説明

サーマルプリンタ及びその制御方法、プログラム

【課題】1面分のインクリボンを用いて複数の画像を印刷する場合でも画像間の印刷濃度のバラツキを抑制可能なサーマルプリンタ及びその制御方法、プログラムを提供する。
【解決手段】複数の画像データを印刷媒体に印刷する際に、当該画像データ間に余白領域を設定し、当該余白領域の搬送中に、サーマルヘッドのヘッド温度、及びサーマルプリンタの使用雰囲気の温度である環境温度を取得する。当該ヘッド温度及び環境温度においてサーマルヘッドで発生する熱量の情報と、余白領域の後に印刷する画像データの印刷サイズの情報とに応じて、当該画像データを印刷するために発熱抵抗体に与える電圧を補正する熱履歴補正パラメータを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタ及びその制御方法、プログラムに関し、特にサーマルヘッドの熱履歴補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置で撮影した画像データ、あるいはPCにおいて作成した画像データ等を、様々な印刷方式で印刷するプリンタが存在する。印刷方式として熱転写方式を用いるサーマルプリンタでは、サーマルヘッドの主走査方向に配列された複数個の発熱抵抗体を画像データに応じて選択的に発熱駆動することにより、インクリボンの染料を溶解し、表面に染料の受容層を有する用紙に転写することにより印画を行う。発熱抵抗体の発熱駆動は、1ラインごとに制御され、副走査方向に印刷媒体を搬送しながら、インクリボン1面分の大きさまでの印刷媒体に画像の印刷を行うことができる。
【0003】
サーマルプリンタのうち、昇華型のサーマルプリンタはインクリボンの染料を個体から気体に昇華させることにより印刷媒体に染料を付着させている。昇華型のサーマルプリンタでは、サーマルヘッドの発熱抵抗体に与える電圧を制御することにより1画素ごとの濃度制御が可能なため、階調表現に優れた印刷結果が得られる。
【0004】
このようなサーマルプリンタで印刷を行う場合、通常は1つの画像をインクリボン1面で印刷するように、プリントサイズに応じた面の大きさを有するインクリボンを使用することが一般的である。しかし、特許文献1に記載されるように、1枚の印刷媒体に複数の画像を割り付けて印刷する機能を有するサーマルプリンタも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−314748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーマルプリンタは印刷の際にサーマルヘッドの発熱抵抗体を発熱駆動させるため、サーマルヘッドには発熱抵抗体で発生した熱が印刷時間に応じて蓄積することになる。このような蓄熱によりサーマルヘッドの温度が上昇すると、同じ濃度の画像であっても印刷濃度にバラツキが生じる。また、このような印刷濃度のバラツキは、サーマルヘッドの温度だけでなく、サーマルプリンタの環境温度の変化によっても発生する。
【0007】
サーマルヘッドの温度や環境温度に対する印刷濃度の依存度を抑制するため、通常は印刷開始前に熱履歴補正パラメータを設定し、熱履歴補正パラメータに基づいて発熱抵抗体の駆動電圧を制御している。
【0008】
しかしながら、例えば1面分のインクリボンを用いて同一の画像を2枚配置して印刷する場合、上述のように印刷開始時に熱履歴補正パラメータを設定して印刷を行ったとしても、1枚目の画像と2枚目の画像の印刷濃度にバラツキが生じることがある。この問題は、同一画像を2枚印刷する場合に限られず、類似するシーンを撮影した画像を2枚印刷する場合でも起こりうる。これは、1枚目の印刷で発熱抵抗体が発した熱によってヘッド温度や環境温度が印刷開始時よりも上昇した状態で2枚目の印刷が始まるため、1枚目の印刷開始時に設定した熱履歴補正パラメータでは2枚目の印刷に適切な補正ができないからである。
【0009】
この問題を解消するには、2枚目の印刷開始時に新たな熱履歴補正パラメータを設定するべきであるが、従来、1面分のインクリボンを用いて複数の画像を印刷する場合における印刷濃度のバラツキの発生については想定されていなかった。そのため、1面分のインクリボンの印刷範囲内で熱履歴補正パラメータを再設定もしくは調整するための構成はこれまで提案されていなかった。
【0010】
例えば特許文献1のように印刷する複数の画像を連結して1枚の画像のように印刷する構成では、画像の切り替わり時点で印刷媒体の搬送を停止し、次の画像の印刷に対する熱履歴補正パラメータ設定する方法が考えられる。しかしながら、サーマルヘッドは発熱駆動処理によって熱を有しているため、印刷中に印刷媒体の搬送を停止した場合、当該停止位置において過度の熱が印刷媒体に与えられ、変色するなど所望の印刷結果を得られない可能性がある。このため、他の方法が必要である。
【0011】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、1面分のインクリボンを用いて複数の画像を印刷する場合でも画像間の印刷濃度のバラツキを抑制可能なサーマルプリンタ及びその制御方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するために、本発明のサーマルプリンタは、以下の構成を備える。
複数の画像データを、1面分のインクリボンで印刷可能な大きさの印刷媒体に印刷可能なサーマルプリンタであって、印刷媒体を搬送する搬送手段と、複数の発熱抵抗体を備え、複数の発熱抵抗体を駆動させることによりインクリボンのインクを印刷媒体に転写させて印刷を行うサーマルヘッドと、複数の画像データを1面分のインクリボンを用いて印刷する場合に、複数の画像データ間に余白領域を設定し、設定した余白領域および複数の画像データに基づいて、発熱抵抗体を駆動するための印刷データを生成する生成手段と、サーマルヘッドのヘッド温度、及びサーマルプリンタの環境温度を取得する温度取得手段と、サーマルヘッドによる印刷開始前に、温度取得手段によりヘッド温度及び環境温度を取得し、取得したヘッド温度及び環境温度に応じて熱履歴補正パラメータを決定する決定手段と、生成手段により生成された印刷データを熱履歴補正パラメータに応じて補正し、補正した印刷データに基づいて発熱抵抗体を駆動することにより印刷を実行する印刷制御手段と、を有し、搬送手段が印刷媒体のうちの余白領域を搬送中に、温度取得手段はヘッド温度及び環境温度を取得し、決定手段は余白領域を搬送中に取得したヘッド温度及び環境温度に応じて、熱履歴補正パラメータを再決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような構成により本発明によれば、1面分のインクリボンを用いて複数の画像を印刷する場合でも画像間の印刷濃度のバラツキを抑制可能なサーマルプリンタ及びその制御方法、プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るサーマルプリンタ100の機能構成を示したブロック図
【図2】本発明の実施形態に係るプリンタエンジン120の構成を示した図
【図3】一般的なサーマルプリンタに使用される、インクリボンの構成を説明するための図
【図4】インクリボンを用いて、単一あるいは複数の画像データを印刷する際のインクリボンと印刷物との関係を示した図
【図5】本発明の実施形態に係る操作部106の構成を示した図
【図6】本発明の実施形態1に係る印刷処理を示したフローチャート
【図7】本発明の実施形態に係る、サーマルプリンタ100に入力される、1面分のインクリボンを用いて印刷する複数の画像データが連結された画像データ
【図8】本発明の実施形態2に係る印刷処理のうち、1番目の印刷対象の画像データに係る印刷処理を示したフローチャート
【図9】本発明の実施形態2に係る印刷処理のうち、2番目以降の印刷対象の画像データに係る印刷処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、1面分のインクリボンを用いて複数の画像データを印刷可能な昇華型のサーマルプリンタ100に、本発明を適用した例を説明する。
【0016】
<サーマルプリンタ100の機能構成>
図1は、本発明の実施形態に係るサーマルプリンタ100の機能構成を示すブロック図である。
【0017】
CPU101は、サーマルプリンタ100が備える各ブロックの動作を制御する。具体的にはCPU101は、後述する印刷処理の動作プログラムをフラッシュROM102より読み出し、RAM103に展開して実行することにより、サーマルプリンタ100が備える各ブロックの動作を制御する。
【0018】
フラッシュROM102は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、印刷処理の動作プログラムに加え、各ブロックの動作に必要なパラメータを記憶する。また、本実施形態ではフラッシュROM102は、サーマルヘッドのヘッド温度及びサーマルプリンタ100の環境温度と、当該温度条件において印刷を行う場合にサーマルヘッドに与える電力との関係を示すルックアップテーブル(LUT)を記憶する。なお、フラッシュROM102には、印刷対象である画像データに対して適用する、色調補正処理やリサイズ処理等の種々の画像処理の情報が記憶されているものとする。
【0019】
RAM103は、揮発性メモリであり、印刷処理のプログラムの展開領域としてだけでなく、各ブロックの動作において出力される中間データ等を記憶する領域として用いられる。
【0020】
内部記憶部104は、例えばHDDやフラッシュメモリ等の記録装置であり、後述する入出力I/F105、あるいは記録媒体400より受信した画像データやファイル等の記録に用いられる。
【0021】
入出力I/F105は、例えば赤外線通信、無線LAN、あるいはUSB等の所定の接続方式で印刷対象の印刷データの送受信を行うブロックである。入出力I/F105は、印刷データを受信した場合、当該データをRAM103あるいは内部記憶部104に転送し記録させる。
【0022】
表示部110は、例えば小型LCD等の、サーマルプリンタ100が備える表示装置であり、印刷対象の確認や設定等をユーザに可能ならしめるGUI表示を行う。表示部110に表示する内容は、CPU101の指示を受け、表示制御部109が制御する。
【0023】
記録媒体400は、例えばメモリカードやHDD等のサーマルプリンタ100に着脱可能に接続される記録装置である。記録媒体I/F111は、サーマルプリンタ100に接続された記録媒体400からの印刷データの読み出し、あるいはデータの書き込みを行う。記録媒体I/F111に読み出された印刷データは、入出力I/F105と同様に、RAMあるいは内部記憶部104に転送されて記録される。
【0024】
温度センサ112は、サーマルプリンタ100の周囲の環境温度を計測するためのセンサであり、取得した環境温度の情報をCPU101に出力する(温度取得)。
【0025】
プリンタエンジン120は、印刷データに基づいて印刷を行う、サーマルヘッドを備える印刷部である。プリンタエンジン120は、カートリッジ検出部107を備え、サーマルプリンタ100に装着されているインクリボンを内包したカートリッジ108を検出し、インクリボンの種別を認識する。
【0026】
(プリンタエンジン120の内部構成及び動作)
ここで、プリンタエンジン120の内部構成及び動作について、図2を用いて以下に説明する。
【0027】
印刷対象を印刷する用紙(印刷媒体)214として、ロール状に巻回されたロール用紙201が用いられる。1回の印刷に用いる用紙214は、CPU101からの制御信号を受けて回転する給紙ローラ202から引き出され、同じくCPU101により制御されるグリップローラ204まで用紙214の先端部分が送られる。給紙ローラ202及びグリップローラ204は、例えばステッピングモータであってよい。
【0028】
用紙214を介してグリップローラ204と対向する側にはピンチローラ205が設けられており、用紙214はさらにプラテンローラ209、排紙ローラ213に搬送される。
【0029】
プラテンローラ209と対向して配置されたサーマルヘッド208は、第1ロールボビン206から供給されたインクリボン210を介して用紙214に接触され、印刷データに基づいた電圧制御により、インクリボンに塗布された染料を昇華させて印刷を行う。
【0030】
またサーマルヘッド208は、複数の発熱抵抗体が配列されたライン型のサーマルヘッドである。発熱抵抗体は、サーマルヘッド208の長手方向(主走査方向)に配列されており、少なくとも用紙214の幅に相当する長さを有している。用紙214は、このサーマルヘッド208の長手方向に直交する副走査方向に搬送されるとともに、印刷データに基づいて発熱駆動された発熱抵抗体により画像が転写(印刷)される。また、サーマルヘッド208には、サーマルヘッド208のヘッド温度を取得するための不図示のヘッド温度センサが設けられている。
【0031】
搬送された用紙に印刷データを転写する場合、プラテンローラ209の圧着動作により、用紙214がインクリボン210とともにサーマルヘッド208に押し付けられる。このとき、インクリボン210はサーマルヘッド208の発熱抵抗体と用紙214に接する状態となる。この状態で、CPU101によってサーマルヘッド208の発熱抵抗体は印刷データに応じて発熱駆動される。この発熱抵抗体の発熱駆動により、昇華したインクリボンの昇華性染料はプラテンローラ209により圧接されている用紙214の受容層へ転写されて定着することにより印刷データに対応する画像が形成される。
【0032】
印刷データの転写時、グリップローラ204及びピンチローラ205は用紙214を挟み込んでおり、1ライン(一主走査)の画像の転写にあわせて、CPU101の制御のもとグリップローラ204が回転し、用紙214を所定の距離分搬送する。また同時に、インクリボン210も1搬送される。
【0033】
インクリボン210は、インクリボン供給側の第1ロールボビン206から供給され、サーマルヘッド208と用紙214の間を通過して、第2ロールボビン207により巻き取られる。図2では、インクリボン210の搬送を円滑にするために、インクリボンガイドローラ211が配置されている。
【0034】
インクリボン210は、図3に示すように、長手方向(搬送方向)にイエロー(Y)301、マゼンタ(M)302、及びシアン(C)303である昇華性染料部分、及びオーバーコート(OP)部分304である熱溶融性の樹脂製材料クリア部分の順で構成される。オーバーコート(OP)部分304は、であり、インクリボンの1面分の印刷は、上述した3色の染料部301〜303を用いて印刷を行い、オーバーコート(OP)部分304を用いて用紙に転写された画像形成層を保護することで完了する。
【0035】
インクリボンの1面分に相当する4つの部分間の境界には、インクリボンの頭出し位置検出用のマーカ305が設けられている。なお、イエロー(Y)301の頭出し位置検出用のマーカは、インクリボンの1面分が開始することを示す、マーカ305とは異なるマーカ306が設けられている。インクリボンの送りは、マーカ検出センサ212がこのようにインクリボン上に配置された頭出し位置検出用のマーカを検出することにより実行される。
【0036】
通常は、印刷媒体である用紙214の搬送方向のサイズは、図4(a)に示すように、1面分のインクリボン上の各染料面と同じ大きさを有する。しかしながら本実施形態では、印刷媒体としてロール用紙201を使用し、カッタ203により任意の大きさにカットし、さまざまな大きさの印刷物を印刷できるものとする。このため、本実施形態のサーマルプリンタ100では、図4(b)に示すように1面分のインクリボンを用いて、画像401及び402を印刷することが可能である。なお、1面分のインクリボンを用いて複数の印刷物の印刷を行う場合、本実施形態では、印刷物間の印刷範囲からのはみ出し量を考慮するために、それぞれの印刷物間に用紙カット用の余白部分403を設ける。即ち、本実施形態のサーマルプリンタ100では当該余白部分403を切り落とし、2つの画像を印刷物として出力するものとする。
【0037】
なお、本実施形態では2つの画像を1面分のインクリボンを用いて印刷する場合について説明するが、本発明の実施はこれに限らず、1面分のインクリボンを用いて複数の印刷対象を印刷する場合に適用可能である。
【0038】
1枚の印刷物の印刷が完了すると、カッタ203により排紙ローラ213は適切な大きさにカットされ、用紙214として排紙ローラ213により排紙される。
【0039】
(サーマルプリンタ100のユーザインタフェース)
また、図1のサーマルプリンタ100のブロック図において、操作部106は電源ボタンやメニューボタン等のサーマルプリンタ100が備えるユーザインタフェースを管理するブロックである。本実施形態では、サーマルプリンタ100のユーザインタフェースとして、図5に示すような操作パネル500が備えられているものとする。
【0040】
操作パネル500には、サーマルプリンタ100の電源ON/OFFを指示するための電源ボタン501、印刷の実行/注視を指示するための印刷/中止ボタン506、及び表示部110が配置されている。その他、操作パネル500には、おたのしみボタン502、メニューボタン503、十字キー504、SETボタン505、パンボタン507、ズームボタン508、表示ボタン509、及び編集ボタン510が配置されている。
【0041】
例えばサーマルプリンタ100に接続された記録媒体400から画像データを選択して印刷を行う場合、電源投入後は記録媒体400に記録されている画像データが読み出され、表示部110に表示される。このとき、ユーザは十字キー504及びSETボタン505を使用して、印刷対象の画像データの選択及び印刷設定を行うことができる。ユーザは、例えばメニューボタン503を押下することにより印刷枚数や用紙設定を設定可能な画面に遷移することができる。
【0042】
同様に、編集ボタン510を操作することにより、画像データのトリミングを編集する画面に遷移し、ユーザはズームボタン508及びパンボタン507を操作することにより画像のトリミング領域を決定することができる。またユーザは、表示ボタン509を操作することにより、選択した画像データのファイル名やデータサイズ等の情報を確認することも可能である。
【0043】
さらに、おたのしみボタン502を押下することにより、カレンダ印刷、マルチレイアウト印刷(複数の画像データを配置した画像を印刷する)、パノラマ画像印刷等の特殊印刷機能を利用することもできる。
【0044】
このようにして所望の印刷対象の選択、及び印刷設定等が完了した後、ユーザは印刷/中止ボタン506を操作することにより印刷開始を指示し、サーマルプリンタ100に印刷処理を実行させることができる。
【0045】
操作部106は、このようにユーザによって操作パネル500に配置された各種操作部材を操作されたことを検出すると、当該操作に対応した制御信号を発生させ、CPU101に伝送する。このようにして、CPU101はユーザによりなされた操作を把握することができる。
【0046】
<印刷処理>
このような構成をもつ本実施形態のサーマルプリンタ100の印刷処理について、図6のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。当該フローチャートに対応する処理は、CPU101が、例えばフラッシュROM102に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、RAM103に展開して実行することにより実現することができる。なお、本印刷処理は、例えばユーザにより記録媒体400に記録されている画像データのうち、印刷対象の画像データが選択され、印刷開始の指示がなされた際に開始されるものとして説明する。
【0047】
なお、本実施形態において、複数の画像を1枚の用紙に1面分のインクリボンで印刷を行う画像データは、図7に示すような複数の印刷対象の画像データ(701及び702)が連結された1つの印刷データの形式でプリンタエンジン120に入力されるものとする。この、画像の連結処理は、ユーザにより選択された複数の印刷対象の画像データが、記録媒体I/F111を介して記録媒体400から読み出された後、例えばRAM103に復号されて展開された際に例えばCPU101が行う。なお、複数の印刷対象の画像データが連結された印刷データには、各々の画像データの境界を特定可能な情報が含まれるものとし、CPU101は、該情報をもとに各々の画像データを分離することが可能である。
【0048】
後述するように、本実施形態では、2つの印刷対象の画像データを副走査方向に並べて配置し、この2つの画像データの間に余白領域を設けて連結している。このように、複数の印刷対象の画像データを連結する際には、画像間に主走査方向に延びる余白領域が存在するようにして連結して印刷データを生成し印刷を行う。
【0049】
S601で、CPU101は、現在の印刷設定が、1面分のインクリボンで複数の画像データの印刷を行う設定がなされているか否かを判断する。具体的にはCPU101は、例えばフラッシュROM102に記憶されている現在の印刷設定の情報を読み出し、当該情報が1面分のインクリボンで複数の画像データの印刷を行う設定であるか否かを判断する。CPU101は、現在の印刷設定が1面分のインクリボンで複数の画像データの印刷を行う設定であると判断した場合は処理をS603に移し、1面分のインクリボンで単一の画像データの印刷を行う設定であると判断した場合は処理をS602に移す。
【0050】
S602で、CPU101は、1面分のインクリボン全面を使用して印刷を行うため、1面分のインクリボンに相当する印刷サイズ、即ち使用するインクリボンの副走査方向の印刷ライン数を設定する。なお、1面分のインクリボン全面を使用して印刷する場合であっても、副走査方向の印刷ライン数は、1面分のインクリボンの副走査方向の長さに対応していないライン数であってもよい。
【0051】
S603で、CPU101は、1面分のインクリボンを使用して複数の画像の印刷を行うため、まず1番目の印刷対象である画像データの印刷サイズ、即ち1番目の印刷対象に使用するインクリボンの副走査方向の印刷ライン数を設定する。なお、このとき1面分のインクリボンを使用して印刷する印刷対象の数及び各印刷対象の印刷サイズから、CPU101は当該印刷対象との間に設ける余白部分に相当する印刷ライン数についても設定するものとする。なお、上述のように印刷サイズが固定されている場合には、印刷対象の数だけからこれらの設定を行うことができる。なお、余白部分に相当する印刷ライン数の決め方に特に制限はないが、本実施形態では印刷媒体の搬送速度と、熱履歴補正パラメータの調整、設定に通常要する時間との関係から、余白部分の搬送時間内に熱履歴補正パラメータの調整、設定が終了するように決定する。なお、印刷媒体の搬送速度が可変であれば、余白部分の搬送速度についてもここで決定することができる。
【0052】
S604で、CPU101は、温度センサ112よりサーマルプリンタ100の環境温度を取得し、RAM103に格納する。またS605でCPU101は、不図示のヘッド温度センサよりサーマルヘッド208のヘッド温度を取得し、RAM103に格納する。
【0053】
S606で、CPU101は、フラッシュROM102に格納されている、ヘッド温度及び環境温度と、サーマルヘッド208に与える電力との関係を示すLUTを参照し、現在の温度条件において、単位印刷ラインの印刷により発生する熱量の情報を取得する。なお、本実施形態では単位印刷ラインの印刷において発生する熱量の情報を用いて熱履歴補正を行うものとして説明するが、他の方法によって熱履歴補正を行ってもよい。例えば、ヘッド温度及び環境温度に基づいて決定する単位印刷ラインの印刷により発生する熱量の情報だけでなく、印刷開始からの経過時間とに応じてサーマルヘッド208に蓄積する熱量の情報を算出して、これらの情報をもとに熱履歴補正を行ってもよい。
【0054】
S607で、CPU101は、サーマルヘッド208に蓄積した熱量に応じた補正パラメータを決定する。具体的にはCPU101は、S606で取得した単位印刷ラインの印刷により発生する熱量の情報と、これから印刷する印刷対象の画像データの印刷サイズとに応じてサーマルヘッド208に蓄積する熱量(熱履歴)を算出する。そしてCPU101は、当該熱量に合わせて印刷の濃度むらが発生しないように、サーマルヘッド208に与える電力を補正する熱履歴補正パラメータを決定する。なお、ヘッド温度は印刷の継続時間と共に変化するため、熱履歴補正パラメータを印刷ライン数の関数としてもよい。
【0055】
S608で、CPU101は、S607で決定された熱履歴補正パラメータで、印刷する印刷ラインに対応する画像データに応じて決定された電力を補正し、サーマルヘッド208の発熱駆動処理を実行する(印刷制御)。即ち、当該発熱駆動処理により、サーマルヘッド208が備える発熱抵抗体のそれぞれは選択的に通電され、印刷する印刷ラインに対応する画像データの印刷を行うことができる。
【0056】
S609で、CPU101は、現在の印刷対象(画像データ701)について設定された印刷ライン数分の印刷が完了したか否かを判断する。CPU101は、設定された印刷ライン数分の印刷が完了していないと判断した場合は、処理をS608に移して次の印刷ラインについての発熱駆動処理を実行する。またCPU101は、設定された印刷ライン数分の印刷が完了したと判断した場合は、処理をS610に移す。
【0057】
S610で、CPU101は、サーマルヘッド208に対して、発熱駆動処理に係る電力供給を一時停止する。なお、このときグリップローラ204は、用紙214の搬送を停止することなく継続しているものとする。即ち、本実施形態では、1面分のインクリボンを用いて複数の画像データの印刷を行う場合に、印刷物間に印刷濃度のバラツキが生じないよう、余白部分に相当する印刷ラインの搬送中に、用紙の搬送を止めずに、次の画像データを印刷するためのサーマルヘッド208の設定を行う。つまり、次の画像データを印刷するために、ヘッド温度及び環境温度を計測し、当該温度条件で単位印刷ラインの印刷によりサーマルヘッド208に発生する熱量の情報から、熱履歴補正パラメータを再決定する。本実施形態では、余白部分の搬送中に、サーマルヘッド208に対して、発熱駆動処理に係る電力供給を一時停止するとしたが、電力供給を一時停止せずに、サーマルヘッド208を駆動し続け、発熱抵抗体をインクが転写されない程度通電させてもよい。この場合、用紙の搬送もサーマルヘッドの駆動も止めずに、通常と同じ印刷処理をしながら、次の画像での熱履歴補正パラメータを決定することができる。
【0058】
S611で、CPU101は、現在の印刷設定が、1面分のインクリボンで複数の画像データの印刷を行う設定がなされているか否か、及び当該設定がなされている場合には全ての印刷対象の画像データの印刷が完了しているか否かを判断する。CPU101は、現在の印刷設定が1面分のインクリボンで複数の画像データの印刷を行う設定であり、全ての印刷対象の画像データの印刷が完了していないと判断した場合は処理をS612に移し、それ以外の場合は発熱駆動処理を停止して本印刷処理を完了する。
【0059】
S612で、CPU101は、次の印刷対象(画像データ702)に使用するインクリボンの副走査方向の印刷ライン数を設定し、処理をS604に移す。なお、次の印刷対象の印刷についてのサーマルヘッドの設定であるS604乃至S607の処理は、上述したように、余白部分に相当する印刷ラインの搬送中に実行するものとする。そして、余白部分に相当する印刷ラインの搬送が完了した後、発熱駆動処理を再開するものとする。
【0060】
なお、本実施形態では、1面分のインクリボンを用いて印刷する複数の印刷対象の画像データについてS604乃至S610の処理を印刷対象分繰り返せば印刷が完了するものとして説明した。しかしながら実際は、インクリボン210は上述したようにイエロー(Y)301、マゼンタ(M)302、シアン(C)303、及びオーバーコート(OP)部分304で構成されるため、S604乃至S610の処理は、印刷対象数×4回実行される。即ち、各印刷対象について、各色あるいはOPについての発熱駆動処理を実行する前に都度、サーマルヘッドの熱履歴補正パラメータは設定される。なお、OPについては印刷濃度に与える影響が少ないと考えられるため、上述したような熱履歴補正を行わなくてもよい。
【0061】
また、S604及びS605で説明したように、本実施形態では環境温度を先に取得した後にヘッド温度を取得している。これは、発熱駆動処理によって上昇したヘッド温度が余白領域の搬送中に下降するため、安定後のヘッド温度を取得するためである。即ち、1面分のインクリボンを用いて印刷する2番目以降の印刷対象については、前の印刷対象についての発熱駆動処理の完了後は、環境温度を先に計測してからヘッド温度の計測を行うことで、より安定したヘッド温度による良好な補正結果が得られる。
【0062】
このように、本実施形態のサーマルプリンタ100は、1面分のインクリボンを用いて複数の印刷対象を印刷する際に、各印刷対象の印刷の開始前にヘッド温度及び環境温度を取得することで、印刷時にサーマルヘッドに与える電力を適切に補正することができる。また、温度条件の取得は、複数の印刷対象が印刷された際に当該印刷対象間に設けられる余白領域の印刷媒体を搬送中に実行されるため、従来印刷に要していた時間内で、得られた印刷物における印刷濃度のバラツキの発生を低減することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のサーマルプリンタは、1面分のインクリボンを用いて複数の画像を印刷する場合でも画像間の印刷濃度のバラツキを抑制することができる。具体的にはサーマルプリンタは、複数の画像データを印刷媒体に印刷する際に、当該画像データ間に余白領域を設定し、当該余白領域の搬送中に、サーマルヘッドのヘッド温度、及びサーマルプリンタの環境温度を取得する。当該ヘッド温度及び環境温度においてサーマルヘッドで発生する熱量の情報と、余白領域の後に印刷する画像データの印刷サイズの情報とに応じて、当該画像データを印刷するために発熱抵抗体に与える電圧を補正する熱履歴補正パラメータを決定する。
【0064】
このようにすることで、適切に設定された熱履歴補正パラメータで、印刷対象の画像データに応じてサーマルヘッドに印加する電圧を補正し、補正後の電圧でサーマルヘッドに発熱駆動処理を実行させることができる。
本実施形態では、1面分のインクリボンを用いて複数の画像を印刷する場合に、熱履歴補正パラメータの再設定を行った。しかし、1面分のインクリボンを用いて複数の画像を印刷する場合であっても、画像の配置によっては、熱履歴補正パラメータの再設定を行わないようにしてもよい。本実施形態では、複数の画像が副走査方向に並んで配置され、主走査方向にのびる余白領域を設定可能な場合は熱履歴補正パラメータの再設定を行った。しかし、例えば、複数の画像が主走査方向に並んで配置されており、主走査方向にのびる余白領域を設定不可能な場合は、熱履歴補正パラメータの再設定を行わないようにしてもよい。主走査方向に延びる余白領域が設定される場合は、余白領域において、サーマルヘッドによるインクの転写がないため、熱履歴パラメータを再設定しても画像への影響はない。しかし、主走査方向に延びる余白領域が設定できない場合は、連続してインクが転写されているため、途中で熱履歴パラメータが変更されると画像の連続性が失われる恐れがあるためである。
【0065】
[実施形態2]
上述した実施形態1では、1面分のインクリボンを用いて複数の印刷対象を印刷する際に、印刷媒体の余白領域の搬送時間中に環境温度及びヘッド温度の計測、及び発熱駆動処理の一時停止及び再開の実行ができるように余白領域の大きさや搬送速度を決定した。これに対し、本実施形態では、印刷媒体の余白領域の大きさに合わせて、温度条件の取得の有無、及び発熱駆動処理の一時停止及び再開の実行の有無を切り替えて印刷を行う方法について説明する。
【0066】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ100の構成は、上述した実施形態1のサーマルプリンタ100と同様であるものとして説明を省略する。
【0067】
<印刷処理>
本実施形態のサーマルプリンタ100の印刷処理について、図8及び図9のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。当該フローチャートに対応する処理は、CPU101が、例えばフラッシュROM102に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、RAM103に展開して実行することにより実現することができる。なお、本印刷処理は、例えば記録媒体400に記録されている画像データのうち、複数の画像データが印刷対象として選択され、1面分のインクリボンを用いて複数の画像データを印刷可能なサイズで1枚の印刷媒体に割り付けて当該印刷対象の画像データを印刷する指示がユーザによりなされた際に開始されるものとして説明する。また、本実施形態の印刷処理において、上述した実施形態1の印刷処理と同様の処理を行うステップについては同一の参照番号を付し、説明を省略するものとする。
【0068】
(1番目の印刷対象である画像データの印刷処理)
S801で、CPU101は、1面分のインクリボンを使用して複数の画像データの印刷を行う際に、印刷対象間に設ける余白部分に相当する用紙の搬送に要する時間が、第1の閾値より小さいか否かを判断する。具体的にはCPU101は、1面分のインクリボンを使用して印刷する印刷対象の画像データの数及び各印刷対象の印刷サイズから、印刷対象間に設ける余白部分に相当する印刷ライン数を決定する。そしてCPU101は当該余白部分に相当する印刷ライン数の搬送に要する時間を算出し、第1の閾値と比較する。
【0069】
なお、第1の閾値は、サーマルヘッド208の発熱駆動処理を一時停止してから再開する際に、最低限必要とする処理時間を示す閾値である。即ち、余白部分の搬送時間が第1の閾値より小さい場合、発熱駆動処理を一時停止してしまうと、次の印刷対象の印刷時までに発熱駆動処理の再開ができないため、用紙の搬送を一時停止する必要があり、印刷時間を余計に要することになる。本実施形態では、少なくとも1面分のインクリボンを用いた印刷処理に要する時間を変えることなく熱履歴補正を行うため、本ステップにおいて余白部分の搬送中に発熱駆動処理を一時停止してヘッド温度の上昇を低減できるか否かを判断する。
【0070】
なお、本実施形態では第1の閾値は発熱駆動処理の一時停止及び再開に要する時間を示すものとして説明するが、第1の閾値は印刷ライン数に換算された値であってもよいことは言うまでもない。また当該閾値は、例えばサーマルヘッド208の通電仕様、用紙搬送速度等の関連仕様により算出される値、あるいは実験的に設定される値である。
【0071】
CPU101は、余白部分の搬送時間が第1の閾値より小さいと判断した場合は処理をS802に移し、第1の閾値以上であると判断した場合は処理をS603に移す。
【0072】
S802で、CPU101は、余白部分の搬送時間中に発熱駆動処理の一時停止及び再開を行うことができないため、印刷対象の複数の画像データを余白部分も含めた1つの画像データとして、1面分のインクリボンを用いて印刷するものとして決定する。具体的にはCPU101は、1面分のインクリボンを使用して印刷する、1番目の印刷対象の画像データの印刷サイズを、1番目の印刷対象の画像データの印刷サイズではなく、インクリボン1面分のサイズとして設定する。このとき、実際に1番目の印刷対象の画像データの印刷のために発熱駆動処理を実行する印刷ライン数については、1番目の印刷対象の画像データの印刷に使用するインクリボンの印刷ライン数が設定される。
【0073】
なお、余白部分の搬送時間中に発熱駆動処理の一時停止及び再開が可能な場合は、S603でCPU101は、1番目の印刷対象である画像データの印刷サイズ、即ち1番目の印刷対象に使用するインクリボンの印刷ライン数を設定する。
【0074】
このように印刷サイズ及び印刷ライン数が設定された1番目の印刷対象の画像データについて、S04乃至S609の処理を実行し、用紙214への印刷を行う。
【0075】
(2番目以降の印刷対象である画像データの印刷処理)
次に、1番目の印刷対象の画像データの印刷が完了した後に印刷が行われる、2番目以降の印刷対象の画像データの印刷について以下に図9のフローチャートを参照して説明する。
【0076】
S901で、CPU101は、S801の判断結果を参照し、印刷対象間に設ける余白部分に相当する用紙の搬送に要する時間が、第1の閾値より小さいか否かを判断する。CPU101は、余白部分の搬送時間が第1の閾値より小さいと判断した場合は処理をSS906に移し、第1の閾値以上であると判断した場合は処理をS610に移す。
【0077】
まず、余白部分の搬送時間が第1の閾値以上であると判断した場合の処理について、以下に説明する。なお、以下で説明するS610乃至S607の処理は、余白部分の搬送時間中に全ての処理が行われるものとする。
【0078】
S610でサーマルヘッド208への発熱駆動処理に係る電力供給を一時停止した後、CPU101はS902で、用紙214に印刷する次の印刷対象の画像データの印刷サイズ及び印刷ライン数の情報を設定する。
【0079】
S903で、CPU101は、余白部分の搬送時間が第2の閾値より小さいか否かを判断する。第2の閾値は、少なくとも現在のヘッド温度を取得し、当該ヘッド温度の温度条件で単位印刷ラインの印刷によりサーマルヘッド208に発生する熱量の情報を用いて熱履歴補正パラメータを更新した上で発熱駆動処理が再開可能であるか否かを判断する閾値である。CPU101は、余白部分の搬送時間が第2の閾値より小さいと判断した場合は処理をS607に移し、第2の閾値以上であると判断した場合は処理をS904に移す。
【0080】
S904で、CPU101は、余白部分の搬送時間が第3の閾値より小さいか否かを判断する。第3の閾値は、ヘッド温度及び環境温度の両方の情報を取得し、当該温度条件で単位印刷ラインの印刷によりサーマルヘッド208に発生する熱量の情報を用いて熱履歴補正パラメータを更新した上で、発熱駆動処理の再開が可能であるか否かを判断する閾値である。
【0081】
即ち、本実施形態では、
・発熱駆動処理の一時停止
・サーマルヘッド208のヘッド温度の取得
・サーマルプリンタ100の環境温度の取得
のそれぞれを行うか否かを、余白部分の搬送時間に対して閾値を設けることにより判断している。このようにすることで、1面分のインクリボンを用いた印刷に要する時間内で、最適なサーマルヘッド208の温度補正を実行して印刷を行うことができる。なお、環境温度の取得を行うか否かを第3の閾値を用いて判断し、第3の閾値以上である場合にのみ環境温度の変化を反映した熱履歴補正パラメータを決定するものとした。これは環境温度がヘッド温度に比べて変化しにくいため、環境温度の変化による熱履歴補正パラメータへの影響は少ないと考えられるからである。
【0082】
CPU101は、余白部分の搬送時間が第3の閾値より小さいと判断した場合は処理をS605に移し、余白部分の搬送時間が第3の閾値以上であると判断した場合は処理をS604に移す。
【0083】
また、余白部分の搬送時間が第1の閾値より小さい場合は、余白部分の搬送中も発熱駆動処理が継続されるため、CPU101はS905で、余白部分の印刷ライン数を有する余白部分の画像データを生成する。そしてCPU101はS906で、当該余白部分の画像データについてS907及びS908で行われる発熱駆動処理のライン数を用いて、余白部分の印刷サイズ及び印刷ライン数を設定する。なお、生成される余白部分の画像データは、当該画像データに従って発熱駆動処理が実行されても、用紙214に何も印刷されないデータで構成されているものとする。
【0084】
S907及びS908の余白部分の発熱駆動処理が完了した後、S909でCPU101は、用紙214に印刷する次の印刷対象の画像データの印刷サイズ及び印刷ライン数の情報を設定し、処理をS607に移す。
【0085】
S604乃至S607の処理は、実施形態1の印刷処理と同様に行うが、S607で決定される、サーマルヘッド208に蓄積した熱量に応じた熱履歴補正パラメータは、余白部分の搬送時間によって具体的には以下のように異なる。
(1)搬送時間が第1の閾値より小さい場合
1番目の画像データについて決定されたもの
(2)搬送時間が第1の閾値以上、かつ第2の閾値より小さい場合
1番目の画像データについて取得した印刷開始前の温度条件において、LUTより得られた単位印刷ラインの印刷によりサーマルヘッド208に発生する熱量の情報と、これから印刷する印刷対象の画像データの印刷サイズの情報とに応じて決定
(3)搬送時間が第2の閾値以上、かつ第3の閾値より小さい場合
現在の印刷対象の画像データについて取得したヘッド温度及び1番目の画像データについて取得した環境温度とに応じて、LUTより得られた単位印刷ラインの印刷によりサーマルヘッド208に発生する熱量の情報と、これから印刷する印刷対象の画像データの印刷サイズの情報とに応じて決定
(4)搬送時間が第3の閾値以上である場合
現在の印刷対象の画像データについて取得した温度条件において、LUTより得られた単位印刷ラインの印刷によりサーマルヘッド208に発生する熱量の情報と、これから印刷する印刷対象の画像データの印刷サイズの情報とに応じて決定
【0086】
そしてCPU101は、現在の印刷対象の画像データについて決定された熱履歴補正パラメータに応じて、S608及びS609で、当該画像データについての発熱駆動処理を実行し、印刷を行う。なお、余白部分の搬送時間が第1の閾値以上であった場合、CPU101は、余白部分の搬送が完了した後、発熱駆動処理の再開を行い、当該ステップの処理を行うものとする。
【0087】
S611で、CPU101は、全ての印刷対象の画像データの印刷が完了しているか否かを判断する。CPU101は、全ての印刷対象の画像データの印刷が完了していないと判断した場合は処理をS901に移し、完了していると判断した場合は発熱駆動処理を終了して本印刷処理を完了する。
【0088】
このようにすることで、1面分のインクリボンを用いた印刷に要する時間内で、最適なサーマルヘッド208の温度補正を実行して印刷を行うことができる。
【0089】
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像データを、1面分のインクリボンで印刷可能な大きさの印刷媒体に印刷可能なサーマルプリンタであって、
前記印刷媒体を搬送する搬送手段と、
複数の発熱抵抗体を備え、前記複数の発熱抵抗体を駆動させることにより前記インクリボンのインクを前記印刷媒体に転写させて印刷を行うサーマルヘッドと、
複数の画像データを1面分のインクリボンを用いて印刷する場合に、前記複数の画像データ間に余白領域を設定し、設定した余白領域および複数の画像データに基づいて、前記発熱抵抗体を駆動するための印刷データを生成する生成手段と、
前記サーマルヘッドのヘッド温度、及び前記サーマルプリンタの環境温度を取得する温度取得手段と、
前記サーマルヘッドによる印刷開始前に、前記温度取得手段によりヘッド温度及び環境温度を取得し、取得したヘッド温度及び環境温度に応じて熱履歴補正パラメータを決定する決定手段と、
前記生成手段により生成された印刷データを前記熱履歴補正パラメータに応じて補正し、補正した印刷データに基づいて前記発熱抵抗体を駆動することにより印刷を実行する印刷制御手段と、を有し、
前記搬送手段が前記印刷媒体のうちの前記余白領域を搬送中に、前記温度取得手段はヘッド温度及び環境温度を取得し、前記決定手段は前記余白領域を搬送中に取得したヘッド温度及び環境温度に応じて、前記熱履歴補正パラメータを再決定する
ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記複数の画像データが副走査方向に配置され、前記生成手段により主走査方向に延びる余白領域が生成される場合に、前記決定手段は、前記熱履歴補正パラメータを再決定することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記複数の画像データが主走査方向に配置され、前記生成手段により主走査方向に延びる余白領域が生成されない場合には、前記決定手段による前記熱履歴補正パラメータの再決定を行わないことを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記印刷制御手段は、前記余白領域の搬送中は前記発熱抵抗体に電圧を与えないことにより、前記発熱抵抗体の駆動を一時停止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記生成手段は、前記余白領域の搬送中に前記温度取得手段がヘッド温度及び環境温度を取得し、前記決定手段が前記熱履歴補正パラメータを決定した後に、前記印刷制御手段が前記発熱抵抗体を再び駆動できるように、前記余白領域の大きさを決定することを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記搬送手段は、前記余白領域の搬送中に前記温度取得手段がヘッド温度及び環境温度を取得し、前記決定手段が前記熱履歴補正パラメータを決定した後に、前記印刷制御手段が前記発熱抵抗体を再び駆動できるように、前記余白領域の搬送速度を決定することを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記温度取得手段は、前記余白領域の搬送中は、環境温度を取得した後にヘッド温度を取得することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記印刷制御手段は、前記余白領域の搬送に要する時間が、
前記発熱抵抗体を再び駆動できる第1の閾値以上である場合は、前記余白領域の搬送中に前記発熱抵抗体の駆動を一時停止し、
前記第1の閾値より小さい場合は、前記余白領域の搬送中に前記サーマルヘッドの駆動を一時停止しない
ことを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項9】
前記印刷制御手段は、前記余白領域の搬送に要する時間が、前記決定手段が少なくとも現在のヘッド温度に対応する熱履歴補正パラメータを決定した後に当該印刷制御手段が前記発熱抵抗体を再び駆動できる、前記第1の閾値以上の第2の閾値より小さい場合は、前記複数の印刷対象の画像データの印刷開始前に決定した熱履歴補正パラメータで、前記発熱抵抗体に与える電圧を補正することを特徴とする請求項8に記載のサーマルプリンタ。
【請求項10】
前記印刷制御手段は、前記余白領域の搬送に要する時間が、
前記決定手段が少なくとも現在のヘッド温度及び環境温度に対応する熱履歴補正パラメータを再決定した後に当該印刷制御手段が前記発熱抵抗体を再び駆動できる前記第2の閾値よりも大きい第3の閾値以上である場合は、前記温度取得手段が取得した前記現在のヘッド温度及び環境温度において前記発熱抵抗体で発生する熱量の情報と、当該余白領域の後に印刷する印刷対象の画像データの印刷サイズの情報とに応じて前記決定手段が再決定した熱履歴補正パラメータで、前記発熱抵抗体に与える電圧を補正し、
前記第3の閾値より小さい場合は、前記温度取得手段が取得した前記現在のヘッド温度と、前記複数の印刷対象の画像データの印刷開始前に取得した環境温度とにおいて前記発熱抵抗体で発生する熱量の情報と、当該余白領域の後に印刷する印刷対象の画像データの印刷サイズの情報とに応じて前記決定手段が再決定した熱履歴補正パラメータで、前記発熱抵抗体に与える電圧を補正する
ことを特徴とする請求項9に記載のサーマルプリンタ。
【請求項11】
前記複数の画像データは、各々の画像データが連結された1つの画像データの形式で取得され、当該連結された1つの画像データには前記各々の画像データの境界を特定可能な情報が含まれることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項12】
複数の発熱抵抗体を備え、前記複数の発熱抵抗体を駆動させることによりインクリボンのインクを印刷媒体に転写させて印刷を行うサーマルヘッドと、前記印刷媒体を搬送する搬送手段とを有し、複数の画像データを、1面分のインクリボンで印刷可能な大きさの印刷媒体に印刷可能なサーマルプリンタの制御方法であって、
前記サーマルプリンタの生成手段が、複数の画像データを1面分のインクリボンを用いて印刷する場合に、前記複数の画像データ間に余白領域を設定し、設定した余白領域および複数の画像データに基づいて、前記発熱抵抗体を駆動するための印刷データを生成する生成工程と、
前記サーマルプリンタの温度取得手段が、前記サーマルヘッドのヘッド温度、及び前記サーマルプリンタの環境温度を取得する温度取得工程と、
前記サーマルプリンタの決定手段が、前記サーマルヘッドによる印刷開始前に、前記温度取得工程においてヘッド温度及び環境温度を取得し、取得したヘッド温度及び環境温度に応じて熱履歴補正パラメータを決定する決定工程と、
前記サーマルプリンタの印刷制御手段が、前記生成工程において生成された印刷データを前記熱履歴補正パラメータに応じて補正し、補正した印刷データに基づいて前記発熱抵抗体を駆動することにより印刷を実行する印刷制御工程と、を有し、
前記搬送手段が前記印刷媒体のうちの前記余白領域を搬送中に、前記温度取得工程において前記温度取得手段はヘッド温度及び環境温度を取得し、前記決定工程において前記決定手段は前記余白領域を搬送中に取得したヘッド温度及び環境温度に応じて前記熱履歴補正パラメータを再決定する
ことを特徴とするサーマルプリンタの制御方法。
【請求項13】
コンピュータに、請求項12に記載のサーマルプリンタの制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−43380(P2013−43380A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183078(P2011−183078)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】