説明

サーマルプリンタ及びサーマルヘッド発熱制御プログラム

【課題】サーマルヘッドの長寿命化を実現するとともに、高速且つ高品位な印刷を実現することが可能なサーマルプリンタ及びサーマルヘッド発熱制御プログラムを提供する。
【解決手段】1ライン分の各画素に対応する複数の発熱素子が配列されたサーマルヘッドと、印刷データを複数ライン分記憶する印刷データ記憶手段と、前記印刷データ記憶手段に記憶された印刷データのうち、これから印刷する現在ラインの印刷データと、当該現在ラインの直後に印刷する直後ラインの印刷データとを構成する画素群から主走査位置が同一となる画素の画素値を夫々比較し、比較結果となる前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量に応じて、前記現在ラインの通電時間に印加される通電パターンを当該現在ラインの画素毎に生成する発熱制御手段と、前記発熱制御手段で生成された画素毎の通電パターンを対応する前記発熱素子に印加するドライバ手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを用いた感熱記録方式又は熱転写記録方式のサーマルプリンタ及びサーマルヘッド発熱制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルヘッドを用いた感熱記録方式又は熱転写記録方式のサーマルプリンタが用いられている。係るサーマルプリンタでは、サーマルヘッド及び所定の記録媒体(以下、記録紙という)の比熱、熱伝導率、発色特性、相対速度等に応じて定められるサーマルヘッドの温度を所定の温度範囲に制御することが重要である。
【0003】
例えば、感熱記録方式の場合では、サーマルヘッドの温度が所定の温度範囲より低すぎると、発色のための熱量が足りず、感熱記録紙の表面に発色したドットが規定値よりも小さく又は薄くなる。また、熱転写記録方式の場合でも、記録紙に付着するインク量が少なくなるため、規定値よりもドットが小さく又は薄くなる。
【0004】
また、感熱記録方式の場合では、サーマルヘッドの温度が所定の温度範囲を上回ると、発色するドットが規定値よりも大きく濃くなるだけでなく、感熱記録紙の発色層がサーマルヘッドに融着する所謂スティッキングが生じる可能性があるため、印刷品質が低下する場合がある。また、熱転写記録方式においても、サーマルヘッドの温度が所定の温度範囲を上回ると印刷品質が低下するという問題がある。さらには、高すぎる温度での使用はサーマルヘッドを構成する発熱素子の劣化を促進するため、サーマルヘッド自体の寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
そのため、従来、サーマルヘッドの発熱制御に係る技術が提案されている。特許文献1には、これから印刷を行うライン(現在ライン)よりも前に印刷を行った過去の通電時間データに基づいて、現在ラインの際に使用する通電時間データを補正する技術が開示されている。また、特許文献2には、サーマルヘッドの温度に対応した最適な余熱を与える技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では印刷速度のさらなる高速化、安価な記録紙の普及による発色層の薄層化やベースの平滑性低下に伴う熱伝導率の低下等により、サーマルヘッドから記録紙に移動する単位時間当たりの熱エネルギー量が増加している。熱エネルギー量を確保するためには、サーマルヘッドの温度を高くすることで解決できるが、上述したように、高温によるサーマルヘッドの劣化や記録紙の熱的破壊等により、サーマルヘッドの温度を高くすることには限界がある。
【0007】
なお、特許文献1の技術は、低速印刷時等の熱エネルギー生成速度に余裕がある場合に適用することができるが、熱エネルギーが不足気味となる高速印刷時等に適用することは困難である。また、高品位印刷を行うためには、現在ライン以前に印刷した多数のラインの通電時間データを記憶しておくための記憶装置が別途必要となり、この記憶装置を参照する必要があるため、構成が複雑化するという問題がある。
【0008】
また、特許文献2の技術ように、余熱を与えることでサーマルヘッドの温度を制御することが考えられるが、印加パルスが割り当てられない非発色(非印字)領域での発色温度以下の熱エネルギーの付与だけでは、求められている印刷速度の高速化、及び、安価な記録紙での高品位印刷の実現に限界がある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、サーマルヘッドの長寿命化を実現するとともに、高速且つ高品位な印刷を実現することが可能なサーマルプリンタ及びサーマルヘッド発熱制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、1ライン分の画素に対応する複数の発熱素子を直線上に配列したサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの発熱により所定の記録媒体へ印刷を行う印刷データを、複数ライン分記憶する印刷データ記憶手段と、前記印刷データ記憶手段に記憶された印刷データのうち、これから印刷する現在ラインの印刷データと、当該現在ラインの直後に印刷する直後ラインの印刷データとを構成する画素群から主走査位置が同一となる画素の画素値を夫々比較し、比較結果となる前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量に応じて、前記現在ラインの通電時間に印加される通電パターンを当該現在ラインの画素毎に生成する発熱制御手段と、前記発熱制御手段で生成された画素毎の通電パターンを対応する前記発熱素子に印加するドライバ手段と、を備える。
【0011】
また、本発明は、1ライン分の画素に対応する複数の発熱素子を直線上に配列したサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの発熱により所定の記録媒体へ印刷を行う印刷データを、複数ライン分記憶する印刷データ記憶手段と、前記印刷データ記憶手段に記憶された印刷データに基づいて前記発熱素子に印加される通電パターンを生成する発熱制御手段と、前記発熱制御手段で生成された通電パターンを対応する前記発熱素子に印加するドライバ手段と、を備えたサーマルプリンタの前記発熱制御手段に、前記印刷データ記憶手段に記憶された印刷データのうち、これから印刷する現在ラインの印刷データと、当該現在ラインの直後に印刷する直後ラインの印刷データとを構成する画素群から主走査位置が同一となる画素の画素値を夫々比較し、当該比較の結果となる前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量に応じて、前記現在ラインの通電時間に印加される通電パターンを当該現在ラインの画素毎に生成させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーマルヘッドの長寿命化を実現するとともに、高速且つ高品位な印刷を実現することが可能なサーマルプリンタ及びサーマルヘッド発熱制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係るサーマルプリンタの発熱制御に係る構成を示す図である。
【図2】図2は、通電パルス制御部の動作を説明するための図である。
【図3】図3は、通電パルス制御部の動作を説明するための図である。
【図4】図4は、通電パルス制御部の動作を説明するための図である。
【図5】図5は、通電パルス制御部の動作を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るサーマルプリンタで実行される発熱制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るサーマルプリンタ及びサーマルヘッド発熱制御プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係るサーマルプリンタの発熱制御に係る構成を示す図である。サーマルプリンタ100は、感熱記録方式又は熱転写記録方式の印刷装置であって、印刷データメモリ1、発熱制御部2、通電パルス制御部3、サーマルヘッドドライバ4、サーマルヘッド5を含んで構成される。
【0016】
サーマルプリンタ100は、図示しない通信部を介して上位システム200から印刷データを受信すると、図示しない解析・展開・描画部によって印刷データの解析を行うことで印刷に使用するイメージデータに展開した後、印刷データメモリ1に格納する。
【0017】
印刷データメモリ1は、イメージデータを一時記憶するための記憶媒体であって、図示しない解析・展開・描画部によって展開されたイメージデータを、複数ライン分記憶する。ここで、“ライン”とは、イメージデータにおいて副走査位置が同一の画素群を意味する。サーマルヘッド5には、1ライン分の画素に対応する複数の発熱素子51が直線上に配列されており、各発熱素子51の加熱により1ライン分の印刷が行われるよう構成されている。また、ライン中の各画素は、その画素値により発色を行う画素(以下、発色画素という)と、発色を行わない画素(以下、非発色画素という)とに大別される。
【0018】
なお、印刷データメモリ1は、複数ラインのイメージデータを保持可能な記憶領域として、これから印刷を行うライン分のイメージデータ(以下、現在ラインという)を保持する現在ライン用メモリ11と、現在ラインの直後に印刷を行うライン分のイメージデータ(以下、直後ラインという)を保持する直後ライン用メモリ12とを有するものとするが、これに限らず、3ライン以上のイメージデータを保持可能な構成としてもよい。
【0019】
また、印刷データメモリ1は、現在ライン用メモリ11に格納された現在ラインを通電パルス制御部3に送出すると、直後ライン用メモリ12に格納された直後ラインを新たな現在ラインとして現在ライン用メモリ11に上書きし、新たな現在ラインの直後に印刷を行う新たな直後ラインを、直後ライン用メモリ12に記憶するものとする。
【0020】
発熱制御部2は、サーマルヘッド5に取付けられた図示しない抵抗測定器を用いて当該サーマルヘッド5の平均抵抗値を取得する平均抵抗値センサ部21と、印刷データから印刷速度を指示する印刷速度情報を取得する印刷速度情報取得部22と、サーマルヘッド5に取付けられた図示しないサーミスタを用いてサーマルヘッド5の温度を取得するサーマルヘッド温度センサ部23と、サーマルヘッド5の周囲に取付けられた図示しないサーミスタを用いてサーマルヘッド5の周囲温度を取得する雰囲気温度センサ部24とを有している。
【0021】
発熱制御部2は、平均抵抗値センサ部21で取得したサーマルヘッド5の平均抵抗値と、印刷速度情報取得部22で取得した印刷速度と、サーマルヘッド温度センサ部23で取得したサーマルヘッド5の温度と、雰囲気温度センサ部24で取得したサーマルヘッド5の周囲温度とに基づいて、サーマルヘッド5への通電タイミングを指示した基本通電パルスを生成し、通電パルス制御部3へ送出する。なお、基本通電パルスの生成方法については、公知の技術を用いるものとする。
【0022】
通電パルス制御部3は、発熱制御部2から入力された基本通電パルスに基づいて、サーマルヘッドドライバ4により各発熱素子51に印加される通電パターンを生成する。
【0023】
具体的に、通電パルス制御部3は、基本通電パルスに基づき、現在ラインの印刷時間に略対応する通電時間(以下、セルという)を設定すると、このセルを第1時間帯(以下、第1サブセルという)と当該第1サブセルに続く第2時間帯(以下、第2サブセル)とに2分する。なお、第1サブセルは第2サブセルよりも長時間であるとする。
【0024】
また、通電パルス制御部3は、印刷データメモリ1に記憶された現在ライン及び直後ラインを構成する画素群から、主走査位置が同一となる画素の画素値を夫々比較し、この比較結果となる現在ラインから直後ラインにかけての変化量に応じた通電パターンを、発熱制御部2から入力された基本通電パルスから画素毎に生成し、サーマルヘッド5の該当する発熱素子51に割り当てを行う。
【0025】
なお、通電パターンの生成は、上述したセル(第1サブセル及び第2サブセル)単位で行われるものとする。また、通電パターンは、発色画素用の通電パターンである発色画素用通電パターンと、非発色画素用の通電パターンである非発色画素用通電パターンとに大別され、各画素の配置位置に対応する発熱素子51に夫々割り当てられる。以下、図2〜図5を参照して、通電パルス制御部3の動作について説明する。
【0026】
図2〜図5は、通電パルス制御部3の動作を説明するための図であり、現在ライン及び直後ラインにおいて主走査位置が同一の画素の状態と、この画素に対応する発熱素子51に印加される通電パターンと、この発熱素子51の発熱温度との関係を模式的に示している。
【0027】
図2〜図5において、現在画素P1は、現在ライン中のある画素(1画素)の状態を表している。また、直後画素P2は、直後ラインを構成する画素群のうち、現在画素P1と主走査位置が同一の画素(1画素)の状態を表している。つまり、各図面上部に示した矢印方向(副走査方向)に記録紙が移動することで、現在画素P1及び直後画素P2の順で副走査方向に隣接して印刷されることになる。
【0028】
セルC1は現在画素P1の通電時間対応するセルであり、通電パルス制御部3により第1サブセルC11と、第2サブセルC12とに区分けされている。なお、直後画素P2が新たな現在画素P1となった場合も同様に処理されるため、図2〜図5では、直後画素P2の通電時間に対応するセルC2及びセルC2の第1サブセルC21と第2サブセルC22とを表している。
【0029】
通電パターンは、発熱素子51への印加を指示するオン期間(ON)と、非通電を指示するオフ期間(OFF)との組により構成され、現在画素P1及び直後画素P2の画素値、即ち現在画素P1及び直後画素P2が発色画素か非発色画素かに応じて、発色画素用通電パターン及び非発色画素用通電パターンが形成される。サーマルヘッドドライバ4は、通電パターンがオン期間のときに印加を行い、オフ期間のときに印加を停止する。そのため、通電パターンがオン期間の間、サーマルヘッド5の温度が上昇し、オフ期間に切り替わると温度が下降し始める。なお、通電パターンは図中に示した時間軸に従い左方から右方にかけて生成される。
【0030】
また、図中に示す温度は、サーマルヘッドドライバ4が、現在画素P1及び直後画素P2に対応する発熱素子51に通電パターンを印加した際の温度変化を表している。ここで、最大非発色温度T1は、記録紙が発色しない範囲の最大温度を意味している。発色可能温度範囲T2は、記録紙が安定して発色する温度の範囲を意味している。なお、最大非発色温度T1は発色可能温度範囲T2より低温となる。
【0031】
図2は、現在ラインから直後ラインにかけての画素値の変化量が非発色を示す値で一定となる場合、即ち、現在画素P1が“非発色画素”、直後画素P2が“非発色画素”である場合を示している。この場合、通電パルス制御部3は、現在画素P1のセルC1(第1サブセルC11及び第2サブセルC12)の間、最大非発色温度T1を維持する通電パターン(非発色用通電パターン)を生成する。この、非発色用通電パターンでは、基本通電パルスのタイミングに従いオンとオフとが切り替えられ、オン状態とする時間がオフ状態とする時間よりも短く制御されることで、最大非発色温度T1が断続的に維持される。
【0032】
このように、通電パルス制御部3は、現在ラインから直後ラインにかけて非発色が連続する主走査位置が同一の画素について、セルC1の間非発色用通電パターンを生成する。これにより、新たな現在画素P1となる直後画素P2での通電開始時の温度を最大非発色温度T1とすることができるため、直後画素P2の印刷(非発色)を確実に行うことができ、高品位な印刷を実現することが可能となる。
【0033】
図3は、現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量が非発色から発色を示す値である場合、即ち、現在画素P1が“非発色画素”、直後画素P2が“発色画素”である場合を示している。この場合、通電パルス制御部3は、第1サブセルC11の開始タイミングから第2サブセルC12内の所定のタイミングA1までの間、非発色用通電パターンを生成する。また、この所定のタイミングA1から第2サブセルC12の最終タイミングまでの間、温度を上昇させることで当該第2サブセルC12の最終タイミングで発色可能温度範囲T2に到達させる通電パターンを生成する。
【0034】
このように、通電パルス制御部3は、現在ラインから直後ラインにかけて非発色から発色に変化する主走査位置が同一の画素について、第1サブセルC11から第2サブセルC12内の所定のタイミングA1までの間、非発色用通電パターンを生成し、この所定のタイミングA1から第2サブセルC12の最終タイミングにかけて発色可能温度範囲T2に到達させる通電パターンを生成する。これにより、新たな現在画素P1となる直後画素P2での通電開始時の温度を発色可能温度範囲T2とすることができるため、直後画素P2の印刷(発色)を確実に行うことができ、高品位な印刷を実現することが可能となる。また、サーマルヘッド5の温度は発色可能温度範囲T2の上限値を超えることはなく、高温によるサーマルヘッド5の劣化や記録紙の熱的破壊を防止することができるため、サーマルヘッド5の長寿命化を実現することが可能となる。
【0035】
なお、図3では、第2サブセルC12内の所定のタイミングA1からオン期間を継続することで、第2サブセルC12の最終タイミングで発色可能温度範囲T2に到達させる形態を示しているが、この例に限らず、断続的にオン期間とする形態としてもよい。また、第2サブセル内でのタイミングA1は、サーマルヘッド5の温度や温度変化率等に基づいて決定されるものとする。
【0036】
また、図4は、現在ラインから直後ラインにかけての画素値の変化量が発色を示す値で一定となる場合、即ち、現在画素P1が“発色画素”、直後画素P2が“発色画素”である場合を示している。この場合、通電パルス制御部3は、現在画素P1のセルC1(第1サブセルC11及び第2サブセルC12)の間、発色可能温度範囲T2を維持する通電パターン(発色用通電パターン)を生成する。この、発色用通電パターンでは、基本通電パルスのタイミングに従いオンとオフとが切り替えられ、オン状態とする時間がオフ状態とする時間よりも長く制御されることで、発色可能温度範囲T2が維持される。
【0037】
このように、通電パルス制御部3は、現在ラインから直後ラインにかけて発色が連続する主走査位置が同一の画素について、セルC1の間発色用通電パターンを生成する。これにより、新たな現在画素P1となる直後画素P2での通電開始時の温度を発色可能温度範囲T2とすることができるため、直後画素P2の印刷(発色)を確実に行うことができ、高品位な印刷を実現することが可能となる。
【0038】
また、図5は、現在ラインから直後ラインにかけての画素値の変化量が発色から非発色に、即ち、現在画素P1が“発色画素”、直後画素P2が“非発色画素”である場合を示している。この場合、通電パルス制御部3は、第1サブセルC11の開始タイミングから第2サブセルC12内の所定のタイミングA2までの間、発色用通電パターンを生成する。また、この所定のタイミングA2から第2サブセルC12の最終タイミングまでの間、温度を低下させることで当該第2サブセルC12の最終タイミングで最大非発色温度T1に到達させる通電パターンを生成する。
【0039】
このように、通電パルス制御部3は、現在ラインから直後ラインにかけて発色から非発色に変化する主走査位置が同一の画素について、第2サブセルC12内の所定のタイミングA2までの間、発色用通電パターンを生成し、この所定のタイミングA2から第2サブセルC12の最終タイミングにかけて最大非発色温度T1に到達させる通電パターンを生成する。これにより、新たな現在画素P1となる直後画素P2での通電開始時の温度を最大非発色温度T1とすることができるため、直後画素P2の印刷(非発色)を確実に行うことができ、高品位な印刷を実現することが可能となる。また、サーマルヘッド5の温度は発色可能温度範囲T2の上限値を超えることはなく、高温によるサーマルヘッド5の劣化や記録紙の熱的破壊を防止することができるため、サーマルヘッド5の長寿命化を実現することが可能となる。
【0040】
なお、図5では、第2サブセルC12内の所定のタイミングA2からオフ期間を継続することで、第2サブセルC12の最終タイミングで最大非発色温度T1に到達させる形態を示しているが、この例に限らず、断続的にオフ期間とする形態としてもよい。また、第2サブセルC12内でのタイミングA2は、サーマルヘッド5の温度や温度変化率等に基づいて決定されるものとする。
【0041】
図1に戻り、サーマルヘッドドライバ4は、通電パルス制御部3で各発熱素子51に割り当てられた発色画素用通電パターン及び非発色画素用通電パターンに応じて、サーマルヘッド5の各発熱素子51を駆動して発熱させる。これらの発熱素子51によって、感熱記録紙等が加熱され、1ライン(現在ライン)分の印刷が行われる。1ライン分の印刷が完了すると、次の1ライン分の印刷を行う。通電パルス制御部3は、1ライン分の印刷毎に、サーマルヘッド5の温度変化に応じた通電パターンをサーマルヘッド5に与える。
【0042】
次に、図6を参照して、サーマルプリンタ100のサーマルヘッド5の発熱制御に係る動作について説明する。図6は、サーマルプリンタ100で実行される発熱制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0043】
まず、サーマルプリンタ100では、上位システム200から印刷データを受信すると(ステップS11)、図示しない解析・展開・描画部は、この印刷データから印刷に使用するイメージデータを生成し、印刷データメモリ1に複数ライン(現在ライン及び直後ライン)分記憶させる(ステップS12)。
【0044】
また、発熱制御部2は、サーマルヘッド5の平均抵抗値、印刷データに含まれた印刷速度情報、サーマルヘッド5の温度及び当該サーマルヘッド5の周囲温度に基づいて基本通電パルスを生成し、通電パルス制御部3へ送出する(ステップS13)。
【0045】
続いて、通電パルス制御部3は、現在ライン用メモリ11及び直後ライン用メモリ12に記憶された現在ライン及び直後ラインを構成する画素群から、主走査位置が同一となる画素の組を夫々比較し、現在ラインから直後ラインにかけての画素値の変化量(発色/非発色)を判定する(ステップS14)。
【0046】
ステップS14の比較の結果、現在ラインが“非発色”、直後ラインが“非発色”と判定した現在ラインの各画素について(ステップS15;No→ステップS16;No)、通電パルス制御部3は、図2で説明したように、セル(第1サブセル及び第2サブセル)の間、非発色用通電パターンを生成し、該当する発熱素子51に割り当てを行う(ステップS18)。
【0047】
また、ステップS14の比較の結果、現在ラインが“非発色”、直後ラインが“発色”と判定した現在ラインの各画素について(ステップS15;No→ステップS16;Yes)、通電パルス制御部3は、図3で説明したように、第1サブセルから第2サブセル内の所定のタイミングまでの間、非発色用通電パターンを生成し、この所定のタイミングから第2サブセルの最終タイミングにかけて発色可能温度範囲T2に到達させる通電パターンを生成し、該当する発熱素子51に割り当てを行う(ステップS19)。
【0048】
また、ステップS14の比較の結果、現在ラインが“発色”、直後ラインが“非発色”と判定した現在ラインの各画素について(ステップS15;Yes→ステップS17;No)、通電パルス制御部3は、図5で説明したように、第1サブセルから第2サブセル内の所定のタイミングまでの間、発色用通電パターンを生成し、この所定のタイミングから第2サブセルの最終タイミングにかけて最大非発色温度T1に到達させる通電パターンを生成し、該当する発熱素子51に割り当てを行う(ステップS20)。
【0049】
また、ステップS14の比較の結果、現在ラインが“発色”、直後ラインが“発色”と判定した現在ラインの各画素について(ステップS15;Yes→ステップS17;Yes)、通電パルス制御部3は、図4で説明したように、セル(第1サブセル及び第2サブセル)の間、発色用通電パターンを生成し、該当する発熱素子51に割り当てを行う(ステップS21)。
【0050】
サーマルヘッドドライバ4は、ステップS18〜S21で割り当てられた通電パターンに従い発熱素子51の各々を個別に駆動し、サーマルヘッド5を発熱させる(ステップS22)。
【0051】
続いて、通電パルス制御部3は、イメージデータを構成する全てのラインについて処理を施したか否かを判定し、未処理のラインが存在すると判定した場合(ステップS23;No)、ステップS13に再び戻る。また、ステップS23において、全てのラインを処理したと判定した場合には(ステップS23;Yes)、本処理を終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るサーマルプリンタ100によれば、サーマルヘッド5への熱エネルギーが不足気味となる高速印刷時等においても、サーマルヘッド5を効率的に加熱することができ、現在ライン以前に行った印刷条件を用いることもないため、簡易な構成で高速印刷を実現することができる。また、現在ラインの印刷終了時に、この現在ラインの直後に印刷される直後ラインの各画素に応じた温度となるよう、各発熱素子51を効率的に発熱させることができるため、サーマルヘッドの長寿命化を実現するとともに、高速且つ高品位な印刷を実現することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での種々の変更、置換、追加等が可能である。
【符号の説明】
【0054】
100 サーマルプリンタ
1 印刷データメモリ
11 現在ライン用メモリ
12 直後ライン用メモリ
2 発熱制御部
21 平均抵抗値センサ部
22 印刷速度情報取得部
23 サーマルヘッド温度センサ部
24 雰囲気温度センサ部
3 通電パルス制御部
4 サーマルヘッドドライバ
5 サーマルヘッド
51 発熱素子
200 上位システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2006−175681公報
【特許文献2】特開2009−143163公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ライン分の画素に対応する複数の発熱素子を直線上に配列したサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドの発熱により所定の記録媒体へ印刷を行う印刷データを、複数ライン分記憶する印刷データ記憶手段と、
前記印刷データ記憶手段に記憶された印刷データのうち、これから印刷する現在ラインの印刷データと、当該現在ラインの直後に印刷する直後ラインの印刷データとを構成する画素群から主走査位置が同一となる画素の画素値を夫々比較し、比較結果となる前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量に応じて、前記現在ラインの通電時間に印加される通電パターンを当該現在ラインの画素毎に生成する発熱制御手段と、
前記発熱制御手段で生成された画素毎の通電パターンを対応する前記発熱素子に印加するドライバ手段と、
を備えたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記発熱制御手段は、前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量が非発色から発色を示す値である場合に、前記現在ラインの通電時間を2分した第1時間帯の開始タイミングから当該第1時間帯に続く第2時間帯の所定のタイミングまでの間、前記記録媒体が発色しない範囲の最大温度を維持する通電パターンを生成し、当該所定のタイミングから前記第2時間帯の最終タイミングまでの間、温度を上昇させることで当該第2時間帯の最終タイミングで前記記録媒体が発色する範囲の温度に到達させる通電パターンを生成することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記発熱制御手段は、前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量が発色から非発色を示す値である場合に、前記現在ラインの通電時間を2分した第1時間帯の開始タイミングから当該第1時間帯に続く第2時間帯の所定のタイミングまでの間、前記記録媒体が発色する範囲の温度を維持させる通電パターンを生成し、当該所定のタイミングから前記第2時間帯の最終タイミングまでの間、温度を低下させることで当該第2時間帯の最終タイミングで前記記録媒体が発色しない範囲の最大温度に到達させる通電パターンを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記発熱制御手段は、前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量が非発色を示す値で一定となる場合に、前記通電時間の間、前記記録媒体が発色しない範囲の最大温度を維持する通電パターンを生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記発熱制御手段は、前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量が発色を示す値で一定となる場合に、前記通電時間の間、前記記録媒体が発色する範囲の温度を維持する通電パターンを生成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
1ライン分の画素に対応する複数の発熱素子を直線上に配列したサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドの発熱により所定の記録媒体へ印刷を行う印刷データを、複数ライン分記憶する印刷データ記憶手段と、
前記印刷データ記憶手段に記憶された印刷データに基づいて前記発熱素子に印加される通電パターンを生成する発熱制御手段と、
前記発熱制御手段で生成された通電パターンを対応する前記発熱素子に印加するドライバ手段と、
を備えたサーマルプリンタの前記発熱制御手段に、前記印刷データ記憶手段に記憶された印刷データのうち、これから印刷する現在ラインの印刷データと、当該現在ラインの直後に印刷する直後ラインの印刷データとを構成する画素群から主走査位置が同一となる画素の画素値を夫々比較し、当該比較の結果となる前記現在ラインから前記直後ラインにかけての画素値の変化量に応じて、前記現在ラインの通電時間に印加される通電パターンを当該現在ラインの画素毎に生成させることを特徴とするサーマルヘッド発熱制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−148157(P2011−148157A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10322(P2010−10322)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】