説明

サーバラックの転倒防止構造及び転倒防止方法

【課題】サーバラックの列端部のラックからの転倒を防止すること。
【解決手段】ラック群30〜50から成るラック列とラック群60〜80から成るラック列をラック筐体前面が間隔をもって向かい合うように配置し、この向かい合った両端のラック群30と60及び両端のラック群50と80の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパー90及び92を用いて連結すると共に、中央の向かい合ったラック群40と70の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパー91を用いて連結し、全体としてサーバラックの質量が増加した場合であっても共振によって列の端部のラック側から転倒することを防止したサーバラックの転倒防止構造及び転倒防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータのデータセンタに多数設置させるサーバラックの転倒防止構造及び転倒防止方法に係り、特に複数のラック群を連結したラック筐体の前面を向かい合わせて2列に配置されるサーバラックの転倒防止構造及び転倒防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にコンピュータシステムが設置されるデータセンタでは縦長箱形のサーバラック内に収容されたサーバ等の電子機器を効率良く冷却するため、免震構造のフリーアクセスフロア上にサーバラック列の筐体前面を向い合せに設置し、サーバラック前面側を空調機から排出される冷気を集めた空間であるコールドアイルとし、サーバラック背面側をサーバの排熱を集めた空間であるホットアイルとして設定し、サーバラック内に収容された電子機器がサーバラック前面側のコールドアイルから冷気を吸気し、背面側のホットアイルに暖気を排気するように構成することによって、データセンタ内の冷却効率を向上させて空調機の消費電力を削減すると共に、サーバラックの転倒を防止するように構成されている。
【0003】
なお、前記構造物の制震に関する技術が記載された文献としては、例えば下記の特許文献1が挙げられ、この特許文献1には、制震対象の主構造物に並設した従構造物をそれぞれ免震床上に配置すると共に、前記主構造物と従構造物との間を振動減衰機能を有する連結減衰要素及び連結バネ要素によって連結する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−203192
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した一般的なサーバルームにおけるサーバラックの転倒防止技術は、多数のサーバラックを連結したサーバラック列を免震床上に設置するため、サーバラック列の質量が増加し、免震床の免震性能を越えた地震が発生した際にはサーバラック列が転倒する可能性があるという課題があった。また、前記の特許文献1に記載された技術は、単体で設置される建築物を連結減衰要素及び連結バネ要素によって連結するため建築物に対する免震性は向上することができるものの、サーバラックが搭載する機器構成によって個々の重量が異なり、さらに、搭載する電子機器に対する保守員等の操作を容易にするためにラック内の上側から電子機器を搭載するため重心位置が高くなる傾向にあり、多数のラックを一列に連結した細長い設置面をもつサーバラック列の振動に対しては共振によって列の端部のラック側から転倒する可能性があるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、重量が異なるサーバラックを多数連結したサーバラック列の転倒を防止することができるサーバラックの転倒防止構造及び転倒防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、任意の電子機器を複数搭載する縦長箱形筐体のラックを複数連結したラック群を少なくとも3群連結した2列のラック列から成るサーバラックの転倒防止構造であって、前記ラック列のラック筐体前面が間隔をもって向かい合うように配置し、該向かい合った両端ラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結すると共に、中央の向かい合ったラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結することを第1の特徴とする。
【0008】
また、本発明は、任意の電子機器を複数搭載する縦長箱形筐体のラックを複数連結したラック群を少なくとも3群連結した2列のラック列から成るサーバラックの転倒防止方法であって、前記ラック列のラック筐体前面が間隔をもって向かい合うように配置する工程と、該向かい合った両端ラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結する工程と、中央の向かい合ったラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結する工程とを行うことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるサーバラックの転倒防止構造及び転倒防止方法は、ラック列のラック筐体前面が間隔をもって向かい合うように配置し、該向かい合った両端ラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結すると共に、中央の向かい合ったラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結することによって、全体としてサーバラック列の質量が増加した場合であっても、向かい合うラック群間においても相手の重量を用いて振動を緩衝することができ、共振によって列の端部のラック側から転倒することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態によるサーバラックの転倒防止構造を示す図。
【図2】本発明の実施形態が適用されるサーバラックの重量分布例を示す図。
【図3】本発明の実施形態が適用されるサーバラックの重量分布例を示す図。
【図4】本発明の実施形態が適用されるサーバラックの重量分布例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるサーバラックの転倒防止構造及び転倒防止方法の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態によるサーバラックの転倒防止構造を適用したコンピュータのサーバルーム10における多数のラックを2列に配置した際の平面を示す図であって、本実施形態が適用されるラックは、コンピュータシステムを構成するコンピュータであるサーバ、磁気ディスク装置等の記録媒体であるストレージ、外部からの侵入を阻止するためのファイアウォール、無停電電源装置であるUPS、各種スイッチ他の多数の電子機器を顧客から要求されたシステム構成に応じて任意に搭載するための縦長箱形の筐体であり、任意の電子機器を任意の個数搭載した状態で1列に連結され、搭載した電子機器を効率良く冷却するため、免震構造のフリーアクセスフロア上にサーバラック列の筐体前面を向い合せに設置し、サーバラック前面側を空調機から排出される冷気を集めた空間であるコールドアイルとし、サーバラック背面側をサーバの排熱を集めた空間であるホットアイルとして設定し、サーバラック内に収容された電子機器がサーバラック前面側のコールドアイルから冷気を吸気し、背面側のホットアイルに暖気を排気するように構成されている。
【0013】
本実施形態によるサーバラックの転倒防止構造は、図1の図面左側に示す如く、複数のラック31〜35から成る第1ラック群30と、複数のラック41〜45から成る第2ラック群40と、複数のラック50〜53から成る第3ラック群50とを一列に連結して左側ラック列を形成し、図面右側に示す如く、複数のラック61〜65から成る第4ラック群60と、複数のラック71〜75から成る第5ラック群70と、複数のラック80〜84から成る第6ラック群80とを一列に連結して右側ラック列を形成し、これらラック列の筐体前面を向い合せに設置し、サーバラック前面側をコールドアイルとし、サーバラック背面側をホットアイルとして設定している。
【0014】
前記左側ラック列の複数のラック31〜36、ラック41〜45、ラック51〜53に搭載される電子機器は、図2(a)、図3(a)、図4(a)に順に示す如く、搭載される電子機器の構成に応じてそれぞれの重量が、100.7Kg、202.2Kg、181.1Kg、222.1Kg、220.0Kg、283.3Kg、94.7Kg、126.0Kg、170.3Kg、103.7Kg、178.3Kg、259.7Kg、31.6.7Kg、274.0Kgの如く個々の重量が大きく異なり、右側ラック列の複数のラック61〜65、ラック71〜75、ラック81〜84に搭載される電子機器においても、図2(b)、図3(b)、図4(b)に順に示す如く、搭載される電子機器の構成に応じてそれぞれの重量が、210.1Kg、201.9Kg、29.0Kg、137.9Kg、113.1Kg、113.0Kg、77.3g、60.4Kg、151.3Kg、128.9Kg、305.6Kg、214.1Kg、76.9Kg、185.5Kgの如く個々の重量が大きく異なっているのが通常である。
【0015】
本実施形態によるサーバラックの転倒防止構造は、図1に示す如く、図面上方のラック群30端のラック31の筐体上面とラック群60端のラック61の筐体上面間を、吸振機能を有する防振ダンパー90を取付具90a及び90bによって連結し、同様に、図面下方端のラック群50のラック53の筐体上面とラック群80のラック84の筐体上面間を、吸振機能を有する防振ダンパー92を取付具92a及び92bによって連結し、更に、図面中央のラック群40のラック42の筐体上面とラック群70のラック73の筐体上面間を、吸振機能を有する防振ダンパー91を取付具91a及び91bによって連結するように構成する。
【0016】
また、前記防振ダンパー90及び防振ダンパー91の取付位置間の距離L1と、前記防振ダンパー91及び防振ダンパー92の取付位置間の距離L2は、両距離間における搭載電子機器による重量がほぼ均等になるような位置を設定することが望ましい。
【0017】
前記防振ダンパー90の取付位置は、ラック群30端とラック群60端の両ラックを連結するものに限られるものではなく、端部側のラック群30とラック群60の端部に近い側の任意の位置のラックを搭載重量に応じて連結するように構成しても良く、反対側においても、ラック群50とラック群80の端部に近い側の任意の位置のラックを搭載重量に応じて連結するように構成しても良い。
【0018】
このように構成した本実施形態によるサーバラックの転倒防止構造及び方法は、免震構造のフリーアクセスフロア上に筐体前面が向かい合うように配置された3群以上の複数のラック群から成るラック列において、向かい合うラック群中の任意のラック上面を、振動を吸収する吸振機能を有する防振ダンパー90〜92を用いて連結することによって、地震等が発生し、サーバラックが免震構造のフリーアクセスフロア上で振動した際、最小限の連列単位である向かい合うラック群の筐体上面を防振ダンパーを用いて連結するため、全体としてサーバラック列の質量が増加した場合であっても、向かい合うラック群間においても相手の重量を用いて振動を緩衝することができ、共振によって列の端部のラック側から転倒することを防止することができる。
【0019】
更に本転倒防止構造及び方法は、前記防振ダンパー90及び防振ダンパー91の取付位置間の距離L1と前記防振ダンパー91及び防振ダンパー92の取付位置間の距離L2を、両距離間における搭載電子機器による重量がほぼ均等になるような位置に設定することによって、中央の防振ダンパー91を境界とした左右ラックの重量による振動特性を左右で釣り合わさせることができ、このことから端部のラック側から転倒することを防止することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 サーバルーム、21 ドア、
30,40,50,60,70,80 ラック群、31〜36 ラック、
41〜45 ラック、51〜53 ラック、61〜65 ラック、
71〜75 ラック、81〜84 ラック、90〜92 防振ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の電子機器を複数搭載する縦長箱形筐体のラックを複数連結したラック群を少なくとも3群連結した2列のラック列から成るサーバラックの転倒防止構造であって、
前記ラック列のラック筐体前面が間隔をもって向かい合うように配置し、該向かい合った両端ラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結すると共に、中央の向かい合ったラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結することを特徴とするサーバラックの転倒防止構造。
【請求項2】
任意の電子機器を複数搭載する縦長箱形筐体のラックを複数連結したラック群を少なくとも3群連結した2列のラック列から成るサーバラックの転倒防止方法であって、
前記ラック列のラック筐体前面が間隔をもって向かい合うように配置する工程と、該向かい合った両端ラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結する工程と、中央の向かい合ったラック群内の任意のラック筐体の上面間を吸振機能を有する防振ダンパーを用いて連結する工程とを行うことを特徴とするサーバラックの転倒防止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−164243(P2012−164243A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25597(P2011−25597)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000233491)株式会社日立システムズ (394)