説明

サンプルの高速採取および分析装置、ならびに使用方法

本発明は、流体サンプル内の検体の存在を判定するための装置および方法に向けられている。この装置は、サンプル採取ウエルと、サンプルをサンプル採取ウエルへと絞るための圧搾プレートと、ランスを駆動するプランジャと、検査素子を収容する検査区画を使用する。さらに、この装置は、後の確認検査のために流体サンプルの一部をリザーバに保存する。プランジャがサンプル採取ウエルへと下げられるとき、装置のランスが、サンプル出口を覆っている脆弱材料に孔を開ける。このようにしてサンプル出口が開かれたとき、流体サンプルが、サンプル採取カップから検査区画へと流れる。一実施形態において、キャップが装置へ装着されるにつれ、プランジャが下降する。この装置は、唾液および口内液などの幅広くさまざまな流体サンプルにおいて検体の存在を検出するために有用である。さらに本発明は、このような装置の使用方法、およびこのような装置を含んでなるキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象とする検体について流体を高速に分析し、かつそれら流体を保存するための装置に向けられている。
【背景技術】
【0002】
以下に示す背景技術は、本発明の理解を読者にとって容易にしようとするものであり、これらを従来技術であると自認するものではない。
【0003】
禁止薬物の使用は、我々の社会においてすでに認識されている問題であり、かつますます大きな問題となってきている。2003年に米国保健福祉省(Department of Health and Human Services)は、1950万人のアメリカ人すなわち12歳以上の人口の8.2パーセントが、現用の禁止薬物使用者であると推定した。禁止薬物の現用とは、米国保健福祉省の調査インタビューに先立つ1ヵ月の間に、禁止薬物を使用していることを意味する。マリファナが、もっとも広く使用されている禁止薬物であることが明らかにされ、その割合は6.2パーセント(1460万人)であった。230万人(1.0パーセント)が、現用のコカイン使用者であると推定され、そのうちの604,000人が、クラックを使用しているとされた。100万人が、幻覚剤を使用しているとされ、ヘロインの現用使用者が119,000人存在すると推定されている。
【0004】
この問題と闘い、かつこの問題を監視するために、雇用、学校、スポーツ、および法的処置などのさまざまな状況において、薬物検査が標準的な手続きとなってきている。この取り組みを容易にするため、薬物検査産業が勃興してきている。この産業は、さまざまな薬物検査用製品を提供している。典型的な製品は、分析検査を取り入れてなる尿採取カップである。これらの装置は、複雑であって使用が困難または面倒である可能性があり、あるいは乱用薬物の最近の使用を隠そうと試みる被験者が、サンプルに混ぜ物をするという特有の問題を引き起こす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、サンプルの採取および検査を実行するためのより優れた方法および装置への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体サンプルにおいて存在が疑われる検体を検出するための装置に向けられている。一実施形態において、この装置は、唾液または口内液などの体液中の対象とする検体を検出するためのものである。この装置は、サンプル採取ウエルを位置させるためのポートを含むケーシングを有している。サンプル採取ウエルは、確認サンプルを集めて保存するための室を有しており、さらに上方位置と下方位置とを有するプランジャを含む。いくつかの実施形態において、サンプル採取ウエルが、上部室および下部室を有しており、プランジャが下方位置にあるときに下部室が存在し、さらに分析しようとする流体サンプルを集める。さらに装置は、脆弱材料によって封止されたサンプル出口を有しており、サンプル出口が開かれたとき、サンプル採取ウエルと検査区画との間に液体連絡がもたらされる。さらに装置は、流体サンプルを採取するための吸収部材を有しているサンプルアプリケータから装置へと、ユーザがサンプルを絞ることができるようにする、圧搾プレートを有している。いくつかの実施形態において、ランスが、プランジャの下端に取り付けられている。サンプル出口は、プランジャを下方位置へと動かすことによって開かれ、これによりランスが脆弱材料を破ってサンプル出口を開き、その結果サンプル採取ウエルと検査区画との間に液体連絡がもたらされる。ねじ式のキャップが使用される実施形態において、プランジャが、キャップをねじ込むことによって下げられ、キャップの底部が、プランジャまたはプランジャへと接続された部品と相互作用し、プランジャを下方位置へと押す。このような装置を含んでなるキット、およびこのような装置を使用する方法も、提供される。
【0007】
第1の態様において、本発明は、流体サンプルにおいて存在が疑われる検体を検出するための検査装置を提供する。この装置は、サンプル採取ウエルのためのポートを有するケーシングを有している。さらに装置は、少なくとも1つの検査素子を収容している検査区画を含む。サンプル採取ウエルが、ポート内に位置しており、圧搾プレートと上方位置および下方位置を有するプランジャとを有している。さらに装置は、確認サンプルを保存するための室を有している。この装置には、さらにランスが含まれており、一実施形態において、ランスがプランジャによって担持されている。さらに装置は、脆弱材料によって封止されたサンプル出口を有し、サンプル出口は、開かれたときにサンプル採取ウエルと検査区画との間に液体連絡をもたらす。さらに装置は、サンプル採取ウエルのためのキャップを有しており、キャップがサンプル採取ウエルに装着されたとき、キャップの一部分が、プランジャと相互作用してプランジャを上方位置から下方位置へと移動させる。
【0008】
用語「プランジャ」は、2つの部品を接触させて装置の動作においてある機能を果たすため、装置の一部分を通過して動く装置の部品を指す。一実施形態において、プランジャが、装置の円形または円筒形の部位において移動する。いくつかの実施形態において、プランジャがランスを担持し、ランスを脆弱材料へと届けるべく機能し、脆弱材料がランスによって貫かれる。「ランス」とは、脆弱なシールを貫く物体である。ランスは、典型的には鋭利であり、あるいは他の方法で脆弱なシールを貫く能力を有している。「ポート」とは、ケーシングがサンプル採取ウエルと連動する装置の部位である。ポートは、サンプル採取ウエルが可逆に嵌まり込む開口であってよく、あるいはサンプル採取ウエルとケーシングとを、単一の部品として製造してもよい。ポートは、サンプル採取ウエルと検査区画との間のアクセスも提供する。
【0009】
「圧搾プレート」とは、流体サンプルで満たされたサンプルアプリケータを圧迫または圧搾して、アプリケータからサンプルを絞ることができる表面を指す。圧搾プレートは、流体サンプルをアプリケータからサンプル採取ウエルへと通過させることができるよう、開口または穴を有することができる。圧搾プレートは、サンプル採取ウエル内に位置することができるが、絞られたサンプルが採取ウエルへと流れ得る他の場所に配置することも可能である。一実施形態において、圧搾プレートが、サンプル採取ウエル内に位置しており、上部室と下部室とを分割しており、流体サンプルが上部室から下部室へと流れることができる1つ以上の穴または開口を有している。サンプル採取器が圧搾プレートへと押し付けられたとき、サンプルが圧搾プレートの開口を通過し、下部室へと流れる。
【0010】
「検査素子」は、検査を実行する任意の素子であってよい。一実施形態において、検査素子が試験ストリップである。試験ストリップは、免疫学的検定を実行するため、試験ストリップ上に特定の結合対のメンバーを含むことができる。試験ストリップは、検査が完了したときに、検出可能な色の変化または検出可能な他の信号をもたらす、化学的な試験ストリップであってよい。これらに限られるわけではないが、体液あるいは生物学的組織または体液から由来したサンプルなど、さまざまなサンプルを、本発明において使用することができる。例えば、サンプルは、唾液、血液、血清、血漿、尿、糞便、髄液、膣塗抹標本、粘液、および組織であってよい。一実施形態において、圧搾プレートが、上部室を下部室から分割しており、上部室から下部室への液体サンプルの流れのための開口を有している。
【0011】
「サンプル出口」が、サンプル採取ウエルから検査区画への液体連絡をもたらす。装置のサンプル出口は、脆弱な材料によって封止されており、検定を開始するために、プランジャによって脆弱な材料へと下げられるランスによって脆弱なシールが貫通または破壊されるまでは、サンプル採取ウエルと検査区画との間の液体連絡は生じない。
【0012】
一実施形態において、さらにサンプル採取ウエルが、プランジャが上方位置にあるときに存在する下部室と、確認サンプルが保存される上部室とを有している。一実施形態において、サンプル採取ウエルが、プランジャ、上部室および下部室、圧搾プレート、ならびにサンプル出口を含むが、他の実施形態において、これら構成部品がサンプル採取ウエルの外に位置してもよい。一実施形態において、圧搾プレートが、上部室を下部室から分割しており、上部室から下部室への液体サンプルの流れのための開口を有している。ランスを、プランジャ(例えば、プランジャの底面)に担持させることができ、下方へと突き出させて、脆弱材料を破るためにサンプル出口に垂直に整列させることができる。サンプル採取ウエルおよびキャップは、相補的な係合するねじ山を有することができる。一実施形態において、キャップが、キャップがサンプル採取ウエルへと装着されたときに、プランジャと相互作用する下向きの突起を担持している。突起がプランジャと相互作用する(そして、プランジャを押す)ために通過する開口を、圧搾プレートに備えることができる。「相補的な係合するねじ山」とは、キャップおよびサンプル採取ウエルが、相補的であるねじ山をそれぞれ有していて、サンプル採取ウエル上でのキャップの回転およびねじ山の係合によって嵌まり合いを得るために、キャップを、サンプル採取ウエルへとねじ込むことができ、液体サンプルが、キャップの周囲から漏れないことを意味する。
【0013】
本発明のあるいくつかの実施形態において、プランジャが下方位置にあるとき、下部室が存在しない。これは、下部室がプランジャの下方に存在し、プランジャが下げられてランスが脆弱材料を貫くときに見えなくなるためである。脆弱材料は、ランスによって貫くことができる任意の材料であってよい。脆弱材料の例としては、紙、ろうでコートした紙、プラスチックでコートした紙、プラスチックフィルム、プラスチック製の薄いシート、粘着テープ、箔、ろうを塗った箔、およびプラスチックでコートされた箔が挙げられる(しかしながら、これらに限られるわけではない)。
【0014】
いくつかの実施形態において、検査素子が、試験ストリップである。試験ストリップは、試験ストリップ上に固定された特定の結合分子を有することができるが、化学的検査を有することも可能である。流体サンプルは、(例えば)口内液、唾液、血液、血清、血漿、尿、糞便、髄液、膣塗抹標本、粘液、および組織など、任意の流体であってよい。「唾液」とは、唾液腺の分泌物を指す。「口内液」は、口腔内に存在する任意の流体であり、唾液が口内液の主たる成分である。検査素子が存在しているあらゆる検体を、本発明を使用して検出することができる。例えば、検体は、薬物(乱用薬物など)、ホルモン、たんぱく質、ペプチド、核酸分子、病因学的因子、および特定の結合対のメンバーであってよい。さらなる実施形態において、プランジャが上方位置にあるとき、サンプル採取ウエルに上部室および下部室が存在し、プランジャが下方位置にあるとき、下部室が存在しない。他の実施形態において、ランスが脆弱材料に孔を開けるとき、サンプル採取ウエルが封止される。サンプル採取ウエルを、プランジャの下部に存在するシールによって封止することができ、かつ/またはリザーバあるいはリザーバの周囲に位置するシールによって封止することができる。このようにして、プランジャが下げられたときに、シール本体がサンプル採取ウエルへとシールをもたらす。
【0015】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の装置とサンプルアプリケータとを有するキットを提供する。本発明の一実施形態において、サンプルアプリケータは、吸収部材およびハンドルを有している。吸収部材は、スポンジ、発泡体、または液体を吸収する任意の材料であってよい。吸収部材を、被験体の唾液の分泌を促す溶液に浸すことができ、あるいはそのような溶液で前処理することができる。さらにキットは、装置の使用についての指示を含むことができる。一実施形態において、指示は、流体サンプル中の検体を検出すべく装置を使用するためのものである。
【0016】
他の態様において、本発明は、流体サンプル中の検体の存在を検出する方法を提供する。この方法は、流体サンプルを本明細書に記載の装置へと加えることと、サンプル採取ウエルへとキャップを装着することと、プランジャと係合させてプランジャを押し下げ、ランスによって脆弱材料に孔を開けて、流体サンプルを検査区画へと解放することと、流体サンプル中の検体の存在を判定することとを含む。あるいくつかの実施形態において、サンプルを加えることが、サンプルアプリケータを流体サンプルに接触させることと、サンプルアプリケータをサンプルウエルへと挿入することと、サンプルアプリケータを圧搾プレートに押し付けて、流体サンプルをサンプル採取ウエルへと絞ることとを含む。絞られた流体サンプルが、サンプル採取ウエルの下部室へと流入し、流体の一部は、プランジャの少なくとも1つの縁の周囲の上部室から下部室へと流入する。
【0017】
本発明の方法の他の実施形態において、流体サンプルがサンプル採取ウエルへと加えられた後に、キャップがサンプル採取ウエルへと装着され、キャップが装着されると、プランジャが下降して脆弱材料に孔を開け、サンプル採取ウエルと検査区画との間に流体連絡がもたらされる。あるいくつかの実施形態において、プランジャが脆弱材料に孔を開けたときに、流体サンプルが、下部室から検査区画へと流れる。さらに、サンプル採取ウエルおよびキャップは、相補的な係合するねじ山を有することができる。キャップがサンプル採取ウエルへとねじ込まれるとき、キャップの一部分が、プランジャへと力をもたらすために相互作用し、プランジャを下降させて脆弱材料に孔を開ける。一実施形態において、プランジャが下方位置にあるとき、下部室は存在しない。プランジャへと加えられる力は、キャップの底部からプランジャの背面への直接の力であってよい。
【0018】
上述した本発明の概要は、本発明を限定するものではなく、本発明の他の特徴および利点が、以下の詳細な説明ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照するが、添付の図面には、本発明を実施することができる具体的な実施形態が、例として示されている。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態も使用可能であり、構造的な変更を行なうことも可能であることを、理解すべきである。
【0020】
本発明の装置および方法は、流体サンプル中の検体の容易な検出を可能にする。さらに本発明の装置によれば、所望であれば、別の検査原理を使用する後の確認検査のために、装置内のリザーバに多量のサンプルを容易に保存しておくことができる。すなわち、確認サンプルが、汚染から安全に保護される。さらに、ユーザが、サンプル採取ウエルへとサンプルを加えてサンプル採取ウエルを満たすことができるが、ユーザがサンプル採取ウエルへとキャップを装着してプランジャを下げ、これによって脆弱材料に孔が開いて、流体サンプルが検査区画へと解放されるまでは、検定が開始されないため、本発明の装置によって、ユーザが検定の開始時期を制御することができる。図1から図6は、本発明を説明する目的で、本発明のあるいくつかの実施形態のみを示しており、本発明をこれらの実施形態に限定するものではない。本明細書の開示を参照することによって、当業者であれば、他の実施形態を理解することができるであろう。
【0021】
サンプル分析および保存装置
本発明は、流体サンプル中の検体を検出するため、および確認検査用としてサンプルの一部を保存するための検査装置を提供する。図1から図6は、本発明の装置100の一実施形態を示しており、この装置は、射出成形による上部210および基部215を有するケーシング110を備える。ケーシングは、検査区画360を有しており、検査区画360内に、本発明の検定を実行するための検査素子が位置している。さらに、ポート120が設けられており、ポート120内に、サンプル採取ウエル130が位置している。一実施形態において、サンプル採取ウエルが、プランジャ240と、確認サンプルを保存するための上部室320と、圧搾プレートに対する圧搾または圧迫によってサンプルアプリケータからサンプルを絞るための圧搾プレート230と、脆弱な材料270によって封止され、開かれたときにサンプル採取ウエルと検査区画との間に液体連絡をもたらすサンプル出口350とを有している。他の実施形態において、これら構成要素が、サンプル採取ウエル内には存在しなくてもよい。図4から図6に示した実施形態において、圧搾プレートが、上部室を下部室から分割しており、液体サンプルが上部室から下部室へと流れるよう、開口520を有している。さらに、プランジャが、上方位置および下方位置の両方を有している。プランジャが上方位置にあるとき、下部室330が、サンプル採取ウエル内に存在する(図3および図4を参照)。プランジャが下方位置にあるとき、下部室はもはや存在しない(図5および図6を参照)。換言すると、プランジャが下方位置へと移動するとき、結果として空間がプランジャによって占められることになるため、下部室が消滅する。
【0022】
上部室および下部室が存在せず、ただ1つの部屋がそれらの機能を実行する装置の実施形態も、可能である。さらに、圧搾プレートが、サンプル採取ウエルから取り外され、流体サンプルが検査区画へと移される地点に位置してもよい。さらに、(図面に示されているように)サンプル採取ウエル内に存在し得るプランジャに、ランスを担持させることができるが、ランスは、サンプル採取ウエルの内部または外部に、別個の部品として存在してもよい。
【0023】
プランジャは、射出成形またはプレス成形のプラスチックなど、さまざまな材料で製作することができる。プランジャは、キャップと反対側であってサンプル出口に最も近い部位である前面と、キャップに最も近いプランジャ本体の部位である後部とを有している。プランジャは、前面側にランスを担持することができる。さらにプランジャは、キャップに向かって延びるアームを有することができ、キャップの底部が、プランジャのアームと連動し、プランジャへと力を加えて、プランジャおよびランスを脆弱材料へと駆動する。ランスは、サンプル出口を覆うために選択された脆弱材料を破るために、十分に鋭くかつ硬い。ランスは、射出成形プラスチックのプランジャの一体部分として製造でき、あるいはプラスチック製のプランジャに組み込むことができる。
【0024】
一実施形態において、装置が、サンプル採取ウエルのためのキャップ220を有している(図2、図5および図6を参照)。一実施形態において、サンプル採取ウエルとキャップとが、相補的な係合するねじ山を有している。キャップは、キャップの底部からの下方への突起など、プランジャと相互作用する突起510(図5および図6を参照)を有することができる。突起は、キャップの底部中央からの延伸された突起であってよいが、他の実施形態において、キャップの中央または側方から延びるアームであってよく、あるいはキャップから延びて直接的または間接的にプランジャと相互作用する他の突起であってよい。圧搾プレートが、突起がプランジャと相互作用するために通過する開口520を有している。キャップがサンプル採取ウエルへとねじ込まれたとき、キャップの下向きの突起が、プランジャと接触し、プランジャを上方位置から下方位置へと移動させる。これにより、下部室が消滅する。
【0025】
あるいくつかの実施形態において、プランジャが、自身の底面にランス340を担持している。プランジャの底部のランスは、サンプル出口に向かって下向きに突き出すことができ、脆弱材料を破るため出口に整列している。一実施形態において、プランジャが、出口の面に垂直に整列している。プランジャが下方位置へと動かされるとき、ランスが脆弱材料へと動いて孔を開け、サンプル採取ウエルのサンプルが(例えば、下部室から)検査区画へと流入する。脆弱材料は、紙、ろうでコートした紙、プラスチックでコートした紙、プラスチックフィルム、プラスチック製の薄いシート、粘着テープ、箔、ろうを塗った箔、およびプラスチックでコートされた箔など、任意の好都合な材料で製作できる。脆弱材料を、接着剤にて取り付けることができる。
【0026】
一実施形態において、さらにランスが、下縁にシールを取り付けられることができ、プランジャが下方位置にあるとき、サンプル採取ウエルと検査区画との間のシールが達成される。シールは、ゴム、プラスチック、またはプランジャが下方位置にあるときに出口を覆ってシールを形成できる任意の材料で、製作できる。
【0027】
図2、図3、図4および図5に示されているように、プランジャの周縁にOリング380が設けられる。しかしながら、任意のシール機構を使用することも可能である。図4は、サンプル採取ウエルの壁面の円錐状のショルダ420を示している。一実施形態において、ショルダの上方における採取ウエルの直径が、下部室の直径よりもわずかに大きい。プランジャは、Oリングおよびプランジャが、サンプル採取ウエルと検査区画との間にシールを生み出すよう、下部室の直径にぴったりと嵌まり込んで、下部室の底部に当接するような寸法とされている。したがって、サンプル採取ウエルが、採取ウエル内に残るサンプルのためのリザーバとなり、採取ウエル内に残るサンプルを装置内に保存して、確認検査に使用することができる。プランジャは、上方位置にあるときは、サンプル採取ウエルの直径に緩く嵌まり込んでおり、プランジャの縁とサンプル採取ウエルの壁面との間に小さな空間430を残し、この空間を通って流体サンプルの一部が下部室へと流入する。さらにサンプルは、いくつかの実施形態において、プランジャおよび/または圧搾プレートに存在している開口を通って流れることができる。さらにプランジャは、自身の前面にシールを有することができ、プランジャが脆弱材料を貫いたとき、プランジャが、サンプル採取ウエルの底部に一致するまで前進を続け、プランジャの側面とサンプル採取ウエルの下部室の壁面との間にシールが形成されるとともに、サンプル出口の周囲にもシールが形成される。すなわち、プランジャは、この目的のために自身の前面にOリングまたは他の種類のシールを担持することができる。シールが、サンプル採取ウエルの下部室の底部に存在するように構成することも可能であり、プランジャが下方位置にあるとき、この構成部品が、サンプル出口を閉じるべくシールを形成する。
【0028】
本発明の装置の他の実施形態において、検査区画が、例えば試験ストリップである少なくとも1つの検査素子280を収容している。後でさらに詳細に説明される種々の検体試験ストリップを、本発明に取り入れることができる。プランジャが下方位置へと押し込まれて、脆弱なシールが破られたとき、サンプルが試験ストリップに接触する。脆弱なシールが破られたとき、下部室内に存在するサンプルが、サンプル出口を通って流れて、芯紙(wicking paper)260に接触する。芯紙が、毛管作用によって、サンプルを試験ストリップ(後述)のサンプル導入端へと移動させ、検査が開始される。図示の実施形態は芯紙を使用しているが、芯紙を使用せず、サンプルが検査素子へと直接流れることができるようにすることも可能である。検査結果を、ケーシングの上部に設けた窓370を通して読み取ることができる。どこに試験結果の線および管理用の線が予想されるのかをユーザに知らせるため、窓の隣に印を設けることができる。
【0029】
サンプルアプリケータ
サンプルアプリケータを、本発明の装置に供給することができる。一実施形態において、サンプルアプリケータが、吸収部材140およびハンドル144を有している。吸収部材は、当技術分野において一般に使用されている、医療用品質のスポンジまたは発泡材料で製作できる。しかしながら、綿または紙、あるいは適当な吸収能力を有する任意の材料など、他の多くの材料が、吸収部材として使用するために利用可能である。ハンドルは、吸収部材の操作を容易にするため、おおむね剛体である。ハンドルは、プラスチック、木材、金属、またはボール紙など、当技術分野において一般的に使用されている任意の材料で製作することができる。一実施形態において、ハンドルがリム142(図1)を有しており、このリムに吸収部材が取り付けられている。いくつかの実施形態において、吸収部材が、被験体の唾液の分泌を促進する材料に浸され、あるいはそのような材料で前処理されている。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、サンプル適用ウエルの上部室が、リブを有することができる。アプリケータを圧搾プレートに対して十分に押し付け、次いでリブの下方へと嵌まるようにひねったときに、アプリケータのリムがリブの下方で係止されるように、サンプルアプリケータを構成することができる。これにより、アプリケータの吸収部材に含まれているサンプルを可能な限り多く絞るため、十分な時間にわたるアプリケータの吸収部材の十分な圧迫を、保証することができる。
【0031】
試験ストリップ
さまざまな検査素子を、本発明に取り入れることができる。検査素子の一種類が、試験ストリップである。検体試験ストリップが、乱用薬物または健康状態を示唆する代謝産物など、サンプル内の対象の検体を検出するため、免疫学的検定または化学的検査の形式など、種々の形式で提供される検査素子である。さらに、試験ストリップを、非競合的検定または競合的検定の形式で提供することができる。いくつかの形式において、試験ストリップが、サンプル適用領域、試薬領域、および検査結果領域を有する吸収性材料である。サンプルが、サンプル適用領域へと加えられ、毛管作用によって試薬領域へと流れる。試薬領域において、サンプルが、検体(サンプル中に存在するならば)の検出に必要な試薬に溶解して、混ざりあう。今や試薬を担持しているサンプルが、続いて検査結果領域へと流れる。検体についての特定の結合分子など、さらなる試薬が、検査結果領域に固定されている。これらの試薬は、検体(存在するならば)あるいは試薬領域からの第1の試薬の1つと反応および結合する。検出可能な信号を形成するためのラベルを、試薬領域または別個のラベル領域に存在させることができる。
【0032】
非競合的な形式では、サンプルが検体を含む場合に信号が生成され、検体が存在しない場合には、信号は生成されない。競合的な形式では、検体が存在しない場合に信号が生成され、検体が存在する場合に信号が生成されない。
【0033】
検査素子が試験ストリップである場合、吸収性または非吸収性の材料で製作することができる。試験ストリップは、2つ以上の材料を含んでもよく、その場合、それらは流体連絡状態におかれる。例えば、ニトロセルロース上に重ねられたフィルター紙など、試験ストリップの一材料を、試験ストリップの他の材料に重ねてもよい。これに代え、あるいはこれに加えて、試験ストリップが、1つ以上の材料を含む領域を、1つ以上の異なる材料を含む領域を後続させて備えてもよい。この場合、領域が、流体連絡状態にあり、部分的に重なり合っていてもよく、部分的に重なり合っていなくてもよい。取り扱い時の強度を高めるため、試験ストリップの1つまたは複数の材料を、支持体またはプラスチック製支持シートなどの固体表面に結合させてもよい。
【0034】
検体が、検体と特定的に反応する1つ以上の酵素によるなど、信号生成システムによって検出される実施形態において、信号生成システムの1つ以上の構成要素を、上述のように特定の結合メンバーを試験ストリップ材料に結合させる場合と同様のやり方で、試験ストリップ材料の検体検出領域に結合させることができる。これに代え、あるいはこれに加えて、試験ストリップのサンプル適用領域、試薬領域、または検体検出領域に含まれ、あるいは試験ストリップの全体にわたって含まれる信号生成システムの構成要素を、試験ストリップの1つ以上の材料に含浸させてもよい。これは、そのような構成要素の溶液を表面に塗布することによって、あるいは1つ以上の試験ストリップ材料をそのような構成要素の溶液に浸漬させることによって、達成することができる。1つ以上の塗布または1つ以上の浸漬に続いて、試験ストリップ材料を乾燥させる。これに代え、あるいはこれに加えて、試験ストリップのサンプル適用領域、試薬領域、または検体検出領域に含まれ、あるいは試験ストリップの全体にわたって含まれる信号生成システムの構成要素を、ラベル付き試薬について説明したように、試験ストリップの1つ以上の試験ストリップ材料の表面へと塗布してもよい。
【0035】
領域は、次のとおり構成することができる。すなわち、サンプル適用領域、1つ以上の試薬領域、1つ以上の検査結果判定領域、1つ以上の管理領域、1つ以上の改竄領域、および流体吸収領域である。検査結果判定領域が、管理領域を含む場合、好ましくは、管理領域は、検査結果判定領域の検体検出領域に後続する。これらの領域のすべて、またはそれらの組み合わせを、単一の材料からなるただ1つのストリップに設けることができる。あるいは、各領域が、異なる材料で作成され、流体連絡状態に一体に連結される。例えば、種々の領域は、直接流体連絡してもよく、間接的に流体連絡してもよい。この場合、種々の領域を、流体連絡状態であるように端部対端部で接合することができ、流体連絡状態であるように重ね合わせることができ、あるいは、フィルター紙、ガラス繊維、またはニトロセルロースなどの好ましくは吸収性である接続材料など、他の部材によって連通させることができる。接続材料を使用する場合には、接続材料が、端部対端部で接続された領域またはそのような領域を含む材料から、流体連絡状態にない端部対端部で接続された領域またはそのような領域を含む材料へと、流体を流体連絡させることができ、あるいは重なり合っている(これに限られるわけではないが、上部から底部へなど)が流体連絡状態にはない領域、またはそのような領域を含む材料を、接続することができる。
【0036】
試験ストリップが改竄管理領域を備える場合には、改竄管理領域を、結果判定領域の前または後に配置することができる。そのような試験ストリップの結果判定領域に管理領域が存在する場合には、改竄管理領域は、好ましくは管理領域の前に位置するが、必ずしもそのようでなくてもよい。試験ストリップが、改竄された検体および/または管理の割り出しのための管理試験ストリップである本発明の実施形態において、改竄管理領域を、管理領域の前または後に配置することができるが、好ましくは改竄管理領域が、管理領域の前である。改竄の検定に使用される試薬は、検定の結果を変化させるためにサンプルへと物質を加えることなどによって、検定の目的を無にする企てが被験体によってなされたか否かを判断する。
【0037】
本発明の装置にて検査することができるサンプルとしては、生物学的起源の液体(例えば、ケーシング流体または臨床サンプル)が挙げられる。液体サンプルは、糞便、生物組織、および食品サンプルを含む、固体または半固体のサンプルから由来することができる。そのような固体または半固体のサンプルを、例えば混合、切断、浸漬、培養、溶解、または適切な液体(例えば、水、リン酸緩衝生理食塩水、または他の緩衝液)中での固体サンプルの酵素による消化など、任意の適切な方法によって液体サンプルへと変換することができる。「生物学的サンプル」としては、例えば人間または動物からの尿、唾液、血液および血液の成分、脳脊髄液、膣塗抹標本、精液、糞便、汗、滲出液、組織、器官、腫瘍、組織および器官の培養、細胞培養、またはこれらからの調整済みの媒体など、生きている動物、植物、および食品から由来するサンプルが挙げられる。好ましい生物学的サンプルは、尿である。食品サンプルとしては、加工済み食品成分または最終製品、肉、チーズ、ワイン、ミルク、および飲料水からのサンプルが挙げられる。植物サンプルとしては、任意の植物、植物組織、植物細胞培養、およびこれらからの調整済みの媒体から由来するものが挙げられる。「環境サンプル」は、環境から由来するサンプルである(例えば、湖沼または他の水域からの水サンプル、廃液サンプル、土壌サンプル、地下水、海水、および湧き水)。下水および関連の排泄物も、環境サンプルに含めることができる。
【0038】
任意の検体を、本発明および適切な検査素子を利用して検査することができる。特に、本発明を、口内液中の乱用薬物の検出に使用することができる。「乱用薬物」(drug of abuse:DOA)は、非医学的な理由(通常は、精神状態を変化させる目的)で摂取される薬物である。そのような薬物の乱用は、肉体的および精神的障害につながる可能性があり、(いくつかの物質については)依存性、中毒、および/または死につながる可能性がある。DOAの例としては、コカイン、アンフェタミン(例えば、ブラックビューティー(black beauties)、ホワイトベニー(white bennies)、デキストロアンフェタミン(dextroamphetamines)、デキセドリン(dexies)、ビーンズ(beans))、メタンフェタミン(クランク(crank)、メタドン(meth)、クリスタル(crystal)、スピード(speed))、バルビツレート(New Jersey州NutleyのRoche Pharmaceuticals社のバリウム(Valium:登録商標))、鎮静剤(sedatives)(すなわち、睡眠補助薬)、リセルグ酸ジエチルアミド(LSD)、抑制剤(depressants)(鎮静剤(downers)、精神安定剤(goofballs)、バルビツール剤(barbs)、ブルーデビル(blue devils)、イエロージャケット(yellow jackets)、ルード(ludes))、三環系抗鬱薬(TCA、例えばイミプラミン(imipramine)、アミトリプチリン(amitriptyline)、およびドクサピン(doxepin))、フェンシクリジン(PCP)、テトラヒドロカナビノール(THC、ポット(pot)、ドープ(dope)、大麻(hash)、マリファナ(weed)、など)、および麻酔剤(例えば、モルヒネ(morphine)、アヘン(opium)、コデイン(codeine)、ヘロイン(heroin)、オキシコドン(oxycodone))が挙げられる。
【0039】
本発明を使用して検査することができるさらなる検体としては、これらに限られるわけではないが、クレアチニン、ビリルビン、亜硝酸塩、たんぱく質(非特定)、ホルモン(例えば、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、など)、血液、白血球、糖、重金属または毒素、バクテリア成分(例えば、大腸菌O157:H7、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、ウエルシュ菌、カンピロバクター、リステリア菌、腸炎ビブリオ、またはセレウス菌などの、特定の種類のバクテリアに特有のたんぱく質または糖)、ならびにpHおよび比重などの尿サンプルの物質的特性が挙げられる。側方フロー(lateral flow)の検査形式に適合させることができる他の任意の臨床尿化学検体も、本発明の装置に取り入れることができる。
【0040】
使用方法
以下の検討は、例に示されている実施形態に関する。当然ながら、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、他の実施形態も可能である。本発明の方法において、サンプルを装置へと加える段階が、例えばサンプルアプリケータを被験体の口内に挿入し、あるいは流体サンプルの容器に浸漬させることによって、サンプルアプリケータを流体サンプルに接触させることを含む。満たされ、あるいは十分に湿らされたアプリケータ144を、サンプル採取ウエル130へと挿入することができ、アプリケータを圧搾プレート230に対して押し付け、あるいは圧迫して、流体サンプルをサンプル採取ウエルへと絞ることができる(図4を参照)。絞られた流体サンプルは、圧搾プレートの開口を通過し、あるいはプランジャ240の側方に存在する空間430を通過して、サンプル採取ウエルの下部室へと流入する(図3)。このようにして、流体の一部が、上部室からプランジャの縁を巡って、下部室330へと流入する。
【0041】
サンプルが完全に絞られた後、キャップ220を、サンプル採取ウエルへと装着できる(図2および図5を参照)。キャップとサンプル採取カップとが、相補的な係合するねじ山を含む場合、キャップがサンプル採取ウエルへとねじ込まれる。キャップは、プランジャと相互作用する部品または突起を含むことができる。例えば、キャップの底部中央が、圧搾プレートの中央を通って下方へと延びる突起、すなわち力を作用させるべくプランジャの背後に配置される突起を含むことができる。この相互作用は、単なる物理的な接触であってよく、キャップの下方への移動によって加えられるプランジャへの力の伝達であってよい。この力が、キャップがねじ込まれるとともにサンプル採取カップ内でプランジャの下降を生じさせ、プランジャに担持されているランスを脆弱材料へと下降させて、脆弱材料に穿孔をもたらす。この結果、サンプル採取ウエルと検査区画との間に流体連絡がもたらされる。これにより、流体が、サンプル採取ウエルから検査区画へと流れ、検定が開始される。他の実施形態において、キャップをサンプル採取ウエルの上部へとスナップ式で嵌め合わせることができ、あるいはサンプルが漏れ出さず、かつ力がプランジャへと加えられるように、他の方法で装着することができる。図5は、下方位置にあるプランジャを示しており、ランスが脆弱材料に孔を開けてサンプル出口を開いている。さらに図面には、吸収芯紙260が、サンプル出口の下方に配置されて示されており、芯紙260を、サンプル採取ウエルから検査素子への流体サンプルの流れを向上させるために使用できる。芯紙は、毛細管流動を可能にする任意の好都合な吸収材料で作ることができる。例としては、親水性となるように処理されたガラス繊維紙およびポリエステルメッシュ、ならびにフィルター紙が挙げられる。管理用の印がもたらされた後、検定の結果を、窓370を通して検査素子を眺めることによって好都合に判断することができる。
【0042】
検査キット
本発明の検査キットは、顧客の必要性に応じてさまざまな形式に梱包することが可能である。例えば、多数の雇用前薬物検査を実施する機関は、1組の指示と真空パックされた20組の装置およびアプリケータの箱詰めを好むかもしれない。他方で、他のユーザは、1つの装置、1つのサンプル採取器、および1組の指示のみを含む箱詰めキットを好むかもしれない。任意の適切な梱包材料を使用することができる。検査キットを、箱に梱包することができ、あるいはセロハンなどの保護材料で包むことができる。さらに、検査キットは、封止された同じまたは別個の小袋にて提供される検査装置(およびアプリケータ)を備えることができ、そのような小袋が、さらに箱または他の梱包にて提供されてもよく、また提供されなくてもよい。
【0043】
例1 雇用前薬物検査
本発明の装置は、さまざまな状況において使用可能である。この例は、雇用前薬物検査における装置の使用を説明する。検査対象となる者は、サンプルアプリケータを自身の口内に配置し、約5分間にわたって口内に保つことによって唾液のサンプルを提供する。雇用前薬物検査のための実施形態において、装置は、この実施形態においてコカイン、メタンフェタミン、フェンシクリジン、THC、モルヒネ、およびアンフェタミンである、いくつかの一般的な乱用薬物のための試験ストリップを収容している。装置は、試験ストリップを競合的な免疫学的検定の形式で使用し、検査対象の各薬物についてのラベル付けされた特定の結合分子(この実施形態において、金ゾルでラベル付けされた抗体)が、試験ストリップのラベル領域に存在している。検査線が、検査対象の抗原を含む。サンプル中に検体が存在する場合、ラベル領域においてラベル付けされた特定の結合分子が検体と結合するため、ラベル付けされた抗体が検査線と結合することがない。したがって、検体が存在する場合には、検査線に信号が生じることがない。対照的に、サンプル中に抗原が存在しない場合には、ラベル付けされた抗体が検査線に結合し、検査線上に信号をもたらす。
【0044】
満たされ、あるいは十分に湿らされたサンプルアプリケータを受け取った後、検査技師が、これを装置のサンプル採取ウエルへと挿入する。技師は、アプリケータをサンプル採取ウエル内へと押し下げてひねり、アプリケータのリムを一対のフランジ410(この実施形態において設けらている)の下方に係止する。その結果、サンプルアプリケータの吸収発泡体から唾液が絞られ、圧搾プレートのオリフィスを通過して、圧搾プレートの下方の室へと流入する。プランジャが第1の位置にあるため、いくらかのサンプルが、プランジャの縁の周囲を流れてサンプル採取ウエルの下部室へと入る。すべてのサンプルが発泡体から絞られたとき、アプリケータが取り去られ、キャップがサンプル採取ウエルへとねじ込まれる。キャップがサンプル採取ウエルへとねじ込まれるとき、キャップの下向きの突起が、プランジャを上方位置から下方位置へと押し、これによってランスが脆弱なシールへと駆動されてシールを破り、サンプル出口を開く。次いで、サンプルが、検査区画へと流入して試験ストリップと接触する。同時に、プランジャが、上部室と検査区画との間のシールとなって、残りのサンプルを保持するためのリザーバを生み出すため、プランジャの上方において上部室に残っているサンプルの一部が、装置の残りの部分から隔離される。数分後に、検定が完了したことを示す管理の印が、検査素子上にもたらされる。検査線のそれぞれに、唾液サンプル中に乱用薬物が存在しないことを示す信号がもたらされる(競合的な検定形式)。陽性の結果が得られた場合、結果を確認するために、リザーバ内に収容されているサンプルを検査できるよう、装置を確認研究室へと送ることができる。
【0045】
本明細書の開示を参照することにより、当業者であれば、検査素子が利用可能な任意の検体、あるいは後に開発される任意の検体を、本発明において使用できることを、理解するであろう。すなわち、あらゆる他の対象となる乱用薬物を検査することができ、いくつかの例が本明細書に挙げられている。同様に、任意の種類のサンプルからの任意の検体を、検査することができる。
【0046】
本明細書において例として説明した本発明は、本明細書において具体的には開示しなかった任意の1つまたは複数の要素、あるいは1つまたは複数の限定事項がなくても、実行可能である。使用した用語および表現は、説明のための用語として使用され、限定のための用語として使用されてはおらず、そのような用語および表現の使用には、図示および説明した特徴の任意の均等物またはその一部を排除しようとする意図はなく、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲において、さまざまな変更が可能であると理解される。したがって、本発明を、種々の実施形態および随意による特徴によって具体的に開示したが、当業者であれば、本明細書に開示した概念について変更および変形を行なうことができ、そのような変更および変形は、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲に包含されると考えられることを、理解されたい。
【0047】
本明細書にて言及または引用した論文、特許および特許出願、ならびに他のあらゆる文献および電子的に入手可能な情報の内容は、あたかもそのような刊行物のそれぞれが、参照によって組み込まれると具体的かつ個々に示されているような範囲で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願人は、そのような任意の論文、特許、特許出願、または他の文献からの任意かつすべての題材および情報を、本件出願へと物理的に取り入れる権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示した装置の分解図である。
【図3】図1に示した装置の断面図である。
【図4】図1に示した装置の使用時の断面図および拡大図である。
【図5】図1に示した装置の使用後の断面図および拡大図である。ランスが、脆弱材料を貫いて示されている点に留意されたい。
【図6】図1に示した装置の使用後の上面図および断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体サンプルにおいて存在が疑われる検体を検出するための検査装置であって、
サンプル採取ウエルのためのポートを備えるケーシングと、
ポート内に位置しており、圧搾プレートと、上方位置および下方位置を有するプランジャとを備える、サンプル採取ウエルと、
確認サンプルを保存するための室と、
少なくとも1つの検査素子を収容している検査区画と、
脆弱材料によって封止されており、開かれたときにサンプル採取ウエルと検査区画との間に液体連絡をもたらす、サンプル出口と、
脆弱材料を貫くためのランスと、
サンプル採取ウエルのためのキャップとを有し、
キャップがサンプル採取ウエルに装着されたとき、キャップの一部分が、プランジャと相互作用してプランジャを上方位置から下方位置へと移動させる、装置。
【請求項2】
プランジャおよび圧搾プレートが、サンプル採取ウエル内に備えられ、さらにサンプル採取ウエルが、プランジャが上方位置にあるときに下部室を備えるとともに、確認サンプルが保存される上部室を備え、ランスが、プランジャに担持されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
圧搾プレートが、上部室を下部室から分離するとともに、液体サンプルを上部室から下部室へと流すための開口を備える、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
ランスが下方へと突き出しており、脆弱材料を破るべく出口に垂直して整列している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
サンプル採取ウエルおよびキャップが、相補的な係合するねじ山をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
キャップが、キャップがサンプル採取ウエルへと装着されたときに、プランジャと相互作用する下向きの突起を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
圧搾プレートが、プランジャと相互作用すべく突起が通過する開口を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
プランジャが下方位置にあるとき、下部室が存在しない、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
脆弱材料が、紙、ろうでコートした紙、プラスチックでコートした紙、プラスチックフィルム、プラスチック製の薄いシート、粘着テープ、箔、ろうを塗った箔、およびプラスチックでコートされた箔からなるグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
検査素子が試験ストリップである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
試験ストリップが、試験ストリップ上に固定された特定の結合分子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
試験ストリップが、化学的試験をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
流体サンプルが、口内液、血液、血清、血漿、尿、糞便、髄液、膣塗抹標本、粘液、および組織からなるグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
流体サンプルが唾液である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
検体が、薬物、ホルモン、たんぱく質、核酸分子、病因学的因子、および特定の結合対のメンバーからなるグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
検体が薬物であり、薬物が乱用薬物である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
プランジャが上方位置にあるとき、上部室および下部室が存在し、プランジャが下方位置にあるとき、下部室が存在しない、請求項2に記載の装置。
【請求項18】
装置およびサンプルアプリケータを備えるキットであって、
前記装置が、
サンプル採取ウエルのためのポートを備えるケーシングと、
ポート内に位置しており、圧搾プレートと上方位置および下方位置を有するプランジャとを備える、サンプル採取ウエルと、
確認サンプルの保存のための室と、
少なくとも1つの検査素子を収容している検査区画と、
脆弱材料によって封止されており、開かれたときにサンプル採取ウエルと検査区画との間に液体連絡をもたらすサンプル出口と、
脆弱材料を貫くためのランスと、
サンプル採取ウエルのためのキャップとを有し、キャップがサンプル採取ウエルに装着されたとき、キャップの一部分が、プランジャと相互作用してプランジャを上方位置から下方位置へと移動させる、キット。
【請求項19】
プランジャおよび圧搾プレートが、サンプル採取ウエル内に備えられ、さらにサンプル採取ウエルが、プランジャが上方位置にあるときに下部室を備えるとともに、確認サンプルが保存される上部室を備え、ランスがプランジャに担持されている、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
サンプルアプリケータが、吸収部材およびハンドルをさらに備える、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
吸収部材がスポンジを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
吸収部材が発泡体を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
吸収部材が、被験体の唾液の分泌を促す溶液を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項24】
流体サンプルにおいて検体の存在を検出する方法であって、
装置へ流体サンプルを加えることを含み、前記装置が、
サンプル採取ウエルのためのポートを備えるケーシングと、
ポート内に位置しており、圧搾プレートと上方位置および下方位置を有するプランジャとを備える、サンプル採取ウエルと、
確認サンプルの保存のための室と、
圧搾プレートと、
少なくとも1つの検査素子を収容している検査区画と、
脆弱材料によって封止されており、開かれたときにサンプル採取ウエルと検査区画との間に液体連絡をもたらす、サンプル出口と、
脆弱材料を貫くためのランスと、
サンプル採取ウエルのためのキャップとを備え、キャップがサンプル採取ウエルに装着されたとき、キャップの一部分が、プランジャと相互作用してプランジャを上方位置から下方位置へと移動させ、
前記方法がさらに、
サンプル採取ウエルにキャップを装着して、プランジャに係合させることと、
ランスが脆弱材料に孔を開けて、流体サンプルを検査区画へと解放するよう、プランジャを下降させることと、
流体サンプル中の検体の存在を判定することとを含む、方法。
【請求項25】
プランジャおよび圧搾プレートが、サンプル採取ウエル内に備えられ、さらにサンプル採取ウエルが、プランジャが上方位置にあるときに下部室を備えるとともに、確認サンプルが保存される上部室を有しており、ランスがプランジャに担持されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらにサンプル採取ウエルが、プランジャが上方位置にあるときに下部室を備えるとともに、確認サンプルが保存される上部室を備える、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
流体サンプルを加えることが、サンプルアプリケータを流体サンプルに接触させることと、サンプルアプリケータをサンプル採取ウエルへと挿入することと、さらにサンプルアプリケータを圧搾プレートへと押し付けて、流体サンプルをサンプル採取ウエルへと絞ることとを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
絞られた流体サンプルが、サンプル採取ウエルの下部室へと流れることと、流体の一部が、上部室からプランジャの縁の周囲を巡って下部室へと流れることとをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
流体サンプルがサンプル採取ウエルへと加えられた後に、キャップが、サンプル採取ウエルに装着され、キャップが装着されると、プランジャが下げられて脆弱材料に孔を開け、これによりサンプル採取ウエルと検査区画との間に流体連絡がもたらされることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
プランジャが脆弱材料に孔を開けたときに、流体サンプルが、下部室から検査区画へと流れる、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
さらにサンプル採取ウエルおよびキャップが、相補的な係合するねじ山をさらに備える、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
キャップがサンプル採取ウエルへとねじ込まれるとき、キャップの一部分が、プランジャへと力をもたらすべく相互作用し、プランジャを下降させて脆弱材料に孔を開ける、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
プランジャが下方位置にあるとき、下部室が存在しない、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−511769(P2007−511769A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540011(P2006−540011)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/038427
【国際公開番号】WO2005/050167
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】