説明

サービス利用システム、サービス利用方法、サービス配列表示用プログラム

【課題】ネットワーク上のサービスを利用するサービス利用システムにおいて、種々のネットワーク環境でのユーザーのサービス選択の負担を軽減する。
【解決手段】コンピューターPC1がローカルエリアネットワークLAN1に接続されると、コンピューターPC1のCPU30は、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されたサービスを検索する。そして、コンピューターPC1が記憶するサービスの利用履歴であるサービス利用情報に基づいて、単純ベイズ分類器により、検索したサービスがコンピューターPC1で利用される可能性の大きさを示す優先順位を予測する。そして、当該優先順位に基づいて、検索したサービスを選択可能にディスプレイ54に表示させる。ユーザーは、表示された選択肢の中から、所望のサービスを選択し、コンピューターPC1に実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続された複数のサービスを、該ネットワークに接続された第1の端末から利用可能なサービス利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器の高性能化や無線ネットワークの普及等により、モバイル機器を複数のネットワーク環境で利用する機会が増えている。例えば、ユーザーは、モバイル機器を複数の会議室や教室などに持ち込んで、その都度、会議室や教室ごとに構築されたローカルエリアネットワーク(LAN)に接続し、LANに接続されたサービスの利用、例えば、プリンターによる出力やプロジェクターによる投写などを行うことができる。
【0003】
しかしながら、かかる使用環境においては、ユーザーが、LANへの接続のたびに使用するサービスを選択することは面倒であり、LANに接続されたサービスの数が多ければ、GUI(Graphical User Interface)に表示されたサービスの選択肢の中から所望のサービスを探し当てることも大変であった。
【0004】
かかる課題に対して、ネットワークごとに、使用頻度の高い機器のネットワーク設定を記録しておくソフトウェアが多く開発されているが、接続のたびにネットワークのサービス構成が異なるようなアドホック環境においては、適用が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−124170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、ネットワーク上のサービスを利用するサービス利用システムにおいて、種々のネットワーク環境でのユーザーのサービス選択の負担を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]ネットワークに接続された複数のサービスを、該ネットワークに接続された第1の端末から利用するサービス利用システムであって、
前記ネットワークに接続された複数のサービスを検索する検索手段と、
前記第1の端末において利用されたサービスの利用履歴を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段が記憶する利用履歴を少なくとも含む優先順位基礎情報に基づいて、前記検索された複数のサービスについて、前記第1の端末において利用される可能性の大きさの順位付けである優先順位を予測する優先順位予測手段と、
前記第1の端末で利用可能なサービスを、前記予測された優先順位に基づいた配列で選択可能に表示させる表示手段と、
前記表示されたサービスの中からユーザーに選択されたサービスを実行する実行手段と
を備えたサービス利用システム。
【0009】
かかる構成のサービス利用システムは、第1の端末において利用されたサービスの利用履歴を少なくとも含む優先順位基礎情報に基づいて、検索された複数のサービスについて優先順位を予測し、第1の端末で利用可能なサービスを当該優先順位に基づいた配列で選択可能に表示させ、その中からユーザーに選択されたサービスを実行する。したがって、第1の端末において利用される可能性大きいサービスほどユーザーは選択しやすくなるので、ユーザーのサービス選択の負担を軽減することができる。また、ネットワークに接続されたサービスを検索し、検索されたサービスの利用履歴に基づいて優先順位を予測するので、ネットワークに接続されるサービスが流動的な環境などにおいても、好適に適用することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1記載のサービス利用システムであって、前記ネットワークには、前記第1の端末とは異なる第2の端末であって、該第2の端末において利用された前記複数のサービスの利用履歴を記憶する第2の記憶手段を備えた第2の端末が接続され、更に、前記第2の記憶手段が記憶する利用履歴を前記第2の端末から取得する利用履歴取得手段を備え、前記優先順位基礎情報には、前記第2の端末から取得した利用履歴を含むサービス利用システム。
【0011】
かかる構成のサービス利用システムは、優先順位基礎情報に、第2の端末において利用されたサービスの利用履歴を含めて、優先順位を予測することができる。したがって、第1の端末以外の端末での利用状況も考慮して、柔軟な優先順位の予測を行うことができる。また、第1の端末の利用履歴の利用回数が少ない場合、第1の端末が過去に接続したことのないネットワークに接続した場合、新たなサービスが新規にネットワークに接続されている場合などでも、優先順位の予測精度を向上させることができる。
【0012】
[適用例3]前記利用履歴取得手段は、前記検索手段が検索した複数のサービスのうちで、前記第1の記憶手段に利用履歴が記憶されていないサービスについて、前記取得を行う適用例2記載のサービス利用システム。
かかる構成のサービス利用システムは、第1の記憶手段に利用履歴が記憶されていないサービスについて、第2の端末の利用履歴を取得するので、すなわち、必要最低限な場合のみ第2の端末の利用履歴を取得して、優先順位の予測に反映させるので、予測を簡易的に行うことができ、第1の端末の演算負担を軽減することができる。また、ネットワークの通信負荷を軽減することができる。
【0013】
[適用例4]前記利用履歴取得手段は、前記第1の記憶手段が記憶する利用履歴のうちの、前記第1の端末が接続されているネットワークでの利用総数が所定値よりも少ない場合に、前記取得を行う適用例2または適用例3記載のサービス利用システム。
かかる構成のサービス利用システムは、第1の端末が、第1の端末でのサービスの利用総数が少ないネットワークに接続された場合であっても、第2の端末の利用履歴を反映して優先順位を予測できるので、優先順位の予測精度を向上させることができる。また、ネットワークの通信負荷を軽減することができる。
【0014】
[適用例5]前記優先順位予測手段は、前記優先順位基礎情報に基づいて算出されるサービスの利用確率によって、前記優先順位を予測する適用例1ないし適用例4のいずれか記載のサービス利用システム。
かかる構成のサービス利用システムは、サービスの利用確率を算出して優先順位を予測するので、予測精度を向上させることができる。
【0015】
[適用例6]前記優先順位予測手段は、単純ベイズ分類器によって前記利用確率を算出する適用例5記載のサービス利用システム。
かかる構成のサービス利用システムは、単純ベイズ分類器によって利用確率を算出するので、比較的少ない計算量で不確実な事象を好適に予測することができる。
【0016】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか記載のサービス利用システムであって、更に、前記第1の端末の前記ネットワークへの接続状態の変化を検知する検知手段を備え、前記検知手段が前記変化を検知した場合に、前記検索手段は前記検索を行い、前記優先順位予測手段は前記優先順位の予測を行うサービス利用システム。
【0017】
かかる構成のサービス利用システムは、第1の端末のネットワークへの接続状態が変化するたびに、優先順位を更新するので、第1の端末がネットワークに接続されるたびに、直近の利用履歴を反映した優先順位でサービスを配列して表示することができ、利便性が高い。
【0018】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか記載のサービス利用システムであって、前記検索手段は、前記複数のサービスの動作状態を把握可能であり、前記優先順位基礎情報には、前記検索手段が把握したサービスの動作状態を表すステータス情報を含むサービス利用システム。
【0019】
かかる構成のサービス利用システムは、サービスの動作状態をも反映して、優先順位を設定するので、より柔軟な優先順位の予測を行うことができる。例えば、サービスがエラーにより提供不可能な状態にある場合には、その状態を反映することができる。
【0020】
[適用例9]前記検索手段が検索する複数のサービスの少なくとも一部は、前記ネットワークに新規に接続されたサービスである適用例1ないし適用例8のいずれか記載のサービス利用システム。
かかる構成のサービス利用システムは、ネットワークに新規に接続されたサービスがある場合であっても、好適に適用することができる。
【0021】
[適用例10]前記ネットワークは、前記第1の端末が初めて接続されたネットワークである適用例1ないし適用例9のいずれか記載のサービス利用システム。
かかる構成のサービス利用システムは、第1の端末が初めて接続されたネットワークに対しても、好適に適用することができる。
【0022】
[適用例11]適用例1ないし適用例10のいずれか記載のサービス利用システムであって、前記ネットワークには、前記複数のサービスを利用可能にするソフトウェアの各々を記憶したサーバーが接続され、更に、前記優先順位予測手段が優先順位を予測したサービスのうちで優先順位の高いサービスを利用可能とするソフトウェアである優先ソフトウェアが前記第1の端末の記憶媒体に記憶されているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段が前記優先ソフトウェアは記憶されていないと判断した場合に、前記サーバーから前記優先ソフトウェアを取得するソフトウェア取得手段とを備えたサービス利用システム。
【0023】
かかる構成のサービス利用システムは、優先順位の高いサービスを利用可能とするソフトウェアが第1の端末に記憶されていない場合には、当該ソフトウェアをサーバーから取得できるので、ユーザーは、当該サービスを選択して実行しようとする際に、円滑に当該サービスを利用することができる。
【0024】
また、本発明は、ネットワーク上のサービスを利用するサービス利用装置、サービス利用方法、適用例13に示すコンピュータープログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
【0025】
[適用例12]ネットワークに接続され、利用可能な複数のサービスを、該ネットワークに接続された端末から利用する際に、前記複数のサービスの表示を所定のサービスの配列で行わせるためのコンピュータープログラムであって、前記ネットワークに接続された複数のサービスを検索し、サービスのリストを作成する検索機能と、前記端末におけるサービスの利用履歴を記憶媒体に記憶する記憶機能と、前記記憶された利用履歴を少なくとも含む優先順位基礎情報に基づいて、前記検索された複数のサービスについて、前記端末において利用される可能性の大きさの順位付けである優先順位を予測する優先順位予測機能と、前記サービスのリストを、該サービスのリストの表示用に、前記予測された優先順位に基づいた配列とする配列機能とをコンピューターに実現させるコンピュータープログラム。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】サービス利用システム20の概略構成を示す説明図である。
【図2】コンピューターPC1,PC2の概略構成を示す説明図である。
【図3】コンピューターPC1における優先順位予測処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】優先順位予測処理におけるサービス利用情報等の具体例を示す説明図である。
【図5】コンピューターPC1におけるサービス利用処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】サービス利用処理において表示されるGUIの具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
A.実施例:
A−1.ネットワーク構成:
本発明の実施例としてのサービス利用システム20の概略構成を図1(a)に示す。サービス利用システム20は、ネットワーク上に提供されたサービスを端末から利用するシステムであり、コンピューターPC1,PC2、プリンターPRT1,PRT2、プロジェクターPJ、サーバーSVがローカルエリアネットワークLAN1に接続されて構成される。
【0028】
コンピューターPC1,PC2は、ネットワーク上に存在するサービスを利用する端末であり、コンピューターPC1は第1の端末、コンピューターPC2は第2の端末に該当する。本実施例においては、コンピューターPC1は、通常時は、図1(b)に示すように、プリンターPRT3,PRT4が接続されたローカルエリアネットワークLAN2に接続されて使用されるものであるが、コンピューターPC1のユーザーは、時々、コンピューターPC1を移動させて、図1(a)に示すローカルエリアネットワークLAN1に接続する。図1(a)では、かかるコンピューターPC1の移動時の接続状態を示している。
【0029】
プリンターPRT1〜PRT4及びプロジェクターPJは、ネットワーク上のサービスであり、プリンターPRT1〜PRT4は印刷物の出力サービスを、プロジェクターPJは、画像の投写出力サービスを提供する。本実施例では、プリンターPRT1,PRT2は、従前からローカルエリアネットワークLAN1に接続されているが、プロジェクターPJは、コンピューターPC1が前回ローカルエリアネットワークLAN1に接続された後に、新規にローカルエリアネットワークLAN1に接続されたものである(本願では、かかる新規に接続されたサービスを「新規サービス」という)。なお、図1においては、上述のプリンターPRT1〜4、プロジェクターPJには、かっこ書きで、その型番を付しており、ローカルエリアネットワークLAN1及びLAN2には、かっこ書きで、そのネットワークアドレスを付している。プリンターPRT1及びプリンターPRT3(型番PM−1111)、プリンターPRT2及びプリンターPRT4(型番LP−2222)は、それぞれ型番が同じ、すなわち、同一機種である。
【0030】
サーバーSVは、本実施例では、プリンターPRT1,PRT2及びプロジェクターPJのドライバーを共有ファイルとして記憶し、提供するファイルサーバーであり、プリンターPRT1,PRT2のジョブをスプールして出力コントロールを行うプリンターサーバー、ネットワーク構成機器にネットワーク設定を自動的に割り当てるDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバーとしても機能する。なお、サーバーSVは必須のものではない。また、ローカルエリアネットワークLAN1,LAN2において、ローカルエリアネットワークLAN1を構成する端末及びサービスのタイプ(種類)や個数、有線、無線などの接続方法などは、特に限定するものではない。
【0031】
A−2.コンピューターPC1,PC2の構成:
コンピューターPC1,PC2の概略構成について図2を用いて説明する。本実施例では、コンピューターPC1,PC2は、同様の構成であるため、コンピューターPC1の構成として、以下説明する。コンピューターPC1は、所定のプログラムがインストールされた汎用のパーソナルコンピューターであり、図2に示すように、CPU30、ハードディスクドライブ40、ROM51、RAM52、入力機構53、ディスプレイ54、インターフェース55を備えており、それぞれが内部バスで接続されている。
【0032】
CPU30は、ハードディスクドライブ40やROM51に記憶されたファームウェアやOSをRAM52に展開して実行することで、コンピューターPC1全体の制御を司る。また、CPU30は、ハードディスクドライブ40に記憶されたプログラムを実行することで、検索部31、優先順位予測部32、表示部33、実行部34、利用履歴取得部35、検知部36、判断部37、ソフトウェア取得部38、利用履歴提供部39としても機能する。これらの機能部の詳細については、後述する。
【0033】
ハードディスクドライブ40には、利用履歴データベース41が記憶されている。利用履歴データベース41とは、コンピューターPC1が過去に利用可能であったネットワーク上のサービスの利用履歴を記憶するデータベースであり、本実施例では、利用環境(ネットワークアドレス)、サービスのタイプ、サービスの型番、利用回数の要素からなる。かかる利用履歴データベース41に記憶された履歴情報を本願では、サービス利用情報という。なお、本実施例では、利用履歴データベース41には、コンピューターPC1が過去に接続された全てのネットワーク(ここではローカルエリアネットワークLAN1及びLAN2)における利用履歴を記憶する構成としたが、予め登録されたネットワークについてのみ、利用履歴を記憶する構成としてもよい。
【0034】
入力機構53は、本実施例においては、キーボードとポインティングデバイス(ここではマウス)からなる。ディスプレイ54は、本実施例においては、液晶ディスプレイであり、図示しないグラフィックコントローラを介して、画像を表示する。インターフェース55は、ローカルエリアネットワークに接続するためのインターフェースであり、図2では、コンピューターPC1は、インターフェース55を介してローカルエリアネットワークLAN1に接続されている。
【0035】
A−3.優先順位予測処理:
サービス利用システム20における優先順位予測処理について図3を用いて説明する。ここでの優先順位予測処理とは、コンピューターPC1がローカルエリアネットワークLAN1に接続された際に、コンピューターPC1が、ローカルエリアネットワークLAN1上のサービスについて、コンピューターPC1において利用される可能性の大きさの順位付けである優先順位を予測する処理である。優先順位予測処理は。本実施例では、コンピューターPC1で所定のプログラムを起動させることで開始されるが、処理開始のタイミングは特に限定するものではなく、例えば、コンピューターPC1の起動時に開始されるものとしてもよい。
【0036】
優先順位予測処理が開始されると、まず、図3に示すように、CPU30が、検知部36の処理として、コンピューターPC1のネットワークへの接続状態が変化したか否かを判断する(ステップS100)。この判断は、本実施例においては、次のようにして行う構成とした。まず、コンピューターPC1のCPU30は、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されると、ブロードキャストによりDHCPサーバーとして働くサーバーSVを検索する。そして、CPU30は、IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ等のネットワーク設定の割り当てを受け、その情報をハードディスクドライブ40に記憶する。ここで、CPU30は、かかるネットワーク設定を所定のタイミングで読み込んでハードディスクドライブ40の所定領域にバックアップしておき、当該バックアップと現状のネットワーク設定とを所定のタイミングで照合する。その結果、現状のネットワーク設定がバックアップと異なるものとなっていれば、CPU30は、所定のネットワークに新規に接続されたと判断し、異なっていなければ、ネットワークの接続状態は変化していないと判断するのである。
【0037】
なお、ネットワークへの接続状態の変化の検知は、かかる構成に限定するものではなく、種々の構成とすることができる。例えば、CPU30は、ユーザーの手動操作でIPアドレスが書き換えられたことを上述の手法で検知してもよい。あるいは、CPU30は、所定時間内にローカルエリアネットワークLAN1上のリンクパルスを受信していない状態から、所定時間内に所定回数のリンクパルスを受信する状態に移行したことを検知して、ネットワークの接続状態が変化したと判断してもよい。こうすれば、コンピューターPC1が前回接続時と同一のネットワークに新規に接続された場合であっても、確実に、新規に接続されたことを検出することができる。
【0038】
その結果、ネットワークの接続状態が変化していなければ(ステップS100:NO)、CPU30は、接続状態の変化を検知するまで待機する。一方、ネットワークの接続状態が変化していれば(ステップS100:YES)、CPU30は、検索部31の処理として、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されたサービスを検索する(ステップS110)。
【0039】
かかるサービスの検索は、本実施例においては、SLP(Service Location Protocol)を用いて、SLPのサービス検索要求をブロードキャストすることで行うこととした。かかる要求に対して、ローカルエリアネットワークLAN1に接続された各々のサービスは、自身のタイプ(サービスの種類)や属性情報(ここでは、サービスの型番)をコンピューターPC1にユニキャストする。かかる検索の結果の具体例を図4(a)に示す。この例では、図示するように、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されたプリンターPRT1(型番PM−1111)、プリンターPRT2(LP−2222)、プロジェクターPJ(型番ELP−3333)が検索されている。
【0040】
なお、サービスの検索は、SLPを用いる構成に限らず、PnP−X(Plug and Play Extentions)、WS−Inspectionなどの種々のプロトコルを用いることができる。また、サービス検索は、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されたサービスの情報をサーバーSVに管理させて、サーバーSVから取得する構成としてもよい。また、複数のプロトコルを用いて、サービス検索を行う構成としてもよい。こうすれば、プロトコルによって取得できる情報が異なるので、把握できるサービスの情報の幅が広がる。また、サービスによって対応できるプロトコルが異なる可能性があるので、より多くのサービスに対して検索を行うことができる。
【0041】
サービスの検索を行うと、CPU30は、利用履歴データベース41を読み込んで、サービス利用情報を取得する(ステップS120)。ここで取得したサービス利用情報の具体例を図4(b)に示す。この例では、サービス利用情報は、コンピューターPC1が過去に接続されたネットワーク環境(ネットワークアドレス)と、当該環境にコンピューターPC1を接続した際に利用可能であったサービスのタイプ、型番、利用回数からなる。具体的には、サービス利用情報は、ローカルエリアネットワークLAN1(ネットワークアドレス192.168.1)のプリンターPRT1(型番PM−1111),プリンターPRT2(LP−2222)及びローカルエリアネットワークLAN2(ネットワークアドレス192.168.2)のプリンターPRT3(型番PM−1111),プリンターPRT4(LP−2222)の利用回数からなる。例えば、コンピューターPC1は、使用環境「192.168.1」において、サービスタイプ「プリンター」の型番「LP−2222」を過去に10回利用したことがあるということである。なお、プロジェクターPJは、上述したとおりローカルエリアネットワークLAN1に新規に接続されたものであるから、取得したサービス利用情報には、プロジェクターPJのサービス利用情報は含まれていない。
【0042】
サービス利用情報を取得すると、CPU30は、ステップS110で検索したサービスに、初めて検索される新規サービスがあるか否かを判断する(ステップS130)。この判断は、ステップS110の検索結果と、ステップS120で取得したサービス利用情報を照合することによって行う。本実施例においては、ステップS110で検索されたプロジェクターPJ(型番ELP−3333)は、ステップS120で取得したサービス利用情報には含まれていないことから、プロジェクターPJが新規のサービスであると判断することとなる。
【0043】
判断の結果、新規サービスがあれば(ステップS130:YES)、CPU30は、新規サービスであるプロジェクターPJ(型番ELP−3333)について、新規データベースを作成する(ステップS140)。すなわち、図4(c)に示すプロジェクターPJのサービス利用情報(利用回数0回)を図4(b)に示したサービス利用情報に追加するのである。
【0044】
新規データベースを作成すると、CPU30は、利用履歴取得部35の処理として、新規サービスであるプロジェクターPJ(型番ELP−3333)について、コンピューターPC2のサービス利用情報を取得する(ステップS150)。具体的には、コンピューターPC1のCPU30は、コンピューターPC2にプロジェクターPJの利用情報の要求メッセージを送信し、これに対して、コンピューターPC2のCPU30が、利用履歴提供部39の処理として、コンピューターPC2のハードディスクドライブ40に記憶した利用履歴データベース41の中から、プロジェクターPJに関するサービス利用情報をコンピューターPC1に送信するのである。要するに、コンピューターPC1は、既にローカルエリアネットワークLAN1に接続されている他のコンピューターPC2のプロジェクターPJの利用履歴を取得するのである。なお、本実施例においては、コンピューターPC1は、ブロードキャストにより、ローカルエリアネットワークLAN1上の全ての端末からサービス利用情報を取得する構成としたが、予め設定された特定の端末から取得する構成としてもよい。こうして取得したサービス利用情報の具体例を図4(d)に示す。この例では、プロジェクターPJがコンピューターPC2から20回利用されたことを示している。
【0045】
サービス利用情報を取得すると、あるいは、上記ステップS130において新規サービスがなければ(ステップS130:NO)、CPU30は、優先順位予測部32の処理として、ステップS110で検索されたサービスについて、ステップS120及びS150において取得したサービス利用情報に基づいて、サービスタイプごとに、優先順位を予測する(ステップS160)。かかる優先順位は、本実施例においては、取得したサービス利用情報に基づいて、コンピューターPC1において各サービスが利用される利用確率を算出し、その算出結果によって予測するものとした。また、本実施例においては、以下に説明する単純ベイズ分類器を用いて利用確率を算出するものとしたが、他の方法で利用確率を算出してもよい。
【0046】
上述の単純ベイズ分類器について説明する。ベイズ分類器は、周知の確率論であるので、詳しい説明は省略するが、単純な独立性仮定にベイズの定理を適用した確率モデルであり、依存クラス変数Cと、依存クラス変数Cが依存する特徴変数F1〜Fnとを用いて、次式(1)によって、所定の事象が起こる確率を算出するものである。なお、次式(1)において、p(X|Y)は、YのときのXの確率という条件付確率を表している。
【0047】
【数1】

【0048】
本実施例に即して、サービス「プリンター」についての単純ベイズ分類器による利用確率の具体的な計算例を示す。型番「PM−1111」を利用する確率P(PM−1111)は、図4(b)に示したサービス利用情報に基づいて、次式(2)のように算出される。また、型番「LP−2222」を利用する確率P(LP−2222)は、図4(b)に示したサービス利用情報に基づいて、次式(3)のように算出される。
【0049】
P(PM−1111)=900/(0+10+900+100)=0.89・・・(2)
P(LP−2222)=(10+100)/(0+10+900+100)=0.11・・・(3)
【0050】
したがって、使用環境「192.168.1」において型番「PM−1111」を利用する確率P(PM−1111|192.168.1)は、上式(1)と上式(2),(3)の計算結果とを用いて次式(4)のように算出される。同様に、使用環境「192.168.1」において型番「LP−2222」を利用する確率P(LP−2222|192.168.1)は、次式(5)のように算出される。なお、次式(4),(5)において、エクスクラメーションマーク「!」は否定記号であり、例えば、「!PM−1111」は、「PM−1111ではない」の意味である。
【0051】
P(PM-1111|192.168.1)=P(PM-1111)×P(192.168.1|PM-1111)÷(P(192.168.1|PM-1111)×P(PM-1111)+P(192.168.1|!PM-1111)×P(!PM-1111))={0.89×0/(0+900)}÷{0/(0+900)×089+10/(10+100)×0.11}=0.0・・・(4)
P(LP-2222|192.168.1)=P(LP-2222)×P(192.168.1|LP-2222)÷(P(192.168.1|LP-2222)×P(LP-2222)+P(192.168.1|!LP-2222)×P(!LP-2222))={0.11×10/(10+100)}÷{10/(10+100)×0.11+0/(0+900)×0.89}=1.0・・・(5)
【0052】
かかる計算により、確率値の大きな順に優先順位を高く予測するのである。ここでは、確率値の高い型番「LP−2222」(プリンターPRT2)、型番「PM−1111」(プリンターPRT1)の順に優先順位が高くなるように予測される。
【0053】
なお、本実施例においては、サービス「プロジェクター」については、ローカルエリアネットワークLAN1上に1つしか存在しないため、優先順位の予測は行われないが、ローカルエリアネットワークLAN1に複数の新規サービス「プロジェクター」が接続されている場合であって、プロジェクターについても優先順位の予測を行うときには、ステップS150でコンピューターPC2から取得したプロジェクターのサービス利用情報を、コンピューターPC1のサービス利用情報であると扱って、同様に利用確率を算出するものとした。また、ローカルエリアネットワークLAN1に新規サービスと従来から存在するサービスとが混在して接続されている場合にも、コンピューターPC2から取得する新規サービスについてのサービス利用情報をコンピューターPC1のサービス利用情報であると扱って、同様に利用確率を算出するものとした。
【0054】
こうして、サービスタイプごとに優先順位を予測すると、CPU30は、表示部33の処理として、予測した優先順位に基づいてコンピューターPC1のOS(Operating System)の設定ファイルの書き換えを行う(ステップS170)。かかる設定ファイルは、後述するサービス利用処理において、当該サービスの実行指示操作を行うGUIに表示されるサービスの選択候補とその表示順序が記載されているものであり、ステップS170においては、予測した優先順位に基づいて、サービスの選択候補の表示順序を書き換えるのである。
【0055】
設定ファイルの書き換えを行うと、CPU30は、判断部37の処理として、ステップS160において同一サービスタイプの間で最も優先順位が高くなったサービスについて、当該サービスを利用可能とするソフトウェアがコンピューターPC1のハードディスクドライブ40に記憶されているか否かを判断する(ステップS180)。当該ソフトウェアは、ここでは、ステップS160において優先順位が最も高かったプリンターPRT2に対応するプリンタードライバーである。
【0056】
その結果、プリンタードライバーが記憶されていなければ(ステップS180:NO)、CPU30は、ソフトウェア取得部38の処理として、サーバーSVにプリンターPRT2用のプリンタードライバーの送信要求を行って、サーバーSVからプリンタードライバーを取得する(ステップS190)。
【0057】
なお、本実施例においては、同一のサービスタイプにおいて最も優先順位が高いサービスについてのみソフトウェアを取得する構成としたが、取得するソフトウェアは複数であってもよい。例えば、優先順位の高い順に3つのソフトウェアを取得してもよい。かかる場合、ソフトウェアの取得数は、予め定められた個数としてもよいし、ステップS160で算出された利用確率の大きさに応じて動的に変化させてもよい。こうすれば、例えば、優先順位が2番目に高いサービスが利用される場合においても、ユーザーは、円滑にサービスを利用することができる。
【0058】
こうして、プリンタードライバーを取得すると、あるいは、上記ステップS170において、プリンタードライバーが記憶されていれば(ステップS180:YES)、CPU30は、優先順位予測処理を終了する。
【0059】
A−4.サービス利用処理:
サービス利用システム20におけるサービス利用処理について図5を用いて説明する。ここでのサービス利用処理とは、コンピューターPC1において、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されたサービス、例えば、プリンターPRT1による出力を実行する処理である。この処理は、コンピューターPC1のユーザーが、入力機構53を用いて、サービス実行指示の操作を行うことで開始される。サービス実行指示の操作とは、例えば、ユーザーが、コンピューターPC1において、所望の文書ファイルを所定のアプリケーション、例えば、ワープロソフトで開いて、当該文書の印刷指示を行う操作である。
【0060】
サービス利用処理が開始されると、まず、CPU30は、サービス利用指示を受け付けて(ステップS200)、表示部33の処理として、受け付けた指示に対応するサービスタイプについての上述の設定ファイルを読み込んで、当該サービスタイプについて、コンピューターPC1で利用可能なローカルエリアネットワークLAN1上のサービスを選択可能にディスプレイ54に表示する(ステップS210)。
【0061】
ステップS210により、ディスプレイ54に表示されるGUIの具体例を図6に示す。図示するGUIは、ユーザーがコンピューターPC1において印刷指示操作を行った場合にディスプレイ54に表示される、印刷出力サービスの操作を行うウィンドウW1の一部分を示している。図示するように、ウィンドウW1は、サブウィンドウSW1、プルダウンボタンPB及びサブウィンドウSW2を備えている。サブウィンドウSW1は、利用するプリンター名を表示するウィンドウであり、利用可能なプリンターのうちの1つがデフォルトで表示される。プルダウンボタンPBは、利用可能なプリンターの一覧をプルダウン表示させるためのボタンであり、ユーザーが入力機構53を操作して、ポインターでプルダウンボタンPBをクリックすると、利用可能なプリンターの一覧がサブウィンドウSW2に表示される。また、ユーザーが、サブウィンドウSW2に示された一覧から1つのプリンターをクリックして選択すると、サブウィンドウSW1には、デフォルトで表示されたプリンターに代えて、当該選択されたプリンターが表示される。要するに、ユーザーは、サブウィンドウSW1にデフォルトで表示されたプリンターが所望のプリンターであれば、利用するプリンターを選択する必要がなく、所望のプリンターでなければ、サブウィンドウSW2にプリンターの一覧を表示させて、その中から所望のプリンターを選択することができる。
【0062】
こうしたウィンドウW1において、サブウィンドウSW1には、上述した優先順位予測処理のステップS160において、サービスタイプ「プリンター」について最も優先順位が高く予測されたLP−2222(プリンターPRT2)が表示される。また、サブウィンドウSW2には、上記ステップS160で予測された優先順位が高い順に表示され、図中では、当該優先順位に基づいて、LP−2222(プリンターPRT2)、LP−1111(プリンターPRT1)の順に表示されている。なお、サブウィンドウSW2において、反転表示されたLP−2222は、当該プリンターがサブウィンドウSW1に現在表示されていることを示している。
【0063】
利用可能なサービスの表示を行うと、CPU30は、ユーザーが所望のサービスを選択して行うサービスの実行指示を受け付けて、実行部34の処理として、選択されたサービスを実行する(ステップS220)。本実施例では、ユーザーによって、LP−2222(プリンターPRT2)が選択され、CPU30が、印刷対象データをプリンターサーバーとしてのサーバーSVに送信し、印刷を実行するものとした。
【0064】
このようにして、サービスが実行されると、CPU30は、利用したサービスについて利用履歴データベース41のサービス利用情報を更新する(ステップS230)。こうして、サービス利用処理は終了となる。図4(e)に更新されたサービス利用情報の具体例を示す。この例では、最も優先順位の高かったプリンターPRT2(LP−2222)が利用された場合の例である。図4(d)では、図4(b)に示したサービス利用情報のうち、使用環境「192.168.1」、のプリンター「LP−2222」の利用回数が「10」回から「11」回に更新された様子を示している。このように更新することで、次回、優先順位予測処理を実行する際に、最新の利用履歴に基づいてサービスの優先順位を精度良く予測することができる。
【0065】
A−5.効果:
以上説明したサービス利用システム20は、コンピューターPC1において利用されたサービスの利用履歴であるサービス利用情報に基づいて、検索された複数のサービスについて優先順位を予測し、コンピューターPC1で利用可能なサービスを当該優先順位に基づいた配列で選択可能に表示させ、その中からユーザーに選択されたサービスを実行する。したがって、コンピューターPC1の利用履歴に基づいてコンピューターPC1において利用される可能性が大きいと判断されたサービスほどユーザーは選択しやすくなるので、ユーザーのサービス選択の負担を軽減することができる。かかる効果は、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されるサービスが多数ある場合には、顕著なものとなる。また、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されたサービスを検索し、検索されたサービスのサービス利用情報に基づいて優先順位を予測するので、ローカルエリアネットワークLAN1に接続されるサービスが流動的な環境などにおいても、好適に適用することができる。
【0066】
また、サービス利用システム20は、コンピューターPC1にサービス利用情報が記憶されていないサービスについてのみ、他の端末の利用履歴を取得するので、すなわち、必要最低限な場合のみコンピューターPC2からサービス利用情報を取得して、優先順位の予測に反映させるので、予測を簡易的に行うことができ、コンピューターPC1の演算負担を軽減することができる。また、ローカルエリアネットワークLAN1の通信負荷を軽減することができる。
【0067】
また、サービス利用システム20は、サービス利用情報に基づいて算出されるサービスの利用確率によって、優先順位を予測するので、予測精度を向上させることができる。特に、本実施例では、単純ベイズによって利用確率を算出するので、比較的少ない計算量で不確実な事象を好適に予測することができる。その結果、メモリやCPUなどの資源を有効に活用でき、あるいは、コンパクトにすることができる。
【0068】
また、サービス利用システム20は、ローカルエリアネットワークへの接続状態を検知し、接続状態が変化するたびに、優先順位を更新することができるので、コンピューターPC1がローカルエリアネットワークに接続されるたびに、直近の利用履歴を反映した優先順位でサービスを配列して表示することができる。
【0069】
また、サービス利用システム20は、優先順位の高いサービスを利用可能とするソフトウェアがコンピューターPC1に記憶されていない場合には、当該ソフトウェアをサーバーSVから取得できるので、コンピューターPC1のユーザーは、当該サービスを選択して実行しようとする際に、円滑に当該サービスを利用することができる。
【0070】
B.変形例:
上述の実施形態の変形例について説明する。
B−1.変形例1:
上述の実施形態の優先順位予測処理においては、ステップS100でネットワークの接続状態の変化を検知した場合に、サービス検索(ステップS110)及びサービスの優先順位の予測(ステップS160)を行う構成としたが、サービス検索等を行うタイミングは、これに限らず、種々のタイミングで設定することができる。例えば、所定のユーザー操作の指示を受け付けた際でもよいし、コンピューターPC1において、所定のアプリケーションが起動された際でもよいし、所定の時間間隔で定期的に行うこととしてもよい。
【0071】
B−2.変形例2:
上述の実施形態においては、コンピューターPC1が以前にも接続されたことがあるローカルエリアネットワークLAN1に接続する場合について、単純ベイズ分類器を用いて利用確率を算出する態様について示したが、コンピューターPC1は、過去に1度も接続されたことがないローカルエリアネットワークLAN3(ネットワークアドレス192.168.3)に接続された場合であっても、他のネットワークでの利用履歴に基づいて好適に優先順位を予測することができる。かかる場合の利用確率の算出例を以下に示す。なお、ローカルエリアネットワークLAN3のネットワーク構成は、ここでは、ローカルエリアネットワークLAN2と同一であるとして説明する。
【0072】
型番「PM−1111」を利用する確率P(PM−1111)及び型番「LP−2222」を利用する確率P(LP−2222)は、実施例と同様に、図4(b)に示したサービス利用情報に基づいて、P(PM−1111)=0.89、P(LP−2222)=0.11となる。
【0073】
ここで、使用環境「192.168.3」において型番「PM−1111」を利用する確率P(PM−1111|192.168.3)と、使用環境「192.168.3」において型番「LP−2222」を利用する確率P(LP−2222|192.168.3)とは、例えば、次式(6),(7)を用いて、以下のように算出してもよい。
【0074】
P(PM-1111|192.168.3)=P(PM-1111)×P(192.168.3|PM-1111)÷{P(192.168.3|PM-1111)×P(PM-1111)+P(192.168.3|!PM-1111)×P(!PM-1111)}=(0.89×0.5)÷(0.5×0.89+0.5×0.11)=0.89・・・(6)
P(LP-2222|192.168.3)=P(LP-2222)×P(192.168.3|LP-2222)÷{P(192.168.3|LP-2222)×P(LP-2222)+P(192.168.3|!LP-2222)×P(!LP-2222)}=(0.11×0.5)÷(0.5×0.11+0.5×0.89)=0.11・・・(7)
【0075】
要するに、使用環境「192.168.3」は初めて接続されるネットワークであるから、P(192.168.3|PM−1111)やP(192.168.3|LP−2222)を利用履歴に基づいて算出できないので、ここでは、ローカルエリアネットワークLAN3に接続されたN個(この例ではN=2)のサービスが同じ確率1/Nで利用されると仮定して、P(192.168.3|PM−1111)=P(192.168.3|LP−2222)=0.5としているのである。かかる計算により、確率値の高いサービス「PM−1111」(プリンターPRT1)、サービス「LP−2222」(プリンターPRT2)の順に優先順位が高くなるように予測されることとなる。
【0076】
B−3.変形例3:
上述の実施形態においては、優先順位予測処理において、優先順位の予測の基礎とするサービス利用情報は、全て同列に扱ったが、所定の調整係数を用いて重み付けを行ってもよい。かかる重み付けは、算出された各サービスの利用確率に調整係数を乗じることで行ってもよいし、サービス利用情報(実施例では、利用回数)に調整係数を乗じてもよい。
【0077】
例えば、ローカルエリアネットワークLAN1に新規サービスと従来から存在するサービスとが混在して接続されている場合には、新規サービスの調整係数を他のサービスよりも大きくしてもよい。新規に接続されたサービスは、新たに導入された新製品であることが多く、機能が充実していると考えられるからである。勿論、新規サービスは信頼性が低いものとして、あるいは、新規サービスについてのサービス利用情報は、コンピューターPC2から取得するものであるから、コンピューターPC1のサービス利用情報と比較して重要度が低いものとして、調整係数を他のサービスよりも小さくしてもよい。
【0078】
また、コンピューターPC1以外に、複数台の端末がローカルエリアネットワークLAN1に接続されている場合にも、同様に重み付けを行ってもよい。例えば、ローカルエリアネットワークLAN1に接続された端末がコンピューターPC1以外に20台あり、その各端末からサービス利用情報を取得するような場合には、コンピューターPC1を含めた21台の利用履歴を同等に扱ったのでは、コンピューターPC1の利用履歴がほとんど反映されない利用確率を算出することとなるからである。
【0079】
あるいは、サービス利用情報にサービスごとの最終利用日時を記憶しておき、最終利用日時から所定期間を経過したサービスの調整係数を他のサービスよりも小さくしてもよい。過去に多く利用されていても、最近利用されていないサービスは、利用されない可能性が高いからである。これらのような構成とすれば、より柔軟な優先順位予測を行うことができる。
【0080】
B−4.変形例4:
上述の実施形態においては、コンピューターPC1のサービス利用履歴は、コンピューターPC1におけるサービスの利用履歴を一括集計したものであったが、複数のユーザーがコンピューターPC1を使用する場合には、コンピューターPC1は、ユーザーごとにサービス利用履歴を記憶し、当該ユーザーの利用履歴に応じた優先順位予測を行う構成としてもよい。ユーザーの識別は、例えば、ログイン時に入力されるユーザー名によってもよい。こうすれば、ユーザーごとのサービス利用特性に応じて好適に優先順位を予測することができる。
【0081】
B−5.変形例5:
上述の実施形態の優先順位予測処理においては、新規サービスについてのみローカルエリアネットワークLAN1に接続された他の端末からサービス利用情報を取得する構成(ステップS130〜ステップS150)としたが、他の端末からサービス利用情報を取得する対象は、新規サービスに限るものではなく、全ての利用可能なサービスとしてもよい。こうすれば、他人が評価する信頼性や利便性も反映させて、より柔軟な優先順位の予測を行うことができるからである。かかる場合には、優先順位の予測の基礎とするサービス利用情報は、1つのサービスについて、コンピューターPC1での利用履歴とコンピューターPC2での利用履歴とを含むこととなるが、これらは、同等に扱ってもよいし、上述の重み付けを行ってもよい。
【0082】
あるいは、コンピューターPC1のサービス利用情報において、ローカルエリアネットワークLAN1における利用総数が所定値よりも少ない場合に、全ての利用可能なサービスについて、他の端末からサービス利用情報を取得する構成としてもよい。あるいは、利用総数が所定値に満たないサービスがある場合に、当該サービスについてのみ、他の端末からサービス利用情報を取得する構成としてもよい。こうすれば、サービス利用回数が少ないことによって一定の予測精度が期待できない場合であっても、他人の利用履歴を用いて好適な優先順位を予測することができる。
【0083】
B−6.変形例6:
上述の実施形態においては、説明の便を考慮して、優先順位の予測の基礎とするサービス利用情報は、使用環境、サービスタイプ、型番、利用回数のみとしたが、種々の利用履歴を含めることができる。例えば、インターフェース情報、サービスのIPアドレス、サブネット、サービスの形式などを用いてもよい。インターフェース情報とは、ローカルエリアネットワークLAN1に接続するためにコンピューターPC1のいずれのインターフェースを用いたかを示す情報である。このような種々の利用履歴を含めることにより、より、精度の高い優先順位の予測を行うことができるからである。例えば、インターフェース情報を上述した単純ベイズ分類器の特徴変数として利用確率を算出すれば、ローカルエリアネットワークLAN1に無線LANを用いて接続したか、あるいは、有線LANを用いて接続したかなどを反映することができるので、接続環境の通信速度なども、予測要素に含めることができる。
【0084】
また、本実施例では、サービスの型番ごとの利用回数をサービス利用情報として記憶したが、サービスのIPアドレスを合わせて記憶しておけば、ローカルエリアネットワークLAN1に同一型番のサービスが複数接続されている場合であっても、同一型番のサービスについても好適に優先順位を予測することができる。
【0085】
なお、サービスの形式(例えば、サービスがプリンターであれば、例えば、インクジェット式であるのか、レーザ式であるのか、カラーであるのか、モノクロであるのか)を優先順位の予測の基礎とする場合には、例えば、サービスの製造メーカー各社の型番と形式との対応関係を記憶させておき、SLPで取得した型番から、形式を把握する構成としてもよい。
【0086】
B−7.変形例7:
コンピューターPC1は、優先順位予測処理のステップS110において、各サービスの現在の動作状態を表すステータス情報を取得して、サービス利用情報に当該ステータス情報を加えて優先順位の予測の基礎としてもよい。こうしたステータス情報としては、例えば、エラー状態であることを示すエラー情報や、他の端末によりサービスが使用されていることを示す使用中情報や、実行待ちのサービスの情報(印刷サービスであれば、印刷未実行ジョブの数)などとすることができる。このようなステータス情報は、例えば、SLPを利用して各サービスのIPアドレスを把握した後に、SNMP(Simple Network Management Protocol)などの公知のプロトコルを用いて取得することができる。
【0087】
ステータス情報の利用方法としては、例えば、ステータス情報を利用履歴データベース41に記憶しておき、上述した単純ベイズ分類器の特徴変数として利用確率を算出してもよい。あるいは、各サービスの利用確率値にステータス情報の内容に応じた調整係数を乗じて、その計算結果に基づいて優先順位を予測してもよい。具体的には、サービスの動作状態が、印刷未実行ジョブが3個以上ある場合には調整係数「0.8」、エラー中である場合には調整係数を「0.5」として、サービスの円滑な利用を妨げる要因に応じて、優先順位を下げてもよい。このように、ステータス情報を含めた優先順位の予測を行えば、サービスの動作状態をも反映して、より柔軟な優先順位の予測を行うことができる。
【0088】
B−8.変形例8:
上述の実施形態においては、ベイズ分類器によって優先順位を予測したが、優先順位予測方法は、特に限定するものではなく、他の公知の分類器を用いてもよい。もとより、利用確率の算出も必須ではなく、例えば、単純に、接続された使用環境における利用回数が多いサービスの順に優先順位を予測してもよい。要するに、サービス利用情報やステータス情報などに基づいて、優先順位を予測すればよいのである。
【0089】
また、優先順位予測の基礎とするサービス利用情報は、接続された使用環境におけるサービス利用情報のみとしてもよいし、接続されていない使用環境、例えば、最もサービス利用回数の多い使用環境におけるサービス利用情報のみとしてもよい。
【0090】
B−9.変形例9:
上述の実施形態においては、コンピューターPC1及びPC2は、同じ構成として説明したが、必ずしも同じ構成とする必要はない。コンピューターPC1のCPU30は、検索部31、優先順位予測部32、表示部33、実行部34、利用履歴取得部35、検知部36、判断部37、ソフトウェア取得部38として機能し、コンピューターPC2のCPU30は、利用履歴提供部39として機能する構成であってもよい。こうすれば、コンピューターPC1は、種々のネットワークに接続される端末、例えば、ノート型コンピューターであり、コンピューターPC2は、ネットワーク間の移動がない端末、例えば、デスクトップ型コンピューターであるような場合に、簡単な構成とすることができる。
【0091】
B−10.変形例10:
上述の実施形態においては、種々の構成について示したが、本発明のサービス利用システム20は、サービスの検索を行う手段と、コンピューターPC1におけるサービス利用情報を記憶する手段と、サービス利用情報に少なくとも基づいて、検索されたサービスの優先順位を予測する手段と、サービスの候補を予測した優先順位に基づいて表示させる手段と、サービスを実行する手段とを少なくとも備えていればよい。上述したその他の構成については必須ではないので、適宜組み合わせて構成すればよい。
【0092】
B−11.変形例11:
上述の実施形態においては、利用履歴データベース41に記憶されるサービス利用情報には、特に時間的制限は設けていないが、利用履歴データベース41において、各利用履歴を利用日時と対応付けて記憶し、所定時間が経過した古い利用履歴をCPU30が随時削除する構成としてもよい。こうすれば、直近の利用状況のみを反映して、精度の高い優先順位の予測を行うことができる。
【0093】
B−12.変形例12:
上述した実施形態においては、サービス利用システム20を構成するサービスとして、プリンターやプロジェクターといった出力装置の例を示したが、サービスの種類は、特に限定するものではなく、ネットワークを介して利用可能な種々のサービスとすることができる。例えば、WEBカメラなどの入力装置であってもよいし、共有ファイルの提供や動画の配信などを行うサーバーなどであってもよい。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明のサービス利用システムを構成する端末は、実施例に示したパーソナルコンピューターに限らず、PDA(Personal Digital Assistant)など、種々の端末に適用可能である。また、本発明は、サービス利用システムとしての構成のほか、サービス利用装置、サービス利用方法、サービスの利用候補を表示させるためのコンピュータープログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0095】
20...サービス利用システム
30...CPU
31...検索部
32...優先順位予測部
33...表示部
34...実行部
35...利用履歴取得部
36...検知部
37...判断部
38...ソフトウェア取得部
39...利用履歴提供部
40...ハードディスクドライブ
41...利用履歴データベース
51...ROM
52...RAM
53...入力機構
54...ディスプレイ
55...インターフェース
PRT1〜PRT4...プリンター
PJ...プロジェクター
SV...サーバー
PC1,PC2...コンピューター
LAN1,LAN2...ローカルエリアネットワーク
W1...ウィンドウ
SW1,SW2...サブウィンドウ
PB...プルダウンボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された複数のサービスを、該ネットワークに接続された第1の端末から利用するサービス利用システムであって、
前記ネットワークに接続された複数のサービスを検索する検索手段と、
前記第1の端末において利用されたサービスの利用履歴を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段が記憶する利用履歴を少なくとも含む優先順位基礎情報に基づいて、前記検索された複数のサービスについて、前記第1の端末において利用される可能性の大きさの順位付けである優先順位を予測する優先順位予測手段と、
前記第1の端末で利用可能なサービスを、前記予測された優先順位に基づいた配列で選択可能に表示させる表示手段と、
前記表示されたサービスの中からユーザーに選択されたサービスを実行する実行手段と
を備えたサービス利用システム。
【請求項2】
請求項1記載のサービス利用システムであって、
前記ネットワークには、前記第1の端末とは異なる第2の端末であって、該第2の端末において利用された前記複数のサービスの利用履歴を記憶する第2の記憶手段を備えた第2の端末が接続され、
更に、前記第2の記憶手段が記憶する利用履歴を前記第2の端末から取得する利用履歴取得手段を備え、
前記優先順位基礎情報には、前記第2の端末から取得した利用履歴を含む
サービス利用システム。
【請求項3】
前記利用履歴取得手段は、前記検索手段が検索した複数のサービスのうちで、前記第1の記憶手段に利用履歴が記憶されていないサービスについて、前記取得を行う請求項2記載のサービス利用システム。
【請求項4】
前記利用履歴取得手段は、前記第1の記憶手段が記憶する利用履歴のうちの、前記第1の端末が接続されているネットワークでの利用総数が所定値よりも少ない場合に、前記取得を行う請求項2または請求項3記載のサービス利用システム。
【請求項5】
前記優先順位予測手段は、前記優先順位基礎情報に基づいて算出されるサービスの利用確率によって、前記優先順位を予測する請求項1ないし請求項4のいずれか記載のサービス利用システム。
【請求項6】
前記優先順位予測手段は、単純ベイズ分類器によって前記利用確率を算出する請求項5記載のサービス利用システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載のサービス利用システムであって、
更に、前記第1の端末の前記ネットワークへの接続状態の変化を検知する検知手段を備え、
前記検知手段が前記変化を検知した場合に、前記検索手段は前記検索を行い、前記優先順位予測手段は前記優先順位の予測を行う
サービス利用システム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載のサービス利用システムであって、
前記検索手段は、前記複数のサービスの動作状態を把握可能であり、
前記優先順位基礎情報には、前記検索手段が把握したサービスの動作状態を表すステータス情報を含む
サービス利用システム。
【請求項9】
前記検索手段が検索する複数のサービスの少なくとも一部は、前記ネットワークに新規に接続されたサービスである請求項1ないし請求項8のいずれか記載のサービス利用システム。
【請求項10】
前記ネットワークは、前記第1の端末が初めて接続されたネットワークである請求項1ないし請求項9のいずれか記載のサービス利用システム。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか記載のサービス利用システムであって、
前記ネットワークには、前記複数のサービスを利用可能にするソフトウェアの各々を記憶したサーバーが接続され、
更に、
前記優先順位予測手段が優先順位を予測したサービスのうちで優先順位の高いサービスを利用可能とするソフトウェアである優先ソフトウェアが前記第1の端末の記憶媒体に記憶されているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が前記優先ソフトウェアは記憶されていないと判断した場合に、前記サーバーから前記優先ソフトウェアを取得するソフトウェア取得手段と
を備えたサービス利用システム。
【請求項12】
ネットワークに接続された複数のサービスを、該ネットワークに接続された端末から利用するサービス利用方法であって、
前記ネットワークに接続された複数のサービスを検索する検索工程と、
前記端末におけるサービスの利用履歴を記憶する記憶工程と、
前記記憶された利用履歴を少なくとも含む優先順位基礎情報に基づいて、前記検索された複数のサービスについて、前記端末において利用される可能性の大きさの順位付けである優先順位を予測する優先順位予測工程と、
前記端末で利用可能なサービスを、前記予測された優先順位に基づいた配列で、選択可能に表示させる表示工程と、
前記表示されたサービスの中からユーザーに選択されたサービスを利用する利用工程と
を備えたサービス利用方法。
【請求項13】
ネットワークに接続され、利用可能な複数のサービスを、該ネットワークに接続された端末から利用する際に、前記複数のサービスの表示を所定のサービスの配列で行わせるためのコンピュータープログラムであって、
前記ネットワークに接続された複数のサービスを検索し、サービスのリストを作成する検索機能と、
前記端末におけるサービスの利用履歴を記憶媒体に記憶する記憶機能と、
前記記憶された利用履歴を少なくとも含む優先順位基礎情報に基づいて、前記検索された複数のサービスについて、前記端末において利用される可能性の大きさの順位付けである優先順位を予測する優先順位予測機能と、
前記サービスのリストを、該サービスのリストの表示用に、前記予測された優先順位に基づいた配列とする配列機能と
をコンピューターに実現させるコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−204890(P2010−204890A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48939(P2009−48939)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】