説明

サンプリング装置

【課題】 ダストを含有するガス中のガス状物質を連続的且つ的確にサンプリングすることができ、前記ガスが流通するプラントの運転状態の連続モニタリングにも資することができるサンプリング装置を提供する。
【解決手段】
サンプリング対象であるガス状物質及びダストを含むガスが流通する管路1と、開口面が管路1の軸方向に沿うように配設されたフィルタが管路1の内部に臨み、前記フィルタの開口を介して前記ガスの流速よりも小さい濾過速度で前記ガスの一部を吸引してサンプリングガスを採取するサンプリング部2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプリング装置に関し、特に高温、高圧、高ダストのガス中に含まれるガス状物質のサンプリングに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラント内の管路を流通するガス中のガス状物質を分析することを目的として前記ガスの一部を採取して分析するサンプリングが行われている。かかるサンプリングの対象となるガス状物質を含有するガスがダストも含有するものである場合、サンプリング部のフィルタを介して前記プラントの管路を流通するガスからサンプリングガスを採取し、その後サンプリングガスのバブリングによる濃縮を行う湿式吸引法によりガス状物質を収集している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、従来のサンプリング装置におけるフィルタは基本的にガス流れ方向に直交する状態でガス中のダストを捕捉する構造となっているので、フィルタは短時間で目詰りを生起してしまう。この結果、フィルタを頻繁に取り替え、清掃する必要があり、プラントの連続モニタリングシステムを構築する際の障害となっていた。さらに、サンプリングガスはダストが捕捉された状態のフィルタを介して収集されるので、サンプリング対象であるガス状物質がダストに付着・吸着されてしまい、この結果分析の精度を低下させる原因になるという問題も生起している。かかる問題は、サンプリングガス中に含まれるガス状物質が微量である場合により顕著なものとなる。
【0004】
また、上述の湿式吸引法は、吸収液を入れた洗浄瓶に、所定の低圧(通常常圧)に調整したサンプリングガスを流通させてサンプリング対象であるガス状物質を濃縮・収集する手法である。そこで、当該プラントの管路を流通するガスが高圧の場合、湿式吸引を行う前に、サンプリング部で採取したサンプリングガスを減圧装置により所定の低圧(常圧)に減圧する必要がある。
【0005】
減圧装置においてサンプリングガスを急激に減圧した場合には、断熱膨張によりサンプリングガスのガス温度が低下することによりサンプリング対象であるガス状物質が析出し、サンプリングガスが接触する管路等に付着する虞がある。
【0006】
ちなみに、高効率の発電を実現する技術として注目されている石炭ガス化ガス複合発電(IGCC)設備においては、石炭ガス化ガス中のガス状物質の挙動を知ることが、環境への影響や当該設備を構成する構成材料への影響等を知る上で肝要である。
【0007】
そこで、IGCC設備の管路を流通する石炭ガス化ガスを採取してそのサンプリングガス中に含まれるガス状物質を分析している。
【0008】
ところが、かかるIGCC設備における石炭ガス化ガスは高温、高圧、高ダストのガスであるため、これをサンプリングしてガス状物質を分析する際には上述の如き問題を内包するものとなってしまう。すなわち、高温、高圧、高ダストのガスからのガス状物質の適切なサンプリング技術、特に連続モニタリングに適用することができるサンプリング技術は未だ未開発であり、サンプリングの際にはJISで定められている洗浄瓶に湿式吸引する排ガスサンプリングを応用した方法が用いられているが、次のような問題を有するものとなっている。
【0009】
1)ダストの分離・除去の際、フィルタの目詰まりが生じる。
2)分離したダストに、サンプリング対象のガス状物質が付着、吸着する。
3)所定の低圧(例えば常圧)までの減圧の際、急激な減圧のため、断熱膨張により、サンプリングガスのガス温度が低下し、サンプリング対象のガス状物質が管路等へ付着する。
4)高温、高圧であるため、石英ガラスやPTFE(テフロン(登録商標))等が使用できない。
【0010】
なお、高温、高圧、高ダストのガスを対象としたサンプリング装置を開示する先行技術文献として前述の特許文献1が存在するが、この特許文献に開示する技術では上記1)乃至4)の問題は何れも解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−218141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は,上記従来技術に鑑み、高温、高圧、高ダストのガスをはじめ、広く、ダストを含有するガス中のガス状物質の成分を連続的且つ的確にサンプリングすることができ、前記ガスが流通するプラントの運転状態の連続モニタリングにも資することができるサンプリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、サンプリング対象であるガス状物質及びダストを含むガスが流通する管路と、開口面が前記管路の軸方向に沿うように配設されたフィルタが前記管路の内部に臨み、前記フィルタの開口を介して前記ガスの流速よりも小さい濾過速度で前記ガスの一部を吸引してサンプリングガスを採取するサンプリング部とを有することを特徴とするサンプリング装置にある。
【0014】
本態様によれば、ダストを含むガスが流通する管路の軸方向に開口面が沿うようにフィルタを配設するとともに前記ガスの流速よりも小さい濾過速度でフィルタを介して前記ガスの一部をサンプリングガスとして吸引するようしたので、ほとんどのダストはガスとともに管路を流れ、この結果フィルタの表面にはダストが付着しにくく、例え付着してもガス流によりフィルタから剥離されてガス流とともに流通される。この結果、フィルタに対するダストの付着を可及的に防止してその堆積を有効に防止することができる。
【0015】
かくして、ダストに対するガス状物質の混入を可及的に防止して当該サンプリングガス中のガス状物質の高精度の分析を行うことができる。
【0016】
また、フィルタ上にダストが堆積しないので、連続サンプリングが可能となり前記ガス状物質の連続サンプリングに資することができる。
【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載するサンプリング装置において、前記サンプリング部は、前記管路の途中に配設した前記管路と同径の円筒状のフィルタと、該フィルタの外周面を取り囲むように配設するとともにその両端部が前記管路に一体化されて前記フィルタの外周面とその内周面との間に空間を形成する外管とを有することを特徴とするサンプリング装置にある。
【0018】
本態様によれば、フィルタと管路とが同径となるので、管路が小径の場合に適用して良好なものとなる。
【0019】
本発明の第3の態様は、請求項1に記載するサンプリング装置において、前記フィルタは、その表面が前記管路の内周面と面一になるように前記管路の一部を切り欠いて配設されていることを特徴とするサンプリング装置にある。
【0020】
本態様によれば、管路の一部を切り欠いてフィルタを配設しているので、管路が大径の場合に適用して良好なものとなる。
【0021】
本発明の第4の態様は、請求項1に記載するサンプリング装置において、前記フィルタは、前記管路の径方向に関して前記管路内を移動可能に形成したことを特徴とするサンプリング装置にある。
【0022】
本態様によれば、管路の径方向におけるフィルタの開口の位置を自由に調節することができるので、前記径方向におけるガス濃度の分布が存在する場合に適用して良好なものとなる。
【0023】
本発明の第5の態様は、第1乃至第4の態様の何れか一つに記載するサンプリング装置において、前記サンプリング部で採取したサンプリングガスの圧力を所定の圧力に調整する圧力調整手段を備えたことを特徴とするサンプリング装置にある。
【0024】
本態様によれば、サンプリング部で採取したサンプリングガスの圧力を所定の圧力に調整することができるので、管路を流通するガスの圧力が変動しても一定の圧力のサンプリングガスを提供することができる。
【0025】
本発明の第6の態様は、第1乃至第5の態様の何れか一つに記載するサンプリング装置において、前記サンプリング部で採取したサンプリングガスを、前記ガス状物質が付着しないように加熱しつつ所定の圧力に減圧する減圧手段を有することを特徴とするサンプリング装置にある。
【0026】
本態様によれば、サンプリングガスの圧力を低減させることができるので、管路を流通するガスが高圧であることに起因して採取直後のサンプリングガスが高圧である場合に、このサンプリングガスを所定の圧力(例えば常圧)まで低減してガス状物質の採取を行う場合に適用して有用なものとなる。この際の加熱によりサンプリングガスの温度低下を適度に調整することにより、ガス状物質の凝集等に起因するサンプリング系の管路等への付着を未然に防止して高精度の分析に寄与し得るからである。
【0027】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載するサンプリング装置において、前記減圧手段の減圧部は、前記サンプリングガスが導入される減圧管路を螺旋状に巻回して構成したことを特徴とするサンプリング装置にある。
【0028】
本態様によれば、サンプリングガスが導入される減圧管路を螺旋状に巻回して減圧部を形成したので、ガス状物質が付着しないように徐々にサンプリングガスを減圧することができる。また、減圧手段の大型化を招来することなく容易に必要な減圧管路長を確保することができる。
【0029】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載するサンプリング装置において、前記サンプリング部と前記減圧部との間に設けた三方弁を介して逆洗用のスチームを前記サンプリング部又は減圧部に選択的に供給するスチーム供給手段を有することを特徴とするサンプリング装置にある。
【0030】
本態様によれば、三方弁を介して逆洗用のスチームをサンプリング部又は減圧部に選択的に供給することができるので、サンプリング部又は減圧部を独立して洗浄することができる。特にスチーム供給設備が併設されているIGCC設備等に適用して有用なものとなる。
【0031】
本発明の第9の態様は、第1乃至第8の態様の何れか一つに記載するサンプリング装置において、少なくとも前記サンプリングガスと接触する部分はサルフィナートで形成したことを特徴とするサンプリング装置にある。
【0032】
本態様によれば、サンプリングガスと接触する部分をサルフィナートで形成したので、サンプリングガスが高温、高圧であってもサンプリングガス中のガス状物質のサンプリング系の管路等に対する付着を防止し得る。これは、ガス状物質が微量である場合に特に顕著な効果となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、フィルタの開口面が、ガス状物質及びダストを含むガスが流通する管路の軸方向に沿うように配設するとともに、フィルタの開口を介して前記ガスの流速よりも小さい濾過速度で前記ガスの一部を吸引してサンプリングガスとして採取するようにしたので、フィルタの表面にダストが付着しにくく、例え付着しても濾過速度が小さいので、管路を流通するガスによりフィルタに付着したダストが吹き飛ばされ、結果としてフィルタ表面に対するダストの堆積を回避することができる。
【0034】
この結果、サンプリングガス中のガス状物質がダストに捕捉されるのを回避して、ガス状物質の正確な分析を行うことができるばかりでなく、サンプリングガスの連続的な採取が可能になり、IGCC等、監視対象となる設備の連続モニタリングに資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係るサンプリング装置を示すブロック線図である。
【図2】図1に示すサンプリング装置におけるサンプリング部の具体的な構成を示す第1の実施例を示す図で、(a)は縦断面図、(b)はA−A’線矢視図、(c)はB−B’線矢視図である。
【図3】図1に示すサンプリング装置におけるサンプリング部の具体的な構成を示す第2の実施例を示す図で、(a)は縦断面図、(b)はC−C’線矢視図、(c)はD−D’線矢視図である。
【図4】図1に示すサンプリング装置におけるサンプリング部の具体的な構成を示す第3の実施例を示す図で、(a)は縦断面図、(b)はE−E’線矢視図、(c)はF−F’線矢視図である。
【図5】図1に示すサンプリング装置におけるサンプリング部の具体的な構成を示す第4の実施例を示す図で、(a)は縦断面図、(b)はG−G’線矢視図、(c)はH−H’線矢視図である。
【図6】サンプリング装置における減圧装置の他の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明の実施の形態に係るサンプリング装置を示すブロック線図である。本形態はIGCC設備に適用したガス状物質のサンプリング装置として説明するが、勿論これに限定するものではない。ダストを含むガスからガス状物質をサンプリングする装置として一般に適用し得る。ここで、ガス状物質とはガス中に含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物をはじめ水銀等のガス状微量物質も含む。また、適用対象を高温、高圧、高ダストのガスに限定する必要もない。ただ、高温、高圧、高ダストのガス中からのガス状物質のサンプリングに適用した場合に特に顕著な作用・効果を奏することができる。ちなみに、IGCC設備における管路を流通するガスは高温(例えば200℃)、高圧(例えば2.0MPa)、高ダストのガスである。したがって、本形態の場合には、高圧(例えば2.0MPa)のサンプリングガスを常圧(0.1MPa)まで減圧してガス状物質を濃縮収集するようになっている。
【0038】
図1に示すように、サンプリング装置は、IGCC設備における石炭ガス化ガスが流通する母管である管路1、この管路1に配設されたサンプリング部2、減圧装置3及びガス状物質吸収部4を有している。これらのうち、サンプリング部2は、後に詳述するが、管路1の軸方向に開口面が沿うように配設されたフィルタ(図1には図示せず。以下、同じ)を有しており、ガスの流速よりも小さい濾過速度でフィルタを介して前記ガスの一部をサンプリングガスとして吸引するように構成してある。減圧装置3はサンプリング部2で収集したサンプリングガスを導入して所定の圧力(通常は常圧)に減圧するものであり、本形態においてはサンプリングガスが導入される減圧管路3aを螺旋状に巻回して構成してある。このように減圧装置3を螺旋状の減圧管路3aで形成することは必須ではない。ただ、螺旋状の減圧管路3aとすることで減圧装置3の大型化を招来することなく必要な減圧管路長を容易に確保することができる。
【0039】
また、減圧装置3はサンプリング部2から減圧装置3に至るサンプリング管路7及び減圧装置3からガス状物質吸収部4に至るサンプリング管路8とともにその外周を容器6で覆ってあり、減圧に伴う断熱膨張によりサンプリングガス中に含有されているガス状物質が減圧管路3a及びサンプリング管路7、8の内周面に付着しないように加熱している。さらに詳言すると、容器6と減圧管路3a及びサンプリング管路7,8との間の空間にはスチーム供給部9からスチーム供給管路15及び入口側の開閉弁16を介して所定温度のスチームが供給されて充満されている。一方、温度が低下したスチーム等は、スチーム排出管路17及び出口側の開閉弁18を介して外部に排出するとともに、新たなスチームを供給することにより前記空間を常に一定温度に維持するようになっている。
【0040】
ここで、サンプリングガスが接触するサンプリング系の管路の内周面、すなわちサンプリング管路7,8及び減圧管路3aの内周面はサルフィナート(登録商標)加工してある。このことにより、ガス状物質のサンプリング管路7,8及び減圧管路3aの内周面に対する付着を防止している。
【0041】
ガス状物質吸収部4は、サンプリングガスからガス状物質を抽出して収集するものであり、本形態では湿式の吸収部として構成してある。すなわち、図示は省略するが、ガス状物質の吸収液を入れたガラス製のガス洗浄瓶にサンプリングガスを流通させることにより前記吸収液にガス状物質を濃縮して収集している。
【0042】
圧力調整弁5はサンプリング管路7においてサンプリング部2と減圧装置3との間に配設してあり、減圧装置3に流入するサンプリングガスの圧力が一定(例えば1.5MPa)になるように調節している。すなわち、管路1を流通する石炭ガス化ガスの圧力は運転状態等により変動するが、このように石炭ガス化ガスの圧力が変動しても減圧装置3に流入するサンプリングガスの圧力を一定に調節する。かかる圧力調整弁5は必ずしも必要ではないが、圧力調整弁5を設けた場合には、母管を流通するガスの圧力が変動する設備において安定的なサンプリングを行い得るものとなる。
【0043】
スチーム供給部9は、サンプリング管路7において圧力調整弁5と減圧装置3との間に配設されている三方弁10を介してサンプリング部2又は減圧装置3にスチームを供給してサンプリング部2のフィルタ又は減圧装置3の減圧管路3aの洗浄も行う。
【0044】
このように、本形態では洗浄剤としてスチームを用いたが、これに限るものではない。例えば窒素ガス等で洗浄するようにしても良い。ただ、設備によってはスチーム源を備えているものもあり、この場合にはスチームを用いるのが合理的である。ちなみに,IGCC設備の場合、スチームは、例えば蒸気タービンから容易に得ることができる。
【0045】
バイパス管路11は、減圧装置3のサンプリング管路8から排出されるサンプリングガスのうち余剰のサンプリングガスを、ガス状物質吸収部4を迂回させて流通させる。すなわち、ガス状物質吸収部4に供給されるサンプリングガスのガス量は予め定められた少量であるので、その余剰分はバイパス管路11を介して迂回させている。ここで、バイパス管路11の途中にはバイパス弁12が配設されており、バイパス弁12を開状態(通常は開状態)にすることによりサンプリングガスを迂回させるようになっている。他のバイパス管路13は何らかの原因で減圧装置3の出口圧力が所定値を越えたときガス状物質吸収部4へのサンプリングガスの流入を回避させるべくサンプリングガスを迂回させるためのものである。そこで、バイパス管路13の途中には安全弁14が配設されており、安全弁14を開状態にすることによりサンプリングガスがガス状物質吸収部4を迂回するようになっている。バイパス管路11,13によりガス状物質吸収部4を迂回したサンプリングガスは下流側で管路1を流通する石炭ガス化ガスに合流される。
【0046】
かかる本形態によれば、高温、高圧、高ダストの石炭ガス化ガスが流通する管路1の軸方向に開口面が沿うようにフィルタを配設するとともに前記ガスの流速よりも小さい濾過速度でフィルタを介して前記ガスの一部をサンプリングガスとして吸引するようにしたので、ほとんどのダストはガスとともに管路1を流れ、この結果フィルタの表面にはダストが付着しにくく、例え付着してもガス流によりフィルタから剥離されてガスとともに流通される。この結果、フィルタに対するダストの付着を可及的に防止してその堆積を有効に防止することができる。
【0047】
かくして、ダストに対するガス状物質の吸着等を可及的に防止してガス状物質の高精度の分析を行うことができ、同時に連続サンプリングが可能となり前記ガス状物質の連続的なサンプリングも可能になる。
【0048】
なお、ガス状物質吸収部4には、収集したガス状物質の量を計測する計測手段を接続しても良い。このように計測手段と一体化することにより、所定のガス状物質の連続モニタリングを容易に実現し得る。
【0049】
次に、サンプリング部2の詳細な構造を第1乃至第4の実施例として図2乃至図5に基づき説明する。
【0050】
<第1の実施例>
図2は第1の実施例に係るサンプリング部のフィルタ部分を抽出して示す図で、(a)は縦断面図、(b)はA−A’線矢視図、(c)はB−B’線矢視図である。これらの図に示すように、本実施例に係るサンプリング部2のフィルタ20は、その開口面が管路1の軸方向に平行になるように配設され、しかもその表面が管路1の内周面と面一になるように管路1の一部を切り欠いて配設されている。さらに詳言すると、本実施例におけるフィルタ20は管路1の一部を切り欠いた孔に開口面が管路1の軸方向と平行になるように嵌め込んであり、かかる状態のフィルタ20の外周側を、管路1に固着されたカバー21で覆ってある。この結果、フィルタ20の外側の表面とカバー21の内周面との間には空間が形成され、この空間にサンプリング管路7の一端部が開口している。ここで、フィルタ20及びカバー21の内周面等、サンプリングガスが接触する部分は、サンプリング管路7の内周面等と同様のサルフィナート加工が施してあり、ガス状物質の付着を可及的に防止し得る構造となっている。
【0051】
かかるフィルタ20を有するサンプリング部2においては、管路1を流通するガスがフィルタ20を介して管路1の軸方向と直交する方向に吸引される。この結果フィルタ20で濾過されたガスの一部がサンプリングガスとしてカバー21との間の空間を介してサンプリング管路7に流入する。このときフィルタ20を介したサンプリングガスの濾過速度を、管路1を流通するガスの流速に対し充分小さくしておくことによりガス中に含まれたダスト19がフィルタ20の表面に堆積するのを可及的に防止し得る。濾過速度がガス流速に対して充分に小さい場合、ダスト19はそのほとんどがガス中に浮遊した状態で管路1をガスとともに流通し、例えフィルタ20の表面に付着してもサンプリング管路7側(図2(a)中の下側)に向かうサンプリングガスの流速が小さいので、フィルタ20上で管路1を流通するガス流に晒されているダスト19はそのうちフィルタ20から剥離されガス流に乗って排斥されるからである。
【0052】
このときのフィルタ20を介した濾過速度は、上記実施の形態(図1参照。以下同じ)の如く減圧装置3を減圧管路3aで形成したサンプリング装置の場合、減圧管路3aの入口側の圧力と出口側の圧力との差及び減圧管路3aの管路長に応じて一意に定まる。したがって、入口側の圧力と出口側の圧力との差が規定されている場合には、濾過速度に応じた圧力差となるように減圧管路3aの螺旋状の管路長を定めれば良い。
【0053】
入口側の圧力が例えば1.5MPaで、出口側の圧力が例えば0.1MPaである図1に示す上記実施の形態の場合は両者の差が1.4MPaであるので、この場合の管路長に対する減圧管路3aの出口におけるサンプリングガス量の関係から所望のサンプリングガス量に応じた管路長を選定すれば良い。ちなみに、上記実施の形態の場合、管路1におけるガス流速が10m/secであるのに対しサンプリングガスの濾過速度は0.01m/secになるように設定してある。すなわち、ガス流速に対する濾過速度を1/1000としているが、勿論かかる関係に限定するものではない。フィルタ20に対するダスト19の堆積防止という観点からはガス流速に対する濾過速度は小さいほど望ましいが、濾過速度が小さくなるほどフィルタ20が大きくなってガス状物質を収集するサンプリング系が大型化するという問題を生起する。そこで、両者を勘案して適切な濾過速度を設定する。
【0054】
かかる構造においても長時間に亘ってサンプリングを行った場合、フィルタ20上にダスト19が薄く付着する事態が考えられるが、この場合にはフィルタ20の逆洗を行えば良い。ちなみに、上記実施の形態の場合、スチーム供給部9から三方弁10を介してスチームをフィルタ20に噴射することにより良好にその逆洗を行うことができる。
【0055】
なお、フィルタ20に関して、その開口面が管路1の軸方向に沿うように配設されている点、及び管路1を流通するガスの流速と濾過速度との関係は、以下で説明する第2乃至第4の実施例でも同様である。
【0056】
さらに、本実施例によれば、管路1の一部を切り欠いてフィルタ20を配設しているので、管路1が大径の場合に良好に適用し得る。
【0057】
<第2の実施例>
図3は第2の実施例に係るサンプリング部のフィルタ部分を抽出して示す図で、(a)は縦断面図、(b)はC−C’線矢視図、(C)はD−D’線矢視図である。これらの図に示すように、フィルタ30は、その開口面が管路1の内周面と面一になるように管路1に配設されているが、これは管路1の途中に管路1と一体となって配設されているガスの採取部32を利用して設置してある。すなわち、採取部32を貫通するサンプリング管路7の端部に容器状のカバー31を取付け、このカバー31の開口を塞ぐようにフィルタ30を取付けてその表面を管路1の内部に臨ませてある。
【0058】
本実施例でも第1の実施例と同様の作用・効果を奏するとともに、管路1が大径の場合に良好に適用し得る。
【0059】
<第3の実施例>
図4は第3の実施例に係るサンプリング部のフィルタ部分を抽出して示す図で、(a)は縦断面図、(b)はE−E’線矢視図、(C)はF−F’線矢視図である。これらの図に示すように、フィルタ40は管路1と同径の円筒状の部材で、その開口面が管路1の軸方向に平行になるように管路1の途中に配設されている。この結果、フィルタ40の開口面は管路1の内周面と面一になっている。フィルタ40の外周面は外管41で囲まれ、この部分が二重管構造となっている。フィルタ40を介してサンプリングガスを導入するサンプリング管路7の一端部は外管41の内周面とフィルタ40の外周面との間の空間に開口しており、フィルタ40で濾過したサンプリングガスを前記空間を介して導入する。
【0060】
本実施例でも基本的な作用・郊果は第1の実施例と同様である。ただ、本実施例の場合は、管路1が小径の場合に良好に適用し得る。
【0061】
<第4の実施例>
図5は第4の実施例に係るサンプリング部のフィルタ部分を抽出して示す図で、(a)は縦断面図、(b)はG−G’線矢視図、(C)はH−H’線矢視図である。これらの図に示すように、本実施例は、図3に示す第2の実施例と同様に、フィルタ50が管路1の途中に配設されているガスの採取部32を利用して設置してある。すなわち、採取部32を貫通するサンプリング管路7の端部に容器状のカバー51を取付け、このカバー51の開口を塞ぐようにフィルタ50を取付けてその開口面を管路1の内部に臨ませてある。この結果、フィルタ50は、他の実施例と同様に、その開口面が管路1の軸方向に沿うように配設されて管路1の内部に臨んでいるが、さらに本実施例ではサンプリング管路7が管路1の径方向に移動可能に構成してある。したがって、フィルタ50はその開口面がカバー51と一体となって管路1の径方向に沿って移動させることにより、管路1の径方向におけるフィルタ50の位置を調整することができる。
【0062】
この結果、本実施例は管路1の径方向に関してガスの密度分布が存在する場合等に特に有用なものとなる。フィルタ50を最適な位置に占位させることができるからである。
【0063】
なお、上記各実施例では、フィルタ20,30,40,50の開口面が管路1の軸方向と平行になるように構成したが、これは正確に平行である必要はなく、若干傾斜していても軸方向に沿うような態様で配設されていればフィルタ20等の表面におけるダスト19の堆積を良好に防止し得る。
【0064】
また、本発明において減圧装置3は必須ではない。管路1を流通するガスが低圧で、サンプリング部2で採取するサンプリングガスが所定圧以下(例えば常圧)である場合には減圧装置3を設ける必要がない場合がある。この場合にはサンプリング管路7に配設したポンプ等によりサンプリング部2を介して直接サンプリングガスを吸引する。このときの濾過速度はポンプの吸引力等で調整すれば良く、管路1を流通するガスの流速と濾過速度との関係を上述の実施例の如く設定すればフィルタ20等の表面におけるダスト19の堆積を良好に防止し得る。
【0065】
さらに、上述の実施の形態では、減圧装置3における加熱手段としてスチームを用いたが、これに限るものではない。例えば図6に示すように、容器6と減圧管路3aとの間の空間において減圧管路3aの外周にヒータ60を配設し、このヒータ60を加熱手段とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、高温、高圧、高ダストのガスからガス状物質をサンプリングする産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 管路
2 サンプリング部
3 減圧装置
3a 減圧管路
4 ガス状物質吸収部
5 圧力調整弁
9 スチーム供給部
10 三方弁
19 ダスト
20、30、40、50 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング対象であるガス状物質及びダストを含むガスが流通する管路と、
開口面が前記管路の軸方向に沿うように配設されたフィルタが前記管路の内部に臨み、前記フィルタの開口を介して前記ガスの流速よりも小さい濾過速度で前記ガスの一部を吸引してサンプリングガスを採取するサンプリング部とを有することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載するサンプリング装置において、
前記サンプリング部は、前記管路の途中に配設した前記管路と同径の円筒状のフィルタと、該フィルタの外周面を取り囲むように配設するとともにその両端部が前記管路に一体化されて前記フィルタの外周面とその内周面との間に空間を形成する外管とを有することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載するサンプリング装置において、
前記フィルタは、その表面が前記管路の内周面と面一になるように前記管路の一部を切り欠いて配設されていることを特徴とするサンプリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載するサンプリング装置において、
前記フィルタは、前記管路の径方向に関して前記管路内を移動可能に形成したことを特徴とするサンプリング装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載するサンプリング装置において、
前記サンプリング部で採取したサンプリングガスの圧力を所定の圧力に調整する圧力調整手段を備えたことを特徴とするサンプリング装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載するサンプリング装置において、
前記サンプリング部で採取したサンプリングガスを、前記ガス状物質が付着しないように加熱しつつ所定の圧力に減圧する減圧手段を有することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項7】
請求項6に記載するサンプリング装置において、
前記減圧手段の減圧部は、前記サンプリングガスが導入される減圧管路を螺旋状に巻回して構成したことを特徴とするサンプリング装置。
【請求項8】
請求項7に記載するサンプリング装置において、
前記サンプリング部と前記減圧部との間に設けた三方弁を介して逆洗用のスチームを前記サンプリング部又は減圧部に選択的に供給するスチーム供給手段を有することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一つに記載するサンプリング装置において、
少なくとも前記サンプリングガスと接触する部分はサルフィナート加工したことを特徴とするサンプリング装置。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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