説明

サンプル内のアナライトを検出するための装置および方法

【課題】 既知の技法に関連した欠点の緩和または防止する、インフルエンザ・ウィルスを検出するための技法を提供する。
【解決手段】 サンプル内のアナライトを検出するための装置が提供される。この装置は、検出対象のアナライト(4)に対応する検出反応物(3)を含む少なくとも第1の測定チャネル(2a)と、第1の測定チャネル(2a)に関連付けられた少なくとも1つの微細構造(5)と、を含む。装置(1)を用いる場合、サンプルを第1の測定チャネル(2a)内に導入して、第1の測定チャネル(2a)を介して微細構造(5)へと伝搬させ、アナライト(4)がサンプル内に存在する場合には検出反応物(3)と相互作用してネットワーク化生成物を形成するようになっており、微細構造(5)はネットワーク化生成物(6)をろ過するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人または動物から取得したサンプルにおいてアナライト(analyte)の存在を検出するための装置および方法に関する。本発明は、異なるタイプの病原体の検出、特にインフルエンザ・ウィルスの検出に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、インフルエンザ・ウィルスによって動物の種において生じる病気である。人においては、インフルエンザ・ウィルスによる感染が原因となって起こる症状は、一般的な風邪等の重篤でない病気にも共通しているか、または例えば胃腸炎等の他の病気に起因するか、あるいはその両方である場合がある。このため、インフルエンザ・ウィルスの感染は診断が難しいことがある。診断が未確定であるか、または間違った診断が行われると、インフルエンザは、もっと重大な健康上の結果を招く恐れがある。これは特に、ある年齢群の人、具体的には、非常に若い人および高齢者または他の慢性的な医療状態の人あるいはその両方に当てはまる。
【0003】
インフルエンザは、感染した哺乳動物から、例えば、咳またはくしゃみによって空気を介して伝搬する体液、または、汚染した表面を介して感染した人もしくは動物の血液もしくは糞便との接触のように、異なる媒体を介して、伝達される可能性がある。
【0004】
その接触伝染性の性質によって、通常は冬期にピークとなるインフルエンザの蔓延が激化する。インフルエンザ・ウィルスがある地域において人/動物の個体群に急速に蔓延した場合、これは流行病(epidemic)と呼ばれる。これが、例えば国、大陸、またはいくつかの大陸にまたがったもっと大きい地理的領域に蔓延すると、これは世界的流行病(pandemic)と呼ばれる。世界的流行病を制御することは難しい。なぜなら、例えば鳥のような特定の動物種に見られるウィルス種は、制御されないままであると、悪性の形態に突然変異してその動物種の個体群全体に蔓延し、その個体群の多数を死なせる恐れがあるからである。前述の突然変異したウィルス種は、例えば人のような第2の動物種に見られるウィルス種との相互作用によって、その第2の動物種へと移っていき、突然変異したウィルス種の進化型を形成することがあり、これが封じ込められない場合、更に第2の動物種において突然変異して世界的流行病を引き起こす可能性がある。
【0005】
既知のインフルエンザ・ウィルス・タイプのタイプには、インフルエンザ・ウィルスAおよびそのサブタイプ、インフルエンザ・ウィルスB、およびインフルエンザ・ウィルスCが含まれる。最も悪性であり世界的流行病を引き起こす原因となるのは、インフルエンザ・ウィルスAおよびそのサブタイプである。潜在的に世界的流行病の恐れがある最も新しく識別されたインフルエンザ・ウィルスAのサブタイプは、H5N1であり、より一般的には鳥インフルエンザ・ウィルスとして知られている。また、ウィルス・サブタイプは、種(strain)とも称される。
【0006】
インフルエンザ・ウィルスの蔓延または世界的流行病の大発生あるいはその両方を軽減するために、感染した人物は、理想的にはウィルスの検出によって識別されなければならない。これが充分に早く、例えば感染から48時間以内に行われると、感染した人に対するウィルスの致命的な結果は、適切な薬物の投与によって軽減することができ、重大なことは、感染した人物がウィルスを他の人に更に拡散させないように処置を取ることが可能なことである。また、ウィルスの大発生の監視を容易にすることとは別に、感染した人物の識別は、ワクチンの開発に役立ち、ウィルスの蔓延を軽減することができる。なぜなら、ワクチンは、最も新しく検出されたインフルエンザ種の不活性化された形態を含むからである。ウィルスには突然変異能力があるため、通常、最近のインフルエンザ大発生を封じ込めるために開発されたワクチンは、それ以降、例えば翌年のインフルエンザ大発生について同じ目的には適していない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US−A1−2003/0045001号
【特許文献2】US5723345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下に、インフルエンザ・ウィルスの試験に適用された技法のいくつかについて述べる。
【0009】
リアルタイム・ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)
RT−PCRにおいては、人/動物の喉または鼻咽頭あるいはその両方から収集したサンプルに前処理を行い、これによって、サンプルに含有される粘液の溶解度を更に高める。次いで、前処理したサンプルを処理して、サンプル内に存在するウィルスのゲノムの特定部分、具体的にはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ拡散(RNA)を増幅して、読み取り可能とする。後者は、試験を行っているウィルスのDNA/RNAの特定部分に関連付けられることが知られている補足的なプライマー・セットを用いることによって行われる。
【0010】
RT−PCRは、結果を取得するために要する時間が5時間未満なので、信頼性および持続時間のために、インフルエンザ・ウィルス試験のために一般的に好まれる技法の1つと考えられる。しかしながら、これに関連していくつかの欠点がある。DNA/RNAの増幅等のサンプルの処理は、専門化され、周辺機器を用いて行われる。この要素が意味するのは、かかる試験が熟練した人員によって行われ、実行には高い費用がかかるということである。RT−PCRは、研究室ベースの技法であり、オン・フィールド(on-field)試験すなわちインフルエンザ・ウィルスによる感染が起こったと考えられる場所には適さない場合がある。最近、RT−PCRにラップ・オン・チップ(lap-on chip)概念を用いることによって、すなわち、試験を実行している場所に移送可能な共通のプラットフォーム/基板上にRT−PCRの全てのコンポーネントを組み込むことによって、オン・フィールド検出を容易にすることが提案されているが、これは、高い費用がかかる恐れがあり、試験はやはり訓練を積んだスタッフにしか実行することはできない。
【0011】
凝集試験
これは、インフルエンザ・ウィルスによって赤血球が凝集または群れを成すという事実をその基礎に用いた血清学的試験である。血液サンプルに既知の抗体を適用することによって、ウィルスの存在を検出することができる。なぜなら、抗体はウィルスによる赤血球の凝集を抑制するからである。凝集の抑制は、赤血球を円錐形試験容器の底部に沈殿させて明確な赤い点を生成することによって観察することができる。血液サンプルに、希釈濃度を徐々に高めた抗体を適用することによって、沈殿は徐々に減ることが観察される。凝集の抑制が検出される最後の希釈液によって、ホストにおけるウィルス濃度に関する情報が得られる。
【0012】
RT−PCRと同様に、凝集試験は、訓練を積んだスタッフにしか実行することができず、専門化された機器または試薬あるいはその両方を用いて行われる。更に、試薬のコストおよび安定性は問題である。この技法は、主に研究室において行われるのに適している。これは、一般に、オープン・プラットフォームによって生じる恐れのある予想される健康上および安全上の問題のために、オン・フィールド試験には適さないと考えられる。試験を行う方法または結果の解釈あるいはその両方において不一致があると予想されるために、凝集試験は、ウィルス大発生の監視には許容されない場合がある。これは、通常、個人の健康の調査またはモニタリングあるいはその両方のために用いられる。
【0013】
免疫圧制に基づいた試験
かかる試験は、抗体/抗原の結合を検出することによって、ウィルスによる感染に応じてホストに生成されるウィルスまたは抗体を検出することに基づいている。
【0014】
抗体/抗原検出では、免疫蛍光法を用いることができる。この場合、特定の抗原または抗体を標識付け(tag to)することが知られ、特定波長の光で照明すると蛍光発光する粒子を用いる。この技法は、インフルエンザ・ウィルスの存在を検出し、更にインフルエンザ・ウィルスAのサブタイプ分けをするために使用可能であるが、熟練スタッフによって操作可能な専門化された顕微鏡技法または試薬あるいはその両方のために、この技法は費用が高く、脆弱で、オン・フィールドのウィルス試験には不適切である。
【0015】
10から30分間の時間尺度でインフルエンザ・ウィルスを検出するために、市販の診断試験がいくつかある。それらは、側方流免疫クロマトグラフィに基づいており、ウィルス検出に関する二進読み取り値を与えるストリップ・タイプの検出器の形態で具現化される。かかる試験は、検出可能なインフルエンザ・ウィルスのタイプにおいて、およびインフルエンザ・タイプを識別可能であるか否かについて、様々に変動し得る。現在利用可能な試験は、インフルエンザAウィルスのみか、インフルエンザAおよびBウィルスの双方であるが2つのタイプ間で識別は不可能であるか、または、インフルエンザAおよびBの双方であり2つの間で識別が可能であるという検出に基づいてカテゴリ化されている。現在、かかる診断試験キットは、世界的流行病を引き起こす/潜在的に引き起こす原因となるインフルエンザAサブタイプに関する情報を与えるために使用可能である。更に、かかる試験に用いられるサンプル標本には不一致がある。例えば、ある人は喉、鼻咽頭、または鼻吸引物を用いる場合があるが、他の人は綿棒または洗浄液を用いることがある。かかる試験の特異性および特に感度は、ウィルス培養物のものよりも低く、特定の試験により変わりやすい。かかる試験の結果は、インフルエンザ試験用の他の既知の技法に比べてはるかに短い時間尺度で取得することができるが、感度に関してトレードオフが存在する。感度が低いので、陰性の試験結果は、特にピークの地域的インフルエンザ活動の期間中に、それらが偽陰性の結果であるか否かを示すために、ウィルス培養物または凝集試験もしくはRT−PCR等の他の方法によって確認する必要がある場合がある。これに対して、偽陽性の高速試験結果は、よりいっそう起こりにくいが、鈍いインフルエンザ活動の期間中に起こる可能性がある。
【0016】
US5723345号は、液体サンプル内の物質の量を決定する方法を開示する。この方法は、所定の方向において所定のチャネルを介して信号物質発生器および液体サンプルを流して、少なくとも物質および信号物質発生器と特定の結合反応が起こるようにし、これによってチャネルにおいて物質の濃度に依存する信号物質発生器の特定の分布を形成することを含む。特定の分布は、アフィニティー・クロマトグラフィまたは免疫沈降プロセスによって形成され、このプロセスは、特にチャネルに分布した信号物質発生器から信号物質を発生させることと、チャネル全体に未反応の信号物質発生器を分散させることと、流れの方向において異なる位置に配置した複数の検出手段に信号物質を拡散させることと、複数の検出手段によって信号物質を検出することと、検出手段において検出された相対信号から物質の濃度を判定することと、を含む。この方法においては、いくつかの異なるタイプの試薬および化学物質を用いられ、このため、かかるデバイスを生成するコストが高くなる場合がある。更に、数学的モデルを用いた信号獲得デバイスおよび信号処理により、このデバイスを動作させる複雑さが増すことになり得る。このためデバイスに追加機能が必要となり、製造コストが増し、デバイスの全体的な信頼性および安定性が低くなり、保管寿命が短くなる恐れがある。
【0017】
US−A1−2003/0045001号は、湾曲したサンプル適用ゾーンを有する免疫クロマトグラフィ試験ストリップを開示し、これは、標準的な免疫クロマトグラフィ試験ストリップと同様に機能するが、異なるサンプル収集ゾーンを有する。この方法は、例えば指から取得した血液等のいくつかの種類のサンプルの収集を容易にすることができるが、インフルエンザ・ウィルス及び他の病原体を検出するための典型的なサンプルを試験ストリップ上に装填するのには適さない場合がある。免疫クロマトグラフィ・ストリップ試験と同様の原理に基づいているので、本技法は同じ欠点を有する場合がある。
【0018】
従って、同じ目的のために、既知の技法に関連した欠点の緩和または防止あるいはその両方を行う、インフルエンザ・ウィルスを検出するための技法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、サンプル内のアナライトを検出するための装置が提供される。この装置は、検出対象のアナライトに対応する検出反応物を含む少なくとも第1の測定チャネルと、第1の測定チャネルに関連付けられた少なくとも1つの微細構造と、を含み、この装置を用いる場合、サンプルを第1の測定チャネル内に導入して、第1の測定チャネルを介して微細構造へと伝搬させ、アナライトがサンプル内に存在する場合には検出反応物と相互作用してネットワーク化生成物を形成するようになっており、微細構造はネットワーク化生成物をろ過するように構成されている。
【0020】
ネットワーク化生成物を形成するためには、本発明の一実施形態において、アナライトの自然ターゲット、すなわち、アナライトが反応し結合して凝集型の生成物を形成することが知られている一つだけの受容体を、検出反応物の一部として選択する必要がある。免疫クロマトグラフィ試験等のいわゆるストリップ試験と同様に、専門化された処理技法または機器あるいはその両方の必要性または専門化した知識あるいはその両方なしで、サンプル内のアナライトの識別を行うことができる。このため、本発明の一実施形態は、凝集ベースの試験およびストリップ試験の有利な特徴を組み合わせる。本発明の一実施形態によって与えられる別のいくつかの有利な特徴には、適切な検出反応物を選択することによって、サンプル内で存在を確認することが望まれるあらゆるアナライトを識別可能であること、例えば、各々が識別対象のアナライトに関連付けて選択された異なる検出反応物を含む対応する数の測定チャネルを組み込むことによって、サンプル内の2つ以上のアナライトの存在を確認可能であること、および、本発明の一実施形態のフォーム・ファクタ(form factor)を、ストリップ試験デバイスと同等であるように設計することができ、これによって使用の容易さおよび動作の汎用性を提供することが含まれる。この特徴は、接触伝染性ウィルスの蔓延を軽減するには特に有利である。なぜなら、例えば、ウィルス大発生の試験および確認が双方とも現場で実行可能であり、これに対して、他の技法では、サンプル収集のみが現場で実行され、ウィルスの存在を確認するためには更に別の試験を現場外で、通常は研究所内で行うからである。
【0021】
好ましくは、ネットワーク化生成物は、光学的に読み取り可能な信号を供給する。このようにして、サンプル内の所与のアナライトの存在を、容易に、かつ複雑でない方法で確認することができる。
【0022】
望ましくは、本発明の一実施形態は、微細構造によるネットワーク化生成物のろ過を示すように構成されたインジケータを含む。このようにして、サンプル内のアナライトの存在の更に別の確認を得ることができる。
【0023】
望ましくは、本発明の一実施形態は、少なくとも1つの関連付けられた微細構造を有する少なくとも第2の測定チャネルを更に含む。別の測定チャネルを組み込むことによって、サンプルまたは検出されたアナライトあるいはその両方に関する更に別の知識を得ることができる。
【0024】
好ましくは、第2の測定チャネルは、少なくとも1つの異なる関連付けられた流体力学的または化学的あるいはその両方の特性を有するという点で、第1の測定チャネルとは異なるように構成されている。流体力学的特性の違いによって、本発明の一実施形態に、異なるレベルの感度を組み込むことができる。測定チャネルの化学的特性の違いによって、本発明の一実施形態の性能を更に向上させることができる。なぜなら、かかる特性は、サンプルと検出反応物との間の相互作用の確率を高めるように、および、例えば測定チャネルが詰まる確率を低くするように、選択することができるからである。
【0025】
望ましくは、ネットワーク化生成物が異なる特徴で形成されるように、第2の測定チャネルは第1の測定チャネルとは異なるように構成される。一例として、本発明の一実施形態においては、第2の測定チャネルは、第1の測定チャネルにおけるものと同じ検出反応物を含むように構成することができる。このため、それらは、サンプル内に存在する場合には、同一のアナライトを検出する。第1の測定チャネルにおけるものとは異なる形成上の特徴でネットワーク化生成物が形成されるように第2の測定チャネルを構成することによって、アナライトの濃度を決定することができる。この点について、例として、形成上の特徴は、測定チャネルの長さとして選択することができる。この点について、ネットワーク化生成物を形成するためのサンプルと検出反応物との相互作用および第2の測定チャネルに関連した微細構造によるネットワーク化生成物の収集が、第1の測定チャネルにおけるよりも短い期間にわたって起こるように、第2の測定チャネルを構成することができる。第1および第2の測定チャネルに関連した微細構造が実質的に同じ特徴を有するために、第2の測定チャネルに関連した微細構造によって収集されたネットワーク化生成物の濃度は、第1の測定チャネルにおいて収集されたものよりも必然的に高い。サンプル内のアナライトの濃度に関する知識の取得は、人に行われる治療を決定するために有利に適用することができる。更に、本発明の一実施形態を適用してアナライトの濃度を定期的に決定することによって、例えば、投与した薬物の効果、ウィルスの潜伏期間のモニタリングを行うことができる。
【0026】
好ましくは、第2の測定チャネルは、異なる検出反応物を含むという点で、第1の測定チャネルとは異なるように構成される。この特徴によって、同一のサンプル内に存在する異なるアナライトを同時に検出するように本発明の一実施形態を構成可能であるという利点が提供される。
【0027】
望ましくは、測定チャネルは、マイクロ流体毛管(microfluidic capillary)を含む。マイクロ流体毛管を有する測定チャネルを実施することに関連した利点は、ニトロセルロース・ベースの免疫クロマトグラフィ膜に比べて、毛管の長さに沿ってサンプルを伝搬させる毛管作用は制御可能であるということである。このように、検出反応物を含めて測定チャネルにおけるサンプルおよび試薬が相互作用する均一性を高めることができる。この特徴に関連した更に別の利点は、ネットワーク化生成物等の凝集生成物による免疫クロマトグラフィ膜の詰まりに伴う問題が回避可能であるということである。
【0028】
好ましくは、ネットワーク化生成物の形成が制御可能であるように、マイクロ流体毛管が設計される。微細構造において収集された場合にその検出を改善するため、ネットワーク化生成物の形成を制御することが望ましい。本発明の一実施形態においては、これは、マイクロ流体毛管の物理的寸法を、ネットワーク化生成物を形成する反応の化学的経路に一致させることによって達成される。この例には、毛管の長さを、ネットワーク化生成物の形成について推定される時間に一致させること、または、毛管の深さを、例えば毛管における検出反応物等の試薬の拡散の増大/低減に一致させることが含まれる。このため、免疫クロマトグラフィ膜に比べて、マイクロ流体毛管の流れの制御および幾何学的形状を選択して、望み通りにネットワーク化生成物の形成の動力学を調整することができる。
【0029】
望ましくは、測定チャネルは、検出反応物を収容するための少なくとも1つの空洞を含むように構成される。好ましくは、空洞は本発明の一実施形態の製造中に形成され、この段階で、検出反応物を、粉末状で、または空洞の表面上で乾燥させることで、空洞内に組み込むことができる。双方の場合において、通常は流体状であるサンプルを測定チャネルに導入することによって、検出反応物は溶解する。
【0030】
好ましくは、本発明の一実施形態は、視認ゾーンを更に含み、この視認ゾーンからろ過されたネットワーク化生成物を視覚的に検出可能である。典型的に、本発明の一実施形態における所与の測定チャネルは、マイクロ流体毛管であり、ミクロン規模の寸法を有する。このため、これは、ろ過されたネットワーク化生成物を視覚的に検出する際に課題を生じる場合がある。この問題を軽減するため、本発明の一実施形態において視認ゾーンを設ける。これは、ろ過したネットワーク化生成物の視覚的な検出を向上させるように構成されている。好適な実施形態においては、視認ゾーンは、第1または第2あるいはその両方の測定チャネルに対応する微細構造が結合された領域の上に設けられたウィンドウである。好適な実施形態においては、ウィンドウは、実質的に透明な材料を含むか、または拡大鏡を含むか、あるいはその両方である。
【0031】
望ましくは、第1および第2の測定チャネルの少なくとも一方は、実質的に、対応する微細構造に結合されている領域において、所定の幾何学的形状を有するように構成されている。所与の測定チャネルに結合された微細構造において収集されたネットワーク化生成物の視覚的な検出は、形成されるネットワーク化生成物の濃度に依存する。低い濃度で形成された場合、微細構造によって収集されたネットワーク化生成物の視認性低下を補償するために、測定チャネルは、関連付けられた微細構造に結合する領域において所定の幾何学的形状を有するように設計することができる。この点において、本発明の一実施形態では、この幾何学的形状は、微細構造によって収集されたネットワーク化生成物の視覚的検出を向上させるように選択する。例えば、測定チャネルは、関連付けられた微細構造に結合した段差を組み込むことができる。また、この特徴は、本発明の一実施形態のフォーム・ファクタを変更する必要なく所望の数の測定チャネルを組み込む際に適用可能である。例えば、本発明の一実施形態において、もっと少数であるが幅の広い測定チャネルを実施することができ、または、もっと多数であるが幅の狭い測定チャネルを組み込むことができる。これらは双方とも、測定チャネルに関連付けられた微細構造において収集されたネットワーク化生成物の視覚的検出を向上させるように機能する。
【0032】
好ましくは、本発明の一実施形態は、サンプルの公差反応性について試験を行うように構成されたサンプル制御チャネルを更に含む。サンプルの公差反応性について試験を行うことによって、ネットワーク化生成物の形成を妨害するか、または阻止するか、あるいはその両方であり得る化学物質を含むか否かを判定することができる。このようにして、本発明の一実施形態の信頼性を更に改善することができる。この特徴によって、サンプルの試験を行っているアナライトに対応するワクチンのアーチファクト(artefact)の存在についても判定可能であるという更に別の利点が与えられ、このため、人/動物が同一のアナライトに対して多数のワクチン接種治療を受けるという状況を防ぐ。また、更に別の利点は、特定のアナライトによる感染を撲滅するために、ワクチン接種治療を受けたものから、初めて感染した人/動物を区切ることができるということである。
【0033】
望ましくは、本発明の一実施形態は、所与のアナライトについて試験をモニタするように構成された試験制御チャネルまたは領域あるいはその両方を更に含む。本発明の一実施形態が所与のアナライトの試験に信頼性高く適用可能であるか否かを判定するために、試験制御チャネルを提供する。試験制御チャネルは、例えば試験対象のアナライトおよび対応する検出反応物を含むように構成されている。これは、更に、試験制御チャネルに試験対象のサンプルを流した場合に、アナライトおよび検出反応物が相互作用し、これによってネットワーク化生成物を形成するように構成されている。換言すると、本発明の一実施形態の性能において異常がない場合には、試験を行っているサンプル内にアナライトが実際に存在しても存在しなくても、試験制御チャネルにおいてネットワーク化生成物が形成されなければならない。かかる異常は、例えば、本発明の一実施形態がその保管寿命を超えたこと、例えば試薬に損傷を与える恐れがある過度の温度での収容または過度の温度に本発明の一実施形態を露呈したことによる試薬の機能不全、製造上の問題のためにサンプルと試薬との間の相互作用の動力学が本来あるべきものでなく、これによってデバイスの密閉または試薬の位置決めが適正に行われなかったことを含むことがある。
【0034】
好ましくは、本発明の一実施形態は、サンプル収容ユニットに単方向に結合されるように構成されたサンプル収集チャネルを更に含む。この場合、余分なサンプルはサンプル収集チャネルに運ばれ、次いでサンプル収容ユニットに送出されて、ここに収容される。サンプル収集チャネルは、サンプル流が単方向となるように、すなわちサンプル収容ユニットの方向となって、その流路上で戻ることができないように構成される。
【0035】
望ましくは、本発明の一実施形態は、試験対象のサンプルを収集するために構成されたサンプル収集ユニットを更に含む。本発明の一実施形態において、特定のアナライトの存在について試験を行うサンプルは、人/動物からサンプル収集ユニットを介して収集され、これを次いで測定チャネルの一つ以上に追加する。
【0036】
好ましくは、サンプル収集ユニットは、少なくとも1つのサンプル処理ユニットを更に含む。この特徴によって、サンプルの前処理を行って、例えばその物理的特性を変更し、これによって所与のアナライトの検出における本発明の一実施形態の性能を向上させることができる。かかる物理的特性は、例えば、pH、粘度、透明度、安定性、およびイオン強度を含む場合がある。
【0037】
望ましくは、サンプル収集ユニットは少なくとも1つのフィルタを含む。サンプル収集ユニットにフィルタを組み込むことによって、試験対象の人/動物から収集したサンプル内に存在する粘液、組織断片、細胞等が、測定チャネルにおけるサンプル流路に入り込むこと、または詰まらせること、あるいはその両方の確率を低くすることができる。このように、本発明の一実施形態の性能を更に向上させることができる。
【0038】
好ましくは、サンプル収集ユニットは綿棒を含む。この特徴は、試験対象の人/動物からサンプルを容易に収集するという利点を与える。本発明の一実施形態の性能を更に改善するために、綿棒は、化学物質を追加して用意することで、サンプルの処理を初期化することを可能とする。例えば試験を行うサンプルが充分に存在しないために試験を繰り返さなければならない必要性をなくすために、綿棒は、試験対象の人から取得したサンプルで実質的に飽和させることが望ましい。本発明の一実施形態においては、綿棒は、例えば色の変化によって、サンプルによって実質的に飽和しているか否かを示すように構成することができる。
【0039】
望ましくは、第1および第2の測定チャネルの少なくとも一方に関連付けられた微細構造のろ過能力は、ネットワーク化生成物の推定サイズ、形状、少なくとも1つの化学的特性、またはそれらの組み合わせに従って構成される。ネットワーク化生成物の1つ以上の既知の特性に従って微細構造のろ過能力を調整することによって、本発明の一実施形態の性能を更に改善することができる。なぜなら、微細構造においてネットワーク化生成物を保持する、従ってそれを検出する確率が更に高くなるからである。
【0040】
好ましくは、本発明の一実施形態は、第1および第2の測定チャネルの少なくとも一方に関連付けられた更に別の微細構造を含み、これが、同じ測定チャネルに関連付けられた微細構造とは異なるろ過能力を有するように構成されている。このようにして、サンプル内のアナライト濃度または測定チャネル内のネットワーク化生成物の形成の程度あるいはその両方を推定することができる。
【0041】
望ましくは、検出反応物は、光学的に検出可能な材料を含む。このようにして、ネットワーク化生成物が形成されたことの巨視的な指示、従ってサンプル内のアナライトの存在を得ることができる。
【0042】
好ましくは、検出反応物は、アナライトと限定的に結合することができる少なくとも1つの受容体に化学的に結合するように適合されている。このようにして、サンプル内の所与のアナライトの存在を、容易に、かつ複雑でない方法で確認することができる。
【0043】
望ましくは、第1および第2の測定チャネルの少なくとも一方は、少なくとも1つの抑制剤を更に含むように構成されている。本発明の一実施形態においては、抑制剤の選択は、異なる目的のために行うことができる。例えば、ネットワーク化生成物のサイズを制御する際に適用可能である特性を有するという理由で、抑制剤を選択することができる。このようにして、測定チャネルの詰まりを軽減することができる。あるいは、抑制剤は、染料粒子の凝固の確率を低くするように選択し、これによって本発明の一実施形態の性能を向上させることができる。更に別の選択肢として、本発明の一実施形態の測定チャネルのいずれか1つに用意された検出反応物と既知のアナライトとの相互作用を抑制する特性を有するという理由で、抑制剤を選択することも可能である。このようにして、以前には知られていないアナライトの存在を少なくとも識別する確率を高めることができる。
【0044】
好ましくは、第1および第2の測定チャネルの少なくとも一方は、アナライトと相互作用するための少なくとも1つの中間試薬を更に含むように構成されている。ネットワーク化生成物を形成するために検出反応物との相互作用が可能となるアナライト上の結合箇所の数を増すようにアナライトと相互作用することが可能であるという理由で、中間試薬が選択される。このようにして、サンプル内のアナライトの検出を更に改善することができる。
【0045】
望ましくは、アナライトは病原体を含む。本発明の一実施形態は、特定のアナライトの検出に限定されず、例えばウィルスおよびそれらのサブタイプ、バクテリア等、異なる病原体の検出に一般的に適用可能である。この特徴によって、汎用性という利点が得られる。
【0046】
好ましくは、アナライトはインフルエンザ・ウィルスを含み、具体的にはインフルエンザ・ウィルスAを含む。
【0047】
また、本発明の一実施形態によって、対応する方法の態様も提供される。サンプル内のアナライトを検出するための方法が提供される。この方法は、検出対象のアナライトに対応する検出反応物を含む少なくとも第1の測定チャネルを用意するステップと、第1の測定チャネルに関連付けられた少なくとも1つの微細構造を用意するステップと、を含み、この方法は、更に、サンプルを、第1の測定チャネルを介して微細構造へと伝搬させ、アナライトがサンプル内に存在する場合には検出反応物と相互作用してネットワーク化生成物を形成するようにする、ステップと、微細構造によってネットワーク化生成物をろ過するステップと、を含む。
【0048】
開示するいずれの実施形態も、図示するか、または記載するか、あるいはその両方である他の実施形態の1つまたはいくつかと組み合わせることができる。また、これは、実施形態の1つ以上の特徴についても可能である。
【0049】
本発明の一態様のいずれかの特徴は、本発明の別の態様に適用することができ、その逆も同様である。
【0050】
一例として、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態を概略的に示す。
【図2】受容体によって表面に官能性を持たせた、本発明の一実施形態における検出反応物の粒子を概略的に示す。
【図3】インフルエンザ・ウィルスと図2に示したように変更された検出反応物の粒子との間の相互作用を概略的に示す。
【図4】測定チャネルと共に用いるために複数の微細構造を組み込んだ本発明の一実施形態を概略的に示す。
【図5】本発明の更に別の実施形態を示す。
【図6】図5における実施形態を示し、取り外したカバーと共にかかる装置を概略的に示す。
【図7】本発明の一実施形態による視認ゾーンを示す。
【図8】本発明の更に別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
説明において、同じ参照番号または符号を用いて同じ部分等を示す。
【0053】
図1からわかるように、本発明の一実施形態は、少なくとも第1の測定チャネル2aを含む装置1を含む。第1の測定チャネル2aにおいては、サンプル内で存在が確認されるアナライト4に対応する検出反応物3が用意されている。更に、第1の測定チャネル2aに関連付けて結合された微細構造5が用意されている。装置1を用いる場合、アナライト4の存在について試験を行うサンプルを、第1の測定チャネル2aに導入し、第1の測定チャネル2aを介して微細構造5へと伝搬させ、アナライト4がサンプル内に存在する場合には検出反応物3と相互作用してネットワーク化生成物6を形成するようになっている。微細構造5は、ネットワーク化生成物6をろ過するように構成され、これによってサンプル内のアナライト4の存在の指示を与える。この状況において、ろ過とは、好ましくは、ネットワーク化生成物6が微細構造5によって捕獲される一方で未反応粒子が微細構造5を通過することを意味する。一例において、ネットワーク化生成物6は、典型的に各々500nmより大きい有効サイズを示すことができ、微細構造がそのサイズの粒子についてバリアを形成するようになっている。未反応粒子は、検出反応物粒子4または他の粒子であるが、微細構造5を通過し、更に測定チャネル2aを移動することができ、制御領域20において捕獲される。微細構造5においてネットワーク化生成物6を検出することができないならば、制御領域20は、ユーザが装置における実際の陰性試験結果と失敗とを識別することに役立つ。試験を行った後に、粒子、特に検出反応物3が制御領域20において検出可能であるという状況は、マイクロ流体毛管を含む測定チャネルが機能し、微細構造5が概ね粒子の通過を妨げないことの、証拠とまではいかないが、指示するものとなる。この情報は、サンプル内にアナライトが存在しなかったことを判定するために役立てることができる。一方、制御領域20が、いずれの粒子も検出反応物3も示さない場合、測定チャネルは機能していない。そうでなければ、いくつかの粒子は測定チャネル2aを移動し、微細構造5を通過し、制御領域20に積層したはずである。
【0054】
試験を行っているサンプル内におけるアナライト4の確認を容易にするために、本発明の一実施形態において、ネットワーク化生成物6は、光学的に読み取り可能な信号を供給する。例えば、これは本質的に、光学的に検出可能な特性を有する。ネットワーク化生成物6が光学的に読み取り可能な信号を供給する機能を有するために、本発明の一実施形態において、検出反応物3は、光学的に検出可能な材料を含むように選択する。この点について、その光特性は、固有のものであるか、または、試験されているサンプル内にアナライト4が存在する場合にはこれと検出反応物3との相互作用の結果とすることができる。好適な実施形態においては、検出反応物3について、数マイクロメートルの直径を有する染料粒子を選択する。染料粒子を用いることによって、光脱色(photobleaching)および沈殿に関する問題を回避することができる。この直径の寸法のため、微細構造5におけるネットワーク化生成物6の収集は、ネットワーク化生成物6を形成するために要する時間またはこれを形成する距離あるいはその両方によって大きく影響されることがない。更に、これに対応した微細構造5の寸法を選択することができ、これによって微細構造5の製造に関するコストが削減される。なぜなら、この目的のためにプラスチック成型または熱エンボス加工(hot embossing)等の技法を使用可能であるからである。本発明の一実施形態において、検出反応物3は、染料を含むポリスチレン・ビーズを含む。
【0055】
サンプル内の所与のアナライト4の存在を更に確認するために、本発明の一実施形態は、微細構造5によるネットワーク化生成物6のろ過を示すように構成されたインジケータ(図示せず)を含むように構成することができる。本発明の一実施形態は、フィルタにおけるネットワーク化生成物6の収集がインジケータの変化を誘発し、これによってサンプル内のアナライト4の存在を知らせるように構成することができる。インジケータは、例えば、ネットワーク化生成物6が収集される微細構造5の後に配置されたストリップとすれば良い。インジケータは、フィルタにおけるネットワーク化生成物6の収集によってインジケータの物理的特性の変化が起こるように構成することができる。物理的特性の変化が起こったか否かは、モニタされ、サンプル内のアナライト4の不在/存在に関する二進読み取り信号を提供する。この場合、物理的特性は、例えば、電気的なもの、光学的なもの、化学的なもの、またはそれらの組み合わせを選択することができる。むろん、本発明は、上述の物理的特性の選択に限定されず、他のいずれかの適切な特性をこの目的に選択することも可能である。
【0056】
本発明の一実施形態において、第1の測定チャネル2aは、マイクロ流体毛管によって実施される。マイクロ流体毛管にいくつかの特徴を組み込んで、本発明の一実施形態の性能を更に改善することができる。例えば、マイクロ流体毛管は、空洞(図示せず)を含むように製造することができる。空洞は、例えば検出反応物3を収容するために適用することができ、これを粉末状で、または空洞の表面上で乾燥させることで、空洞内に組み込む。双方の場合において、通常は流体状であるサンプルを第1の測定チャネル2aに導入することによって、検出反応物3は溶解してアナライト4と相互作用する。マイクロ流体毛管の製造段階中に検出反応物3を組み込むことによって、例えばサンプルを第1の測定チャネル2a内に組み込む際のような後の段階で、その導入から生じ得る厄介な問題を回避することができる。かかる厄介な問題の一例には、サンプル内の細片と共に検出反応物3が凝固することが含まれ、これによってサンプル内のアナライト4の検出が妨げられる場合がある。
【0057】
本発明の一実施形態に従って試験を行うサンプル内にアナライト4が存在する場合、その対応する検出反応物3との相互作用を改善するために、検出反応物3は、アナライト4と限定的に結合することができる少なくとも1つの受容体に化学的に結合するように適合される。この点について、検出反応物3は、サンプル内で検出されてネットワーク化生成物6を形成するアナライト4と相互作用し結合することが知られているあるタイプの受容体によって表面に官能性を持たせた(functionalise)染料粒子を含むように選択することができる。以下に、インフルエンザ・ウィルスの検出に適用される本発明の一実施形態において使用可能なタイプの受容体に関して、更に詳細に述べる。
【0058】
装置1は、例えばウィルスおよびバクテリア等の異なるタイプの病原体を含む多種多様なアナライト4を検出するために適用可能である。一例として、インフルエンザ・ウィルスを検出するための装置1の適用について、以下で概略的に説明する。
【0059】
インフルエンザ・ウィルスは、細胞の表面上に存在する糖と結合することが知られている。また、インフルエンザ・ウィルスは、例えばどのように特定のシアル酸末端残基(terminal residue)が多糖受容体上に表示されているかによって識別可能であることも知られている。この情報は、組み合わせて、サンプル内に存在するインフルエンザ・ウィルスを検出するために、本発明の一実施形態において有利に適用される。具体的には、図2からわかるように、本発明の一実施形態において、多糖受容体7によって検出反応物3の粒子の表面に官能性を持たせる。架橋剤8を介して、多糖受容体7は、検出することが望まれるインフルエンザ・ウィルスに対応する特定のシアル酸端末残基9を表示するように適合することができる。
【0060】
ここで図3を参照すると、本発明の一実施形態に従って試験を行うサンプル内に存在するインフルエンザ・ウィルスが、図2を参照して説明したように表面が変更された検出反応物3とどのように相互作用するかが概略的に示されている。図3からわかるように、インフルエンザ・ウィルス10は、関連した赤血球凝集素(HA)成分10aおよびニューリミダーゼ(neurimidase)(N)成分10bを有する。検出反応物粒子のシアル酸端末残基9と結合するのは、赤血球凝集素成分10aである。この結合および受容体の炭水化物構造の特性に基づいて、本発明の一実施形態によって、異なるタイプおよび種のインフルエンザ・ウィルスを検出することができる。例えば、鳥インフルエンザHAはアルファ2−3シラン酸受容体と結合し、人インフルエンザHAはアルファ2−6シラン酸受容体と結合する。従って、特定のタイプのインフルエンザ・ウィルスを検出するために、特定の多糖を適用することができる。
【0061】
本発明の一実施形態において、例えば、抗体、位相表示分子、または赤血球等の検出反応物3の粒子の表面を変更するために、異なるタイプの受容体を用いることができる。しかしながら、好適な実施形態においては、例えば抗体受容体に比べて安定性が高いので、多糖受容体が用いられる。更に、多糖アレイに関する研究によって、異なるタイプのウィルスおよびそれらが結合する受容体のタイプに関して利用可能な知識が絶え間なく更新されており、これを本発明の一実施形態において有利に用いることができる。更に、インフルエンザ・ウィルスによる感染は、ウィルスをホスト細胞上の多糖に結合させることによって成立するので、本発明の一実施形態は、新しい感染性ウィルス種を検出するために有利に適用可能である。
【0062】
第1の測定チャネル2aに関連付けられて結合された微細構造5については、ネットワーク化生成物6の推定サイズ、形状、少なくとも1つの化学的特性、またはそれらの組み合わせに従って構成することができる。ネットワーク化生成物6の1つ以上の既知の特性に従って微細構造5のろ過能力を調整することによって、本発明の一実施形態の性能を更に改善することができる。なぜなら、微細構造においてネットワーク化生成物を保持する、従ってそれを検出する確率が更に高くなるからである。
【0063】
本発明の一実施形態は、第1の測定チャネル2aと共に1つの微細構造5を用いることに限定されず、第1の測定チャネル2aと共に用いるために更に別の微細構造を組み込むことも可能である。これを図4に概略的に示す。この点について、異なる微細構造5、5a、5bは、相互に異なるろ過能力を有するように構成されている。例えば、微細構造のろ過能力を段階的に変化させて、それらの1つが他のものよりも高い/低いろ過能力を有する(例えば微細構造5bのろ過能力>微細構造5aのろ過能力>微細構造5のろ過能力)ようにすることによって、サンプル内のアナライト濃度または測定チャネル内のネットワーク化生成物の形成の程度あるいはその両方を推定することができる。
【0064】
図8を参照すると、本発明に従った装置1の別の実施形態が示されている。装置1は、筐体21に2つの測定チャネル2aおよび2bを含む。測定チャネル2a、2bは、以下のように異なるセクション/ユニットを含む。すなわち、共通のサンプル収集ユニット14、共通のサンプル処理ユニット24、チャネル・セクション2a1、2b1、および接続チャネル2a2、2b2である。以下において、2チャネル実施形態の特徴を開示する場合、かかる特徴が基礎として2チャネル構成を本質的に必要としない限り、かかる特徴は、1つのみの測定チャネルを含む実施形態について開示されたものとしても考えられることは理解されよう。
【0065】
サンプル収集ユニット13における筐体21の上部の開口13aによって、サンプル・アリコート(aliquot)の最初の装填が可能となる。好ましくは、開口13aは直径が約8mmである。このサイズにより、デバイス上にあまり大きい占有面積を必要とすることなく、ピペット、綿棒、またはマイクロピペットを用いて手で容易にサンプルを装填することができる。好ましくは、サンプル収集ユニット13は、好適な高さが6mmである数mm長の空洞であり、これによって数十から数百マイクロリットルのサンプルを収容することができる。サンプル収集ユニット13は、サンプル処理ユニット24に接続されており、この内部で材料または構造が画定されてサンプルから粒子または細胞をろ過する。材料は、1または数マイクロメートルよりも大きい孔を有するガラス・ファイバーまたはフィルタ・ペーパーまたは膜とすることができる。サンプル処理ユニット24が表す空洞は、好ましくは100マイクロリットルまでのサンプルを含むことができる。サンプル処理ユニット24は、チャネル・セクション2a1および2b1に接続されている。各チャネル・セクション2a1、2b1は、好ましくは幅が400マイクロメートルであり、深さが50マイクロメートルであり、長さが30mmであり、総容積が0.6マイクロリットルである。かかる寸法を有するチャネル・セクションは、水圧抵抗(hydraulic resistance)が低く、あまり大きくないので、重力のために不均一な充填液前端(filling front of liquid)が生じるのを防ぐ。
【0066】
ネットワーク化生成物6を形成するための検出反応物3は、好ましくは、化学物質、酵素、タンパク質、塩、および、好ましくはチャネル・セクション2a1、2b1の前半に堆積された他の薬剤とすることができる。好ましくは、堆積は、少量の化合物を堆積する場合にはインクジェットを用いて、または、標準的なピペット技術を用いて、またはもっと大量の場合には手によるピペットによって行われる。図8に示すように、検出反応物に典型的な0.1マイクロリットルの容積を、チャネル・セクション2a1、2b1の前半に堆積し、凍結乾燥することができる。もっと大きい容積が必要であるか、または堆積に好都合である場合、サンプル収集ユニット14またはサンプル処理ユニット24とも称される測定チャネルのセクションに、これを直接堆積することができる。
【0067】
図8において、アナライト4は太い点で示され、検出反応物3は十字形で示され、粒子は小さい点で示されている。
【0068】
各チャネル・セクション2a1、2b1の端部は、フィルタの形態の微細構造5に接続されている。微細構造5は、好ましくは、約5マイクロメートルの分離距離で六角形に離間した約5マイクロメートルの直径を有する円形のポストから成る。ポストは、好ましくはチャネル・セクション2a1、2b1と同じ高さを有する。微細構造5は、チャネルと同様に、長さが約5mmであり幅が約400マイクロメートルであるが、試験の判読性を増すために、もっと大きく長くすることも可能である。
【0069】
検出されるアナライト4と共にネットワーク化生成物6を形成するための検出反応物3は、好ましくは、アナライト4のためのリガンドの多数のコピーによって覆われた粒子である。好ましくは、これらの粒子は、ラテックスまたはポリスチレンにおいて生成され、水のものに近い密度を有し、高度に着色された染料を含み、リガンドによる領域を除いて化学的に不活性の表面を有する。好ましくは、これらの粒子は直径が約1マイクロメートルであり、平均直径が5粒子よりも大きいネットワーク化生成物6が微細構造5によって保持されるようになっている。この場合、非特異性の相互作用を介して相互作用する2個または数個の粒子は、微細構造5によって保持されない。同様に、極めて小さいネットワーク化生成物6も保持されない。ウィルスの検出およびウィルスのH5N1タイプのために、粒子上のリガンドは、好ましくは、ウィルスが親和性を示す糖残基(sugar residue)である。好ましくは、インフルエンザ・ウィルスのウィルス・コート上の赤血球凝集素タンパク質を用いて、粒子上のリガンドによってネットワーク化生成物を形成する。異なるタイプの糖残基を用いることによって、ホストについてのウィルスのタイプの特異性を決定することができる。糖残基は、多糖アレイの調製または表面への化学物質またはタンパク質の架橋のために用いるもの等、標準的な技法を用いて粒子の表面に架橋することができる。1つのみの信号領域を用いた広いスペクトルのウィルス検出が望ましい場合、粒子をいくつかのタイプの多糖によって覆うことができる。別の可能な方法は、粒子上のリガンドとして抗体または抗体フラグメントを用いることである。また、異なるタイプの抗体で粒子を覆うことも可能である。赤血球、ペプチド、またはファージ等、粒子上で他のタイプのリガンドを用いることも可能である。
【0070】
好ましくは、微細構造5の後に、チャネル2a2、2b2および図8に図示しない毛管ポンプを接続する。接続チャネル2a2および2b2の寸法は、好ましくは、それらの寸法(例えば高さまたは幅あるいはその両方)の少なくとも一方がサンプル処理ユニット24の最小寸法よりも小さいような寸法とする。特に、これは、液体を前進させるために、サンプル処理ユニット24の空洞よりも接続チャネル2a2、2b2においてもっと強力な毛管圧力が存在することを確実とする。毛管ポンプは、理想的には、本例では約100マイクロリットルである空洞の容積と同等の総容積を有する。毛管ポンプの総容積は、フィルタを通過する液体の容積を決定することが好ましく、試験のために必要である全体的な時間を決定するのに用いることができる。
【0071】
毛管ポンプにおける液体の流れは、ポンプ内の構造の臨界寸法を拡大または縮小することによって加速または減速することができる。第1の近似において、毛管ポンプ内で更に離間させた構造では、もっと近付けた構造よりも、発生する毛管力および流量が小さくなる。しかしながら、毛管ポンプにおいて構造をあまりに近付けると、水圧抵抗がポンプ充填レートに著しい影響を及ぼす。更に、離間距離が小さすぎる構造を有する毛管ポンプは、数個の粒子を含む集合体によって詰まる恐れがある。好ましくは、相互に20マイクロメートル離間し六角形の格子を形成する六角形の構造を用いる。これらの構造の寸法および高さを、毛管ポンプの外側寸法と共に変更して、液体を充填可能なポンプの総容積を決定するようにすることができる。毛管ポンプは、異なる容積を有して異なる毛管圧力を発生する複数の領域を含んで、デバイスを通過する液体の流量を増大または低減させることができる。毛管ポンプは、好ましくは、その端部において1つまたは数個の通気チャネルを有し、デバイスを充填する液体によって空気を移動させることが可能であることを確実とする。通気チャネルは、極めて小さい毛管圧力を発生する大きい開いた通気空洞によって拡張することができる。この場合、空気は通気チャネルおよび通気空洞を介して逃げ、液体は通気チャネルを充填するが、通気チャネルと通気空洞との間の接合領域で停止する。これに代わる選択肢は、通気チャネルまたは通気空洞あるいはその両方を疎水性にすることである。COCを用いる場合、これは、デバイスの他の領域を金で覆う間に通気チャネルまたは通気空洞あるいはその両方を隠すことによって実行可能である。
【0072】
本発明の一実施形態は、単一の測定チャネルの使用に限定されず、図8に一例として示すような更に別の複数の測定チャネルを組み込むことも可能である。この点について、一例として、本発明の一実施形態は別の1つの測定チャネルを組み込むことができ、以降これを第2の測定チャネル2bと称する。関連した微細構造を有する第2の測定チャネル2bの特性は、第1の測定チャネル2aのものとは異なるように選択することができ、これによってサンプルまたはサンプルにおいて検出されるアナライトあるいはその両方について更に別の見通しを得ることができる。例えば、第2の測定チャネル2bは、少なくとも1つの異なる関連した流体力学的または化学的あるいはその両方の特性を有するという点で、第1の測定チャネル2aとは異なるように構成することができる。流体力学的特性の差に関しては、本発明の一実施形態において、異なるレベルの感度を組み込むことができる。例えば、第1の測定チャネル2aの毛管ポンピングは、第2の測定チャネル2bよりも低速であるように選択することができる。このため、第2の測定チャネル2bに比べて、第1の測定チャネル2aに関連した結果からの方が高い感度歩留まりを得ることができる。また、本発明の一実施形態における第2または更に別の測定チャネルは、各々、第1の測定チャネル2aのものとは異なる関連した化学的特性を有するように構成することができる。例えば、第2の測定チャネル2bの内壁は、第1の測定チャネル2aに比べて、サンプルまたは検出反応物3あるいはその双方が付着する確率が低くなるように適合することができる。このように、サンプルと検出反応物3との間の相互作用の確率を高めることによって、および、測定チャネルが詰まる確率を低くすることによって、本発明の一実施形態の性能を更に改善する。
【0073】
本発明の一実施形態においては、ネットワーク化生成物6が異なる特徴で形成されるように、第2の測定チャネル2bを第1の測定チャネル2aとは異なるように構成することができる。一例として、第2の測定チャネル2bは、第1の測定チャネル2aにおけるものと同じ検出反応物3を含むように構成することができる。このため、それらは、サンプル内に存在する場合には、同一のアナライト4を検出する。第1の測定チャネル2aにおけるものとは異なる形成上の特徴でネットワーク化生成物6が形成されるように第2の測定チャネル2bを構成することによって、アナライト4の濃度を決定することができる。この点について、例として、形成上の特徴は、測定チャネルの長さとして選択することができる。この点について、ネットワーク化生成物6を形成するためのサンプルと検出反応物3との相互作用および第2の測定チャネル2bに関連した微細構造によるネットワーク化生成物6の収集が、第1の測定チャネル2aにおけるよりも短い期間にわたって起こるように、第2の測定チャネル2bを構成することができる。第1および第2の測定チャネル2a、2bに関連した微細構造が実質的に同じ特徴を有するために、第2の測定チャネル2bに関連した微細構造によって収集されたネットワーク化生成物6の濃度は、第1の測定チャネル2aにおいて収集されたものよりも必然的に高い。サンプル内のアナライト4の濃度に関する知識の取得は、人に行われる治療を決定するために有利に適用することができる。更に、本発明の一実施形態を適用してアナライト4の濃度を定期的に決定することによって、例えば、投与した薬物の効果、ウィルスの潜伏期間のモニタリングを行うことができる。
【0074】
本発明の一実施形態において、第2の測定チャネル2bは、異なる検出反応物3を含むという点で、第1の測定チャネル2aとは異なるように構成することができる。このように、本発明の一実施形態の適用は、サンプル内に更に別のアナライトが存在する場合にこれを同時検出するために拡張することができる。この場合、更に別のアナライトに対応する検出反応物3が収容されている第2の測定チャネル2bに、サンプルを流すことができる。第2の測定チャネル2bにおいて、サンプル内の更に別のアナライトおよび検出反応物3の相互作用によって形成されたネットワーク化生成物6は、第2の測定チャネル2bに関連付けられて結合された微細構造5によって収集することができる。これは、例えば異なるインフルエンザ・ウィルスAおよびBを同時に検出するように本発明の一実施形態を構成可能であるという利点を与える。
【0075】
サンプル収集を容易にするため、サンプル収集ユニット14は、本発明の一実施形態において綿棒を含む。この特徴は図5において最も明らかに見られる。図5は本発明の一実施形態を示し、これが示す装置1は、内部に測定チャネル2aが形成され端部にサンプル収集ユニット14が取り付けられた細長い筐体21を含む。サンプル収集ユニット14は、サンプルの処理を初期化可能であるように、化学物質を追加して用意されている。
【0076】
典型的に、本発明の一実施形態における所与の測定チャネル2aはマイクロ流体毛管であり、ミクロン規模の寸法を有する。このため、これは、ろ過されたネットワーク化生成物6を視覚的に検出する際に課題を生じる場合がある。この問題を軽減するため、本発明の一実施形態において視認ゾーン15を設ける。これは、ろ過したネットワーク化生成物6の視覚的な検出を向上させるように構成されており、この特徴は図5において最も明らかに見られる。好適な実施形態においては、視認ゾーン15は、第1または第2あるいはその両方の測定チャネルに対応する微細構造5が結合された領域の上に設けられたウィンドウである。好適な実施形態においては、ウィンドウは、実質的に透明な材料を含むか、または拡大鏡を含むか、あるいはその両方である。
【0077】
図6を参照すると、図5に従った装置の実施形態が概略的に示され、筐体21のカバー22が筐体21のベース23から取り外されている。
【0078】
筐体21は、好ましくはプラスチック材料で形成され、高温でエンボス加工するか、または射出成型することができる。ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、または環式オレフィン・コポリマー(COC)等の材料を使用可能である。COCは、機械的および化学的に耐性のプラスチックであり、水に対する非透過性が高く、可視光線および紫外線光に対して充分に透過性であるので、好適である。筐体21は、好ましくは、図5に示すようにベース23およびカバー21等の2つの合わせ部分を組み立てることによって形成され、1つの部分または双方の部分に検出反応物3を追加する。好ましくは、ベース23は、成型することによって、試験のために必要な最も小さいマイクロ流体構造を画定し、カバー21は、ネットワーク化生成物6が収集される領域において光透過性のウィンドウ15aを有する。例えば、ネットワーク化生成物6をろ過するための微細構造5は、ベースにおいて成型することで、微細構造5全体を形成するために2つの部分を精密に組み合わせる必要性をなくす。好ましくは、ベース23におけるいずれの構造も全て同じ深さを有して、高い精度の型の製造を簡略化する。なぜなら、異なる高さで小さい特徴および大きい特徴を有する型を用意するのは難しい場合があるからである。
【0079】
例えば、ユーザによってサンプルが毛管ポンプに装填されるパッドまたは図5および6に示すような綿棒から液体を移動させることができる毛管圧力を発生させるために、装置の表面、もっと具体的には筐体21の内面は、濡れ性があることが好ましい。プラスチック表面は、酸素ベースのプラズマに短時間露呈すること、または深紫外線光および酸素を用いて生成したオゾンに露呈することによって、濡れ性を持たせることができる。別の可能な方法は、筐体のベースの内面をチタニウムおよび金で覆うことである。好適な方法は、スパッタリング法を用いて、2nmのチタニウムおよび10nmの金を堆積することである。チタニウム層は、プラスチックと金との間の付着促進剤として作用し、これによって、プラスチック材料に対して金を強固に付着することを確実とする。カバーの内面は、金が存在しないままにして、インジケータを見なければならない領域において材料の良好な透明性を確実とする。あるいは、ステンシル・マスクまたは影付き蒸着(shadowed evaporation)を用いることで、カバーの内面のいくつかの領域で選択的に金をスパッタリングすることができる。新たに堆積した金は、親水性であり、アルカンチオール層で被覆することができる。好ましくは、金を、ポリ(エチレングリコール)−官能性を持たせたアルカンチオールで覆って、金の表面を親水性にすると共に、タンパク質を寄せつけないようにする。
【0080】
図6による装置1は、サンプル収容ユニット12に単方向に結合されるように構成されたサンプル収集チャネル11を更に含む。この場合、余分なサンプルはサンプル収集チャネル11に運ばれ、次いでサンプル収容ユニット12に送出されて、ここに収容される。サンプル収集チャネル11は、サンプル流が単方向となるように、すなわちサンプル収容ユニットの方向となって、その流路上で戻ることができないように構成される。余分なサンプルとは、測定チャネル(複数のチャネル)にサンプルが流れた後に残っているサンプル量を意味する。サンプル収容ユニット12で収集されたサンプルは、更に別の試験に適用することができる。この場合、サンプル収容ユニット12は、更に別の試験のために現場外へ搬送するのに適合させるため、取り外して蓋をすることができる。あるいは、本発明の一実施形態は、更に別の調査を行うために、蓋をして搬送することができる。
【0081】
図6からわかるように、サンプル収集ユニット14は、試験を行うサンプルを収集するために構成される。本発明の一実施形態においては、特定のアナライトの存在について試験を行うサンプルは、人/動物からサンプル収集ユニット14を介して収集され、次いで測定チャネル2a、2bの1つ以上に追加される。サンプル収集ユニット14は、少なくとも1つのサンプル処理ユニット(図示せず)を更に含む。この特徴によって、サンプルの前処理を行って、例えばその物理的特性を変更し、これによって所与のアナライト4の検出における本発明の一実施形態の性能を向上させることができる。かかる物理的特性は、例えば、pH、粘度、透明度、安定性、およびイオン強度を含む場合がある。この点において、サンプル収集ユニット14は、少なくとも1つのフィルタ(図示せず)を含むことができる。サンプル収集ユニット14にフィルタを組み込むことによって、試験対象の人/動物から収集したサンプル内に存在する粘液、組織断片、細胞等が、測定チャネル2aにおけるサンプル流路に入り込むこと、または詰まらせること、あるいはその両方の確率を低くすることができる。このように、本発明の一実施形態の性能を更に向上させることができる。
【0082】
所与の測定チャネルに結合された微細構造5において収集されたネットワーク化生成物6の視覚的な検出は、形成されるネットワーク化生成物6の濃度に依存する。低い濃度で形成された場合、微細構造5によって収集されたネットワーク化生成物6の視認性低下を補償するために、測定チャネル2a、2bは、関連付けられた微細構造5に結合する領域において所定の幾何学的形状18を有するように設計することができる。この点において、本発明の一実施形態では、この幾何学的形状は、微細構造5によって収集されたネットワーク化生成物6の視覚的検出を向上させるように選択する。例えば、測定チャネル2a、2bは、関連付けられた微細構造に結合した段差を組み込むことができる。これは図7に示されている。視認ゾーン15によって、ユーザは、3つのチャネル2a、2b、2cの微細構造5をモニタすることができる。各微細構造は、チャネルにおける段差として設計された各チャネルの部分において実施される。ユーザの視認性を向上させるために微細構造が配置された領域で各チャネルのチャネル構造を拡大する代わりに、いっそう寸法効率的な方法は、チャネルの垂直部分において微細構造を実施し、このため装置全体の拡大を防ぐことである。この段差のある幾何学的形状によって、装置の幅を通して利用可能な空間をもっと利用することで、試験の判読性が向上する。また、この特徴は、本発明の一実施形態のフォーム・ファクタを変更する必要なく所望の数の測定チャネルを組み込む際に適用可能である。例えば、本発明の一実施形態において、もっと少数であるが幅の広い測定チャネルを実施することができ、または、もっと多数であるが幅の狭い測定チャネルを組み込むことができる。これらは双方とも、測定チャネルに関連付けられた微細構造5において収集されたネットワーク化生成物6の視覚的検出を向上させるように機能する。
【0083】
第1の測定チャネル2aを参照して説明した特徴は、これに限定されず、本発明の第2のまたは更に別の測定チャネルに適用することも可能である。
【0084】
本発明について単に一例として説明したが、本発明の範囲内で詳細について変更を行うことができる。
【0085】
説明において開示した各特徴、ならびに、適切な場合には特許請求の範囲および図面は、個別に、またはいずれかの適切な組み合わせで、提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル内のアナライトを検出するための装置であって、
検出対象の前記アナライト(4)に対応する検出反応物(3)を含む少なくとも第1の測定チャネル(2a)と、
前記第1の測定チャネル(2a)に関連付けられた少なくとも1つの微細構造(5)と、
を含み、前記装置を用いる場合、前記サンプルを前記第1の測定チャネル(2a)内に導入して、前記第1の測定チャネル(2a)を介して前記微細構造(5)へと伝搬させ、前記アナライト(4)がサンプル内に存在する場合には前記検出反応物(3)と相互作用してネットワーク化生成物(6)を形成するようになっており、前記微細構造(5)が前記ネットワーク化生成物(6)をろ過するように構成されている、装置。
【請求項2】
少なくとも1つの関連付けられた微細構造を有する少なくとも第2の測定チャネル(2b)を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の測定チャネル(2b)が、少なくとも1つの異なる関連付けられた流体力学的または化学的あるいはその両方の特性を有するという点で、前記第1の測定チャネル(2a)とは異なるように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ネットワーク化生成物(6)が異なる特徴で形成されるように、前記第2の測定チャネル(2b)が前記第1の測定チャネル(2a)とは異なるように構成される、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の測定チャネル(2b)が、異なる検出反応物を含むという点で、前記第1の測定チャネル(2a)とは異なるように構成される、請求項2乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記ネットワーク化生成物(6)が光学的に読み取り可能な信号を供給する、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記微細構造(5)による前記ネットワーク化生成物(6)の前記ろ過を示すように構成されたインジケータを更に含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記測定チャネル(2a)がマイクロ流体毛管を含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記ネットワーク化生成物(6)の形成が制御可能であるように前記マイクロ流体毛管が設計される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記測定チャネル(2a)が、前記検出反応物を収容するための少なくとも1つの空洞を含むように構成される、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
視認ゾーン(15)を更に含み、前記視認ゾーンから前記ろ過されたネットワーク化生成物(6)を視覚的に検出可能である、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記第1および第2の測定チャネル(2a、2b)の少なくとも一方が、実質的に、対応する前記微細構造(5)に結合されている領域において、所定の幾何学的形状を有するように構成されている、請求項2乃至11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記サンプルの公差反応性について試験を行うように構成されたサンプル制御チャネルを更に含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
所与のアナライト(4)について試験をモニタするように構成された試験制御チャネルまたは領域あるいはその両方を更に含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
サンプル収容ユニット(12)に単方向に結合されるように構成されたサンプル収集チャネル(11)を更に含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
試験対象の前記サンプルを収集するために構成されたサンプル収集ユニット(14)を更に含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記サンプル収集ユニット(14)が少なくとも1つのサンプル処理ユニット(24)を更に含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記サンプル収集ユニット(14)が少なくとも1つのフィルタを含む、請求項16または17に記載の装置。
【請求項19】
前記サンプル収集ユニット(14)が綿棒を含む、請求項16、17、または18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1および第2の測定チャネル(2a、2b)の少なくとも一方に関連付けられた前記微細構造(5)のろ過能力が、前記ネットワーク化生成物(6)の推定サイズ、形状、少なくとも1つの化学的特性、またはそれらの組み合わせに従って構成される、請求項2乃至19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記第1および第2の測定チャネル(2a、2b)の少なくとも一方に関連付けられた更に別の微細構造(5)を含み、これが、同じ測定チャネルに関連付けられた前記微細構造とは異なるろ過能力を有するように構成されている、請求項2乃至20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記検出反応物(3)が光学的に検出可能な材料を含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記検出反応物(3)が、前記アナライト(4)と限定的に結合することができる少なくとも1つの受容体に化学的に結合するように適合されている、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記第1および第2の測定チャネル(2a、2b)の少なくとも一方が、少なくとも1つの抑制剤を更に含むように構成されている、請求項2乃至23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
前記第1および第2の測定チャネル(2a、2b)の少なくとも一方が、前記アナライト(4)と相互作用するための少なくとも1つの中間試薬を更に含むように構成されている、請求項2乃至24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記アナライト(4)が病原体を含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記アナライト(4)がインフルエンザ・ウィルスを含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
前記アナライト(4)がインフルエンザ・ウィルスAを含む、前出の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
サンプル内のアナライトを検出するための方法であって、
検出対象の前記アナライト(4)に対応する検出反応物(3)を含む少なくとも第1の測定チャネル(2a)を用意するステップと、
前記第1の測定チャネル(2a)に関連付けられた少なくとも1つの微細構造(5)を用意するステップと、
を含み、前記方法が、更に、
前記サンプルを、第1の測定チャネル(2a)を介して前記微細構造(5)へと伝搬させ、前記アナライト(4)がサンプル内に存在する場合には前記検出反応物(3)と相互作用してネットワーク化生成物(6)を形成するようにする、ステップと、
前記微細構造(5)によって前記ネットワーク化生成物(6)をろ過するステップと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−505555(P2011−505555A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535478(P2010−535478)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054525
【国際公開番号】WO2009/069023
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】