説明

サーバ装置及びデータ収集システム

【課題】処理特性が異なる機能を追加するシステム拡張をスムーズに行えるようにする。
【解決手段】検針サーバ20は、物理的に離隔された1つの物理サーバであって、そのデータ処理機能領域200に、サーバ機能部として収集管理サーバ部22、PHS収集サーバ部23及びPLC収集サーバ部24を備える。各サーバ機能部は、論理サーバとして構築され、データ通信のための論理IPアドレスが割り当てられている。サーバ機能部間において、共通インターフェース部25を仲介して、論理IPアドレスを用いたデータ通信が可能とされている。これにより、インターフェースが異なるサーバ機能を追加するシステム拡張を行う場合でも、共通インターフェース部25がインターフェースの相違を吸収するため、システムの改修や停止が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば多数の通信端局から送信されるデータを集約する処理を行うサーバ装置、及びこのサーバ装置を用いたデータ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
データ収集サーバのような集約装置と、この集約装置と無線又は有線通信可能に接続された端局とからなる通信システムを用いて、端局サイドで取得された様々なデータを集約装置でデータ収集することが知られている。例えば特許文献1には、このような通信システムを、水道メータの検針データを定期的に収集する自動検針システムに適用することが開示されている。また、当該通信システムを、電力需要家の電力使用量データを収集するための自動検針システムへ適用することも検討されている。
【0003】
上記の自動検針システムのような通信システムにおいては、システムの拡張の要請がしばしば生じる。この拡張には、単に通信端局の増加に対応するシステム拡張だけでなく、既存の機能とは処理特性が異なる機能(インターフェースが異なる機能)を追加するシステム拡張も想定される。例えば、現存の通信システムに、通信方式が異なる他の既存の通信システムを接続する場合が例示できる。具体的には、PHS(Personal Handy phone System)方式の通信系統で検針データの収集を行う収集サーバと、この収集サーバに接続された管理サーバとから成る自動検針システムが存在する場合において、PLC(Power Line Communications)方式の通信系統で検針データの収集を行う他の収集サーバを、前記自動検針システムに追加導入する場合が例示できる。
【0004】
この場合、既存のPHS方式対応の通信システムと追加導入するPLC通信システムとはインターフェースが異なることから、かかるシステム拡張の際には、PLC通信システムのためのインターフェース機能を当該自動検針システムに追加する必要性が生じる。このため、システムの改修が必要となるのであるが、この際にはシステムの運用停止が避けられない。しかし、データを定期的に収集しているシステムでは、なるべくシステムの運用停止を回避したいという要請がある。例えば、電力使用量の検針は30分単位でデータ収集が行われるため、システムが長く停止するとリアルタイムの検針値の確認ができなくなる。このため、システムの柔軟な拡張が行えないという不具合があった。
【特許文献1】特開2002−92776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、従来の通信システムでは、現存の通信システムに処理特性が異なる機能を追加するシステム拡張を行おうとすると、当該通信システムに運用停止を余儀なくされ、これによりシステムの運用コストが増大する問題がある。
【0006】
本発明は、このような不具合を解消し、処理特性が異なる機能を追加するシステム拡張をスムーズに行うことができるサーバ装置、及びこのサーバ装置を用いたデータ収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係るサーバ装置は、データ処理機能領域を有し、物理的に離隔された1つのサーバ装置であって、前記データ処理機能領域の一部を使用し、データ通信のために第1アドレスが割り当てられ、所定の第1サーバ機能を有する第1サーバ区画部と、前記データ処理機能領域の他の一部を使用し、データ通信のために前記第1アドレスとは異なる第2アドレスが割り当てられ、前記第1サーバ機能とは異なる第2サーバ機能を有する第2サーバ区画部と、前記第1又は第2サーバ機能、若しくはこれらとは異なるサーバ機能を有する外部サーバ装置を接続するための外部インターフェース部と、前記第1サーバ区画部と、前記第2サーバ区画部と、前記外部インターフェース部を介して接続される外部サーバ装置との間におけるデータ通信を可能とする共通インターフェース部と、を含むことを特徴とする(請求項1)
【0008】
この構成によれば、1つのサーバ装置内において、第1サーバ区画部及び第2サーバ区画部が備えられ、これらがデータ通信のための第1アドレス及び第2アドレスをもち、共通インターフェース部を介してデータ通信が可能とされている。また、第1サーバ区画部及び第2サーバ区画部は、外部インターフェース部及び共通インターフェース部を介して、外部サーバ装置とデータ通信が可能とされている。すなわち、第1サーバ区画部と第2サーバ区画部とがローカルなインターフェースで接続されているのではなく、外部サーバ装置にも対応可能な共通インターフェース部でデータ通信可能に接続されている。従って、処理特性が異なる機能を持つ外部サーバ装置を追加する場合でも、また第1又は第2サーバ機能の増設や機能分散を行う場合でも、共通インターフェース部の仲介によって、システムの運用停止や改修を伴うことなく対応することができる。
【0009】
上記構成において、前記データ処理機能領域のさらに他の一部を使用することが予定され、データ通信のために前記第1及び第2アドレスとは異なる第3アドレスが割り当てられることが予定された、空きの第3サーバ区画部をさらに備えることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、1つのサーバ装置内に、事後的に前記第1又は第2サーバ機能とは異なるサーバ機能を追加させることが可能になる。この際、システムの運用停止を伴わず、追加を行うことができる。
【0010】
本発明の他の局面に係るデータ収集システムは、データを取得可能な複数の通信端局と、データ処理機能領域を有し、前記通信端局にネットワーク接続され、各通信端局が取得したデータを収集する1つのサーバ装置と、前記サーバ装置に接続され、データ収集の制御を行う制御装置と、を備えるデータ収集システムであって、前記サーバ装置は、前記データ処理機能領域の一部を使用し、データ通信のために第1アドレスが割り当てられ、前記通信端局から送信されるデータを受信する収集サーバ機能部と、前記データ処理機能領域の他の一部を使用し、データ通信のために前記第1アドレスとは異なる第2アドレスが割り当てられ、当該データ収集システムが実行すべき処理の処理機能を備えた処理サーバ機能部と、前記収集サーバ機能部又は処理サーバ機能部、若しくはこれらとは異なるサーバ機能を有する外部サーバ装置を接続するための外部インターフェース部と、前記収集サーバ機能部と、処理サーバ機能部と、前記外部インターフェース部を介して接続される外部サーバ装置との間におけるデータ通信を可能とする共通インターフェース部と、を含むことを特徴とする(請求項3)。
【0011】
この構成によれば、1つのサーバ装置内において、収集サーバ機能部及び処理サーバ機能部が備えられ、これらがデータ通信のための第1アドレス及び第2アドレスをもち、共通インターフェース部を介してデータ通信が可能とされている。また、収集サーバ機能部及び処理サーバ機能部は、外部インターフェース部及び共通インターフェース部を介して、外部サーバ装置とデータ通信が可能とされている。すなわち、収集サーバ機能部と処理サーバ機能部とがローカルなインターフェースで接続されているのではなく、外部サーバ装置にも対応可能な共通インターフェース部でデータ通信可能に接続されている。従って、処理特性が異なる機能を持つ外部サーバ装置を追加する場合でも、また収集サーバ機能部又は処理サーバ機能部の増設や機能分散を行う場合でも、共通インターフェース部の仲介によって、システムの改修を伴うことなく対応することができる。
【0012】
上記構成において、前記通信端局は、第1通信方式に基づいてデータ通信を行う第1通信端局グループと、前記第1通信方式とは異なる第2通信方式に基づいてデータ通信を行う第2通信端局グループと、を含み、前記収集サーバ機能部は、前記第1通信端局グループに属する通信端局から送信されるデータを受信する第1収集サーバ機能部と、前記第2通信端局グループに属する通信端局から送信されるデータを受信する第2収集サーバ機能部と、を含み、前記第1収集サーバ機能部と第2収集サーバ機能部とは、互いに異なる前記アドレスが割り当てられていることが望ましい(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、通信方式が異なる第1通信端局グループ及び第2通信端局グループに対応できるデータ収集システムを構築できる。また、第1又は第2収集サーバ機能部のいずれか若しくは双方を、システムの局所的な機能停止で外部サーバ装置に移設することも可能となる。
【0014】
この場合、前記第1通信方式がPHS通信方式であり、前記第2通信方式がPLC通信方式であることは、好ましい態様の一つである(請求項5)。
【0015】
上記構成において、前記外部インターフェース部に接続され、前記収集サーバ機能部又は処理サーバ機能部、若しくはこれらとは異なるサーバ機能を有する外部サーバ装置をさらに備えることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、外部インターフェース部を介して、収集サーバ機能部又は処理サーバ機能部の増設や、他のサーバ機能の追加を行うことができ、拡張されたシステムを構築することができる。
【0016】
上記構成において、前記データ処理機能領域のさらに他の一部を使用することが予定され、データ通信のために前記第1及び第2アドレスとは異なる第3アドレスが割り当てられることが予定された、空きのサーバ区画部をさらに備えることが望ましい(請求項7)。
【0017】
この構成によれば、1つのサーバ装置内に、事後的に前記第1又は第2サーバ機能とは異なるサーバ機能を追加させることが可能になる。例えば、第1、第2通信方式とは異なる第3通信方式に対応した収集サーバ機能部を、事後的に空きのサーバ区画部に追加することが可能となる。この際、システムの運用停止を伴わず、追加を行うことができる。
【0018】
上記構成において、前記通信端局は、電力量計から検針データを取得可能とされており、前記通信端局から前記収集サーバ機能部に向けて送信される前記データは、各通信端局において取得された検針データであることは、好ましい実施態様の一つである(請求項8)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、現存の通信システムに処理特性が異なる機能を追加するシステム拡張を行う場合に、当該通信システムの運用停止を抑止でき、スムーズなシステム拡張を行うことができるサーバ装置、及びこのサーバ装置を用いたデータ収集システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るデータ収集システムSの全体構成を示すブロック図である。このデータ収集システムSは、多数の電力需要家から電力使用量の検針データを自動的に収集する自動検針システムに適用されるものであって、監視制御サーバ10(制御装置)、検針サーバ20(サーバ装置)、PHS端局グループ30及びPLC端局グループ40(複数の通信端局)を備えている。データ収集システムSの監視制御系レイヤを構成する監視制御サーバ10を上層とし、この監視制御系レイヤで制御される検針収集系レイヤとしての検針サーバ20がその下層に存在し、さらに検針収集系レイヤの下層で検針データを送信する通信装置系レイヤにPHS端局グループ30(第1通信端局グループ)及びPLC端局グループ40(第2通信端局グループ)が存在するレイヤ構成である。
【0021】
監視制御サーバ10は、例えば電力会社の管理拠点などに設置され、システムの全体監視機能、検針サーバ20による検針データの収集制御機能、監視制御系レイヤの他のサーバやさらに上層レイヤの他のサーバとの業務連係機能を備えたサーバである。
【0022】
検針サーバ20は、例えば電力会社の営業所などに設置され、各電力需要家の電力料金等を算出するために、前記検針データを各端局から収集し、これを記憶する機能を果たすサーバである。後記で詳述するが、本実施形態では、この検針サーバ20に共通インターフェース部(共通I/F)25が機能的に備えられている(図4参照)。
【0023】
PHS端局グループ30は、PHS方式の通信ネットワークを介して、電力需要家から検針データを収集するグループであり、PHSゲートウエイ31と、多数のPHS端局ユニット32、32・・・とを含んでいる。図2は、1つのPHS端局ユニット32の構成を示すブロック図である。各PHS端局ユニット32は、PHS端局33、電力量計34及び開閉器35を備え、各々の電力需要家に設置されている。
【0024】
PHS端局33は、PHSゲートウエイ31及び他のPHS端局(又はPHS中継局)と無線通信が可能とされた無線通信端局であって、電力需要家における電力使用量の検針データを含むデータをPHSゲートウエイ31に向けて定期的に送信する。本実施形態では、各PHS端局33はPHSトランシーバモードで無線通信を行う。また、図示は省略しているが、PHS端局33の多数が、複数の階層を備えたツリー状にネットワーク接続されている。
【0025】
電力量計34は、当該PHS端局33が配置される電力需要家における電力使用量を計測する。開閉器35は、商用電力送電系統から当該電力需要家への給電のON・OFFを切り換える。これら電力量計34及び開閉器35は、PHS端局33とデータ通信可能に接続されている。PHS端局33は、例えば30分毎に電力量計34の検針データを取得し、また開閉器35には必要に応じて開閉制御信号等の制御データを与える。
【0026】
PHSゲートウエイ31は、検針サーバ20と光ファイバ網などの通信ネットワークNTを介して接続され、多数のPHS端局33により構成されているPHS無線通信網と、検針サーバ20が接続されている通信ネットワークNTとを相互接続する機器である。PHSゲートウエイ31は一定数のPHS端局33のグループ毎に設置され、予め定められたルートテーブルに従って、1つのPHSゲートウエイ31の下層にPHS端局33がツリー状に配置され、PHS無線通信網が形成されている。
【0027】
PLC端局グループ40は、電力線通信を導入している電力需要家から検針データを収集するグループであり、PLC親局41と、PLC網42とを含んでいる。PLC親局41は、通常は1つの電力需要家に1つ設置され、PLC網42はその電力需要家の構内に配線された電力線を利用した通信網である。PLC親局41は、電力線に通信信号を重畳したり、これを分離したりするモデム機能を有し、当該電力需要家に引き込まれている通信ネットワークNTに接続されている。この通信ネットワークNTを介して、PLC親局41は、検針サーバ20とデータ通信が可能とされている。
【0028】
図3は、1つの電力需要家におけるPLC端局ユニット40Aの構成を示すブロック図である。PLC端局ユニット40Aは、PLC親局41と、これに接続された複数のPLC子局43(PLC網42)とからなる。PLC子局43は、コンセント単位で設置され、電力線から通信信号を分離すると共に、電力線に通信信号を重畳するモデム機能を備える。PLC網42のうちの1つのPLC子局43に、上記と同様な電力量計34及び開閉器35がデータ通信可能に接続されている。PLC親局41は、PLC子局43を介して、例えば30分毎に電力量計34の検針データを取得し、また開閉器35には必要に応じて開閉制御信号等の制御データを与える。このようなPLC端局ユニット40Aが電力需要家毎に備えられ、これらが通信ネットワークNTを通して検針サーバ20に並列接続されている。
【0029】
次に、検針サーバ20について詳述する。図4は、検針サーバ20の構成を示すブロック図である。検針サーバ20は、データ処理機能領域200を有し、物理的に離隔された1つのサーバ装置(物理サーバ)である。検針サーバ20は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)211、メモリ装置212及び入出力部(I/O)213(外部インターフェース部)を備えている。
【0030】
CPUは、マイクロプロセッサ等からなり、処理プログラムを実行することで検針サーバ20の各部の制御を行うと共に、各種の演算処理を行う。メモリ装置212は、制御プログラムを記憶するROMや一時的に演算データ等を記憶するフラッシュメモリ等を備えた物理メモリである。入出力部213は、検針サーバ20と外部装置(PHSゲートウエイ31、PLC親局41及び外部サーバ50)とを物理的に接続するための入出力ポートである。
【0031】
このようなハードウェア構成を備える一方、検針サーバ20はデータ処理機能領域200に、収集管理サーバ部22(第1サーバ区画部)、PHS収集サーバ部23(第2サーバ区画部/第1収集サーバ機能部)、PLC収集サーバ部24(第2収集サーバ機能部)及び共通インターフェース部(共通I/F)25を機能的に備えている。これらの区画部は、検針サーバ20のハードウェアリソースを、空間的又は時間的に分割若しくは組み合わせて創設される論理サーバとして構成されている。なお、データ処理機能領域200には、まだ利用されていない空きのサーバ区画部26(第3サーバ区画部)が備えられている。
【0032】
収集管理サーバ部22は、自動検針システムが実現すべき機能が実装されたサーバ部である。例えば収集管理サーバ部22は、各電力量計34から検針データ(計器ID、検針時刻、指示値、異常情報等を含むデータ)を収集する処理、各開閉器35に対して制御データ(計器ID、制御情報、異常情報等を含むデータ)を発信する処理、電力量計34及び開閉器35の管理処理(計器ID、取り付け日時、機器情報、位置情報、ソフトバージョン等の管理)、各通信端局の管理処理(設備ID、IPアドレス、ソフトバージョン等の管理)などを実行する。さらに、システム拡張に対応できるよう、通信端局のデータ伝送先を制御するデータ振り分け機能、負荷制御のための伝送量制御機能などを実行可能とされている。
【0033】
PHS収集サーバ部23は、PHS方式の通信ネットワーク特有のデータ収集処理を実行するサーバ機能部である。PHS収集サーバ部23は、PHSゲートウエイ31と、多数のPHS端局ユニット32(PHS端局33)とがどのように配列されているかを示すルートテーブルを保持しており、入出力部213に接続されたPHSゲートウエイ31、PHS端局33の各々と個別にデータ通信が可能とされている。PHS端局33の側からPHS収集サーバ部23に向けては、上述の通り検針データが定期的に送信される。一方、PHS収集サーバ部23からPHS端局33の側に向けては、バックアップ検針データの要求信号や開閉器35の制御データが送信される。
【0034】
PLC収集サーバ部24は、PLC端局グループ40についての特有のデータ収集処理を実行するサーバ機能部である。PLC収集サーバ部24は、入出力部213に接続された各PLC親局41と個別にデータ通信が可能とされている。各PLC親局41の側からPLC収集サーバ部24に向けては、検針データが定期的に送信される。一方、PLC収集サーバ部24からPLC親局41の側に向けては、バックアップ検針データの要求信号や開閉器35の制御データが送信される。
【0035】
共通インターフェース部25は、収集管理サーバ部22、PHS収集サーバ部23、PLC収集サーバ部24及び入出力部213に接続された外部サーバ50の間におけるデータ通信を可能にするための機能部である。具体的には、収集管理サーバ部22で発生されるデータを、PHS収集サーバ部23、PLC収集サーバ部24及び外部サーバ50の通信プロトコルに従った通信信号に変換すると共に、PHS収集サーバ部23、PLC収集サーバ部24及び外部サーバ50から入力される通信信号を収集管理サーバ部22が処理可能な形式のデータに変換する。なお、この共通インターフェース部25と収集管理サーバ部22とを、1つの論理サーバで構成し、収集管理サーバ部22が共通インターフェースを提供している態様としても良い。
【0036】
空きのサーバ区画部26は、将来の新たな機能の追加に備えて仮想的に備えられている新たな論理サーバの空間である。外部サーバ50は、検針サーバ20とは別個の物理サーバであって、検針収集系レイヤに関連する機能を持つサーバ装置である。外部サーバ50は、検針サーバ20の入出力部213に物理的に接続され、共通インターフェース部25を介して少なくとも収集管理サーバ部22とデータ通信が可能である。
【0037】
以上のようなサーバ機能部には、各々データ通信のためのアドレスが割り当てられ、それぞれ実質的に独立したサーバとして機能する。この点を、図5に基づいて説明する。図5は、各サーバ機能部の構成を模式的に示す図である。
【0038】
検針サーバ20には、所定の基本ソフトウェアOSが備えられている。そして、収集管理サーバ部22には、収集管理処理を行わせるための応用ソフトウェアであるアプリケーション−1、各種のデータが格納されるデータ領域、通信機能を果たす通信部を有すると共に、当該収集管理サーバ部22を通信ネットワーク上で特定するための論理IPアドレス−1が割り振られている。
【0039】
同様に、PHS収集サーバ部23は、PHS方式のデータ通信のためのアプリケーション−2を有すると共に、論理IPアドレス−2が割り振られている。また、PLC収集サーバ部24は、PLC方式に沿ったデータ通信のためのアプリケーション−3を有すると共に、論理IPアドレス−3が割り振られている。さらに、空きのサーバ区画部26にも、別の論理IPアドレス−4を割り振ることが可能とされている。
【0040】
従って、収集管理サーバ部22、PHS収集サーバ部23及びPLC収集サーバ部24は、各々が備える通信部によって相互に、共通インターフェース部25を介して論理IPアドレスを用いたTCP/IP通信を行うことができる。例えば、同一サーバ内での機能間連携をAPI(Application Program Interface)等で行うようにした場合、システムの拡張を行うには同一機能及びその機能間連携を備えた物理サーバを増設するほか無く、拡張の柔軟性に欠ける。また、新たな機能を追加する場合には、システムの運用を停止してシステムの改修を行うことが必要となる。しかし、本実施形態のように、各サーバ機能部に論理IPアドレスを割り振り、共通インターフェース部25を介してサーバ機能部間でデータ通信可能としておくことにより、システムの拡張に柔軟に対処できるようになる。
【0041】
例えば、空きのサーバ区画部26に新たなサーバ機能を追加する場合、例えば新たな通信方端局のメディアに対応したサーバ機能を追加する場合、そのサーバ機能を共通インターフェース部25に仕様に合わせて構築すればよく、既存のデータ収集システムSを改修する必要がない。また、新たな論理IPアドレスを割り振り、共通インターフェース部25を仲介させる形でサーバ機能を追加するので、その追加時にシステムの運用を停止しなくて済む利点がある。
【0042】
この利点は、物理サーバを増設する場合も同様に享受できる。すなわち、外部サーバ50に具備させるサーバ機能を、共通インターフェース部25の仕様に合わせて構築し、新たなIPアドレス−5を割り振り、入出力部213に接続すれば良い。この場合も、データ収集システムSの改修や運用停止を伴うことはない。従って、検針サーバ20の負荷が増大した場合に、新たな物理サーバを増設して負荷分散を図ることが容易に行えるという利点もある。
【0043】
以上の利点を、図6〜図8に基づいて詳述する。図6(a)〜(c)は、この種の自動検針システムのシステム拡張の典型例を示す模式図である。図6(a)に示すように、初期導入時、PHS端局を備えた電力需要家を対象とし、PHS方式の収集機能だけを備えた自動検針システムが構築されたとする。その後、図6(b)に示すように、PLCが導入されている電力需要家を自動検針の対象に加えるために、PLC方式の収集機能を追加する必要が生じたとする。さらに、図6(c)に示すように、新メディアの通信端局を備えた電力需要家を自動検針の対象に加えるために、その新メディアに対応した新機能を追加する必要が生じたとする。ここで、PLC方式の収集機能、追加の新機能は、既存システムに対するインターフェースが異なるものとする。
【0044】
このようなシステム拡張の要請が生じた場合において、初期導入時に既存システムの機能とPHS方式の収集機能との機能間連携を、上掲のAPIのような技術を適用して実現していた場合、システム拡張には困難を伴う。すなわち、図6(b)の拡張の際、また図6(c)の拡張の際のそれぞれにおいて、既存システムに対するインターフェース機能を追加する必要が生じる。このため、既存システムの改修が必要となり、さらにその改修を反映させるためにシステムの運用停止が必須となる。このことはシステムの運用コストを増大させることに繋がる。
【0045】
これに対し、本実施形態のデータ収集システムSによれば、このようなシステム拡張に容易に対応することができる。すなわち、図6(a)の初期導入時には、図7(a)に示すように、1つの物理サーバ(検針サーバ20)内に、論理サーバとして収集管理サーバ部22とPHS収集サーバ部23とを設定し、両者が共通インターフェース部25を介し、論理IPアドレスを用いてデータ通信(TCP/IP通信)可能とすることで、機能連係を図るようにしておく。
【0046】
図6(b)の拡張の際には、図7(b)に示すように、検針サーバ20内に新たに論理サーバの領域を設定し、共通インターフェース部25の仕様に合わせてPLC収集サーバ部24を構築すればよい。そして、PLC収集サーバ部24のために割り振られた論理IPアドレスを用いて、共通インターフェース部25を介して収集管理サーバ部22及びPHS収集サーバ部23とデータ通信可能とすることで、機能連係を図るようにする。図6(c)の拡張の際も同様である。
【0047】
また、図7(c)に示すように、物理サーバを増設する場合も同様である。PHS端局が増加してPHS収集サーバ機能の増設が必要となった場合、共通インターフェース部25の仕様に合わせて構築された増設PHS収集サーバ部511を第1外部サーバ51に設定する。そして、この第1外部サーバ51(或いは論理サーバとしての増設PHS収集サーバ部511)のために割り振られたIPアドレスを用いて、共通インターフェース部25を介して収集管理サーバ部22等とデータ通信可能とすることで、機能連係を図るようにする。また、新機能を物理サーバの追加でシステムに組み入れる場合は、共通インターフェース部25の仕様に合わせて構築された新機能サーバ部512を第2外部サーバ52に設定し、この第2外部サーバ52のために割り振られたIPアドレスを用いて、共通インターフェース部25を介して収集管理サーバ部22等とデータ通信可能とすることで、機能連係を図るようにする。
【0048】
さらに、図8に示すように、負荷分散も容易に行うことができる。いま、図8(a)に示すように、1つの物理サーバ(検針サーバ20)内に、論理サーバとして収集管理サーバ部22、PHS収集サーバ部23、PLC収集サーバ部24及び共通インターフェース部25が設定されているものとする。そして、例えばPHS端局グループ30及びPLC端局グループ40の端局数が増えて負荷分散の必要が生じた場合は、図8(b)に示すように、増設物理サーバとして第3外部サーバ53及び第4外部サーバ54を追加し、それぞれにPHS収集サーバ部23及びPLC収集サーバ部24の機能を移設することができる。このような移設においても、既存システムの改修は実質的に不要となり、システムの局所的な機能停止にて対応することができる。
【0049】
以上説明した通り、本実施形態に係るデータ収集システムSによれば、
(1)共通インターフェース部25を仲介したシステムであるので、既存の収集システムにインターフェースが異なるサーバ機能を追加するシステム拡張を行う場合でも、共通インターフェース部25がインターフェースの相違を吸収するため、既存の収集システムの改修が不要、
(2)共通インターフェース部25を仲介して新たなサーバ機能を追加するので、既存の収集システムの運用停止を抑止できる、
(3)負荷分散の際、他の物理サーバへのサーバ機能の移転が容易に行え、また、設置済みサーバの有効活用を図ることが出来る、
というメリットがある。従って、収集システムの機能拡張や物理的拡張を柔軟に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態では、本発明のデータ収集システムSが、電力使用量の検針データを収集する自動検針システムに適用される例を示した。しかし、本発明は各種のデータ収集に適用可能であり、例えば水道メータやガスメータの検針データの収集、或いは、気象データ、環境データ、交通計測データ、工業計測データ等の各種センシングデータの収集にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係るデータ収集システムSの全体構成を示すブロック図である。
【図2】1つのPHS端局ユニットの構成を示すブロック図である。
【図3】1つのPLC端局ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】検針サーバの構成を示すブロック図である。
【図5】各サーバ機能部の構成を模式的に示す図である。
【図6】(a)〜(c)は、自動検針システムのシステム拡張の典型例を示す模式図である。
【図7】(a)〜(c)は、システム拡張に対応したシステム構成を説明するための模式図である。
【図8】(a)、(b)は、負荷分散への対応を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0052】
10 監視制御サーバ(制御装置)
20 検針サーバ(サーバ装置)
200 データ処理機能領域
213 入出力部(外部インターフェース部)
22 収集管理サーバ部(第1サーバ区画部)
23 収集サーバ部(第2サーバ区画部/第1収集サーバ機能部)
24 収集サーバ部(第2収集サーバ機能部)
25 共通インターフェース部
26 空きのサーバ区画部(第3サーバ区画部)
30 PHS端局グループ(第1通信端局グループ)
31 ゲートウエイ
32 PHS端局ユニット
33 PHS端局(通信端局)
34 電力量計
35 開閉器
40 PLC端局グループ(第2通信端局グループ)
41 PLC親局(通信端局)
S データ収集システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理機能領域を有し、物理的に離隔された1つのサーバ装置であって、
前記データ処理機能領域の一部を使用し、データ通信のために第1アドレスが割り当てられ、所定の第1サーバ機能を有する第1サーバ区画部と、
前記データ処理機能領域の他の一部を使用し、データ通信のために前記第1アドレスとは異なる第2アドレスが割り当てられ、前記第1サーバ機能とは異なる第2サーバ機能を有する第2サーバ区画部と、
前記第1又は第2サーバ機能、若しくはこれらとは異なるサーバ機能を有する外部サーバ装置を接続するための外部インターフェース部と、
前記第1サーバ区画部と、前記第2サーバ区画部と、前記外部インターフェース部を介して接続される外部サーバ装置との間におけるデータ通信を可能とする共通インターフェース部と、
を含むことを特徴とするサーバ装置。
【請求項2】
前記データ処理機能領域のさらに他の一部を使用することが予定され、データ通信のために前記第1及び第2アドレスとは異なる第3アドレスが割り当てられることが予定された、空きの第3サーバ区画部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
データを取得可能な複数の通信端局と、
データ処理機能領域を有し、前記通信端局にネットワーク接続され、各通信端局が取得したデータを収集する1つのサーバ装置と、
前記サーバ装置に接続され、データ収集の制御を行う制御装置と、
を備えるデータ収集システムであって、前記サーバ装置は、
前記データ処理機能領域の一部を使用し、データ通信のために第1アドレスが割り当てられ、前記通信端局から送信されるデータを受信する収集サーバ機能部と、
前記データ処理機能領域の他の一部を使用し、データ通信のために前記第1アドレスとは異なる第2アドレスが割り当てられ、当該データ収集システムが実行すべき処理の処理機能を備えた処理サーバ機能部と、
前記収集サーバ機能部又は処理サーバ機能部、若しくはこれらとは異なるサーバ機能を有する外部サーバ装置を接続するための外部インターフェース部と、
前記収集サーバ機能部と、処理サーバ機能部と、前記外部インターフェース部を介して接続される外部サーバ装置との間におけるデータ通信を可能とする共通インターフェース部と、
を含むことを特徴とするデータ収集システム。
【請求項4】
前記通信端局は、
第1通信方式に基づいてデータ通信を行う第1通信端局グループと、
前記第1通信方式とは異なる第2通信方式に基づいてデータ通信を行う第2通信端局グループと、を含み、
前記収集サーバ機能部は、
前記第1通信端局グループに属する通信端局から送信されるデータを受信する第1収集サーバ機能部と、
前記第2通信端局グループに属する通信端局から送信されるデータを受信する第2収集サーバ機能部と、を含み、
前記第1収集サーバ機能部と第2収集サーバ機能部とは、互いに異なる前記アドレスが割り当てられていることを特徴とする請求項3に記載のデータ収集システム。
【請求項5】
前記第1通信方式がPHS通信方式であり、前記第2通信方式がPLC通信方式であることを特徴とする請求項4に記載のデータ収集システム。
【請求項6】
前記外部インターフェース部に接続され、前記収集サーバ機能部又は処理サーバ機能部、若しくはこれらとは異なるサーバ機能を有する外部サーバ装置をさらに備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のデータ収集システム。
【請求項7】
前記データ処理機能領域のさらに他の一部を使用することが予定され、データ通信のために前記第1及び第2アドレスとは異なる第3アドレスが割り当てられることが予定された、空きのサーバ区画部をさらに備えることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のデータ収集システム。
【請求項8】
前記通信端局は、電力量計から検針データを取得可能とされており、
前記通信端局から前記収集サーバ機能部に向けて送信される前記データは、各通信端局において取得された検針データであることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のデータ収集システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−81196(P2010−81196A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245934(P2008−245934)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】