説明

サーキュラーソー

【課題】工具本体の厚みが薄い薄刃であっても、高精度な切断加工や溝入れ加工が可能なサーキュラーソーを提供する。
【解決手段】工具本体外周に高硬度焼結体チップからなる切れ刃が複数設けられたサーキュラーソーで、その工具本体には微粒超硬合金を用いて、高硬度焼結体チップの先端部の厚みを内周側よりも薄くする。工具本体の厚みを薄くする必要がないので、薄刃であっても、高精度・高能率な切断加工、溝入れ加工が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状の工具本体の外周に、高硬度焼結体チップから成る切れ刃が複数設けられたサーキュラーソーに関する。特に、工具本体の厚みが薄い、薄刃のサーキュラーソーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の工具としては、メタルソーと呼ばれる切削工具が知られている。(特許文献1)
【0003】
別の従来のこの種の工具としては、超硬合金の工具本体にCVD法により合成された多結晶ダイヤモンドを被覆した研削工具が知られている。(特許文献2)
【0004】
さらに別の従来のこの種の工具としては、工具本体に多結晶ダイヤモンドからなる切れ刃を設けた切削工具が知られている。(特許文献3)
【0005】
さらに別の従来のこの種の工具としては、メタルソーと呼ばれる薄刃の切削工具がJIS B4219で規定されている。この規格では、外径32〜315mm、幅0.3〜6mmのメタルソーについて規定されている。(非特許文献1)
【0006】
さらに別の従来のこの種の工具としては「超硬丸のこ」と呼ばれる切削工具がJIS B4805で規定されている。この規格は、主として木材の加工に使用する超硬チップが工具本体に固着された「超硬丸のこ」について規定されている。(非特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−263911号公報
【特許文献2】特開2000−225511号公報
【特許文献3】特開2007−190642号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「JISハンドブック1997」、日本規格協会、1997年、P395〜399、メタルソー、B4219
【非特許文献2】「JISハンドブック1997」、日本規格協会、1997年、P925〜928、超硬丸のこ、B4805
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の薄刃の工具では高精度な切断加工や溝入れ加工が出来ない問題や、工具寿命が短くなる問題が発生することがあった。この問題は特に工具本体の厚みが薄くなるほど顕著であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のサーキュラーソーは、円盤状の工具本体の外側に、高硬度焼結体チップからなる切れ刃が複数設けられたサーキュラーソーであって、工具本体の厚みtと、サーキュラーソーの外径Dとの比の値(t/D)が0.00025〜0.05であることを特徴とするサーキュラーソーである。
【0011】
詳しくは高硬度焼結体チップは、ダイヤモンド焼結体またはCBN焼結体であることを特徴とする、サーキュラーソーである。
高硬度焼結体チップはダイヤモンドを主成分とするダイヤモンド焼結体(PCD)または、CBNを主成分とするCBN焼結体(PCBN)を用いることが出来る。特に、ダイヤモンド焼結体は、耐摩耗性が超硬合金の数十倍以上ときわめて優れていることから、本発明に最も適している。
なお、高硬度焼結体チップとして上記の材料以外に超硬合金、サーメット、セラミックスなども用いることができるのはいうまでもない。
【0012】
さらに詳しくは、工具本体(台金またはボディとも呼ばれる)の材質は、超硬合金であることを特徴とするサーキュラーソーである。
工具本体の材質は超硬合金であることが好ましい。微粒のWCを含有する微粒子超硬合金であることがより好ましい。
なお、工具本体の材質は上記の材料以外に超硬合金、サーメット、セラミックスなども用いることができるのはいうまでもない。
【0013】
さらに詳しくは、工具本体の厚みtは、0.05mm以上1.0mm以下であることを特徴とするサーキュラーソーである。
【0014】
さらに詳しくは、工具本体の外径Dは、20mm以上200mm以下であることを特徴とするサーキュラーソーである。
【0015】
さらに詳しくは、高硬度焼結体チップは、低融点のロウ材、または導電性を付与した接着剤などを用いて工具本体に固着されていることを特徴とするサーキュラーソーである。
【0016】
さらに詳しくは、前記高硬度焼結体チップの先端部の厚みは、内周側よりも薄く形成されていることを特徴とするサーキュラーソーである。
図4に示すように、高硬度焼結体チップの先端部の厚みT1を内周側T2よりも薄くすることにより、工具本体の厚みを薄くする必要がない。従って、薄刃であっても、高精度・高能率な切断加工、溝入れ加工が可能となる。この場合では通常、厚みT1の部分だけが加工に作用し、T2部分は加工に作用しないように用いられる。このように、高硬度焼結体チップが工作物に作用する部分だけを薄くすることが出来るので、工具本体の剛性を低下させることなく薄刃のサーキュラーソーを製造することができる。
【0017】
さらに詳しくは、各種金属材料、木材、合板、FRP、CFRP、樹脂、ゴム、半焼成セラミックス、グリーンセラミックス、のいずれかひとつ、またはこれらから選択された、2種類以上の材料から構成される複合材料の切削加工に用いられることを特徴とするサーキュラーソーである。
ここでは、セラミックスの原料粉末と結合材を混合し成形したセラミックス成形体のことをグリーンセラミックス(グリーン成形体または、生成形体とも呼ばれる)と呼ぶ。そして、このグリーンセラミックスを焼成温度より低い温度で仮焼したものを半焼成セラミックスと呼ぶ。セラミックスの材質は、各種のセラミックス材料からなるものに適用可能であり、特に材質には限定されない。
【発明の効果】
【0018】
本発明のサーキュラーソーを用いることにより、各種材料を高能率かつ高精度に切削加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の平面図を示す。
【図2】実施例1のチップの拡大図を示す。
【図3】実施例1のチップをすくい面側から見たときの拡大図を示す。
【図4】別の実施例のチップをすくい面側から見たときの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明を実施するための最良の形態については、実施例で詳しく説明する。
【実施例1】
【0021】
以下のような本発明の実施例1のサーキュラーソーを製作して、本発明の効果を実験により確認した。
ダイヤモンド焼結体チップ(PCD)を18個、低融点の銀ロウで工具本体にロウ付けし、外径Dは70mm、工具本体の厚さtは0.25mm、刃厚Tは0.3mm、ラジアル方向すくい角αは5°、外周第一逃げ角βは10°、刃物角γは75°であるサーキュラーソーを製作した。このサーキュラーソーを用いて、FRPを切削加工を行った。使用した加工機はダイシング装置、回転数は15000/min、送り速度は600mm/min、切り込み深さは0.5mm、純水を供給しながら湿式切削加工を行った。その結果、すくい面と逃げ面には切りくずの付着は無く、刃先損傷も無く、被削材料の表面性状も良好で、切断精度も満足できる良好な結果が得られた。
(比較例1)
【0022】
実施例1のサーキュラーソーと同じ寸法の超硬合金製のメタルソーを製作した。そして実施例1と同じ条件で実験を行った。
その結果、実験を継続するにつれて、すくい面と逃げ面には切りくずが溶着し、要求切断精度が満足できなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、電子材料、半導体製品、各種基板などの工作物を高能率、高精度に切断加工するのに用いられることが考えられる。
【符号の説明】
【0024】
1 サーキュラーソー
2 高硬度焼結体チップ
3 工具本体
D 外径
T 刃厚
T1 先端部の厚み
T2 内周側の厚み
t 工具本体の厚さ
α ラジアル方向すくい角
β 外周第一逃げ角
γ 刃物角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の工具本体の外側に、高硬度焼結体チップからなる切れ刃が複数設けられたサーキュラーソーであって、
前記工具本体の厚みtと、前記サーキュラーソーの外径Dとの比の値(t/D)が0.00025〜0.05であることを特徴とするサーキュラーソー。
【請求項2】
前記高硬度焼結体チップは、ダイヤモンド焼結体またはCBN焼結体であることを特徴とする、請求項1記載のサーキュラーソー。
【請求項3】
前記工具本体の材質は、超硬合金であることを特徴とする、請求項1または2記載のサーキュラーソー。
【請求項4】
前記工具本体の厚みtは、0.05mm以上1.0mm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のサーキュラーソー。
【請求項5】
前記工具本体の外径Dは、20mm以上200mm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のサーキュラーソー。
【請求項6】
前記高硬度焼結体チップは、低融点のロウ材、または導電性を付与した接着剤などを用いて前記工具本体に固着されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のサーキュラーソー。
【請求項7】
前記高硬度焼結体チップの先端部の厚みは、内周側よりも薄く形成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のサーキュラーソー。
【請求項8】
各種金属材料、木材、合板、FRP、CFRP、樹脂、ゴム、半焼成セラミックス、グリーンセラミックス、のいずれかひとつ、またはこれらから選択された2種類以上の材料から構成される複合材料の切削加工に用いられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のサーキュラーソー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206212(P2012−206212A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73944(P2011−73944)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】