説明

サンプル枚葉紙排紙装置

【課題】生産機械において搬送中の枚葉紙からサンプル枚葉紙を取り出す際、サンプル枚葉紙を汚損や破損させることなく取り出すことができるとともにオペレータの安全性を充足するサンプル枚葉紙排紙装置を得る。
【解決手段】枚葉紙搬送方向の突出側に配置され、搬送チェーン7に接してグリッパー6の開閉を支持するカム仕組12と、搬送チェーン7から開放された枚葉紙をサンプル枚葉紙載置台25へ移送するシート誘導部材24と、枚葉紙へエアを供給する複数のエアノズル23と、サンプル枚葉紙載置台25への枚葉紙の有無を判別する第1光学センサ21と、カム仕組12の動作、エアノズル23からのエア供給量とエア投射方向の指示及び第1光学センサ21からの枚葉紙有無データを制御する第1制御装置19と、第1制御装置19に連結され制御内容をモニタ表示する表示装置30を備えたサンプル枚葉紙排紙装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産機械において搬送中の枚葉紙からサンプル枚葉紙を取り出す排紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サンプル枚葉紙を取り出す排紙装置については、種々異なる構成のものが公知となっている。これらの装置は、生産機械の運転中に生産成果を確認するため、サンプル枚葉紙を適宜取り出すことができるようにするものである。
【0003】
例えば、独国特許第4213032号公報では、サンプル枚葉紙を取り出すために補助ストッパーが旋回してきて先行する枚葉紙上へ下ろされ、排紙パイルの一番上にある枚葉紙が固定される。次いで、補助ストッパーの両側に配置されたブロワが排紙パイル内へ空気を吹き付け、サンプル枚葉紙を補助ストッパー上へ持ち上げる。排紙パイルの前側ストッパーは旋回して戻されており、サンプル枚葉紙は該前側ストッパーには当たらず、サンプル枚葉紙はその運動エネルギーによりパイル前縁を越えて搬送される。同時に、枚葉紙をある高さ位置に止めておく枚葉紙保持装置が、該サンプル枚葉紙の上側と、該サンプル枚葉紙に後続する枚葉紙の下側との間へ旋回される。このような形式で分離されたサンプル枚葉紙は、オペレータによってその前縁を手で掴んで取り出される技術が紹介されている。
【0004】
一般にサンプル枚葉紙の取り出しは人間の手にて行われる。オペレータは、枚葉紙ストッパーをサンプル枚葉紙取り出し位置へ移した後、手を該枚葉紙ストッパー越しに枚葉紙保持装置により上方に止められている後続枚葉紙と、場合によってはブロワによって僅かに持ち上げられているサンプル枚葉紙との間のスペース内へ差し込み、サンプル枚葉紙を掴み、デリバリから引き出す。枚葉紙をデリバリ内へ搬送する枚葉紙搬送装置、例えばチェーングリッパーシステムの運動軌道は枚葉紙パイル上の比較的僅かな距離にあるから、枚葉紙搬送装置の運動軌道を遮蔽してサンプル枚葉紙取り出しの際に、オペレータの手に枚葉紙搬送装置の運動するエレメントが接触することを防止する手保護装置を設ける必要が生じていた。
【0005】
上述したように従前までの技術を用いてサンプル枚葉紙の取り出しを行う場合、オペレータがデリバリに直接手を投入して行うことから安全性が十分であるとはいい難かった。また、サンプル枚葉紙を狭隘なデリバリから取り出す際、デリバリに存する各ガイドに接することで、サンプル枚葉紙が汚損や破損してしまう事象が生じる場合があった。これらの問題点を解消する方策として、サンプル枚葉紙をサンプル枚葉紙積載台に抽出する機能を持つ枚葉印刷機において、サンプル枚葉紙積載台を所定の位置まで移動可能とするスライド機構を有したサンプル枚葉紙積載台可動機構を当出願人は提案している。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−179513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した先行技術である特許文献1の技術を用いた場合、スライド式のサンプル枚葉紙の取り出し機構を、例えば枚葉オフセット印刷機の排出部に設けることで、オペレータがチェーングリッパー部の真下に手を挿入することなくサンプル枚葉紙を安全に機外に取り出すことができる。また、従来のサンプル枚葉紙の短辺を掴む方法に比して、サンプル枚葉紙全体をサンプル枚葉紙積載台とともに機外まで移動させることで、サンプル枚葉紙を機外に取り出す際にオペレータが保持しやすくなり、サンプル枚葉紙を汚損や破損させることなく確実に取り出すことができる。
【0008】
しかしながら、近年の生産機械技術においては、生産速度が高速化されるとともに、各種の生産ユニットが多数用いられることから、下流に存するデリバリまで到達した枚葉紙は腰がなくなり、カールした態様となる場合もあり、加えて、枚葉紙上のインク及び朱肉などの乾燥皮膜は固状になりたてで不安定な状態である。上述のような状態にてサンプル枚葉紙を抽出することが多く、必ずしもサンプル枚葉紙を汚損や破損させないで適切に取り出し続けることは困難であった。これらの現象は、複数の生産方式を1ラインにて実施するコンビネーション生産機械(例えば、複合印刷機械)において発生頻度の高い現象である。
【0009】
特に、諸証券製品等のセキュリティ機能を有する製品の生産を対象とした場合、僅かの汚損や破損によっても損紙となることから、製造に掛かるコストの上昇が懸念される。また、生産機械の高速化に伴い、サンプル枚葉紙を要求した際にチェーングリッパーの開閉タイミング不良が発生する頻度が高くなり、このことで枚葉紙の異常搬送を誘発し、数量管理を困難とするおそれもあった。
【0010】
昨今の生産機械技術においては、上述した理由により必ずしも先行技術だけでは満足できない現状がある。現時点において、上述した問題点への対策が十分に施されておらず、少なからず開発の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するため、本発明のサンプル枚葉紙排紙装置は、積層した枚葉紙を一枚ごと給紙するフィーダ部と、フィーダ部から給紙した枚葉紙に印刷要素を付加する印刷部と、印刷部において印刷要素を付加した枚葉紙を順次積層するデリバリ部とを少なくとも備えた生産機械において、生産機械稼働中にサンプル枚葉紙を取り出す排紙装置として、枚葉紙搬送方向の突出側に配置され、搬送チェーンに接してグリッパーの開閉を支持するカム仕組と、搬送チェーンから開放された枚葉紙をサンプル枚葉紙載置台へ移送するシート誘導部材と、枚葉紙へエアを供給する複数のエアノズルと、サンプル枚葉紙載置台への枚葉紙の有無を判別する第1光学センサと、カム仕組の動作、エアノズルからのエア供給量とエア投射方向の指示及び第1光学センサからの枚葉紙有無データを制御する第1制御装置と、第1制御装置に連結され制御内容をモニタ表示する表示装置とを備えて構成されることを特徴としている。
【0012】
また、本発明のサンプル枚葉紙排紙装置は、更にシート誘導部材に指向し通過する枚葉紙と接触させ、枚葉紙の反り上がりを矯正する馬毛等の動物繊維、樹脂材又はゴム材から選択される材質にて構成したシート押えブラシを付設していることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のサンプル枚葉紙排紙装置は、更にサンプル枚葉紙載置台の一方の側面に開閉バーを付設させるとともに、人手を感知する第2光学センサと、第2光学センサの反応に応じて指令を出す第2制御装置とを備え、第2制御装置からの指令により前記開閉バーの開閉が行われることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のサンプル枚葉紙排紙装置におけるシート誘導部材は、通過する枚葉紙との接触抵抗を抑制するため、シート誘導部材の表面に低摩擦材料を塗布していることを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明のサンプル枚葉紙排紙装置におけるサンプル枚葉紙載置台は、サンプル抽出した枚葉紙との接触抵抗を抑制するため、サンプル枚葉紙載置台の表面の材質を金属材、樹脂材又はゴム材から選択される材質にて形成するとともに、サンプル枚葉紙載置台の表面形状を50%乃至70%の空隙率を有するスルーホール形状としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のサンプル枚葉紙排紙装置は、枚葉紙搬送方向の突出側に配する態様としているほか、枚葉紙の波打ち箇所にエアをスポット投射できることから、枚葉紙の垂れ下がりや腰がなくカールしている枚葉紙のサンプル抽出時においてもデリバリに存する各ガイドに接することがほとんど無く、製品品質の保全が実現できる。また、デリバリにおいて確実なサンプル枚葉紙の排紙が実現できることから、従前まで排紙異常に伴って懸念されていた数量異常の発生が抑制できる。
【0017】
また、本発明のサンプル枚葉紙排紙装置は、枚葉紙との接触抵抗を極力抑制できる機構を随所に配設していることから、サンプル枚葉紙を抽出する際に従前まで発生していた枚葉紙の角折れや引っかかり、更にはインク及び朱肉などの乾燥皮膜への接触により発生していた枚葉紙の汚損や破損が抑制できるなど、サンプル枚葉紙の抽出が適正に実施できることからコストの低廉化が図れる。
【0018】
さらに、本発明のサンプル枚葉紙排紙装置を用いることで、上述した課題における全ての問題点が解消されることから作業効率の向上が図れる。加えて、サンプル枚葉紙の抽出時にオペレータが搬送チェーン近傍まで手を入れることをしなくて済み、オペレータの安全性をより充実させることが可能である。また、サンプル枚葉紙の抽出異常の発生が殆ど無いことから、これに伴う不稼働時間が発生せず、オペレータの作業負荷の低減及び生産機械の稼働率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のサンプル枚葉紙排紙装置を付設した生産機械の概略図である。
【図2】本発明のサンプル枚葉紙排紙装置の詳細を示す概略図である。
【図3】本発明の別形態のサンプル枚葉紙排紙装置の詳細を示す概略図である。
【図4】本発明におけるサンプルシート載置台における表面態様の一例を示す概略図である。
【図5】一般的なサンプル枚葉紙排紙装置の一例を示す概略図である。
【図6】一般的なサンプル枚葉紙排紙装置を付設した生産機械の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1乃至図6に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1は本発明におけるサンプル枚葉紙排紙装置を付設した生産機械の概略図である。また、図2は本発明におけるサンプル枚葉紙排紙装置の詳細を示す概略図である。また、図3は本発明における別形態のサンプル枚葉紙排紙装置の一例を示す概略図である。また、図4は本発明におけるサンプルシート載置台における表面態様の一例を示す概略図である。さらに、図5は一般的なサンプル枚葉紙排紙装置の一例を示す概略図であり、図6は一般的なサンプル枚葉紙排紙装置を付設した生産機械を示す概略図である。
【0021】
まず、一般的なサンプル枚葉紙排紙装置について詳細に説明する。図6に示す一般的なサンプル枚葉紙排紙装置を付設した生産機械(例えば、印刷機械)を用いて生産を行う場合、まず、枚葉紙(5)が多数積層されたフィーダ部(2)から枚葉紙(5)が一枚ごと適宜供給される。次いで、下流に存する印刷部(3)において印刷要素が付加され、その後、枚葉紙(5)は複数の支持具(8)により支持された、多数のグリッパー(6)を有する搬送チェーン(7)によりデリバリ部(4)へ排紙されることで一連の生産が実施される。
【0022】
そして、印刷要素が付加された枚葉紙(5)は、第1パイル(10)又は第2パイル(11)に存するシート載置プレート(13)上に積層され、一定量を充足すると機外へと取り出される。ここで、枚葉紙(5)への印刷状態を確認するため、印刷機械の稼働中に、数百枚に1枚程度の割合でサンプルを採取することがなされる。このサンプル採取については、回動する搬送チェーン(7)に多数存するグリッパー(6)を適宜開閉することで、グリッパー(6)に把持された枚葉紙(5)をサンプル取出パイル(18)へ投入させ、ガイド(9)に接触させることで落下させる仕組となっており、最終的にサンプルシート取出口(17)からサンプル枚葉紙を取り出すことでなされている。
【0023】
一般にサンプル枚葉紙排紙装置は、図5に示すように、搬送チェーン(7)に存するグリッパー(6)の開閉によって開放されたサンプル枚葉紙(5)の一端と接触し、サンプル枚葉紙(5)を落下させるガイド(9)と、当該サンプル枚葉紙(5)を載置するとともに伸縮自在である可動式サンプル枚葉紙載置台(16)と、複数の車輪(14)を付設した台車(29)とから構成される。また、可動式サンプル枚葉紙載置台(16)は、手動においても取り出すことを可能とするため、台車(29)に把手(15)を配設している態様である。なお、図5(a)は一般的なサンプル枚葉紙排紙装置を正面から観察した概略図であり、図5(b)は一般的なサンプル枚葉紙排紙装置を側面から観察した概略図を夫々示している。
【0024】
一方、図1に示すように本発明のサンプル枚葉紙排紙装置(1)は、生産機械において、デリバリ部(4)の枚葉紙搬送方向から突出するように配した態様としており、その構成としては、図2に示すように搬送チェーン(7)に接するように設けられ、グリッパー(6)の開閉を支持するカム仕組(12)と、搬送チェーン(7)から開放されたサンプル枚葉紙(図示せず)を一端にガイド(9)を有するサンプル枚葉紙載置台(25)へ適正に移送するため、表面に低摩擦材料(例えば、シリコーン)を塗布したシート誘導部材(24)と、カールしたサンプル枚葉紙(5)の反り上がりを抑制するためエアを供給する複数のエアノズル(23)と、サンプル枚葉紙載置台(25)へのサンプル枚葉紙(図示せず)の有無を判別するための第1光学センサ(21)と、カム仕組(12)の動作、エアノズル(23)からのエア供給量とエア投射方向の指示、及び第1光学センサ(21)からのデータを制御する第1制御装置(19)と、第1制御装置(19)に連結され、制御内容をモニタ表示できる表示装置(30)とから構成される。
【0025】
また、図3に示すように本発明のサンプル枚葉紙排紙装置(1)は、上述した図2に示すサンプル枚葉紙排紙装置に加えて、極端にカールしたサンプル枚葉紙(5)の反り上がりを矯正するため、更にシート誘導部材(24)に対向する位置にシート押えブラシ(26)を付加させた態様とする場合がある。ここで、シート押えブラシ(26)に用いる材質はシートの種類によって適宜選択することになるが、例えば馬毛や豚毛等といった動物繊維ブラシを用いる場合や樹脂製ブラシ又はゴム製ブラシを用いる場合がある。また、サンプル枚葉紙(5)の取り出し時におけるオペレータの安全性を更に高めるために、サンプル枚葉紙載置台(25)へオペレータが手を投入する際にのみ、開閉バー(27)が開く機構を付設させた態様とする場合がある。なお、この開閉バー(27)の開閉はサンプル枚葉紙載置台(25)の近傍に配設した、人手を感知する第2光学センサ(22)と、この第2光学センサ(22)の反応に応じて指令を出す第2制御装置(20)により実施される。
【0026】
さらに、図4に示すように本発明のサンプル枚葉紙排紙装置は、サンプル枚葉紙(5)の搬送によって発生する静電気を抑制するために、サンプル枚葉紙載置台(25)の材質を汎用される金属材とは異なり、樹脂材とする場合又はゴム材とする場合がある。また、サンプル枚葉紙載置台(25)における表面態様として50%乃至70%の空隙率を有するスルーホール態様のサンプル枚葉紙載置台(25’、25’’)とする場合がある。ここで、空隙(28)の形状は図4(a)に示すように円形とする場合や、図4(b)に示すように長方体とする場合がある。
【実施例】
【0027】
次に、本発明における実施の例示について、図面を参酌しながら詳細に説明する。図1に示すような印刷機械をベースとして、更にオフセット印刷部(3)の下流にスクリーン印刷機構(図示せず)を配設した複合印刷機械を用いて、枚葉紙10万枚の連続印刷を実施し、そのうち500枚に1枚の割合で、サンプル枚葉紙の抽出を実施した。なお、枚葉紙の搬送速度は11,000/時間に設定して実施した。また、サンプル枚葉紙排紙装置(1)は図3に示すようにグリッパー(6)の開閉を支持するカム仕組(12)と、搬送チェーン(7)に存するグリッパー(6)から開放されたサンプル枚葉紙(図示せず)を一端にガイド(9)を有するサンプル枚葉紙載置台(25)へ適正に移送するため、表面にシリコーンを塗布したシート誘導部材(24)と、カールしたサンプル枚葉紙(5)の反り上がりを抑制するためエアを供給する複数のエアノズル(23)と、サンプル枚葉紙載置台(25)へのサンプル枚葉紙(図示せず)の有無を判別するための第1光学センサ(21)と、カム仕組(12)の動作、エアノズル(23)からのエア供給量及びエア投射方向、及び第1光学センサ(21)からのデータを制御する第1制御装置(19)と、第1制御装置(19)に連結され、制御内容をモニタ表示できる表示装置(30)と、極端にカールしたサンプル枚葉紙(5)の反り上がりを矯正するための馬毛にて構成したシート押えブラシ(26)と、サンプル枚葉紙載置台(25)へオペレータが手を投入する際にのみ開くように設計された開閉バー(27)と、この開閉バー(27)の開閉を判断するためにサンプル枚葉紙載置台(25)の近傍に配設した人手を感知する第2光学センサ(22)と、この第2光学センサ(22)の反応に応じて指令を出す第2制御装置(20)とから構成される機構を用いた。
【0028】
まず、枚葉紙をサンプル抽出した例示について説明する。搬送チェーン(7)に存するグリッパー(6)に把持され搬送された枚葉紙(5)をサンプル抽出するために、オペレータは第1制御装置(19)を操作する。当該第1制御装置(19)からの命令を受けて、カム仕組(12)が適宜移動し、搬送チェーン(7)を接触緊張させて、グリッパー(6)とカム仕組(12)のカムが接触することで、グリッパー(6)が開放される。そのことで、サンプル枚葉紙(5)は搬送軌道を変えて、シート誘導部材(24)の表面に搬送される。ここで、シート誘導部材(24)の近傍に複数配置したエアノズル(23)から吐出されるエアにより、サンプル枚葉紙(5)がシート誘導部材(24)に押しつけられてシートにおけるカール状態の矯正が行われる。なお、エアノズル(23)からエアは、サンプル枚葉紙(5)に対して投射量自在にスポット投射することが可能であって、一般的に用いられている対象物の全面に対してエアを投射するエアファンとは、その構成が異なるものである。
【0029】
また、シート誘導部材(24)に対向する位置に付設した、馬毛群から構成されたシート押えブラシ(26)をサンプル枚葉紙(5)に軽接触させることでサンプル枚葉紙(5)の波打ち状態を更に矯正できることを確認した。なお、シート押えブラシ(26)をサンプル枚葉紙(5)に対して強く接触させることは、サンプル枚葉紙(5)の汚損や破損を誘発することから有用でないことも確認した。その後、サンプル枚葉紙(5)は下流に存するサンプル枚葉紙載置台(25)に搬送され、サンプル枚葉紙(5)の一端がガイド(9)と接触することでサンプル枚葉紙載置台(25)に落下する。ここで、サンプル枚葉紙(5)のガイド(9)からの飛び出しを抑制するために、サンプル枚葉紙(5)と接触するガイド(9)表面の形状を僅かに鋸形(図示せず)に設計している。また、ガイド(9)の表面には、サンプル枚葉紙(5)との摩擦を抑制するために低摩擦材料であるフッ素系樹脂(図示せず)を塗布している。なお、サンプル枚葉紙載置台(25)へのサンプル枚葉紙(5)の有無はサンプル枚葉紙載置台(25)の上部近傍に設置した第1光学センサ(21)により判断され、第1制御装置(19)を介して表示装置(30)に表示され確認することができる。
【0030】
次いで、サンプル枚葉紙載置台(25)からのサンプル枚葉紙(5)の取り出しについては、オペレータがサンプル枚葉紙載置台(25)の近傍へ手を投入すると、サンプル枚葉紙載置台(25)の近傍に配設した第2光学センサ(22)がその手を感知し、第2制御装置(20)を介して、開閉バー(27)が開くことになり、サンプル枚葉紙載置台(25)に搬送されたサンプル枚葉紙(5)を容易に取り出すことができる。なお、第2光学センサ(22)の配置個数については、本実施例においては1箇所として実施したが当然複数設置する場合もある。また、開閉バー(27)が開くタイミングについては、第2制御装置(20)において任意に設定することが可能である。本実施例においては、オペレータが一度手を投入すると3秒間、開閉バー(27)が開き続ける設定とした。
【0031】
上述した条件においてサンプル枚葉紙(5)の抽出を実施したところ、デリバリ部に存する各種ガイドと接触することはなく、当該サンプル枚葉紙(5)の表面状態を観察した結果、サンプル枚葉紙(5)の抽出におけるサンプル枚葉紙(5)への汚損や破損は全く発生しておらず全て良好であった。引き続き、適切にサンプル枚葉紙(5)を抽出することが可能であると判断できた。
【0032】
また、図4(a)に示すように、サンプル枚葉紙載置台(25’)の形状をおよそ55%の空隙率を有するようなスルーホールに設計し、その材質を樹脂としたことで、従前、サンプル枚葉紙(5)の搬送の際に発生していた静電気の発生が抑制できていたことを確認した。また、図4(b)に示すように、サンプル枚葉紙載置台(25’’)の形状をおよそ70%の空隙率を有するようなスルーホールに設計した場合についても確認したが、同様に良好な結果を得た。これらの結果より、従前のようにサンプル枚葉紙載置台(25’、25’’)の近傍に大掛かりな静電気除去装置を配設することなく、静電気による不具合の発生を抑制することが可能であることを確認した。なお、サンプル枚葉紙載置台(25’、25’’)における空隙率については、過剰に大きく設計する(例えば、70%以上の空隙率とする)ことはサンプル枚葉紙載置台自体の強度が弱くなり、大量のサンプル枚葉紙を積載することが困難となることから有用ではなく、逆に過剰に小さくする(例えば、50%以下の空隙率とする)ことは静電気の発生が懸念されることから有用でないことを経験的に承知した。これらの例示については、前述した例示と略同様であるので、その説明については省略する。
【0033】
また、サンプル枚葉紙排紙装置(1)において、シート押えブラシ(26)を使用しない態様として実施した結果についても一様の効果があることを確認している。また、使用するシート押えブラシ(26)の材質について、馬毛等の動物繊維以外についても確認したが、極端な軟質樹脂を用いた場合はサンプル枚葉紙(5)のカール矯正が困難であること及びブラシの抜け落ちによる不具合が発生することから有用でなく、逆に極端な硬質樹脂を用いた場合はサンプル枚葉紙(5)の表面を強く擦ることから、サンプル枚葉紙(5)の汚損の一因となり有用でないことを経験的に承知した。なお、これらの例示についても前述した例示と略同様であるので、その説明については省略する。
【0034】
上述した実施例はあくまで例示の一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載されている範囲において、あらゆる実施の形態が存在することは言うまでもない。例えば、本実施例ではオフセット印刷機構とスクリーン印刷機構を1ラインにて実施する複合印刷機械を用いた場合について説明してきたが、1ライン上に凹版印刷機構や金属シート貼付機構を更に追設した複合印刷機構やその他の生産機構を用いる場合なども容易に推量でき、当然権利範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 サンプル枚葉紙排紙装置
2 フィーダ部
3 印刷部
4 デリバリ部
5 シート(枚葉紙)
6 グリッパー
7 搬送チェーン
8 支持具
9 ガイド
10 第1パイル
11 第2パイル
12 カム仕組
13 シート載置プレート
14 車輪
15 把手
16 可動式サンプル枚葉紙載置台
17 サンプルシート取出口
18 サンプル取出パイル
19 第1制御装置
20 第2制御装置
21 第1光学センサ
22 第2光学センサ
23 エアノズル
24 シート誘導部材
25、25’、25’’ サンプル枚葉紙載置台
26 シート押えブラシ
27 開閉バー
28 空隙
29 台車
30 表示装置(モニター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層した枚葉紙を一枚ごと給紙するフィーダ部と、前記フィーダ部から給紙した枚葉紙に印刷要素を付加する印刷部と、前記印刷部において印刷要素を付加した枚葉紙を順次積層するデリバリ部とを少なくとも備えた生産機械において、生産機械稼働中にサンプル枚葉紙を取り出す排紙装置として、枚葉紙搬送方向の突出側に配置され、搬送チェーンに接してグリッパーの開閉を支持するカム仕組と、前記搬送チェーンから開放された枚葉紙をサンプル枚葉紙載置台へ移送するシート誘導部材と、前記枚葉紙へエアを供給する複数のエアノズルと、前記サンプル枚葉紙載置台への前記枚葉紙の有無を判別する第1光学センサと、前記カム仕組の動作、前記エアノズルからのエア供給量とエア投射方向の指示及び前記第1光学センサからの枚葉紙有無データを制御する第1制御装置と、前記第1制御装置に連結され制御内容をモニタ表示する表示装置とを備えて構成されることを特徴とするサンプル枚葉紙排紙装置。
【請求項2】
前記サンプル枚葉紙排紙装置は、更に前記シート誘導部材に指向し通過する枚葉紙と接触させ、前記枚葉紙の反り上がりを矯正する馬毛等の動物繊維、樹脂材又はゴム材から選択される材質にて構成したシート押えブラシを付設していることを特徴とする請求項1記載のサンプル枚葉紙排紙装置。
【請求項3】
前記サンプル枚葉紙排紙装置は、更に前記サンプル枚葉紙載置台の一方の側面に開閉バーを付設させるとともに、人手を感知する第2光学センサと、前記第2光学センサの反応に応じて指令を出す第2制御装置とを備え、前記第2制御装置からの指令により前記開閉バーの開閉が行われることを特徴とする請求項1記載のサンプル枚葉紙排紙装置。
【請求項4】
前記シート誘導部材は、通過する枚葉紙との接触抵抗を抑制するため、シート誘導部材の表面に低摩擦材料を塗布していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のサンプル枚葉紙排紙装置。
【請求項5】
前記サンプル枚葉紙載置台は、サンプル抽出した枚葉紙との接触抵抗を抑制するため、サンプル枚葉紙載置台の表面の材質を金属材、樹脂材又はゴム材から選択される材質にて形成するとともに、前記サンプル枚葉紙載置台の表面形状を50%乃至70%の空隙率を有するスルーホール形状としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のサンプル枚葉紙排紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−121646(P2012−121646A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272271(P2010−272271)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】