説明

サーマルプリンタ

【課題】 サーマルヘッドを支持するヘッド支持部の熱応力変形量を抑えることで、加熱によるサーマルヘッドの反りの変形量を小さく一定に保って良好な記録結果を得ることができ、しかも、低コスト化、薄型化を図ることのできるサーマルプリンタを提供すること。
【解決手段】 ヘッド基板3a上の長手方向に発熱素子3bを配列させたサーマルヘッド3と、前記サーマルヘッド3を支持する矩形板状のヘッド支持部5を先端部側に有し、基端部側に形成された回動軸心を中心として、前記サーマルヘッド3をプラテンに接離させるように回動可能とされたヘッド支持部材4とを備えたサーマルプリンタ1であって、前記ヘッド支持部5には、長手方向に直交する方向に延在する矩形状の複数本の開口部20をその長手方向に配列して形成し、前記サーマルヘッド3を、前記ヘッド支持部5に直接固着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドの発熱素子を選択的に発熱させて情報の記録を行なうサーマルプリンタに係り、特に、サーマルヘッド側の接着部分における部材と、サーマルヘッドを支持するヘッド支持部材側の接着部分における部材との物性の相違に起因する、通電時のサーマルヘッドの反りの変形量を小さくすることができ、しかも、サーマルヘッド周辺の構造の薄型化と部品点数の削減が実現可能なサーマルプリンタの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体を搬送しつつサーマルヘッドに配列されている多数の発熱素子を記録情報に基づいて選択的に駆動して発熱させることにより、記録媒体に対する情報の記録を行うサーマルプリンタが実用化されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、従来のサーマルプリンタ1について図5および図6を用いて説明する。なお、図5は従来のサーマルプリンタの印刷部を示す斜視図、図6は、サーマルヘッド周辺を示す要部概略側面図である。
【0004】
図示を省略したフレーム側の側板には、円柱状のプラテンローラ2が回転自在に支持されている。また、プラテンローラ2の上方には、プラテンローラ2に対して接離(ヘッドダウン/アップ)可能なラインヘッドからなる長尺なサーマルヘッド3が配設されている。
【0005】
前記サーマルヘッド3は、発熱素子3bがセラミックからなるヘッド基板3a上にその長手方向に配列させて形成されてなり、プラテンローラ2に対して前記発熱素子3bを接離可能に、ヘッド支持部材4の先端部側に支持されている。
【0006】
詳しくは、このヘッド支持部材4は、長尺な矩形板状のヘッド支持部5と略U字状をなして互いに対向する一対の第1アーム部6とを有する第1ヘッド支持部材7、および、付勢部8と前記第1アーム部6に対向する外側に略U字状をなして互いに対向する一対の第2アーム部9とを有する第2ヘッド支持部材10とを備えており、前記1ヘッド支持部材7および第2ヘッド支持部材10はともに上面視の形状を略コ字状とされている。
【0007】
前記第1ヘッド支持部材7は、アルミニウム等の放熱性の良い材料で形成されており、一対の第1アーム部6の先端側に、前記サーマルヘッド3を支持する前記ヘッド支持部5が一体形成されている。
【0008】
前記ヘッド支持部5は放熱部材11としての放熱板11aを兼ねており、その後端辺には後方側へ延びる面状の放熱部11bが一体に形成されている。そして、第1ヘッド支持部材7のヘッド支持部5の下面側には、ヘッド取付台12を介して前記サーマルヘッド3を構成する前記ヘッド基板3aが取り付けられており、印刷時に発生するサーマルヘッド3の熱を、放熱部11aを兼ねるヘッド支持部5を介して板状に形成された放熱部11bから逃がすようにされている。
【0009】
また、第1ヘッド支持部材7は、長尺な矩形状のヘッド支持部5の長手方向における中央位置に、サーマルヘッド3の反り量を調整可能な調整ねじ13が取り付けられている。
【0010】
前記調整ねじ13をねじ込むことにより、サーマルヘッド3の長手方向における中央部が左右両端部側よりも図示下方側に膨らんで、反りが発生するようになっている。また、調整ねじ13を緩めると、反り量が小さくなるようになっている。前記調整ねじ13によるサーマルヘッド3の反り量の調整は、プリンタ組立時に一定の値に合わせるようになっている。
【0011】
前記一対の第1アーム部6は、ヘッド支持部5の長手方向における両端部から後方へ延在するように配設されており、その基端部側には回動支持部として作用する第1支持孔6aが貫通形成されている。また、前記第1アーム部6には、前記ヘッド支持部5が配設された先端部近傍の上部外周辺がそれぞれ外向きに切り曲げされて係止部6bが形成され、フレーム側に配設した付勢部材(図示せず)に係合するようになっている。
【0012】
前記ヘッド支持部材4は、このように形成された第1ヘッド支持部材7のヘッド支持部5と対向する上方側に、付勢部8を配置した第2ヘッド支持部材10が組み合わされて構成されている。
【0013】
前記第2ヘッド支持部材10は、第1ヘッド支持部材7のヘッド支持部5と所定の隙間寸法を有して対向する上方側に、金属材料からなる長尺な板状の付勢部8が配設されている。この付勢部8は、長手方向における仮想中央ラインから両端部側へ等距離の位置に、後述する弾性部材14を支持可能な孔15がそれぞれ形成されている。そして、付勢部8の長手方向における両端部に、金属板からなる一対の第2アーム部9が後方へ延在するように取り付けられている。
【0014】
前記第2アーム部9は、先端部側が互いに内向きに折り曲げられて桟部9aがそれぞれ形成され、この桟部9aに付勢部8の長手方向の両端部がねじで連結されて一体化されている。また、第2アーム部9には、桟部9a近傍の上部側の外周部に、平坦状のストッパ部9bが形成され、このストッパ部9bに第1アーム部6の係止部6bが当接可能になっている。また、第2アーム部9の基端部側には、第2支持孔9cが形成されている。
【0015】
そして、付勢部8に形成された2箇所の孔15には、圧縮コイルばね等からなる弾性部材16が支持されており、これらの弾性部材16は、ヘッド支持部5と付勢部8とが互いに離れる方向に弾性付勢し、ヘッド支持部5をプラテンローラ2側に弾性付勢している。
【0016】
この時、第2ヘッド支持部材10のストッパ部9bが、第1ヘッド支持部材7の係止部6bに当接するようになっている。
【0017】
そして、ヘッド支持部材4は、フレーム側に形成した支持軸(図示せず)に、回動支持部としての第1、第2支持孔6a、9cが支持されており、ヘッドアップ/ダウン機構(図示せず)を駆動させることによって、両支持孔6a、9cを回動軸心としてサーマルヘッド3を支持した先端部側を回動させ、サーマルヘッド3をプラテンローラ22に対してヘッドアップ/ダウン可能になっている。
【0018】
【特許文献1】特開2005−305994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述のように、従来のサーマルプリンタ1におけるサーマルヘッド3は、ヘッド支持部材4のヘッド支持部5に対し、ヘッド取付台12を介して取り付けられている(図6のサーマルヘッド周辺の要部概略側面図を参照)。
【0020】
そして、昨今のサーマルプリンタにおけるサーマルヘッド周辺の薄型化の要請に応えるためには、前記ヘッド取付台12を省略して、直接、ヘッド支持部5に固定することが考えられる。
【0021】
ところが、前記ヘッド基板3aはセラミックにより形成されており、前記ヘッド支持部材4のヘッド支持部5は、安価である等の理由(アルミニウムが好適な材料である点については本実施形態において詳述する)からアルミニウムで形成されることが多く、それらの材料となっているセラミックとアルミニウムでは熱膨張係数に差がある。
【0022】
そのため、サーマルヘッド3がその発熱素子3bに通電されて300℃程度の高温となると、アルミニウムからなるヘッド支持部5が熱応力により変形してしまい、サーマルヘッド3の反りの変形量(以下、単に「反り量」という)が大きくなって、良好な記録結果を得ることができなくなることが懸念された。
【0023】
なお、通電時に高温となるサーマルヘッド3を支持することとなるヘッド支持部5の材料は、物性の中でも特に熱膨張係数と熱拡散率に注目して選択することが望ましいと考えられる。熱膨張係数が高いとサーマルヘッド3の反り量が大きくなり、印刷時に記録媒体との接触が得られず、良好な記録結果を得ることができないし、また、熱拡散率が低いと、通電時の熱が発熱素子3bに蓄熱されてしまうことで、インクリボンのインクが余分に転写され、インクリボンと記録媒体との剥離が上手くできなかったり、不要なインクが記録媒体に付着して汚れとなる等、良好な記録結果を得ることができないためである。
【0024】
また、反りの問題の対策としては、前述のサーマルプリンタのように反り量を調整するための機構を備えることも考えられるが、そもそも、前記反り量の調整機構は、本願発明のような熱応力対策としての機構ではなく、インクリボンの走行安定化を目的とした機構であって、熱応力を勘案しての調整作業は困難であり、しかも、サーマルプリンタの構成が複雑になり、折角のサーマルヘッド周辺の薄型化を図る目的が阻害される虞がある。
【0025】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドを支持するヘッド支持部の熱応力変形量を抑えることで、加熱によるサーマルヘッドの反り量を小さく、一定に保って良好な記録結果を得ることができ、しかも、低コスト化、薄型化を図ることのできるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前述した目的を達成するため、本発明のサーマルプリンタの特徴は、ヘッド基板上の長手方向に発熱素子を配列させたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを支持する矩形板状のヘッド支持部を先端部側に有し、基端部側に形成された回動軸心を中心として、前記サーマルヘッドをプラテンに接離させるように回動可能とされたヘッド支持部材とを備えたサーマルプリンタであって、前記ヘッド支持部には、長手方向に直交する方向に延在する矩形状の複数本の開口部が長手方向に配列して形成されており、前記サーマルヘッドは、前記ヘッド支持部に直接固着されている点にある。
【0027】
そして、このような構成を採用したことにより、加熱時にヘッド支持部の長手方向に延びようとする熱応力を前記開口部で吸収することができるので、サーマルヘッドとそれを固着させるヘッド支持部の材料の相違による熱膨張係数が異なっても、複雑な反り量の調整機構を備えずに、サーマルヘッドの反り量を一定に保つことが可能となる。
【0028】
また、サーマルヘッドを従来のようにヘッド取付台を介することなく、直接的にヘッド支持部に固着する構成とされているので、サーマルヘッド周辺の構造を薄型化することができ、さらには部品点数を削減(具体的には、ヘッド取付台の除去)してコストの低廉化を可能とする。
【0029】
なお、前記開口部内の前記ヘッド支持部の長手方向における寸法は、前記ヘッド支持部を構成する矩形板状の部材の厚さ寸法以上とされていることが望ましい。
【0030】
さらに、前記開口部は、前記ヘッド支持部の長手方向における仮想中央ラインから両端側へ線対称となるように配列されていることが望ましい。前記開口部が前記ヘッド支持部の長手方向に発生する熱応力による延伸を均等に吸収して、サーマルヘッドの反り量を小さくとすることができるためである。
【0031】
より具体的には、前記開口部の配設数は6本以上であり、前記開口部の前記ヘッド支持部の長手方向における総寸法が、前記ヘッド支持部の長手方向における寸法の10%以上であり、前記開口部の前記ヘッド支持部の長手方向に直交する方向における寸法が、前記ヘッド支持部の長手方向に直交する方向における寸法の40%〜80%とされていることが望ましい。なお、これらの数値の上限は、ヘッド支持部としての必要な剛性を確保できる程度とすることはいうまでもない。
【0032】
なお、前記開口部は、矩形板状とされた前記ヘッド支持部の端辺に形成された切欠き部、あるいは前記サーマルヘッド支持部の面内に形成された窓部とすることで、簡単かつ確実に、ヘッド支持部の長手方向における熱応力の延伸を吸収することができる。
【0033】
また、本発明のサーマルヘッドの特徴は、前記ヘッド支持部材は、前記ヘッド支持部の長手方向両端部に接続された一対のアーム部を備え、このアーム部は、前記ヘッド支持部を先端部側に支持し、基端部側に回動軸心となる回動支持部が形成されている点にある。
【0034】
このような構成を採用したことにより、熱応力によるヘッド支持部の素材の延伸が抑制され、反り量が一定に保たれたサーマルヘッドを適切にプラテンに押圧させることができる。
【0035】
さらに、本発明のサーマルヘッドの特徴は、前記ヘッド支持部材は、前記ヘッド支持部の後端辺に連接されてサーマルヘッドの蓄熱を放出可能な放熱部が形成された放熱部材を備えた点にある。
【0036】
このような構成を採用したことにより、サーマルヘッドの蓄熱を適宜放熱し、熱応力によるヘッド支持部の素材の延伸を抑制することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るサーマルプリンタによれば、ヘッド支持部に形成された開口部を以てサーマルヘッドを支持するヘッド支持部の熱応力変形量を抑えることで、加熱によるサーマルヘッドの反り量を小さく、一定に保つことが可能となるので、良好な記録結果を得ることができ、しかも、部品点数の削減による低コスト化、サーマルヘッド周辺構造の薄型化を図ることのできるなどの極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図1乃至図4を用い、本発明のサーマルプリンタの要部であるサーマルヘッド周辺の構造を説明し、その後、2つの実施形態を説明する。なお、図1は本発明の第1実施形態のサーマルプリンタにおけるヘッド支持部材の概略側面図、図2は図1のヘッド支持部材におけるヘッド支持部の概略平面図、図3は本発明の第2実施形態のサーマルプリンタにおけるヘッド支持部材の要部概略側面図、図4は図3のヘッド支持部材におけるヘッド支持部の概略平面図である。また、本実施形態のサーマルプリンタ1を構成する各部材について、前述の従来例におけるサーマルプリンタと同じ部材には、同じ符号を付する。
【0039】
まず、本発明のサーマルプリンタ1における特徴点であるサーマルヘッド周辺の構造を説明する。
【0040】
本発明のサーマルプリンタ1においては、アルミニウムからなるヘッド支持部材4のヘッド支持部5に対し、ヘッド取付台12を介さずに、直接、ねじや接着剤等の固着手段(図示せず)により、サーマルヘッド3を構成するヘッド基板3aが取付けられている。
【0041】
そして、前記ヘッド支持部材4のヘッド支持部5は、サーマルヘッド3のヘッド基板3aの接着面となる底面と略同形状とされた長尺な矩形板状の部材であり、その長手方向に直交する方向に延在する矩形状の複数本の開口部20が前記長手方向に配列して形成されている。
【0042】
前記開口部20は、配設数を6本以上とし、前記ヘッド支持部5の長手方向における仮想中央ラインから両端側へ線対称となるように配列されていることが望ましく、その開口部20の前記ヘッド支持部5の長手方向における寸法(図中Aで示す)は、前記ヘッド支持部5を構成する矩形板状の部材の厚さ寸法以上で、これらの開口部20の前記ヘッド支持部5の長手方向における総寸法は前記ヘッド支持部5の長手方向における寸法の10%以上、同じく前記ヘッド支持部5の長手方向に直交する方向(図中Bで示す)における寸法は前記ヘッド支持部5の長手方向に直交する方向における寸法の40%〜80%であることが望ましい。
【0043】
なお、前記開口部20は、矩形板状とされた前記ヘッド支持部5の端辺に形成された切欠き部20K、あるいは前記ヘッド支持部5の面内に形成された窓部20Hとすることができる。
【0044】
図1および図2は、本発明のサーマルプリンタの第1実施形態として、前述の特徴を備えたサーマルプリンタにおける4インチ長(約10mm)のサーマルヘッド3を支持するヘッド支持部材4を示している。
【0045】
前記ヘッド支持部5は、前記サーマルヘッド3よりも一回り大きく、長さ120mm、幅20mm、厚さ2mmとされたアルミニウムからなる板状の部材であり、前記開口部20は、そのヘッド支持部5の長手方向における仮想中央ラインから両端部側へ線対称となるように4本ずつ、計8本の切欠き部20Kとして、長手方向に延在する両辺に対し、千鳥状に配列させて形成されている。
【0046】
前記切欠き部20Kの前記ヘッド支持部5の長手方向における寸法(図中Aで示す)は、前記ヘッド支持部5を構成する矩形板状の部材の厚さ寸法以上とされることが望ましく、本実施形態においては3mmとされており、それらの総寸法が、前記ヘッド支持部5の長手方向における寸法である120mmの20%に形成されている。
【0047】
また、前記切欠き部20Kの前記ヘッド支持部5の長手方向に直交する方向(以下、この方向を「幅方向」という)における寸法(図中Bで示す)は、8mmとされており、前記ヘッド支持部5の幅寸法である20mmの40%とされている。
【0048】
このようにヘッド支持部5の長手方向の中央仮想ラインを以て両端側に、開口部20としての切欠き部20Kを線対称となるように形成することにより、前記切欠き部20Kがアルミニウムからなるヘッド支持部5の長手方向に発生する熱応力による延伸を吸収して、サーマルヘッド3の反り量を小さく、かつ、中央部から両端側へ線対称なものとすることができる。
【0049】
なお、前記開口部20は、前記ヘッド支持部5の面内に形成された窓部20Hとして、あるいは、前記窓部20Hとともに形成されていてもよい。
【0050】
そして、前記ヘッド支持部5の長手方向両端部分には、アルミニウムからなる一対のアーム21の先端部が接続されて、ヘッド支持部材4が構成されている。
【0051】
前記一対のアーム21の基端部側にはそれぞれ回動支持部となる支持孔22が持ち出し形成されており、これらの支持孔22を回動軸心として該アーム21を回動させ、図示しない圧接機構により前記サーマルヘッド3のヘッド基板3a上に形成された発熱素子3bを、プラテンにインクリボン及び記録媒体を介して圧接させ、発熱素子3bを記録情報に基づいて選択的に駆動して発熱させることにより、記録媒体に対する情報の記録を行うように構成されている。
【0052】
なお、前記ヘッド支持部材4は、それ自体を放熱部材として作用させるものとする。
【0053】
このように構成された本実施形態のサーマルプリンタ1は、加熱時にヘッド支持部5の長手方向に延伸しようとする熱応力を前記切欠き部20Kで吸収することができるので、サーマルヘッド3とそれを固着させるヘッド支持部5の材料の相違による熱膨張係数が異なっても、サーマルヘッド3の反り量を一定に保つことが可能となる。よって、印刷時にサーマルヘッド3と記録媒体との接触を常に良好な状態で得ることができ、所望の記録結果を得ることができる。
【0054】
また、サーマルヘッド3を、ヘッド取付台12を介することなく、直接的にヘッド支持部5に固着する構成とされているので、サーマルヘッド周辺の構造を薄型化することができる。
【0055】
図3および図4は、本発明のサーマルプリンタ1の第2実施形態として、前述した従来例のサーマルプリンタ1に対応する本実施形態のサーマルプリンタ1におけるサーマルヘッド周辺の要部構造を示している。
【0056】
以下では、サーマルヘッド周辺の構造のみを説明し、その他の構成については、第1ヘッド支持部材4にサーマルヘッド3の反り量を調整可能な調整ねじ13が取り付けられていない点を除き、前述の従来例におけるサーマルプリンタと同様の機構を有するものとして、説明を省略する。
【0057】
前記サーマルヘッド3は、複数の発熱素子3b(図示せず)がセラミックからなるヘッド基板3a上にその長手方向に配列させて形成されてなり、フレーム側板に支持されたプラテンローラ2に対して前記発熱素子3bを接離可能に、ヘッド支持部材4の先端部側に支持されている。
【0058】
第2ヘッド支持部材10とともに前記ヘッド支持部材4を構成する第1ヘッド支持部材7は、アルミニウム等の放熱性の良い材料で形成されている。そして、第1ヘッド支持部材7を構成する一対の第1アーム部6の先端側には、前記サーマルヘッド3を支持する矩形板状のヘッド支持部5が一体形成されている。そして、本実施形態においても、前記ヘッド支持部5に対し、ヘッド取付台12を介さずに、直接、ねじや接着剤等の固着手段(図示せず)により、サーマルヘッド3を構成する前記ヘッド基板3aが取付けられている。
【0059】
本実施形態においては、4インチ長(約10mm)のサーマルヘッド3を支持するヘッド支持部材4を示している。前記ヘッド支持部5は、前記サーマルヘッド3よりも一回り大きく、長さ120mm、幅20mm、厚さ2mmとされたアルミニウムからなる板状の部材であり、そのヘッド支持部5の長手方向における仮想中央ラインから両端部側へ線対称となるように3本ずつ、計6本の窓部20Hが、開口部20としてその面内に形成されている。
【0060】
前記窓部20Hの前記ヘッド支持部5の長手方向における寸法(図中Aで示す)は、本実施形態においては2mmとされており、それらの総寸法が、前記ヘッド支持部5の長手方向における寸法である120mmの10%に形成されている。
【0061】
また、窓部20Hの前記ヘッド支持部5の幅方向における寸法(図中Bで示す)は、16mmとされており、前記ヘッド支持部5の幅寸法である20mmの80%とされている。
【0062】
このようにヘッド支持部5の長手方向の中央仮想ラインを以て両端側に、開口部20としての窓部20Hを線対称となるように形成することにより、前記窓部20Hがアルミニウムからなるヘッド支持部5の長手方向に発生する熱応力による延伸を吸収して、サーマルヘッド3の反り量を小さく、かつ、中央部から両端側へ線対称なものとすることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、前記ヘッド支持部5は放熱部材11の放熱板11aを兼ねており、その後端辺部分には、後方側へ延びる面状の放熱部11bが接続されて放熱部材11を構成しており、印刷時に発生するサーマルヘッド3の熱を、放熱板11aを兼ねるヘッド支持部5を介して前記放熱部11bから逃がすように構成されている。
【0064】
なお、本実施形態において、前記開口部20を、前述の窓部20Hに代えて、矩形板状とされた前記ヘッド支持部5の先端辺に形成した切欠き部20Kとしてもよい。
【0065】
このような構成を採用したことにより、サーマルヘッド3の蓄熱を放熱部から適宜放熱し、かつ、前記開口部20としての窓部により熱応力によるヘッド支持部5の延伸を吸収することで、サーマルヘッド3の反り量を小さく、一定に保持しつつ、ヘッド支持部材4を回動軸心となる回動支持部を以て回動させることで、サーマルヘッド3を適切にプラテンローラ2に当接させることができる。
【0066】
よって、印刷時にサーマルヘッド3と記録媒体との接触を常に良好な状態で得ることができ、所望の記録結果を得ることができる。
【0067】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、前記ヘッド支持部の素材もアルミニウムに限らない。確かに、アルミニウムは、コスト、熱膨張係数、熱拡散率、熱伝導率などの物性において総合的に見ると、ヘッド支持部の素材として最適ではあるが、例えば、亜鉛めっき鋼板やSUS304など、熱膨張係数10〜25、熱伝導率40〜250の範囲の材料を用いることができる。その場合、それらの素材の物性を考慮して、前記開口部の配設個数や配設位置を調整すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態のサーマルプリンタにおけるヘッド支持部材の概略側面図
【図2】図1のヘッド支持部材におけるヘッド支持部の概略平面図
【図3】本発明の第2実施形態のサーマルプリンタにおけるサーマルヘッド周辺の要部概略側面図
【図4】図3のヘッド支持部材におけるヘッド支持部の概略平面図
【図5】従来のサーマルプリンタの印刷部を示す斜視図
【図6】従来のサーマルプリンタにおけるサーマルヘッド周辺の要部概略側面図
【符号の説明】
【0069】
1 サーマルプリンタ
2 プラテン
3 サーマルヘッド
3a ヘッド基板
3b 発熱素子
4 ヘッド支持部材
5 ヘッド支持部
6 第1アーム部
6a 第1支持孔
6b 係止部
7 第1ヘッド支持部材
8 付勢部
9 第2アーム部
9a 桟部
9b ストッパ部
9c 第2支持孔
10 第2ヘッド支持部材
11 放熱部材
11a 放熱板
11b 放熱部
12 ヘッド取付台
13 調節ねじ
14 弾性部材
15 孔
16 弾性部材
20 開口部
20K 切欠き部
20H 窓部
21 アーム
22 回動支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド基板上の長手方向に発熱素子を配列させたサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドを支持する矩形板状のヘッド支持部を先端部側に有し、基端部側に形成された回動軸心を中心として、前記サーマルヘッドをプラテンに接離させるように回動可能とされたヘッド支持部材と、
を備えたサーマルプリンタであって、
前記ヘッド支持部には、長手方向に直交する方向に延在する矩形状の複数本の開口部が長手方向に配列して形成されており、前記サーマルヘッドは、前記ヘッド支持部に直接固着されていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記開口部の前記ヘッド支持部の長手方向における寸法は、前記ヘッド支持部を構成する矩形板状の部材の厚さ寸法以上とされていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記開口部は、前記ヘッド支持部の長手方向における仮想中央ラインから両端側へ線対称となるように配列されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記開口部の配設数は6本以上であり、前記開口部の前記ヘッド支持部の長手方向における総寸法が、前記ヘッド支持部の長手方向における寸法の10%以上であり、前記開口部の前記ヘッド支持部の長手方向に直交する方向における寸法が、前記ヘッド支持部の長手方向に直交する方向における寸法の40%〜80%とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記開口部は、矩形板状とされた前記ヘッド支持部の端辺に形成された切欠き部、あるいは前記サーマルヘッド支持部の面内に形成された窓部であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記ヘッド支持部材は、前記ヘッド支持部の長手方向両端部に接続された一対のアーム部を備え、このアーム部は、前記ヘッド支持部を先端部側に支持し、基端部側に回動軸心となる回動支持部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記ヘッド支持部材は、前記ヘッド支持部の後端辺に連接されサーマルヘッドの蓄熱を放出可能な放熱部が形成された放熱部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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