説明

サービス提供システム

【課題】利用者の操作入力に対する反応を向上させて、円滑なサービスの提供を行うことが可能なサービス提供システムを提供する。
【解決手段】サーバーは、前記クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、前記受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断するコマンド予測手段と、前記受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び前記予測コマンドに応じた予測配信データを生成する配信データ生成手段と、を有し、前記クライアント装置は、前記制御コマンドの送信後に、前記予測コマンドに係る新たな操作入力が行われた場合は、前記予測配信データを用いてサービスを提供するサービス提供手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のサービスを提供するサービス提供システムに関し、特にサーバーとクライアント装置とがネットワークに接続されて構成されたサービス提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバーとクライアント装置とをネットワークを通じて接続して、所定のサービスを提供するサービス提供システムが知られている。このサービス提供システムでは、ホストサーバーはサービスに係るデータを記録しており、クライアント装置がホストサーバーに対してこのデータを配信する旨の制御コマンドを送信すると、ホストサーバーからクライアント装置に対してデータの配信が行われる(例えば、特許文献1−3参照)。
【0003】
また、上記構成のサービス提供システムにおいて、ホストサーバー側でサービスに係る全ての処理を行う(いわゆるクラウド型の)ホストサーバーを備えるものがある。例えば、利用者がリモコン装置を操作して現在配信されているデータを切替える旨の操作入力を行う場合、クライアント装置は制御コマンドを生成し、ネットワークを経由してホストサーバーに制御コマンドを送信する。そして、ホストサーバーはこの制御コマンドを受信すると、切替えに対応したデータを内部で生成し、ネットワーク経由でクライアント装置に配信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−37038号公報
【特許文献2】特開2007−124080号公報
【特許文献3】特開2008−33407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクラウド型のホストサーバーを備えるサービス提供システムにおいて、操作入力が行われる度に、ホストサーバーは操作入力に応じた処理を行なう必要があるため、利用者による操作入力に対する遅延時間を生じさせる。そのため、この遅延時間が円滑なサービスの提供を妨げる場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、利用者の操作入力に対する反応を向上させて、円滑なサービスの提供を行うことが可能なサービス提供システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、配信データを生成するサーバーと、前記サーバーとネットワークを通じて接続されたクライアント装置とを備え、前記配信データを用いたサービスを提供するサービス提供システムにおいて、前記サーバーは、前記クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、前記受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断するコマンド予測手段と、前記受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び前記予測コマンドに応じた予測配信データを生成する配信データ生成手段と、を有し、前記クライアント装置は、前記制御コマンドの送信後に、前記予測コマンドに係る新たな操作入力が行われた場合は、前記予測配信データを用いてサービスを提供するサービス提供手段と、を有する構成としてある。
【0008】
上記のように構成された発明では、サーバーは、コマンド予測手段により、クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、前記受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断し、配信データ生成手段により、前記受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び前記予測コマンドに応じた予測配信データを生成する。一方、クライアント装置では、サービス提供手段が、制御コマンドの送信後に、前記予測コマンドに係る新たな操作入力が行われた場合は、予測配信データを用いてサービスを提供する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、操作入力が事前に予測されたものである場合は、クライアント装置が、事前に生成された予測配信データを用いてサービスの提供を行うため、利用者の操作入力に対する反応を向上させて、円滑なサービスの提供を行うことができる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】サービス提供システム10のブロック構成図である。
【図2】ホストサーバーのブロック構成図である。
【図3】クライアント装置のブロック構成図である。
【図4】クライアント装置30で実行される処理を説明するフローチャートである。
【図5】ホストサーバー20で実行される処理を説明するフローチャートである。
【図6】予測コマンド参照テーブルT2における制御コマンドの関連付けを説明する図である。
【図7】ホストサーバー20から配信される配信データを説明する図である。
【図8】サービス提供システム10における処理を示す流れ図である。
【図9】第2の実施形態に係るクライアント装置30が実行する処理を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態に係るホストサーバー20が実行する処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る配信データを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.第1の実施形態:
2.第2の実施形態:
3.その他の実施形態:
【0012】
1.第1の実施形態:
以下、図を参照して、この発明に係るサービス提供システムを具体化した第1の実施の形態について説明する。図1は、サービス提供システム10のブロック構成図である。また、図2は、ホストサーバーのブロック構成図である。そして、図3は、クライアント装置のブロック構成図である。
【0013】
図1に示すように、サービス提供システム10は、ホストサーバー20と、クライアント装置30とが、ネットワークNを通じて接続して構成されている。クライアント装置30は、利用者からの操作入力を受け付けるリモコン装置38を備えており、利用者がこのリモコン装置38を操作してホストサーバー20からのサービスの提供を受ける。また、ホストサーバー20は、サービスに係る処理をその内部で実行するいわゆるクラウド型のサーバーにより実現される。そのため、クライアント装置30から送信される所定の制御コマンドに応じて配信データの生成又は加工を行い、クライアント装置30に提供する。本実施形態では、ホストサーバー20が提供するサービスの一例として、ネットワークNを経由した映像配信をもとに説明を行う。
【0014】
図2に示すように、ホストサーバー20は、例えばPCにより構成され、通信制御部21と、復調部22と、記録部23と、変調部24と、制御部25と、を備えて構成されている。また、ホストサーバー20を構成する各部はバスを介して接続されており、制御部25による統合的な制御を受ける。
【0015】
通信制御部21は、外部装置(例えば、クライアント装置)との間でネットワークNを通じた接続を確立する。具体的には、通信制御部21は、クライアント装置30との間で送受信される各種データ(配信データ、制御コマンド)をネットワークを介して通信するための各種の処理を行なう。そのため、通信制御部21から出力された各種データは、復調部22により復調され、記録部23に記録される。一方、各種データをネットワークNへ出力する場合、変調部24によりこのデータを変調した後、通信制御部21からネットワークNへ出力される。
【0016】
制御部25は、CPUやROM及びRAMを備え構成され、ホストサーバー20における統合的な制御を行う。ROMにはCPUが各種処理を行なうためのプログラムが記録されており、CPUがこのプログラムをRAM上に展開して実行することで、制御部25における所定の処理が実行される。一例として、制御部25は、制御コマンドの解析や、この制御コマンドに応じた配信データの生成及び編集を行う。また、ROMには、制御部25が制御コマンドに関連付けられた処理を実行するためのコマンドテーブルT1や、制御コマンドに関連付けられた予測コマンドを参照するための予測コマンド参照テーブルT2が記録されている。
【0017】
記録部23は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の大容量記録媒体であり、ホストサーバー20が行うサービスを実行するための各種データが記録されている。例えば、記録部23には、サービス提供時にクライアント装置30に配信される配信データ及びこの配信データの元となる元データが記録されている。配信データは、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)規格に準じたデータ形式により構成される。
【0018】
図3に示すように、クライアント装置30は、テレビジョン受像機等の表示装置により実現され、通信制御部31と、復調部32と、変調部33と、制御部34と、メインメモリ35と、バックエンド部36と、表示パネル37とを備えて構成されている。また、表示パネル37以外の各部はバスを介して接続されており、制御部34からの統合的な制御を受ける。
【0019】
通信制御部31、復調部32及び変調部33は、ホストサーバー20における通信制御部21、復調部22、及び変調部24と同様の機能を備える。そのため、クライアント装置30が、通信制御部31、復調部32、及び変調部33を備えることで、ホストサーバー20との間でネットワークNを経由したデータ等の通信を行うことが可能となる。
【0020】
メインメモリ35は、例えばRAM等の揮発性メモリにより実現される。本実施形態では、特に、ホストサーバー20から配信される配信データはこのメインメモリ35に記録され、逐次、バックエンド部36に出力される。
【0021】
制御部34は、CPU、ROM、RAM、及びリモコン受信部を備えて構成される。リモコン受信部は、リモコン装置38から送信される赤外線信号を操作入力信号に変換してCPUに出力する。また、ROMには、ホストサーバー20同様、コマンドテーブルT1及び予測コマンド参照テーブルT2が記録されており、制御部34は、操作入力から制御コマンド、及びこの制御コマンドに関連付けられた予測コマンドを判断することができる。
【0022】
バックエンド部36は、ネットワークNを経由して入力した配信データをもとに表示パネル37を駆動するための描画処理を行う。描画処理の一例として、バックエンド部36は、配信データから取り出された映像データに対して所定の画質調整を施す。また、バックエンド部36は出力側で表示パネル37と接続されており、処理後の映像データを表示パネル37に出力して映像を表示させる。
【0023】
図4は、クライアント装置30で実行される処理を説明するフローチャートである。また、図5は、ホストサーバー20で実行される処理を説明するフローチャートである。また、図6は、予測コマンド参照テーブルT2における制御コマンドの関連付けを説明する図である。そして、図7は、ホストサーバー20から配信される配信データを説明する図である。以下、サービス提供システム10における映像配信に係る処理を各図を参照して説明する。
【0024】
図4において、利用者がリモコン装置38を操作して、サービスの提供を受けるための操作入力を行うと、クライアント装置30では、制御部34がこの操作入力に対応した赤外線信号を受信し(ステップS10:YES)、この操作入力に対応する制御コマンドを解析する。このとき、制御部34は、コマンドテーブルT1及び予測コマンド参照テーブルT2を参照し、操作入力に対応する制御コマンド及び予測コマンドを判断する(ステップS11)。
【0025】
入力された操作入力がすでに受信している予測配信データに係る制御コマンドでない場合(ステップS11:NO)、制御部34は、制御コマンドを生成し、ホストサーバー20に送信する(ステップS12)。以下、クライアント装置30により生成される制御コマンドは、ホストサーバー20に映像配信を要求するものである場合を例に説明を行う。
【0026】
図5において、ホストサーバー20は、ネットワークNを通じて制御コマンドを受信すると(ステップS20:YES)、この制御コマンドの解析を行う(ステップS21)。本実施形態では、ホストサーバー20の制御部25は、コマンドテーブルT1を参照して受信した制御コマンドの解析を行う。
【0027】
解析された制御コマンドがサービスの停止を要求するものでない場合(ステップS22:NO)、制御部25は予測コマンド参照テーブルT2を参照して、解析された制御コマンドに関連付けされた予測コマンドを判断する(ステップS23)。なお、制御コマンドがサービスの停止を要求するものである場合(ステップS22:YES)、制御部25はサービスの停止を行う(ステップS26)。
【0028】
図6に示すように、予測コマンド参照テーブルT2には、所定の制御コマンドと、この制御コマンドが生成された場合に、利用者がその後入力するであろう制御コマンドが予測コマンドとして関連付けて記録されている。例えば、ホストサーバー20が受信した制御コマンドが映像配信の要求(以下、単に、「再生」とも記載する。)である場合、予測コマンド参照テーブルT2には、映像の「早送り」を指示する制御コマンドと、「巻き戻し」を指示する制御コマンド、「ポーズ」を指示する制御コマンドが関連付けて記録されている。なお、ここに示す各制御コマンドは一例である。以上により、ステップS23の処理により、本発明に係るコマンド予測手段が実現される。
【0029】
他にも、所定のOSD画像の表示を指示する制御コマンドの場合は、予測コマンド参照テーブルT2には、利用者によるリモコン装置38の操作に対応した変化後のOSD画像に係る制御コマンドが関連付けて記録されている。
【0030】
ホストサーバー20の制御部25は、解析された制御コマンド及びこの制御コマンドに関連付けられた各予測コマンドに基づいて、元データから配信データを作成する(ステップS24)。即ち、制御コマンドが「再生」に係るものである場合は、再生を行う映像データを元データから生成し、更に予測コマンド参照テーブルT2に関連付けられた、「早送り」、「巻き戻し」、「ポーズ」の各予測コマンドに対応した配信データを元データから生成する。以下、予測コマンドに応じて生成されるデータを予測配信データとも記載する。
【0031】
本実施形態では、図7に示すように、制御部25は、配信データ及び予測配信データをパケット毎に分割し、これらパケットを合成してストリームデータを生成する。例えば、パケットP1には、ホストサーバー20が受信した制御コマンドに応じた配信データが格納され、パケットP2〜P4には、予測コマンドに応じた予測配信データが格納される。なお、クライアント装置30とホストサーバーとの間では、どのパケットにどの配信データ(予測配信データ)が格納されているかを認識しているものとする。例えば、ホストサーバー20が、予測配信データとの関係を規定したテーブルを作成し、ストリームデータの先頭パケットにこのテーブルを記録するものであってもよい。以上により、ステップS24の処理により本発明に係る配信データ生成手段が実現される。
【0032】
また、各データがMPEG方式に対応する場合は、パケットには複数フレームのデータが格納される。無論、これに限定するものではなく、パケットに格納されるデータはフレーム単位以外のデータ分割で格納されるものであってもよい。また、予測配信データは、必ずしも関連付けが行われた制御コマンドに係る配信データと同じストリームデータに格納される必要はなく、所定間隔で配信されるストリームデータのパケットに順次格納されて送信されるものであってもよい。
【0033】
そして、制御部25は通信制御部21を制御して作成したストリームデータをネットワークNを経由してクライアント装置30に随時送信する(ステップS25)。即ち、ホストサーバー20からは、所定周期で、解析された制御コマンドに応じた配信データ及びこの制御コマンドに関連づけられた予測配信データが格納されたストリームデータが送信さる。なお、ストリームデータは、クライアント装置30から新たな制御コマンドが送信されるまでは、同一のパケット構成により構成される。例えば、「再生」に係る配信データを送信する場合は、ホストサーバーが新たな制御コマンドを受信して、配信データを変化させるまで、各パケットには時系列に変化する「再生」、「早送り」、「巻き戻し」、「ポーズ」の各配信データ(予測配信データ)が格納されて送信される。無論、「早送り」、「巻き戻し」に係る予測配信データでは、フレームの組合せ、及び、時系列の方向が異なることは言うまでもない。
【0034】
クライアント装置30は、ストリームデータをネットワークNを通じてメインメモリ35に受信すると(ステップS13:YES)、ストリームデータを復調させて、所定パケットから送信した制御データに応じた配信データを抽出する(ステップS14)。ここでは、クライアント装置30は、ステップS12において「再生」に係る制御コマンドを送信しているため、この制御コマンドに対応する配信データがパケットP1から抽出される。
【0035】
そして、クライアント装置30は、抽出した配信データを表示するために描画処理を施す(ステップS15)。描画処理では、配信データに対してバックエンド部36による画質調整が施された後、表示パネル37によりデジタル・アナログ変換されて、映像が表示されていく。なお、ストリームデータは次のストリームデータがメインメモリ35に記録される毎に、新しいものに更新されるため、この段階で使用されなかった、「早送り」「巻き戻し」「ポーズ」に係る配信データは処分されることとなる。以下、上記ステップS12〜S15までの処理は、クライアント装置30に「停止」に係る操作入力が入力する(ステップS19:YES)か、停止以外の新たな操作入力がある(ステップS10:YES)まで繰返される。
【0036】
一方、ホストサーバー20から映像配信が行われている状態で、利用者がリモコン装置38を操作して、配信映像の「早送り」を示す新たな操作入力を行うと(ステップS10:YES)、クライアント装置30は、この操作入力を解析し、この操作入力(制御コマンド)が前回生成した制御コマンドに対応付けられているか否かを判断する(ステップS11)。例えば、制御部34は、予測コマンド参照テーブルT2を参照してこの判断を行う。
【0037】
上記のように、「早送り」に係る予測配信データは、「再生」に係る配信データに関連付けられているため(ステップS11:YES)、対応する予測配信データは、逐次メインメモリ35に記録されている。そのため、制御部34は、メインメモリ35に記録されたストリームデータのパケットから「早送り」に対応する予測配信データを抽出する(ステップS16)。
【0038】
クライアント装置30は、抽出した配信データに対して描画処理を施し、映像として表示する(ステップS17)。そのため、利用者が「早送り」に係る操作入力を行った際に、クライアント装置30はホストサーバー20に対して制御コマンドの生成及び送信を行うことなく、描画処理を行ない表示パネル37に「早送り」に係る映像を表示させる。以上により、本発明に係るサービス提供手段が実現される。
【0039】
以下、クライアント装置30の制御部34は、操作入力に係る制御コマンドが切替わったことをネットワークNを経由してホストサーバー20に送信する(ステップS18)。そのため、ホストサーバー20は制御コマンドが切り替わったことを制御コマンドの受信によって判断し(ステップS20、S21)、新たな制御コマンド(この場合は「早送り」)に係るストリームデータ(「早送り」の制御コマンドに関連付けられた予測配信データ含んだもの)を生成して送信を行う(ステップS22〜S25)。無論、ここでは、受信した制御コマンドが「早送り」に係るものであるため、ホストサーバー20では現在のストリームデータの変更を行うことなく、ストリームデータの作成及び送信を行ってもよい。
【0040】
以下、本発明に係る効果を従来の処理との比較により説明する。図8は、サービス提供システム10における処理を示す流れ図である。ここで、図8Aは従来のサービス提供システムでの処理を示す。また、図8Bは、本実施形態に係るサービス提供システム10での処理を示す。
【0041】
従来のサービス提供システムの処理では、利用者が操作入力を行うことで、クライアント装置30から逐次制御コマンドが送信され、ホストサーバー20ではこの制御コマンドを解析し、制御コマンドを解析した後、配信データを送信を行っていた。
【0042】
一方、本実施形態に係るサービス提供システム10では、クライアント装置30から制御コマンドが送信された際、この制御コマンドに関連する処理を予測し、予測された処理に対しても配信データの生成を行う。そのため、図8Bに示すように、次回、クライアント装置30に映像等の切替えを指示する入力が行われた場合、この入力が予測されたものである場合は、すでに生成された配信データを流用して描画処理を行うことで、描画処理を行なうまでの間に、クライアント装置30からホストサーバー20に制御コマンドを送信する処理や、ホストサーバー20がこの制御コマンドを解析する処理、更には、配信データを送信する処理を省略することができる。そのため、操作入力が事前に予測されたものである場合は、利用者が操作入力を行ってから描画処理を行う(サービスを提供する)までの時間を従来のものと比べて短くすることが可能となる
【0043】
2.第2の実施形態:
図9は、第2の実施形態に係るクライアント装置30が実行する処理を示すフローチャートである。また、図10は、第2の実施形態に係るホストサーバー20が実行する処理を示すフローチャートである。そして、図11は、第2の実施形態に係る配信データを説明する図である。第2の実施形態に係るサービス提供システム10では、ホストサーバー20が制御コマンドに応じたファイルを作成し、クライアント装置30がこのファイルに逐次アクセスすることで、利用者に対してサービスの提供が行われる構成において第1の実施形態と異なる。
【0044】
図9において、利用者がリモコン装置38を操作して、サービスの提供を受けるための操作入力を行うと、クライアント装置30では、制御部34がこの操作入力に対応した赤外線信号を受信し(ステップS110:YES)、入力された操作入力がすでに受信している制御コマンドに関連した予測コマンドでない場合(ステップS111:NO)、制御部34は、制御コマンドを生成し、ホストサーバー20に送信する(ステップS112)。
【0045】
図10において、ホストサーバー20は、ネットワークNを通じて制御コマンドを受信すると(ステップS120:YES)、この制御コマンドの解析を行う(ステップS121)。解析された制御コマンドがサービスの停止を要求するものでない場合(ステップS122:NO)、制御部25は予測コマンド参照テーブルT2を参照して、解析された制御コマンドに関連付けされた予測コマンドを判断する(ステップS123)。
【0046】
第2の実施形態に係る予測コマンド参照テーブルT2は、第1の実施形態同様、所定の制御コマンドと、この制御コマンドが生成された場合に、利用者がその後入力するであろう制御コマンドが予測コマンドとして関連付けて記録されている。
【0047】
ホストサーバー20の制御部25は、解析された制御コマンド及びこの制御コマンドに関連付けられた各予測コマンドに基づいて元データからファイルデータを作成する(ステップS124)。図11に示すように、第2の実施形態に係るホストサーバー20では、配信データを、ファイル形式で作成し、記録部23に記録する。即ち、制御コマンドが「再生」に係るものである場合は、再生を行う配信データは、ファイルF1として記録部23に記録される。同様に、予測コマンド参照テーブルT2に関連付けられた、「早送り」、「巻き戻し」、「ポーズ」の各予測コマンドに対応した配信データもそれぞれ予測ファイルF2、F3、F4として記録部23に記録される。
【0048】
図9において、クライアント装置30は、ホストサーバー20にネットワークNを経由してアクセスし、作成されたファイルデータの内、送信した制御コマンドに対応するファイルデータをネットワークN通じてメインメモリ35にダウンロードする(ステップS113:YES)。例えば、第2の実施形態では、クライアント装置30は、「再生」に係るファイルF1のみをダウンロードし、他の予測ファイルデータはダウンロードしない。その後、クライアント装置30は、ダウンロードしたファイルデータを復調させて、制御コマンドに対応したファイルデータ(ここではファイルF1)に含まれる配信データを抽出する(ステップS114)。
【0049】
そして、クライアント装置30は、抽出した配信データを表示するために描画処理を施す(ステップS115)。以下、上記ステップS112〜S115までの処理は、クライアント装置30に「停止」に係る操作入力が入力する(ステップS119:YES)か、停止以外の新たな操作入力がある(ステップS110:YES)まで繰返される。
【0050】
一方、ホストサーバー20から映像配信が行われている状態で、利用者がリモコン装置38を操作して、配信映像の「早送り」を示す新たな操作入力を行うと(ステップS110:YES)、クライアント装置30は、この操作入力を解析し、この操作入力(制御コマンド)が前回の制御コマンドに関連付けられているか否かを判断する(ステップS111)。例えば、制御部34は、予測コマンド参照テーブルT2を参照して、新たに生成する制御コマンドが前回生成した制御コマンドに関連付けられているかを判断する。
【0051】
上記のように、「早送り」に係る予測配信データは、「再生」に係る配信データに関連付けられているため(ステップS111:YES)、制御部34は、ホストサーバー20にアクセスし、記録部23に記録された予測ファイルの内、「早送り」に対応する予測ファイルF2をダウンロードする(ステップS116)。
【0052】
クライアント装置30は、ダウンロードした予測ファイルに含まれる配信データに対して描画処理を施し、映像として表示する(ステップS117)。そのため、利用者が「早送り」に係る操作入力を行った際に、クライアント装置30はホストサーバー20に対して「早送り」に係る制御コマンドの生成及び送信を行うことなく、予測ファイルをダウンロードし、表示パネル37に「早送り」に係る映像を表示させる。
【0053】
以下、クライアント装置30の制御部34は、操作入力に係る制御コマンドが切替わったことをネットワークNを経由してホストサーバー20に送信する(ステップS118)。そのため、ホストサーバー20は制御コマンドが切り替わったことを受信によって判断し(ステップS120、S121)、新たな制御コマンド(この場合は「早送り」)に係るファイル(「早送り」の制御コマンドに関連付けられた予測配信データ含んだもの)を生成して記録する(ステップS122〜S125)。
【0054】
以上、説明したように、第2に実施形態に係るデータ配信装置では、ホストサーバー20によりファイル形式で作成される配信データに対しても本発明を適用することが可能となる。
【0055】
3.その他の実施形態:
本発明は、様々な実施形態が存在する。
クライアント装置として表示装置を用いることは一例であり、ネットワークNに接続可能な装置であればこれ以外のものであってもよい。ここで、本発明は、クライアント装置に本実施形態に即した機能を持たせるだけで良いため、クライアント装置をテレビジョン受像機といった表示装置により実現すれば、既存の表示装置に対しても本発明の機能を適用することができる。
【0056】
また、配信データとして、映像データを用いることは一例であり、音声データであってもよい。
さらに、ホストサーバーは、1台の装置により構築される以外にも、複数のサーバーにより構築されるものであってもよい。ホストサーバーを複数のサーバーにより構築した場合、第2の実施形態において、各ファイルデータ(予測ファイル)をそれぞれ個別のサーバーにより生成する構成とすれば、クライアント装置がアクセスを行うサーバーのアドレスをファイルデータ毎(予測ファイルを含める)に切替えることで、本発明を適用することができる。この場合、1台のサーバーにより作成される場合に比べてファイルデータの作成に要する時間を短縮することができ、もって、クライアント装置からの制御コマンドの送信が短い期間で連続する場合でも、本発明を実施することが可能となる。
【0057】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。

【符号の説明】
【0058】
10…サービス提供システム、20…ホストサーバー、21…通信制御部、22…復調部、23…記録部、24…変調部、25…制御部、30…クライアント装置、31…通信制御部、32…復調部、33…変調部、34…制御部、35…メインメモリ、36…バックエンド部、37…表示パネル、38…リモコン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信データを生成するサーバーと、前記サーバーとネットワークを通じて接続されたクライアント装置とを備え、前記配信データを用いたサービスを提供するサービス提供システムにおいて、
前記サーバーは、
前記クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、前記受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断するコマンド予測手段と、
前記受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び前記予測コマンドに応じた予測配信データを生成する配信データ生成手段と、を有し、
前記クライアント装置は、
前記制御コマンドの送信後に、前記予測コマンドに係る新たな操作入力が行われた場合は、前記予測配信データを用いてサービスを提供するサービス提供手段と、を有することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項2】
前記サーバーが、生成した前記配信データ及び前記予測配信データをストリームデータに合成して前記クライアント装置に送信することを特徴とする請求項1に記載のサービス提供システム。
【請求項3】
前記サーバーが、生成した前記配信データ及び前記予測配信データをそれぞれファイルデータとして管理し、
前記クライアント装置が、操作入力に応じて、前記各ファイルデータにアクセスすることを特徴とする請求項1に記載のサービス提供システム。
【請求項4】
前記サービスが、映像配信サービスであって、
前記配信データ及び前記予測配信データが、操作入力に応じて切替えられる映像データであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のサービス提供システム。
【請求項5】
前記クライアント装置が、前記予測配信データを用いたサービスの提供後に、前記サーバーに対して、新たな操作入力に係る制御コマンドを通知することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のサービス提供システム。
【請求項6】
前記クライアント装置が、表示装置であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のサービス提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−243239(P2012−243239A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115589(P2011−115589)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】