説明

サーボ型容積流量計

【課題】安価で高精度に流量を測定することが可能なサーボ型容積流量計を提供する。
【解決手段】導圧管121は、計量室107の第1接続位置119の穴に接続されている。また、導圧管122は、計量室107の第2接続位置120の穴に接続されている。第1接続位置119は、第1回転子108及び第2回転子109の噛合い状態において、第2回転子109の凸部117に対向する位置となるように設定されている。また、第2接続位置120は、第1回転子108及び第2回転子109の噛合い状態において、第1回転子108の凹部118に対向する位置となるように設定されている。第2接続位置120は、第1接続位置119の反対側に設定されている。第1接続位置119及び第2接続位置120は、同一平面及び同一軸線上に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量室内に流入する被測定流体を一対の回転子の回転に応じて流出する容積流量計に関し、詳しくは、サーボモータで回転子に駆動力を与えるタイプのサーボ型容積流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
容積流量計は、流路内に設けられる計量室と、この計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の回転子とを備えて構成されている。容積流量計は、回転子の回転から流量を計測するように構成されている。具体的には、計量室と回転子とで形成される容積を基準容積とし、計量室内に流入する被測定流体を回転子の回転に応じて排出しつつ回転子の回転数から流量を求めることができるように構成されている。
【0003】
容積流量計は、直接、体積流量が測定できて精度も高いことから、産業用、取り引き用の流量計として広く使用されている。容積流量計は、基準容積に相当する体積の被測定流体を回転子の回転に比例して排出することができれば理想的な容積流量計であると言われている。
【0004】
容積流量計には、回転子の回転を可能とするために、回転子と計量室との間に微小な隙間が設けられている。回転子は、計量室に対して接触することなく回転するようになっている。回転子が回転するためには、機械的要素の負荷、例えば軸受摩擦や計数部の負荷に打ち勝つ回転トルクが必要であり、容積流量計は、被測定流体が回転子に作用する流体差圧によっての回転モーメントにより回転トルクを得るようなものになっている。
【0005】
被測定流体のエネルギーによって回転子を回転させる場合(自力式容積流量計)に関し、容積流量計は次のような問題点を有している。すなわち、回転子と計量室との間の微小な隙間から、極わずかではあるが、入口側から出口側に漏洩が発生してしまうという問題点を有している。
【0006】
図4は、被測定流体のエネルギーによって回転子を回転させる場合の容積流量計(自力式容積流量計)の器差特性の一例を示す図である。この図によれば、漏れの大きさは、流体差圧によるモーメントに対し摩擦トルクの割合が大きい小流量の範囲で大きく、器差がマイナスとなり、その他の流量域において生ずる差圧の大きさによっても異なることがうかがえる。さらには、3本の器差曲線で示すように、被測定流体の粘度の影響を受けて器差特性が変化することがうかがえる。
【0007】
容積流量計は、産業用、取り引き用の流量計として広く使用されるが、原理的に計量室内で回転子が回転するために計量室と回転子との間に隙間が存在することから、図4の器差曲線を鑑みると、微少流量の測定や高精度を追求する測定を行う場合には、隙間による漏洩が無視できなくなってしまうことになる。尚、上記隙間からの漏れ量は、容積流量計の流出入口間の圧力損失に比例することが知られている。
【0008】
被測定流体の粘度や密度などの物性値に影響されずに安定した高精度の流量の測定が可能となるように、流量計の流出入口間の圧力損失を正確に検出して、この圧力損失が常にゼロとなるよう回転子に外部からサーボモータで駆動力を与えてやり、このときの回転子の動作回転数から流量を測定するように構成される容積流量計としては、サーボ型容積流量計が知られている。
【0009】
従来のサーボ型容積流量計は、流量の大小にかかわらず、流量計の入口側と出口側の差圧ΔPがΔP=0となるように、回転子の回転をサーボモータで強制駆動するような制御が行われている。これは、容積流量計の流出入口間の圧力損失をゼロとするように流量を測定できれば、漏れ量もゼロになるという理論に基づいたものである。
【0010】
しかしながら、従来のサーボ型容積流量計で流量を実際に計測してみると、小流量域においては従来の自力式容積流量計における大きなマイナス器差が改善されるものの、器差は全般にプラスに転じ、しかも、流量、密度の上昇と共に増大する特性を示すような結果が得られている。
【0011】
図5は、サーボ型容積流量計の流体圧分布の状態を示す模式図である。図5を参照しながらプラス器差の原因について説明すると、容積流量計の流出入口間の圧力損失を無差圧に制御するために、サーボモータで回転子を強制的に回転させた場合、容積流量計の流出入口間の圧力損失ΔPがゼロとなっても、計量室内の回転子の回転方向前面側の圧力は上昇し、背面側は降下することになり、回転子の回転方向の前面と背面側に差圧ΔPiが発生してしまう。この差圧ΔPiにより、ケーシングと回転子間に存在する隙間から、流出側から流入側へ被測定流体の漏洩が発生し、これがプラス器差の原因となってしまう。すなわち、ケーシングと回転子の隙間から、この差圧ΔPiにより流出側から流入側に漏れる漏洩量が、被測定流体の密度ρ(詳細には動粘度νも)及び回転子の回転速度Vと相関する、圧力、流量の増加と共に増大することから、これがプラス器差の原因となってしまう。
【0012】
一般に、容積流量計に被測定流体を流したとき、回転子から充分離れた差圧検出位置においては、ΔPの圧力損失が生じたとすると、ΔP=ΔPi+ΔPeが成立する。ここでΔPiは、回転子を回転させるために費やされる圧力損失で、流量計内部の漏れに直接関与するため内部圧力損失と言われている。また、ΔPeは、被測定流体が流量計を流れるために費やされる圧力損失で、漏れには直接関与しないために外部圧力損失と言われている。
【0013】
一対の回転子を内蔵した容積流量計において、流量計内部の漏れに関与する回転子前後の差圧ΔPiに対し、単位時間当たりの流量計内部の漏洩量Δqは、μを流体の粘度、Qを流量とすると、
Δq=k1・(ΔPi/μ)+k2・Q …(1)
で表される。但し、k1、k2は、回転子とケーシングの形状により決まる定数である。従って、単位時間当たりの流量計内部の漏洩量は、回転子前後の差圧に比例する一方で被測定流体の動粘度に反比例する項と流量に比例する項とに分けられる。
【0014】
ここで、Iを校正される受験器の指示量、Qを標準器(基準器)の真実の値とすると、器差Eは、
E=((I−Q)/Q)×100 (%) …(2)
で表される。また、流量計内部の漏洩量Δqとの関係より
I−Q=−Δq …(3)
が成立する。したがって、(1)、(2)、(3)式より、器差Eは、
E=−(Δq/Q)=−(k1・(ΔPi/(μ・Q))+k2)…(4)
で表すことができる。
【0015】
器差Eをゼロにするためには、(4)式第1項の回転子前後の差圧ΔPiをゼロにすれば、流量計内部の漏洩量もゼロになり、流量は回転数に正確に比例することから、器差もだいたいゼロ付近に表れることになる。尚、(4)式の第2項は、メータファクタを変更することにより無視することができるものである。
【0016】
以上、サーボ型容積流量計の器差をゼロにするためには、圧力損失ΔPを検出する位置での差圧を、内部圧力損失ΔPi=0に制御すればよいことになる。つまり、制御目標差圧(SV:セットバリュー)と外部圧力損失ΔPeとが同じになるように外部から駆動力を与えれば、内部圧力損失ΔPiがゼロになるため、流量計内部のリークがなくなり、必然的にノンリークつまり器差ゼロの流量計を具現化することができる。
【0017】
下記特許文献1は、本願出願人が先に提案したサーボ型容積流量計の開示技術である。この下記特許文献1には、サーボ型容積流量計の回転子の前後の圧力損失ΔPi、すなわち回転子の回転方向前面側と背面側間の内部圧力損失ΔPiをゼロに制御するために、流入側の圧力を、ΔP=Pi+ΔPe=ΔPe=k・(ρ/2g)・V2=C・ρ・Q2分だけ高くするようにサーボモータを制御して、ケーシングと回転子間の隙間からの被測定流体の漏洩をなくすという内容の提案が開示されている。
【0018】
下記特許文献1に開示されたサーボ型容積流量計は、流出側から流入側への漏洩による器差特性の悪化を防ぐことが可能な容積流量計として提案されている。尚、上記のk及びCは、流量計の内部形状・寸法,管摩擦係数等で決まる定数で、例えばλ(L/D)を用いて表されるようになっている(λ:管摩擦係数、L:流量計内部の管軸長さ、D:流量計内部の内径)。尚、上記のVを回転子の回転速度としているが、管内の流速、又は流量Qを用いても良いものとする。以下、特許文献1に開示されたサーボ型容積流量計について説明する。
【0019】
図6は、下記特許文献1に開示された従来のサーボ型容積流量計の一実施例を示す概念図であり、図中の引用符号1はサーボ型容積流量計、2はケーシング、3は計量室、4は第1回転子軸、5は第2回転子軸、6は第1回転子、7は第2回転子、8は流入口、9は流出口、10は流入側圧力検出口、11は流出側圧力検出口、12は差圧計、13はディストリビュータA、14は調節計、16はサーボモータ駆動回路、17はサーボモータ(S.M)、18はタコジェネレータ(T.G)、19は流量発信器(P.G)、20はF/V変換器、21はリニアライザ、22は圧力計、23はディストリビュータB、24は乗算器を示している。
【0020】
サーボ型容積流量計1は、流入口8と流出口9に連通するとともに、流路(ケーシング2)に形成された計量室3と、この計量室3内に固着された第1回転子軸4及び第2回転子軸5に各々軸支された第1回転子6及び第2回転子7とを備えて構成されている(容積流量計としての構成)。第1回転子6及び第2回転子7は、本体外部、すなわち計量室3外部にそれぞれ設けられたパイロット歯車(図示せず)の噛合により、互いに反対方向に同期回転するように配置されている。第1回転子6側(本実施例では第1回転子6側となっているが、第2回転子7側でもよい)のパイロット歯車には、サーボモータ17の駆動軸が接合されている。
【0021】
サーボ型容積流量計1の流入口8側と流出口9側には、それぞれ流入側圧力検出口10、流出側圧力検出口11が設けられている。この流入側圧力検出口10及び流出側圧力検出口11には、差圧計12に接続される導管が取り付けられている。両圧力検出口10、11から導管を介して流入口8及び流出口9の圧力が差圧計12に導かれると、サーボ型容積流量計1の流出入口間(ここでは計量室3の流出入口間)の圧力損失が測定されるようになっている。サーボモータ17の駆動軸には、タコジェネレータ18が直結されている。サーボモータ17、タコジェネレータ18、及び第1回転子6側のパイロット歯車は、互いに縦接続されている。
【0022】
タコジェネレータ18は、サーボモータ17の回転に比例した電圧値を発生するように構成されている。このタコジェネレータ18からの出力は、サーボモータ駆動回路16を介してサーボモータ17にフィードバックされるようになっている。流量発信器19は、第1回転子6(第2回転子7でもよい)の回転数を計測する機構を有している。流量発信器19は、流量に比例するパルスを発生するように構成されている。
【0023】
F/V変換器20は、流量発信器19からの流量を表すパルス信号を、この周波数に比例するアナログ電圧に変換するもので、第1回転子6の回転速度Vに相当する信号を出力するように構成されている。リニアライザ21は、F/V変換器20の出力を平方し、回転子の回転速度Vの2乗V2に相当する信号を出力するように構成されている。
【0024】
圧力計22は、流入側圧力検出口10(或いは、流出側圧力検出口11)の圧力を、流体圧力Pに相当する電圧信号に変換するように構成されている。ディストリビュータB23は、圧力計22からの流体圧力Pに相当する電圧信号を、被測定流体が気体の場合、流体圧力Pに比例する流体密度ρに相当する電圧信号に変換するように構成されている。尚、液体の場合には、流体圧力Pにより流体密度ρが変わらなく、液体の種類により決まることから圧力計22が不要であり、直接、外部から乗算器24に被測定液体に応じた値を設定入力するようにしてもよいものとする。
【0025】
差圧計12は、流入側圧力検出口10と流出側圧力検出口11との差圧ΔPを検出し、この検出により生成した差圧信号をディストリビュータA13へ出力するように構成されている。ディストリビュータA13は、入力された差圧信号を差圧に比例した電圧値Vpに変換した上で、この電圧値Vpを調節計14の一方の端子へ出力するように構成されている。乗算器24は、リニアライザ21からの回転子の回転速度Vの2乗に相当する信号(V2)と、ディストリビュータB23からの密度ρに相当する信号(ρ)とを乗算し、k・(ρ/2g)・V2に相当する信号Vsを、調節計14の目標設定値(制御目標差圧となるSV値(セットバリュー)であり、基準値ともいえる)として出力するように構成されている。
【0026】
尚、実際には定数k0=k(1/2g)を用意しておけばよく、また、例えば定数k0は、k0=k(1/2g)=λ(L/D)・(1/2g)となる。
【0027】
調節計14には、流量計の入口側と出口側の差圧ΔPに相当する信号Vp(PV値(プロセスバリュー)に対応する)が入力され、また、乗算器24からの信号Vsも入力されるようになっている。信号Vpは信号Vsと比較され、Vp−Vs=(ΔP−k・(ρ/2g)・V2)に相当する信号V1が、サーボモータ駆動回路16の一方の入力端子に出力されるようになっている。サーボモータ駆動回路16の他方の入力端子には、上記の如く、タコジェネレータ18からの出力信号V2がフィードバックのために接続されている。
【0028】
サーボ型容積流量計1には、調節計14から入力される、流出入口間の圧力損失ΔPに相当する差圧信号Vp(差圧計12で検出)と目標設定値Vsとの比較値V1、及び、サーボモータ17の回転数に相当するタコジェネレータ18の出力V2が等しくなるように、サーボモータ17の回転を制御するサーボ機構が形成されている。
【0029】
上記構成において、被測定流体が図中の矢印方向に流れた状態では、従来のように流量計流入側と流出側の差圧ΔPをゼロに制御するのではなく、回転子の回転速度(V)に応じて流量計内部で発生する外部圧力損失ΔPe=k・(ρ/2g)・V2分だけ、流入側の圧力が高くなるようにサーボモータを制御することにより、回転子の回転方向前面側と背面側の差圧ΔPiをゼロとするようになっている。これにより、流入側と流出側との差圧ΔPをゼロに制御するサーボ型容積流量計において生ずる回転子の前後面間の前記差圧ΔPiとは逆方向の差圧を消去することができ、これに伴うケーシングと回転子間の隙間からの逆流による漏洩をより少なくするようになっている。
【0030】
図7は、図6のサーボ型容積流量計1による器差特性の一例を示す図である。図中のP1、P2、P3はそれぞれ被測定流体の流体圧力を示している。下記特許文献1に開示された従来のサーボ型容積流量計1の器差特性は、被測定流体の圧力の大きさに拘わらず小流量域から大流量域まで、器差がほとんどゼロに近い直線的な優れた特性を示している(回転子の回転速度Vは、回転子の先端と回転子の根本とで速度が異なるため、平均速度で計算した値で制御するか、ケーシングと回転子の先端との隙間を考慮し、回転子の先端の速度で計算した値に近い値の差圧に制御すると、より精度の向上を図ることができる)。
【0031】
以上は、ハード構成で制御系を構成した場合の説明であるが、マイクロコンピュータで制御系を組む場合には、上記と同様な動作処理をソフトウェア化して組めばよい。また、被測定流体の名称と密度との関係をテーブル化しておけば、被測定流体の名称を選択するだけで、被測定流体の種類に応じた密度設定をすることができる。
【0032】
次に、図8を参照しながら下記特許文献2に開示されたサーボ型容積流量計について説明する。図8は、下記特許文献2に開示されたサーボ型容積流量計の概念図である。
【0033】
下記特許文献2に開示されたサーボ型容積流量計は、上記のサーボ型容積流量計1のような、外部圧力損失ΔPe分だけ流入側の圧力を高くして回転子の回転方向前面側と背面側との差圧ΔPiをゼロとする制御とは別の方法により制御されている。
【0034】
図8において、引用符号31はサーボ型容積流量計、32は容積流量計、33は計量室、34は第1回転子軸、35は第2回転子軸、36は第1回転子、37は第2回転子、38は上流側導圧管、39は下流側導圧管、40は差圧計、41はサーボ増幅器、42はプリアンプ、43はメインアンプ、44は駆動部、45は変速歯車(R・G)、46はサーボモータ(S・M)、47はタコジェネレータ(T・G)を示している。また、48は上流側連通管、49は下流側連通管を示している。尚、煩雑のためパイロット歯車の図示は省略するものとする。
【0035】
サーボ型容積流量計31は、容積流量計32と、差圧計40と、サーボ増幅器41及び駆動部44からなるサーボ機構とを備えて構成されている。容積流量計32は、本体に形成され、流入口32a及び流出口32bに連通する計量室33と、この計量室33内の第1回転子軸34及び第2回転子軸35に各々軸支される第1回転子36及び第2回転子37とを備えて構成されている。第1回転子36及び第2回転子37には、本体外部、すなわち計量室33外部のパイロット歯車の噛合により、互いに反対方向に同期回転するように配置されている。駆動部44は、変速歯車45と、サーボモータ46及びタコジェネレータ47とを備えて構成されている。これらは縦接続されている。
【0036】
上流側連通管48は、第1回転子36と第2回転子37の各上流側でラジアル方向に開口する開口A、Cに接続される連通管であって、この中間部48aには上流側導圧管38が接続されている。上流側導圧管38は、差圧計40の一端に接続されている。一方、下流側連通管49は、第1回転子36と第2回転子37の各下流側でラジアル方向に開口する開口B、Dに接続される連通管であって、この中間部49aには下流側導圧管39が接続されている。下流側導圧管39は、差圧計40の他端に接続されている。
【0037】
図中において、開口C及び開口Dは、第2回転子37の凸部の前後に形成されている。また、開口A及び開口Bも第1回転子36が回転した時に凸部の前後に開口するように形成されている。さらに、第1回転子36の凸部が開口Aの位置にくると、第2回転子37の凸部が開口Dの位置にくるように形成され、第1回転子36の凸部が開口Bの位置にくると、第2回転子37の凸部が開口Cの位置にくるように形成されている。サーボ型容積流量計31は、流量計流入側と流出側の差圧を測定するのではなく、回転子の前後面間の差圧ΔPを測定する(ΔP≒ΔPi)ような構造になっている。
【0038】
差圧計40での差圧信号は、導線40aを介してサーボ増幅器41のプリアンプ42に入力されるようになっている。プリアンプ42は、メインアンプ43の入力端43aに接続されている。メインアンプ43は、導線41aを介してサーボモータ46に接続されている。サーボモータ46に連動するタコジェネレータ47は、メインアンプ43の入力端43bに接続されている。この接続により速度帰還がなされ、応答性が高められている。
【0039】
上記構成において、サーボ型容積流量計31は、回転子の前後面間の差圧ΔP(ΔP≒ΔPi)を測定し、この差圧ΔPをゼロとするようにサーボモータ46を駆動する制御がなされている。言い換えれば、目標設定値(制御目標差圧となるSV値)をゼロとするような制御がなされている。このような制御によってもケーシングと回転子間の隙間からの漏洩をより少なくすることができるようになっている。サーボ型容積流量計31は、上記のサーボ型容積流量計1よりも制御が簡単であり、高精度に流量を測定することができるようになっている。
【特許文献1】特許第3331212号公報
【特許文献2】特許第2878555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
上記従来技術のサーボ型容積流量計31にあっては、高精度に流量を測定することができるものの、連通管や導圧管等によって構造が複雑になり、結果、システム自体のコストが嵩んでしまうという問題点を有している。
【0041】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、安価で高精度に流量を測定することが可能なサーボ型容積流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のサーボ型容積流量計は、流路と、該流路に連続する計量室と、該計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1及び第2回転子とを備え、該第1及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって、前記第1又は第2回転子の何れかに連結するサーボモータと、前記計量室に接続され該計量室の差圧を検出する差圧検出機構と、該差圧検出機構からの差圧信号に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において、前記差圧検出機構の前記計量室に対する2つの接続位置を、前記第1及び第2回転子の噛合い状態で、1つ目が一方の回転子の凸部に対向する第1接続位置、2つ目が該第1接続位置の反対側となり他方の回転子の凹部に対向する第2接続位置とすることを特徴としている。
【0043】
請求項2記載の本発明のサーボ型容積流量計は、請求項1に記載のサーボ型容積流量計において、前記第1接続位置及び第2接続位置を同一平面及び同一軸線上に配置することを特徴としている。
【0044】
請求項3記載の本発明のサーボ型容積流量計は、請求項1又は請求項2に記載のサーボ型容積流量計において、前記第1及び第2回転子の各凸部先端形状を先細りとすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、一方の回転子の凸部に対向する第1接続位置と他方の回転子の凹部に対向する第2接続位置との差圧を測定することにより、従来同様、高精度に流量の測定をすることができる。また、上記差圧測定位置により、従来よりも安価にサーボ型容積流量計を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のサーボ型容積流量計の一実施の形態を示す概念図であり、(a)は容積流量計の部分の拡大図、(b)は全体構成図である。
【0047】
図1において、引用符号101は本発明のサーボ型容積流量計を示している。このサーボ型容積流量計101は、容積流量計102と、差圧計103(差圧検出機構)と、サーボ機構104と、流量発信器(P.G)105とを備えて構成されている。以下、各構成について説明する。
【0048】
容積流量計102は、ケーシング106と、計量室107と、第1回転子108及び第2回転子109とを備えて構成されている。ケーシング106は、略筒状に形成されており、この中間に計量室107が設けられている。ケーシング106は、図1の場合、左から右へ(矢印方向へ)被測定流体が流れるように形成されている(ケーシング106の左端が流入口110、右端が流出口111として設定されている)。ケーシング106は、この内部が流路112となるように形成されている。この流路112は、被測定流体がスムーズに流れるように形成されている。
【0049】
計量室107は、ケーシング106の中間をケーシング軸直交方向に膨らませるような略長円形状に形成されている。計量室107は、この内部が流路112と連通するように形成されている。ここで、上記ケーシング軸の上方を第1計量室113、下方を第2計量室114と定義すると、第1計量室113には第1回転子軸115が形成されている。また、第2計量室114には、第2回転子軸116が形成されている。第1回転子軸115及び第2回転子軸116は、所定の間隔をあけて並ぶように配置形成されている。このような第1回転子軸115には、第1回転子108が回転自在に軸支されている。また、第2回転子軸116には、第2回転子109が回転自在に軸支されている。
【0050】
第1回転子108及び第2回転子109は、上記の如く、この中心が、対応する第1回転子軸115及び第2回転子軸116によって軸支されている。第1回転子108及び第2回転子109は、本形態において、歯数が4つのヘリカル歯車(一例であるものとする)となるように形成されている。第1回転子108及び第2回転子109は、それぞれ4つの凸部117と凹部118とを有している。凸部117はインボリュート歯形に形成されている。このような第1回転子108及び第2回転子109は、1つの凸部117及び凹部118が噛み合った状態で回転するようになっている。
【0051】
第1回転子108及び第2回転子109は、計量室107の外部にパイロット歯車(図示省略)を有している。第1回転子108及び第2回転子109は、パイロット歯車の噛合によって互いに反対方向に同期回転するように配置されている。
【0052】
第1回転子108及び第2回転子109は、この凸部117の先端形状が先細りとなるように形成されている。第1回転子108及び第2回転子109は、凸部117の先端と計量室107の壁内面との対向する範囲が極力小さくなるように形成されている(後述する第1接続位置119、第2接続位置120の穴を塞ぐ時間を短くするため)。
【0053】
尚、図1では凸部117の先端と計量室107の壁内面との間の隙間が広く図示されている。しかしながら、実際には従来同様の隙間となるように設定されているものとする。図1では便宜上広く隙間が図示されているものとする。
【0054】
差圧計103は、導圧管121、122を介して計量室107内の差圧を測定し、この測定した差圧を電圧信号に変換して出力することができるように構成されている。差圧計103には、導圧管121、122が接続されている。差圧計103は、サーボ機構104を構成するディストリビュータ123にも接続されている。
【0055】
導圧管121は、計量室107の第1接続位置119の穴に接続されている。また、導圧管122は、計量室107の第2接続位置120の穴に接続されている。第1接続位置119は、第1回転子108及び第2回転子109の噛合い状態(図1の状態を参照)において、第2回転子109の凸部117に対向する位置となるように設定されている。また、第2接続位置120は、第1回転子108及び第2回転子109の噛合い状態(図1の状態を参照)において、第1回転子108の凹部118に対向する位置となるように設定されている。第2接続位置120は、第1接続位置119の反対側に設定されている。第1接続位置119及び第2接続位置120は、同一平面及び同一軸線上に設定されている。
【0056】
第1接続位置119及び第2接続位置120は、従来の制御、すなわち差圧ΔP≒内部圧力損失ΔPi、目標設定値(制御目標差圧となるSV値)=0と同じ制御をすることができるものとして本願発明者が見出した位置である。第1接続位置119及び第2接続位置120は、一方の回転子の凸部と他方の回転子の凹部とに対向するように設定されている(従来は一方、他方の回転子の凸部、凸部や、凹部、凹部に対向するように設定されている。従って、本発明はこれらと明確な位置の違いを有している)。
【0057】
サーボ機構104は、ディストリビュータ123と、調節計124と、目標設定器125と、サーボモータ駆動回路126と、サーボモータ(S.M)127と、タコジェネレータ(T.G)128とを備えて構成されている。これらの構成は、従来同様に機能するようになっている。以下、サーボ機構104の配置や動作について説明する。
【0058】
サーボモータ127の駆動軸には、上記図示しないパイロット歯車と、タコジェネレータ128とが直結されている。サーボモータ127、タコジェネレータ128及び第1回転子108側のパイロット歯車は互いに縦接続されている。
【0059】
タコジェネレータ128は、サーボモータ127の回転に比例した電圧値を発生してこれを出力するようになっている。この出力は、サーボモータ駆動回路126を介してサーボモータ127にフィードバックされるようになっている。尚、流量発信器105は、第1回転子108の回転数を計測する計測機構を有しており、流量に比例したパルスを発生するように構成されている。
【0060】
差圧計103からの差圧信号は、ディストリビュータ123を介して差圧に比例した電圧値Vpに変換されたのち、調節計124に入力されるようになっている。そして、目標設定器125からの目標設定値と比較され、この出力V1がサーボモータ駆動回路126の一方の入力端子に入力されるようになっている。サーボモータ駆動回路126の他方の入力端子には、タコジェネレータ128からの出力V2がフィードバックされるようになっている。
【0061】
サーボ機構104では、調節計124からの容積式流量計102の圧力損失ΔPに相当する、差圧計103からの差圧信号Vpと目標設定値との比較値V1、及び、サーボモータ127の回転数に相当するタコジェネレータ128の出力V2が等しくなるように、サーボモータ127の回転が制御されるようになっている。
【0062】
上記構成において、被測定流体が矢印方向に流れた状態では、サーボモータ駆動回路126とサーボモータ127からなるサーボ制御系を駆動することにより、第1接続位置119及び第2接続位置120の差圧ΔPが無差圧に制御されるようになっている。この時、調節計124の目標値が差圧ゼロに設定され、回転子はサーボモータ127によって強制的に回転する。ΔPがゼロになるように制御がなされている。
【0063】
以上、図1を参照しながら説明してきたように、本発明のサーボ型容積流量計101は、高精度に流量を測定することができる構造を有している。また、この構造によって安価にサーボ型容積流量計を提供することができるようにもなっている。
【0064】
尚、上述の説明では、第1回転子108及び第2回転子109が、歯数4のヘリカル歯車であったが、これに限らず図2のような非円形(オーバル)歯車や、図3の一般平歯車を本発明に適用してもよいものとする。
【0065】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のサーボ型容積流量計の一実施の形態を示す概念図であり、(a)は容積流量計の部分の拡大図、(b)は全体構成図である。
【図2】非円形(オーバル)歯車の例を示す概念図である。
【図3】一般平歯車の例を示す概念図である。
【図4】従来例の容積流量計(自力式容積流量計)の器差特性の一例を示す図である。
【図5】従来例のサーボ型容積流量計の流体圧分布の状態を示す模式図である。
【図6】従来例のサーボ型容積流量計の概念図である。
【図7】図6のサーボ型容積流量計による器差特性の一例を示す図である。
【図8】従来例のサーボ型容積流量計の概念図である。
【符号の説明】
【0067】
101 サーボ型容積流量計
102 容積流量計
103 差圧計(差圧検出機構)
104 サーボ機構
105 流量発信器
106 ケーシング
107 計量室
108 第1回転子
109 第2回転子
110 流入口
111 流出口
112 流路
113 第1計量室
114 第2計量室
115 第1回転子軸
116 第2回転子軸
117 凸部
118 凹部
119 第1接続位置
120 第2接続位置
121、122 導圧管
123 ディストリビュータ
124 調節計
125 目標設定器
126 サーボモータ駆動回路
127 サーボモータ
128 タコジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路と、該流路に連続する計量室と、該計量室内で回転毎に一定体積の被測定流体を流出する一対の第1及び第2回転子とを備え、該第1及び第2回転子の回転から流量を計測する容積流量計であって、前記第1又は第2回転子の何れかに連結するサーボモータと、前記計量室に接続され該計量室の差圧を検出する差圧検出機構と、該差圧検出機構からの差圧信号に基づく制御目標差圧をゼロとするよう前記サーボモータを制御するサーボ機構とを備えるサーボ型容積流量計において、
前記差圧検出機構の前記計量室に対する2つの接続位置を、前記第1及び第2回転子の噛合い状態で、1つ目が一方の回転子の凸部に対向する第1接続位置、2つ目が該第1接続位置の反対側となり他方の回転子の凹部に対向する第2接続位置とする
ことを特徴とするサーボ型容積流量計。
【請求項2】
請求項1に記載のサーボ型容積流量計において、
前記第1接続位置及び第2接続位置を同一平面及び同一軸線上に配置する
ことを特徴とするサーボ型容積流量計。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のサーボ型容積流量計において、
前記第1及び第2回転子の各凸部先端形状を先細りとする
ことを特徴とするサーボ型容積流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−309726(P2007−309726A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137469(P2006−137469)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】