説明

サーマルプリンタ

【課題】記録紙の入射角の変動に起因するムラを無くしたサーマルヘッドの提供。
【解決手段】 プリンタ10内の記録紙11の搬送経路16に沿って、記録紙ロール12、搬送ローラ対17、サーマヘッド26及びプラテンローラ27等を配置する。プラテンローラ27のA方向下流側に搬送ガイド36を配置する.可動ガイド46を、誘い込み部45により形成されるスペース48内に突出させたガイド位置と、スペース48内から退避させたガイド解除位置とに移動させるガイド移動機構52を設ける。通紙時に記録紙11がA方向に搬送される時は可動ガイド46をガイド解除位置に移動させ、印画時に記録紙11がB方向に搬送される時は可動ガイド46をガイド位置に移動させるので、サーマルヘッド26に対する記録紙11の入射角の変動に起因するムラを無くすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドとプラテンローラとの間で記録紙を挟みこみ、このサーマルヘッドの発熱素子を加熱させて熱記録を行うサーマルプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、サーマルヘッドを用いて記録紙に熱記録(印画)を行うサーマルプリンタとして、昇華型、熱溶融型など熱転写プリンタや、感熱プリンタなどが知られている。例えば、カラー感熱プリンタは、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に感熱記録紙を挟持するとともに、サーマルヘッドを加熱して感熱記録紙に層設された各感熱発色層を発色させることで印画を行っている。このカラー感熱プリンタとしては、1個のサーマルヘッドに対してカラー感熱記録紙を往復搬送させながら、その間にイエロー、マゼンタ、シアン画像を順次印画してカラープリントを作成する3パス方式のプリンタが良く知られている。
【0003】
この3パス方式のカラー感熱プリンタでは、プリント開始操作がなされた際にプラテンローラをサーマルヘッドから退避させておき、記録紙ロール等から送り出された感熱記録紙をサーマルヘッドとプラテンローラとの間に通紙させる。通紙された感熱記録紙の先端は、プラテンローラの通紙方向下流側に配置された搬送ガイドに沿って、さらに通紙方向下流側に搬送される。
【0004】
この際に、サーマルヘッドとプラテンローラとの間を通紙された感熱記録紙が確実に搬送ガイドに案内されるように、搬送ガイドには傾斜面状に形成された誘い込み部が設けられているのが通常である。これにより、サーマルヘッドとプラテンローラとの間を通紙された感熱記録紙を確実に搬送ガイドに案内して、通紙方向下流側に搬送させることができる。
【0005】
そして、感熱記録紙上の記録エリアがサーマルヘッドを通過したら、プラテンローラがサーマルヘッドとの間で感熱記録紙を挟持する位置に移動された後、感熱記録紙が通紙方向とは逆の印画方向に搬送される。また、これと同時にサーマルヘッドの発熱素子アレイが発熱されてイエロー画像が1ラインずつ印画される。イエロー画像印画終了後、感熱記録紙は再び通紙方向に搬送され、イエロー印画時と同様にマゼンタ及びシアン画像の印画が行われてカラープリントが作成される。
【特許文献1】特開平2−219672号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、搬送ガイドには、サーマルヘッドとプラテンローラとの間を通紙された感熱記録紙が搬送ガイドに案内されるように誘い込み部が設けられている。従って、搬送ガイドの誘い込み部と感熱記録紙の搬送経路との間にはスペース(空間)が形成される。そのため、感熱記録紙を印画方向に搬送してサーマルヘッドで印画を行う際に、この感熱記録紙の通紙方向下流側(印画方向上流側)の端部がスペースに入り込んで、サーマルヘッドに対する感熱記録紙の入射角が変動してしまう。その結果、作成されたカラープリントにムラが発生するおそれがある。
【0007】
このような感熱記録紙の入射角の変動に起因するムラの発生は、感熱記録紙の記録エリア外の余白部の幅をスペースの幅よりも長くすることで防止されるが、この場合は余白部の面積が大きくなるという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためのものであり、余白部の面積を大きくすることなく、記録紙の入射角の変動に起因するムラを無くすことができるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のサーマルプリンタは、記録紙の搬送経路に沿って配置され、前記記録紙を第1の方向とこの第1の方向とは逆向きの第2の方向とに搬送する搬送手段と、前記搬送手段に対して前記第1の方向の下流側に配置され、前記搬送手段により前記第2の方向に搬送される前記記録紙に画像を印画するサーマルヘッドと、前記搬送経路を挟んで前記サーマルヘッドと対向する位置に配置されたプラテンローラと、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラの少なくともいずれかに対して前記第1の方向の下流側に配置され、両者間を通紙された前記記録紙を誘い込む誘い込み部を有し、前記搬送経路の一部を形成する搬送ガイドと、前記搬送ガイドに設けられ、前記誘い込み部と前記搬送経路との間に形成されるスペースに前記記録紙が入り込まないようにガイドするガイド位置、及び前記スペースでの前記記録紙の前記ガイドを解除するガイド解除位置に移動可能な可動ガイドと、前記記録紙が前記第1の方向に搬送されるときに前記可動ガイドを前記ガイド解除位置に移動させ、前記記録紙が前記第2の方向に搬送されるときに前記可動ガイドを前記ガイド位置に移動させる可動ガイド移動機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記誘い込み部は、前記搬送経路から遠ざかるように傾斜または湾曲していることが好ましい。また、前記搬送ガイドの前記記録紙に対向する面と逆の面側に前記可動ガイドが配置されるとともに、この可動ガイドを挿通可能な貫通孔が前記誘い込み部に形成され、前記可動ガイド移動機構により前記可動ガイドが前記ガイド解除位置から前記ガイド位置に移動されたときに、前記可動ガイドが前記貫通孔から前記スペース内に突出されることが好ましい。
【0011】
また、前記搬送ガイドは前記プラテンローラのローラ軸に対して平行に延びた回転軸を有し、この回転軸に前記可動ガイドが軸着され、前記可動ガイド移動機構は、前記回転軸を中心として前記可動ガイドを前記ガイド位置と前記ガイド解除位置との間で回動させることが好ましい。さらに、前記ガイド解除位置に回動された前記可動ガイドにより前記誘い込み部が形成されることが好ましい。
【0012】
また、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラのいずれか一方を他方に向けて移動させて前記記録紙を挟持した挟持状態と、前記記録紙の挟持を解除した挟持解除状態とに切替可能な切替機構を有し、前記切替機構は、前記記録紙が前記第1の方向に搬送されるときに前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラを前記挟持解除状態に切り替え、前記記録紙が前記第2の方向に搬送されるときに前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラを前記挟持状態に切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサーマルプリンタは、記録紙を第1の方向とこの第1の方向とは逆向きの第2の方向とに搬送する搬送手段と、前記搬送手段に対して前記第1の方向の下流側に配置され、前記第2の方向に搬送される前記記録紙に画像を印画するためのサーマルヘッド及びプラテンローラと、これら両者間を前記第1の方向に通紙された前記記録紙を誘い込む誘い込み部を有し、前記搬送経路の一部を形成する搬送ガイドと、前記搬送ガイドに設けられ、前記誘い込み部と搬送経路との間のスペースで前記記録紙をガイドするガイド位置、及び前記スペースでの前記記録紙の前記ガイドを解除するガイド解除位置に移動可能な可動ガイドと、前記記録紙が前記第1の方向に搬送されるときに前記可動ガイドを前記ガイド解除位置に移動させ、前記記録紙が前記第2の方向に搬送されるときに前記可動ガイドを前記ガイド位置に移動させる可動ガイド移動機構とを備えているので、印画時に前記サーマルヘッドに対する前記記録紙の入射角の変動が抑制される。その結果、印画される画像にムラが発生するのが防止される。また、前記記録紙の記録エリア外の余白部の幅を短くすることができる。
【0014】
また、前記誘い込み部を、前記搬送経路から遠ざかるように傾斜または湾曲させているので、前記可動ガイドが前記ガイド解除位置にあるときは、前記記録紙を確実に搬送ガイド本体に案内することができる。
【0015】
また、前記搬送ガイドの前記記録紙に対向する面と逆の面側に前記可動ガイドが配置されるとともに、この可動ガイドを挿通可能な貫通孔が前記誘い込み部に形成され、前記可動ガイド移動機構により前記可動ガイドが前記ガイド解除位置から前記ガイド位置に移動されたときに、前記可動ガイドが前記貫通孔から前記スペース内に突出されるようにしたので、同様に印画される画像にムラが発生するのが防止される。
【0016】
また、前記搬送ガイドは前記プラテンローラのローラ軸に対して平行に延びた回転軸を有し、この回転軸に前記可動ガイドを軸着し、前記可動ガイド移動機構を、前記回転軸を中心として前記可動ガイドを前記ガイド位置と前記ガイド解除位置との間で回動させるようにしたので、同様に印画される画像にムラが発生するのが防止される。
【0017】
さらに、前記ガイド解除位置に回動された前記可動ガイドにより前記誘い込み部が形成されるようにしたので、前記可動ガイドと前記誘い込み部とを共通化してプリンタの製造コストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明を実施した3パス方式のカラー感熱プリンタ(以下、単にプリンタという)10の概略図である。このプリンタ10では、長尺のカラー感熱記録紙(以下、単に記録紙という)11をロール状に巻いた記録紙ロール12が記録媒体として使用される。記録紙ロール12はプリンタ10の給紙部にセットされ、その外周には給紙ローラ13が圧接している。
【0019】
給紙ローラ13は、スッテピングモータ(以下、単にモータという)15によって回転駆動される。この給紙ローラ13は、記録紙ロール12を回転させて記録紙11を引き出して、記録紙11を給紙部から排紙口へと至る搬送経路16内に送り込む。そして、プリント終了後には、記録紙11の未記録エリアを記録紙ロール12に巻き戻し、光や湿度の影響を防止する。
【0020】
記録紙11は、周知のように、支持体上にシアン(C)感熱発色層、マゼンタ(M)感熱発色層、イエロー(Y)感熱発色層が順次層設されている。最上層となるY感熱発色層は熱感度が最も高く、小さな熱エネルギーでイエローに発色する。最下層となるC感熱発色層は熱感度が最も低く、大きな熱エネルギーでシアンに発色する。また、Y感熱発色層は、420nmの近紫外線が照射されたときに、発色能力が消失する。M感熱発色層は、Y感熱発色層とC感熱発色層との中間程度の熱エネルギーでマゼンタに発色し、365nmの紫外線が照射されたときに発色能力が消失する。記録紙11に、例えばブラック感熱発色層を設けて4層構造にしてもよい。
【0021】
搬送経路16内には、記録紙11を挟み込んで搬送する搬送ローラ対17が配置されている。この搬送ローラ対17は、モータ15によって回転駆動されるフィードローラ18と、このフィードローラ18に圧接して記録紙11を挟み込むピンチローラ19とからなり、記録紙11を主走査方向と直交する副走査方向、つまり、搬送経路16に沿って図中A方向とB方向とに搬送する。ピンチローラ19は、記録紙11の搬送に応じて従動回転される。
【0022】
搬送ローラ対17のA方向の下流側には、サーマルヘッド26及びプラテンローラ27、光定着器28、カッタ29、排紙口30が順に配置されている。また、サーマルヘッド26とピンチローラ19との間には補助ローラ32が配置されている。さらに、記録紙ロール12と搬送ローラ対17との間、ピンチローラ19と補助ローラ32との間、プラテンローラ27のA方向下流側には、記録紙11の搬送経路16を形成する搬送ガイド34,35,36が配置されている。なお、搬送ガイドは図示されているものに限定はされず、A方向またはB方向に搬送される記録紙11をガイドできるように、搬送経路16に沿って複数配置されている。
【0023】
サーマルヘッド26及びプラテンローラ27は、搬送経路16を挟み込むように配置されている。サーマルヘッド26は、搬送経路16の上方に配置されており、多数の発熱素子を主走査方向に沿ってライン状に配列した発熱素子アレイ26aを備えている。
【0024】
発熱素子アレイ26aは、搬送ローラ対17により記録紙11がB方向に搬送される際に、印画する画像の色(Y、M、C)及びその濃度に応じた所定の温度に発熱される。これにより、記録紙11の記録エリア(図示せず)内の特定の感熱発色層が1ラインずつ発色される。この際に、サーマルヘッド26のA方向上流側には補助ローラ32が配置されているため、サーマルヘッド26とプラテンローラ27との間から常に一定の出射角で記録紙11が搬送ローラ対17に送り出される。これにより、サーマルヘッド26に対する記録紙11の出射角の変動でカラープリント(図示せず)にムラが発生するのが防止される。
【0025】
プラテンローラ27は、搬送経路16の下方に配置され、記録紙11の搬送に応じて従動回転して記録紙11と発熱素子アレイ26aとの当接状態を安定させる。このプラテンローラ27は、カムやソレノイド等からなるプラテン移動機構39により、サーマルヘッド26の発熱素子アレイ26aとの間で記録紙11を挟持して印画を行う挟持位置と、記録紙11から離れてサーマルヘッド26との間に隙間を形成する挟持解除位置との間で移動自在とされている。
【0026】
プラテン移動機構39は、Y、M、Cの各色の画像の印画開始する時はプラテンローラ27を挟持解除位置に移動させて、サーマルヘッド26とプラテンローラ27との間にA方向に搬送される記録紙11を通紙させる。そして、引き続き記録紙11がA方向に搬送されて、その記録エリア(図示せず)がサーマルヘッド26の発熱素子アレイ26aを通過したらプラテンローラ27を挟持位置に移動させる。
【0027】
光定着器28は、記録紙11の記録面と対面するように配置されている。この光定着器28は、イエロー(Y)定着ランプ41、マゼンタ(M)定着ランプ42、リフレクタ43等から構成される。Y定着ランプ41は、発光ピークが420nmの近紫外線を放射して、記録紙11のY感熱発色層を定着する。M定着ランプ42は、365nmの紫外線を放出してM感熱発色層を定着する。
【0028】
カッタ29は、C画像の印画が完了した記録紙11を所定のプリントサイズにカットして、カラープリント(図示せず)を作成する。そして、このカラープリントは排紙口30から排出される。
【0029】
搬送経路16に沿って配置された各搬送ガイド34,35,36は、金属材料または樹脂材料等の任意の材料から形成され、記録紙11を傷付けないように搬送経路16に対向する面が平滑に形成されている。搬送ガイド34は、記録紙ロール12と搬送ローラ対17との間を搬送される記録紙11をガイドする。搬送ガイド35は、搬送ローラ対17と補助ローラ32との間を搬送される記録紙11をガイドする。搬送ガイド36は、本発明を実施したものであり、プラテンローラ27のA方向下流側に配置されている。この搬送ガイド36は、詳しくは後述するが、搬送ローラ対17によりA方向に搬送され、サーマルヘッド26とプラテンローラ27との間を通紙された記録紙11を光定着器28に向けてガイドする。また、印画時にB方向に搬送される記録紙11をサーマルヘッド26の発熱素子アレイ26に向けてガイドする。
【0030】
これらモータ15、サーマルヘッド26(発熱素子アレイ26a)、光定着器28、カッタ29、プラテン移動機構39等の駆動は統括制御部44により制御される。統括制御部44は、図示は省略するが、モータ15の駆動を制御するモータドライバ、サーマルヘッド26の駆動を制御するヘッドドライバ、光定着器28の駆動を制御するランプドライバ、プラテン移動機構39の駆動を制御するドライバ、印画する画像の画像データを記憶する画像メモリ等から構成される。
【0031】
次に、搬送ガイド36について図1〜図3を用いて説明する。この搬送ガイド36は、搬送ガイド本体36aと、ガイド本体36aのA方向上流側の端部に設けられ、サーマルヘッド26とプラテンローラ27との間を通紙された記録紙11をガイド本体36aに案内する誘い込み部45と、ガイド本体36aの図中下方に配置された可動ガイド46とから構成される。
【0032】
誘い込み部45は、搬送経路16から遠ざかるように傾斜面状に形成されている。サーマルヘッド26とプラテンローラ27との間を記録紙11が通紙される時(以下、単に通紙時という)には、プラテンローラ27はプラテン移動機構39により図1中下方のガイド解除位置に移動されている。そのため、両者間を通紙された記録紙11の先端は図1中下方に湾曲することがあるが、誘い込み部45によりガイド本体36aに案内される。
【0033】
この際に、搬送ガイド36の誘い込み部45と搬送経路16との間には、両者間を通紙された記録紙11を誘い込むためのスペース48が形成される。そのため、印画時に記録紙11をB方向に搬送させた際に、記録紙11のA方向下流側の端部(以下、単に先端部という)がスペース48に入り込んでしまう。その結果、サーマルヘッド26に対する記録紙11の入射角が変動してしまうため、作成されたカラープリントにムラが発生してしまうおそれがある。
【0034】
そこで、本実施形態では、印画時に可動ガイド46をスペース48内に突出させることで、記録紙11の先端部がスペース48内に入り込むのを抑制する。この可動ガイド46は略くし形状に形成されており、記録紙11の幅方向(主走査方向)に等間隔で配置された3つの凸部46aと、各凸部46aを保持するガイド本体46bとが一体形成されている(図2及び図3参照)。なお、可動ガイド46を形成する材料は特に限定されず、例えば搬送ガイド36と同様に金属材料または樹脂材料等から形成されたものを用いてよい。
【0035】
また、搬送ガイド36の誘い込み部45には、可動ガイド46の各凸部46aを挿通可能な貫通孔50が主走査方向に3つ並べて形成されている。従って、各貫通孔50から可動ガイド46の凸部46aをスペース48内に突出させることで、記録紙11の先端部がスペース48内に入り込まないように記録紙11をガイドすることができる。また、可動ガイド46の凸部46aをスペース48内から退避させることで、スペース48での記録紙11のガイドを解除することができる。
【0036】
可動ガイド46には、このガイドを副走査方向に対して平行な方向に移動させるガイド移動機構52(図1参照)が接続されている。ガイド移動機構52は、カムやソレノイド等からなり、可動ガイド46を、その凸部46aが貫通孔50からスペース48内に突出したガイド位置(図3参照)と、その凸部46aがスペース48内から退避したガイド解除位置(図2参照)とに移動させる。このガイド移動機構52の駆動も上述の統括制御部44により制御される。
【0037】
統括制御部44は、通紙時には図4に示すように、プラテン移動機構39を駆動してプラテンローラを挟持解除位置に移動させるとともに、ガイド移動機構52を駆動して可動ガイド46をガイド解除位置に移動させる。サーマルヘッド26とプラテンローラ27との間にはL0だけ隙間が形成されるので、記録紙11の先端は両者間を通過してスペース48内に搬送される。この際に、可動ガイド46の凸部46aはスペース48内から退避しているので、記録紙11の先端部は誘い込み部45に沿ってガイド本体36aに案内される。そして、ガイド本体36aに案内された記録紙11の先端部は、ガイド本体36aに沿ってA方向に引き続き搬送される。ここで、L0は記録紙11を通紙可能な距離であれば特に限定されず、本実施形態で例えば3mmに設定されている。
【0038】
次いで、統括制御部44は、例えばモータ15に送られる駆動パルス数をカウントして得られた記録紙11の搬送量情報に基づき、記録紙11の記録エリア(図示せず)がサーマルヘッド26を通過したら、プラテン移動機構39を駆動してプラテンローラ27を挟持位置に移動させるとともに、ガイド移動機構52を駆動して可動ガイド46をガイド位置に移動させる。その後、統括制御部44は、モータ15を逆回転させて記録紙11をB方向に搬送する。この際に、可動ガイド46の凸部46aがスペース48内に突出しているので、スペース48内に記録紙11の先端部が入り込む量を抑制することができる。これにより、サーマルヘッド26に対する記録紙11の入射角の変動を抑制することができるので、印画される画像にムラが発生するのが防止される。
【0039】
また、従来では、ムラの発生を防止するために記録紙11の記録エリアのA方向下流側に設けられる余白部(図示せず)の幅を、発熱素子26aとガイド本体36aとの間の距離L1以上にする必要があった。これに対して本実施形態では、この余白部の幅をサーマルヘッド26とガイド位置にある可動ガイド46との間の距離L2まで短くすることができる(図5参照)。
【0040】
記録紙11が引き続きB方向に搬送され、サーマルヘッド26による画像印画が終了したら、統括制御部44はプラテンローラ27を挟持解除位置に移動させ、可動ガイド46をガイド解除位置に移動させた後、再び記録紙11をA方向に搬送させる。Y、M、Cの各画像を印画時に、これらの一連の動作を繰り返すことでムラの無いカラープリントが得られる。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。プリント開始操作がなされると、図1に示すように、統括制御部44はモータ15を駆動して給紙ローラ13及びフィードローラ18を回転させる。これにより、記録紙ロール12から記録紙11が引き出される。記録紙ロール12から引き出された記録紙11が搬送ローラ対17に挟持されると、記録紙11は記録紙ロール12から引き出されてA方向に搬送される。また、これと同時に統括制御部44は、プラテン移動機構39を駆動してプラテンローラ27を挟持解除位置に移動させるとともに、ガイド移動機構52を駆動して可動ガイド46をガイド解除位置に移動させる(図4参照)。これにより、記録紙11はサーマルヘッド26とプラテンローラ27との間を通ってスペース48内に搬送される。
【0042】
引き続き記録紙11がA方向に搬送されると、記録紙11の先端が誘い込み部45に沿ってガイド本体36aに案内され、記録紙11はガイド本体36aに沿ってA方向に搬送される。そして、統括制御部44は、記録紙11の記録エリア(図示せず)がサーマルヘッド26を通過したら、プラテン移動機構39を駆動してプラテンローラ27を挟持位置に移動させて、記録紙11の記録エリアのA方向上流側の余白部(図示せず)にサーマルヘッド26の発熱素子アレイ26aを圧接させる。また、同時に統括制御部44は、プラテンローラ27の移動と同時に、ガイド移動機構52を駆動して可動ガイド46をガイド位置に移動させて、その凸部46aがスペース48内に突出させる(図5参照)。次いで、統括制御部44はモータ15を逆回転させて記録紙11をB方向に搬送する。
【0043】
そして、記録紙11の記録エリアが発熱素子アレイ26aに到達したら、統括制御部44は発熱素子アレイ26aを印画する画像データに基づき発熱させ、記録紙11のY感熱発色層を発色させる。こうして、記録紙11の記録エリア内にY画像が1ラインずつ印画される。この際に、可動ガイド46の凸部46aがスペース48内に突出されているので、スペース48内に記録紙11の先端部が入り込む量が抑制される。その結果、サーマルヘッド26に対する記録紙11の入射角の変動を抑制することができるので、Y画像にムラが発生するのが抑えられる。
【0044】
Y画像の印画が完了したら統括制御部38は、プラテン移動機構39を駆動してプラテンローラ27を挟持解除位置に移動させるとともに、ガイド移動機構52を駆動して可動ガイド46をガイド解除位置に移動させる。次いで、統括制御部38は、搬送ローラ対17により記録紙11をA方向に搬送するのと同時に、光定着器28のY定着ランプ41を点灯させる。そして、統括制御部44は、記録紙11がスペース48、搬送ガイド36を介して光定着器28に搬送され、その記録エリアが光定着器28を通過した後に、Y定着ランプ41を消灯する。これにより、Y画像が定着される。
【0045】
Y画像の定着が完了したら、統括制御部44は、プラテンローラ27を挟持位置に移動させ、可動ガイド46をガイド位置に移動させた後、記録紙11をB方向に搬送してY画像印画時と同様にマゼンタ(M)画像の印画を行う。このM画像印画時も可動ガイド46によりサーマルヘッド26に対する記録紙11の入射角の変動が抑制されるので、M画像にムラが発生するのが抑えられる。そして、統括制御部41はM画像の印画が完了したら、プラテンローラ27をガイド解除位置に移動させ、可動ガイド46をガイド解除位置に移動させた後、搬送ローラ対17により記録紙11をA方向に搬送してM定着ランプ42でM画像の定着を行う。
【0046】
M画像の定着が完了したら、統括制御部44は、プラテンローラ27を挟持位置に移動させ、可動ガイド46をガイド位置に移動させた後、記録紙11をB方向に搬送してC画像の印画を行う。この場合もY及びM画像印画時と同様に、サーマルヘッド26に対する記録紙11の入射角の変動が抑制されるので、C画像にムラが発生するのが抑えられる。これにより、ムラの無いカラープリントが得られる。また、記録紙11の記録エリア外の余白部の幅を短くすることができる。
【0047】
C画像の印画が完了したら、統括制御部44は、プラテンローラ27をガイド解除位置に移動させ、可動ガイド46をガイド解除位置に移動させた後、搬送ローラ対17により記録紙11をA方向に搬送する。この記録紙11はカッタ29により所定の位置で切り離されて、カラープリントが排紙口30から排出される。その後、記録紙11の先端が搬送ローラ対17の位置まで搬送されて、次の印画処理待機状態になる。そして、一定時間を経過しても次の印画が指示されない場合には、記録紙11を記録紙ロール12に巻き戻した後、プリンタ10の電源がオフされる。
【0048】
なお、本実施形態では、誘い込み部45に形成された貫通孔50から可動ガイド46の凸部46aをスペース48内に突出させることで、記録紙11の先端部がスペース48内に入り込むのを抑制するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図6及び図7に示すように、プラテンローラ27のA方向下流側に配置する搬送ガイド55を、ガイド本体55aと、ヒンジ等の回転軸機構56を介してガイド本体55aのA方向上流側の端部に回動自在に取り付けられた可動ガイド57とから構成してもよい。この場合に、回転軸機構56にはモータ、ギヤ等からなるガイド移動機構58が接続されている。
【0049】
ガイド移動機構58は、通紙時には図6に示すように、可動ガイド57が搬送経路16から遠ざかるような傾斜面を形成し、記録紙11をガイド本体55aに案内可能なガイド解除位置に可動ガイド57を回動させる。この場合にも、ガイド解除位置にある可動ガイド57と、サーマルヘッド26及びプラテンローラ27との間には、両者間を通紙された記録紙11を誘い込むためのスペース59が形成される。従って、サーマルヘッド26とプラテンローラ27との間を通紙された記録紙11は、スペース59内に搬送された後、可動ガイド57に沿ってガイド本体55aに案内される。つまり、ガイド解除位置にある可動ガイド57により、上述の誘い込み部45(図2〜図5参照)と同様のものが形成される。これにより、可動ガイド57と誘い込み部とを共通化できるので、プリンタ10の製造コストを低くすることができる。
【0050】
また、ガイド移動機構58は、印画時には図7に示すように、可動ガイド57を図中時計方向に回動して、B方向に搬送される記録紙11の先端部がスペース59内に入り込まないようにガイドするガイド位置に可動ガイド57を回動させる。これにより、スペース59内に記録紙11の先端部が入り込む量が抑制されるので、サーマルヘッド26に対する記録紙11の入射角の変動を抑制することができる。その結果、上述した搬送ガイド36と同様に、記録紙11の入射角の変動に起因するムラが無いカラープリントが得られる。
【0051】
また、本実施形態では、プラテン移動機構39とガイド移動機構52とをそれぞれ別々に設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの移動機構を一体化し、プラテンローラ27の移動に連動して可動ガイド46,57が移動されるようにしてもよい。具体的には、プラテンローラ27が挟持解除位置に移動されるのに連動して可動ガイド46,57をガイド解除位置に移動させ、プラテンローラ27が挟持位置に移動されるのに連動して可動ガイド46,57をガイド位置に移動させる。
【0052】
なお、本実施形態では、プラテン移動機構39によりプラテンローラ27を挟持位置と挟持解除位置との間で移動させるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばプラテンローラ27を移動させる代わりに、サーマルヘッド26をプラテンローラ27との間で記録紙11を挟持する挟持位置と、記録紙11から離れてプラテンローラ27との間に隙間を形成する挟持解除位置とに移動させるようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、記録紙11の搬送経路16を挟んでサーマルヘッド26を上方に配置し、プラテンローラ27を下方に配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、搬送経路16を挟んでサーマルヘッド26が下方に配置され、プラテンローラが上方に配置されていてもよい。さらに、この場合には、プラテンローラ27を挟持位置と挟持解除位置との間で移動させる代わりに、上述のようにサーマルヘッド26を移動させるようにしてもよい。
【0054】
なお、本実施形態の可動ガイド46は3つの凸部46aを有する略くし形状に形成されているが、この凸部46aは2つまたは4つ以上形成されていてもよい。また、可動ガイド46が板状に形成されていてもよい。また、本実施形態の誘い込み部45は、搬送経路16から遠ざかるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録紙11をガイド本体36aに案内可能であれば、例えば湾曲されていてもよい。また、上述の可動ガイド57も同様に略くし形状または板状に形成されていてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、カラー感熱プリンタ10を例に説明したが、モノクロの感熱プリンタや、インクリボンを背後から加熱して溶融または昇華したインクを記録紙に転写して画像を記録する熱溶融型、昇華型の熱転写プリンタ等のサーマルヘッド及びプラテンローラを備えた各種サーマルプリンタにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明を実施したカラー感熱プリンタの概略図である。
【図2】カラー感熱プリンタの搬送ガイドの斜視図であり、通紙時の状態を示した図である。
【図3】カラー感熱プリンタの搬送ガイドの斜視図であり、通紙時の状態を示した図である。
【図4】通紙時におけるプラテンローラ及び可動ガイドの位置を示した概略図である。
【図5】印画時におけるプラテンローラ及び可動ガイドの位置を示した概略図である。
【図6】他の実施形態におけるプラテンローラ及び可動ガイドの位置を示した概略図であり、通紙時の状態を示した図である。
【図7】他の実施形態におけるプラテンローラ及び可動ガイドの位置を示した概略図であり、印画時の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
10 カラー感熱プリンタ
11 カラー感熱記録紙
17 搬送ローラ対
26 サーマルヘッド
27 プラテンローラ
36 搬送ガイド
36a ガイド本体
39 プラテン移動機構
44 統括制御部
45 誘い込み部
46 可動ガイド
46a 凸部
48 スペース
52 ガイド移動機構



【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙の搬送経路に沿って配置され、前記記録紙を第1の方向とこの第1の方向とは逆向きの第2の方向とに搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に対して前記第1の方向の下流側に配置され、前記搬送手段により前記第2の方向に搬送される前記記録紙に画像を印画するサーマルヘッドと、
前記搬送経路を挟んで前記サーマルヘッドと対向する位置に配置されたプラテンローラと、
前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラの少なくともいずれかに対して前記第1の方向の下流側に配置され、両者間を通紙された前記記録紙を誘い込む誘い込み部を有し、前記搬送経路の一部を形成する搬送ガイドと、
前記搬送ガイドに設けられ、前記誘い込み部と前記搬送経路との間に形成されるスペースに前記記録紙が入り込まないようにガイドするガイド位置、及び前記スペースでの前記記録紙の前記ガイドを解除するガイド解除位置に移動可能な可動ガイドと、
前記記録紙が前記第1の方向に搬送されるときに前記可動ガイドを前記ガイド解除位置に移動させ、前記記録紙が前記第2の方向に搬送されるときに前記可動ガイドを前記ガイド位置に移動させる可動ガイド移動機構とを備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記誘い込み部は、前記搬送経路から遠ざかるように傾斜または湾曲していることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記搬送ガイドの前記記録紙に対向する面と逆の面側に前記可動ガイドが配置されるとともに、この可動ガイドを挿通可能な貫通孔が前記誘い込み部に形成され、
前記可動ガイド移動機構により前記可動ガイドが前記ガイド解除位置から前記ガイド位置に移動されたときに、前記可動ガイドが前記貫通孔から前記スペース内に突出されることを特徴とする請求項1または2記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記搬送ガイドは前記プラテンローラのローラ軸に対して平行に延びた回転軸を有し、この回転軸に前記可動ガイドが軸着され、前記可動ガイド移動機構は、前記回転軸を中心として前記可動ガイドを前記ガイド位置と前記ガイド解除位置との間で回動させることを特徴とする請求項1または2記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記ガイド解除位置に回動された前記可動ガイドにより前記誘い込み部が形成されることを特徴とする請求項4記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラのいずれか一方を他方に向けて移動させて前記記録紙を挟持した挟持状態と、前記記録紙の挟持を解除した挟持解除状態とに切替可能な切替機構を有し、
前記切替機構は、前記記録紙が前記第1の方向に搬送されるときに前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラを前記挟持解除状態に切り替え、前記記録紙が前記第2の方向に搬送されるときに前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラを前記挟持状態に切り替えることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のサーマルプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−224396(P2006−224396A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39500(P2005−39500)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】