説明

サーマルプリンタ用隠蔽伝票

【課題】本発明は、従来の電気、ガス、水道などの検針伝票と比較して、その製造および使用コストの上昇を抑え、なおかつ、その使用量や支払い請求金額などの個人情報を印字した部分を隠蔽することのできる隠蔽伝票、特に、従来のサーマルプリンタで印字することのできる隠蔽伝票の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも一部に感熱層を有する感熱紙と、該感熱層と対向する少なくとも一部にワックス層を有するグラシン紙とを備えたサーマルプリンタ用隠蔽伝票であって、該グラシン紙と該ワックス層との間および/または該グラシン紙の該ワックス層とは反対側の面に、少なくとも一部に隠蔽層を有し、該ワックス層が該感熱層と対向するように、該感熱紙と該グラシン紙とが接着されているサーマルプリンタ用隠蔽伝票を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気、ガス、水道などの検針伝票において、その使用量や支払い請求額など他人には知られたくない個人情報を隠蔽することのできる伝票であって、サーマルプリンタで印刷することのできる隠蔽伝票に関する。
【背景技術】
【0002】
電気、ガス(都市ガス、LPガス、プロパンガスなど)、水道などの使用量に基づく支払い請求額は、一般に、検針員が各使用者のメーターの数値を確認し、ハンディターミナルなどの端末機にその数値を入力することによって決定(計算)され、そして、端末機に内蔵または付設されたサーマルプリンタ(感熱プリンタ)で印字することによって、使用量やその支払い請求額が印字された、いわゆる検針伝票が作成されている。
しかし、従来の検針伝票では、印字した内容、特に使用量や支払い請求額などの個人情報が第三者の目にさらされることもあり、個人情報の保護の観点から、問題があった。
そこで、特許文献1(国際公開第2006/070759号パンフレット(特願2006−550771号))および特許文献2(特許第4613677号明細書)に開示のように、擬似接着層を介して、感熱紙の全面に隠蔽シートを貼り合わせてなる感熱記録多重シートが開発された。しかし、このような多重シートは、感熱紙(すなわち、その印字部)をいわゆるシールで覆ったものであり、そのシールの上側には隠蔽層が印刷されたものである(例えば、図1の数字地紋など)。このような隠蔽シールを利用した多重シートは、従来の検針伝票と比較すると、隠蔽性には優れるが、その製造コストが高くなり、決して経済性に優れているとはいえない。また、これらの擬似接着層を介した多重シートでは、厚さが増すため、印字の際に印加電圧を上げなければならず、すなわち、高エネルギーモードでの印刷が必要であることからも、使用コストの上昇を避けることができない。
そこで、特許文献3(特許第4250668号明細書)に開示のように、コストダウンを目的として、二枚複写式のハンディターミナル用複写式伝票が開発されている。しかし、この複写式伝票は、サーマルプリンタを内蔵または付設したハンディターミナルで1枚目(最も上側)の伝票に印字することにより、2枚目の伝票にも同じ印字内容を複写することができるようになっているものであり、隠蔽性を確保するために、すなわち、1枚目(最も上側)の伝票に印字した内容を読み取りにくくするために、1枚目の伝票の印字面にその上側から予め隠蔽層(例えば、図2の地紋を参照のこと)を印刷しておく必要がある。そして、1枚目(すなわち、最も上側)の伝票の裏側には2枚目の伝票に複写するためのサーマルカーボン層(感熱転写インキ層)を設けなければならないので、結局、その製造コストは、隠蔽シールの多重シートよりも低くはなるが、従来の検針伝票よりもコストがかなり高くなる。また、このような2枚複写式伝票の場合、厚さが増すので、やはり、高印加電圧(高エネルギー)が必要であり、印字コストも上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/070759号パンフレット(特願2006−550771号)
【特許文献2】特許第4613677号明細書
【特許文献3】特許第4250668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来の電気、ガス、水道などの検針伝票と比較して、その製造および使用コストの上昇を抑え、なおかつ、その使用量や支払い請求金額などの個人情報を印字した部分を隠蔽することのできる隠蔽伝票、特に、従来のサーマルプリンタで印字することのできる隠蔽伝票の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究の結果、従来のサーマルプリンタ(感熱プリンタ)で印字することのできる感熱紙を、安価でしかも薄く半透明なグラシン紙で覆い、さらに、グラシン紙に予め「隠蔽層」を印刷などで設けることによって、その上側からサーマルプリンタで印字しても、この「隠蔽層」が存在するために、印字した文字の判読が困難になり、印字情報の隠蔽性が飛躍的に向上することを見出した。また、本発明者は、グラシン紙の内側(裏側)の面に、「ワックス層」を設けることによって、サーマルプリンタでの印字の際に発生するグラシン紙の皺を防止し、なおかつ、感熱紙の発色および印字性能が飛躍的に向上することを見出した。さらに、本発明者は、グラシン紙の外側(表側)の面(すなわち、グラシン紙の「ワックス層」を設けた面とは反対側の面)に、アクリル樹脂などから形成される透明の「オーバーコート層」を設けることによって、サーマルプリンタのサーマルヘッドの滑りがよくなり、すなわち、サーマルヘッドの走行性(ヘッドマッチング)が向上し、なおかつ、グラシン紙の耐水性および撥水性も向上することを見出した。また、本発明者は、糊などの接着剤を用いて、隠蔽層を備えたグラシン紙と、感熱紙とを点状(スポット)で接着することによって、すなわち、グラシン紙と感熱紙とをそのいずれかの任意の端部からめくって剥がせる(仮接着状態)で接着することによって、隠蔽層を備えたグラシン紙の感熱紙からの剥離が簡単になり、従来の隠蔽シールを用いた多重シートや2枚複写式の伝票と比べて、取り扱いが簡単でしかもコストがかなり低下することを見出した。さらに、本発明者は、安価でしかも薄いグラシン紙を使用することによって、製造コストが飛躍的に低下することはもちろんのこと、サーマルプリンタでの印字コスト、すなわち印加電圧が低下し、本発明の隠蔽伝票が、従来のサーマルプリンタでの使用に適していることを見出し、本発明を完成するに至った。従って、本発明は以下を提供する。
【0006】
[1]
少なくとも一部に感熱層を有する感熱紙と、該感熱層と対向する少なくとも一部にワックス層を有するグラシン紙とを備えたサーマルプリンタ用隠蔽伝票であって、該グラシン紙と該ワックス層との間および/または該グラシン紙の該ワックス層とは反対側の面に、少なくとも一部に隠蔽層を有し、該ワックス層が該感熱層と対向するように、該感熱紙と該グラシン紙とが接着されているサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[2]
前記ワックス層に含まれるワックスの融点が50〜80℃である、上記[1]に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[3]
前記ワックスがパラフィンワックスである、上記[2]に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[4]
前記グラシン紙の前記ワックス層を設けた、前記感熱層に対向する面とは反対側の面であって、サーマルプリンタのサーマルヘッドと接する面に、さらに、オーバーコート層を備える、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[5]
前記オーバーコート層が、UV硬化型のアクリル樹脂からなる透明層である、上記[4]に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[6]
前記隠蔽層が、印刷によって設けられた層である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[7]
質量が23〜35g/mの半透明のグラシン紙に、前記隠蔽層が印刷されている、上記[6]記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[8]
前記隠蔽伝票の少なくとも1つの端部から、前記感熱紙または前記グラシン紙がめくって剥がせるように、該感熱紙と該グラシン紙とが接着されている、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[9]
前記グラシン紙と、前記感熱紙との間に接着剤が配置されている、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[10]
前記接着剤が部分的に配置されている、上記[9]に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[11]
前記接着剤が点状に配置されている、上記[10]に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[12]
前記接着剤が水性エマルジョン糊である、上記[11]に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
[13]
グラシン紙の一方の面の少なくとも一部に隠蔽層を形成し、
該グラシン紙の隠蔽層を形成した面および/またはその反対側の面の少なくとも一部にワックス層を形成し、
該グラシン紙の該ワックス層と、感熱紙の感熱層とが対向するように、該グラシン紙と該感熱紙とを接着する、サーマルプリンタ用隠蔽伝票の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、隠蔽層を有するグラシン紙で感熱紙を覆うことによって、グラシン紙の上側からサーマルプリンタで印字した場合であっても、隠蔽層の下側の感熱紙に印字された情報は簡単には判読することができず、優れた情報隠蔽性を有する。
また、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、グラシン紙の内側(裏側)、すなわち、感熱紙と対向する側の面に、融点および膨張率を調整したワックス層を設けるので、その熱伝導性が向上し、サーマルプリンタで印字した場合、感熱紙の発色および印字性能が飛躍的に向上する。さらに、ワックス層は、薄くて取り扱いが困難なグラシン紙の剛性を向上し、グラシン紙における皺の形成を防止することもできる。
また、必要に応じて、グラシン紙の外側の面、すなわち、サーマルプリンタのサーマルヘッドと接する側の面に、オーバーコート層を設けることによって、サーマルヘッドの走行性(ヘッドマッチング)を向上させることができ、しかも、このオーバーコート層によって、グラシン紙の耐水性および撥水性が向上し、伝票の雨天や屋外での使用およびプリントアウトを可能にする。
本発明のサーマルプリンタ用の隠蔽伝票は、特に、電気、ガス、水道などの検針伝票として非常に有用であり、しかも、その隠蔽層によって、使用量や請求金額などの個人情報をしっかりと保護することができる。
本発明のサーマルプリンタ用の隠蔽伝票では、安価なグラシン紙を使用し、隠蔽層を印刷によって形成することができるので、従来の隠蔽シールを用いた多重シートや2枚複写式伝票と比べても、その製造コストはかなり低下し、経済性に優れている。
また、本発明では、薄いグラシン紙を使用し、なおかつ、その内側にワックス層を設けることによって、感熱紙への熱伝導性が高まるので、サーマルプリンタによる印字コスト(すなわち、印加電圧)が低下(約半分に低下)し、このような観点からも、使用コストを下げることができる。
また、本発明では、従来のサーマルプリンタのノーマルモードで十分に印字することが可能であり(高出力で印字する必要がないので)、特別なサーマルプリンタや、さらなる装備を必要としない。
本発明のサーマルプリンタ用の隠蔽伝票は、従来の隠蔽層を設けていない伝票、すなわち、感熱紙のみの検針伝票と比べて、その製造コストがほとんど変わらず、隠蔽機能を付与して隠蔽性能を飛躍的に向上したにもかかわらず、その経済性は非常に優れている。
従って、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、従来の検針伝票の代替として、非常に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来の擬似接着層を介して感熱紙の全面(表面)に貼り合わされた隠蔽シート(すなわち、隠蔽シール)の外観(隠蔽模様)の例(数字地紋)を示す。なお、隠蔽シート(シール)に設けた隠蔽層は、シートの上側(表側)から、印刷によって形成されたものである。
【図2】従来の2枚複写式伝票の1枚目(最も上側)の伝票の印字面に設けた隠蔽層の外観(隠蔽模様)の例を示す。なお、2枚複写式伝票の1枚目(最も上側)の伝票に設けた隠蔽層は、印字面の上側(表側)から、印刷によって形成されたものである。
【図3】本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の模式断面図であって、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが分離した状態で本発明を模式的に示す。
【図4】本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票およびサーマルプリンタのサーマルヘッド(8)の模式断面図であって、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが接着剤(層)(7)によって接着された状態(仮接着状態)を示す。
【図5】本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の斜視上面図であって、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが接着された状態(仮接着状態)を示す。なお、図5では、構造をわかりやく説明するために、図3に示す形態の感熱層(2)、ワックス層(5)ならびにオーバーコート層(6)を省略して記載しているが、それぞれ、感熱紙(1)またはグラシン紙(3)に含まれている。
【図6】本発明で使用するグラシン紙(3)の内側(裏側)の面に印刷された隠蔽層(4)の地紋の一実施形態(数字地紋)を示す。
【図7】本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の隠蔽層(4)を有するグラシン紙(3)の上側からサーマルプリンタで印字した後の一実施形態を示す。なお、この実施形態では、隠蔽層(4)は、グラシン紙の内側(裏側)の面、すなわち、感熱紙に対向する側の面に印刷されている。
【図8】本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の印字後の感熱紙(1)の一実施形態(印字後、隠蔽層(4)を有するグラシン紙(3)を剥がした後の感熱層(2)の状態)を示す。なお、×印は、点状(スポット)で配置した接着剤の位置(接着跡)を示す。
【図9】本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の印字後に感熱紙(1)から剥がしたグラシン紙(3)の感熱層(2)に面していた側の面の一実施形態を示す。なお、×印は、点状(スポット)で配置した接着剤の位置(接着跡)を示す。
【図10】本発明の比較例2(ワックス層なし)で印字した感熱層の状態(印字面)を示す。
【図11】本発明の実施例2(ワックス層あり)で印字した感熱層の状態(印字面)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、図3〜図5に示す通り、従来のサーマルプリンタで印刷することのできる感熱紙(1)(感熱層(2)を含む)と、グラシン紙(3)とを備えた感熱印刷用紙、特に、サーマルプリンタを内蔵または付設したハンディターミナル(例えば、キャノン(Canon) プレア PRea KT−2、PRea GT−11、NECインフロンティア タフネス PW−HT−71、Tough Pro、シチズン(CITIZEN) TD24など)で簡便かつ迅速に印刷することができる、電気、ガス、水道などの検針伝票に適した感熱印刷用紙に関する。
【0010】
特に、本発明では、グラシン紙(3)は、隠蔽層(4)を備え、図3に示す通り、望ましくは、感熱紙(1)の感熱層(2)と対向する側の面に、隠蔽層(4)を備えていることを特徴とする。なお、図3では、本発明の説明を簡単にするために、本発明を感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが分離した状態で示すが、本発明は、図5に示す通り、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが、そのいずれかの任意の端部から、互いにめくって剥がせる状態(本明細書中、「仮接着状態」と呼ぶ場合もある)で接着されたものであり、この状態で、グラシン紙(3)の上側から、サーマルプリンタで印字を行うと、隠蔽層(4)の下側にある感熱紙(1)に印字された文字、数字などの情報は、隠蔽層(4)の上側からは簡単に判読することができず、隠蔽層(4)がない部分では、グラシン紙(3)が半透明であるために、その下側の感熱紙(1)に印字された情報は、グラシン紙(3)の上側からでも判読が可能であり、ユーザーは、グラシン紙(3)を隠蔽層(4)とともにめくって剥がすことによって、それまで他人の目に触れることなく、感熱紙(1)に記載された情報を確認することができる。なお、隠蔽層(4)は、グラシン紙(3)の表側、裏側のいずれに設けていてもよいが、サーマルプリンタのサーマルヘッドがグラシン紙(3)の表側を通過するので、隠蔽層(4)は、グラシン紙(3)の内側(裏側)、すなわち、グラシン紙(3)の感熱紙(1)と接する側の面に設けられていることが好ましい(図3)。
【0011】
隠蔽層(4)は、グラシン紙(3)とともに、感熱紙(1)の感熱層(2)の一部または全部を覆い隠すものであり、サーマルプリンタで感熱層(2)に印字した文字、数字などの情報は、隠蔽層(4)の上側からは、目視で判読することができない。例えば、隠蔽層(4)は、好ましくはグラシン紙(3)の感熱層(2)と対向する側の面に、印刷(例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷など)、インクジェット印刷、シルク印刷などの手段によって設けることができる。
【0012】
さらに、本発明では、グラシン紙(3)の感熱紙(1)の感熱層(2)と対向する側の面に、部分的にあるいは全面に、ワックス層(5)を配置することを特徴とし、例えば、図3に示す実施形態では、グラシン紙(3)の感熱紙(1)の感熱層(2)と対向する側の面に、隠蔽層(4)を設け、さらにその上側から、ワックス層(5)を配置している。図3に示す通り、ワックス層(5)は、グラシン紙(3)の隠蔽層(4)を設けていない部分、すなわち、グラシン紙(3)の上に直接設けてもよい。このように、ワックス層(5)は、感熱紙(1)の感熱層(2)と直接接することができるものであり、本発明では、ワックス層(5)に含まれるワックスの融点および膨張率を調整することによって、その熱伝導性を向上させることができ、感熱層(2)の発色および印字性能を飛躍的に向上させることができる。また、ワックス層(5)を設けることによって、サーマルプリンタでの印字の間に発生するグラシン紙(3)の皺を抑制することができる。
【0013】
また、本発明では、グラシン紙(3)のワックス層(5)を設けた面であって、感熱紙(1)の感熱層(2)に対向する側の面(すなわち、グラシン紙(3)の内側(裏側)の面)とは反対側の面(すなわち、外側(表側)の面)に、オーバーコート層(6)を設けていてもよい。オーバーコート層(6)としては、以下にて詳細に説明するが、ニス、ラッカーや樹脂などからなる透明の層が好ましく、グラシン紙(3)の表側の面に、オーバーコート層(6)を設けることによって、サーマルプリンタのサーマルヘッドの滑り(一般に、走行性やヘッドマッチングとよばれるもの)が向上し、さらに、グラシン紙(3)の耐水性および撥水性が飛躍的に向上する。
【0014】
図3に示す実施形態では、わかりやすく、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが分離した状態で本発明を示すが、図5に示す通り、本発明では、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが、そのいずれかの任意の端部から、互いにめくって剥がせる状態(すなわち、仮接着状態)で提供されることを特徴とする。
【0015】
本発明において、「仮接着状態」とは、上述の通り、本発明の隠蔽伝票のいずれかの任意の端部から、感熱紙(1)およびグラシン紙(3)を互いにめくって剥がせる状態、特に、感熱紙(1)から、グラシン紙(3)をめくって剥がせる状態を意味し、従来技術の「擬似接着状態」(面と面がその全面にわたって接着されている、いわゆる、シール状の接着のこと)(特許文献1および特許文献2を参照のこと)とは異なるものであり、例えば、本発明では、感熱紙(1)とグラシン紙(3)との間に接着剤を部分的に配置(例えば、接着剤を点状(スポット)で配置)して、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とがしっかりと結合はしているが、感熱紙(1)から、グラシン紙(3)を簡単にめくって剥がせるような状態になっている。
【0016】
ここで、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の構造をさらにわかりやすく、より具体的な実施形態で説明する。
【0017】
本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、図5に示す通り、感熱紙(1)の上に、グラシン紙(3)が、めくって剥がせる状態(以下にて、さらに詳細に説明する「仮接着状態」)で配置された構造を有する。本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、その大きさに特に限定はないが、従来のサーマルプリンタで印字することができる大きさにすることが望ましい。図5に示すように、感熱紙(1)よりもグラシン紙(3)のほうが小さくても、また、同じ大きさでも、あるいは、大きくてもよい。
【0018】
望ましくは、グラシン紙(3)の内側の面(あるいは、サーマルヘッドが通過する外側の面であってもよい)に、予め、印刷によって、隠蔽層(4)を形成する。
【0019】
図6に示す通り、本発明の一実施形態では、隠蔽層(4)は、例えば、数字がランダムに配置された数字地紋であってもよいが、隠蔽層(4)の模様(地紋)としては、感熱紙(1)の感熱層(2)に印字される文字、数字などの判読が困難になるようなものであれば、特に限定はない。図6に示す通り、本発明の一実施形態において、隠蔽層(4)の模様(地紋)として、数字地紋を採用するのは、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票を検針伝票として使用する場合、印字される使用量や請求金額などの第三者には知られたくない情報はたいていが数字であるため、図6に示すような数字地紋の上側からは、その判読がさらに困難となるからである。そして、その結果、本発明の隠蔽伝票では、情報の隠蔽性能が飛躍的に向上する。なお、図6に示す隠蔽層(4)の数字地紋は、望ましくは、図3で模式的に示す通り、グラシン紙(3)の内側(裏側)の面、すなわち、感熱紙(1)の感熱層(2)に対向する側の面に、印刷によって、設けたものである。従って、図6に示す数字地紋は、グラシン紙(3)の内側(裏側)(すなわち、感熱紙(1)の方)から見たものである。
【0020】
本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票を使用する場合、例えば、図5に示す実施形態では、グラシン紙(3)(および隠蔽層(4))の上側から、その下側にある感熱紙(1)にサーマルプリンタで印字することになる。
【0021】
より具体的には、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票を検針伝票として使用する場合の例として、サーマルプリンタで印字した後の状態(グラシン紙(3)の上側から見た外観)を図7に示す。
【0022】
本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票では、従来のサーマルプリンタを用いて、グラシン紙(3)(および隠蔽層(4))の上側から、感熱紙(1)の感熱層(2)上に直接印字することができる。検針伝票で具体的に印字される内容としては、特に限定はないが、例えば、図8に示す通り、顧客氏名、指針値、使用量、請求金額などが挙げられる。なお、図8は、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票を検針伝票としてサーマルプリンタで印字した後、グラシン紙(3)(および隠蔽層(4))を剥がして除去した後の状態を示す。
【0023】
ここで、図7は、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票を検針伝票としてサーマルプリンタで印字した後の状態、すなわち、グラシン紙(3)(および隠蔽層(4))を剥ぎ取る前の状態を示し、グラシン紙(3)の上側からであっても、サーマルプリンタで印字した顧客氏名などの情報ははっきりと読み取ることができる。また、グラシン紙(3)に隠蔽層(4)を配置した部分では、その下側に印字された指針値、使用量、請求金額などの情報は、隠蔽層(4)の上側から、目視では読み取ることができない。
【0024】
また、図9は、剥ぎ取った後のグラシン紙(3)および隠蔽層(4)をその裏側から(すなわち、感熱紙(1)と接していた側から)見た状態を示す。
【0025】
ここで、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票において、グラシン紙(1)と感熱紙(3)とがその任意の端部からめくって剥がせる「仮接着状態」とは、図5に示す通り、2枚1組となった感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが、例えば、接着剤で結合してはいるが、上述のように、簡単にめくって剥がせる状態にあることを意味する(図3および図5を参照のこと)。
【0026】
より具体的には、感熱紙(1)(好ましくは、感熱層(2))と、グラシン紙(3)(好ましくは、ワックス層(5))との間の所望の位置において、以下にて詳細に説明する接着剤を配置し、好ましくは接着剤を部分的に配置し、望ましくは接着剤を点状(スポット)で配置して、接着力を調整することによって、伝票の任意の端部からめくって剥がせる「仮接着状態」を達成することができる。
【0027】
さらにより具体的には、図8および図9の×印で示す位置に接着剤を点状(スポット)で部分的に配置することによって、感熱紙(1)とグラシン紙(3)とを互いに端部からめくって剥がせる「仮接着状態」を達成することができるが、使用する接着剤およびその付着位置は、適宜、その目的に応じて決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0028】
従って、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票を検針伝票として印字すると、図7のような外観となり、このときのA−A’の断面を図4に模式的に示す。
【0029】
図4に示す本発明の実施形態では、感熱紙(1)(望ましくは、感熱層(2))と、グラシン紙(3)(望ましくは、ワックス層(5))との間に、接着剤(層)(7)が、間隔を空けて、部分的に、しかも、点状(スポット)で配置されているので、上記で定義するような、グラシン紙または感熱紙の端部からめくって剥がせる状態(すなわち、仮接着状態)を維持することができる。なお、グラシン紙(3)を剥がす際には、この接着剤(7)からなる部分が破壊もしくは除去されることが望ましいが、感熱層(2)の印字面に悪影響を与えない範囲で感熱層(2)の一部が破壊されても、ワックス層(5)の一部が破壊されてもよい。
【0030】
また、本発明の図4に示す実施形態では、グラシン紙(3)のサーマルプリンタのサーマルヘッド(8)と面する最外部に、すなわち、グラシン紙(3)のワックス層(5)を配置した側と反対側の面に、オーバーコート層(6)を設けてもよい。オーバーコート層(6)は、望ましくは、ニス、ラッカーや樹脂からなる透明の層であり、サーマルヘッド(8)の滑りをよくすることができ、いわゆるヘッドの走行性(またはヘッドマッチング)を向上させることができ、非常に有益である。また、オーバーコート層(6)は、グラシン紙(3)の耐水性や撥水性などの性能をも向上させることができる。
【0031】
さらに、本発明の図4に示す実施形態では、グラシン紙(3)に、隠蔽層(4)の上側から、ワックス層(5)を形成している。
【0032】
このワックス層(5)には、グラシン紙(3)の皺やカーリングを抑制する効果がある。従来のハンディータイプのサーマルプリンタを使用する場合、本発明の感熱紙(1)とグラシン紙(3)とが2枚1組となった伝票は、長手軸方向にローラーに巻かれた(湾曲した)状態で、サーマルヘッドによって、印字(電圧印加)されることから、ワックス層(5)によるグラシン紙(3)の皺およびカーリングの抑制効果は、非常に有益である。
【0033】
また、以下にて詳細に説明するが、ワックス層(5)において、その中に含まれるワックスの種類および融点や膨張率を調整することによって、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱伝導性を飛躍的に向上させることができる。それによって、本発明では、感熱紙(1)の感熱層(2)の発色や印字性能が飛躍的に向上し、例えば、印字した文字や数字の濃度が濃くなり、文字の輪郭がよりシャープになり、文字や数字を感熱紙にくっきりと印字することができる。
【0034】
このように、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、電気、ガス、水道などのいわゆる検針伝票として非常に有用であり、しかも、従来のサーマルプリンタを内蔵または付設したポータブルハンディターミナルで十分に簡単に印刷することができる。しかも、本発明では、グラシン紙に設けた隠蔽層によって、電気、ガス、水道などの使用量や請求額などの個人情報をしっかりと確実に保護することができる。
【0035】
また、本発明の隠蔽伝票は、従来の検針伝票と比較しても、その製造コストはほとんど変わらず、その優れた個人情報保護機能を考慮すると、非常に経済性に優れている。
【0036】
以下、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票で使用する各構成要素(感熱紙(感熱層)、グラシン紙(隠蔽層、ワックス層、オーバーコート層)、接着剤(層))およびその製造方法について、詳しく説明する。なお、本明細書では、感熱紙(1)と感熱層(2)とをあわせて「感熱紙」と呼ぶ場合もあり、グラシン紙(3)、隠蔽層(4)、ワックス層(5)およびオーバーコート層(6)をあわせて「グラシン紙」と呼ぶ場合もある。
【0037】
感熱紙(1)
本発明で使用することのできる感熱紙は、少なくともその一部あるいはその全面に、少なくとも感熱層(2)を有し、感熱層(2)が1層からなるものであっても、感熱層(2)が2層以上の多層からなるものであってもよく、従来のサーマルプリンタで印字することのできるものであれば、特に制限なく使用することができる。
【0038】
本発明で使用することのできる感熱紙(1)は、通常、基材(ベース)部分の少なくともその一部あるいはその全面に感熱記録層(以下、「感熱層」)(2)とを有するシート状物であり、例えば、特許文献4(特開2007−230098号公報)に開示の感熱シートを使用することができる。なお、本発明では、感熱紙の感熱層(2)を除いた基材(ベース)部分を符号(1)で示す場合もある。
【0039】
感熱紙の基材(ベース)
感熱紙の基材(ベース)に用いる紙には、特に限定はないが、感熱層(感熱記録層)に印字する情報の機密性を考慮して、光を透過しにくいものを使用することが好ましい。
【0040】
光を透過しにくい基材としては、たとえば、パルプを主成分とする紙基材を主成分とする基材;これらの基材に白色無機顔料等の着色剤を含有させたもの等が挙げられる。
【0041】
パルプを主成分とする紙基材としては、上質紙、再生紙、光遮蔽紙(例えば、中間層を高不透明性の未晒しパルプ層とした多層抄きシート)、グラシン紙等が挙げられる。
【0042】
また、本発明では、基材として、合成樹脂などからなるフィルム基材を使用してもよい。フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セロファン、三酢酸セルロースフィルム、二酢酸セルロースフィルム、テトラフルオロエチレンフィルム、ポリ弗化ビニリデンフィルム、ポリモノクロロトリフルオロエチレンフィルム等が挙げられる。
【0043】
これらの基材は、適宜、必要に応じて使用される。
【0044】
紙基材の厚さは、従来のサーマルプリンタで印刷することができれば特に限定はないが、例えば、0.025〜0.19mm、好ましくは0.04〜0.09mm、より好ましくは0.057〜0.085mmであり、0.025mm未満であると、光を透過しやすくなり、感熱紙側(裏面)から印字情報を判読できるため、印字する情報の機密性を保つことができないなどの問題のおそれがあり、0.19mmを越えると、実際にロール製品または折り製品にしたとき、同じロール径または一冊の厚さを採用しても用紙が厚いために伝票数が半分以下になるおそれがあり、実際の使用に適さないなどの問題のおそれがある。
【0045】
紙基材の秤量は、例えば、20〜180g/m、好ましくは35〜85g/m、より好ましくは52〜80g/mであり、20g/m未満であると、光を透過しやすくなり、感熱紙側(裏面)から印字情報を判読できるため、印字する情報の機密性を保つことができないなどの問題のおそれがあり、180g/mを越えると、実際にロール製品または折り製品にしたとき、同じロール径または一冊の厚さを採用しても用紙が厚いために伝票数が半分以下になるおそれがあり、実際の使用に適さないなどの問題のおそれがある。
【0046】
感熱層
感熱層としては、従来提案されているものが利用できる。かかる感熱層としては、たとえば、反応性染料(染料前駆体)と顕色剤とを含有する層が挙げられる。かかる層においては、熱により反応性染料と顕色剤とが反応して発色する。
【0047】
感熱層は、反応性染料および顕色剤を含む単一の層であってもよく、また、反応性染料を含み且つ顕色剤を含まない層と、顕色剤を含み且つ反応性染料を含まない層とを含む二層以上の多層であってもよい。反応性、熱応答性に優れることから、単一の層であることが好ましい。
【0048】
反応性染料および顕色剤は、各種公知のものを使用できる。
【0049】
具体的な反応性染料と顕色剤との組み合わせとしては、ロイコ化合物(ロイコ染料)と電子受容性物質との組み合わせ、イミノ化合物とイソシアナート化合物との組み合わせ、長鎖脂肪酸鉄塩と多価フェノールとの組み合わせ等が挙げられる。
【0050】
これらの中で、ロイコ化合物と電子受容性物質との組み合わせは、熱応答性が良いこと、発色濃度が高いこと、比較的安定であることから好ましい。また、イミノ化合物とイソシアナート化合物との組み合わせは、その発色が界面活性剤の影響を受けにくく、保存安定性に優れるため好ましい。
【0051】
以下に、これらの反応性染料および顕色剤の具体例を示す。
【0052】
反応性染料として用いられるロイコ化合物としては、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の化合物が挙げられる。具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−3’−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N ,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6’−クロロ−8’−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、6’−ブロモ−3’−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−クロルフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−ニトロフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジエチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−メチルフェニル)フタリド、3−(2’−メトキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−4’−クロル−5’−メチルフェニル)フタリド、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4’−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’−ベンゾフルオラン等が挙げられる。これらのロイコ化合物は、単独で配合しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0053】
ロイコ化合物と接触してこれを発色させる電子受容性物質としては、特に限定されず、例えば、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸及びその金属塩等が挙げられる。
【0054】
具体的には4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、およびビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、などのフェノール性化合物、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのフェノール性化合物、または、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸などの芳香族カルボン酸、およびこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの多価金属との塩などの有機酸性物質、N−p−トルエンスルホニル−N’−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(p−ブトキシカルボニル)ウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア等のウレア化合物が挙げられる。
【0055】
これらの電子受容性物質は、単独で配合しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0056】
イミノ化合物は、少なくとも1個のイミノ基(=NH)を有する化合物である。
反応性染料として用いられるイミノ化合物としては、たとえば下記一般式(I)で表わされる常温固体の無色または淡色の化合物が挙げられる。
【0057】
【化1】

【0058】
[式中、Xは、隣接するC=Nと共役系を形成し得る芳香族性化合物残基を表す。]
【0059】
イミノ化合物として、具体的には、3−イミノイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラフルオロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−5,6−ジクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メトキシ−イソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプト−イソインドリン−1−オン、3−イミノ−6−ニトロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−イソインドリン−1−スピロ−ジオキソラン、1,1−ジメトキシ−3−イミノ−イソインドリン、1,1−ジエトキシ−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−エトキシ−3−イミノ−イソインドリン、1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1,3−ジイミノ−6−メトキシイソインドリン、1,3−ジイミノ−6−シアノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,7−ジチア−5,5,6,6−テトラヒドロイソインドリン、7−アミノ−2,3−ジメチル−5−オキソピロロ〔3,4b〕ピラジン、7−アミノ−2,3−ジフェニル−5−オキソピロロ〔3,4b〕ピラジン、1−イミノナフタル酸イミド、1−イミノジフェン酸イミド、1−フェニルイミノ−3−イミノイソインドリン、1−(3’−クロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,5’−ジクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,4’,5’−トリクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’−シアノ−4’−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’−クロロ−5’−シアノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,6’−ジクロロ−4’−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,5’−ジメトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’,5’−ジエトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’−メチル−4’−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5’−クロロ−2’−フェノキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(4’−N,N−ジメチルアミノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(3’−N,N−ジメチルアミノ−4’−メトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’−メトキシ−5’−N−フェニルカルバモイルフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2’−クロロ−5’−トリフルオロメチルフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5’,6’−ジクロロベンゾチアゾリル−2’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(6’−メチルベンゾチアゾリル−2’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(4’−フェニルアミノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(p−フェニルアゾフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ナフチル−1’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(アンスラキノン−1’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5’−クロロアンスラキノン−1’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(N−エチルカルバゾリル−3’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ナフトキノン−1’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ピリジル−4’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾロン−6’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(1’−メチルベンズイミダゾロン−6’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(7’−クロロベンズイミダゾロン−5’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2’−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−(2’,4’−ジニトロフェニルヒドラゾン)−3−イミノイソインドリン、1−(インダゾリル−3’−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(インダゾリル−3’−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン、1−(インダゾリル−3’−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラフルオロイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2’−イミノ)−3−イミノ−4,7−ジチアテトラヒドロイソインドリン、1−(4’,5’−ジシアノイミダゾリル−2’−イミノ)−3−イミノ−5,6−ジメチル−4,7−ピラジイソインドリン、1−(シアノベンゾイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボンアミドメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボメトキシメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボエトキシメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−N−フェニルカルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(3’−メチルフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(4’−クロロフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(4’−メトキシフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(3’−クロロ−4’−メチルフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−p−ニトロフェニルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(ジシアノメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−1’,2’,4’−トリアゾリル−(3’)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノチアゾイル−(2’)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−(2’)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノベンゾチアゾリル−(2’)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−(2’)−メチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノベンズイミダゾリル−(2’)−メチレン〕−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2’)−メチレン〕−3−イミノ−5−メトキシイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2’)−メチレン〕−3−イミノ−6−クロロイソインドリン、1−〔(1’−フェニル−3’−メチル−5−オキソ)−ピラゾリデン−4’〕−3−イミノイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2’)−メチレン〕−3−イミノ−4,7−ジチアテトラヒドロイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2’)−メチレン〕−3−イミノ−5,6−ジメチル−4,7−ピラジイソインドリン、1−〔(1’−メチル−3’−n−ブチル)−バルビツル酸−5’〕−3−イミノイソインドリン、3−イミノ−1−スルホ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−クロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−5,6−ジクロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,6,7−テトラクロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,6,7−テトラブロモ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,6,7−テトラフルオロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−ニトロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−メトキシ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプト安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホナフトエ酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−5−ブロモナフトエ酸イミド、3−イミノ−2−メチル−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オン等が挙げられる。
【0060】
イミノ化合物と接触してこれを発色させるイソシアナート化合物としては、常温固体の無色または淡色の芳香族イソシアナート化合物または複素環イソシアナート化合物が挙げられる。
【0061】
イソシアナート化合物として、具体的には、2,6−ジクロロフェニルイソシアナート、p−クロロフェニルイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアナート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−エトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジエトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジブトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、アゾベンゼン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアナート、ナフタリン−1,4−ジイソシアナート、ナフタリン−1,5−ジイソシアナート、ナフタリン−2,6−ジイソシアナート、ナフタリン−2,7−ジイソシアナート、3,3’−ジメチル−ビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ベンゾフェノン−3,3’−ジイソシアナート、フルオレン−2,7−ジイソシアナート、アンスラキノン−2,6−ジイソシアナート、9−エチルカルバゾール−3,6−ジイソシアナート、ビレン−3,8−ジイソシアナート、ナフタレン−1,3,7−トリイソシアナート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアナート、4,4’,4’’−トリイソシアナト−2,5−ジメトキシトリフェニルアミン、4,4’,4’’−トリイソシアナトトリフェニルアミン、p−ジメチルアミノフェニルイソシアナート、トリス(4−フェニルイソシアナート)チオフォスフェート等が挙げられる。
【0062】
これらのイソシアナート化合物は、必要に応じて、フェノール類、ランタム類、オキシム類等との付加化合物である、いわゆるブロックイソシアナートの形で用いてもよく、ジイソシアナートの2量体、例えば1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアナートの2量体、および3量体であるイソシアヌレートの形で用いてもよく、また、各種のポリオール等でアダクト化したポリイソシアナートとして用いることも可能である。
【0063】
感熱層中、反応性染料の配合量は、発色性を考慮すると、感熱層の全固形分に対して10〜50質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
【0064】
感熱層中、顕色剤の配合量は、反応性染料の合計100質量部に対し、100〜700質量部が好ましく、150〜400質量部がより好ましい。
【0065】
感熱層は、反応性染料および顕色剤に加えてさらに、バインダーを含有することが好ましい。
【0066】
バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン及びそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体などの水不溶性重合体のラテックスなどを挙げることができる。
【0067】
感熱層中、バインダーの配合量は、感熱層の全固形分の5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0068】
感熱層は、さらに、発色感度を調節するために、増感剤を含有することが好ましい。
【0069】
増感剤としては、従来から感熱記録体の増感剤として知られている化合物を使用することができ、例えば、比較的低融点(たとえば80〜150℃程度)の化合物で、反応性染料および顕色剤との相溶性を有する有機物(以下、熱可融性物質という)が挙げられる。かかる熱可融性物質は、反応性染料および顕色剤と相溶することにより、これら両成分の接触確率を高めて増感作用を発揮する。
【0070】
熱可融性物質としては、例えば、メタ・ターフェニル、パラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、シュウ酸ジベンジル、アジピン酸ジ−o−クロルベンジル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジル、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1,3−ビス(2−ナフトキシ)プロパンなどを挙げることができる。
【0071】
感熱層中、増感剤の配合量は、反応性染料の合計100質量部に対し、25〜500質量部が好ましく、100〜300質量部がより好ましい。
【0072】
感熱層は、さらに、感熱記録画像の保存性向上を主な目的として、画像安定化剤を含有してもよい。
【0073】
画像安定化剤としては、例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、および4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノールなどのフェノール系の化合物、4−ベンジルオキシフェニル−4’−(2−メチル−2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、および4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物、並びに1,3,5−トリス(2,6−ジメチルベンジル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)イソシアヌル酸などのイソシアヌル酸化合物から選ばれた1種以上を含むものを用いることができる。もちろん、画像安定化剤はこれらに限定されるものではなく、また、必要に応じて2種類以上の化合物を併用することもできる。
【0074】
感熱層中、画像安定化剤の配合量は、反応性染料の合計100質量部に対し、5〜100質量部が好ましく、10〜60質量部がより好ましい。
【0075】
感熱層は、さらに、耐水性を向上させるために、上述したバインダーを三次元硬化させるための架橋剤を含有させることができる。
【0076】
架橋剤としては、例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、および塩化マグネシウム、四ホウ酸ソーダ、四ホウ酸カリウム等の無機化合物又はホウ酸、ホウ酸トリエステル、ホウ素系ポリマー等が挙げられる。
【0077】
感熱層中、架橋剤の配合量は、感熱記録層の全固形分に対し、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0078】
感熱層は、さらに、顔料を含有してもよい。
【0079】
顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカなどの無機顔料、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が挙げられる。
【0080】
感熱層中、顔料の配合量は、発色濃度を低下させない程の量であることが好ましく、感熱記録層の全固形分に対して50質量%以下であることが好ましい。また、反応性染料100質量部に対し、1〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。
【0081】
感熱層は、さらに必要に応じて、感熱記録体に一般的に用いられている各種添加剤を含有することができる。
【0082】
かかる添加剤としては、例えば、ワックス類、金属石鹸、有色染料、蛍光染料、撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等が挙げられる。
【0083】
ワックス類としては、例えば、パラフィンワックス、カルナバロウワックス、マイクロクリスタリンワックス、およびポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス;ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、およびその誘導体などを挙げることができる。特にメチロール化された高級脂肪酸アミドを感熱記録層に添加すると、耐地肌かぶり性を悪化せずに増感効果を得ることができる。
【0084】
金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、およびオレイン酸亜鉛等をあげることができる。
【0085】
感熱記録層は、たとえば、反応性染料、顕色剤およびバインダー、ならびに任意の成分を水等の分散媒体に分散して塗工液を調製し、この塗工液を基材の片面上に塗布し、乾燥させることにより形成できる。
【0086】
このとき、反応性染料と顕色剤とを別々に分散媒体に分散し、感熱層を形成する際にそれらの分散液を混合することが好ましい。
【0087】
分散液の調製は、たとえばボールミル、アトライター、サンドミルなどの撹拌・粉砕機を用いて行うことができる。
【0088】
塗工液の塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング等が挙げられる。
【0089】
また、上記のようにして形成された感熱層は、さらに、スーパーカレンダーやソフトカレンダーなどの既知の平滑化方法を用いて平滑化処理が施されてもよい。これにより、その発色感度を高めることができる。
【0090】
平滑化処理においては、感熱層表面を、カレンダーの金属ロールおよび弾性ロールのいずれに当てて処理してもよい。
【0091】
感熱層の坪量は、発色性を考慮すると、1〜10g/mが好ましく、2〜5g/mがより好ましい。
【0092】
本発明において、感熱紙の厚さ(感熱層の厚さを含む)は、例えば、30〜200μm、好ましくは45〜95μm、より好ましくは62〜90μmであり、感熱紙の厚さが、30μm未満であると、光を透過しやすくなり、感熱紙側(裏面)から印字情報を判読できるため、印字する情報の機密性を保つことができないなどの問題のおそれがあり、200μmを越えると、実際にロール製品または折り製品に加工したとき、同じロール径、同じ一冊の厚さであっても、伝票数が半分以下になるおそれがあり、実際の使用に適さないなどの問題のおそれがある。
【0093】
本発明で使用することのできる感熱紙として、市販のものを使用してもよく、例えば、三菱製紙製のHA220AA、日本製紙製のTF51 KS−2S、TL69KL−LS、王子製紙製のPD170Rなどが好ましい。
【0094】
また、本発明では、感熱紙として、特開2007−125847号に記載の感熱シートあるいは感熱性および感圧性の両方の性質を有するシートを使用してもよい。特開2007−125847号に記載の感熱および/または感圧シートは、基材上に感圧記録層、必要に応じて感熱記録層を有するものである。基材および感熱記録層としては、上述の感熱シートと同様のものを使用することができる(詳細には、特開2007−125847号を参照のこと)。
【0095】
感熱および/または感圧シートとしては、上記以外に、王子製紙株式会社製のDP80B、DM80Bなど、日本製紙株式会社製のTW80KKなどが挙げられる。
【0096】
グラシン紙(3)
本発明で使用することのできるグラシン紙は、半透明であり、なおかつ、その下側に設けた感熱紙にグラシン紙の上側から印字した場合、グラシン紙の下側に印字した文字や数字などが、グラシン紙の上側から、しっかりと透けて読むことができるものであれば、特に限定はない。
【0097】
このようなグラシン紙の半透明性を得るためには、グラシン紙の質量(秤量)は、好ましくは23〜35g/m、より好ましくは24〜32g/m、さらにより好ましくは25.8〜30.5g/mである。グラシン紙の質量が、23g/m未満であると、加工性が悪くなるなどの問題のおそれがあり、35g/mを越えると、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱伝導性が悪くなり、グラシン紙の下側に配置した感熱紙において、十分な発色が得られないなどの問題のおそれがある。
【0098】
また、グラシン紙の厚さは、例えば、20〜35μm、好ましくは23〜32μm、より好ましくは25〜27μmであり、20μm未満であると、グラシン紙の裁断が難しくなる、接着剤を付けるのが難しくなる、加工性が悪くなるなどの問題のおそれがあり、35μmを越えると、サーマルプリンタでの印字の際に感熱紙への熱伝導性が悪くなる、グラシン紙の下側に配置した感熱紙において、十分な発色が得られないなどの問題のおそれがある。また、本発明では、グラシン紙の厚さを上記の範囲内とすることによって、ロール・ツー(to)・ロールでの印刷加工方法またはロールツー折りでの印刷加工方法のいずれでも印刷加工することができるので好ましい。
【0099】
本発明で使用することのできるグラシン紙としては、例えば、日本製紙製の「耐湿グラシン」(秤量:25.8g/m、厚さ:26.3μm)、王子製紙製の「薄口グラシン」(秤量:25.8g/m、厚さ:25.3μm)、王子製紙製の「厚口グラシン」(秤量:30.5g/m、厚さ:29.9μm)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
隠蔽層(4)
本発明において、隠蔽層は、少なくともグラシン紙の一部または全面に形成されるものであり、グラシン紙とワックス層との間、および/または、グラシン紙のワックス層とは反対側の面に、特に、グラシン紙とワックス層との間に、隠蔽層を形成することが好ましい。なお、以下にて詳細に説明するが、ワックス層は、感熱紙の感熱層と対向して配置されるものである。本発明で使用する隠蔽層は、感熱紙に記載(印字)される情報、特に、文字や数字による情報の容易な判読および推測を困難にすることを目的として、グラシン紙の一部または全面に設けられたものである。なお、本発明では、グラシン紙のいずれかの側あるいは両側に隠蔽層を設けてもよいが、サーマルプリンタのサーマルヘッドの走行性(ヘッドマッチング)、熱による隠蔽層の剥離や汚れを防ぐためには、グラシン紙の裏側、すなわち、グラシン紙の感熱紙と面する側の面に、隠蔽層を設けることが好ましい(図3および図4の実施形態を参照のこと)。また、以下にて詳細に説明するが、本発明では、グラシン紙とワックス層との間に、隠蔽層を設けることが好ましい(図3および図4の実施形態を参照のこと)。隠蔽層は、グラシン紙の全面に配置してもよいし、グラシン紙の隠蔽が必要な該当箇所にだけ部分的に配置してもよい。
【0101】
隠蔽層は、感熱紙に記載された情報の判読を困難にすることができるものであれば特に限定はなく、例えば、いわゆる白ベタ、黒ベタと呼ばれる白色や黒色のインクで塗りつぶしたものであってもよい。あるいは、隠蔽層は、文字地紋などの地紋層を形成してもよい。なお、本発明では、文字地紋は、文字だけでなく、数字を含んでいてもよく、また、数字だけからなる数字地紋であってもよい。
【0102】
地紋層は、通常の印刷によって形成することができ、印刷方法としては、特に限定はなく、例えば、従来公知の種々の印刷方法が可能である。好ましくはオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷であり、中でもオフセット印刷が特に好適である。
【0103】
上述の通り、地紋層に含まれる文字に特に限定はないが、隠蔽情報の判読をさらに困難とするために、感熱紙に印字される情報と同一種類の文字(フォント)を使用することが好ましい。例えば、隠蔽される情報(隠蔽情報)が明朝体で感熱紙に記載される場合には、地紋層を明朝体の文字で形成することが好ましい。隠蔽情報が数字を含む場合には、地紋層は数字を含むことが好ましい。本発明において、地紋層を形成することのできる文字として、あらゆる種類の全ての文字を使用することができ、あらゆる数字を含んでいてもよい。複数種類のフォントの文字と数字を組み合わせて用いると、隠蔽情報の判読がさらに困難となるため好ましい。また、地紋層に反転した文字を含ませて印刷することによって、隠蔽情報の判読をさらに困難とすることもできる。
【0104】
地紋層を形成する文字の大きさが隠蔽情報の文字よりも小さいと、隠蔽情報が分かりやすくなる傾向がある。そこで、隠蔽情報の判読をさらに困難とするために、文字地紋層として印刷される文字の大きさ(サイズ)を隠蔽される情報の文字よりも少し大きく、例えば、0.5〜6ポイント、好ましくは1〜4ポイント大きくすることが望ましい。大きさの異なる文字を組み合わせて使用すると、隠蔽情報の判読がさらに困難となるのでさらに好ましい。
【0105】
地紋層における文字の密度を高めることによっても、隠蔽情報の判読がさらに困難となるので好ましい。
【0106】
地紋層における文字地紋の割合は、文字地紋層の全面積に対して、50%以上、好ましくは60〜90%、より好ましくは70〜85%である。従って、文字地紋層における文字地紋のないスペース(すなわち、背景)は、文字地紋層の全面積に対して、90%未満、好ましくは50〜85%、より好ましくは70〜85%未満である。
【0107】
また、地紋層において、文字の角度を隠蔽情報の文字に対して、1〜360°、好ましくは1〜270°、より好ましくは1〜180°、さらにより好ましくは1〜90°で任意にずらして印刷することによって、隠蔽情報の判読がさらに困難となるので好ましい。また、文字の角度をランダムにあらゆる角度で印刷してもよい。
【0108】
一般に、感熱紙に印字される文字の色は黒色であるので、隠蔽層の地紋を形成する文字あるいは背景を1色以上(例えば、黒色、青色、紺色、群青色、紺藍色、濃紺色、紫色など)、好ましくは2色以上の色(例えば、黒色と、青色、紺色、群青色、紺藍色、濃紺色、紫色などの青色系の色とから選択される2色以上)で印刷することによって、感熱紙に印字された情報の判読はさらに困難となる。また、文字と背景の色を反転させてもよい。すなわち、図6に示す通り、背景を塗りつぶして、文字をいわゆる白抜きにしても良い。
【0109】
隠蔽層の厚さは、通常0.1〜3.0μm、好ましくは0.2〜2.0μm、より好ましくは0.5〜1.5μmであり、隠蔽層の厚さが0.1μm未満であると、濃色のインキを使用しても隠蔽性が発揮されないなどの問題のおそれがあり、厚さが3.0μmを越えると、インキの硬化不足による汚れが発生しやすい、また、厚みが増すことによる感熱紙の発色障害などの問題のおそれがある。
【0110】
図6および図9には、本発明の好ましい実施形態において、グラシン紙の内側(裏側)(すなわち、感熱紙に面する側の面)に印刷した隠蔽層の例として数字地紋を示すが、本発明において使用することのできる隠蔽層としては、このような数字地紋や文字地紋だけでなく、いわゆる迷彩地紋などの他の地紋を採用してもよい。
【0111】
ワックス層(5)
本発明では、グラシン紙の内側(裏側)(すなわち、感熱紙と面する側の面)の少なくとも一部または全面に、ワックスを塗布して、ワックス層を形成する。なお、本発明では、グラシン紙の感熱紙と面する側の面に隠蔽層を設けた場合、隠蔽層の上側から、ワックスをそのまま直接塗布してワックス層を形成してもよい(すなわち、この場合、隠蔽層は、図3および図4に示すように、グラシン紙とワックス層との間に位置することになる)。なお、隠蔽層をグラシン紙とワックス層との間に配置することによって、印刷の際に隠蔽層が剥離することや、感熱紙への付着などを防止することができるので好ましい。本発明において、グラシン紙へのワックスの塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、ホットメルトフレキソ方式、ホットメルトグラビア方式、ホットメルトノズルによる塗布などが挙げられ、ホットメルトフレキソ方式が特に好ましい。
【0112】
ワックス層の厚みは、例えば、1〜7μm、好ましくは1.2〜6μm、より好ましくは1.5〜3.5μmである。ワックス層の厚みが、1μm未満であると、ワックスは軟化するが、感熱紙に十分に密着することができず、印字性能が向上しないなどの問題のおそれがあり、7μmを越えると、ワックス層の厚みによって、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱が伝わりにくく、印字性能が向上しないなどの問題のおそれがある。
【0113】
ワックス層をグラシン紙の内側(裏側)(すなわち、感熱紙と面する側の面)に設けることによって、グラシン紙に発生する皺、特に、サーマルプリンタ(特に、電気、ガス、水道の検針員が使用するポータブルハンディターミナルに内蔵または付設されたサーマルプリンタ)を使用して印字する際には、感熱紙にグラシン紙を重ねた状態で、2枚同時にローラーで折り曲げて印字するので(いわゆるロール・ツー(to)・ロールまたはロールツー折りでの印刷加工方法)、グラシン紙の内側(裏側)にワックス層があると、グラシン紙の剛性が向上するので、印字の際にグラシン紙に発生する皺を抑制することができる。
【0114】
本発明において、ワックス層は、融点が50〜80℃、好ましくは50〜75℃、より好ましくは50〜70℃、さらにより好ましくは50〜60℃、最も好ましくは55〜60℃のワックスを含むことが望ましい。ワックス層に含まれるワックスの融点が50℃未満であると、例えば、季節による温度変化によって、ワックスが感熱紙に密着し、ブロッキングするなどの問題のおそれがあり、融点が80℃を越えると、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱では十分に軟化せず、感熱紙への密着の割合が少ないために、印字性能が向上しないなどの問題のおそれがある。
【0115】
本発明において、ワックス層に含まれるワックスとしては、例えば、パラフィンワックス(例えば、日本精蝋製のパラフィンワックス130F(融点57℃、膨張率17.25%)、JX日鉱日石エネルギー製のパラフィンワックス135F(融点58℃、膨張率17.25%)、日本精蝋製のパラフィンワックス145F(融点63℃、膨張率17.50%)、日本精蝋製のパラフィンワックス HNP−3(融点66℃、膨張率20.3%)、日本精蝋製のパラフィンワックス HNP−9(融点75℃、膨張率21.4%)など)、植物ワックス(例えば、加藤洋行のキャンデリラワックス(融点60〜70℃、膨張率11.92%)、加藤洋行のカルナバワックス(融点86℃、膨張率15.35%)など)、動物ワックス(例えば、加藤洋行のみつろう(融点63℃、膨張率9.60%)など)、合成ワックス(例えば、中京油脂製のNP−WAX−H−10(融点70〜75℃、膨張率13.6%)、日本精蝋製のET0030(融点69℃、膨張率18.5%)など)などが挙げられるが、これらを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、本発明では、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特に、融点が50〜75℃のパラフィンワックス(例えば、パラフィンワックス130F(融点57℃、膨張率17.25%)、パラフィンワックス135F(融点58℃、膨張率17.25%)、パラフィンワックス145F(融点63℃、膨張率17.50%)、パラフィンワックス HNP−3(融点66℃、膨張率20.3%)、パラフィンワックス HNP−9(融点75℃、膨張率21.4%)など)、好ましくは融点が50〜70℃のパラフィンワックス(例えば、パラフィンワックス130F(融点57℃、膨張率17.25%)、パラフィンワックス135F(融点58℃、膨張率17.25%)、パラフィンワックス145F(融点63℃、膨張率17.50%)、パラフィンワックス HNP−3(融点66℃、膨張率20.3%)など)、より好ましくは融点が50〜60℃のパラフィンワックス(例えば、パラフィンワックス130F(融点57℃、膨張率17.25%)、パラフィンワックス135F(融点58℃、膨張率17.25%)など)、さらにより好ましくは融点が55〜60℃のパラフィンワックス(例えば、パラフィンワックス130F(融点57℃、膨張率17.25%)、パラフィンワックス135F(融点58℃、膨張率17.25%)など)を使用することが好ましい。
【0116】
また、本発明では、使用するワックスの融点を上述の通り50〜80℃、好ましくは50〜75℃、より好ましくは50〜70℃、さらにより好ましくは50〜60℃、最も好ましくは55〜60℃とし、なおかつ、ワックスの膨張率を5〜25%、好ましくは15〜22%、より好ましくは15〜20%、最も好ましくは17〜18%とすることによって、感熱紙への熱伝導性が飛躍的に向上し、感熱紙の発色および印字性能が飛躍的に向上し、印字した文字や数字の輪郭がよりくっきりと鮮明になり、感熱層の発色が良くなり、印字した文字や数字の濃度が高くなる。また、ワックスの融点および膨張率が上記の範囲内であると、ワックスが感熱紙に融着(転写)することもない。使用するワックスの膨張率が5%未満であると、融点が低くても感熱紙にワックスが密着して熱伝導を向上させる効果が少ないなどの問題のおそれがあり、膨張率が25%を越えると、一般的な環境温度でも変動し、適当でないなどの問題のおそれがある。
【0117】
このように、融点および膨張率を調整したワックスを含むワックス層をグラシン紙の内側(裏側)、すなわち、感熱紙の感熱層と面する側の面に配置することによって、このようなグラシン紙の上側から、サーマルプリンタを用いてその下側にある感熱紙に印字すると、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱がワックス層に伝わり、その中に含まれるワックスが軟化して膨張し、感熱層と密着することができるので、加えられた熱量が効率よく感熱紙に伝わる。また、本発明では、このようなワックス層を利用した構造とすることによって、熱量の伝達ロスが低下する。さらに、上記の通り、本発明で使用するグラシン紙は、厚さが20〜35μmの非常に薄いものであり、従来の擬似接着層を介したいわゆる隠蔽シールを使用した感熱記録多重シート(特許文献1および特許文献2)や従来の2枚複写式伝票(特許文献3)と比べても、感熱層までの距離は、格段に短くなっている。従って、本発明では、薄層グラシン紙を使用することによって、サーマルプリンタのサーマルヘッドから感熱紙への熱量の伝達ロスがさらに低下し、さらに、上述の通り、グラシン紙と感熱層との間にワックス層を設けることによっても熱伝導性が向上するので、サーマルプリンタの印字出力(すなわち、印加電圧)を下げることができ、その結果、印字コストが低下して、印字の経済性が向上する。また、本発明で使用するグラシン紙は安価であるので、このような観点からも、隠蔽伝票の製造コストを大幅に下げることができる。
【0118】
オーバーコート層(6)
本発明では、グラシン紙のワックス層を設けた面(すなわち、感熱紙の感熱層に対向する側の面)とは反対側の面であって、サーマルプリンタのサーマルヘッドと接する側の面の少なくとも一部または全面に、オーバーコート層を設けてもよい。
【0119】
オーバーコート層は、一般にニスやラッカーとして知られている樹脂塗料をグラシン紙に塗布することによって形成することができる樹脂層、望ましくは透明な樹脂の層である。なお、オーバーコート層の形成は、グラシン紙に隠蔽層および/またはワックス層を形成する前であっても後であってもよいが、グラシン紙に、まず、オーバーコート層を設けることが好ましい。
【0120】
オーバーコート層を形成(塗布)する方法としては、特に限定されないが、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷などが挙げられ、オフセット印刷またはフレキソ印刷で形成することが好ましい。
【0121】
オーバーコート層をグラシン紙に形成することによって、ワックス層と同様に、グラシン紙の皺の発生やカーリングなどの変形を防止することができる。
【0122】
また、グラシン紙にオーバーコート層を設けることによって、サーマルプリンタのサーマルヘッドの走行性(すなわち、ヘッドマッチング)を向上させることができる。特に、グラシン紙のサーマルプリンタのサーマルヘッドと接する側の面に、オーバーコート層のみを設け、その反対側(内側または裏側)の面(すなわち、感熱紙の感熱層に対向する側の面)に、隠蔽層およびワックス層を設けることによって、特に好ましくは、グラシン紙とワックス層との間に隠蔽層を設けることによって、図3および図4、特に図4に示す通り、グラシン紙(3)のサーマルヘッド(8)と接する側の面には段差がなくなり、平らで平滑な面となり、摩擦が少なく、本発明の隠蔽伝票は、サーマルヘッド(8)と接しながら、スムースに走行することができるようになる(一般に、サーマルプリンタ内で、感熱伝票が搬送されて、サーマルヘッドと接しながら、電圧を印加することによって、印字する)。また、一般に、サーマルヘッド(8)は、伝票の全幅(伝票の長手軸方向に対して垂直方向の短い方の距離)にわたって印字するものであり、この走行性(すなわち、ヘッドマッチング)の向上は、感熱紙への印字性能の向上に非常に有益なものとなる。
【0123】
さらに、グラシン紙にオーバーコート層を設けることによって、グラシン紙の耐水性および撥水性が向上し、例えば、本発明を検針伝票として使用した場合、検針員が雨天の野外で使用およびプリントアウトした場合であっても、オーバーコート層が水を弾き、グラシン紙に水が浸透したり、破れたりすることを防止することができる。
【0124】
オーバーコート層を形成することのできる樹脂としては、熱が加わっても変形しにくい硬質の樹脂であれば特に限定はなく、例えば、当該分野で公知の紫外線(UV)硬化型樹脂、例えば、紫外線(UV)硬化型のアクリル樹脂、より具体的にはウレタン−アクリル共重合紫外線(UV)硬化型樹脂などが挙げられる。なかでも、グラシン紙の皺やカーリングなどの変形の防止、耐水性、撥水性およびサーマルヘッドの走行性(ヘッドマッチング)の向上などの観点から、紫外線(UV)硬化型のアクリル樹脂(OPニス)を使用することが好ましい。OPニスとしては、日本化薬社製の「UFR−11D」、DIC社製の「WLOPニスWS」、T&K TOKA社製の剥離OPニス「UP−200」などの市販品を使用してもよい。
【0125】
オーバーコート層の厚さは、例えば、0.1〜3.0μm、好ましくは0.2〜1.5μm、より好ましくは0.3〜0.8μmであり、厚さが、0.1μm未満であると、走行時にスティッキングが発生したり、耐水性、撥水性が発揮されにくいなどの問題のおそれがあり、厚さが3.0μmを越えると、オーバーコート層の厚みが増すことによって、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱が伝わりにくく、感熱紙の発色が悪くなるなどの問題のおそれがある。
【0126】
また、本発明では、グラシン紙に、オーバーコート層、隠蔽層、ワックス層を設ける前または後に、必要に応じて、さまざまな情報、例えば、インストラクション(例えば、「こちら側からゆっくりはがしてご覧ください」などの指示、矢印などの剥がす位置を示した記号など)、社名、店名、営業店からのコメント、ロゴ、商標等を印刷していてもよい。また、さらに、感熱紙の感熱層またはその裏側の面にも、さまざまな情報(例えば、料金体系、連絡先、支払い方法、広告、案内文、使用方法等)を印刷しておくこともできる。
【0127】
接着剤(層)(7)
本発明では、感熱紙とグラシン紙とを接着剤で接着することによって、グラシン紙を隠蔽層とともに、感熱紙から、簡単にめくって剥がせる状態、すなわち「仮接着状態」で2枚1組にする。
【0128】
本発明において使用することができる接着剤としては、グラシン紙をその任意の端部からめくって剥がせる仮接着状態を達成することができ、なおかつ、感熱紙の感熱層の変色を誘発しないものであれば、特に限定はないが、例えば、糊(例えば、酢酸ビニルのエマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、アクリル酢酸ビニルエマルジョン、高級脂肪酸系エマルジョンなど)などが挙げられる。これらのなかでも、仮接着剤状態にふさわしい接着力、感熱紙の感熱層を変色しないことなどの観点から、糊として、水性エマルジョン糊、特に、酢酸ビニルのエマルジョン(例えば、三井物産ケミカル製のフルタイト MA30、三井物産ケミカル製のMF26、石塚産業製のサクラノール AB−7、日栄加工製のライフボンド AV−785Nなど)を使用することが特に好ましい。
【0129】
本発明では、グラシン紙と感熱紙との間での仮接着状態を達成するために、すなわち、本発明の隠蔽伝票のいずれかの任意の端部から、グラシン紙および感熱紙を互いにめくって剥がせる状態、特に、グラシン紙を感熱紙からめくって剥がせる状態を形成するために、上記接着剤をグラシン紙と感熱紙との間に「部分的」に配置することが好ましい。これは、接着剤をグラシン紙または感熱紙の全面に配置した場合、グラシン紙の剥離が非常に困難となるためである。また、接着剤をグラシン紙または感熱紙に直線状で連続して配置した場合、例えば、グラシン紙または感熱紙の長手軸方向(図7のA−A’方向、すなわち、印刷時の伝票の走行方向)の端部に沿って直線状で連続して配置した場合、2枚1組となった伝票を長手軸方向にロール状に曲げる場合や、サーマルプリンタで印字する場合には、ローラー(例えば、プラテンローラ)上を湾曲した状態で通過するので、そのときに、グラシン紙と感熱紙との走行距離に差が生じ、それが皺となって表れる。つまり、グラシン紙を上側にしてローラー上を湾曲した状態で通過する際には、グラシン紙の方が感熱紙よりも移動距離が長くなるので、伝票の長手軸方向の端部を直線状で連続して固定して通過させると、どうしてもグラシン紙に皺が発生する。従って、本発明において、接着剤を長手軸方向の端部に沿って、直線状に配置することは、望ましくない。
【0130】
そこで、本発明では、図8および図9の×印で示す通り、接着剤を部分的に、望ましくは点状(スポット)で配置する。図8は、サーマルプリンタでの印字後にグラシン紙をめくって剥がした後の感熱紙の印字面の状態を示すものであるが、これは、×印で示す通り、感熱紙の長手軸方向の端部(図7のA−A’方向の端部)に沿って、接着剤を点状(スポット)で配置したことを示す。また、図8に示す実施形態では、感熱紙の長手軸方向に対して垂直方向の端部に沿っても、接着剤を点状(スポット)で配置したことを示す。また、図9では、サーマルプリンタでの印字後にめくって剥がしたグラシン紙の状態(内側(裏側)、すなわち感熱紙に面していた側)を示すものであるが、ここでも同様に、接着剤を点状(スポット)で配置することを示す。
【0131】
このように、本発明では、接着剤を部分的に、特に好ましくは点状(スポット)で配置することによって、グラシン紙と感熱紙との間で、伝票のいずれかの任意の端部から、グラシン紙および感熱紙を互いにめくって剥がせる状態(すなわち、仮接着状態)、特に、グラシン紙を感熱紙からめくって剥がせる状態を達成することができる。
【0132】
なお、接着剤をグラシン紙および/または感熱紙に部分的に、特に好ましくは点状(スポット)で配置する場合、その接着位置は、伝票の任意の端部からめくって剥がせる限り特に限定されないが、サーマルプリンタで印字する部分を避けることが望ましい。例えば、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票では、図8および図9に示す通り、伝票の周囲に沿って、その端部からある程度の間隔を空けて、接着剤を点状(スポット)で任意の間隔をあけて端部に沿って配置することが好ましい。
【0133】
接着剤をグラシン紙と感熱紙との間で部分的、好ましくは点状(スポット)で配置した場合、本発明の伝票をロール状に巻き上げても、あるいは、サーマルプリンタ内でローラ上を湾曲して通過しても、距離の差を吸収することができ、皺の形成を防止し、きれいな伝票の外観を維持することができる。
【0134】
本発明における接着剤による仮接着状態をより具体的に図4に模式図で示す。図4は、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の断面図(図7に示す実施形態のA−A’に沿って切り取った断面図)を模式的に示すものである。この実施形態でも、グラシン紙と感熱紙との間に接着剤(層)(7)が配置されており、好ましくはグラシン紙(3)に設けたワックス層(5)と、感熱紙(1)の感熱層(2)との間に、接着剤(層)(7)が存在する。なお、接着剤(層)(7)をグラシン紙(3)および/または感熱紙(ベース)(1)に直接配置してもよい。接着剤(層)(7)は、図4および図7〜図9、特に図8および図9の×印で示す通り、部分的に、しかも、間隔を空けて、伝票の長手軸方向(すなわち、図7のA−A’方向)の端部に沿って、点状(スポット)で配置されている。図4および図7〜図9は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明、特に、接着剤の位置は、所望により任意に変更することが可能であり、特に限定されるものではない。
【0135】
また、図8および図9の斜線部で示す通り、仮接着に用いた接着剤あるいはそれよりも強力な接着剤を使用して、グラシン紙と感熱紙とを部分的により強力に接着してもよい。この場合、接着は点状でも、線状でも、帯状であってもよく、グラシン紙を感熱紙から分離できるようにしていても、分離できないようにしていてもよい。
【0136】
本発明において、使用する接着剤(層)の厚さは、伝票の端部からめくって剥がせる仮接着状態をつくりだせるものであれば、特に限定はなく、例えば、1〜15μm、好ましくは2〜10μm、より好ましくは3〜8μmであり、接着剤の厚さが1μm未満であると、接着剤成分が感熱紙に浸透し、接着剤成分が極端に少なくなるので、十分にグラシン紙に接着することができないなどの問題のおそれがあり、厚さが15μmを越えると、貼り合わせた部分を剥がすとき、感熱層の印字面を破壊(紙破)し、仮接着状態をうまく剥がす(解除する)ことができないなどの問題のおそれがある。
【0137】
また、本発明において、使用する接着剤の量は、伝票の任意の端部から、めくって剥がせる仮接着状態をつくりだせるものであれば特に限定はなく、例えば、0.001〜0.025μl、好ましくは0.003〜0.01μlであり、接着剤の量が0.001μl未満であると、接着剤成分が感熱紙に浸透し、接着剤成分が極端に少なくなるので、十分にグラシン紙に接着することができないなどの問題のおそれがあり、接着剤の量が0.025μlを越えると、貼り合わせた部分を剥がすときに感熱層の印字面を破壊(紙破)し、仮接着状態をうまく剥がす(解除する)ことができないなどの問題のおそれがある。
【0138】
なお、本発明において、接着剤は、グラシン紙に塗布しても、感熱紙に塗布しても、グラシン紙と感熱紙の両方に塗布してもよい。接着剤の塗布方法としては、特に限定はないが、例えば、フレキソ方式、ノズル方式などの方法で塗布することができる。
【0139】
本発明では、上述のように、グラシン紙と感熱紙とをその任意の端部からめくって剥がせる仮接着状態で接着し、例えば、図5に示すような実施形態で提供および使用することができる。図5に示す実施形態は、隠蔽層(4)を有するグラシン紙(3)が、感熱紙(1)よりも小さな寸法を有するように示されているが、グラシン紙(3)の寸法は、感熱紙(1)の寸法と同じであっても、感熱紙(1)の寸法よりも大きくてもよい。
【0140】
本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の製造方法は、特に限定されないが、グラシン紙の一方の面の少なくとも一部に隠蔽層を形成し、グラシン紙の隠蔽層を形成した面および/またはその反対側の面の少なくとも一部にワックス層を形成し、グラシン紙のワックス層と、感熱紙の感熱層とが対向するように、グラシン紙と感熱紙とを接着する。また、グラシン紙のサーマルプリンタのサーマルヘッドと接する側の面に、オーバーコート層を設けていてもよい。本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の製造方法では、例えば、グラシン紙の一方の面にオーバーコート層を形成し、そして、好ましくは他方の面に隠蔽層さらにその上からワックス層を形成することができる。隠蔽層および/またはワックス層を設ける前に、グラシン紙にオーバーコート層を設けても、隠蔽層および/またはワックス層を設けた後にオーバーコート層を設けてもよい。また、隠蔽層をオーバーコート層側に設けてもよい。ここで、感熱紙を用意し、感熱紙(好ましくは感熱層)またはグラシン紙(好ましくはワックス層)あるいはその両方に接着剤を塗布し、感熱紙の感熱層と、グラシン紙のワックス層とが対向するように、感熱紙とグラシン紙とを互いにその任意の端部からめくって剥がせるように、望ましくは、グラシン紙を感熱紙からめくって剥がせるように接着する。そして、乾燥させて、必要に応じて、所望の寸法に裁断することによって、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票ができあがる。また、必要に応じて、グラシン紙および感熱紙のいずれの面においても必要な情報を予め記載しておいてもよい。
【0141】
以下の実施例に本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票の製造方法を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0142】
グラシン紙(日本製紙製の耐湿グラシン)(秤量25.8g/m、寸法:7.9cm×20.32cm×厚さ26.3μm)の片面に、UV硬化型のアクリル樹脂(日本化薬製のカヤノーバ UFR−11D)をオフセット印刷で塗布して、乾燥させ、厚さ0.8μmのオーバーコート層を形成した。
グラシン紙のオーバーコート層を形成した側とは反対側の面に、図6に示す数字地紋(9ポイント、ゴシック、90°回転)をT&K TOKA製のインクNVR黒およびNVR群青を用いて、太陽機械 TOF302で印刷(数字の部分を白ヌキで背景を印刷)し、乾燥させて、隠蔽層(寸法:6.4cm×11.5cm×厚さ0.8μm)を形成した。
隠蔽層の上側から、グラシン紙全体にわたって、以下の表1に示すワックスをそれぞれ太陽機械 FOF302で塗布し、乾燥させて、厚さ3.0μmのワックス層を形成した。
【0143】
【表1】

【0144】
接着剤として、水性酢酸ビニルエマルジョン糊(石塚産業製のAB−7)を感熱紙表面に、伝票の仕上がり端部から1mm内側に20mmの間隔をあけて、0.5mm×1.0mmのドットパターンで塗布し、感熱層とワックス層とが対向するように、グラシン紙と貼り合わせた。
【0145】
このようにして製造した隠蔽伝票をサーマルプリンタ(NECインフロンティア製、PW−HT−71 タフネス)(黒濃度−10〜−40モード)で印字した。
【0146】
印字性能を以下に示すA〜Fの6段階で評価し、その結果を以下の表2に示す。
【0147】
A:1ドットラインの高さ(幅)(h)が平均で150μm以上(150≦h)
B:1ドットラインの高さ(幅)(h)が平均で146μm以上、150μm未満(146≦h<150)
C:1ドットラインの高さ(幅)(h)が平均で142μm以上、146μm未満(142≦h<146)
D:1ドットラインの高さ(幅)(h)が平均で138μm以上、142μm未満(138≦h<142)
E:1ドットラインの高さ(幅)(h)が平均で134μm以上、138μm未満(134≦h<138)
F:1ドットラインの高さ(幅)(h)が平均で134μm未満(h<134)、あるいは、4ドットのラインが切れている
【0148】
【表2】

【0149】
本発明では、実施例1〜7に示す通り、グラシン紙に隠蔽層を印刷し、さらにその上側からワックスを塗布することによって、感熱紙の印字性能が向上する。特に、ワックスとして、パラフィンワックスを使用した場合、パラフィンワックスはその融点が低く(50〜80℃)、なおかつ、膨張率が高い(17%以上)ので、感熱紙への印字性能が向上する。パラフィンワックスのなかでも、特に、融点が50〜60℃(望ましくは55〜60℃)のパラフィンワックス 130F、パラフィンワックス 135Fは、その膨張率も高く(膨張率:17.25%)、優れた発色および印字性能を感熱紙に提供することができる。
【0150】
比較例1のカルナバワックス(植物ワックス)を使用した場合、その融点はパラフィンワックスよりも高く(融点:86℃)、比較的高い膨張率(膨張率:15.35%)を有しているにも関わらず、その印字性は低いことがわかった。
【0151】
また、本発明では、実施例6および実施例7に示す通り、キャンデリラワックス(植物ワックス)(実施例6)やみつろう(動物ワックス)(実施例7)を使用した場合であっても、比較例1のように高すぎず、適度に低い融点(すなわち、50〜70℃の融点)を有し、ある程度の膨張率を有してさえいれば、その発色および印字性能は良好なものとなることがわかった。
【0152】
驚くべきことに、比較例2に示す通り、グラシン紙にワックス層がない場合には、印字性能が著しく低下する。図10に示す通り、比較例2では、文字や数字ならびに線がかすれ、また、その濃度も低く、読みにくくなっている(評価F)。対して、本発明の実施例2では、図11に示す通り、文字や数字ならびに線の輪郭がはっきり、くっきり表れ、しかも、その印字濃度が高くなっている(評価A)。このようなワックス層による印字性能の向上は、非常に驚くべき予想外のものであった。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、隠蔽層を有するグラシン紙で感熱紙を覆うことによって、グラシン紙の上側からサーマルプリンタで印字した場合であっても、隠蔽層の上から、隠蔽層の下側にある感熱紙に印字された情報を簡単に判読することはできない。また、本発明のサーマルプリンタ用隠蔽伝票は、グラシン紙の内側(裏側)、すなわち、感熱紙と対向する側の面に、融点および膨張率を調整したワックス層を設けているので、その熱伝導性が向上し、サーマルプリンタで印字した場合、感熱紙の発色および印字性能が飛躍的に向上する。さらに、ワックス層は、薄いグラシン紙の剛性を確保し、グラシン紙における皺の発生を防止することができる。また、必要に応じて、グラシン紙の外側の面、すなわち、サーマルプリンタのサーマルヘッドと接する側の面に、オーバーコート層を設けることによって、サーマルヘッドの走行性(ヘッドマッチング)を向上させることができ、しかも、オーバーコート層によって、耐水性および撥水性が向上し、雨天や屋外であっても、伝票を使用およびプリントアウトすることが可能になる。
本発明のサーマルプリンタ用の隠蔽伝票は、特に、電気、ガス、水道などの検針伝票として非常に有用であり、しかも、隠蔽層によって、その使用量や請求金額などの個人情報をしっかりと保護することができる。
本発明のサーマルプリンタ用の隠蔽伝票は、検針伝票以外にも、例えば、給与明細、請求書、個人成績表、診断結果、くじなどとして、使用することができる。
【符号の説明】
【0154】
1 感熱紙(または感熱紙ベース)
2 感熱層
3 グラシン紙
4 隠蔽層
5 ワックス層
6 オーバーコート層
7 接着剤(層)
8 サーマルプリンタのサーマルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に感熱層を有する感熱紙と、該感熱層と対向する少なくとも一部にワックス層を有するグラシン紙とを備えたサーマルプリンタ用隠蔽伝票であって、該グラシン紙と該ワックス層との間および/または該グラシン紙の該ワックス層とは反対側の面に、少なくとも一部に隠蔽層を有し、該ワックス層が該感熱層と対向するように、該感熱紙と該グラシン紙とが接着されているサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項2】
前記ワックス層に含まれるワックスの融点が50〜80℃である、請求項1に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項3】
前記ワックスがパラフィンワックスである、請求項2に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項4】
前記グラシン紙の前記ワックス層を設けた、前記感熱層に対向する面とは反対側の面であって、サーマルプリンタのサーマルヘッドと接する面に、さらに、オーバーコート層を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項5】
前記オーバーコート層が、UV硬化型のアクリル樹脂からなる透明層である、請求項4に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項6】
前記隠蔽層が、印刷によって設けられた層である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項7】
質量が23〜35g/mの半透明のグラシン紙に、前記隠蔽層が印刷されている、請求項6記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項8】
前記隠蔽伝票の少なくとも1つの端部から、前記感熱紙または前記グラシン紙がめくって剥がせるように、該感熱紙と該グラシン紙とが接着されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項9】
前記グラシン紙と、前記感熱紙との間に接着剤が配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項10】
前記接着剤が部分的に配置されている、請求項9に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項11】
前記接着剤が点状に配置されている、請求項10に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項12】
前記接着剤が水性エマルジョン糊である、請求項11に記載のサーマルプリンタ用隠蔽伝票。
【請求項13】
グラシン紙の一方の面の少なくとも一部に隠蔽層を形成し、
該グラシン紙の隠蔽層を形成した面および/またはその反対側の面の少なくとも一部にワックス層を形成し、
該グラシン紙の該ワックス層と、感熱紙の感熱層とが対向するように、該グラシン紙と該感熱紙とを接着する、サーマルプリンタ用隠蔽伝票の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−236347(P2012−236347A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107090(P2011−107090)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000225267)内外カーボンインキ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】