応時間条件情報から選択された反応温度と反応時間とにおける液状合成樹脂の合格特性値範囲情報を反応開始から反応終了までの時間の経過に応じてプロットし逐次記憶する合格値記憶手段と、
(2)あらかじめ液状合成樹脂の特性値が合格値範囲を外れた場合に合格値範囲に入るように反応温度、反応時間などの補正を行うための情報を記憶する補正情報記憶手段、
(3)上記あらかじめ液状合成樹脂の製造に適した反応温度条件情報、反応時間条件情報を基に液状合成樹脂の製造を行い、反応温度条件情報及び反応時間条件情報から選択された反応温度と反応時間とにおける液状合成樹脂の実測特性値情報を、請求項1乃至7のいずれかに記載のサンプリング装置を用いて測定し、反応開始から反応終了までの時間の経過に応じてプロットし逐次記憶する実測値記憶手段と、
(4)上記(3)の実測値と上記(1)の合格特性値範囲とを同一反応時間で比較し、補正が必要であれば上記(2)の補正情報記憶手段から補正情報を適用し補正を行う反応補正制御手段と、
を有することを特徴としている。
【0021】
該製造管理制御装置により、省力化が可能となるとともに品質が安定した液状合成樹脂が提供できる。
【0022】
本発明に係わる製造管理制御装置は、液状合成樹脂が、ポリエステル系合成樹脂に適用することが好ましい。
【0023】
本発明に係わる製造管理制御装置は、特性値が、粘度及び酸価であり、粘度が、回転振動型自動粘度計で測定された値であり、酸価が、検出部が近赤外照射と受光部で構成され、該部位と近赤外線を発生する近赤外線分光分析装置とが光ファイバーケーブルを介して接続されている近赤外分光分析計で測定された値であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
サンプリング装置が最小の部品数で取付けが簡単で容易に行うことができ、サンプル容器内に供給される反応樹脂液は気泡がなく、測定時には樹脂液が流動していないので正確な特性値(例えば、粘度など)が測定できること、サンプル容器内の洗浄が容易であり次に測定される反応樹脂液と混合する恐れがないといった効果を有効に発揮させることができた。これにより、液状合成樹脂の安定製造、省力化、品質の安定化が実現できた。
【0025】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1〜5を参照して説明する。
【0026】
図1は、ポリエステル系合成樹脂を製造するためのバッチ式反応製造タンク及びそのタンクの上部に本発明のサンプリング装置が付設された1例である。
【0027】
図2は、サンプリング装置の拡大図である。
【0028】
図1において、1は反応タンク、2は攪拌機、3はコンデンサー、4は外部ジャケット、分離器(図では省略)、6は液状合成樹脂(液体相)、7は液状合成樹脂の上相(気体相)、8はサンプリング装置を示す。上記した設備以外に内部コイルなどを必要に応じて使用することができる。
【0029】
図2のサンプリング装置8は、液状合成樹脂を貯蔵するサンプル容器8−1と、液状合成樹脂をサンプル容器8−1に供給するサンプル供給配管8−2と、タンク内の液状合成樹脂を吸引してサンプル容器8−1に供給するポンプ8−3と、サンプル容器8−1内に設置された液状合成樹脂の特性値を測定する計器の検出部8−4及び8−5と、サンプル容器8−1内の液状合成樹脂を重力又は加圧により元の液状合成樹脂のタンクに戻すように設置された洗浄用配管8−6とで構成される。
【0030】
サンプリング装置8はバッチ式反応製造タンクの上部に設置することにより、気体相及び液体相に配管が容易となること、製造の邪魔にならないといった利点があるので好ましい。また、サンプリング装置8は製造の邪魔にならない程度に小型化されていることが好ましい。そのサンプル容器8−1の容量は、検出器が設置できるとともに液状合成樹脂の特性値が安定に測定できる大きさであれば特に制限されないが、通常、2リットル〜10リットルの容量である。
【0031】
サンプル容器8−1の形状は、円筒状であってその底部は、サンプルの出し入れの際に容器の底部にサンプルが溜まらないようにロート状になっている。その底部には反応タンク中の合成樹脂液に浸漬する高さにサンプル供給管8−2(液相配管)が接続され、そのサンプル供給管8−2には反応タンクの上外壁とサンプル容器8−1の底部との間にサンプリング供給バルブ8−7が設置される。
【0032】
また、サンプル容器8−1の底部には検出が終了したサンプルを反応タンクの気体相に戻す洗浄用配管8−6が接続される。この気体相に洗浄用配管8−6の先端がくるように設置させることにより気体相中の蒸気(溶媒)が洗浄用配管8−6を通ってサンプル容器内のサンプルを洗浄することができる。その洗浄用配管8−6には反応タンクの上外壁とサンプル容器8−1の底部との間に洗浄用バルブ8−9が設置される。
【0033】
上記したサンプリング供給バルブ8−7及び洗浄用バルブ8−9は相互に開閉され、手動バルブでも良いが、好ましくは自動バルブである。
サンプル容器8−1の上部には、空気吸引口が設置されその吸引口は吸引管が配置され真空ポンプ8−3が接続される。真空ポンプ8−3と吸引口の間には吸引用バルブ8−8及び吸引レベルセンサーが設けられる(図示していない)。
該真空ポンプ8−3の使用には、サンプル容器8−1の洗浄が容易であり、また液状合成樹脂をサンプル容器8−1に静置できるので液状合成樹脂の流動や気泡の影響を受けに難いといった効果がある。
【0034】
吸引初期には気泡の発生や液状合成樹脂の流動があるものの液を静置するので、数分後には気泡や液状合成樹脂の流動はなくなり、測定上支障はない。また、サンプリングごとに還流溶剤の凝縮液でセンサー部が洗浄できる。
液状合成樹脂および溶剤(蒸気)の吸引は、過吸引による真空ポンプ8−3への液吸い込みを避けるため、サンプル容器8−1の空間容積のみを減圧し、吸引することにした。真空ポンプ8−3の吸引で、液状合成樹脂はサンプル供給配管8−2及び溶剤(蒸気)は洗浄用配管8−6から供給される。
【0035】
サンプル容器8−1の上部には、気体(窒素ガスなど)供給管8−10が設置され、気体を供給することによりサンプル容器8−1内を加圧することによりサンプル容器8−1内部のサンプルを洗浄用配管8−6を通して反応タンク内に供給する。
【0036】
サンプル容器8−1には、覗き窓があり、容器内の液状合成樹脂の状態を知ることが可能である。
【0037】
サンプル容器8−1内にはサンプリングされたサンプルの液状合成樹脂特性を測定するための計器の検出部8−4や8−5が設置される。
【0038】
計器は、液状合成樹脂の種類に応じて適宜選択すればよいが、ポリエステル系合成樹脂の反応追跡は、液状合成樹脂粘度(分子量変化)と酸価(組成変化)とを測定することにより把握できる。その液状合成樹脂粘度を測定する計器として、特に回転振動型自動粘度計が好ましい。
【0039】
該計器は、回転振動式でセンサー部と駆動部を有する上部の慣性マスと検出子が、振動の回転運動をおこなっている。検出子が液体中に漬かると液の粘性により検出子と慣性マスの振幅が小さくなり、この振幅変化をセンサー部が検出し、粘度値に変換するというものである。また、本自動粘度計には、温度計が付いており、検出子近辺の温度を知ることができ、必要に応じて温度補正をおこなう。回転振動型自動粘度計としては、例えば、CBC株式会社製(商品名、FVM−80A―EXHTタイプ)のものを使用することができる。
【0040】
酸価を測定する計器としては、近赤外分光分析器が好ましい。
本分光分析計の測定は、近赤外光を分析計から光ファイバーを通してサンプルに透過させ、そのスペクトル変化を検出器で読み取り、アナログ /デジタル変換及びフーリエ変換演算処理を行うことで連続スペクトルが得られる。このスペクトルをあらかじめ作成しておいた検量線を用い分析することで、各成分の値が出力される。
近赤外分光分析器としては、例えば、横河電機株式会社製(商品名、NR800タイプ)のものを使用することができる。
【0041】
サンプリング装置8の操作について以下に説明する。
ポンプ8−3、気体供給8−10、測定用計器8−4、8−5は常備稼動しているものとする。下記説明において、初期は特に断りのない限りバルブは全て閉じているものとして説明する。
【0042】
1、サンプル供給バルブ8−7を開ける、
2、吸引バルブ8−8を開ける、
吸引は、例えば、液状合成樹脂の粘度に応じて減圧(通常、―0.05〜−0.1MPa)して必要量サンプル容器中にサンプルが供給するように行う、
また、吸引は、過吸引による真空ポンプへの液吸い込みを避けるため、サンプル容器の空間容積のみを減圧し、吸引する、
3、サンプル供給バルブ8−7を閉じる、
4、吸引バルブ8−8を閉じる、
吸引初期には気泡の発生や液状合成樹脂の流動があるものの液を静置することにより、数分後には気泡や液状合成樹脂の流動はなくなり測定値が安定する、
5、計器8−4、8−5で特性値を測定する、
6、測定終了後、
7、バルブ8−10を開ける、
8、バルブ8−7を開ける、
サンプル容器内のサンプルを反応タンクの液体相に排出する、
9、バルブ8−10を閉じる、
10、バルブ8−7を閉じる、
11、バルブ8−9を開ける、
12、吸引バルブ8−8を開ける、
気体相(溶媒蒸気など)をサンプル容器8−1内に供給し、サンプル容器8−1、検出部8−4、8−5などの洗浄を行う、
13、バルブ8−8を閉じる、
14、バルブ8−9を閉じる、
15、バルブ8−7を開ける、
16、バルブ8−10を開ける、
洗浄液を反応タンクに戻す、
17、必要に応じてこの洗浄操作9〜16を繰返し行う、
18、次のサンプリングまでバルブ8−7を閉じ、バルブ8−9を閉じておく。
【0043】
上記した操作において、特にサンプリングに影響がない限りバルブ開(閉)の順序を前後に変更することができる。
【0044】
例えば、(1)最初にサンプル供給バルブ8−7を閉じておき、次いで吸引バルブ8−8を開けて、サンプル容器中を減圧とした後、吸引バルブ8−8を閉じた後に、サンプル供給バルブ8−7開けてサンプルをサンプル容器8−1に供給すること、(2)上記操作において、特性値の測定終了後に、バルブ8−9を開けてサンプルを気体相に戻すことも可能である。
【0045】
上記したバルブの開閉、ポンプ、気体供給、測定用計器などの稼動は全てコンピュターにより制御することができる。コンピュターは、例えば、バルブの開閉時期、ポンプの吸引量、吸引程度、気体供給量、測定計器の開始時期などのサンプリングに必要な情報を最初に記憶させておいて、そのコンピュターから出される各指令信号に従って、実施する機械や装置に順序通りに動作を行うことができる。
【0046】
本発明の液状合成樹脂の製造方法は、上記のサンプリング装置を用いて液状合成樹脂を製造又は調合したものである。具体的には、図1に記載のバッチ式反応装置にポリエステル系合成樹脂用原料及び溶媒を配合し、反応温度約230℃の温度に加熱し、反応液状樹脂を逐次サンプリングを行い、その反応液状樹脂粘度を回転振動型自動粘度計にて測定するとともに該樹脂酸価を近赤外分光分析計にて測定する。
【0047】
また、反応の制御において、機械や装置などの誤操作や反応時点における液状合成樹脂特性値が合格値から外れた際の対策などをコンピュターに記憶させておいて、コンピュターから出される指令に基づいて補正などを行うことができる。
【0048】
本発明の液状合成樹脂は、製造反応温度で液状のものであり、例えば、原料が粉末であっても反応させる際には液状のものである。液状は、原料が溶融して液状となったもの、溶媒に分散もしくは溶解した液状状態のものが包含される。洗浄の観点から有機溶剤や水などの溶媒を使用したものが特に好ましい。
【0049】
液状合成樹脂として、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂やこれらの樹脂を使用した変性樹脂などのポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0050】
本発明の液状合成樹脂の製造管理制御装置は、
(1)あらかじめ液状合成樹脂の製造に適した、反応温度条件情報、反応時間条件情報、該反応温度条件情報及び該反応時間条件情報から選択された反応温度と反応時間とにおける液状合成樹脂の合格特性値範囲情報を反応開始から反応終了までの時間の経過に応じてプロットし逐次記憶する合格値記憶手段と、
(2)あらかじめ液状合成樹脂の特性値が合格値範囲を外れた場合に合格値範囲に入るように反応温度、反応時間などの補正や原料による補正を行うための情報を記憶する補正情報記憶手段、
(3)上記あらかじめ液状合成樹脂の製造に適した反応温度条件情報、反応時間条件情報を基に液状合成樹脂の製造を行い、反応温度条件情報及び反応時間条件情報から選択された反応温度と反応時間とにおける液状合成樹脂の実測特性値情報を、請求項1乃至7のいずれかに記載のサンプリング装置を用いて測定し、反応開始から反応終了までの時間の経過に応じてプロットし逐次記憶する実測値記憶手段と、
(4)上記(3)の実測値と上記(1)の合格特性値範囲とを同一反応時間で比較し、補正が必要であれば上記(2)の補正情報記憶手段から補正情報を適用し補正を行う反応補正制御手段と、
を有する。
【0051】
液状合成樹脂としては、上記した液状合成樹脂が挙げられるが、特にポリエステル系合成樹脂(アルキド樹脂や変性樹脂含む)が好ましい。
また、特性値としては、粘度及び酸価が好ましく、粘度は回転振動型自動粘度計で測定された値、酸価は検出部が近赤外照射と受光部で構成され、該部位と近赤外線を発生する近赤外線分光分析装置とが光ファイバーケーブルを介して接続されている近赤外分光分析計で測定された値が好ましい。
【0052】
図3に本発明の液状合成樹脂の製造管理制御装置の構成図を示す。
【0053】
図3の合格値記憶手段は、例えば、過去に製造した製品(合格品)の液状合成樹脂の反応温度、反応時間において経時的に変化する液状合成樹脂特性値(例えば、粘度、酸価など)を入力する手段や出力する手段及び記録する媒体を備えたコンピュターに記録又は備えておくことができる。
【0054】
また、液状合成樹脂特性値は製品に悪影響の範囲で合格値の許容幅を設定しておくことが好ましい。
【0055】
図3のサンプリング装置8は、上記した本発明のサンプリング装置8が使用される。該サンプリング装置8は、液状合成樹脂の製造タンク又は調合タンクに付設されるサンプリング装置8であって、液状合成樹脂を貯蔵するサンプル容器8−1と、液状合成樹脂をサンプル容器8−1に供給するサンプル供給配管8−2と、タンク内の液状合成樹脂を吸引してサンプル容器8−1に供給するポンプ8−3と、サンプル容器8−1内に設置された液状合成樹脂の特性値を測定する計器8−4、8−5の検出部と、サンプル容器8−1内の液状合成樹脂を重力又は加圧により元の液状合成樹脂の反応タンクに戻すように設置された洗浄用配管8−2と、を有する。
【0056】
該サンプリング装置8はコンピユターによって制御することができる。
【0057】
そのコンピュター制御によるフローチャートを図4に示す。
【0058】
図4の流れの概要は次の通りである。
【0059】
図5に記載の反応条件で液状合成樹脂の製造をおこなう場合について説明する。
【0060】
1回目のサンプリングで、サンプル供給バルブ8−7が開き、真空ポンプ8−3の吸引により反応タンク中の液体相がサンプル容器8−1に供給される。
供給されたサンプルは計器8−4、8−5などにより液状合成樹脂の特性値が測定される。
測定された1回目の実測値は入力手段、出力手段、記憶手段を備えたコンピュター(実測値記憶手段)に入力され記憶される。
測定終了後、サンプルは反応タンクに戻され、サンプリング容器8−1は反応タンクの上相である有機溶剤蒸気により洗浄され、次のサンプルの分析に影響がでない程度にまで洗浄が繰返しおこなわれる。
上記したフローチャートにおいて、特にサンプリングに影響がない限りバルブ開(閉)の順序を前後に変更することができる。
【0061】
例えば、(1)最初にサンプル供給バルブ8−7を閉じておき、次いで吸引バルブ8−8を開けて、サンプル容器中を減圧とした後、吸引バルブ8−8を閉じた後に、サンプル供給バルブ8−7開けてサンプルをサンプル容器8−1に供給すること、(2)上記操作において、特性値の測定終了後に、バルブ8−9を開けてサンプルを気体相に戻すことも可能である。
実測値記憶手段に記憶されたデーターは、液状合成樹脂製品の合格値許容幅と比較し、反応補正制御手段により補正が必要か必要でないかを判断する。
実測された特性値が合格値の許容幅の範囲内であれば、反応補正制御部は稼動せず予め設定された条件で続いて液状合成樹脂の製造をおこなう。
【0062】
特性値が許容幅の範囲外か許容範囲内の限界値に近い場合は、反応補正制御部を稼動して許容範囲の中央値になるように補正する。
【0063】
反応補正制御手段は、予め液状合成樹脂の特性値に及ぼす要因を選択しておき、そしてその因子を変動させることにより制御できる。
【0064】
具体的には、液状合成樹脂の酸価が許容範囲よりも高い場合は、その液状合成樹脂の酸価を変動させる攪拌制御、温度制御、気体制御などにより補正が可能である。また、粘度のバランスを考えながら酸価を低くする原料(例えば、アルコールなど)などを配合することにより酸価の補正が可能である。
【0065】
また、液状合成樹脂の粘度も同様に許容範囲よりも低い場合には、その液状合成樹脂の粘度を変動させる攪拌制御、温度制御、気体制御などにより補正が可能である。
また、攪拌制御は、例えば、供給電圧などを変化させることにより攪拌機モーターの回転数を変化させたりすることにより制御できる。温度制御は、熱媒供給量変動、熱媒温度変動、ジャケットバルブ開閉などにより制御できる。
このような制御はシーケンスにより制御することができる。
【0066】
本発明を構成する実測値記憶手段、合格値記憶手段、反応補正制御手段は1台のコンピュターを用いて制御することが可能である。
【0067】
例えば、1台のコンピュターに実測値の入力、出力及び記憶が可能な実測値記憶手段部と、合格値の入力、出力及び記憶が可能な合格値記憶手段部と、反応補正条件の入力、出力及び記憶が可能な反応補正制御手段部とを備え、これらを構成する手段部が双方間で入出力が可能なものが使用できる。
【0068】
上記1回目のサンプリングが終了した後、1回目と同様の方法で2回目、3回目、・・・・のサンプリングがおこなわれ、必要に応じて反応の補正も同時におこなわれる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
特に、塗料、接着剤、インキ等で使用される液状合成樹脂のサンプリング装置及びそれを用いてなる製造管理制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例に係わるバッチ式反応製造タンクの構成図である。
【図2】図1のサンプリング装置の拡大図である。
【図3】本発明に係わる製造管理制御装置の構成図である。
【図4】サンプリング制御によるフローチャートである。
【図5】液状合成樹脂製造のサンプリング工程を示す。
【符号の説明】
【0071】
1、反応タンク
2、攪拌機
3、コンデンサー
4、外部ジャケット
6、液体相
7、気体相
8、サンプリング装置
8−1、サンプル容器
8−2、サンプル供給配管
8−3、ポンプ
8−4、計器の検出部
8−5、計器の検出部
8−6、洗浄用配管
8−7、サンプリング供給バルブ
8−8、吸引用バルブ
8−9、洗浄用バルブ
8−10、気体供給バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状合成樹脂の製造タンク又は調合タンクに付設されるサンプリング装置であって、液状合成樹脂を貯蔵するサンプル容器と、液状合成樹脂をサンプル容器に供給するサンプル供給配管と、タンク内の液状合成樹脂を吸引してサンプル容器に供給するポンプと、サンプル容器内に設置された液状合成樹脂の特性値を測定する計器の検出部と、サンプル容器内の液状合成樹脂を重力又は加圧により元の液状合成樹脂のタンクに戻すように設置された洗浄用配管と、を有することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項2】
計器が、粘度計及び近赤外分光分析計である請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項3】
粘度計が、回転振動型自動粘度計である請求項1又は2に記載のサンプリング装置。
【請求項4】
近赤外分光分析計が、検出部が近赤外照射と受光部で構成され、該部位と近赤外線を発生する近赤外線分光分析装置とが光ファイバーケーブルを介して接続されている請求項1又は2に記載のサンプリング装置。
【請求項5】
サンプル容器が、透明な部分を有する請求項1乃至4のいずれかに記載のサンプリング装置。
【請求項6】
液状合成樹脂の製造タンクが、反応タンク、攪拌機、コンデンサー、加熱及び冷却器、分離器を具備したポリエステル系合成樹脂を製造するためのバッチ式反応製造タンクである請求項1乃至5のいずれかに記載のサンプリング装置。
【請求項7】
洗浄用配管が、液状合成樹脂の液体相の上相である気体相の位置に配管されている請求項1乃至6のいずれかに記載のサンプリング装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のサンプリング装置を用いて液状合成樹脂を製造又は調合することを特徴とする液状合成樹脂の製造方法。
【請求項9】
ポリエステル系合成樹脂用原料を反応して液状合成樹脂を製造する方法であって、反応液状樹脂を逐次サンプリングを行い、その反応液状樹脂粘度を回転振動型自動粘度計にて測定するとともに該樹脂酸価を近赤外分光分析計にて測定する請求項8に記載の液状合成樹脂の製造方法。
【請求項10】
液状合成樹脂の製造管理制御装置であって、
(1)あらかじめ液状合成樹脂の製造に適した、反応温度条件情報、反応時間条件情報、該反応温度条件情報及び該反応時間条件情報から選択された反応温度と反応時間とにおける液状合成樹脂の合格特性値範囲情報を反応開始から反応終了までの時間の経過に応じてプロットし逐次記憶する合格値記憶手段と、
(2)あらかじめ液状合成樹脂の特性値が合格値範囲を外れた場合に合格値範囲に入るように反応温度、反応時間などの補正や原料による補正を行うための情報を記憶する補正情報記憶手段、
(3)上記あらかじめ液状合成樹脂の製造に適した反応温度条件情報、反応時間条件情報を基に液状合成樹脂の製造を行い、反応温度条件情報及び反応時間条件情報から選択された反応温度と反応時間とにおける液状合成樹脂の実測特性値情報を、請求項1乃至7のいずれかに記載のサンプリング装置を用いて測定し、反応開始から反応終了までの時間の経過に応じてプロットし逐次記憶する実測値記憶手段と、
(4)上記(3)の実測値と上記(1)の合格特性値範囲とを同一反応時間で比較し、補正が必要であれば上記(2)の補正情報記憶手段から補正情報を適用し補正を行う反応補正制御手段と、
を有することを特徴とする製造管理制御装置。
【請求項11】
液状合成樹脂が、ポリエステル系合成樹脂である請求項10に記載の製造管理制御装置。
【請求項12】
特性値が、粘度及び酸価である請求項10に記載の製造管理制御装置。
【請求項13】
粘度が、回転振動型自動粘度計で測定された値である請求項10又は12に記載の製造管理制御装置。
【請求項14】
酸価が、検出部が近赤外照射と受光部で構成され、該部位と近赤外線を発生する近赤外線分光分析装置とが光ファイバーケーブルを介して接続されている近赤外分光分析計で測定された値である請求項10又は12に記載の製造管理制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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