サーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法
【課題】サーマルプリンタのオーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれる隠蔽情報を視認できないように偽装するオーバーコート印刷技術を実現する。
【解決手段】インクを印刷媒体に転写して画像を印刷するサーマルプリンタにおいて、染料層のインクを前記印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写する印刷手段と、前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成する。
【解決手段】インクを印刷媒体に転写して画像を印刷するサーマルプリンタにおいて、染料層のインクを前記印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写する印刷手段と、前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタにおいて印刷画像上に転写するオーバーコート印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭などにおいてデジタルカメラにより取得した画像データやコンピュータで加工した画像データをプリンタを用いて専用の印刷媒体に画像をプリントして写真を作成する、所謂、ホームラボが行われている。ホームラボには印刷色の階調表現に優れるサーマルプリンタが多く用いられている。
【0003】
一方、サーマルプリンタのサーマルヘッドは、発熱抵抗体が一列に形成されて構成される(この一列方向を主走査方向、またはサーマルヘッドの長手方向とする)。
【0004】
1画素(1ドット)の階調性は、1画素中に昇華させるインクリボンの染料の量を制御することで実現している。染料昇華量の制御は、上記発熱抵抗体に印加するエネルギーを制御することで実現している。
【0005】
画像データに応じた印刷データに従って、印刷媒体を印刷方向に搬送しながら(印刷媒体搬送方向を副走査方向とする)、上記発熱抵抗体を選択的に通電することでインクリボンに染料を昇華させて画素を形成する。
【0006】
インクリボンは印刷媒体に印刷色を与えるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の染料層と、印刷画像を保護するオーバーコート層(OC)からなる。
【0007】
インクリボンと印刷媒体をサーマルヘッドで圧接し、印刷媒体上に発熱抵抗体の主走査方向画素数×副走査方向画素数の面積に対応するY、M、C画素を順次走査で昇華して印刷色を構成する。その後、OCを印刷画像上に転写し、上記昇華したY、M、Cからなる印刷色を保護する。
【0008】
サーマルプリンタにより転写するOCは、上記発熱抵抗体に印加するエネルギーを制御することで、その厚みおよび表面状態を変更可能である。
【0009】
特許文献1には、OCの光沢の有無を任意に選択するプリンタ装置が記載されており、サーマルヘッドに対する通電を制御してOCに供給される熱量を一定に維持しながらOCに対する加熱温度を制御する。OCに対する加熱温度を変更すると、OCの表面状態が変わり、OC表面での乱反射の程度が変わる。これにより、印刷物の光沢の有無を任意に選択できる。
【0010】
特許文献2には、画像情報に関連する付帯情報をOCに透かし文字として形成する方法が記載されており、印刷媒体のファイル等から画像情報を受け取ると共に、当該画像情報に関連する付帯情報を入手する。そして、画像情報を印刷媒体に印刷した後、転写ヘッドへの印加エネルギーを制御して、フィルム状シートの光沢度を変化させ、転写ヘッドへの印加エネルギーを制御して、フィルム状シートの光沢度を変化させる。これにより、画像情報に関連する付帯情報を当該シート上に透かし文字や記号等で形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−012996号公報
【特許文献2】特開2002−240402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1では、印刷物の光沢の有無を制御するのみで、印刷媒体に情報を隠蔽することについては考慮されていない。
【0013】
上記特許文献2では、プリント画像の品位を落とすことなく、画像情報に関連する付帯情報を透かし文字として印刷媒体表面に形成するものである。画像情報に関連する付帯情報を印刷媒体表面の光沢度の差として形成して情報を目視可能にする方法であって、情報を隠蔽するものではない。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、サーマルプリンタのオーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれる隠蔽情報を視認できないように偽装するオーバーコート印刷技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るサーマルプリンタは、インクを印刷媒体に転写して画像を印刷するサーマルプリンタにおいて、染料層のインクを前記印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写する印刷手段と、前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれた隠蔽情報の近傍に偽装パターンを転写することで、当該隠蔽情報を視認できないように偽装でき、当該隠蔽情報の隠匿性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施形態のオーバーコート印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報を視覚的に示した図。
【図2】本実施形態のサーマルプリンタの構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態のサーマルプリンタのサーマルヘッド電源供給部とライン発熱抵抗体、駆動用ICを含むブロック図。
【図4】実施形態1のサーマルプリンタによる印刷処理を示すフローチャート。
【図5】実施形態1による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図6】実施形態1のオーバーコート印刷処理による1ドット印刷階調数とオーバーコート層厚みの特性曲線を例示する図。
【図7】実施形態1によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示した図。
【図8】実施形態1によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体の断面図。
【図9】実施形態2のサーマルプリンタによる印刷処理を示すフローチャート。
【図10】実施形態2による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図11】実施形態2によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示した図。
【図12】実施形態2によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体の断面図。
【図13】実施形態3による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図14】実施形態3によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示した図。
【図15】実施形態3のオーバーコート印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報を視覚的に示した図。
【図16】実施形態4による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図17】実施形態5による補正前後の光沢性OCデータのピクセル配置及び印刷後の印刷媒体の様子を視覚的に示した図。
【図18】実施形態5による補正前後の非光沢性OCデータのピクセル配置及び印刷後の印刷媒体の様子を視覚的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、後述する各実施形態の一部を適宜組み合わせて構成してもよい。
【0019】
[実施形態1]実施形態1のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。
【0020】
最初に、図2を参照して、サーマルプリンタの構成について説明する。
【0021】
図2において、201はサーマルプリンタ全体の制御を司るCPU(Central PrOCessing Unit)である。202はCPU201のワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)である。203はCPU201の処理手順を記憶しているROM(Read Only Memory)であり、例えばフラッシュメモリなどの書き換えが可能な不揮発性メモリで構成される。204は画像処理部であり、デジタル画像データ等を画面表示可能なデータに変換する処理、画像データ内の顔パーツ及び顔検出処理に用いられる。205は各種表示を行うための表示制御部である。206はLCD(Liquid Crystal Display:液晶表示器)であり、サーマルプリンタの画面に画像データや操作情報などの映像を表示するために使用する。207は外部記憶装置の制御部であり、メモリーカードソケット208に挿入されたカード記憶媒体に記憶されているデジタルデータの読み込み及び記憶媒体へのデジタルデータの書き出しの制御を行う。209は操作入力部であり、操作ボタン210、ポインティングデバイス211の操作情報をCPU201へ伝える。なお、ポインティングデバイス211は座標情報を取得可能なデバイスであれば良く、タッチパネルやマウスに相当するデバイスである。212はサーマルプリンタの印刷機能制御部であり、印刷エンジン213でデジタルデータのプリントを行う。214はUSBインターフェースに代表されるような外部インターフェースの制御部であり、外部インターフェースコネクタ215を介して他の装置と接続することができる。216は上記各要素を通信可能に接続するバスである。
【0022】
次に、図3を参照して、図2に示す印刷エンジン213を構成するサーマルヘッドについて説明する。
【0023】
図3において、サーマルヘッドはライン発熱抵抗体300とその駆動用IC301で構成されている。ライン発熱抵抗体300にはヘッド電圧が印加されており、ヘッド駆動用IC301には電源VDDが印加されている。ライン発熱抵抗体300はサーマルヘッドの主走査方向ドットの数だけ一列に形成されており、CLK、LATCH、STROBE信号及びDATA信号の組み合わせで通電する発熱抵抗体を決定する。図2の画像処理部204で生成されたCLK、LATCH、STROBE信号及びDATA信号をヘッド駆動用IC301へ入力することで任意のドットを任意のタイミングで通電することが可能である。
【0024】
サーマルプリンタの1ドット濃度階調数は、副走査方向一定時間内の印刷パルスにより発生する1ドットへの投入エネルギーにより表現することができる。例えば、0から511濃度階調を表現するとして、ある1ドットの副走査方向一定時間内の印刷パルス数が0であれば0エネルギーに対応するドット階調濃度となり、印刷パルス数が511であればその印加エネルギーに対応するドット階調濃度となる。
【0025】
本実施形態並びにそれ以降において、副走査方向一定時間内の印刷パルス数のことを、1ドット印刷階調数と換言して説明を進める。このように、サーマルプリンタでは、1ドット印刷階調数によりインクリボンのインク転写量が制御可能であるため、カラーインクである染料層だけでなく、印刷画像を保護するオーバーコート層(OC)のインクの転写量も制御可能である。なお、インクリボンは印刷媒体に印刷色を与えるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の染料層と、印刷画像を保護するOCからなる。
【0026】
そして、OCのインク転写量を制御して、印刷画像上の任意部分のOC転写量をゼロ階調にすると、その部分が隠蔽情報となって、印刷後の印刷媒体表面を消しゴム等で擦ったときに隠蔽情報部分の染料層が剥がれ落ち、印刷色が消える。OC転写部分とOC転写量ゼロの部分とでは、印刷媒体正面から目視した場合の反射率の違いが小さいため、印刷媒体表面を正面から目視した限りでは前者と後者の差は目立ちにくい。この性質を利用して、任意部分をOC転写量ゼロの部分として印刷処理することで印刷媒体に隠蔽情報を印刷することができる。印刷後の印刷媒体表面を消しゴム等で擦るとOC転写量ゼロの部分の印刷色が消え、印刷媒体に印刷した隠蔽情報が現れて解読することができる。
【0027】
本実施形態のサーマルプリンタでは、OC転写量ゼロ(ゼロ階調)として情報を印刷することで隠蔽情報を印刷可能である。
【0028】
次に、図4を参照して、実施形態1のサーマルプリンタによる画像データの印刷処理について説明する。なお、印刷する画像データはサーマルプリンタのメモリーカードソケット208に挿入されたメモリカードに記憶されているものとする。また、図4に示す処理は、サーマルプリンタの電源投入時に、ROM203に格納されているファームウェアプログラムを、CPU201がRAM202に展開することで実行される。
【0029】
図4において、CPU201は、メモリーカードソケット208に挿入されたメモリカードから画像データを読み出し、画像処理部204でイエロー・マゼンタ・シアンの各印刷データを生成するための画像処理を施す(S401)。次に、CPU201は、イエロー印刷データを生成し(S402)、イエロー印刷を行う(S403)。次いで、マゼンタ印刷データを生成し(S404)、マゼンタ印刷(S405)、シアン印刷データを生成し(S406)、シアン印刷を行う(S407)。
【0030】
なお、本実施形態の説明に用いるイエロー・マゼンタ・シアンの各印刷データとは、画像処理部204での画像処理後に、印刷機能制御部212へ送出されるデジタルデータのことである。
【0031】
イエロー・マゼンタ・シアンの各色の印刷が終了したら、CPU201は、図2の画像処理部204によりオーバーコート印刷データ(以下、OC印刷データ)処理を実行する。
【0032】
ステップS408では、一定階調数のベースOCデータを全面に配置する。
【0033】
ステップS409では、隠蔽情報パターンOCデータの配置を行う。
【0034】
ステップS410では、光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0035】
ステップS411では、非光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0036】
ステップS412では、非光沢性ラインパターンOCデータの配置を行う。
【0037】
ステップS413では、ステップS408からS412で配置したOCデータを上書き及び重ね合わせて合成する。
【0038】
ステップS414では、ステップS412で合成したOCデータからOC印刷データを生成し、ステップS415でOC印刷を行う。
【0039】
なお、本実施形態の説明に用いるOC印刷データとは、画像処理部204でのOC印刷データ処理後に印刷機能制御部212へ送出されるデジタルデータのことである。
【0040】
ここで、図5及び図6を参照して、ステップS408からS412でのOC印刷データ処理による隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンとその印刷手順について説明する。
【0041】
なお、本実施形態の説明で用いるピクセルとは画像処理上の最小画素単位のことである。ピクセルと発熱抵抗体の1ドットは等しく対応していても良いし、任意比率により対応していても良い。
【0042】
図5(A)はステップS408でベースOCデータ500を全面配置した状態を概念的に示している。なお、本実施形態の説明に用いる光沢性ベースOCデータとは、有限の厚みで印刷媒体の一部または全部を覆うように印刷されるOCのデータである。
【0043】
ベースOCデータ500は印刷媒体全面を覆うように転写されるため、印刷媒体全面に対応するドット数に対して1ドット印刷階調数を一定階調数Pbaseに設定する。Pbaseとは、図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、通常印刷のOC転写安定性と表面光沢性が高くなるような階調数である。
【0044】
図5(B)はステップS409で隠蔽情報パターンデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるドット(以下、画像ブロック)を設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(zero):OCゼロ階調範囲にあり、印刷媒体にOCが転写しないような階調数に設定する。そして、予め設定された画像ブロックを隠蔽情報パターン501として配置する。実施形態1では「ABC」という文字を隠蔽情報とする。
【0045】
図5(C)はステップS410で光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseと異なるような階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを光沢性偽装パターン502として配置する。
【0046】
図5(D)はステップS411で非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを非光沢性偽装パターン503として配置する。
【0047】
図5(E)はステップS412で非光沢性ラインパターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。非光沢性ラインパターン504は印刷画像上の隠蔽情報パターン501の配置箇所を明示するためのラインパターンである。非光沢性ラインパターン504の1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。
【0048】
図5(F)はステップS413でベースOCデータ500、隠蔽情報パターン501、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504の各OC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。
【0049】
なお、パターンデータの上書き重ね合わせ合成とは、先に配置されているOCデータの画像ブロックに対応するピクセルを、後に配置されるOCデータの画像ブロックに対応するピクセルで置き換えることを意味する。
【0050】
実施形態1のパターンデータの上書き重ね合わせ合成は、ベースOCデータ500、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504、隠蔽情報パターン501の順で実行されることとする。
【0051】
つまり、ベースOCデータ500が重ね合わせの最下層、隠蔽情報パターン501が重ね合わせの最上層となるため、OCデータ上の隠蔽情報パターン501に対応するピクセルはP(zero):OCゼロ階調の階調数になる。
【0052】
図7は、実施形態1によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示している。
【0053】
図7(A)のように印刷媒体を正面から見た場合、印刷されたOCの表面状態はほとんど視認できない。図7(B)のように印刷媒体を少し傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態が少し視認できる。
【0054】
図7(C)のように印刷媒体を更に傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態は視認できるが、この時点では印刷媒体に印刷した隠蔽情報は偽装パターンによって偽装されているため解読することは困難である。
【0055】
図8は実施形態1におけるOC印刷を施した印刷媒体の断面図である。印刷媒体100はベースフィルム810、染料受容層811からなり、その上層にOC812が転写した状態となっている。染料受容層811にはインクリボンから昇華した染料813が存在し印刷色を形成している。
【0056】
図8(A)は印刷後そのままの状態、図8(B)は印刷後に隠蔽情報パターン501配置箇所を消しゴム等で擦り、隠蔽情報パターン501に相当する部分の印刷色を形成している染料を除去し、隠蔽情報が解読できる状態としたものである。
【0057】
下記に示す各パターン断面のOC厚みは、図6の1ドット印刷階調数と転写後のOC厚みの特性曲線で説明することができる。
【0058】
800:ベースOC断面 P(base)
801:隠蔽情報パターンの画像ブロックに対応するOC断面 P(zero)
802:光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面 P(gloss)
803:非光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面 P(mat)
P(zero):OCゼロ階調範囲以外においては、1ドット印刷階調数が低いほど転写後のOC厚みは大きく、1ドット印刷階調数が高いほど転写後のOC厚みは小さくなる。
【0059】
P(zero):OCゼロ階調範囲とP(gloss):光沢性OC階調範囲の間にはOCの転写が不安定となる転写不定区間があるため、OC印刷階調数を制御する際は該転写不定区間に値する印刷階調数は取らないこととする。
【0060】
また、P(gloss):光沢性OC階調範囲とP(mat):非光沢性OC階調範囲の間にはOCの光沢性が不安定となる光沢不定区間があるため、OC印刷階調数を制御する際は該光沢不定区間に値する印刷階調数は取らないこととする。
【0061】
各パターンの厚みと光沢性が揃っていないため、印刷媒体を様々な角度から見て印刷媒体表面の光の反射状態が変わっても隠蔽情報は偽装パターンに紛れて見えないため、隠蔽情報の解読は困難となる。
【0062】
図1に実施形態1におけるOC印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報パターンを視覚的に示している。
【0063】
図8(A)のように印刷後のままの状態で印刷媒体を正面から見た場合、隠蔽情報はほとんど目視できない。視覚的に表現すると図1(A)のように見える。図8(B)のように隠蔽情報を解読できる状態において印刷媒体を正面から見た場合、「ABC」という隠蔽情報パターンが見えて隠蔽情報が解読できたことになる。視覚的に表現すると図1(B)のように見える。なお、図8(B)のように隠蔽情報を解読できる状態においては、印刷媒体を様々な角度から見ても隠蔽情報パターンが解読可能となる。
【0064】
以上の実施形態1によれば、オーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれた隠蔽情報の近傍に偽装パターンを埋め込むことで、印刷媒体の如何なる方向からの光入反射および目視に対して隠蔽情報を偽装でき、当該隠蔽情報の隠匿性を向上できる。
【0065】
また、偽装データは印刷媒体中の任意部分に隠蔽情報を埋め込んだことを明示する効果もある。
【0066】
[実施形態2]次に、実施形態2のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
実施形態1では、ベースOCデータ500、隠蔽情報パターン501、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504を合成してOC印刷データを生成した。これに対して、実施形態2では、上記非光沢性ラインパターン504に代えて、非光沢性ベースパターン505を合成してOC印刷データを生成する。
【0068】
なお、非光沢性ベースパターンOCデータとは、有限の厚みで印刷媒体の一部または全部を覆うように印刷されるOCであって、特に印刷媒体表面に光沢性のないOCを転写するデータである。
【0069】
ここで、図9を参照して、実施形態2のサーマルプリンタによる印刷処理について説明するが、基本的な処理の流れは図4と同様であるので、異なる点についてのみ説明する。また、図9に示す処理は、サーマルプリンタの電源投入時に、ROM203に格納されているファームウェアプログラムを、CPU201がRAM202に展開することで実行される。
【0070】
図9において、ステップS901からS907までは図4のS401からS407と同一の処理である。イエロー・マゼンタ・シアンの各色の印刷が終了したら、CPU201は、図2の画像処理部204によりOC印刷データ処理を実行する。
【0071】
ステップS908では、基準階調数のベースOCデータを全面に配置する。
【0072】
ステップS950では、非光沢性ベースパターンOCデータを配置する。
【0073】
ステップS909では、隠蔽情報パターンOCデータの配置を行う。
【0074】
ステップS910では、光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0075】
ステップS911では、非光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0076】
ステップS913では、ステップS908からS911で配置したOCデータを上書き及び重ね合わせて合成する。
【0077】
ステップS914では、ステップS913で合成したOCデータからOC印刷データを生成し、ステップS915でOC印刷を行う。
【0078】
なお、本実施形態の説明に用いるOC印刷データとは、画像処理部204でのOC印刷データ処理後に印刷機能制御部212へ送出されるデジタルデータのことである。
【0079】
ここで、図10を参照して、ステップS908からS911でのOC印刷データ処理による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順について説明する。
【0080】
図10(A)はステップS908でベースOCデータ500を全面配置した状態を概念的に示しているが、実施形態1と同一のデータであるので説明は省略する。
【0081】
図10(B)はステップS950で非光沢性ベースパターンOCデータ505を配置した状態を概念的に示している。非光沢性ベースパターンOCデータ505は図10(C)に示すように、印刷媒体中の隠蔽情報パターン501の配置箇所を包含するように配置する。1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。
【0082】
図10(C)はステップ909で隠蔽情報パターンデータ501を配置した状態を概念的に示しているが、実施形態1と同一のデータであるので説明は省略する。
【0083】
図10(D)はステップS910で光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性をもって転写する階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを光沢性偽装パターン502として配置する。
【0084】
図10(E)はステップS911で非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、ステップS950で設定した非光沢性ベースパターンOCデータ505と異なるような階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを非光沢性偽装パターン503として配置する。
【0085】
図10(F)はステップS913でベースOCデータ500、非光沢性ベースパターンOCデータ505、隠蔽情報パターン501、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503の各OC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。
【0086】
各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。
【0087】
なお、パターンデータの上書き重ね合わせ合成とは、先に配置されているOCデータの画像ブロックに対応するピクセルを、後に配置されるOCデータの画像ブロックに対応するピクセルで置き換えることを意味する。
【0088】
実施形態2のパターンデータの上書き重ね合わせ合成は、ベースOCデータ500、非光沢性ベースOCデータ505、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504、隠蔽情報パターン501の順に行うこととする。つまり、ベースOCデータ500が重ね合わせの最下層、隠蔽情報パターン501が重ね合わせの最上層となるため、OCデータ上の隠蔽情報パターン501に対応するピクセルはP(zero):OCゼロ階調の階調数になる。
【0089】
図11は、実施形態2によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示している。実施形態1との違いは印刷媒体中の隠蔽情報パターンが非光沢性ベースOCの領域に配置されているところである。
【0090】
図11(A)のように印刷媒体を正面から見た場合、印刷されたOCの表面状態はほとんど視認できない。図11(B)のように印刷媒体を少し傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態が少し視認できる。
【0091】
図11(C)のように印刷媒体を更に傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態は視認できるが、この時点では印刷媒体に印刷した隠蔽情報は偽装パターンによって偽装されているため解読することは困難である。
【0092】
図12は実施形態2におけるOC印刷を施した印刷媒体の断面図である。実施形態1との違いは印刷画像上の隠蔽情報パターン801が非光沢性ベースOC805の領域に配置されていることである。
【0093】
図12(A)は印刷後そのままの状態、図12(B)は印刷後に隠蔽情報パターン501配置箇所を消しゴム等で擦り、隠蔽情報パターン501に相当する部分の印刷色を形成している染料を除去し、隠蔽情報が解読できる状態にしたものである
下記に示す各パターンのOC断面の厚みは、図6の1ドットの印刷階調数と転写後のOC厚みの特性曲線で説明できる。詳細は実施形態1と同じであるので省略する。
【0094】
805:非光沢ベースOC断面
801:隠蔽情報パターンの画像ブロックに対応するOC断面
802:光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面
803:非光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面
各パターンの厚みと光沢性が揃っていないため、印刷媒体を様々な角度から見て印刷媒体表面の光の反射状態が変わっても隠蔽情報は偽装パターンに紛れて見えないため、隠蔽情報の解読は困難となる。
【0095】
図1に実施形態2におけるOC印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報パターンを視覚的に示している。隠蔽情報パターンの見え方は実施形態1とほぼ同様である。
【0096】
図12(A)のように印刷後そのままの状態において印刷媒体を正面から見た場合、隠蔽情報はほとんど視認できない。視覚的に表現すると図1(A)のように見える。図12(B)のように隠蔽情報を解読できる状態において印刷媒体を正面から見た場合、「ABC」という隠蔽情報パターンが見えて隠蔽情報が解読できたことになる。視覚的に表現すると図1(B)のように見える。なお、図12(B)のように隠蔽情報を解読できる状態においては、印刷媒体を様々な角度から見ても隠蔽情報パターンが解読可能となる。
【0097】
[実施形態3]次に、実施形態3のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
実施形態1、2では、隠蔽情報や偽装パターンが正方形状の画像ブロックから形成されるものとして説明したが、画像ブロックの各ドットは正方形状に限定されるものではなく、複数ピクセルからなる任意の形状であればよい。以下では、実施形態3として、画像ブロックが正方形、円形、三角形の場合について説明する。
【0099】
なお、実施形態3のサーマルプリンタによる印刷処理については図4と同様であるので、説明は省略する。
【0100】
図13(A)はベースOCデータ1300を全面配置した状態を概念的に示している。ベースOCデータ1300は印刷媒体全面を覆うように転写されるため、印刷媒体全面に対応するドット数に対して1ドット印刷階調数を一定階調数Pbaseに設定する。Pbaseとは、図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、通常印刷のOC転写安定性と表面光沢性が高くなるような階調数である。
【0101】
図13(B)は隠蔽情報パターンデータを配置した状態を概念的に示している。正方形、円形、三角形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(zero):OCゼロ階調範囲にあり、印刷媒体にOCが転写しないような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを隠蔽情報パターン1301として配置する。実施形態3では文字「ABC」、数字「123」、絵「動物」を隠蔽情報とする。
【0102】
図13(C)は光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形、円形、三角形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseと異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを光沢性偽装パターン1302として配置する。ここで、隠蔽情報数字「123」を偽装するように、数字「48767」を重ねて配置している。
【0103】
図13(D)は非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形、円形、三角形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを非光沢性偽装パターン1303として配置する。ここで、隠蔽情報数字「123」を偽装するように、数字「413295」を重ねて配置している。
【0104】
図13(E)は非光沢性ラインパターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。非光沢性ラインパターン1304の1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。
【0105】
図13(F)はベースOCデータ1300、隠蔽情報パターン1301、光沢性偽装パターン1302、非光沢性偽装パターン1303、非光沢性ラインパターン1304のOC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。上書き重ね合わせ合成については、実施形態1と同じであるので説明を省略する。
【0106】
図14は、実施形態3によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示している。
【0107】
図14(A)のように印刷媒体を正面から見た場合、印刷されたOCの表面状態はほとんど視認できない。図14(B)のように印刷媒体を少し傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態が少し視認できる。
【0108】
図14(C)のように印刷媒体を更に傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態は視認できるが、この時点では印刷媒体に印刷した隠蔽情報は偽装パターンによって偽装されているため解読することは困難である。
【0109】
印刷後そのままの状態において印刷媒体を正面から見た場合、隠蔽情報はほとんど視認できない。視覚的に表現すると図15(A)のように見える。印刷後に隠蔽情報パターン1301の配置箇所を消しゴム等で擦り、隠蔽情報パターン1301に相当する部分の印刷色を形成している染料を除去すると、隠蔽情報が解読できる状態になる。
【0110】
隠蔽情報を解読できる状態において印刷媒体を正面から見た場合、文字「ABC」、数字「123」、絵「動物」という隠蔽情報パターンが見えて隠蔽情報が解読できたことになる。視覚的に表現すると図15(B)のように見える。
【0111】
以上の実施形態3によれば、オーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれた隠蔽情報や偽装パターンの各画像ブロックは正方形、円形、三角形などの任意の形状が適用可能である。
【0112】
また、本発明のオーバーコート印刷によって印刷媒体上に埋め込まれる隠蔽情報は文字に限らず、数字、絵でも適用可能である。また、文字、数字、絵以外にも記号、図形、写真など、画像ブロックとして表現できる2次元パターンであれば、本発明を適用可能である。
【0113】
更に実施形態3では隠蔽情報数字「123」を他の数字を偽装パターンとして隠蔽することを説明した。つまり、偽装パターンとしてあえて隠蔽情報の解読を妨げるようなパターンを用いることで偽装強度が増し、隠蔽情報の解読をより困難にすることができる。偽装パターンは数字に限らず、意味のある文字、絵、記号、写真でも適用可能である。
【0114】
[実施形態4]次に、実施形態4のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0115】
上記実施形態1乃至3では、偽装パターンの1ドット印刷階調数階調数を下記のように設定しオーバーコート印刷する方法について説明した。
【0116】
光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(gloss)範囲内で1つの任意階調数を設定。
【0117】
非光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(mat)範囲内で1つの任意階調数を設定。
【0118】
しかしながら、本発明を適用可能な偽装パターンの1ドット印刷階調数階調数は、P(gloss)、P(mat)それぞれに1つの任意階調数を設定する(偽装パターンの分散数1と呼ぶ)ように限定されるものではない。P(gloss)、P(mat)それぞれに2つ以上の任意階調数を設定する(偽装パターンの分散数2以上と呼ぶ)ことが可能である。
【0119】
実施形態4では、偽装パターンの1ドット印刷階調数階調数は、下記のように偽装パターンの分散数を2に設定し、OC印刷する方法について説明する。
【0120】
光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(gloss)範囲内で2つの任意階調数を設定。
【0121】
非光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(mat)範囲内で2つの任意階調数を設定。
【0122】
なお、実施形態4のサーマルプリンタによる印刷処理については基本的に図4と同様であり、異なる点は、ステップS410、S411において、P(gloss)、P(mat)それぞれに1つでなく、2つの任意階調数を設定するところである。
【0123】
ステップS410:光沢性偽装パターンOCデータ配置
ステップS411:非光沢性偽装パターンOCデータ配置
ここで、図16を参照して、実施形態4のサーマルプリンタのOC印刷データ処理による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順について説明する。
【0124】
図16(A)はベースOCデータ1600を全面配置した状態を概念的に示している。ベースOCデータ1600は印刷媒体全面を覆うように転写されるため、印刷媒体全面に対応するドット数に対して1ドット印刷階調数を一定階調数Pbaseに設定する。Pbaseとは、図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、通常印刷のOC転写安定性と表面光沢性が高くなるような階調数である。
【0125】
図16(B)は隠蔽情報パターンデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(zero):OCゼロ階調範囲にあり、印刷媒体にOCが転写しないような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを隠蔽情報パターン1601として配置する。実施形態4では「ABC」という文字を隠蔽情報とする。
【0126】
図16(C)は1つ目の光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseと異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを光沢性偽装パターン1(1602)として配置する。
【0127】
図16(D)は2つ目の光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseおよび光沢性偽装パターン1(1602)の階調数と異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを光沢性偽装パターン2(1603)として配置する。
【0128】
図16(E)は1つ目の非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを非光沢性偽装パターン1(1604)として配置する。
【0129】
図16(F)は2つ目の非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、非光沢性偽装パターン1(1604)の階調数と異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを非光沢性偽装パターン2(1605)として配置する。
【0130】
図16(G)は下記OC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。上書き重ね合わせ合成については、実施形態1とほぼ同じであるので説明を省略する。
【0131】
1600:ベースOCデータ
1601:隠蔽情報パターン
1602:光沢性偽装パターン1(第1のパターン)
1603:光沢性偽装パターン2(第2のパターン)
1604:非光沢性偽装パターン1(第1のパターン)
1605:非光沢性偽装パターン2(第2のパターン)
以上の実施形態4によれば、印刷媒体中の任意部分に隠蔽情報を埋め込んで印刷する際に、偽装パターンデータの各OC画像ブロックの階調数を分散する。すると、各OCパターンの厚みと光沢性がより揃わないように印刷されることになる。そのため、印刷媒体を様々な角度から見た場合の印刷媒体表面の反射状態がより乱されて偽装パターンの偽装強度が増し、隠蔽情報の解読をより困難にできる。
【0132】
[実施形態5]次に、実施形態5のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0133】
上述した実施形態1乃至4では各OC画像ブロックを複数ピクセルからなる任意の形状とし、各パターンのOCデータに異なる1ドット印刷階調数を設定してOC印刷する方法について説明した。
【0134】
サーマルプリンタの基本的性質として、OC転写制御は発熱抵抗体に印加するエネルギー=1ドット印刷階調数により行っているため、実際のサーマルプリンタではOC印刷データ形状と実際に転写されるOC転写形状とに誤差が生じる場合がある。差異が生じる主な原因はサーマルプリンタの動作方法とサーマルヘッドの熱特性にある。
【0135】
印刷媒体を副走査方向に搬送しながら発熱抵抗体を選択的に通電してOCを転写するのであるが、その際に発熱抵抗体に通電するときに発熱の立上りおよび立下り特性があるために、OCを転写するエネルギーが副走査方向に遅れる性質がある。
【0136】
ある発熱抵抗体を連続して発熱すると、その発熱抵抗体の自己蓄熱により副操作方向に蓄熱が尾を引く傾向もある。また、ある発熱抵抗体の発熱が主走査方向に隣接する他の発熱抵抗体に伝播し、発熱抵抗体に与えられるエネルギーが変化する性質もある。
【0137】
そこで、実施形態5では、上述した現象に起因して発生するOC印刷後の形状誤差が小さくなるようにOC印刷データを補正するOCピクセル補正方法について、図17および図18を参照しつつ説明する。
【0138】
図17(A)および(C)は隠蔽情報パターンを、P(gloss):光沢性OC階調範囲に設定したベースOCデータ上に印刷する場合の各OC画像ブロックを、ピクセルレベルに拡大して説明する図である。
【0139】
図17(B)および(D)は、図17(A)および(C)の各OC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0140】
図17(A)および(C)の各OC画像ブロックを囲う破線は、OCピクセル補正前の画像ブロック領域である。また、図17(B)および(D)の各OC画像ブロックに相当する領域を囲う破線は、OC印刷により得られるべき理想的なOC印刷結果の領域である。
【0141】
図17(A)の各OC画像ブロックはOCピクセル補正前の画像ブロック、図17(C)はOCピクセル補正後のOC画像ブロックである。説明をより具体的にするため、各OC画像ブロックの形状と1ドット印刷階調数Pを下記のように設定する。
【0142】
1ドット印刷階調数P:0〜255階調
1700:光沢性ベースOCデータ P=170
1701:隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1702:隠蔽情報パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1703:非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=255
1704:非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=230
図17(B)は、図17(A)の各OCピクセル補正前のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0143】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1701に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはOCゼロであるはずの領域にOC被り部分1711が発生している。
【0144】
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1702に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはOCゼロであるはずの領域にOC被り部分1712が発生している。
【0145】
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1703に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=255に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1713が発生している。
【0146】
非光沢性偽装パターン2正方形画像ブロック1704に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=230に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1714が発生している。
【0147】
上記OC被り部分1711、OC被り部分1712、OC光沢変化部分1713、OC光沢変化部分1714が発生するため、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定したはずの各OCに形状やサイズ、周辺光沢感の差異が生じる。
【0148】
この各OCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異が視覚的に捉えられてしまうと、偽装パターンの偽装強度が低下してしまう。これらOCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異を低減するようにOCピクセル補正を行う例を図17(C)に示している。
【0149】
補正前のOC画像ブロックを示す図17(A)に対して、下記のようにOCピクセルの補正値を設定する。
【0150】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1701→補正ピクセル1731
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1702→補正ピクセル1732
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1703→補正ピクセル1733
非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1704→補正ピクセル1734
補正ピクセル1731はP=0とP=20からなり、サーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1701の手前に設定する。補正ピクセル1731によりサーマルヘッドの発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少させ、OC被り部分1711を低減することができる。
【0151】
補正ピクセル1732はP=0から成り、サーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1702の手前に設定する。補正ピクセル1732により発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少させ、OC被り部分1712を低減することができる。
【0152】
補正ピクセル1733はP=230からなり、非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1703のサーマルヘッド副走査方向両端に設定する。補正ピクセル1733により発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善し、主走査方向に隣接する発熱抵抗体が相互に及ぼし合う熱の影響を減少させ、OC光沢変化部分1713を低減することができる。
【0153】
補正ピクセル1734はP=220から成り、非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1704の全周囲に設定する。補正ピクセル1734により発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善し、主走査方向に隣接するが相互に及ぼし合う熱の影響を減少させ、OC光沢変化部分1714を低減することができる。
【0154】
以上説明した図17(C)の各OCピクセル補正後のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示しているのが図17(D)である。図17(B)で発生していたOC被り部分1711,1712、OC光沢変化部分1713,1714が低減し、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定した各OCの形状やサイズ、周辺光沢感が視覚的に揃うように見えるようになる。
【0155】
図18(A)および(C)は隠蔽情報パターンを、P(mat):非光沢性OC階調範囲に設定したベースOCデータ上に印刷する場合の各OC画像ブロックを、ピクセルレベルに拡大して示している。
【0156】
図18(B)および(D)は図18(A)および(C)の各OC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0157】
図18(A)および(C)の各OC画像ブロックを囲う破線は、OCピクセル補正前の画像ブロック領域である。また、図18(B)および(D)の各OC画像ブロックに相当する領域を囲う破線は、OC印刷により得られるべき理想的なOC印刷結果の領域である。
【0158】
図18(A)の各OC画像ブロックはOCピクセル補正前の画像ブロック、図18(C)はOCピクセル補正後のOC画像ブロックである。説明をより具体的にするため、各OC画像ブロックの形状と1ドット印刷階調数Pを下記のように設定する。
1ドット印刷階調数P:0〜255階調
1800:非光沢性ベースOCデータ P=255
1801:隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1802:隠蔽情報パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1803:非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=230
1804:非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=230
図18(B)は、図18(A)の各OCピクセル補正前のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0159】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受ける。このため、理想的にはOCゼロである領域にOC被り部分1811、理想的にはP=255に対応する非光沢性ベースOCである領域にOC光沢変化部分1821が発生している。
【0160】
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1802に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受ける。このため、理想的にはOCゼロである領域にOC被り部分1812、理想的にはP=255に対応する非光沢性ベースOCである領域にOC光沢変化部分1822が発生している。
【0161】
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=230に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1813が発生している。
【0162】
非光沢性偽装パターン2正方形画像ブロック1804に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=230に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1814が発生している。
【0163】
上記OC被り部分1811,1812、OC光沢変化部分1813,1814,1821,1822が発生するため、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定した各OCに形状やサイズ、周辺光沢感に差異が生じる。
【0164】
これらOCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異が視覚的に捉えられてしまうと、偽装パターンの偽装強度が低下してしまう。この各OCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異を低減するようにOCピクセル補正を行う例を図18(C)に示している。
【0165】
補正前のOC画像ブロック図18(A)に対して、下記のようにOCピクセル補正値を設定する。
【0166】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801→補正ピクセル1831
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1802→補正ピクセル1832
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803→補正ピクセル1833
非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1804→補正ピクセル1834
補正ピクセル1831はP=0、P=10、P=20、P=60から成る。
【0167】
P=0、P=10、P=20はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801の手前に設定する。P=60はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801の後ろ側に、隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801の一部を置き換えるように設定する。
【0168】
補正ピクセル1831のうち、P=0、P=10、P=20の補正ピクセルにより発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少し、P=60の補正ピクセルにより発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善させる。その結果、OC被り部分1811、OC光沢変化部分1821を低減することができる。
【0169】
補正ピクセル1832はP=0、P=60から成る。
【0170】
P=0はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1802の手前に設定する。P=60はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1802の後ろ側に、隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1802の一部を置き換えるように設定する。補正ピクセル1832のうち、P=0の補正ピクセルにより発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少し、P=60の補正ピクセルにより発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善させる。その結果、OC被り部分1812、OC光沢変化部分1822を低減することができる。
【0171】
補正ピクセル1833はP=220からなり、サーマルヘッド副走査方向から見て非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803の前側に、非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803の一部を置き換えるように設定する。補正ピクセル1833により発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少させ、OC光沢変化部分1813を低減することができる。
【0172】
補正ピクセル1834はP=220からなり、非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1804の全周囲に設定する。補正ピクセル1834により、サーマルヘッド副走査方向から見て手前では発熱抵抗体の蓄熱による影響を低減し、サーマルヘッド副走査方向から見て後ろ側では発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善させる。その結果、OC光沢変化部分1814を低減することができる。
【0173】
以上説明した図18(C)の各OCピクセル補正後のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示しているのが図18(D)である。図18(B)で発生していたOC被り部分1811,1812、OC光沢変化部分1813,1814,1821、1822が低減し、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定した各OCの形状やサイズ、周辺光沢感が視覚的に揃うように見える。
【0174】
以上の実施形態5では、OC画像ブロックにOCピクセル補正値を設定し、実際に転写される各々異なる階調数に設定したOC転写後の形状誤差が小さくなるようにOC印刷データを補正する方法について説明した。
【0175】
実施形態5ではOCゼロの隠蔽情報パターンと非光沢性偽装パターンのOC画像ブロックを例として説明したが、本発明のOCピクセル補正方法は光沢性偽装パターンにも適用可能である。
【0176】
実施形態5ではOC画像ブロックを8×8ピクセルの正方形および8×8ピクセルの円形として説明したが、本発明は上記ピクセル数および形状に限定されるものではない。OC画像ブロックを任意のピクセル数、任意の形状にしても本発明を適用可能である。
【0177】
実施形態5で説明したOC補正ピクセルの配置およびOC補正ピクセルの1ドット印刷階調数は概念を示すものである。OC補正ピクセルの配置およびOC補正ピクセルの1ドット印刷階調数は、画像処理部204での画像処理方法や、印刷エンジン213のコンポーネントの1つであるサーマルヘッドの特性によって適宜調整、変更されるものである。
【0178】
要するに、本発明は、各OC画像ブロックに設定した1ドット印刷階調数に対するサーマルヘッドの特性の影響によるOC転写後の形状誤差が小さくなるようにOC補正ピクセルを設定すれば適用可能である。
【0179】
[他の実施形態]本実施形態のOC印刷データ処理は画像処理部204で行うことを例に説明したが、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上記実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタにおいて印刷画像上に転写するオーバーコート印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭などにおいてデジタルカメラにより取得した画像データやコンピュータで加工した画像データをプリンタを用いて専用の印刷媒体に画像をプリントして写真を作成する、所謂、ホームラボが行われている。ホームラボには印刷色の階調表現に優れるサーマルプリンタが多く用いられている。
【0003】
一方、サーマルプリンタのサーマルヘッドは、発熱抵抗体が一列に形成されて構成される(この一列方向を主走査方向、またはサーマルヘッドの長手方向とする)。
【0004】
1画素(1ドット)の階調性は、1画素中に昇華させるインクリボンの染料の量を制御することで実現している。染料昇華量の制御は、上記発熱抵抗体に印加するエネルギーを制御することで実現している。
【0005】
画像データに応じた印刷データに従って、印刷媒体を印刷方向に搬送しながら(印刷媒体搬送方向を副走査方向とする)、上記発熱抵抗体を選択的に通電することでインクリボンに染料を昇華させて画素を形成する。
【0006】
インクリボンは印刷媒体に印刷色を与えるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の染料層と、印刷画像を保護するオーバーコート層(OC)からなる。
【0007】
インクリボンと印刷媒体をサーマルヘッドで圧接し、印刷媒体上に発熱抵抗体の主走査方向画素数×副走査方向画素数の面積に対応するY、M、C画素を順次走査で昇華して印刷色を構成する。その後、OCを印刷画像上に転写し、上記昇華したY、M、Cからなる印刷色を保護する。
【0008】
サーマルプリンタにより転写するOCは、上記発熱抵抗体に印加するエネルギーを制御することで、その厚みおよび表面状態を変更可能である。
【0009】
特許文献1には、OCの光沢の有無を任意に選択するプリンタ装置が記載されており、サーマルヘッドに対する通電を制御してOCに供給される熱量を一定に維持しながらOCに対する加熱温度を制御する。OCに対する加熱温度を変更すると、OCの表面状態が変わり、OC表面での乱反射の程度が変わる。これにより、印刷物の光沢の有無を任意に選択できる。
【0010】
特許文献2には、画像情報に関連する付帯情報をOCに透かし文字として形成する方法が記載されており、印刷媒体のファイル等から画像情報を受け取ると共に、当該画像情報に関連する付帯情報を入手する。そして、画像情報を印刷媒体に印刷した後、転写ヘッドへの印加エネルギーを制御して、フィルム状シートの光沢度を変化させ、転写ヘッドへの印加エネルギーを制御して、フィルム状シートの光沢度を変化させる。これにより、画像情報に関連する付帯情報を当該シート上に透かし文字や記号等で形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−012996号公報
【特許文献2】特開2002−240402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1では、印刷物の光沢の有無を制御するのみで、印刷媒体に情報を隠蔽することについては考慮されていない。
【0013】
上記特許文献2では、プリント画像の品位を落とすことなく、画像情報に関連する付帯情報を透かし文字として印刷媒体表面に形成するものである。画像情報に関連する付帯情報を印刷媒体表面の光沢度の差として形成して情報を目視可能にする方法であって、情報を隠蔽するものではない。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、サーマルプリンタのオーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれる隠蔽情報を視認できないように偽装するオーバーコート印刷技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るサーマルプリンタは、インクを印刷媒体に転写して画像を印刷するサーマルプリンタにおいて、染料層のインクを前記印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写する印刷手段と、前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれた隠蔽情報の近傍に偽装パターンを転写することで、当該隠蔽情報を視認できないように偽装でき、当該隠蔽情報の隠匿性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施形態のオーバーコート印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報を視覚的に示した図。
【図2】本実施形態のサーマルプリンタの構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態のサーマルプリンタのサーマルヘッド電源供給部とライン発熱抵抗体、駆動用ICを含むブロック図。
【図4】実施形態1のサーマルプリンタによる印刷処理を示すフローチャート。
【図5】実施形態1による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図6】実施形態1のオーバーコート印刷処理による1ドット印刷階調数とオーバーコート層厚みの特性曲線を例示する図。
【図7】実施形態1によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示した図。
【図8】実施形態1によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体の断面図。
【図9】実施形態2のサーマルプリンタによる印刷処理を示すフローチャート。
【図10】実施形態2による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図11】実施形態2によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示した図。
【図12】実施形態2によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体の断面図。
【図13】実施形態3による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図14】実施形態3によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示した図。
【図15】実施形態3のオーバーコート印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報を視覚的に示した図。
【図16】実施形態4による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順を説明する図。
【図17】実施形態5による補正前後の光沢性OCデータのピクセル配置及び印刷後の印刷媒体の様子を視覚的に示した図。
【図18】実施形態5による補正前後の非光沢性OCデータのピクセル配置及び印刷後の印刷媒体の様子を視覚的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、後述する各実施形態の一部を適宜組み合わせて構成してもよい。
【0019】
[実施形態1]実施形態1のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。
【0020】
最初に、図2を参照して、サーマルプリンタの構成について説明する。
【0021】
図2において、201はサーマルプリンタ全体の制御を司るCPU(Central PrOCessing Unit)である。202はCPU201のワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)である。203はCPU201の処理手順を記憶しているROM(Read Only Memory)であり、例えばフラッシュメモリなどの書き換えが可能な不揮発性メモリで構成される。204は画像処理部であり、デジタル画像データ等を画面表示可能なデータに変換する処理、画像データ内の顔パーツ及び顔検出処理に用いられる。205は各種表示を行うための表示制御部である。206はLCD(Liquid Crystal Display:液晶表示器)であり、サーマルプリンタの画面に画像データや操作情報などの映像を表示するために使用する。207は外部記憶装置の制御部であり、メモリーカードソケット208に挿入されたカード記憶媒体に記憶されているデジタルデータの読み込み及び記憶媒体へのデジタルデータの書き出しの制御を行う。209は操作入力部であり、操作ボタン210、ポインティングデバイス211の操作情報をCPU201へ伝える。なお、ポインティングデバイス211は座標情報を取得可能なデバイスであれば良く、タッチパネルやマウスに相当するデバイスである。212はサーマルプリンタの印刷機能制御部であり、印刷エンジン213でデジタルデータのプリントを行う。214はUSBインターフェースに代表されるような外部インターフェースの制御部であり、外部インターフェースコネクタ215を介して他の装置と接続することができる。216は上記各要素を通信可能に接続するバスである。
【0022】
次に、図3を参照して、図2に示す印刷エンジン213を構成するサーマルヘッドについて説明する。
【0023】
図3において、サーマルヘッドはライン発熱抵抗体300とその駆動用IC301で構成されている。ライン発熱抵抗体300にはヘッド電圧が印加されており、ヘッド駆動用IC301には電源VDDが印加されている。ライン発熱抵抗体300はサーマルヘッドの主走査方向ドットの数だけ一列に形成されており、CLK、LATCH、STROBE信号及びDATA信号の組み合わせで通電する発熱抵抗体を決定する。図2の画像処理部204で生成されたCLK、LATCH、STROBE信号及びDATA信号をヘッド駆動用IC301へ入力することで任意のドットを任意のタイミングで通電することが可能である。
【0024】
サーマルプリンタの1ドット濃度階調数は、副走査方向一定時間内の印刷パルスにより発生する1ドットへの投入エネルギーにより表現することができる。例えば、0から511濃度階調を表現するとして、ある1ドットの副走査方向一定時間内の印刷パルス数が0であれば0エネルギーに対応するドット階調濃度となり、印刷パルス数が511であればその印加エネルギーに対応するドット階調濃度となる。
【0025】
本実施形態並びにそれ以降において、副走査方向一定時間内の印刷パルス数のことを、1ドット印刷階調数と換言して説明を進める。このように、サーマルプリンタでは、1ドット印刷階調数によりインクリボンのインク転写量が制御可能であるため、カラーインクである染料層だけでなく、印刷画像を保護するオーバーコート層(OC)のインクの転写量も制御可能である。なお、インクリボンは印刷媒体に印刷色を与えるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の染料層と、印刷画像を保護するOCからなる。
【0026】
そして、OCのインク転写量を制御して、印刷画像上の任意部分のOC転写量をゼロ階調にすると、その部分が隠蔽情報となって、印刷後の印刷媒体表面を消しゴム等で擦ったときに隠蔽情報部分の染料層が剥がれ落ち、印刷色が消える。OC転写部分とOC転写量ゼロの部分とでは、印刷媒体正面から目視した場合の反射率の違いが小さいため、印刷媒体表面を正面から目視した限りでは前者と後者の差は目立ちにくい。この性質を利用して、任意部分をOC転写量ゼロの部分として印刷処理することで印刷媒体に隠蔽情報を印刷することができる。印刷後の印刷媒体表面を消しゴム等で擦るとOC転写量ゼロの部分の印刷色が消え、印刷媒体に印刷した隠蔽情報が現れて解読することができる。
【0027】
本実施形態のサーマルプリンタでは、OC転写量ゼロ(ゼロ階調)として情報を印刷することで隠蔽情報を印刷可能である。
【0028】
次に、図4を参照して、実施形態1のサーマルプリンタによる画像データの印刷処理について説明する。なお、印刷する画像データはサーマルプリンタのメモリーカードソケット208に挿入されたメモリカードに記憶されているものとする。また、図4に示す処理は、サーマルプリンタの電源投入時に、ROM203に格納されているファームウェアプログラムを、CPU201がRAM202に展開することで実行される。
【0029】
図4において、CPU201は、メモリーカードソケット208に挿入されたメモリカードから画像データを読み出し、画像処理部204でイエロー・マゼンタ・シアンの各印刷データを生成するための画像処理を施す(S401)。次に、CPU201は、イエロー印刷データを生成し(S402)、イエロー印刷を行う(S403)。次いで、マゼンタ印刷データを生成し(S404)、マゼンタ印刷(S405)、シアン印刷データを生成し(S406)、シアン印刷を行う(S407)。
【0030】
なお、本実施形態の説明に用いるイエロー・マゼンタ・シアンの各印刷データとは、画像処理部204での画像処理後に、印刷機能制御部212へ送出されるデジタルデータのことである。
【0031】
イエロー・マゼンタ・シアンの各色の印刷が終了したら、CPU201は、図2の画像処理部204によりオーバーコート印刷データ(以下、OC印刷データ)処理を実行する。
【0032】
ステップS408では、一定階調数のベースOCデータを全面に配置する。
【0033】
ステップS409では、隠蔽情報パターンOCデータの配置を行う。
【0034】
ステップS410では、光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0035】
ステップS411では、非光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0036】
ステップS412では、非光沢性ラインパターンOCデータの配置を行う。
【0037】
ステップS413では、ステップS408からS412で配置したOCデータを上書き及び重ね合わせて合成する。
【0038】
ステップS414では、ステップS412で合成したOCデータからOC印刷データを生成し、ステップS415でOC印刷を行う。
【0039】
なお、本実施形態の説明に用いるOC印刷データとは、画像処理部204でのOC印刷データ処理後に印刷機能制御部212へ送出されるデジタルデータのことである。
【0040】
ここで、図5及び図6を参照して、ステップS408からS412でのOC印刷データ処理による隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンとその印刷手順について説明する。
【0041】
なお、本実施形態の説明で用いるピクセルとは画像処理上の最小画素単位のことである。ピクセルと発熱抵抗体の1ドットは等しく対応していても良いし、任意比率により対応していても良い。
【0042】
図5(A)はステップS408でベースOCデータ500を全面配置した状態を概念的に示している。なお、本実施形態の説明に用いる光沢性ベースOCデータとは、有限の厚みで印刷媒体の一部または全部を覆うように印刷されるOCのデータである。
【0043】
ベースOCデータ500は印刷媒体全面を覆うように転写されるため、印刷媒体全面に対応するドット数に対して1ドット印刷階調数を一定階調数Pbaseに設定する。Pbaseとは、図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、通常印刷のOC転写安定性と表面光沢性が高くなるような階調数である。
【0044】
図5(B)はステップS409で隠蔽情報パターンデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるドット(以下、画像ブロック)を設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(zero):OCゼロ階調範囲にあり、印刷媒体にOCが転写しないような階調数に設定する。そして、予め設定された画像ブロックを隠蔽情報パターン501として配置する。実施形態1では「ABC」という文字を隠蔽情報とする。
【0045】
図5(C)はステップS410で光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseと異なるような階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを光沢性偽装パターン502として配置する。
【0046】
図5(D)はステップS411で非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを非光沢性偽装パターン503として配置する。
【0047】
図5(E)はステップS412で非光沢性ラインパターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。非光沢性ラインパターン504は印刷画像上の隠蔽情報パターン501の配置箇所を明示するためのラインパターンである。非光沢性ラインパターン504の1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。
【0048】
図5(F)はステップS413でベースOCデータ500、隠蔽情報パターン501、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504の各OC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。
【0049】
なお、パターンデータの上書き重ね合わせ合成とは、先に配置されているOCデータの画像ブロックに対応するピクセルを、後に配置されるOCデータの画像ブロックに対応するピクセルで置き換えることを意味する。
【0050】
実施形態1のパターンデータの上書き重ね合わせ合成は、ベースOCデータ500、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504、隠蔽情報パターン501の順で実行されることとする。
【0051】
つまり、ベースOCデータ500が重ね合わせの最下層、隠蔽情報パターン501が重ね合わせの最上層となるため、OCデータ上の隠蔽情報パターン501に対応するピクセルはP(zero):OCゼロ階調の階調数になる。
【0052】
図7は、実施形態1によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示している。
【0053】
図7(A)のように印刷媒体を正面から見た場合、印刷されたOCの表面状態はほとんど視認できない。図7(B)のように印刷媒体を少し傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態が少し視認できる。
【0054】
図7(C)のように印刷媒体を更に傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態は視認できるが、この時点では印刷媒体に印刷した隠蔽情報は偽装パターンによって偽装されているため解読することは困難である。
【0055】
図8は実施形態1におけるOC印刷を施した印刷媒体の断面図である。印刷媒体100はベースフィルム810、染料受容層811からなり、その上層にOC812が転写した状態となっている。染料受容層811にはインクリボンから昇華した染料813が存在し印刷色を形成している。
【0056】
図8(A)は印刷後そのままの状態、図8(B)は印刷後に隠蔽情報パターン501配置箇所を消しゴム等で擦り、隠蔽情報パターン501に相当する部分の印刷色を形成している染料を除去し、隠蔽情報が解読できる状態としたものである。
【0057】
下記に示す各パターン断面のOC厚みは、図6の1ドット印刷階調数と転写後のOC厚みの特性曲線で説明することができる。
【0058】
800:ベースOC断面 P(base)
801:隠蔽情報パターンの画像ブロックに対応するOC断面 P(zero)
802:光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面 P(gloss)
803:非光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面 P(mat)
P(zero):OCゼロ階調範囲以外においては、1ドット印刷階調数が低いほど転写後のOC厚みは大きく、1ドット印刷階調数が高いほど転写後のOC厚みは小さくなる。
【0059】
P(zero):OCゼロ階調範囲とP(gloss):光沢性OC階調範囲の間にはOCの転写が不安定となる転写不定区間があるため、OC印刷階調数を制御する際は該転写不定区間に値する印刷階調数は取らないこととする。
【0060】
また、P(gloss):光沢性OC階調範囲とP(mat):非光沢性OC階調範囲の間にはOCの光沢性が不安定となる光沢不定区間があるため、OC印刷階調数を制御する際は該光沢不定区間に値する印刷階調数は取らないこととする。
【0061】
各パターンの厚みと光沢性が揃っていないため、印刷媒体を様々な角度から見て印刷媒体表面の光の反射状態が変わっても隠蔽情報は偽装パターンに紛れて見えないため、隠蔽情報の解読は困難となる。
【0062】
図1に実施形態1におけるOC印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報パターンを視覚的に示している。
【0063】
図8(A)のように印刷後のままの状態で印刷媒体を正面から見た場合、隠蔽情報はほとんど目視できない。視覚的に表現すると図1(A)のように見える。図8(B)のように隠蔽情報を解読できる状態において印刷媒体を正面から見た場合、「ABC」という隠蔽情報パターンが見えて隠蔽情報が解読できたことになる。視覚的に表現すると図1(B)のように見える。なお、図8(B)のように隠蔽情報を解読できる状態においては、印刷媒体を様々な角度から見ても隠蔽情報パターンが解読可能となる。
【0064】
以上の実施形態1によれば、オーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれた隠蔽情報の近傍に偽装パターンを埋め込むことで、印刷媒体の如何なる方向からの光入反射および目視に対して隠蔽情報を偽装でき、当該隠蔽情報の隠匿性を向上できる。
【0065】
また、偽装データは印刷媒体中の任意部分に隠蔽情報を埋め込んだことを明示する効果もある。
【0066】
[実施形態2]次に、実施形態2のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
実施形態1では、ベースOCデータ500、隠蔽情報パターン501、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504を合成してOC印刷データを生成した。これに対して、実施形態2では、上記非光沢性ラインパターン504に代えて、非光沢性ベースパターン505を合成してOC印刷データを生成する。
【0068】
なお、非光沢性ベースパターンOCデータとは、有限の厚みで印刷媒体の一部または全部を覆うように印刷されるOCであって、特に印刷媒体表面に光沢性のないOCを転写するデータである。
【0069】
ここで、図9を参照して、実施形態2のサーマルプリンタによる印刷処理について説明するが、基本的な処理の流れは図4と同様であるので、異なる点についてのみ説明する。また、図9に示す処理は、サーマルプリンタの電源投入時に、ROM203に格納されているファームウェアプログラムを、CPU201がRAM202に展開することで実行される。
【0070】
図9において、ステップS901からS907までは図4のS401からS407と同一の処理である。イエロー・マゼンタ・シアンの各色の印刷が終了したら、CPU201は、図2の画像処理部204によりOC印刷データ処理を実行する。
【0071】
ステップS908では、基準階調数のベースOCデータを全面に配置する。
【0072】
ステップS950では、非光沢性ベースパターンOCデータを配置する。
【0073】
ステップS909では、隠蔽情報パターンOCデータの配置を行う。
【0074】
ステップS910では、光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0075】
ステップS911では、非光沢性偽装パターンOCデータの配置を行う。
【0076】
ステップS913では、ステップS908からS911で配置したOCデータを上書き及び重ね合わせて合成する。
【0077】
ステップS914では、ステップS913で合成したOCデータからOC印刷データを生成し、ステップS915でOC印刷を行う。
【0078】
なお、本実施形態の説明に用いるOC印刷データとは、画像処理部204でのOC印刷データ処理後に印刷機能制御部212へ送出されるデジタルデータのことである。
【0079】
ここで、図10を参照して、ステップS908からS911でのOC印刷データ処理による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順について説明する。
【0080】
図10(A)はステップS908でベースOCデータ500を全面配置した状態を概念的に示しているが、実施形態1と同一のデータであるので説明は省略する。
【0081】
図10(B)はステップS950で非光沢性ベースパターンOCデータ505を配置した状態を概念的に示している。非光沢性ベースパターンOCデータ505は図10(C)に示すように、印刷媒体中の隠蔽情報パターン501の配置箇所を包含するように配置する。1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。
【0082】
図10(C)はステップ909で隠蔽情報パターンデータ501を配置した状態を概念的に示しているが、実施形態1と同一のデータであるので説明は省略する。
【0083】
図10(D)はステップS910で光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性をもって転写する階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを光沢性偽装パターン502として配置する。
【0084】
図10(E)はステップS911で非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなるOC画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、ステップS950で設定した非光沢性ベースパターンOCデータ505と異なるような階調数に設定する。そして、上記OC画像ブロックを非光沢性偽装パターン503として配置する。
【0085】
図10(F)はステップS913でベースOCデータ500、非光沢性ベースパターンOCデータ505、隠蔽情報パターン501、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503の各OC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。
【0086】
各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。
【0087】
なお、パターンデータの上書き重ね合わせ合成とは、先に配置されているOCデータの画像ブロックに対応するピクセルを、後に配置されるOCデータの画像ブロックに対応するピクセルで置き換えることを意味する。
【0088】
実施形態2のパターンデータの上書き重ね合わせ合成は、ベースOCデータ500、非光沢性ベースOCデータ505、光沢性偽装パターン502、非光沢性偽装パターン503、非光沢性ラインパターン504、隠蔽情報パターン501の順に行うこととする。つまり、ベースOCデータ500が重ね合わせの最下層、隠蔽情報パターン501が重ね合わせの最上層となるため、OCデータ上の隠蔽情報パターン501に対応するピクセルはP(zero):OCゼロ階調の階調数になる。
【0089】
図11は、実施形態2によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示している。実施形態1との違いは印刷媒体中の隠蔽情報パターンが非光沢性ベースOCの領域に配置されているところである。
【0090】
図11(A)のように印刷媒体を正面から見た場合、印刷されたOCの表面状態はほとんど視認できない。図11(B)のように印刷媒体を少し傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態が少し視認できる。
【0091】
図11(C)のように印刷媒体を更に傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態は視認できるが、この時点では印刷媒体に印刷した隠蔽情報は偽装パターンによって偽装されているため解読することは困難である。
【0092】
図12は実施形態2におけるOC印刷を施した印刷媒体の断面図である。実施形態1との違いは印刷画像上の隠蔽情報パターン801が非光沢性ベースOC805の領域に配置されていることである。
【0093】
図12(A)は印刷後そのままの状態、図12(B)は印刷後に隠蔽情報パターン501配置箇所を消しゴム等で擦り、隠蔽情報パターン501に相当する部分の印刷色を形成している染料を除去し、隠蔽情報が解読できる状態にしたものである
下記に示す各パターンのOC断面の厚みは、図6の1ドットの印刷階調数と転写後のOC厚みの特性曲線で説明できる。詳細は実施形態1と同じであるので省略する。
【0094】
805:非光沢ベースOC断面
801:隠蔽情報パターンの画像ブロックに対応するOC断面
802:光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面
803:非光沢性偽装パターンのOC画像ブロックに対応するOC断面
各パターンの厚みと光沢性が揃っていないため、印刷媒体を様々な角度から見て印刷媒体表面の光の反射状態が変わっても隠蔽情報は偽装パターンに紛れて見えないため、隠蔽情報の解読は困難となる。
【0095】
図1に実施形態2におけるOC印刷を施した印刷媒体の隠蔽情報パターンを視覚的に示している。隠蔽情報パターンの見え方は実施形態1とほぼ同様である。
【0096】
図12(A)のように印刷後そのままの状態において印刷媒体を正面から見た場合、隠蔽情報はほとんど視認できない。視覚的に表現すると図1(A)のように見える。図12(B)のように隠蔽情報を解読できる状態において印刷媒体を正面から見た場合、「ABC」という隠蔽情報パターンが見えて隠蔽情報が解読できたことになる。視覚的に表現すると図1(B)のように見える。なお、図12(B)のように隠蔽情報を解読できる状態においては、印刷媒体を様々な角度から見ても隠蔽情報パターンが解読可能となる。
【0097】
[実施形態3]次に、実施形態3のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
実施形態1、2では、隠蔽情報や偽装パターンが正方形状の画像ブロックから形成されるものとして説明したが、画像ブロックの各ドットは正方形状に限定されるものではなく、複数ピクセルからなる任意の形状であればよい。以下では、実施形態3として、画像ブロックが正方形、円形、三角形の場合について説明する。
【0099】
なお、実施形態3のサーマルプリンタによる印刷処理については図4と同様であるので、説明は省略する。
【0100】
図13(A)はベースOCデータ1300を全面配置した状態を概念的に示している。ベースOCデータ1300は印刷媒体全面を覆うように転写されるため、印刷媒体全面に対応するドット数に対して1ドット印刷階調数を一定階調数Pbaseに設定する。Pbaseとは、図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、通常印刷のOC転写安定性と表面光沢性が高くなるような階調数である。
【0101】
図13(B)は隠蔽情報パターンデータを配置した状態を概念的に示している。正方形、円形、三角形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(zero):OCゼロ階調範囲にあり、印刷媒体にOCが転写しないような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを隠蔽情報パターン1301として配置する。実施形態3では文字「ABC」、数字「123」、絵「動物」を隠蔽情報とする。
【0102】
図13(C)は光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形、円形、三角形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseと異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを光沢性偽装パターン1302として配置する。ここで、隠蔽情報数字「123」を偽装するように、数字「48767」を重ねて配置している。
【0103】
図13(D)は非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形、円形、三角形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを非光沢性偽装パターン1303として配置する。ここで、隠蔽情報数字「123」を偽装するように、数字「413295」を重ねて配置している。
【0104】
図13(E)は非光沢性ラインパターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。非光沢性ラインパターン1304の1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。
【0105】
図13(F)はベースOCデータ1300、隠蔽情報パターン1301、光沢性偽装パターン1302、非光沢性偽装パターン1303、非光沢性ラインパターン1304のOC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。上書き重ね合わせ合成については、実施形態1と同じであるので説明を省略する。
【0106】
図14は、実施形態3によるオーバーコート印刷を施した印刷媒体を異なる角度から見たときの様子を視覚的に示している。
【0107】
図14(A)のように印刷媒体を正面から見た場合、印刷されたOCの表面状態はほとんど視認できない。図14(B)のように印刷媒体を少し傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態が少し視認できる。
【0108】
図14(C)のように印刷媒体を更に傾けて見た場合、印刷されたOCの表面状態は視認できるが、この時点では印刷媒体に印刷した隠蔽情報は偽装パターンによって偽装されているため解読することは困難である。
【0109】
印刷後そのままの状態において印刷媒体を正面から見た場合、隠蔽情報はほとんど視認できない。視覚的に表現すると図15(A)のように見える。印刷後に隠蔽情報パターン1301の配置箇所を消しゴム等で擦り、隠蔽情報パターン1301に相当する部分の印刷色を形成している染料を除去すると、隠蔽情報が解読できる状態になる。
【0110】
隠蔽情報を解読できる状態において印刷媒体を正面から見た場合、文字「ABC」、数字「123」、絵「動物」という隠蔽情報パターンが見えて隠蔽情報が解読できたことになる。視覚的に表現すると図15(B)のように見える。
【0111】
以上の実施形態3によれば、オーバーコート印刷によって印刷画像上に埋め込まれた隠蔽情報や偽装パターンの各画像ブロックは正方形、円形、三角形などの任意の形状が適用可能である。
【0112】
また、本発明のオーバーコート印刷によって印刷媒体上に埋め込まれる隠蔽情報は文字に限らず、数字、絵でも適用可能である。また、文字、数字、絵以外にも記号、図形、写真など、画像ブロックとして表現できる2次元パターンであれば、本発明を適用可能である。
【0113】
更に実施形態3では隠蔽情報数字「123」を他の数字を偽装パターンとして隠蔽することを説明した。つまり、偽装パターンとしてあえて隠蔽情報の解読を妨げるようなパターンを用いることで偽装強度が増し、隠蔽情報の解読をより困難にすることができる。偽装パターンは数字に限らず、意味のある文字、絵、記号、写真でも適用可能である。
【0114】
[実施形態4]次に、実施形態4のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0115】
上記実施形態1乃至3では、偽装パターンの1ドット印刷階調数階調数を下記のように設定しオーバーコート印刷する方法について説明した。
【0116】
光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(gloss)範囲内で1つの任意階調数を設定。
【0117】
非光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(mat)範囲内で1つの任意階調数を設定。
【0118】
しかしながら、本発明を適用可能な偽装パターンの1ドット印刷階調数階調数は、P(gloss)、P(mat)それぞれに1つの任意階調数を設定する(偽装パターンの分散数1と呼ぶ)ように限定されるものではない。P(gloss)、P(mat)それぞれに2つ以上の任意階調数を設定する(偽装パターンの分散数2以上と呼ぶ)ことが可能である。
【0119】
実施形態4では、偽装パターンの1ドット印刷階調数階調数は、下記のように偽装パターンの分散数を2に設定し、OC印刷する方法について説明する。
【0120】
光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(gloss)範囲内で2つの任意階調数を設定。
【0121】
非光沢性偽装パターン:1ドット印刷階調数をP(mat)範囲内で2つの任意階調数を設定。
【0122】
なお、実施形態4のサーマルプリンタによる印刷処理については基本的に図4と同様であり、異なる点は、ステップS410、S411において、P(gloss)、P(mat)それぞれに1つでなく、2つの任意階調数を設定するところである。
【0123】
ステップS410:光沢性偽装パターンOCデータ配置
ステップS411:非光沢性偽装パターンOCデータ配置
ここで、図16を参照して、実施形態4のサーマルプリンタのOC印刷データ処理による隠蔽情報の偽装パターンとその印刷手順について説明する。
【0124】
図16(A)はベースOCデータ1600を全面配置した状態を概念的に示している。ベースOCデータ1600は印刷媒体全面を覆うように転写されるため、印刷媒体全面に対応するドット数に対して1ドット印刷階調数を一定階調数Pbaseに設定する。Pbaseとは、図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、通常印刷のOC転写安定性と表面光沢性が高くなるような階調数である。
【0125】
図16(B)は隠蔽情報パターンデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(zero):OCゼロ階調範囲にあり、印刷媒体にOCが転写しないような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを隠蔽情報パターン1601として配置する。実施形態4では「ABC」という文字を隠蔽情報とする。
【0126】
図16(C)は1つ目の光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseと異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを光沢性偽装パターン1(1602)として配置する。
【0127】
図16(D)は2つ目の光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(gloss):光沢性OC階調範囲にあり、Pbaseおよび光沢性偽装パターン1(1602)の階調数と異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを光沢性偽装パターン2(1603)として配置する。
【0128】
図16(E)は1つ目の非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、印刷媒体にOC表面が光沢性を失いながら転写する階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを非光沢性偽装パターン1(1604)として配置する。
【0129】
図16(F)は2つ目の非光沢性偽装パターンOCデータを配置した状態を概念的に示している。正方形状の複数ピクセルからなる画像ブロックを設定し、1ドット印刷階調数は図6においてP(mat):非光沢性OC階調範囲にあり、非光沢性偽装パターン1(1604)の階調数と異なるような階調数に設定する。そして、上記設定した画像ブロックを非光沢性偽装パターン2(1605)として配置する。
【0130】
図16(G)は下記OC画像ブロックを合成して配置した状態を概念的に示している。各パターンのOCデータの干渉を防ぐため、パターン間の加減算などは行わずにパターンデータの上書き重ね合わせ合成を行う。上書き重ね合わせ合成については、実施形態1とほぼ同じであるので説明を省略する。
【0131】
1600:ベースOCデータ
1601:隠蔽情報パターン
1602:光沢性偽装パターン1(第1のパターン)
1603:光沢性偽装パターン2(第2のパターン)
1604:非光沢性偽装パターン1(第1のパターン)
1605:非光沢性偽装パターン2(第2のパターン)
以上の実施形態4によれば、印刷媒体中の任意部分に隠蔽情報を埋め込んで印刷する際に、偽装パターンデータの各OC画像ブロックの階調数を分散する。すると、各OCパターンの厚みと光沢性がより揃わないように印刷されることになる。そのため、印刷媒体を様々な角度から見た場合の印刷媒体表面の反射状態がより乱されて偽装パターンの偽装強度が増し、隠蔽情報の解読をより困難にできる。
【0132】
[実施形態5]次に、実施形態5のサーマルプリンタ及びオーバーコート印刷方法について説明する。なお、本実施形態を実現するサーマルプリンタのブロック構成は、前述した実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0133】
上述した実施形態1乃至4では各OC画像ブロックを複数ピクセルからなる任意の形状とし、各パターンのOCデータに異なる1ドット印刷階調数を設定してOC印刷する方法について説明した。
【0134】
サーマルプリンタの基本的性質として、OC転写制御は発熱抵抗体に印加するエネルギー=1ドット印刷階調数により行っているため、実際のサーマルプリンタではOC印刷データ形状と実際に転写されるOC転写形状とに誤差が生じる場合がある。差異が生じる主な原因はサーマルプリンタの動作方法とサーマルヘッドの熱特性にある。
【0135】
印刷媒体を副走査方向に搬送しながら発熱抵抗体を選択的に通電してOCを転写するのであるが、その際に発熱抵抗体に通電するときに発熱の立上りおよび立下り特性があるために、OCを転写するエネルギーが副走査方向に遅れる性質がある。
【0136】
ある発熱抵抗体を連続して発熱すると、その発熱抵抗体の自己蓄熱により副操作方向に蓄熱が尾を引く傾向もある。また、ある発熱抵抗体の発熱が主走査方向に隣接する他の発熱抵抗体に伝播し、発熱抵抗体に与えられるエネルギーが変化する性質もある。
【0137】
そこで、実施形態5では、上述した現象に起因して発生するOC印刷後の形状誤差が小さくなるようにOC印刷データを補正するOCピクセル補正方法について、図17および図18を参照しつつ説明する。
【0138】
図17(A)および(C)は隠蔽情報パターンを、P(gloss):光沢性OC階調範囲に設定したベースOCデータ上に印刷する場合の各OC画像ブロックを、ピクセルレベルに拡大して説明する図である。
【0139】
図17(B)および(D)は、図17(A)および(C)の各OC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0140】
図17(A)および(C)の各OC画像ブロックを囲う破線は、OCピクセル補正前の画像ブロック領域である。また、図17(B)および(D)の各OC画像ブロックに相当する領域を囲う破線は、OC印刷により得られるべき理想的なOC印刷結果の領域である。
【0141】
図17(A)の各OC画像ブロックはOCピクセル補正前の画像ブロック、図17(C)はOCピクセル補正後のOC画像ブロックである。説明をより具体的にするため、各OC画像ブロックの形状と1ドット印刷階調数Pを下記のように設定する。
【0142】
1ドット印刷階調数P:0〜255階調
1700:光沢性ベースOCデータ P=170
1701:隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1702:隠蔽情報パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1703:非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=255
1704:非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=230
図17(B)は、図17(A)の各OCピクセル補正前のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0143】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1701に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはOCゼロであるはずの領域にOC被り部分1711が発生している。
【0144】
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1702に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはOCゼロであるはずの領域にOC被り部分1712が発生している。
【0145】
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1703に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=255に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1713が発生している。
【0146】
非光沢性偽装パターン2正方形画像ブロック1704に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=230に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1714が発生している。
【0147】
上記OC被り部分1711、OC被り部分1712、OC光沢変化部分1713、OC光沢変化部分1714が発生するため、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定したはずの各OCに形状やサイズ、周辺光沢感の差異が生じる。
【0148】
この各OCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異が視覚的に捉えられてしまうと、偽装パターンの偽装強度が低下してしまう。これらOCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異を低減するようにOCピクセル補正を行う例を図17(C)に示している。
【0149】
補正前のOC画像ブロックを示す図17(A)に対して、下記のようにOCピクセルの補正値を設定する。
【0150】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1701→補正ピクセル1731
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1702→補正ピクセル1732
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1703→補正ピクセル1733
非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1704→補正ピクセル1734
補正ピクセル1731はP=0とP=20からなり、サーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1701の手前に設定する。補正ピクセル1731によりサーマルヘッドの発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少させ、OC被り部分1711を低減することができる。
【0151】
補正ピクセル1732はP=0から成り、サーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1702の手前に設定する。補正ピクセル1732により発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少させ、OC被り部分1712を低減することができる。
【0152】
補正ピクセル1733はP=230からなり、非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1703のサーマルヘッド副走査方向両端に設定する。補正ピクセル1733により発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善し、主走査方向に隣接する発熱抵抗体が相互に及ぼし合う熱の影響を減少させ、OC光沢変化部分1713を低減することができる。
【0153】
補正ピクセル1734はP=220から成り、非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1704の全周囲に設定する。補正ピクセル1734により発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善し、主走査方向に隣接するが相互に及ぼし合う熱の影響を減少させ、OC光沢変化部分1714を低減することができる。
【0154】
以上説明した図17(C)の各OCピクセル補正後のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示しているのが図17(D)である。図17(B)で発生していたOC被り部分1711,1712、OC光沢変化部分1713,1714が低減し、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定した各OCの形状やサイズ、周辺光沢感が視覚的に揃うように見えるようになる。
【0155】
図18(A)および(C)は隠蔽情報パターンを、P(mat):非光沢性OC階調範囲に設定したベースOCデータ上に印刷する場合の各OC画像ブロックを、ピクセルレベルに拡大して示している。
【0156】
図18(B)および(D)は図18(A)および(C)の各OC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0157】
図18(A)および(C)の各OC画像ブロックを囲う破線は、OCピクセル補正前の画像ブロック領域である。また、図18(B)および(D)の各OC画像ブロックに相当する領域を囲う破線は、OC印刷により得られるべき理想的なOC印刷結果の領域である。
【0158】
図18(A)の各OC画像ブロックはOCピクセル補正前の画像ブロック、図18(C)はOCピクセル補正後のOC画像ブロックである。説明をより具体的にするため、各OC画像ブロックの形状と1ドット印刷階調数Pを下記のように設定する。
1ドット印刷階調数P:0〜255階調
1800:非光沢性ベースOCデータ P=255
1801:隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1802:隠蔽情報パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=0
1803:非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック(8×8ピクセル) P=230
1804:非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック(8×8ピクセル) P=230
図18(B)は、図18(A)の各OCピクセル補正前のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示している。
【0159】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受ける。このため、理想的にはOCゼロである領域にOC被り部分1811、理想的にはP=255に対応する非光沢性ベースOCである領域にOC光沢変化部分1821が発生している。
【0160】
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1802に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受ける。このため、理想的にはOCゼロである領域にOC被り部分1812、理想的にはP=255に対応する非光沢性ベースOCである領域にOC光沢変化部分1822が発生している。
【0161】
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=230に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1813が発生している。
【0162】
非光沢性偽装パターン2正方形画像ブロック1804に相当するOCゼロ部分はサーマルヘッドの熱特性の影響を受け、理想的にはP=230に対応する非光沢OCであるはずの領域にOC光沢変化部分1814が発生している。
【0163】
上記OC被り部分1811,1812、OC光沢変化部分1813,1814,1821,1822が発生するため、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定した各OCに形状やサイズ、周辺光沢感に差異が生じる。
【0164】
これらOCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異が視覚的に捉えられてしまうと、偽装パターンの偽装強度が低下してしまう。この各OCの形状やサイズ、周辺光沢感の差異を低減するようにOCピクセル補正を行う例を図18(C)に示している。
【0165】
補正前のOC画像ブロック図18(A)に対して、下記のようにOCピクセル補正値を設定する。
【0166】
隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801→補正ピクセル1831
隠蔽情報パターン2円形画像ブロック1802→補正ピクセル1832
非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803→補正ピクセル1833
非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1804→補正ピクセル1834
補正ピクセル1831はP=0、P=10、P=20、P=60から成る。
【0167】
P=0、P=10、P=20はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801の手前に設定する。P=60はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801の後ろ側に、隠蔽情報パターン1正方形画像ブロック1801の一部を置き換えるように設定する。
【0168】
補正ピクセル1831のうち、P=0、P=10、P=20の補正ピクセルにより発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少し、P=60の補正ピクセルにより発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善させる。その結果、OC被り部分1811、OC光沢変化部分1821を低減することができる。
【0169】
補正ピクセル1832はP=0、P=60から成る。
【0170】
P=0はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1802の手前に設定する。P=60はサーマルヘッド副走査方向から見て隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1802の後ろ側に、隠蔽情報パターン1円形画像ブロック1802の一部を置き換えるように設定する。補正ピクセル1832のうち、P=0の補正ピクセルにより発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少し、P=60の補正ピクセルにより発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善させる。その結果、OC被り部分1812、OC光沢変化部分1822を低減することができる。
【0171】
補正ピクセル1833はP=220からなり、サーマルヘッド副走査方向から見て非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803の前側に、非光沢性偽装パターン1正方形画像ブロック1803の一部を置き換えるように設定する。補正ピクセル1833により発熱抵抗体の蓄熱による影響を減少させ、OC光沢変化部分1813を低減することができる。
【0172】
補正ピクセル1834はP=220からなり、非光沢性偽装パターン2円形画像ブロック1804の全周囲に設定する。補正ピクセル1834により、サーマルヘッド副走査方向から見て手前では発熱抵抗体の蓄熱による影響を低減し、サーマルヘッド副走査方向から見て後ろ側では発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化して発熱立上りを改善させる。その結果、OC光沢変化部分1814を低減することができる。
【0173】
以上説明した図18(C)の各OCピクセル補正後のOC画像ブロックを用いて生成したOC印刷データに従ってOC印刷を実施した印刷媒体の状態をピクセルレベルに拡大して視覚的に示しているのが図18(D)である。図18(B)で発生していたOC被り部分1811,1812、OC光沢変化部分1813,1814,1821、1822が低減し、正方形8×8ピクセルおよび円形8×8ピクセルで設定した各OCの形状やサイズ、周辺光沢感が視覚的に揃うように見える。
【0174】
以上の実施形態5では、OC画像ブロックにOCピクセル補正値を設定し、実際に転写される各々異なる階調数に設定したOC転写後の形状誤差が小さくなるようにOC印刷データを補正する方法について説明した。
【0175】
実施形態5ではOCゼロの隠蔽情報パターンと非光沢性偽装パターンのOC画像ブロックを例として説明したが、本発明のOCピクセル補正方法は光沢性偽装パターンにも適用可能である。
【0176】
実施形態5ではOC画像ブロックを8×8ピクセルの正方形および8×8ピクセルの円形として説明したが、本発明は上記ピクセル数および形状に限定されるものではない。OC画像ブロックを任意のピクセル数、任意の形状にしても本発明を適用可能である。
【0177】
実施形態5で説明したOC補正ピクセルの配置およびOC補正ピクセルの1ドット印刷階調数は概念を示すものである。OC補正ピクセルの配置およびOC補正ピクセルの1ドット印刷階調数は、画像処理部204での画像処理方法や、印刷エンジン213のコンポーネントの1つであるサーマルヘッドの特性によって適宜調整、変更されるものである。
【0178】
要するに、本発明は、各OC画像ブロックに設定した1ドット印刷階調数に対するサーマルヘッドの特性の影響によるOC転写後の形状誤差が小さくなるようにOC補正ピクセルを設定すれば適用可能である。
【0179】
[他の実施形態]本実施形態のOC印刷データ処理は画像処理部204で行うことを例に説明したが、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上記実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを印刷媒体に転写して画像を印刷するサーマルプリンタにおいて、
染料層のインクを前記印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写する印刷手段と、
前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記隠蔽情報は、前記オーバーコート層を転写するための階調数がゼロの領域であり、
前記偽装パターンは、前記オーバーコート層を転写しない領域よりも高い階調数で転写される複数のドットからなる光沢性偽装パターンと、当該光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される複数のドットからなる非光沢性偽装パターンと、前記隠蔽情報、前記光沢性偽装パターン及び前記非光沢性偽装パターンを取り囲むような前記光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される非光沢性ラインパターンとを有することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記オーバーコート層を転写するための基準となる階調数を、前記隠蔽情報を形成するためのゼロ階調の階調数と、前記光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性ラインパターンを転写するための階調数とに置き換えることによりオーバーコート印刷データを生成する画像処理手段を更に有し、
前記制御手段は、前記画像処理手段により生成されたオーバーコート印刷データに応じて前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御することを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記隠蔽情報は、前記オーバーコート層を転写するための階調数がゼロの領域であり、
前記偽装パターンは、前記オーバーコート層を転写しない領域よりも高い階調数で転写される複数のドットからなる光沢性偽装パターンと、当該光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される複数のドットからなる非光沢性偽装パターンと、前記隠蔽情報、前記光沢性偽装パターン及び前記非光沢性偽装パターンを含むような前記光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される非光沢性ベースパターンとを有することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記オーバーコート層を転写するための基準となる階調数を、前記隠蔽情報を形成するためのゼロ階調の階調数と、前記光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性ベースパターンを転写するための階調数とに置き換えることによりオーバーコート印刷データを生成する画像処理手段を更に有し、
前記制御手段は、前記画像処理手段により生成されたオーバーコート印刷データに応じて前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御することを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記隠蔽情報は、文字、図形、絵、記号、及び写真の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記光沢性偽装パターン及び非光沢性偽装パターンはそれぞれ、互いに異なる第1のパターンと第2のパターンとを有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記印刷手段による前記隠蔽情報を形成するドットと、前記偽装パターンを形成するドットとが同じ形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項9】
前記隠蔽情報を形成するドットと、前記偽装パターンを形成するドットとが円形又は方形であることを特徴とする請求項8に記載のサーマルプリンタ。
【請求項10】
前記画像処理手段は、前記ドットの転写後の形状誤差を補正するための補正値を生成し、当該補正値により、前記オーバーコート層を転写するための基準となる階調数と、前記隠蔽情報を形成するためのゼロ階調の階調数と、前記光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性ラインパターンを転写するための階調数とを補正することを特徴とする請求項8又は9に記載のサーマルプリンタ。
【請求項11】
前記ドットの転写後の形状誤差は、サーマルヘッドの隣接する発熱抵抗体が相互に及ぼし合う熱、または前記サーマルヘッドの発熱抵抗体における印刷媒体の走査方向への蓄熱に起因して発生することを特徴とする請求項10に記載のサーマルプリンタ。
【請求項12】
前記補正手段は、前記サーマルヘッドの発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化するように補正値を生成することを特徴とする請求項11に記載のサーマルプリンタ。
【請求項13】
染料層のインクを印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写するサーマルプリンタにおけるオーバーコート印刷方法であって、
前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御工程を有し、
前記制御工程では、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成することを特徴とするオーバーコート印刷方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のサーマルプリンタの各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のサーマルプリンタの各手段として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体。
【請求項1】
インクを印刷媒体に転写して画像を印刷するサーマルプリンタにおいて、
染料層のインクを前記印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写する印刷手段と、
前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記隠蔽情報は、前記オーバーコート層を転写するための階調数がゼロの領域であり、
前記偽装パターンは、前記オーバーコート層を転写しない領域よりも高い階調数で転写される複数のドットからなる光沢性偽装パターンと、当該光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される複数のドットからなる非光沢性偽装パターンと、前記隠蔽情報、前記光沢性偽装パターン及び前記非光沢性偽装パターンを取り囲むような前記光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される非光沢性ラインパターンとを有することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記オーバーコート層を転写するための基準となる階調数を、前記隠蔽情報を形成するためのゼロ階調の階調数と、前記光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性ラインパターンを転写するための階調数とに置き換えることによりオーバーコート印刷データを生成する画像処理手段を更に有し、
前記制御手段は、前記画像処理手段により生成されたオーバーコート印刷データに応じて前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御することを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記隠蔽情報は、前記オーバーコート層を転写するための階調数がゼロの領域であり、
前記偽装パターンは、前記オーバーコート層を転写しない領域よりも高い階調数で転写される複数のドットからなる光沢性偽装パターンと、当該光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される複数のドットからなる非光沢性偽装パターンと、前記隠蔽情報、前記光沢性偽装パターン及び前記非光沢性偽装パターンを含むような前記光沢性偽装パターンより低い階調数で転写される非光沢性ベースパターンとを有することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記オーバーコート層を転写するための基準となる階調数を、前記隠蔽情報を形成するためのゼロ階調の階調数と、前記光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性ベースパターンを転写するための階調数とに置き換えることによりオーバーコート印刷データを生成する画像処理手段を更に有し、
前記制御手段は、前記画像処理手段により生成されたオーバーコート印刷データに応じて前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御することを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記隠蔽情報は、文字、図形、絵、記号、及び写真の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記光沢性偽装パターン及び非光沢性偽装パターンはそれぞれ、互いに異なる第1のパターンと第2のパターンとを有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記印刷手段による前記隠蔽情報を形成するドットと、前記偽装パターンを形成するドットとが同じ形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項9】
前記隠蔽情報を形成するドットと、前記偽装パターンを形成するドットとが円形又は方形であることを特徴とする請求項8に記載のサーマルプリンタ。
【請求項10】
前記画像処理手段は、前記ドットの転写後の形状誤差を補正するための補正値を生成し、当該補正値により、前記オーバーコート層を転写するための基準となる階調数と、前記隠蔽情報を形成するためのゼロ階調の階調数と、前記光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性偽装パターンを転写するための階調数と、前記非光沢性ラインパターンを転写するための階調数とを補正することを特徴とする請求項8又は9に記載のサーマルプリンタ。
【請求項11】
前記ドットの転写後の形状誤差は、サーマルヘッドの隣接する発熱抵抗体が相互に及ぼし合う熱、または前記サーマルヘッドの発熱抵抗体における印刷媒体の走査方向への蓄熱に起因して発生することを特徴とする請求項10に記載のサーマルプリンタ。
【請求項12】
前記補正手段は、前記サーマルヘッドの発熱抵抗体の駆動タイミングを早期化するように補正値を生成することを特徴とする請求項11に記載のサーマルプリンタ。
【請求項13】
染料層のインクを印刷媒体に転写して画像を印刷すると共に、当該画像を保護するためのオーバーコート層を当該画像上に転写するサーマルプリンタにおけるオーバーコート印刷方法であって、
前記印刷手段により転写するオーバーコート層の転写量を制御する制御工程を有し、
前記制御工程では、前記オーバーコート層を転写しない領域を形成することで前記画像上に隠蔽情報を埋め込み、さらに、当該隠蔽情報が形成される領域とそれ以外のオーバーコート層が転写される領域との光沢性の違いによって当該隠蔽情報が視認できないように、前記オーバーコート層の転写量を制御することで、当該隠蔽情報が形成される領域の近傍に当該隠蔽情報を遮蔽するための偽装パターンを形成することを特徴とするオーバーコート印刷方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のサーマルプリンタの各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のサーマルプリンタの各手段として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体。
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図1】
【図5】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
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【図10】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−126031(P2012−126031A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279864(P2010−279864)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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