説明

サービス提供システム

【課題】利用者の操作入力に対する反応を向上させて、円滑なサービスの提供を行うことが可能なサービス提供システムを提供する。
【解決手段】サーバーは、クライアント装置との間で通信する際に生じる時間を遅延時間として計測し、クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断し、受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び予測コマンドに応じた予測配信データを判断し、計測された遅延時間に応じて、予測配信データの生成時間を決定し、配信データを生成した後、決定された生成タイミングに応じて予測配信データの生成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のサービスを提供するサービス提供システムに関し、特にサーバーとクライアント装置とがネットワークに接続されて構成されたサービス提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバーとクライアント装置とをネットワークを通じて接続して、所定のサービスを提供するサービス提供システムが知られている。このサービス提供システムでは、ホストサーバーはサービスに係るデータを記録しており、クライアント装置がホストサーバーに対してこのデータを配信する旨の制御コマンドを送信すると、ホストサーバーからクライアント装置に対してデータの配信が行われる(例えば、特許文献1−5参照)。
【0003】
また、上記構成のサービス提供システムにおいて、ホストサーバー側でサービスに係る全ての処理を行う(いわゆるクラウド型の)ホストサーバーを備えるものがある。例えば、利用者がリモコン装置を操作して現在配信されているデータを切替える旨の操作入力を行う場合、クライアント装置は制御コマンドを生成し、ネットワークを経由してホストサーバーに制御コマンドを送信する。そして、ホストサーバーはこの制御コマンドを受信すると、切替えに対応したデータを内部で生成し、ネットワーク経由でクライアント装置に配信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−181971号公報
【特許文献2】特開平8−032601号公報
【特許文献3】特開2007−324706号公報
【特許文献4】特表2010−516125号公報
【特許文献5】特開平4−269087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクラウド型のホストサーバーを備えるサービス提供システムにおいて、操作入力が行われる度に、ホストサーバーは操作入力に応じた処理を行なう必要があるため、利用者による操作入力に対する遅延時間を生じさせる。そのため、この遅延時間が円滑なサービスの提供を妨げる場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、利用者の操作入力に対する反応を向上させて、円滑なサービスの提供を行うことが可能なサービス提供システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、配信データを生成するサーバーと、前記サーバーとネットワークを通じて接続されたクライアント装置とを備え、前記配信データを用いたサービスを提供するサービス提供システムにおいて、前記サーバーは、前記クライアント装置との間で通信する際に生じる時間を遅延時間として計測する遅延時間計測手段と、前記クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、前記受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断し、前記受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び前記予測コマンドに応じた予測配信データを判断する配信データ判断手段と、前記計測された遅延時間に応じて、前記予測配信データの生成時間を決定する生成タイミング決定手段と、前記配信データを生成した後、前記決定された生成タイミングに応じて前記予測配信データの生成を行う配信データ生成手段と、を有し、前記クライアント装置は、前記制御コマンドの送信後に、前記予測コマンドに係る新たな操作入力が行われた場合は、前記予測配信データを用いてサービスを提供するサービス提供手段と、を有する構成としてある。
【0008】
上記のように構成された発明では、サーバーは、クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、前記受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断し、前記受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び前記予測コマンドに応じた予測配信データを生成する。
また、クライアント装置では、制御コマンドの送信後に、予測コマンドに係る新たな操作入力が行われた場合は、サーバーに予め生成されている予測配信データを用いてサービスの提供を行う。
更に、サーバーは、クライアント装置との間の通信を行う際に生じる遅延時間を計測しており、予測配信データは、配信データの生成後、遅延時間をもとに決定された生成タイミングが経過した後に行われる。そのため、配信データの生成タイミングと予測配信データの生成タイミングを遅延時間に応じてずらすことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、操作入力が事前に予測されたものである場合は、クライアント装置が、事前に生成された予測配信データを用いてサービスの提供を行うため、利用者の操作入力に対する反応を向上させて、円滑なサービスの提供を行うことができる。
また、配信データと並行して生成される予測配信データの生成タイミングを遅延時間に応じてずらすことで、サーバーのリソースを効果的に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】サービス提供システム10のブロック構成図である。
【図2】ホストサーバーのブロック構成図である。
【図3】クライアント装置のブロック構成図である。
【図4】ホストサーバー20とクライアント装置30との間で実行される遅延時間計測処理を説明するフローチャートである。
【図5】クライアント装置30で実行される処理を説明するフローチャートである。
【図6】ホストサーバー20で実行される処理を説明するフローチャートである。
【図7】予測コマンド参照テーブルT2における制御コマンドの関連付けを説明する図である。
【図8】配信データの生成タイミングを説明する図である。
【図9】サービス提供システム10における処理を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.サービス提供システムの構成:
2.遅延時間計測処理について:
3.サービス提供処理について:
4.その他の実施形態:
【0012】
1.サービス提供システムの構成:
以下、図を参照して、この発明に係るサービス提供システムを具体化した第1の実施の形態について説明する。図1は、サービス提供システム10のブロック構成図である。また、図2は、ホストサーバーのブロック構成図である。そして、図3は、クライアント装置のブロック構成図である。
【0013】
図1に示すように、サービス提供システム10は、ホストサーバー20と、クライアント装置30とが、ネットワークNを通じて接続して構成されている。クライアント装置30は、利用者からの操作入力を受け付けるリモコン装置38を備えており、利用者がこのリモコン装置38を操作してホストサーバー20からのサービスの提供を受ける。また、ホストサーバー20は、サービスに係る処理をその内部で実行するいわゆるクラウド型のサーバーにより実現される。そのため、クライアント装置30から送信される所定の制御コマンドに応じて配信データの生成又は加工を行い、クライアント装置30に提供する。本実施形態では、ホストサーバー20が提供するサービスの一例として、ネットワークNを経由した映像配信をもとに説明を行う。
【0014】
図2に示すように、ホストサーバー20は、例えばPCにより構成され、通信制御部21と、復調部22と、記録部23と、変調部24と、制御部25と、を備えて構成されている。また、ホストサーバー20を構成する各部はバスを介して接続されており、制御部25による統合的な制御を受ける。
【0015】
通信制御部21は、外部装置(例えば、クライアント装置)との間でネットワークNを通じた接続を確立する。具体的には、通信制御部21は、クライアント装置30との間で送受信される各種データ(配信データ、制御コマンド)をネットワークを介して通信するための各種の処理を行なう。そのため、通信制御部21から出力された各種データは、復調部22により復調され、記録部23に記録される。一方、各種データをネットワークNへ出力する場合、変調部24によりこのデータを変調した後、通信制御部21からネットワークNへ出力される。
【0016】
制御部25は、CPUやROM及びRAMを備え構成され、ホストサーバー20における統合的な制御を行う。ROMにはCPUが各種処理を行なうためのプログラムが記録されており、CPUがこのプログラムをRAM上に展開して実行することで、制御部25における所定の処理が実行される。一例として、制御部25は、制御コマンドの解析や、この制御コマンドに応じた配信データの生成及び編集を行う。また、ROMには、制御部25が制御コマンドに関連付けられた処理を実行するためのコマンドテーブルT1や、制御コマンドに関連付けられた予測コマンドを参照するための予測コマンド参照テーブルT2が記録されている。
【0017】
更に、CPUは、計時機能を備えるタイマーを備えており、データの通信に要する時間をこのタイマーにより計測することができる。即ち、後述する遅延時間の計測はCPUがタイマーを用いることで実現される。
【0018】
記録部23は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の大容量記録媒体であり、ホストサーバー20が行うサービスを実行するための各種データが記録されている。例えば、記録部23には、サービス提供時にクライアント装置30に配信される配信データ及びこの配信データの元となる元データが記録されている。配信データは、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)規格に準じたデータ形式により構成される。更に、記録部23には、ホストサーバー20がクライアント装置30との間の通信に要する時間(以下、遅延時間とも記載する。)を記録した遅延時間参照テーブルT3を記録している。なお、遅延時間参照テーブルT3については後述する。また、コマンドテーブルT1や、予測コマンド参照テーブルT2を記録部23に記録するものであってもよい。
【0019】
図3に示すように、クライアント装置30は、テレビジョン受像機等の表示装置により実現され、通信制御部31と、復調部32と、変調部33と、制御部34と、メインメモリ35と、バックエンド部36と、表示パネル37とを備えて構成されている。また、表示パネル37以外の各部はバスを介して接続されており、制御部34からの統合的な制御を受ける。
【0020】
通信制御部31、復調部32及び変調部33は、ホストサーバー20における通信制御部21、復調部22、及び変調部24と同様の機能を備える。そのため、クライアント装置30が、通信制御部31、復調部32、及び変調部33を備えることで、ホストサーバー20との間でネットワークNを経由したデータ等の通信を行うことが可能となる。
【0021】
メインメモリ35は、例えばRAM等の揮発性メモリにより実現される。本実施形態では、特に、ホストサーバー20から配信される配信データはこのメインメモリ35に記録され、逐次、バックエンド部36に出力される。また、コマンドテーブルT1や、予測コマンド参照テーブルT2をメインメモリ35に記録するものであってもよい。
【0022】
制御部34は、CPU、ROM、RAM、及びリモコン受信部を備えて構成される。リモコン受信部は、リモコン装置38から送信される赤外線信号を操作入力信号に変換してCPUに出力する。また、ROMには、ホストサーバー20同様、コマンドテーブルT1及び予測コマンド参照テーブルT2が記録されており、制御部34は、操作入力から制御コマンド、及びこの制御コマンドに関連付けられた予測コマンドを判断することができる。
【0023】
バックエンド部36は、ネットワークNを経由して入力した配信データをもとに表示パネル37を駆動するための描画処理を行う。描画処理の一例として、バックエンド部36は、配信データから取り出された映像データに対して所定の画質調整を施す。また、バックエンド部36は出力側で表示パネル37と接続されており、処理後の映像データを表示パネル37に出力して映像を表示させる。
【0024】
2.遅延時間計測処理について:
以下、ホストサーバー20とクライアント装置30との間で実行される遅延時間計測処理を説明する。図4は、ホストサーバー20とクライアント装置30との間で実行される遅延時間計測処理を説明するフローチャートである。なお、図4に示す処理により、本発明に係る遅延時間計測手段が実現される。
【0025】
ステップS1において、ホストサーバー20の制御部25は、遅延時間の計測を開始する。即ち、制御部25はCPUの計時機能を用いて、以後の処理に要する遅延時間の計時を行う。そのため、ステップS2において、制御部25は、クライアント装置30に対して所定の文字列をネットワークNを経由して送信する。
【0026】
クライアント装置30では、ステップS11において、ホストサーバー20から送信された文字列を受信すると、ステップS12において、ホストサーバー20に対して返信を行う。例えば、クライアント装置30の制御部34は、受信した文字列と同様の文字列を生成して、ホストサーバー20にネットワークNを経由した返信を行う。
【0027】
ホストサーバー20は、ステップS3において、クライアント装置30からの返信を受信すると、ステップS4において、制御部34は返信までに要した時間を集計し、遅延時間参照テーブルT3に記録する。この遅延時間参照テーブルT3には、ホストサーバー20とネットワークNを経由して接続を確立したクライアント装置30毎に遅延時間が記録される。ここで、遅延時間とは、ネットワークNを構成する配線の長さや材質等物理的な要因を主たる要因として発生するものである。
【0028】
本実施形態では、例えば、あるクライアント装置に対して送信を行ってから返信されるまでにAm(ミリ)sec要した場合、要した時間を2で割った値(即ちA/2msec)を遅延時間として用いる。無論、遅延時間の計測方法は、周知技術に過ぎず様々なものが開示されているため、上記以外の測定方法を用いてもよい。以下、遅延時間参照テーブルT3に記録される遅延時間は、後述する、ホストサーバー20でのサービスの提供において、配信データの生成タイミングを決定する際に用いられる。
【0029】
3.サービス提供処理について:
図5は、クライアント装置30で実行される処理を説明するフローチャートである。また、図6は、ホストサーバー20で実行される処理を説明するフローチャートである。そして、図7は、予測コマンド参照テーブルT2における制御コマンドの関連付けを説明する図である。また、図8は、配信データの生成タイミングを説明する図である。以下、サービス提供システム10における映像配信に係る処理を各図を参照して説明する。
【0030】
図5において、利用者がリモコン装置38を操作して、サービスの提供を受けるための操作入力を行うと、クライアント装置30では、制御部34がこの操作入力に対応した赤外線信号を受信し(ステップS110:YES)、この操作入力に対応する制御コマンドを解析する。このとき、制御部34は、コマンドテーブルT1及び予測コマンド参照テーブルT2を参照し、操作入力に対応する制御コマンド及び予測コマンドを判断する(ステップS111)。
【0031】
入力された操作入力が前回生成された制御コマンドに対応したものでない場合(ステップS111:NO)、制御部34は、制御コマンドを生成し、ホストサーバー20に送信する(ステップS112)。以下、クライアント装置30により生成される制御コマンドは、ホストサーバー20に映像配信を要求するものである場合を例に説明を行う。
【0032】
図6において、ホストサーバー20は、ネットワークNを通じて制御コマンドを受信すると(ステップS120:YES)、この制御コマンドの解析を行う(ステップS121)。本実施形態では、ホストサーバー20の制御部25は、コマンドテーブルT1を参照して受信した制御コマンドの解析を行う。
【0033】
解析された制御コマンドがサービスの停止を要求するものでない場合(ステップS122:NO)、ステップS123では、制御部25は予測コマンド参照テーブルT2を参照して、今から生成する配信データの種別を判断する。なお、制御コマンドがサービスの停止を要求するものである場合(ステップS122:YES)、制御部25はサービスの停止を行う(ステップS128)。
【0034】
図7に示すように、予測コマンド参照テーブルT2には、所定の制御コマンドと、この制御コマンドが生成された場合に、利用者がその後入力するであろう制御コマンドが予測コマンドとして関連付けて記録されている。例えば、ホストサーバー20が受信した制御コマンドが映像配信の要求(以下、単に、「再生」とも記載する。)である場合、予測コマンド参照テーブルT2には、映像の「早送り」を指示する制御コマンドと、「巻き戻し」を指示する制御コマンド、「ポーズ」を指示する制御コマンドが関連付けて記録されている。なお、ここに示す各制御コマンドは一例である。
【0035】
他にも、所定のOSD画像の表示を指示する制御コマンドの場合は、予測コマンド参照テーブルT2には、利用者によるリモコン装置38の操作に対応した変化後のOSD画像に係る制御コマンドが関連付けて記録されている。
【0036】
また、本実施形態では、図7に示すように、ホストサーバー20は、配信データを、ファイル形式で生成し、記録部23に記録する。即ち、制御コマンドが「再生」に係るものである場合は、再生を行う配信データは、ファイルF1として記録部23に記録される。同様に、予測コマンド参照テーブルT2に関連付けられた、「早送り」、「巻き戻し」、「ポーズ」の各予測コマンドに対応した配信データもそれぞれ予測ファイルF2、F3、F4として記録部23に記録される。なお、クライアント装置30とホストサーバーとの間では、どのファイルにどの配信データ(予測配信データ)が格納されているかを事前に認識しているものとする。以上により、ステップS123の処理により、本発明に係る配信データ判断手段が実現される。
【0037】
なお、各データがMPEG方式に対応する場合は、各ファイルには複数フレームのデータが格納される。無論、これに限定するものではなく、ファイルに格納されるデータはフレーム単位以外のデータ分割で格納されるものであってもよい。
【0038】
そして、ステップS124において、制御部34は、遅延時間参照テーブルT3を用いて、今から生成する各ファイルの生成タイミングを判断する。以下、各ファイルの生成タイミングについて図8を用いて説明する。
【0039】
図8に示すように、クライアント装置30からホストサーバー20に対してファイルF1の生成を求める制御コマンドが送信された場合、本実施形態では、ファイルF1に関連した他のファイル(図7では、ファイルF2〜F4)の生成も予備的に行う。一方で、あるファイルがクライアント装置30にダウンロードされるまでは、ネットワークの距離等に起因する物理的な遅延時間が生じている(図7に示すTd)。そのため、少なくともファイルF1がダウンロードされるまでの時間(遅延時間Td)においては、ファイルF1に係るサービスは提供されていないため、他のファイル(F2〜F4)へのアクセスは行われないと見なすことができる。また、ファイル生成に要する時間は、上記遅延時間Tdに比べて非常に短い時間(例えば、遅延時間が数百msecであるのに対してファイル生成に要する時間は数μsec)であるため、遅延時間の経過後にホストサーバー20によりファイルの生成を行ったとしてもファイルのアクセスにさほど影響を与えない。
【0040】
そのため、本実施形態では、この遅延時間が発生している期間において、ホストサーバー20が予測ファイルの生成に係る処理を行なわず、遅延時間経過後において予測ファイル生成を行う構成としてある。上記構成とすることで、ホストサーバー20のリソースを他の処理に当てることが可能となる。例えば、図8において、ファイルF1の生成後、ファイルF2の生成までの間に、制御部35がファイル生成以外の他の処理を行なうことで、ホストサーバー20全体としての処理に要する時間を削減することができ、リソースを有効に活用することが可能となる。なお、ファイルを生成するという場合は、クライアント装置30に対してファイルをアクセス可能な状態に置くことをいい、ファイルに記録される配信データの元となるデータまでを生成することを除外する。以上ステップS124の処理により、本発明に係る生成タイミング決定手段を実現する。
【0041】
そして、ステップS125において、制御部25は、まず受信した制御コマンドに対応したファイルを生成する。即ち、制御コマンドが「再生」に係るものである場合は、「再生」に対応した配信データが記録されるファイルF1を元データから生成する。そして、設定された遅延時間が経過すると(ステップS126:YES)、ステップS127において、制御部25は、予測コマンド参照テーブルT2により関連付けられた予測ファイルを元データから生成する。即ち、受信した制御コマンドが「再生」に係るものである場合は、遅延時間が経過した後、予測コマンド参照テーブルT2に関連付けられた、「早送り」、「巻き戻し」、「ポーズ」の各予測ファイルF2、F3、F4を元データから生成する。以上により、ステップS125〜S127の処理により本発明に係る配信データ生成手段が実現される。
【0042】
図5において、クライアント装置30は、ホストサーバー20にネットワークNを経由してアクセスし、生成されたファイルデータの内、送信した制御コマンドに対応するファイルデータをネットワークN通じてメインメモリ35にダウンロードする(ステップS113:YES)。例えば、クライアント装置30は、「再生」に係るファイルF1のみをダウンロードし、他の予測ファイルデータはダウンロードしない。その後、クライアント装置30は、ダウンロードしたファイルデータを復調させて、制御コマンドに対応したファイルデータ(ここではファイルF1)に含まれる配信データを抽出する(ステップS114)。
【0043】
そして、クライアント装置30は、抽出した配信データを表示するために描画処理を施す(ステップS115)。描画処理では、配信データに対してバックエンド部36による画質調整が施された後、表示パネル37によりデジタル・アナログ変換されて、映像が表示されていく。以下、上記ステップS112〜S115までの処理は、クライアント装置30に「停止」に係る操作入力が入力する(ステップS119:YES)か、停止以外の新たな操作入力がある(ステップS110:YES)まで繰返される。
【0044】
一方、ホストサーバー20から映像配信が行われている状態で、利用者がリモコン装置38を操作して、配信映像の「早送り」を示す新たな操作入力を行うと(ステップS110:YES)、クライアント装置30は、この操作入力を解析し、この操作入力(制御コマンド)が前回の制御コマンドに関連付けられているか否かを判断する(ステップS111)。例えば、制御部34は、予測コマンド参照テーブルT2を参照して、新たに受信した操作入力に係る制御コマンドが前回生成した制御コマンドに関連付けられているかを判断する。
【0045】
上記のように、「早送り」に係る予測配信データは、「再生」に係る配信データに関連付けられているため(ステップS111:YES)、制御部34は、ホストサーバー20にアクセスし、記録部23に記録された予測ファイルの内、「早送り」に対応する予測ファイルF2をダウンロードする(ステップS116)。なお、ホストサーバー20は、ステップS120において、制御コマンドが入力されるまでは(ステップS120:YES)、「再生」に係るファイルF1、及び「再生」に対応付けられた「早送り」、「巻き戻し」、「ポーズ」の各予測コマンドに対応した予測ファイルF2、F3、F4を随時生成している(ステップS123〜S126)。そのため、「早送り」に対応する予測配信データは、ホストサーバー20に予測ファイルとして生成されている。
【0046】
クライアント装置30は、ダウンロードされたファイルから抽出した配信データに対して描画処理を施し、映像として表示する(ステップS117)。そのため、利用者が「早送り」に係る操作入力を行った際に、クライアント装置30はホストサーバー20に対して制御コマンドの生成及び送信を行うことなく、描画処理を行ない表示パネル37に「早送り」に係る映像を表示させる。以上により、本発明に係るサービス提供手段が実現される。
【0047】
以下、クライアント装置30の制御部34は、操作入力に係る制御コマンドが切替わったことをネットワークNを経由してホストサーバー20に送信する(ステップS118)。そのため、ホストサーバー20は制御コマンドが切り替わったことを制御コマンドの受信によって判断し(ステップS120、S121)、新たな制御コマンド(この場合は「早送り」)に係るファイル(「早送り」の制御コマンドに関連付けられた予測配信データ含んだもの)を元データから生成する(ステップS123〜S126)。
【0048】
以下、本発明に係る効果を従来の処理との比較により説明する。図9は、サービス提供システム10における処理を示すタイミングチャートである。ここで、図9Aは従来のサービス提供システムでの処理を示す。また、図9Bは、本実施形態に係るサービス提供システム10での処理を示す。
【0049】
従来のサービス提供システムの処理では、利用者が操作入力を行うことで、クライアント装置30から逐次制御コマンドが送信され、ホストサーバー20ではこの制御コマンドを解析し、制御コマンドを解析した後、配信データを送信を行っていた。
【0050】
一方、本実施形態に係るサービス提供システム10では、クライアント装置30から制御コマンドが送信された際、この制御コマンドに関連する処理を予測し、予測された処理に対しても配信データの生成を行う。そのため、図9Bに示すように、次回、クライアント装置30に映像等の切替えを指示する入力が行われた場合、この入力が予測されたものである場合は、すでに生成された配信データを流用して描画処理を行うことで、描画処理を行なうまでの間に、クライアント装置30からホストサーバー20に制御コマンドを送信する処理や、ホストサーバー20がこの制御コマンドを解析する処理、更には、配信データを送信する処理を省略することができる。そのため、操作入力が事前に予測されたものである場合は、利用者が操作入力を行ってから描画処理を行う(サービスを提供する)までの時間を従来のものと比べて短くすることが可能となる。
【0051】
4.その他の実施形態:
本発明は、様々な実施形態が存在する。
クライアント装置として表示装置を用いることは一例であり、ネットワークNに接続可能な装置であればこれ以外のものであってもよい。ここで、本発明は、クライアント装置に本実施形態に即した機能を持たせるだけで良いため、クライアント装置をテレビジョン受像機といった表示装置により実現すれば、既存の表示装置に対しても本発明の機能を適用することができる。
【0052】
また、配信データとして、映像データを用いることは一例であり、音声データであってもよい。
さらに、ホストサーバーは、1台の装置により構築される以外にも、複数のサーバーにより構築されるものであってもよい。ホストサーバーを複数のサーバーにより構築した場合、各ファイルデータ(予測ファイル)をそれぞれ個別のサーバーにより生成する構成とすれば、クライアント装置がアクセスを行うサーバーのアドレスをファイルデータ毎(予測ファイルを含める)に切替えることで、本発明を適用することができる。この場合、1台のサーバーにより生成される場合に比べてファイルデータの生成に要する時間を短縮することができ、もって、クライアント装置からの制御コマンドの送信が短い期間で連続する場合でも、本発明を実施することが可能となる。
【0053】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0054】
10…サービス提供システム、20…ホストサーバー、21…通信制御部、22…復調部、23…記録部、24…変調部、25…制御部、30…クライアント装置、31…通信制御部、32…復調部、33…変調部、34…制御部、35…メインメモリ、36…バックエンド部、37…表示パネル、38…リモコン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信データを生成するサーバーと、前記サーバーとネットワークを通じて接続されたクライアント装置とを備え、前記配信データを用いたサービスを提供するサービス提供システムにおいて、
前記サーバーは、
前記クライアント装置との間で通信する際に生じる時間を遅延時間として計測する遅延時間計測手段と、
前記クライアント装置から送信される所定命令を指示するための制御コマンドを受信した場合に、前記受信した制御コマンドに対応付けられた制御コマンドである予測コマンドを判断し、前記受信した制御コマンドに応じた配信データ、及び前記予測コマンドに応じた予測配信データを判断する配信データ判断手段と、
前記計測された遅延時間に応じて、前記予測配信データの生成時間を決定する生成タイミング決定手段と、
前記配信データを生成した後、前記決定された生成タイミングに応じて前記予測配信データの生成を行う配信データ生成手段と、を有し、
前記クライアント装置は、
前記制御コマンドの送信後に、前記予測コマンドに係る新たな操作入力が行われた場合は、前記予測配信データを用いてサービスを提供するサービス提供手段と、を有することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項2】
前記遅延時間計測手段が、前記クライアント装置との間で所定データの通信を行なうことで、前期遅延時間を計測することを特徴とする請求項1に記載のサービス提供システム。
【請求項3】
前記サーバーが、生成した前記配信データ及び前記予測配信データをそれぞれファイルデータとして管理し、
前記クライアント装置が、操作入力に応じて、前記各ファイルデータにアクセスすることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のサービス提供システム。
【請求項4】
前記クライアント装置が、表示装置であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のサービス提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253718(P2012−253718A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127156(P2011−127156)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】